特許第5957649号(P5957649)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957649
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】薄型スピンドルモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 21/14 20060101AFI20160714BHJP
   H02K 3/26 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   H02K21/14 M
   H02K3/26 D
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-510267(P2010-510267)
(86)(22)【出願日】2008年5月9日
(65)【公表番号】特表2010-528581(P2010-528581A)
(43)【公表日】2010年8月19日
(86)【国際出願番号】SG2008000175
(87)【国際公開番号】WO2008147329
(87)【国際公開日】20081204
【審査請求日】2011年5月9日
【審判番号】不服2014-13103(P2014-13103/J1)
【審判請求日】2014年7月7日
(31)【優先権主張番号】200703782-3
(32)【優先日】2007年5月25日
(33)【優先権主張国】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】516134110
【氏名又は名称】マーヴェル インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】ビ チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン クアン
(72)【発明者】
【氏名】リン ソン
(72)【発明者】
【氏名】アウン ネイ リン トゥン
(72)【発明者】
【氏名】ピュー ラ ヌ
【合議体】
【審判長】 堀川 一郎
【審判官】 中川 真一
【審判官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−291214(JP,A)
【文献】 特開平4−4733(JP,A)
【文献】 実開平4−76137(JP,U)
【文献】 実開昭62−122470(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00 - 57/00
H02P 1/00 - 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルモータであって、
前記モータの回転軸線を包囲している環状領域に設けられた複数のステータ歯を有し、 前記回転軸線を包囲した状態で設けられた複数の巻線を備えた巻線層を有し、前記複数の巻線の各々が、前記回転軸線に平行な巻線軸線を有し、前記複数のステータ歯の各々にそれぞれ結合され、
半径方向に間隔を置いて位置決めされると共に前記環状領域と同一平面内に位置する磁石を備えたロータを有し、前記磁石は、前記磁石の半径方向に沿って磁束を生じさせるよう環状に分布して設けられた磁極を有し、
各ステータ歯は、前記磁石に向いた第1の端部を有し、前記第1の端部は、前記磁石の軸方向寸法に対応するよう前記回転軸線に平行な方向に沿って突き出されており、
各ステータ歯は、第1の層及び前記第1の層に積層された第2の層を有し、前記第1の層の端部分は、第1の軸方向に沿って突き出され、前記第2の層の端部分は、前記第1の軸方向とは逆の第2の方向に沿って突き出され、
各ステータ歯において、前記第1の層の反対側の端部分及び前記第2の層の反対側の端部分は前記第2の方向に沿って曲げられ、前記複数の巻線の一つを貫通し、
前記スピンドルモータは、各ステータ歯の前記第1の層の前記反対側の端部分及び各ステータ歯の前記第2の層の前記反対側の端部分に結合されたステータヨークを有し、
前記巻線層はプリント回路板の導電層で形成されている、
ことを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項2】
スピンドルモータであって、
前記モータの回転軸線を包囲している環状領域に設けられた複数のステータ歯を有し、 前記回転軸線を包囲した状態で設けられた複数の巻線を備えた巻線層を有し、前記複数の巻線の各々が、前記回転軸線に平行な巻線軸線を有し、前記複数のステータ歯の各々にそれぞれ結合されており、
半径方向に間隔を置いて位置決めされると共に前記環状領域と同一平面内に位置する磁石を備えたロータを有し、前記磁石は、前記磁石の半径方向に沿って磁束を生じさせるよう環状に分布して設けられた磁極を有し、
前記複数のステータ歯の各々が前記磁石に向いた第1の端部を有し、前記第1の端部は、前記回転軸線に平行な方向に沿って突き出されており、反対側の端部分が軸方向に沿って下方に曲げられ、前記複数の巻線の一つを貫通し、
前記スピンドルモータは、前記複数のステータ歯の前記反対側の端部分の各々に結合されたステータヨークを有し、
前記巻線層は、プリント回路板の導電層で形成されている、
ことを特徴とするスピンドルモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石型同期スピンドルモータに関する。詳細には、本発明は、データストレージシステムに用いられる薄型すなわち低プロフィールスピンドルモータに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石型同期モータ、例えば、1枚又は2枚以上のメディアディスクを支持すると共に回転させるハードドライブが、データストレージシステムに用いられている場合がある。ハードディスクドライブの用途は、コンピュータシステムから民生品、特に携帯型電子装置、例えば携帯型オーディオビジュアルプレイヤやデジタルビデオカメラ等に至るまで普及している中で、これら用途におけるハードディスクドライブは、物理的寸法に関してコンピュータシステム用のハードディスクドライブと比較して小型であることが要求されており、それ故、薄型且つ超小型のハードディスクドライブが、これらの要件を満たすよう開発されている。一方、ストレージ容量(記憶容量)、データの正確さ及びデータアクセス速度に関する要件は、厳しいままである。ハードディスクドライブ設計者及び製造業者は、これら要件を満たすハードディスクドライブの開発においていつでも難題に直面している。
【0003】
物理的寸法、特にハードディスクドライブの厚さを一段と減少させる一方で、ハードディスクドライブの性能を維持し、さらに向上させる解決策を見出すうえで課題が生じている。ハードディスクドライブの厚さ減少を妨げる主要因のうちの1つは、スピンドルモータのステータ構造にあることが分かっている。
【0004】
現在、スピンドルモータは、構成上、ステータ歯に巻き付けられると共にスピンドルモータの半径方向に沿って差し向けられたステータ巻線を備えている。隣り合う巻線相互間の比較的広い空間は、巻線用工具類が使えて巻線ターンをステータ歯に巻き付けるようにするために保たれなければならない。巻線は又、モータドライブシステムに起因する要件を満たすためにより多くのターン又はターン数を少なくした太いワイヤを備えるよう設計されなければならない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、巻線ターンを増やし又は太いワイヤを用いると、その結果として、巻線端部の寸法が大きくなり、これは、スピンドルモータの厚さの減少に悪影響を及ぼすことになる。
【0006】
したがって、生産性を向上させ、モータの厚さを減少させる一方で、性能を維持し又はそれどころかこれを向上させることができる構造及び形態を備えた、ハードディスクドライブのメディアディスクを支持すると共に回転させるスピンドルモータが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ハードディスクドライブ用の低プロフィール永久磁石型同期スピンドルモータのためのステータ及び巻線の構造及び形態を提供する。
【0008】
一実施形態によれば、ステータ歯とロータ磁石が互いに対して半径方向に且つ同一平面内に配置されているスピンドルモータが提供される。例えばプリント回路板(PCB)の導電層又はワイヤボンデッド基板の配線層等で形成された巻線層が提供され、その導電層は、同一平面内又は2次元領域内にステータ巻線を形成し、このようなステータ巻線は、軸方向に差し向けられ、即ち、巻線の中心軸線は、スピンドルモータの回転軸線に平行である。
【0009】
別の実施形態によれば、ステータ歯が、モータの回転軸線を包囲している環状領域内に配置されたスピンドルモータが提供される。複数の巻線が提供され、各巻線は、複数のステータ歯の各々に結合される。各巻線は、回転軸線に平行に差し向けられたその巻線軸線を有する。スピンドルモータのロータは、半径方向に間隔を置いて位置決めされると共に環状領域と同一平明内に位置する磁石を有する。磁石は、磁石の半径方向に沿って磁束を生じさせるよう環状に分布して設けられた磁極を有する。
【0010】
別の実施形態によれば、積層ステータリングが、スピンドルモータ内に設けられる。積層ステータリングは、ステータヨークを形成する第1の層、第1の層に付着された誘電体基板及び誘電体基板上に設けられた導電層を有する。複数の巻線が、導電層によって形成されている。積層ステータリングは、複数のステータ歯を形成する第2の層を更に有する。ステータ歯の各々は、巻線の各々にそれぞれ結合され、各ステータ歯は、永久磁石リングを包囲する歯の面積を増大させる突出した縁部を備えている。
【0011】
本発明の実施形態は、2次元領域に軸方向に差し向けられたステータ巻線を提供する。ロータ磁石から半径方向に出る磁束通路又はループが形成され、半径方向に沿ってステータ歯によって案内され、軸方向に沿って巻線コアによって案内され、円周方向に沿ってステータヨークによって案内される。本発明の実施形態によって提供される解決策により、スピンドルモータは、モータ性能及び生産性が向上し、厚さが著しく減少したものとなることができる。
【0012】
本発明の他の観点及び利点は、本発明の技術的思想を例示的に示す添付の図面と関連して以下の詳細な説明を読むと明らかになろう。
【0013】
添付の図面を参照して本発明の上記観点及び利点並びに他の観点及び利点について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態としてのスピンドルモータの斜視図である。
図2図1の分解組立て部分斜視図である。
図3A図1の断面正面図である。
図3B図3Aの部分拡大図である。
図3C】本発明の別の実施形態としてのスピンドルモータの断面正面図である。
図4図1に示されているスピンドルモータのアーマチュア巻線を示す斜視図である。
図5図1に示されているスピンドルモータのステータヨークを示す斜視図である。
図6A図1に示されているスピンドルモータの巻線コアを示す斜視図である。
図6B図1に示されているスピンドルモータのステータ歯の斜視図であり、巻線コアがステータ歯上に形成され又は組み付けられている状態を示す図である。
図6C】スピンドルモータのステータヨークに連結された巻線コアを示す斜視図である。
図7図3Aの部分斜視図であり、磁束通路を示す図である。
図8】本発明の別の実施形態としてのスピンドルモータの部分斜視図である。
図9】本発明の別の実施形態としてのスピンドルモータの斜視図である。
図10図9の部分拡大断面図である。
図11A図9に示されているスピンドルモータの1つの例示の単一層アーマチュア巻線を示す平面図側斜視図である。
図11B図9に示されているスピンドルモータの1つの例示の単一層アーマチュア巻線を示す底面図側斜視図である。
図12A図9に示されているスピンドルモータのステータヨークを示す平面図側斜視図である。
図12B図9に示されているスピンドルモータのステータヨークを示す底面図側斜視図である。
図13図9に示されているスピンドルモータのステータ歯の外側層を示す斜視図である。
図14図9に示されているスピンドルモータのステータ歯の内側層を示す斜視図である。
図15図9の部分斜視図であり、磁束通路を示す図である。
図16】本発明の別の実施形態としてのスピンドルモータの歯のピン形態を示す部分断面図である。
図17】本発明の更に別の実施形態としてのスピンドルモータの歯のピン形態を示す部分断面図である。
図18】本発明の更に別の実施形態としてのスピンドルモータのステータヨークのピン形態を示す部分断面図である。
図19】本発明の別の実施形態としてのスピンドルモータの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図2図3A及び図3Bに示されているように、本発明の一実施形態としてのスピンドルモータ100は、ステータ110と全体としてリング状の永久磁石220を備えたロータ210とを有し、永久磁石220は、ステータ110の内側に半径方向に配置され、スピンドルモータ100の回転軸線102回りにステータ110に対して回転可能である。永久磁石220は、半径方向に沿って、即ち、回転軸線102に垂直な方向に沿って(図2)磁束232,234を発生させたり受け取ったりするよう構成されたN磁極とS磁極222,224を有している。
【0016】
ステータ110は、第1の組をなす巻線120を有し、各巻線は、その巻線軸線122が回転軸線102に平行な状態で(図3A及び図3B)差し向けられている。ステータ110は、複数のステータ歯140とステータ歯140の下に位置決めされたステータヨーク150とを更に有している。複数の巻線120は、組をなすステータ歯とステータヨーク150との間に位置決めされている。複数の巻線コア160が、各々、対応の巻線120の中央中空部分を貫通した状態で対応のステータ歯140とステータヨーク150との間に配置されている。各ステータ歯140は、永久磁石220に隣接して位置する第1の端部分142を有し、これらの間には、環状隙間340が形成されている。端部分142は、回転軸線102に平行な方向に沿って突き出されているのが良く、永久磁石220の厚さに対応する高さを備えている。
【0017】
この実施形態では、ステータ歯140の各々は、第1の層144及び第2の層148で形成されている。第1及び第2の層144,148は、例えば、打ち抜きによって製作され、ステータ歯140を形成するよう互いに組み立てられる。第1の層144の端部分142は、上方に曲げられ又は突き出されるのが良く、第2の層148の端部分146は、下方に曲げられ又は突き出されるのが良い。曲げられた又は突き出された端部分142,146は、永久磁石220の高さに対応するよう寸法決めされている。端部分142,146が永久磁石に向いた状態でステータ歯を形成する一利点は、永久磁石とステータ歯との間の有効磁気相互作用面積(領域)を端部分142,146が設けられていないステータ歯により形成される磁気相互作用面積(領域)と比較して増大させる(広くする)ことができるということにある。したがって、磁気/機械エネルギー変換能力及びモータトルク発生能力を向上させることができる。一方、ステータ歯の主要面積部又は主要領域は、薄いままであり、これは、スピンドルモータの全厚の減少に寄与する。
【0018】
この実施形態では、巻線120は、プリント回路板(PCB)の導電性回路により形成されるのが良い。図3Bに示されているように、プリント回路版は、誘電体基板(単に「誘電体」と呼ばれる場合がある)126に積層された導電層124を有している。巻線120は、PCB製作技術により導電層124からの螺旋回路で形成される。所望の巻線120が、導電層124上にいったん形成されると、PCBを接着、はんだ付け、プレス加工等によりステータ歯140とステータヨーク150との間にサンドイッチするのが良く、それにより図3Bに示されているように積層ステータリング構造体が形成される。変形実施形態では、導電性ワイヤを基板上にボンディングすることにより巻線120を形成しても良い。
【0019】
別の実施形態によれば、図3Cに示されているように、第2の組をなす巻線127がPCBの第2の導電層128で形成されるのが良い。第2の組をなす巻線127は、第1の組をなす巻線120に電気的に結合されるのが良い。スピンドルモータの要件に応じて、多層PCBは、より多くの組をなす巻線を形成するよう3つ又は4つ以上の導電層を備えることができる。巻線の各組は、モータの所用の多相アーマチュア巻線を形成するよう直列に又は並列に別の組と接続するのが良い。
【0020】
本発明の実施形態に従って構成されたスピンドルモータは、平べったく且つ軸方向に差し向けられたステータの巻線を形成するのが有利である。従来型スピンドルモータ巻線を製作する際に生じる製造上の問題及び制約は、首尾良く解決される。巻線は、実質的に2次元領域である巻線平面内に形成されるので、巻線の厚さは非常に減少する。PCBからの巻線の製作により、生産性が大幅に向上すると共に巻線の形状及びパターンの設計上の自由度が増大した。
【0021】
例えば、図4に示されているように1つ又は2つ以上のコア領域を包囲することにより巻線を形成しても良い。また、設計上の要件に応じて巻線の2つ以上の層をステータ組立体中に形成しても良く、これは、多層PCB製作技術によって都合良く実施できる。
【0022】
追加の利点としては、PCBをステータ歯及びステータヨークと共に積層し又はくっつけることができるので、ステータ組立体の強度と剛性の両方が増大し、これらは又、スピンドルモータの全体的性能の向上に寄与する場合があるということにある。
【0023】
図5に示されているように、ステータヨーク150は、巻線コア160に結合可能な開口部、例えば穴又はスロット152が設けられた透磁性材料の単一片で形成されている。
【0024】
図6A図6Bは、図1に示されている実施形態に採用可能な巻線コア構造体を示している。巻線コア160は、図6Aに示されているように、円筒形又は円形のセグメント状であり、別々に形成されるのが良い。巻線コア160を鍛造、打ち抜き、機械加工又は金属射出成形により製作し、組み立てて対応のステータ歯140にするのが良い。図6Aに示されている実施形態例では、製作の完了時に、巻線コア160をステータ歯(図示せず)の状態に組み立てるのが良い。変形例として、ステータ歯140の各々及び対応の巻線コアは、例えば射出成形又はダイカストにより単一部品(図6B)で形成されても良い。変形実施形態では、巻線コア160を図6Cに示されているようにステータヨーク150一体に形成し又はこれに連結しても良い。
【0025】
ステータ歯140、巻線コア160及びステータヨーク150は、フェライト系磁性材料で作られ、永久磁石210によって生じた磁束がステータ巻線を通ってこれと相互作用することができるようにする磁束通路を形成している。
【0026】
互いに隣接したステータ歯140a,140bに沿う磁束通路は、図7に概略的な矢印によって指示された通路の道筋に続き、図示のように説明のための一例として取り上げられている。
【0027】
永久磁石220のN極から生じた磁束は、半径方向に沿って環状隙間340を横切って第1のステータ歯140aに入る。磁束は第1の巻線コア160aによって案内されて、軸方向に沿って下方に向きを変え、そして第1の巻線コア160aを通過する。この磁束は、ステータヨーク150に達すると、円周方向に沿って向きを変え、更に隣接の巻線コア160bに達すると、軸方向に沿って上方に向きを変える。次に、磁束は、隣接のステータ歯140bによって案内され、半径方向に向きを変えて永久磁石220のS極に至る。
【0028】
上述の説明に従って構成されたステータ組立体では、本発明の実施形態としてのスピンドルモータは、従来型スピンドルモータよりも低プロフィール、即ち薄型のステータの実現を達成した。ステータの巻線が軸方向に差し向けられた状態で、従来型スピンドルモータに必要な製作用通路のためにステータ巻線相互間に保たれる間隔は首尾良く不要になる。これにより、スピンドルモータにおいて巻線密度及び巻線空間利用性を向上させることができ、それによりスピンドルモータの出力を増大させることができる。
【0029】
図8に示されているように、本発明の別の実施形態としてのスピンドルモータ400は、ステータ410及びロータ510を有している。ステータ歯、軸方向に差し向けられた巻線及びステータヨークについて同様な構造が提供され、これらの構造により従来型スピンドルモータの厚さよりも厚さが非常に減少したスピンドルモータの実現を可能にする。この実施形態は、ロータ510がリング状の永久磁石620を有し、ステータ410が永久磁石620の内側に設けられた複数のステータ歯440を有している点において、図1に示されている実施形態とは異なっている。このように、ロータが外側に配置されたスピンドルモータを形成することができる。
【0030】
図9及び図10に示されているように、本発明の別の実施形態としてのスピンドルモータ1100は、ステータ1110及び全体としてリング状の永久磁石1220を備えたロータ1210を有し、このような永久磁石は、ステータ1110の内部に半径方向に配置されると共にスピンドルモータ1100の回転軸線1100回りにステータ1110に対して回転可能である。
【0031】
この実施形態は、円筒形の形をしていて別々に形成され対応のステータ歯に組み付けられる巻線コアを提供する代わりに、ステータ歯1140の各々の外側端部分が軸方向に沿って下方に曲げられ、巻線1120を貫通する巻線コア部分1162を形成している点において、図1に示されている実施形態とは異なっている。この実施形態の利点は、巻線コアを例えば打ち抜きによりステータ部品1144,1148の形成中、一製造プロセスステップで形成できるということにある。
【0032】
この実施形態では、図11A図11B図12A及び図12Bに詳細に示されているように、ステータ歯1140の各々は、外側層1140a及び内側層1140bで形成されている。外側及び内側層1140a,1140bは、例えば打ち抜きにより製作して互いに組み立てると、ステータ歯1140を形成することができる。外側層1140aの端部分1142aは、上方に曲げられ又は突き出されるのが良く、内側層1140bの端部分1142bは、下方に曲げられ又は突き出されるのが良い。曲げられた又は突き出された端部分1142a,1142bは、永久磁石1220の高さに対応するよう寸法決めされている。端部分1142a,1142bが永久磁石に向いた状態でステータ歯を形成した場合の一利点は、曲げられた又は突き出された端部分1142a,1142bが設けられていないステータ歯により形成される磁気相互作用面積(領域)と比較して、永久磁石とステータ歯との間の有効磁気相互作用面積(領域)を増大させる(広くする)ことができるということにある。したがって、磁気/機械エネルギー変換能力及びモータトルク発生能力を向上させることができる。一方、ステータ歯の主要面積部又は主要領域は、薄いままであり、これは、ステータ歯の本体領域のところのスピンドルモータの全厚の減少に寄与する。曲げられた又は突き出された端部分1144,1148は、巻線コア1162を形成している。
【0033】
図13に示されているように、巻線1120は、1つ又は2つ以上の巻線コア穴1127を包囲することにより形成できる。また、設計上の要件に応じて巻線の2つ以上の層をステータ組立体中に形成しても良く、これは、多層PCB製作技術によって都合良く実施できる。
【0034】
追加の利点としては、PCBをステータ歯及びステータヨークと共に積層し又はくっつけることができるので、ステータ組立体の強度と剛性の両方が増大し、これらは又、スピンドルモータの全体的性能の向上に寄与する場合があるということにある。
【0035】
図14に示されているように、ステータヨーク1150は、各々が巻線コア162に結合可能な開口部、例えば穴又はスロット1152が設けられた透磁性材料の単一片で形成されている。
【0036】
ステータ歯1140及びステータヨーク1150は、フェライト系磁性材料で作られ、永久磁石1220によって生じた磁束がステータ巻線を通ってこれと相互作用することができるようにする磁束通路を形成している。
【0037】
互いに隣接したステータ歯1140a,1140bに沿う磁束通路は、図15に矢印によって指示された通路の道筋に続き、図示のように説明のための一例として取り上げられている。
【0038】
図15に線1341によって示された永久磁石1220のN極から生じた磁束は、半径方向に沿って環状隙間1340を横切り、曲げられ又は突き出されている縁部分1161aを経て第1のステータ歯1161に入る。磁束は第1の歯本体1161bによって案内されて、軸方向に沿って下方に向きを変え、そして第1の歯ピン1160c(これは巻線コアとして働く)を通過する。この磁束は、ステータヨーク1150に達すると、円周方向に沿って向きを変え、更に、隣接の歯ピン1162c(これ又、巻線コアとして働く)に達すると、軸方向に沿って上方に向きを変える。次に、磁束は、隣接のステータ歯本体1162b及び縁部分1162aによって案内され、半径方向に向きを変えて永久磁石1220のS極に至る。
【0039】
上述の説明に従って構成されたステータ組立体では、本発明の実施形態としてのスピンドルモータは、従来型スピンドルモータよりも低プロフィール、即ち薄型のステータの実現を達成した。ステータの巻線が軸方向に差し向けられた状態で、従来型スピンドルモータに必要な製作用通路のためにステータ巻線相互間に保たれる間隔は首尾良く不要になる。これにより、巻線密度及び巻線空間利用性を向上させることができる。
【0040】
2つの層を備えたステータ歯を提供すると、永久磁石リングの中心を巻線層よりも高い位置に構成することができる。また、2つの層は、上方に曲げられた又は突き出された縁部1142a及び下方に曲げられ又は突き出された縁部1142bを形成することができ、これら縁部は、磁石を包囲する歯の表面積を増大させることができる。二層ステータ歯構造を用いた場合の別の利点は、ステータ歯本体中に生じる渦電流を大幅に減少させることができ、しかもコア損失を大幅に減少させることができるということにある。
【0041】
図16は、図1又は図9に示された実施形態において採用可能なヨーク構造体を示している。ヨークは、1組の突出部1153aを有し、これら突出部の各々は対応の穴1127内に位置決めされるのが良い。突出部1153aは、内側ステータ歯ピン1144及び外側ステータ歯ピン1148と一緒になって、磁束を通過させることができる巻線コアを形成する。突出部1153aは、ヨーク1150とステータ歯1140との相互接触面積を増大させることができ、従って、磁束は、ステータ歯1140を通ってトーク1150に至るのが容易になる。突出部1153aはまた、ステータの機械的強度を増大させることができる。
【0042】
図17は、図1又は図9に示された実施形態において採用可能な別のヨーク構造体を示している。ヨーク1150は、第1の組をなす突出部1153a及び第2の組をなす突出部1153bを有し、これらは、1組の突出部対を形成している。各突出部対は、穴1127内に位置決めされるのが良い。突出部対1153a,1153bは、内側ステータ歯ピン1144及び外側ステータ歯ピン1148と一緒になって、磁束を通過させることができる巻線コアを形成する。これら突出部対は、ヨーク1150とステータ歯1140との相互接触面積を増大させることができ、従って、磁束は、ステータ歯1140を通ってトーク1150に至るのが容易になる。突出部1153a,1153bは又、ステータの機械的強度を増大させることができる。
【0043】
図18は、図1又は図9に示された実施形態において採用可能な別のヨーク構造体を示している。ヨーク1150は、1組の突出部1153aを有し、これら突出部の各々は、対応の穴1127を通って位置決めされ、対応のステータ歯1140に直接結合可能である。突出部1153aは、今や、磁束を通過させることができる巻線コアを形成している。このヨーク構造体によれば、ステータ歯1140のうちいくつか又は全ては、穴1127内に位置決め可能な曲げられた状態又は突き出された状態の端部を備える必要がないことは理解されよう。
【0044】
図19に示されているように、本発明の別の実施形態としてのスピンドルモータ1400は、ロータヨーク1410及び永久磁石1420を有している。ステータ歯、軸方向に差し向けられた巻線及びステータヨークについて同様な構造が提供され、これらの構造により従来型スピンドルモータの厚さよりも厚さが激減したスピンドルモータの実現を可能にする。この実施形態は、複数の歯1440が永久磁石1420の内側に配置されている点において、図9に示されている実施形態とは異なっている。ロータが外側に配置されたスピンドルモータを形成することができる。
【0045】
本発明の実施形態を添付の図面と関連して図示すると共に上述の詳細な説明において説明したが、本発明は、開示した実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神から逸脱することなく、多くの再構成、改造、変形及び置換を行うことができることは理解されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19