特許第5957735号(P5957735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957735
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】コンバインの刈取部昇降用油圧回路
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/04 20060101AFI20160714BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20160714BHJP
   A01D 69/03 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   F15B11/04 G
   F15B11/04 J
   F15B11/08 B
   A01D69/03
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-145655(P2012-145655)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-9728(P2014-9728A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】兼述 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 稔
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−261266(JP,A)
【文献】 特開2011−102608(JP,A)
【文献】 特開昭54−065977(JP,A)
【文献】 特開2002−021805(JP,A)
【文献】 高橋徹,油圧の基礎と応用,日本,東京電機大学出版局,2004年 3月20日,第1版4刷,第109頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/04
F15B 11/08
A01D 69/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバインの刈取部を昇降させる油圧シリンダーを、オイルタンクから油圧ポンプを介して送られる作動油によって駆動するための油圧回路であって、
パイロット圧を利用して前記油圧シリンダーから作動油の逆流を許容するパイロット操作型チェック弁と、
給圧一次側ポートと油圧シリンダー作動油路用二次側ポートとを開通させる第1の位置と、前記給圧一次側ポートとパイロット圧作動油路用二次側ポートとを開通させるとともに前記油圧シリンダー作動油路用二次側ポートとタンクポートとを開通させる第2の位置と、前記給圧一次側ポートおよび前記油圧シリンダー作動油路用二次側ポートを閉じる第3の位置と、に切り換え可能な第1の切換弁と、
前記第1の切換弁と並列に接続され、前記油圧ポンプから前記油圧シリンダーへ供給される作動油の流量を制限するための第1の絞りと、
前記第1の絞りと直列に接続され、前記第1の切換弁が前記第2の位置にあるときに、前記第1の絞りを通る作動油を規制して前記パイロット操作型チェック弁のパイロット圧を確保するための抵抗弁と、
前記パイロット操作型チェック弁を逆流してドレンされる作動油の流量を制限するための第2の絞りと、
前記第2の絞りより小さい流路断面積を備え、ドレンされる作動油の流量を制限するための第3の絞りと、
ドレンされる作動油の油路を、前記第3の絞りを通じてドレンされる作動油の油路に選択的に切換可能な第2の切換弁と、
を備え、
前記抵抗弁の設定圧は、前記パイロット操作型チェック弁のパイロット圧よりも大きい、油圧回路。
【請求項2】
前記パイロット操作型チェック弁は、チェック弁本体と、該チェック弁本体が離座可能なシートと、前記チェック弁本体を前記シートに押圧付勢するバネと、前記チェック弁本体と前記シートを介して対向して摺動自在に配置されたパイロットピストンと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の油圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの刈取部を昇降させるための油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインは、一般に、機体前部に昇降自在の刈取部を装備している。刈取部は、例えば、刈取高さを設定する際には低速で昇降させ、作業終了後又は作業開始前には高速で昇降させたいという要望がある。そのため、刈取部を昇降させる油圧シリンダーを変速可能とする油圧回路が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この特許文献1の油圧回路は、刈取部を下降させる際には、並列に接続した流量の異なる電磁式開閉弁を選択操作して油圧シリンダーから排出される作動油の流量を制御する一方、刈取部を上昇させる際には、高速上昇時はポンプからの作動油の全流量を油圧シリンダーに供給し、低速上昇時は、前記電磁式開閉弁の少なくとも一方から作動油の一部を逃すブリードオフ回路に切り換えて、油圧シリンダーに供給する作動油の流量を制御している。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の油圧回路は、刈取部の低速上昇させるためにいわゆるブリードオフ回路によって油圧シリンダーを制御しているため、刈取部にかかる負荷が大きくなると、それに応じて作動油の圧力が上昇し、逃げ流量が増加する結果、上昇流量が大幅に下落し、上昇速度が大幅に低下する。
【0005】
また、上記油圧回路では、低速上昇時に油圧シリンダーからドレンされる作動油は、流量を制限する電磁式開閉弁を通過する際の摩擦により温度が上昇する。作動油の粘度は温度が上昇するほど低くなるため、温度が上昇するほど作動油の粘性抵抗が減少し、作動油が電磁開閉弁を通過しやすくなる。一方、刈取部に負荷がかかると作動油の圧力も上昇するため、温度上昇した状態で刈取部に負荷がかかると、負荷が増すほど、電磁式開閉弁の油路を通過しやすくなり、その結果、刈取部に負荷がかかるほど、作動油の逃げ流量が増して油圧シリンダーに供給される流量が減るため、刈取部の上昇速度が遅くなり、刈取部にかかる負荷による上昇速度のバラツキが大きい。
【0006】
また、アイドリング時等でエンジンが低速回転のとき、刈取部を低速上昇させようとしても、ブリードオフ回路では、油圧ポンプからの吐出流量が少ないため、逃げ流量を上回る流量が確保できず、低速上昇させることができない。
【0007】
さらに、流量の異なる2つの電磁開閉弁を選択して、刈取部の昇降速度を変更する構成であり、低速上昇用と低速下降用の絞りを共通で用いるため、コンバイン本機へのマッチングが困難な場合がある。
【0008】
そこで、上記問題を解決するため、供給油路に設けた開閉可能な切換弁と並列に供給油量制限用絞りを接続し、低速上昇時には、供給油路に設けた切換弁を閉に切り換えることで、油圧シリンダーに供給される作動油を供給油量供制限用絞りによって制御されるメーターイン回路に切り換えることを可能にした油圧回路が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−113603号公報
【特許文献2】特許第4994296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献2に開示された油圧回路によれば、作動油の逃げ流量による刈取部の上昇速度変動が抑制されるとともに、エンジンの低速回転時でも低速上昇が可能となるという優れた効果を発揮し得るが、回路構成によっては、特にアイドリング時等で作動油流量が少なく油温が高い場合等に、刈取部を高速で下降させる際に、高速下降操作開始時から実際に刈取部の下降が始まる迄に若干のタイムラグがあった。
【0011】
そこで、本発明は、上記特許文献2に開示された油圧回路を更に改良し、刈取部を高速で下降させる際に生じるタイムラグを短縮することができるコンバインの刈取部昇降用油圧回路を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等による鋭意研究の結果、刈取部を高速で下降させる際に生じるタイムラグは、刈取部を高速で下降させる際に、油圧ポンプからの作動油が、低速上昇用に設けた供給油量制限用絞り(第1の絞り)を通ってドレンされる経路が構成されることが原因であることを突き止めた。
【0013】
そこで、上記目的を達成するため、本発明に係るコンバインの刈取部昇降用油圧回路は、コンバインの刈取部を昇降させる油圧シリンダーを、オイルタンクから油圧ポンプを介して送られる作動油によって駆動するための油圧回路であって、パイロット圧を利用して前記油圧シリンダーから作動油の逆流を許容するパイロット操作型チェック弁と、給圧一次側ポートと油圧シリンダー作動油路用二次側ポートとを開通させる第1の位置と前記給圧一次側ポートとパイロット圧作動油路用二次側ポートとを開通させるとともに前記油圧シリンダー作動油路用二次側ポートとタンクポートとを開通させる第2の位置と前記給圧一次側ポートおよび前記油圧シリンダー作動油路用二次側ポートを閉じる第3の位置とに切り換え可能な第1の切換弁と、前記第1の切換弁と並列に接続され、前記油圧ポンプから前記油圧シリンダーへ供給される作動油の流量を制限するための第1の絞りと、前記第1の絞りと直列に接続され、前記第1の切換弁が前記第2の位置にあるときに前記第1の絞りを通る作動油を規制して前記パイロット操作型チェック弁のパイロット圧を確保するための抵抗弁と、前記パイロット操作型チェック弁を逆流してドレンされる作動油の流量を制限するための第2の絞りと、前記第2の絞りより小さい流路断面積を備え、ドレンされる作動油の流量を制限するための第3の絞りと、ドレンされる作動油の油路を、前記第3の絞りを通じてドレンされる作動油の油路に選択的に切換可能な第2の切換弁と、を備えることを特徴とする。
【0014】
前記パイロット操作型チェック弁は、チェック弁本体と、該チェック弁本体が離座可能なシートと、前記チェック弁本体を前記シートに押圧付勢するバネと、前記チェック弁本体と前記シートを介して対向して摺動自在に配置されたパイロットピストンと、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、作動油流量を制限して刈取部の低速上昇させる第1の絞りと直列に抵抗弁を接続することにより、油圧ポンプからの作動油が第1の絞りを通ってドレンされる前に、パイロット操作型チェック弁をパイロット操作により開弁させるので、アイドリング時等で作動油の投入流量が少ない場合であっても、迅速にパイロット操作型チェック弁にパイロット圧を供給し、パイロット操作型チェック弁を開弁させるので、刈取部の高速下降操作時のタイムラグを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一般的なコンバインの要部を示す側面図である。
図2】本発明に係るコンバインの刈取部昇降用油圧回路の一実施形態を示す油圧回路図である。
図3図2の油圧回路が組み込まれた油圧回路ブロックユニットを示す要部断面図である。
図4】本発明に係るコンバインの刈取部昇降用油圧回路の変更態様を示す油圧回路図である。
図5】本発明に係るコンバインの刈取部昇降用油圧回路の他の変更態様を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るコンバインの刈取部昇降用油圧回路の実施形態について、以下に図1〜5を参照して説明する。なお、全図及び全実施例を通じて、同様の構成部分には同符号を付した。
【0018】
先ず、コンバインの概略構成について説明すると、一般的なコンバインは、図1に示すように、前部に刈取部1を備えており、刈取部1は、油圧シリンダー2の駆動によって上下昇降する。油圧シリンダー2は、単動式の油圧シリンダーが採用され得る。
【0019】
図2は、本発明に係るコンバインの刈取部昇降用油圧回路の一実施形態を示す油圧回路図である。
【0020】
油圧回路は、基本的に、オイルタンク3から油圧ポンプ4によって油圧シリンダー2のピストン室2aに作動油を供給し、ピストン2bを移動させて、ピストンロッド2cに連結している刈取部1(図1参照。以下同じ。)を上昇させる一方、ピストン室2aの作動油をオイルタンク3にドレンすることにより、ピストン2bを元の位置に戻し、刈取部1を下降させる。
【0021】
油圧ポンプ4と油圧シリンダー2との間には、油圧ポンプ4から順に、油路5a、電磁式切換弁6、油路5b、第1の切換弁7、油路5c、パイロット操作型チェック弁11、油路5d、スローリターン弁12、油路5eが接続されるとともに、油路5b及び油路5cにバイパス油路8が接続され、該バイパス油路8に介在され第1の切換弁7と並列接続された第1の絞り9と、バイパス油路8に第1の絞り9と直列に接続された抵抗弁10とが接続されている。
【0022】
抵抗弁10は、シーケンス弁の一種であり、一次側のバイパス油路8が設定圧を超えるとバイパス油路8を開通させる。パイロット操作型チェック弁11は、外部パイロットポートを備え、該外部パイロットポートに通じるパイロット圧作動油路11aに所定のパイロット圧の作動油が供給されるとパイロット操作型チェック弁11のチェック弁本体11b(図3参照)を開き、作動油の逆流を許容する。抵抗弁10の設定圧は、パイロット操作型チェック弁11のパイロット圧より大きく設定されている。スローリターン弁12は、チェック弁12aと、チェック弁12aに並列接続された第2の絞り12bが内蔵されている。
【0023】
なお、「絞り」の語は、流れの断面積を減少し、油路又は流体通路内に抵抗をもたせる機構のことであり、固定絞り、可変絞り、絞り弁、絞り切換弁などを含む。
【0024】
電磁式切換弁6は、図示例では、一対のソレノイド6a、6b及びバネ6c、6dを備える、オープンセンターの4ポート3位置切換弁である。電磁式切換弁6は、非励磁状態では、バネ6c、6dの釣り合いによって、図2に示す中立位置にある。中立位置では、油圧ポンプ4から油路5aに圧送される作動油は、油路13a、13b、14を通じてオイルタンク3へドレンされる。一方のソレノイド6aを励磁すると、油路5a、5bが開通する。他方のソレノイド6bを励磁すると、油路5aと油路15とが開通し、油圧ポンプ4から油路5aに圧送される作動油は、油路15を通じてコンバインに搭載されているグレンタンク昇降機やオーガー昇降部等の他の作業装備を駆動する油圧アクチュエータ(図示せず。)に供給される。
【0025】
第1の切換弁7は、図示例では、一対のソレノイド7a、7bと一対のバネ7c、7dを備える電磁弁であって、給圧一次側ポートP、タンクポートT、パイロット圧作動油路用二次側ポートA、油圧シリンダー作動油路用二次側ポートBを備える、ポンプクローズドセンターの4ポート3位置切換弁である。第1の切換弁7は、ソレノイド7a、7bが非励磁の時は、バネ7c、7dによって油路5b、5c間のポートPB間を閉じる中立位置(図2に示された位置)に付勢されている。一方のソレノイド7aを励磁することにより、第1の切換弁7は、前記中立位置から、油路5b、5c間をポートPからポートBへの油路を開通させる位置に切り換えられる。他方のソレノイド7bを励磁すると、ポートPからポートAへの油路を開通させるとともにポートBからポートTへの油路を開通させる位置に切り換えられる。
【0026】
油圧ポンプ4と電磁式切換弁6との間の油路5aに圧力制御弁としてのリリーフ弁16が接続されている。リリーフ弁16は、油圧ポンプ4から油路5aに圧送される作動油が設定圧を超えたときに、作動油の一部を油路17、14を通じてオイルタンク3へドレンし、油圧シリンダー2に供給されるべき作動油の圧力を一定に保つ。
【0027】
パイロット操作型チェック弁11の2次側ポート(油圧シリンダー2の側)に接続された油路5dに、オイルタンク3に接続された油路14が接続されている。油路14には、第3の絞り18と、第3の絞り18からオイルタンク3へドレンされる作動油の流通を開閉するための第2の切換弁19と、が介在されている。第3の絞り18は、スローリターン弁12に内蔵されている第2の絞り12bより小さい流路断面積を有している。第2の切換弁19は、電磁式の2位置切換弁であり、非励磁時にはバネ19aによって油路14を閉じるチェック弁の位置に付勢されており、ソレノイド19bを励磁することによって油路14を開通する位置に切り換えられる。
【0028】
パイロット操作型チェック弁11は、電磁式切換弁6のソレノイド6a及び第1の切換弁7のソレノイド7bが励磁されて油路5bからの作動油がパイロット圧作動油路11aを通じてパイロット圧として供給されると、内蔵するチェック弁を押し開いて、作動油の逆流を許容する。パイロット操作型チェック弁11を逆流した作動油は、油路5c、第1の切換弁7(ポートB,T)、油路20、油路14を通じてオイルタンク3にドレンされる。
【0029】
上記油圧回路は、油圧回路ブロックユニット21に内蔵されている。図3は、上記油圧回路が内蔵された油圧回路ブロックユニット21の要部を示す断面図である。
【0030】
図3に示すように、抵抗弁10は、油路8に段部で形成されたシート8aに棒状の弁体10aがスプリング10bによって押されて着座している。油路8の一次側に作動油が供給され、一次側圧力が設定圧を超えると弁体10aがシート8aから離座し、作動油が油路8を通って油路5cに流れる。弁体10aは、シート8aから離反すると、スプリング10bのバネ力によってシート8aからの離反距離が規制されている。
【0031】
図3を参照すれば、パイロット操作型チェック弁11は、チェック弁本体11bと、シート11cと、チェック弁本体11bをシート11cに押圧するバネ11dと、パイロットピストン11eとを備えている。パイロットピストン11eは、シート11cを介してチェック弁本体11bと対向配置されており、図3において左右に摺動自在に設置されている。パイロット圧作動油路11aに作動油が供給されると、パイロットピストン11eは、図3の右側に押されて、ロッド部11gがシート11cの油路孔を通って、バネ11dの押圧力に抗してチェック弁11bを図3の右側に押して開弁させる。
【0032】
図外の油圧ポンプから油路5bに作動油が供給されると、油路8と油路11aとに供給される。抵抗弁10は、油路8を通る作動油に抵抗を与えることにより、作動油の供給流量が少ない場合であっても、パイロット操作型チェック弁11の開弁に必要なパイロット圧を確保し、パイロットピストン11eがチェック弁本体11bをシート11cから離座させた後、抵抗弁10の弁体10aがシート8aから離座するように設計されている。
【0033】
上記構成を有する第1実施形態の油圧回路において、刈取部1を高速上昇させる場合は、電磁式切換弁6のソレノイド6aを励磁させて油路5a、5b間を開通させるとともに、第1の切換弁7のソレノイド7aを励磁させて、油路5b、5c間のポートPB間を開通させる。その結果、油圧ポンプ4から、油路5a、電磁式切換弁6、油路5b、第1の切換弁7(ポートP,B)、油路5c、パイロット操作型チェック弁11、油路5d、スローリターン弁12、及び油路5eを通じて油圧シリンダー2に作動油が供給される。なお、このとき、作動油は、所定圧に達することにより抵抗弁10を開いてバイパス油路8も通過するが、第1の絞り9によって流量が制限されているため、パイパス油路8を通過する作動油の流量は、第1の切換弁7を通過する作動油の流量より少ない。また、このとき、油路11aと油路20を接続するポートAT間も開通しており、図3を参照すれば、パイロットピストン11eが油路5cを通る作動油によって図3の左側に押され、パイロットピストン11eのパイロット圧作動油室11fの作動油が油路11a、油路20を通じてドレンされる。
【0034】
次に、刈取部1を低速上昇させる場合は、電磁式切換弁6のソレノイド6aを励磁して油路5a、5b間のポートを開通させておいて、第1の切換弁7を非励磁状態として中立位置とし、油路5b、5c間のポートPB間を閉じる。その結果、油圧ポンプ4から、油路5a、電磁式切換弁6、油路5b、バイパス油路8の第1の絞り9及び抵抗弁10、油路5c、パイロット操作型チェック弁11、油路5d、スローリターン弁12、油路5eを通じて油圧シリンダー2に作動油が供給される。この場合、リリーフ弁16からドレンされる量を除き、油圧ポンプ4からの作動油の全流量がバイパス油路8を介して第1の絞り9を通るので、油圧シリンダー2に供給される作動油の流量が第1の絞り9によって制限され、上記高速上昇の場合より刈取部1の上昇速度が低下する。
【0035】
刈取部1を高速下降させる場合は、電磁式切換弁6のソレノイド6aを励磁して油路5a、5b間を開通させる位置に切り換えておいて、第1の切換弁7のソレノイド7bを励磁させて、ポートPA間を開通させて油路5bとパイロット圧作動油路11aと連通させ、且つ、ポートBT間を開通させて油路5cと油路20とを連通させてオイルタンク3にドレンする位置に切り換える。その結果、パイロット圧作動油路11aに供給された作動油が、油路20を通じてパイロット圧として作用し、パイロット操作型チェック弁11内のチェック弁本体11bを開弁させ、作動油の逆流を許容する。このようにして、油圧シリンダー2のピストン室2a内の作動油が、油路5e、スローリターン弁12の第2の絞り12b、油路5d、パイロット操作型チェック弁11、油路5cを逆流し、第1の切換弁7(ポートB,T)から油路20,14を通じてオイルタンク3にドレンされる。オイルタンク3にドレンされる作動油は、第2の絞り12bによってドレン流量が制限される。
【0036】
刈取部1を低速下降させる場合は、第2の切換弁19のソレノイド19bを励磁させ、油路14を開通させる。その結果、油圧シリンダー2のピストン室2a内に蓄積された作動油は、油路5e、スローリターン弁12の第2の絞り12b、油路14に介在された第3の絞り18を通じて、オイルタンク3にドレンされる。第3の絞り18は、第2の絞り12bより流路断面積が小さいから、油路14を流れる流量は、第3の絞り18によって決定される。なお、電磁式切換弁6は中立位置にあり、このとき、油圧ポンプ4からの作動油は、油路13a、13b、14を通じてオイルタンク3にドレンされる。
【0037】
上記のように、刈取部1を低速上昇させる際には、第1の絞り9によって作動油の流量を制限することで、油圧シリンダー2のピストン移動速度を低下させている。従って、刈取部1の低速上昇時は、従来のブリードオフ回路とは異なり、メーターイン回路に切り換えて油圧シリンダー2を駆動することができるので、逃げ流量による変動が抑制され得る。なお、第1の絞り9によって作動油の流量が制限されても、第1の絞り9の一次側圧力はリリーフ弁16によって圧力調整されているため、第1の絞り9を通過する作動油の流量の変動は防がれる。
【0038】
油圧ポンプ4は、図示しないエンジンによって駆動しているため、例えばアイドリング時や湿田走行時等でエンジンが低速回転になると、油圧ポンプの吐出流量が低下する。エンジンが低速回転のとき、刈取部を低速上昇させようとしても、ブリードオフ回路では、油圧ポンプからの吐出流量が少ないため、逃げ流量を上回る流量が確保できず、低速上昇させることができないが、本発明では、エンジンが低速回転である場合、リリーフ弁16から作動油の一部がドレンされても、作動油のリリーフ圧は確保されているため、低速上昇が可能である。
【0039】
また、供給油量制限用の第1の絞り9を、ドレン流量制限用の第2、第3の絞り12b、18と別にしたので、コンバイン本機へのマッチングが容易となる。
【0040】
更に、上記のように刈取部1を高速下降させる場合、本発明の特徴部分である抵抗弁10を備えない従来の油圧回路構成では、油圧ポンプ4から油路5bに供給された作動油が、油路8及び第1の絞り9、油路5c、第1の切換弁7のポートBT、油路20、油路14を通ってオイルタンク3にドレンされる経路が形成されるため、特にエンジンアイドリング時等の作動油投入流量が少ない場合に、パイロット操作型チェック弁11を開弁するのにタイムラグが発生するが、本発明では、抵抗弁10を設けたことにより、パイロット操作型チェック弁11を開弁するのに必要なパイロット圧を直ちに発生させることができるので、タイムラグを減少させることができる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0042】
例えば、図4に示すように、上記第1実施形態のスローリターン弁12に代えて、油路20に第2の絞り12bを設けることもできるし、さらに、図5に示すように、油路20の第2の絞り12bのドレンタンク3側に第2の切換弁19Aを設け、第2の切換弁19Aと並列に第3の絞り18を接続する回路構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 刈取部
2 油圧シリンダー
3 オイルタンク
4 油圧ポンプ
7 第1の切換弁
9 第1の絞り
10 抵抗弁
11 パイロット操作型チェック弁
12b 第2の絞り
18 第3の絞り
19、19A 第2の切換弁
図1
図2
図3
図4
図5