特許第5957715号(P5957715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957715
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】配線用遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/06 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
   H01H73/06 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-12986(P2012-12986)
(22)【出願日】2012年1月25日
(65)【公開番号】特開2013-152847(P2013-152847A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】岡村 浩之
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−083555(JP,A)
【文献】 実開昭61−113359(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接触子が取付固定された中間ケースと、この中間ケースを覆う左右のケースとを備えた配線用遮断器において、
先端を中間ケースより浮き上がらせて形成した固定接触子とその近傍の中間ケースとの間の空間内に、アークガスから中間ケースを保護する中間ケース保護部材を、中間ケースから分離させて設けたことを特徴とする配線用遮断器。
【請求項2】
前記中間ケース保護部材が、左右のケースの内面に突設されたものであることを特徴とする請求項1記載の配線用遮断器。
【請求項3】
前記中間ケース保護部材が固定接触子の下側を覆う形状であることを特徴とする請求項2記載の配線用遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡遮断時に発生するアークガスによる中間ケースの絶縁劣化を防止した配線用遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配線用遮断器は、回路に短絡電流などの大電流が流れたことを検出すると接点を開放して電流を遮断する機能を有する機器であるが、接点開放時に固定接点と可動接点との間にアーク放電が生じ、アークガスが発生することがある。発生したアークガスは高温で固定接点と可動接点との間の空間に充満し、絶縁物で囲まれた空間から排気孔の方向に移動する。このためアークガスが固定接触子を固定取付した絶縁部の絶縁劣化を招く。
【0003】
そこで特許文献1に示すように、配線用遮断器の内部に消弧装置を組み込んで発生したアークを消滅させたり、配線用遮断器を構成する絶縁物をアークから保護する保護部材を設けたりすることが行われている。
【0004】
しかし、アークの発生時には接点部分が非常に高温になるため、消弧装置を設けて発生したアークを消滅させても、固定接点を支持している中間ケースに絶縁劣化が生ずるおそれがあった。
【0005】
また、固定接点の周囲に別の保護部材を組み込む場合には部品点数が増加し、組み立ての工数も増加するため、コストアップにつながるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−297215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の主な目的は上記した従来の問題点を解決し、固定接点の周辺の中間ケースをアークガスから保護して絶縁劣化を防止することができる配線用遮断器を提供することである。また本発明の他の目的は、部品点数を増加させることなく、中間ケースの絶縁劣化を防止できる配線用遮断器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、固定接触子が取付固定された中間ケースと、この中間ケースを覆う左右のケースとを備えた配線用遮断器において、先端を中間ケースより浮き上がらせて形成した固定接触子とその近傍の中間ケースとの間の空間内に、アークガスから中間ケースを保護する中間ケース保護部材を、中間ケースから分離させて設けたことを特徴とするものである。
【0009】
なお、前記中間ケース保護部材が、左右のケースの内面に突設されたものであることが好ましく、前記中間ケース保護部材が固定接触子の下側を覆う形状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の配線用遮断器は、固定接触子とその近傍の中間ケースとの間の空間内に、アークガスから中間ケースを保護する中間ケース保護部材を、中間ケースから分離させて設けたものであるから、固定接触子と中間ケースとの沿面距離及び空間距離を長くすることができ、アークが中間ケースの表面に沿って移動することを遮断できる。
【0011】
また中間ケース保護部材は中間ケースから分離させてあるので中間ケース保護部材を経由してアークが連続することもなく、中間ケースの絶縁劣化を防止することができる。さらに請求項2のように中間ケース保護部材を左右のケースの内面に突設した構造とすれば、部品点数の増加や組み立て工数の増加もない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の配線用遮断器の分解斜視図である。
図2】左ケースを開いた状態の斜視図である。
図3】要部の側面図である。
図4】中間ケース保護部材の形状を示す左右のケースの斜視図である。
図5】中間ケース保護部材と左右のケースを省略した要部の斜視図である。
図6】中間ケース保護部材と左右のケースと固定接触子を省略した要部の斜視図である。
図7】本発明におけるアークガスの伝わり方を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を示す。
図1は本発明の配線用遮断器の分解斜視図であり、この図に示すように、本発明の配線用遮断器は中間ケース1と、左右のケース2により外郭を形成し、その内部に開閉機構部などを組み込んだ構造である。左右のケース2はビス3によって相互に固定される。なおこれらの中間ケース1と左右のケース2はともに、絶縁性の樹脂により成形されたものである。
【0014】
開閉機構部はバイメタル4、トリガレバー5、ハンドル6、クロスバー7等からなり、過電流を検出したときに可動接触子8を固定接触子9から上昇させ、可動接点10を固定接点11から引き離して回路を遮断することは従来と同様である。なお、本実施形態の配線用遮断器はプラグイン型であるため、電源側には複数のプラグ部12が設けられ、図示しない母線バーにプラグイン接続される構造となっている。
【0015】
図2図3に示すように、固定接触子9の先端部上面には固定接点11が形成されており、その上方位置に可動接点10がある。固定接触子9は中間ケース1の底部上面に固定されているが、図3に示すように固定接触子9の先端は中間ケース1よりも突出し、中間ケース1の底部上面から浮き上がった位置にある。なお図5図6に示すように固定接触子9の固定接点11を保持する中間ケース1に一体に形成された固定接点保持部15を有しており、固定接点11の先端を浮かせるように形成している。
【0016】
図2図4に示されるように、左右のケース2の内面には中間ケース1の中央隔壁13に向かって中間ケース保護部材14が水平に突設されている。この実施形態の中間ケース保護部材14は図3図4に示されるように、上下の水平面間を垂直壁で連結した略クランク状の断面形状を備えたもので、左右のケース2を中間ケース1に組み付けた際に、固定接触子9とその近傍の中間ケース1との間の空間内に挿入される構造である。またこの中間ケース保護部材14は、中間ケース1から分離した位置において上記空間内に挿入される。なお、左右のケース2をビス3によって相互に固定したとき、中間ケース保護部材14の先端面は中間ケース1の中央隔壁13に当接するようになっている。
【0017】
中間ケース保護部材14は、大電流遮断時に固定接点11と可動接点10との間で発生するアークガスから中間ケース1を保護するための部材であり、この実施形態では中間ケース保護部材14の下側の水平面と垂直壁とによって固定接触子9の先端部下側を覆うようになっている。これによって固定接点11から下側の中間ケース1にアークが流れることを防止している。
【0018】
このほか、図7に示すように固定接点11の近傍の中間ケース1には複数の凹凸部16をリブ状に形成し、沿面距離を長くしている。これらの凹凸部16には、大電流遮断時によるガスに対して固定接点11付近を補強する効果もある。
【0019】
次に本発明の作用効果を説明する。
本発明の中間ケース保護部材14を持たない通常の配線用遮断器では、大電流遮断時に固定接点11と可動接点10との間で発生するアークはその近傍の絶縁材の表面に沿って流れようとする。しかし本発明の配線用遮断器は、固定接触子9とその近傍の中間ケース1との間の空間内に左右ケース2の内面より形成した中間ケース保護部材14を中間ケース1から分離させて設けてあるので、中間ケース保護部材14と中間ケース1とは直接接触していないので、固定接触子9と中間ケース1との間が中間ケース保護部材14を介してアークが連続することもない。直接接触していると、中間ケース保護部材14に沿って中間ケース1にアークが移動することにより中間ケース1の絶縁が劣化する問題があるので、中間ケース保護部材14が固定接触子9及び中間ケース1と分離させて形成するものである。また、固定接触子9の側方には凹凸部16を形成しているため、沿面距離が図7に示すように長くなる。
【0020】
さらに固定接触子9とその近傍の中間ケース1との間の空間距離も、それらの間に存在する中間ケース保護部材14によって長くなる。このように中間ケース保護部材14によって沿面距離とともに空間距離も長くなるので、絶縁物で囲まれた空間から排気孔の方向に移動するアークガスにより中間ケース1の表面の絶縁劣化を防止することができる。
【0021】
上記したように、この実施形態では中間ケース保護部材14を断面が略クランク状のものとしたが、可動接触子9の動きと干渉しない程度に垂直部などを形成し、空間距離をより長くすることも可能である。
【0022】
さらにこの中間ケース保護部材14は左右のケース2の内面に突設されたものであるため、中間ケース1に対して左右のケース2をビス3で組み付けるだけでよく、別部品を必要としないので、組み立てが簡単であるうえ、部品点数が増加することもなく、コストアップを抑制することができる。
【0023】
以上に説明したように、本発明によれば、部品点数を増加させることなく、固定接点11の周辺の中間ケース1をアークガスから保護して絶縁劣化を防止することができる。このため中間ケース1の絶縁性の劣化に伴うトラブルを、低コストで回避することができる利点がある。
【符号の説明】
【0024】
1 中間ケース
2 左右のケース
3 ビス
4 バイメタル
5 トリガレバー
6 ハンドル
7 クロスバー
8 可動接触子
9 固定接触子
10 可動接点
11 固定接点
12 プラグ部
13 中央隔壁
14 中間ケース保護部材
15 固定接点保持部
16 凹凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7