特許第5957640号(P5957640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5957640物体検出装置、物体検出方法、及び駐車場の管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957640
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】物体検出装置、物体検出方法、及び駐車場の管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 8/12 20060101AFI20160714BHJP
   G01S 17/88 20060101ALI20160714BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   G01V9/04 J
   G01S17/88
   G08G1/16 A
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-102058(P2012-102058)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-228343(P2013-228343A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年12月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000242600
【氏名又は名称】北陽電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 和夫
(72)【発明者】
【氏名】永田 実
(72)【発明者】
【氏名】中山 勝仁
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−073856(JP,A)
【文献】 特開2009−282640(JP,A)
【文献】 特開2009−093428(JP,A)
【文献】 特開2012−008724(JP,A)
【文献】 特開2010−146289(JP,A)
【文献】 特開2003−097076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−13/00
G08B 13/00−25/00
G01S 17/00−17/95
E04H 6/00−6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された基準領域に存在する物体までの距離を測定して出力する測距部と、
前記測距部からの出力に基づいて、前記基準領域内に監視不要領域を設定し、前記基準領域から少なくとも前記監視不要領域を除く領域に監視領域を設定する領域設定処理を実行する領域設定部と、
前記領域設定部により前記監視領域が設定された後に、前記測距部からの出力に基づいて前記監視領域に人体を含む物体が存在するか否かを判定する物体判定処理を実行する物体判定部と、
含み、
領域設定信号が入力される度に、前記領域設定部による前記領域設定処理と、前記物体判定部による前記物体判定処理とが、繰返し実行されるように構成されている物体検出装置。
【請求項2】
所定のトリガー信号に基づいて前記領域設定信号を前記領域設定部に出力する領域設定信号出力部を備えている請求項記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記領域設定部は、前記測距部からの出力に基づいて区画した前記基準領域内に存在する有体物の輪郭を膨張処理した領域を前記監視不要領域として設定する請求項1または2記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記領域設定部は、前記基準領域から前記監視不要領域を除く領域を前記監視領域として設定する請求項記載の物体検出装置。
【請求項5】
複数の監視領域候補が記憶された記憶部をさらに備え、
前記領域設定部は、前記複数の監視領域候補から選択した単一または複数の監視領域候補を前記監視領域として設定する請求項1からの何れかに記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記領域設定部は、前記測距部からの出力に基づいて前記測距部に備えた走査機構の近傍に物体が存在しないと判定したときにのみ前記監視領域を設定する請求項1からの何れかに記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記物体判定部は、前記領域設定部により前記監視領域が設定された後に、前記測距部からの出力に基づいて、前記監視領域に人体を含む物体が存在すると判定すると、前記監視領域のサイズを所定サイズ大きく調整した拡張監視領域を設定し、前記拡張監視領域に人体を含む物体が存在するか否かを判定する請求項1からの何れかに記載の物体検出装置。
【請求項8】
前記物体判定部は、前記拡張監視領域に人体を含む物体が存在しないと判定すると、人体を含む物体が存在するか否かを判定する領域を前記監視領域に戻す請求項記載の物体検出装置。
【請求項9】
入庫領域に停車した車両を駐車領域に搬送する搬送機構を備えた駐車場の管理システムに組み込まれ、前記入庫領域が前記基準領域に設定され、前記監視不要領域が前記入庫領域に停車した車両占有領域に対応する領域として設定されるとともに、前記基準領域から少なくとも前記監視不要領域を除く領域が前記監視領域に設定され、
前記領域設定部により前記監視領域が設定された後に、前記物体判定部は前記測距部からの出力に基づいて前記監視領域に人体を含む物体が存在するか否かを判定すると、その判定結果信号を作動許否信号として前記駐車場の管理システムに出力する請求項1からの何れかに記載の物体検出装置。
【請求項10】
測距部により実行され、空間に存在する物体までの距離を測定して出力する測距ステップと、
領域設定演算部により実行され、前記測距ステップからの出力に基づいて、予め設定された基準領域内に監視不要領域を設定し、前記基準領域から少なくとも前記監視不要領域を除く領域に監視領域を設定する領域設定ステップと、
物体判定演算部により実行され、前記領域設定ステップにより監視領域が設定された後に、前記測距ステップからの出力に基づいて前記監視領域に人体を含む物体が存在するか否かを判定する物体判定ステップと、
含み、
前記領域設定演算部に領域設定信号が入力される度に、前記領域設定ステップと、前記物体判定ステップとが、繰返し実行される物体検出方法。
【請求項11】
所定のトリガー信号に基づいて前記領域設定信号を前記領域設定演算部に出力する領域設定信号出力ステップを備えている請求項10記載の物体検出方法。
【請求項12】
前記領域設定ステップは、前記測距ステップからの出力に基づいて前記測距部に備えた走査機構の近傍に物体が存在しないと判定したときにのみ前記監視領域を設定する請求項10または11記載の物体検出方法。
【請求項13】
入庫領域に停車した車両を駐車領域に搬送する搬送機構と、請求項1からの何れかに記載された物体検出装置とを備えた駐車場の管理システムであって、
前記入庫領域が前記基準領域に設定され、前記領域設定部により前記入庫領域に停車した車両の占有領域に対応する領域が前記監視不要領域に設定され、
物体判定部により前記監視領域に人体を含む物体が存在しないと判定されたときに、前記搬送機構が作動するシステム制御部を備えている駐車場の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置、物体検出方法、及び駐車場の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、入庫領域に停車した車両を駐車領域に自動搬送する搬送機構を備えている駐車場では、安全性を確保する等の観点から、車両の周囲に人や物が存在している場合に搬送機構が作動しないように保護する安全機構が必要となる。特に管理者が常駐しない無人駐車場ではこのような安全機構が必須となる。
【0003】
このような安全機構として、測距装置が組み込まれた物体検出装置が好適に用いられている。物体検出装置では、測距装置の出力に基づいて、入庫領域に停車した車両の周囲に人体や物が存在しているか否かが判定される。
【0004】
また、各種の製造工場や研究施設では、安全の確保或いは秘密保全のために特定の領域に人が侵入したことを検知すると、警報を鳴らし或いは装置を停止する必要に迫られる場合があり、このような場合にも測距装置が組み込まれた物体検出装置が好適に用いられている。
【0005】
このような物体検出装置の具体例として、特許文献1には、無人搬送車に取り付けられ、その周囲を放射状に分割した所定の角度範囲毎に、検出物体までの距離を測定する非接触式の距離測定器と、距離測定器の測定範囲に、指定した複数の境界点を結ぶ線により区画される検出エリアを複数パターン登録する検出エリア登録手段と、無人搬送車の走行区間毎に、検出エリア登録手段に登録された複数の検出エリアのパターンの中から使用するパターンを選択して設定する使用パターン設定手段と、無人搬送車の走行中に、距離測定器で所定の角度範囲毎に測定された検出物体までの距離が、現在の走行区間に設定された検出エリアの範囲内にあるとき、障害物検出の出力を発生する判定手段を備えた無人搬送車の障害物検出センサが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、測定領域内の物体を検出し、その検出結果に基づいて対象装置の動作を許可する動作許可信号及び上記動作を許可しない動作不許可信号のいずれかを出力する光電センサが開示されている。
【0007】
当該光電センサは、照射光を生成する発光手段と、照射光の照射方向を繰り返し変化させることにより測定領域を走査する走査手段と、測定領域内の物体からの反射光を受光する受光手段と、照射光の照射方向及び受光手段における受光信号に基づいて物体の位置情報を算出する位置情報算出手段と、位置情報に基づいて、測定領域内における第1領域内、及び、測定領域内における第1領域とは異なる第2領域内の物体を検出する物体検出手段と、第1領域内に物体を検出せず、かつ、第2領域内に物体を検出した場合には、動作許可信号を出力し、第1領域内に物体を検出した場合、又は、第2領域内に物体を検出しない場合には、動作不許可信号を出力する信号出力手段を備えている。
【0008】
特許文献1に示された障害物検出センサや、特許文献2に示された光電センサは、何れも予め単一または複数の監視領域が設定された記憶部と、測距装置による測定結果に基づいて、その監視領域に物体が存在するか否かを判定する演算部を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−215238号公報
【特許文献2】特開2008−298646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述した何れの従来技術でも、物体が存在するか否かの判定対象領域となる監視領域が予め設定されている必要があり、監視領域が動的に変化する場合に対応できないという問題があった。
【0011】
例えば、上述の駐車場では、基準領域となる入庫領域に停車した車両の周囲に人や物が存在しているか否かを判定するために、入庫領域に停車した車両に対応する領域を監視不要領域として入庫領域から除外した領域を監視領域に設定する必要がある。
【0012】
入庫領域に停車する車両の相対的な停車位置は常に一定という訳ではなく、停車のための運転操作によって、また車種によって様々に異なるため、予め適正な監視領域を設定することは非常に難しく、停止した車両の一部が予め設定した監視領域に位置する場合には当該車両が人や物と誤って判定される虞があった。
【0013】
そこで、予め、任意の車両の停止位置が含まれる広い領域を監視不要領域として、入庫領域から当該監視不要領域を除外した領域を監視領域に設定すると、停止した車両が誤って人や物と判定されるという問題は解消されるが、監視不要領域のうち実際の車両の停車領域以外の領域に存在する人や物を検知することができず、死角が発生するという問題があった。
【0014】
このような問題は駐車場に限らず、安全の確保或いは秘密保全のために特定の領域に人が侵入したことを検知する必要がある設備で、監視不要領域が動的に変化する場合にも発生する。
【0015】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、動的に変化する監視不要領域に応じて監視領域を動的に変化させることができる物体検出装置、物体検出方法、及び駐車場の管理システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、本発明による物体検出装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、予め設定された基準領域に存在する物体までの距離を測定して出力する測距部と、前記測距部からの出力に基づいて、前記基準領域内に監視不要領域を設定し、前記基準領域から少なくとも前記監視不要領域を除く領域に監視領域を設定する領域設定処理を実行する領域設定部と、前記領域設定部により前記監視領域が設定された後に、前記測距部からの出力に基づいて前記監視領域に人体を含む物体が存在するか否かを判定する物体判定処理を実行する物体判定部と、を含み、領域設定信号が入力される度に、前記領域設定部による前記領域設定処理と、前記物体判定部による前記物体判定処理とが、繰返し実行されるように構成されている点にある。
【0017】
つまり、領域設定部によって、測距部からの出力に基づいて予め設定された基準領域に存在する物体の位置が特定され、当該物体の位置が監視不要領域として設定される。さらに、基準領域から少なくとも監視不要領域を除く領域が監視領域として設定される。領域設定部により監視領域が設定されると、その後の測距部からの出力に基づいて、監視領域に人体を含む物体が存在するか否かが物体判定部によって判定される。
【0018】
視領域を更新する必要があるときには、領域設定信号を領域設定部に入力すれば領域設定部によって新たな監視領域が設定されるようになり、監視領域が設定される度に、物体判定部によって監視領域に人体を含む物体が存在するか否かが判定される処理が繰り返されるようになる。
【0019】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、所定のトリガー信号に基づいて前記領域設定信号を前記領域設定部に出力する領域設定信号出力部を備えている点にある。
【0020】
上述の構成によれば、所定のトリガー信号が領域設定信号出力部に入力されると、領域設定信号出力部から領域設定信号が領域設定部に入力され、その都度監視不要領域に対応した適正な監視領域が設定されるようになる。尚、監視不要領域内に存在する任意の物体の移動等を自動検出するとトリガー信号が生成される構成であっても、手動操作によりトリガー信号が生成される構成であってもよい。
【0021】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記領域設定部は、前記測距部からの出力に基づいて区画した前記基準領域内に存在する有体物の輪郭を膨張処理した領域を前記監視不要領域として設定する点にある。
【0022】
測距部からの出力に基づいて基準領域内で区画された有体物の輪郭が、領域設定部によってそのまま監視不要領域に設定されると、その後の測距部による測定時に生じる僅かな測定誤差によって、物体判定部によって当該有体物が監視不要領域外に存在する他の人や物体であると誤って判定される虞がある。しかし、上述の構成によれば、基準領域内で区画された有体物の輪郭を膨張処理した領域が監視不要領域として設定されるので、その後の測距部による測定時に僅かな測定誤差が生じても、物体判定部によって当該有体物が監視不要領域外に存在する他の人や物体であると誤って判定されることが回避される。
【0023】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第三の特徴構成に加えて、前記領域設定部は、前記基準領域から前記監視不要領域を除く領域を前記監視領域として設定する点にある。
【0024】
上述の構成によれば、監視不要領域を除いて全ての基準領域を監視領域に設定できるので、監視領域に存在する人や物体等の有体物を精度良く検出することができるようになる。
【0025】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、複数の監視領域候補が記憶された記憶部をさらに備え、前記領域設定部は、前記複数の監視領域候補から選択した単一または複数の監視領域候補を前記監視領域として設定する点にある。
【0026】
上述した構成によれば、記憶部に記憶された複数の監視領域候補から、基準領域から監視不要領域を除く領域をカバーするように、領域設定部により単一または複数の監視領域候補が監視領域として選択されるので、基準領域のうち監視領域として必須の領域のみを監視領域に設定することができる。
【0027】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記領域設定部は、前記測距部からの出力に基づいて前記測距部に備えた走査機構の近傍に物体が存在しないと判定したときにのみ前記監視領域を設定する点にある。
【0028】
走査機構の近傍に人や物体が位置していると、基準領域に区画される監視不要領域を適正に検知できない虞がある。そこで、領域設定部により走査機構の近傍に物体が存在しないと判定されたときにのみ監視領域が設定されるようにすれば、その後の誤判定が回避できるようになる。尚、領域設定部により測距部の近傍に物体が存在すると判定されたときには、当該判定を報知する何らかの信号が出力されることが好ましい。
【0029】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記物体判定部は、前記領域設定部により前記監視領域が設定された後に、前記測距部からの出力に基づいて、前記監視領域に人体を含む物体が存在すると判定すると、前記監視領域のサイズを所定サイズ大きく調整した拡張監視領域を設定し、前記拡張監視領域に人体を含む物体が存在するか否かを判定する点にある。
【0030】
物体判定部によって監視領域に人体を含む物体が存在すると判定され、その後監視領域から当該人体を含む物体の退去を判定する際に、監視領域の境界を移動する物体等に対する測距部からの出力にチャタリングが発生する虞がある。このような場合で合っても、監視領域のサイズを所定サイズ大きく調整した拡張監視領域を設定し、当該拡張監視領域に人体を含む物体が存在する場合には監視領域に人体を含む物体が存在すると判定することによって、チャタリングの発生を回避することができる。尚、拡張監視領域の境界でチャタリングが発生しても、最早監視領域から人体を含む物体が退去したと判定できるので、拡張監視領域から僅かの時間でも人体を含む物体が退去したと判定すると、監視領域から人体を含む物体が退去したとの判定を維持すればよい。
【0031】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第七の特徴構成に加えて、前記物体判定部は、前記拡張監視領域に人体を含む物体が存在しないと判定すると、人体を含む物体が存在するか否かを判定する領域を前記監視領域に戻す点にある。
【0032】
拡張監視領域に人体を含む物体が存在しないと判定した後に、当該監視領域に進入する新たな人体を含む物体の有無を判定する必要がある。そのような場合に、拡張監視領域を基準に進入判定を行なうと誤判定の虞があるが、監視領域のサイズを元に戻すことによって、監視領域への進入を確実に判定できるようになる。尚、人体を含む物体が僅かの距離でも監視領域へ進入したと判定されると、監視領域のサイズを所定サイズ大きく調整した拡張監視領域を基準に存在、非存在の判定が行なわれるので、拡張前の監視領域への人等の進入時のチャタリングも解消できる。
【0033】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一から第八の何れかの特徴構成に加えて、入庫領域に停車した車両を駐車領域に搬送する搬送機構を備えた駐車場の管理システムに組み込まれ、前記入庫領域が前記基準領域に設定され、前記監視不要領域が前記入庫領域に停車した車両占有領域に対応する領域として設定されるとともに、前記基準領域から少なくとも前記監視不要領域を除く領域が前記監視領域に設定され、前記領域設定部により前記監視領域が設定された後に、前記物体判定部は前記測距部からの出力に基づいて前記監視領域に人体を含む物体が存在するか否かを判定すると、その判定結果信号を作動許否信号として前記駐車場の管理システムに出力する点にある。
【0034】
駐車場の入庫領域を基準領域に設定するとともに、監視不要領域を停車車両占有領域に対応する領域に設定することによって、駐車場の入庫領域に停車した車両から降車した人や物がその周囲の監視領域から退去したか否かが、車両の停車位置や車種に関わらず、適正に判定でき、その結果が駐車場の管理システムに出力されることにより、駐車場の管理システムが安全が状況下で稼働できるようになる。
【0035】
本発明による物体検出方法の第一の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、測距部により実行され、空間に存在する物体までの距離を測定して出力する測距ステップと、領域設定演算部により実行され、前記測距ステップからの出力に基づいて、予め設定された基準領域内に監視不要領域を設定し、前記基準領域から少なくとも前記監視不要領域を除く領域に監視領域を設定する領域設定ステップと、物体判定演算部により実行され、前記領域設定ステップにより監視領域が設定された後に、前記測距ステップからの出力に基づいて前記監視領域に人体を含む物体が存在するか否かを判定する物体判定ステップと、を含み、前記領域設定演算部に領域設定信号が入力される度に、前記領域設定ステップと、前記物体判定ステップとが、繰返し実行される点にある。
【0036】
同第二の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、所定のトリガー信号に基づいて前記領域設定信号を前記領域設定演算部に出力する領域設定信号出力ステップを備えている点にある。
【0037】
同第三の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記領域設定ステップは、前記測距ステップからの出力に基づいて前記測距部に備えた走査機構の近傍に物体が存在しないと判定したときにのみ前記監視領域を設定する点にある。
【0038】
本発明による駐車場の管理システムの特徴構成は、同請求項13に記載した通り、入庫領域に停車した車両を駐車領域に搬送する搬送機構と、上述した第一から第八の何れかの特徴構成を備えた物体検出装置とを備えた駐車場の管理システムであって、前記入庫領域が前記基準領域に設定され、前記領域設定部により前記入庫領域に停車した車両の占有領域に対応する領域が前記監視不要領域に設定され、物体判定部により前記監視領域に人体を含む物体が存在しないと判定されたときに、前記搬送機構が作動するシステム制御部を備えている点にある。
【0039】
上述の構成によれば、駐車場の入庫領域を基準領域に設定するとともに、監視不要領域を停車車両占有領域に対応する領域に設定した物体検出装置を設置することによって、駐車場の入庫領域に停車した車両から降車した人や物がその周囲の監視領域から退去したか否かが、車両の停車位置や車種に関わらず、適正に判定できるようになり、システム制御部は、安全を期した状態で搬送機構を作動制御できるようになる。
【発明の効果】
【0040】
以上説明した通り、本発明によれば、動的に変化する監視対象に対応して監視領域を動的に変化させることができる物体検出装置、物体検出方法、及び駐車場の管理システムを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】(a)は立体駐車場の入庫領域の説明図、(b)は物体検出装置の機能ブロック図
図2】(a)は固定設定された監視領域の説明図、(b)は車両の停止位置の変動により生じ死角の説明図
図3】(a)は入庫領域に設定された基準領域の説明図、(b)は基準領域に設定された監視領域の説明図
図4】(a)は膨張処理等の説明図、(b)は物体検出装置の近傍に存在する人等の障害物の説明図
図5】(a)は物体検出装置が入庫領域の対角に設置された場合の監視領域の説明図、(b)は物体検出装置が車体の底部よりも下方に設置された場合に設定される監視領域の説明図
図6】(a)は別実施形態を示し、監視領域候補の説明図、(b)は選択された監視領域候補で設定された監視領域の説明図
図7】測距部Aの説明図
図8】物体検出装置(測距部A)の回路ブロック構成図
図9】物体検出装置の信号処理部の機能ブロック構成図
図10】領域設定処理のフローチャート
図11】物体判定処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明による物体検出装置、物体検出方法、及び駐車場の管理システムを図面に基づいて説明する。
図1(a)には、立体駐車場Pの入庫領域Ri近傍の概略の平面図が示されている。管理システムは、駐車場Pの入り口から進入した車両1が、入庫領域Riに設定された停車位置に停車すると(矢印S1)、保管領域Sの扉(図示せず)を開き、水平搬送機構HCが作動して車両を保管領域Sに搬送する(矢印S2)。その後、扉を閉めて車両1を所定の保管位置に自動搬送し、受付票を発行する。
【0043】
尚、水平搬送機構HCに備えた前後一対の移載ベルトBLに車両1の前輪と後輪が載置されるように予め停車位置が設定されている。図中、符号bは入庫領域Riを区画する柵を示し、wは側壁を示している。出庫時には、管理システムによって、保管された車両1が入庫領域Riと同様の構造の出庫領域に対向する位置まで搬送され、水平搬送機構HCによって出庫領域に搬出される。
【0044】
図1(b)に示すように、物体検出装置Dは、駐車場Pの管理システムに組み込まれ、測距部Aと、領域設定部Bと、物体判定部Cとを備えている。物体検出装置Dは、入庫領域Riに停車した車両1から降車した人や物が当該車両1の近傍に位置した状態で水平搬送機構HCが作動することが無いように、当該車両1の近傍に人を含む物体が存在しているか否かを判定して、その結果を管理システムに報知する装置である。
【0045】
測距部Aは、測定光を走査してその反射光を検知する走査機構A1と、測定光に対する反射光の遅延時間に基づいて、予め設定された基準領域に存在する物体までの方向と距離を測定して出力する測距演算部A2として機能する信号処理部がケーシングに収容された走査式測距装置で構成されている。
【0046】
測距部Aは、入庫領域Riの床面と平行な平面上で、車両1のボディの高さを走査するように配置されている。
【0047】
信号処理部はマイクロコンピュータと記憶部を含む周辺回路等を備えて構成され、記憶部に記憶された制御プログラムがマイクロコンピュータによって実行されることにより、信号処理部が測距演算部A2として機能し、さらに後述の領域設定部B、物体判定部Cとしても機能する。尚、以下の説明では、信号処理部に含まれる領域設定部Bの機能を説明する場合には領域設定演算部B、物体判定部Cの機能を説明する場合には物体判定演算部Cとも表記する。
【0048】
測距部Aは、走査機構A1と測距演算部A2が同一のケーシングに収容された構成に限るものではなく、走査機構A1のみが当該ケーシングに収容され、信号処理部が別のケーシングに収容され、それらが信号線で接続される構成であってもよい。また、信号処理部のうち領域設定部Bと物体判定部Cが、物理的に測距演算部Aと分離した別基板によって構成され、信号線で互いに接続されていてもよい。
【0049】
図2(a)に示すように、入庫領域Riに設定された略L字状の監視領域Mに人Hが存在する旨の判定が物体検出装置Dによってなされている間、管理システムは水平搬送機構HCを作動させることなく待機し、物体検出装置Dによって監視領域Mに人Hが存在していない旨の判定がなされると、管理システムは水平搬送機構HCを作動させる。
【0050】
しかし、図2(b)に示すように、入庫領域Riへの車両1の停車位置が予め設定された監視領域Mと離隔していると、車両1と監視領域Mの間に死角領域Z(図2(b)中、ハッチングされた領域)が発生し、この領域Zに人Hがいても物体検出装置Dによって検知されることがない。
【0051】
そこで、物体検出装置Dに備えた領域設定部Bは、入庫領域Riへ車両1が停車する度に監視領域Mを生成するように構成されている。即ち、測距部Aからの出力つまり方向データと距離データに基づいて、入庫領域Riに対応する基準領域Rb内に監視不要領域Rnを設定し、基準領域Rbから少なくとも監視不要領域Rnを除く領域に監視領域Mを設定する。
【0052】
そして、物体判定部Cは、領域設定部Bにより監視領域Mが設定された後に、測距部Aからの出力に基づいて監視領域Mに人体を含む物体が存在するか否かを判定する。
【0053】
基準領域Rbを区画する座標データは、物体検出装置Dに予め接続されたパーソナルコンピュータ等の端末から入力され、信号処理部のメモリに格納されている。尚、入庫領域Riへ車両1が停車する前に測距部Aのデータに基づいて基準領域Rbを区画する座標データを最適化する初期化処理を行なうように構成してもよい。例えば、初期化処理では、入庫領域Riを区画する柵bや側壁wの位置を検知し、それらから所定距離だけ内側の領域を基準領域Rbとして再設定するのである。このような初期化処理により、柵bや側壁wを人や物と誤判定することが回避される。
【0054】
図3(a)には、このようにして設定された基準領域Rbに車両1が進入して停車した状態が示されている。この状態で物体検出装置Dに領域設定信号が入力されると、図中、一点鎖線で示した角度φが測距部Aによって走査され、車両1等に対する方向データと距離データが得られる。これらは測距部Aから見た車両1の輪郭、つまり測距部Aによって検出された車両1と空間の境界となる。
【0055】
図3(b)に示すように、領域設定部Bは、車両1の輪郭を少なくとも物体検出装置D側に「所定長さ」だけ膨張処理した領域を監視不要領域Rnとして設定し、基準領域Rbから監視不要領域Rnを除いた領域を監視領域Mに設定する。
【0056】
監視不要領域Rnは、物体判定部Cによって車両1の近傍に位置する人等の物体の存在を判定する際に、車両1や側壁w等を誤って人等の物体であると判定しないように、測距部Aの出力から判定対象物とは異なる車両1等を除くための領域であり、停車車両占有領域に対応した領域であり、測距部Aで検出可能な領域である。
【0057】
測距部Aによって検出される車両1等に対する距離にも測定誤差が生じることがあるため、上述の膨張処理が行なわれる。例えば、測距部Aが僅かに振動して監視不要領域Rn外で車両1のエッジを検知する虞もある。人の乗降によって車両が振動する場合もある。そのような場合でも膨張処理を施すことによって、誤検知を回避することができる。
【0058】
図4(a)には領域設定部Bによって実行される膨張処理等の一例が示されている。この例では、物体検出装置D(測距部A)によって検出された車両1までの距離から物体検出装置D側にΔd2近づけた距離を車両1までの距離として設定し、物体検出装置D(測距部A)によって検出された側壁wまでの距離から物体検出装置D側にΔd1近づけた距離を側壁wまでの距離として設定している。尚、本実施形態ではΔd2<Δd1に設定している。
【0059】
また、物体検出装置D(測距部A)によって検出された車両1のエッジEの位置を所定角度Δφだけ車両1から離隔する方向にシフトさせている。膨張処理の具体的手法はこれに限るものではなく、例えば、物体検出装置D(測距部A)によって検出された車両1の輪郭を法線方向にΔd2だけ膨張させる等、公知の種々の膨張処理を適用することも可能である。先に示した図3(b)の監視領域Mはこのような処理を経て設定される。
【0060】
膨張処理の程度を示す「所定長さ」を大きく取り過ぎると、車両と監視領域の間に位置する人や物を適切に検出できない虞があるので、本実施例では人が検出できるように、Δd2≒10cm程度に設定している。尚、「所定長さ」の具体的数値は、人体を検出対象とするか否か、どのような物体を検知する必要があるか等の使用目的に応じて適宜設定される値であり、特別に制限される値ではない。
【0061】
図4(b)に示すように、領域設定部Bによって監視領域Mが設定されるときに、物体検出装置D(測距部Aの走査機構)の近傍に人H等が存在すると、これが障害物となって適切な監視不要領域Rnを設定できなくなる。図4(b)では、走査角度φ2,φ3の範囲では問題無いが、走査角度φ1の範囲で適切な監視不要領域Rnが設定できなくなる。
【0062】
そこで、領域設定部Bは、測距部Aからの出力に基づいて測距部Aの走査機構近傍に物体が存在しないと判定したときにのみ監視領域Mを設定するように構成されている。測距部Aの走査機構近傍に物体が存在する場合には、駐車場の管理システムにその旨の信号を出力し、管理システムから場内に、測距部Aの走査機構の近傍から退去する旨のメッセージを報知するように構成されている。
【0063】
図5(a)には、矩形の入庫領域Riの対角にそれぞれ物体検出装置D1,D2が設置され、それぞれによって監視領域M1,M2が監視される例が示されている。
【0064】
図5(b)には、測距部Aが、入庫領域Riの床面と平行な平面上で、車両1の車体底部よりも下の高さを走査するように配置された場合に、領域設定部Bによって設定される監視領域Mが示されている。前後の車輪whの陰部が監視不要領域となり、基準領域から監視不要領域を除いた領域が監視領域Mになる。この場合、床に伏せた状態の人や、車両の下に潜り込んだ子供であっても適切に検出できるようになる。
【0065】
図6(a),(b)には、領域設定部Bによる監視領域Mの他の設定プロセスが示されている。この例では、物体検出装置Dに端末を接続して、予め信号処理部のメモリに入庫領域Riに対応して領域サイズの異なる複数の矩形の監視領域候補M1,M2,M3,M4(M1<M2<M3<M4)と、M5,M6,M7,M8(M5<M6<M7<M8)が格納されている。
【0066】
車両1が入庫領域Riに停車した後、領域設定部Bが、測距部Aからの出力に基づいて監視不要領域を設定し、監視領域候補から当該監視不要領域と重畳することがない最大の監視領域候補を監視領域Mとして設定するように構成されている。
【0067】
図6(b)は、監視領域MとしてM2,M6が選択された状態が示されている。本例では監視領域候補が矩形である場合を説明したが、サイズが異なるL字の複数の帯状領域を監視領域候補として準備してもよい。
【0068】
物体検出装置Dは、図1から図6に示したような入庫領域Riの角部に設置されている必要は無く、水平搬送機構HCによって入庫領域Riと保管領域Sとの間で移動する車両の移動方向に人体を含む物体の存在の有無を検知可能な位置に設置されていればよい。
【0069】
つまり、領域設定部Bは、測距部Aからの出力に基づいて、基準領域内に監視不要領域を設定し、基準領域から少なくとも監視不要領域を除く領域に監視領域を設定する領域設定処理を実行する。
【0070】
そして、領域設定部Bによって監視領域Mが設定された後に測距部Aからの出力に基づいて、物体判定部Cによって監視領域Mに人体を含む物体が存在するか否かが繰り返し判定され、その結果が駐車場の管理システムに出力される。
【0071】
詳述すると、物体判定部Cは、監視領域Mに人体を含む物体が存在すると判定すると、監視領域Mのサイズを所定サイズ大きく調整した拡張監視領域を設定し、拡張監視領域に人体を含む物体が存在するか否かを判定し、拡張監視領域に人体を含む物体が存在しないと判定すると、人体を含む物体が存在するか否かを判定する領域を監視領域Mに戻す。拡張の程度は、上述した膨張処理の値Δd2≒10cmより小さく、距離測定の精度より大きな値であればよい。
【0072】
つまり、物体判定部Cは、人体を含む物体が既に監視領域M内に存在していると判定した場合には、その後、監視領域Mのサイズを大きくした拡張監視領域に人体を含む物体が存在するか否かを検知し、非存在と検知したときに監視領域Mから人体を含む物体が退去したと判定して、判定領域を監視領域Mに戻す。さらに、監視領域Mに人体を含む物体が進入したことを検知すると、その後判定領域を拡張監視領域に広げる。これにより、監視領域Mに人体を含む物体が存在するか否かの判定を安全サイドで行なえるように構成されている。
【0073】
駐車場管理アプリケーションプログラムがインストールされたコンピュータによって管理システム制御部が構成され、少なくとも入庫車両情報を管理し、伝票を発行する管理部と、入庫領域Riに停車した車両1を保管領域Sとの間で搬送する水平搬送機構HCを制御する水平搬送制御部と、保管領域Sに搬送された車両1を立体的に配置された複数の保管区画の何れかの保管区画との間で搬送する保管用搬送機構を制御する保管用搬送制御部を備えている。
【0074】
管理システム制御部は、入庫処理時に、物体判定部Cから入力される監視領域Mに人体を含む物体が存在しないとの判定結果に基づいて、扉を開放して水平搬送機構HCを制御し、車両1を保管領域Sに搬送して扉を閉じる。
【0075】
図7には測距部Aを構成する走査式測距装置が例示されている。測距部Aは、走査機構A1と測距演算部A2を含む信号処理部23が構成される基板17を備えている。
【0076】
走査機構A1は、一対の投光部3及び受光部5を収容する円筒状のケーシング2と、ケーシング2の周方向に沿って配置された弧状の光学窓2aを備え、投光部3から出力された測定光を円筒状ケーシングの軸心Pと直交する方向に偏向反射する第一偏向ミラー9、及び、被測定物Tからの反射光を受光部5に向けて偏向反射する第二偏向ミラー10を軸心P周りに回転して、測定光を軸心Pと直交する平面上で回転走査する偏向光学系4を備えている。つまり、軸心Pに沿って対向配置された投光部3と受光部5の間に偏向光学系4が配置されている。
【0077】
投光部3は、赤外半導体レーザでなる発光素子と、発光素子から出力された光ビームを平行光に形成する光学レンズを備えて構成され、ケーシング2の上壁内側に固定されている。
【0078】
受光部5は、反射光を検出するアバランシェフォトダイオードでなる受光素子を備えて構成され、ケーシング2に固定された中空軸13上の支持板上に固定されている。
【0079】
偏向光学系4は、第一偏向ミラー9及び第二偏向ミラー10が取り付けられた天面8bと、反射光を受光部5で集光する受光レンズ14が取り付けられた周壁部8aを備えた円筒状の回転体8と、回転体8を一方向に回転駆動するモータ11を備えている。
【0080】
下端部が縮径された回転体8は、その内周面に備えた軸受12を介して中空軸13に回転可能に支承され、縮径部の外周面にモータ11の回転子となるマグネット11bが取り付けられている。当該回転子と、当該回転子に対向配置されたコイル11aでなる固定子によりモータ11が構成され、固定子のカバーがケーシング2に固定された中空軸13に取り付けられている。
【0081】
投光部3から光軸L1に沿って出射された測定光が、第一偏向ミラー9で光軸L1と直交する光軸L2に偏向され、光学窓2aを通過して測定対象空間に向けて照射される。測定対象空間に存在する被測定物Tからの反射光が、光軸L2と平行な光軸L3に沿って光学窓2aを通過して受光レンズ14に入光し、第二偏向ミラー10で光軸L3と直交する光軸L4に偏向され、受光部5に集光される。
【0082】
モータ11で回転駆動される偏向光学系4により、測定光が光学窓2aを介して測定対象空間に走査され、第一偏向ミラー9で偏向された測定光が光学窓2aの上方領域を透過し、被測定物Tからの反射光が光学窓2bの下方領域を透過する。
【0083】
周方向に複数のスリットが形成された円盤状のスリット板15aが、回転体8の周壁部8aに取り付けられるとともに、当該スリットを検出するフォトインタラプタ15bがケーシング2の内壁に取り付けられ、これらにより偏向光学系4の走査角度を検出する走査角度検出部15が構成されている。
【0084】
スリット板15aに形成されるスリットは、基準位置を除いて均等間隔で形成され、基準位置ではスリット間隔が他の間隔より狭い間隔に形成されている。従って、偏向光学系4の回転に伴なって走査角度検出部15から出力されるパルスのパルス幅に基づいて、基準位置から偏向光学系4の回転角度位置が把握できるように構成されている。
【0085】
基準位置には距離補正用の基準光学系としてのプリズム16が設けられ、当該プリズム16を介して受光部5で検知される反射光に基づいて、補正用の基準距離が求められる。
【0086】
ケーシング2の底部には、被測定物Tまでの距離を算出する距離演算部A2や上述した領域設定部B及び物体判定部Cを構成する信号処理部23を含む基板17が収容されている。
【0087】
図8に示すように、測距部Aは、発光素子3aを駆動する駆動回路3b、反射光が受光素子5aで光電変換された反射信号を増幅する増幅回路5bと、増幅回路5bの出力をA/D変換するA/D変換部22、モータ制御回路21、信号処理部23を備えている。発光素子3a、駆動回路3b、受光素子5a、モータ制御回路21等が走査機構A1に含まれる。
【0088】
信号処理部23には、所定の制御プログラムに基づいて動作するマイクロコンピュータやデジタルシグナルプロセッサ等が設けられている。信号処理部23は、走査機構A1によって測定光が周期的に測定対象空間に走査されるようにモータ制御回路21を制御し、走査角度検出部15から入力されるエンコーダパルスに基づいて、走査角度つまり測定光の照射方向を検出するとともに、測定光とその反射光に基づいて測距演算を実行し、その結果に基づいて監視領域Mに人体を含む物体が存在するか否かを判定して外部に出力する。
【0089】
走査角度検出部15から入力されるエンコーダパルスに同期して、信号処理部23から駆動回路3bに出力される駆動パルス信号S1により赤外半導体レーザ3aがパルス駆動され、走査機構A1を介して測定対象空間にパルス状の測定光S2が照射される。
【0090】
当該測定光S2が被測定物Tに照射され、被測定物Tからの反射光S3が走査機構A1を介して入射され、アバランシェフォトダイオード5aで光電変換後に増幅回路5bで増幅された反射信号S4がA/D変換部22に入力される。
【0091】
A/D変換部22でA/D変換されたデジタル反射信号が信号処理部23に入力され、信号処理部23で駆動パルス信号S1と反射信号の時間差Δtが求められ、以下の式に基づいて被測定物T迄の仮の距離DT1が算出される。
DT1=Δt・C/2 (但し、Cは光速である。)
【0092】
ここで、時間差Δtとは測定光に対する反射光の遅延時間をいう。上述の例では測定光の照射時期を駆動パルス信号S1の立ち上がり時期で代用しているが、測定光を検知する光電センサを用いて測定光そのものの立ち上がり時期を検知してもよい。
【0093】
一方、走査角度検出部15から入力されるエンコーダパルスが基準位置を示すときに、測定光がプリズム16に照射され、アバランシェフォトダイオード5aで検出されたプリズム16からの反射光S3に基づく時間差Δt´に対応する基準距離DT2が以下の式に基づいて算出される。
DT2=Δt´・C/2 (但し、Cは光速である。)
【0094】
被測定物迄の距離DTが、DT1−DT2によって算出される。当該基準距離DT2は、走査式測距装置1に組み込まれた赤外半導体レーザ3a、駆動回路3b、アバランシェフォトダイオード5a等の特性ばらつきや、光学系の機差による計測距離のばらつきを吸収して、被測定物迄の正確な距離を算出するための補正値となる。
【0095】
図9に示すように、信号処理部23は距離算出部230と、距離算出部230で算出された距離情報等に基づいて監視領域内の人や物の有無を判定する物体検出部231と、駆動回路3bや距離算出部230等を駆動するためのクロック信号を生成するパルス信号生成部232を備えている。
【0096】
距離算出部230が測距部Aの主要信号処理部となり、物体検出部231が領域設定部Bと、物体判定部Cの主要信号処理部となる。
【0097】
距離算出部230は、上述した距離DT1,DT2を算出する測距演算部23aと、算出された補正距離DT2を記憶する補正データ記憶部23cと、上述した距離補正演算を行なう補正処理部23bを備えている。
【0098】
補正処理部23bで補正された距離データ及び方向データ(走査角度)が物体検出部231の走査角度/距離記憶部23dに格納される。
【0099】
物体検出部231は、駐車場の管理システムから領域設定信号、監視終了信号が入力され、駐車場の管理システムに人体等検出信号、領域設定完了信号、近距離検出エラー信号、故障信号を出力する。尚、故障信号は、モータ11を駆動しているにもかかわらず、走査角度検出部15からパルス信号が出力されない等、後述する測距ステップで測距部Aに故障が発生していることが検知されたときに出力される信号である。
【0100】
図10に示すように、領域設定部Bは、領域記憶部23eに基準領域が設定されているか否かを判別し、基準領域が設定されていなければ(SA1,N)、基準領域が設定されるのを待ち(SA7)、基準領域が設定されていれば(SA1,Y)、駐車場の管理システムから領域設定信号の入力を待つ(SA2)。
【0101】
尚、既に説明したように、物体検出装置Dには端末と接続可能なインタフェースが設けられ、端末から基準領域を画定する座標データが入力され、領域記憶部23eに記憶可能に構成されている。基準領域は入庫領域Riに対応して設定されていることが好ましいが、無限遠点で囲まれる領域が基準領域に設定されていてもよい。但し、後者の場合、入庫領域Riの周囲が壁等で覆われていない場合に、監視領域Mに無限遠点が含まれることがあり、入庫領域Riの外部を走行する車両等が誤って検出される虞がある。
【0102】
駐車場の管理システムには、所定のトリガー信号に基づいて領域設定信号を領域設定部Bに出力する領域設定信号出力部を備えている。領域設定信号出力部は、入庫領域Riに車両が停止したことを検知するセンサと、停車検知したセンサから出力されるトリガー信号に基づいて領域設定信号を領域設定部Bに出力する信号処理回路で構成することができる。
【0103】
例えば、測距部Aを当該センサとして兼用し、入庫領域に停車していた車両が駐車領域に収容される等して現在の監視不要領域に物体が検出されなくなる状態から基準領域に何らかの物体が一定時間継続して検出されたとき、好ましくは静止状態が検出されたときに領域設定信号出力部にトリガー信号を出力する信号処理回路を備えてもよい。測距部A以外の透過型または反射型の光電センサを設置して、光電センサの出力に基づいて上述と同様に構成してもよい。
【0104】
センサに代えて駐車場の管理者が入庫領域Riに車両が停止したことを検知して手動操作するスイッチの接点信号をトリガー信号として、当該接点信号に応答して領域設定信号を領域設定部Bに出力する信号処理回路で構成されてもよい。
【0105】
このような領域設定信号出力部によって、所定のトリガー信号に基づいて領域設定信号を領域設定演算部に出力する領域設定信号出力ステップが実行される。尚、領域設定信号出力部が物体検出装置Dに備わっていてもよい。
【0106】
領域設定信号出力部は、領域設定部Bに領域設定信号を出力した後、領域設定完了信号を検出するまでの間、少なくとも領域設定に要する時間より長い所定のインタバルで繰り返し領域設定信号を出力するように構成されていることが好ましい。このような構成は公知のタイマ回路と論理回路で実現できる。
【0107】
領域設定信号が入力されると(SA2,Y)、測距部Aを起動して監視領域の設定のための走査による方向及び距離データの出力を待つ(SA3)。この間、図4(b)で説明したように、測距部Aの走査機構A1の近傍に人等の障害物の存在が認められると(SA4,Y)、管理システムに近距離エラー信号を出力し(SA8)、この状態が解消されるのを待つ。
【0108】
測距部Aの走査機構A1の近傍に人等の障害物が存在していない場合に(SA4,N)、走査が所定回数(本実施形態では10回に設定しているが、この値に限るものではない)終了したか否かが判定され(SA5)、所定回数に満たないとステップSA3に戻り、同様の処理が繰り返される。所定回数の走査が終了すると領域設定処理を開始する(SA6)。
【0109】
ステップSA6の領域設定処理では、以下の基準に基づいて監視領域Mが設定される。10回の走査で得られた各方向の10個のデータに基づいて監視領域が設定される。10個のデータの全てがエラーデータである場合は、予め設定された基準領域のデータが採用される。10個のデータに含まれるエラーデータは無視する。10個のデータのうちの正常データの最小値(最も短い距離)を有効値にする。また正常データの値が基準領域の外にある場合は、基準領域のデータが採用される。10回の走査中に領域設定信号がオフからオンになると、再度10回の走査を行なう。
【0110】
このようにして、10回の走査で得られた各方向の有効値のうち基準領域のデータ以外のデータが監視不要領域に対応し、そのデータに対して既に説明した膨張処理が行なわれて監視不要領域が特定される。さらに監視不要領域に基づいて監視領域Mが設定され、領域記憶部23eに記憶され、さらに、駐車場の管理システムに準備完了を示す領域設定完了信号が出力される。尚、走査の繰り返し回数が10回に設定された例を説明したが、この回数は測定の精度・設置環境に応じて適宜増減してもよい。
【0111】
図11に示すように、物体判定部Cは、監視領域Mが設定されると(SB1)、測距部Aを起動して物体判定のための走査による方向及び距離データの出力を待つ(SB2)。記憶部23dに格納された方向及び距離データに基づいて監視領域Mに人を含む物体が存在するか否かが判断され、監視領域Mに物体が存在すると判定されると(SB3,Y)、オン状態の人体等検出信号を駐車場の管理システムに出力し(SB4)、監視領域Mに物体が存在しないと判定されると(SB3,N)、オフ状態の人体等検出信号を駐車場の管理システムに出力する(SB6)。
【0112】
駐車場の管理システムから監視終了信号が入力されるまでの間、ステップSB2からSB5の処理が繰り返され、監視終了信号が入力されると(SB5)、判定処理を終了する。尚、監視終了信号に代えて領域設定信号を兼用してもよい。つまり、領域設定部Bにオン状態の領域設定信号が入力されると領域設定処理が開始され、領域設定部Bから領域設定完了信号が出力された後に領域設定信号がオフされると、物体判定部Cが判定処理を終了するように構成してもよい。
【0113】
即ち、本発明による物体検出方法は、測距部Aにより実行され、空間に存在する物体までの距離を測定して出力する測距ステップと、領域設定演算部Bにより実行され、測距ステップからの出力に基づいて、予め設定された基準領域内に監視不要領域を設定し、基準領域から少なくとも監視不要領域を除く領域に監視領域を設定する領域設定ステップと、物体判定演算部Cにより実行され、領域設定ステップにより監視領域が設定された後に、測距ステップからの出力に基づいて監視領域に人体を含む物体が存在するか否かを判定する物体判定ステップとを含む。
【0114】
また、領域設定ステップは、領域設定演算部Bに領域設定信号が入力される度に実行され、物体判定ステップは、領域設定ステップにより監視領域が設定される度に実行される。そして、監視不要領域が変化する度に、領域設定演算部に領域設定信号が入力され、領域設定ステップが実行される。さらに、領域設定ステップは、測距ステップからの出力に基づいて測距部Aの走査機構の近傍に物体が存在しないと判定したときにのみ監視領域を設定する。
【0115】
物体検出部231に、測距部Aから出力され、記憶部23dに記憶された走査角度と距離データが真に検出すべき人等の物体であるか、微小な埃や虫等のノイズ物体であるかを判定する評価部を備え、評価部により真に検出すべき人等の物体であると評価されたデータに基づいて物体判定処理が行なわれるように構成することが好ましい。
【0116】
例えば、特定の走査角度方向でN走査回数(Nは2以上の整数)連続して監視領域M内の距離が算出されたときに、特定の走査角度方向に物体が存在すると判定し、N走査回数に満たない場合にはノイズと判定するように評価部を構成することができる。
【0117】
さらに、特定の走査角度方向に監視領域M内の距離が算出された場合に、その走査時に走査方向に沿って特定の走査角度方向と隣接する所定数の走査角度方向に同時に監視領域M内の距離が算出されたときに物体が存在すると判定し、所定数の走査角度方向に同時に監視領域M内の距離が算出されない場合にはノイズと判定するように評価部を構成することができる。
【0118】
上述した実施形態では、測距部Aが光源にレーザダイオードを用いTOF方式を採用した走査式測距装置で構成される例を説明したが、TOF方式に代えてAM方式を採用した走査式測距装置で構成されていてもよい。また、光源にLEDを採用してもよく、走査機構にポリゴンミラーやMEMSミラーを採用してもよい。さらには、三角測量の原理を用いて測距する機構で測距部Aを構成してもよい。
【0119】
上述した実施形態は、物体検出装置が駐車場の入庫領域に設置される構成を説明したが、本発明による物体検出装置は、監視領域を頻繁に異ならせる必要がある任意の設備に設置することができる。
【0120】
本発明による物体検出装置及び駐車場の管理システムの具体的構成、信号処理部の具体的な回路構成、並びに本発明による物体検出方法を実現するソフトウェアの具体的な手順等は、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計できることはいうまでもなく、本発明の技術的範囲が上述の例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0121】
1:車両
23:信号処理部
A:測距部
A1:走査機構
A2:測距演算部
B:領域設定部(領域設定演算部)
C:物体判定部(物体判定演算部)
D:物体検出装置
M:監視領域
Rb:基準領域
Ri:入庫領域
Rn:監視不要領域


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11