(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の装置は、音量調整キーが操作されても音量を変更しないように内部制御を行うもの(ソフトウェア制御)である。仮に、装置本体等に設けられたハードウェアボリューム(ボリューム摘み)が変更された場合でも音量を変更しないようにすると、ハードウェアボリュームが示す音量設定値とソフトウェア制御による音量設定値が異なるものとなってしまい、ユーザに違和感を与える。特許文献1には、この状況における対処法が示されていない。
【0005】
そこで、本発明は、ハードウェアボリュームが示す音量設定値とソフトウェア制御による音量設定値が異なるものとなってしまう場合の対処法を示した音声出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の音声出力装置は、音量設定操作を受け付ける音量受付部と、前記音量受付部で受け付けた音量設定操作に応じて出力音声の音量を制御する音量制御部と、音量固定操作および音量固定解除操作を受け付ける音量固定操作受付部と、を備えている。
【0007】
そして、音量制御部は、前記音量固定操作を受け付けたとき、前記音量受付部で受け付けた音量設定操作に関わらず、前記音量固定操作時の音量設定値で出力音声の音量を維持し、前記音量固定解除操作を受け付けたとき、前記音量固定操作時の音量設定値から前記音量受付部が受け付けている音量設定値まで、所定の変化率で前記出力音声の音量を変化させる音量制御処理を行う。
【0008】
すなわち、本発明の音声出力装置は、音量固定操作を受け付けた時には音量受付部(ハードウェアボリューム)が示す音量を維持するが、音量固定解除時には出力音声の音量をハードウェアボリュームが示す音量に徐々に一致させる。このように、ハードウェアボリュームが示す音量設定値とソフトウェア制御による音量設定値が異なるものとなってしまう場合においても、音量固定解除後に緩やかに音量が変化してハードウェアボリュームの音量設定値に一致するため、ユーザに対する違和感を低減することができる。
【0009】
また、音量制御部は、前記音量固定解除操作を受け付け、かつ前記音量設定部が新たな操作を受け付けたときに、前記音量制御処理を行う態様も可能である。つまり、音量固定解除後に直ちに音量を変化させるのではなく、実際にハードウェアボリュームが操作されたときに音量を変化させる。そのため、ユーザの音量変更操作の意図を反映した適切な音量変化を実現することが可能となる。
【0010】
なお、音量変化は、連続的に変化する態様であってもよいし、断続的に変化する態様であってもよい。また、変化率は、その時点の出力音声の音量と、前記音量受付部が受け付けている音量設定値と、に応じて変更する。例えば、ハードウェアボリュームに一致させるまでの所要時間を固定とし、一定の変化率で音量変化をさせるが、音量が変化している途中でハードウェアボリュームが操作され、目標の音量設定値が変更された場合は、変化率を大きく、あるいは小さく変更する。
【0011】
また、目標とする音量設定値(目標音量設定値)は、実際のハードウェアボリュームが示す音量設定値と完全に一致させる必要はない。例えば、ハードウェアボリュームが示す音量設定値に対応する値(例えば、ハードウェアボリュームが示す音量設定値よりも少し大きい、あるいは小さい値)を目標音量設定値とし、この目標音量設定値まで音量を変化させてもよい。あるいは、現時点の出力音声の音量と、ハードウェアボリュームが示す音量設定値との平均値を目標音量設定値としてもよい。
【0012】
また、本発明の音声出力装置は、以下の様な例も可能である。すなわち、音量制御部は、前記音量固定操作を受け付けたとき、前記音量受付部で受け付けた音量設定操作に関わらず、前記音量固定操作時の音量設定値で出力音声の音量を維持し、前記音量固定解除操作を受け付けたとき、前記音量固定操作時の音量設定値で出力音声の音量設定値をそのまま維持し、前記音量受付部が受け付けている音量設定値が前記音量固定操作時の音量設定値と一致した後に、前記音量受付部で受け付けた音量設定操作に応じて出力音声の音量を制御する。
【0013】
この場合、音量固定解除後もハードウェアボリュームの音量設定値に関わらず出力音声の音量をそのまま維持するが、ハードウェアボリュームが操作され、出力音声の音量と一致した場合には、ハードウェアボリュームの音量設定値に応じて音量を変更する。この場合も、ユーザの音量操作の意図を反映した適切な音量変化を実現することができ、ユーザに対する違和感を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ハードウェアボリュームが示す音量設定値とソフトウェア制御による音量設定値が異なるものとなってしまう場合であっても、音量固定解除後に所定の手法で両者の音量設定値を一致させるため、ユーザに対する違和感を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1(A)は、音声出力装置の構成を示すブロック図であり、
図1(B)は音声出力装置の外観斜視図である。
【0017】
音声出力装置は、楽音等を含むコンテンツの音声を出力するものであり、本実施形態においては、コンテンツとしてマスカ音を出力する例を示す。マスカ音は、マスク対象の音声を攪乱して、第三者にマスク対象音声の内容(話者の発言内容)を理解できないようにするものである。マスカ音としては、人の音声を時間軸上あるいは周波数軸上で改変し、語彙的に何ら意味をなさない(内容が理解できない)ようにしたものを用いる。
【0018】
音声出力装置は、
図1(C)に示すように、例えば、銀行や調剤薬局等の対話カウンタや待合場所に設置され、待合場所に向けてマスカ音を放音する。このマスカ音は、上記マスカ音により、対話カウンタ内で会話を行う者の発言内容をマスクし、待合場所に居る者に発言内容を理解できないようにするものである。例えば、
図1(C)の例では、待合場所に居る順番待ちの患者92の近くに音声出力装置1を設置し、カウンタ内に居る薬の説明を行う薬剤師(管理者)91や説明を受ける患者90の発言内容を理解できないようにする。
【0019】
ここで、適切なマスキング効果を実現するためには、マスカ音の音量設定が重要となる。すなわち、マスカ音の音量が小さいと、期待するマスキング効果が得られず、聴取者が発言内容を聞き分けてしまう。一方で、マスカ音は、人の声質を有するものの、人から発せられた会話音声としては認識できないものであるため、マスカ音の音量が大きいと違和感(不快感)を覚える場合がある。したがって、マスカ音の音量は、最適な音量に設定し、固定して使用することが望ましい。
【0020】
しかし、音声出力装置は、人が多数存在する場所に設置されるため、子供のいたずらや不注意により音量設定が変更されてしまうおそれがある。ここで、
図1(C)に示すように、音量を管理したい者である管理者91は、カウンタに居て、音声出力装置1は待合場所等の離れた場所に配置される。そのため、いたずら等による音量設定の変更を監視することが難しい。そこで、本実施形態の音声出力装置は、音量設定を固定する音量固定機能を備えるとともに、音量固定解除時にも適切な音量制御を行うものである。
【0021】
以下、音声出力装置の具体的な構成、動作について説明する。
図1(A)に示すように、音声出力装置1は、制御部11、VR(ハードウェアボリューム)12、A/Dコンバータ13、UI(ユーザインタフェース)14、設定記憶部15、コンテンツ記憶部16、再生部17、増幅器18、アンプ19、およびスピーカ20を備えている。
【0022】
図1(B)に示すように、音声出力装置1は、外観上、直方体形状の筐体を有し、筐体正面方向にスピーカ20が設けられ、正面方向にコンテンツの音声を出力するようになっている。また、筐体上面には、ユーザの音量設定操作を受け付けるためのVR12(本発明における音量受付部)、およびコンテンツの選択、音量固定操作、電源オンオフ操作等の各種操作を受け付けるUI14(本発明における音量固定操作受付部)が設けられている。なお、装置本体の外観形状、スピーカの数、VR12やUI14の形状はこの例に限るものではない。
【0023】
コンテンツ記憶部16は、上記マスカ音を含む各種コンテンツの音声を記憶している。なお、この例では、音声出力装置1の内部にコンテンツ記憶部16を備える例を示しているが、コンテンツは他装置(サーバ等)から入力する態様としてもよい。制御部11は、UI14から指定されたコンテンツを再生するように再生部17に指示する。再生部17は、コンテンツ記憶部16から指示されたコンテンツを読み出し再生処理を行う。本実施形態では、コンテンツとしてマスカ音を再生する例を示す。
【0024】
マスカ音は、人の音声を時間軸上で改変したものである場合、予め特定の話者の音声(男性および女性を含む複数人の音声)を録音し、所定時間毎に一定長の区間に分割した音声信号を各区間で逆方向に読み出す等して、語彙的に意味をなさない音声に変更する。周波数軸上で改変する場合、スペクトル包絡のピーク(フォルマント)を抽出し、語彙に影響する特定のフォルマントを変更して語彙的に意味をなさない音声に変更する。あるいは、対話カウンタ内の話者の音声をマイクで収音して、収音した音声を改変することにより、都度、生成する態様としてもよい。
【0025】
再生部17は、このようなマスカ音に係る音データをコンテンツ記憶部16から読み出し、再生処理を行う。例えば、マスカ音に係る音データがエンコードされた圧縮データであればデコードし、デジタル音声信号に変換し、増幅器18に出力する。増幅器18は、制御部11から指定される音量設定値に応じて入力されたデジタル音声信号のレベル調整を行い、アンプ19に出力する。アンプ19は、いわゆるパワーアンプ(最終段の増幅器)に相当し、入力された音声信号を増幅する。増幅方式は、アナログでもデジタルでもよい。本実施形態では、D/Aコンバータを省略しているが、アナログ信号を増幅する場合は、アンプ19の前段にD/Aコンバータを設け、デジタル信号を増幅する場合は、アンプ19の後段にD/Aコンバータを設ける。
【0026】
アンプ19で増幅された音声信号は、スピーカ20に出力され放音される。このようにして、マスカ音が出力される。なお、スピーカ20は、音声出力装置1ではなく、他の装置に設け、音声出力装置1は、この他の装置に音声信号を出力し、他装置のスピーカからマスカ音を出力する態様としてもよい。
【0027】
上述のように、制御部11は、増幅器18に音量設定値を設定し、音量制御を行うが、この設定した音量設定値は、EEPROMやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリからなる設定記憶部15に記憶する。本実施形態の音声出力装置の基本動作として、音量設定値は、VR12を用いてユーザが指定する。
【0028】
VR12は、回転摘みとなっており、回転角度に応じた電圧値をA/Dコンバータ13に出力する。この電圧値は、A/Dコンバータ13でデジタル値に変更され、制御部11に入力される。制御部11は、入力された電圧値に応じた音量設定値を設定記憶部15に記憶するとともに、増幅器18に設定する。これにより、出力音声の音量が設定される。
【0029】
図2(A)は、音量変更動作の第1の例を示す図である。図中のグラフ横軸は時間経過を示しており、横軸下欄にはVR12のそれぞれの時点の音量設定値を示している。縦軸は、出力音声の音量(設定記憶部15に記憶される音量設定値)あるいはVR12の音量設定値を示している。グラフ中の太い実線が出力音声の音量を示し、点線はVR12の音量設定値を示す。なお、これら音量設定値は、あくまでも相対的な音量を示すものであり、絶対的な音量を示すものではない。例えば、本実施形態では、音量設置値0で無音となり、音量設定値5で音声出力装置が有する最大出力で音声を出力することを意味する。
【0030】
図2(A)の左側から順に示すように、例えばVR12の示す音量設定値が1を示している場合、設定記憶部15に音量設定値1が記憶され、増幅器18に設定される音量設定値も1となる。ここで、ユーザがVR12を操作し、VR12の音量設定値が2に変化すると、設定記憶部15に記憶されている音量設定値を2に変更し、増幅器18に設定される音量設定値も2に変更される。なお、この例では、VR12の音量設定値の変化に応じて連続的に増幅器18に設定される音量設定値も変化するが、
図2(B)のように断続的に変化する態様であってもよい。
【0031】
次に、音量固定操作および音量固定解除操作時の音量変更動作について
図2(A)のグラフおよび
図6のフローチャートを参照して説明する。まず、制御部11は、ロック操作を受け付け、ロック開始したか否かを判断する(s11)。ここで、ロックとは、電源オン、オフ以外の操作を受け付けないことを意味し、音量固定の動作以外の動作も含むものである。例えば、ロック操作を受け付けると、VR12による音量設定だけでなく、コンテンツの選択等の他の操作も受け付けない状態とする。ただし、ロック中であっても電源オン、オフの操作のみ受け付け、管理者が電源オフ操作を行うためにロック解除操作を行う手間を低減させる。ロック操作およびロック解除操作は、例えばUI14のうち、特定のボタンを同時に長押しする、あるいは特定の複数のボタンを同時に長押しする、等の操作で受け付ける。
【0032】
制御部11は、ロック操作を受け付けた場合(s11、Yes)、その時点でVR12が示す音量設定値を設定記憶部15に記憶し、この音量設定値で出力音声の音量を固定する(s12)。
図2(A)の例では、VR12の音量設定値が2を示しているため、音量設定値2を設定記憶部15に記憶し、増幅器18に設定する音量設定値を2で固定する。よって、
図2(A)に示すように、この後にVR12の音量設定値が3や4に変更されたとしても、増幅器18に設定する音量設定値は、ロック操作時の音量設定値2で固定される。なお、このとき、制御部11は、後述のように、電源オフ後に再起動した時にもロック動作を維持するために、設定記憶部15にロック動作中である旨を示す情報を記憶しておく(ロック動作のフラグを立てる)ことが好ましい。
【0033】
そして、制御部11は、ロック解除操作を受け付けたとき(s13、Yes)、そのときにVR12が示す音量設定値と、設定記憶部15に記憶している音量設定値とを対比し(s14)、これらの音量設定値が同一でなければ(s15、Yes:相違していれば)、増幅器18に設定している音量設定値をVR12が示す音量設定値まで所定の変化率で変化させる(s16)。
図2(A)の例では、制御部11は、ロック解除操作を受け付けたときに、VR12が音量設定値4を示しているのに対し、設定記憶部15に音量設定値2が記憶され、増幅器18には音量設定値2を設定しているため、VR12が示す音量設定値4まで増幅器18に設定している音量設定値を変化させ、設定記憶部15の音量設定値を更新する。増幅器18に設定している音量設定値とVR12の音量設定値が一致した場合には、VR12が示す音量設定値に応じて増幅器18に設定する音量設定値を変更する。
【0034】
このとき、制御部11は、即座にVR12が示す音量設定値まで変化させるのではなく、所定の変化率で徐々に変化させる。
図2(A)の例では、VR12の音量設定値に一致させるまでの所要時間を固定(例えば2秒)とし、出力する音声の音量を対数軸上(dB上)、一定の変化率で直線状(リニア)に変化させる態様としている。ただし、変化率は、固定ではなく、音量変化中にも変更するようにしてもよい。例えば、
図3(A)に示すように、音量が変化している途中でVR12が操作され、目標の音量設定値が継続して変更されている場合は、変化率を小さく(または大きく)する。例えば、制御部11が増幅器18に設定する音量設定値を変化させている途中で、ユーザがVR12を操作して音量を小さくする操作を開始すると、制御部11は、この音量を小さくする操作に追従して変化率を小さくする。同様に、制御部11が増幅器18に設定する音量設定値を変化させている途中で、ユーザがVR12を操作して音量を大きくする操作を開始すると、制御部11は、このVR12の音量を大きくする操作に追従して変化率を大きくする。
【0035】
すなわち、
図2(A)では、制御部11は、例えば所要時間を2秒で音量設定値2から音量設定4まで変化するような音量の変化率で固定していたが、
図3(A)の例では、制御部11が増幅器18の音量を変化させている途中で(この例では制御部11が音量設定値を3まで変化させた時点で)、ユーザがVR12を操作して音量を小さくする操作を開始し、継続的に音量を小さくする操作を行っているため、制御部11は、この音量を小さくする操作を検出し、変化率を小さく(同図の例では変化率を半分に)変更している。このように、ユーザがVR12を操作して音量を小さくする操作を開始して継続的に音量を小さくする操作を行うと、そのままの変化率では当初の所要時間(例えば2秒)よりも早くVR12の音量設置値に一致することになってしまうが、途中で変化率を小さくすることで、VR12の音量設定値に一致するまでの時間を長くし、当初の所要時間に近づけることができる。
図3(A)の例とは逆に、ユーザがVR12を操作して音量を大きくする操作を開始し、継続的に音量を大きくする操作を行うと、そのままの変化率では当初の所要時間(例えば2秒)よりも遅くVR12の音量設置値に一致することになってしまうが、制御部11は、ユーザがVR12を操作して音量を大きくする操作を検出した場合に、この音量を大きくする操作に追従して変化率を大きくすることで、VR12の音量設定値に一致するまでの時間を短くし、当初の所要時間に近づけることができる。
【0036】
なお、音量変化は、
図2(A)に示した連続的な変化に限るものではなく、無論、リニアに変化させる例に限るものではない。例えば、
図2(B)に示すように、断続的に変化させる態様も可能であるし、
図3(B)に示すように、非リニアに変化させる態様も可能である。非リニアに変化させる場合、例えば人の聴感特性を考慮した変化率とすることも可能である。また、人の聴感は、音量が大きくなることに敏感であるため、音量を大きくする場合はより緩やかに変化させる、あるいは、音量が大きくなるときに非リニアに変化させ、小さくする場合はリニアに変化させる、等の動作であってもよい。
【0037】
また、目標とする音量設定値は、実際のVR12が示す音量設定値と完全に一致させる必要はない。例えば、VR12が示す音量設定値に対応する値(例えば、VR12の音量設定値よりも少し大きい、あるいは小さい値)を目標音量設定値とし、この目標音量設定値まで音量を変化させてもよい。あるいは、現時点で増幅器18に設定している音量設定値と、VR12が示す音量設定値との平均値を目標音量設定値としてもよい。
【0038】
以上の様にして、本実施形態の音声出力装置は、ロック操作を受け付けた時のVR12が示す音量を維持し、VR12が操作されても音量を変化させないようにするが、ロック解除時には出力音声の音量をVR12が示す音量に徐々に一致させる。このように、VR12が示す音量設定値と増幅器18に設定している音量設定値(ソフトウェア制御による音量設定値)が異なるものとなってしまう場合においても、ロック解除後に緩やかに音量が変化してVR12の音量設定値に一致するため、ユーザに対する違和感を低減することができる。
【0039】
なお、上述したように、本実施形態の音声出力装置1は、ロック操作を受け付けたときに、電源オン、オフ操作のみ受け付ける態様としているが、ロック動作中に電源がオフされたり、電源が遮断(例えばACアダプタがコンセントから切断)されたりしても、次に電源オンされて再起動したときには、直前に維持していた音量設定値でマスカ音の出力を再開し、ロック動作を維持することも可能である。
【0040】
この場合、音声出力装置1は、
図11に示すような動作を行う。この動作は、音声出力装置1の電源がオンされたときに行われる。まず、制御部11は、設定記憶部15に記憶されている各種情報を読み出す(s51)。設定記憶部15は、不揮発性メモリであるため、電源オフ直前に記憶していた各種情報をそのまま記憶している。したがって、制御部11は、設定記憶部15にロック動作中である旨を示す情報が記憶されているか否かを判断する(s52)。設定記憶部15にロック動作中である旨を示す情報が記憶されていなければ(s52、No)、VR12が示す音量設定値に応じて増幅器18に設定する音量設定値を変更し(s53)起動動作を終える。以後は、通常の動作(例えば
図6に示したフローチャートの動作)に移行する。
【0041】
一方で、制御部11は、設定記憶部15にロック動作中である旨を示す情報が記憶されている場合(s52、Yes)、
図6のフローチャートにおけるs12の処理に移行する。すなわち、制御部11は、設定記憶部15に記憶されている音量設定値を増幅器18に設定し、この音量設定値で出力音声の音量を固定する。以後は、ロック動作(
図6の例では、s13以下の処理)を維持する。なお、制御部11は、ロック解除操作を受け付けたときに(
図6の例では、s13、Yes)、設定記憶部15に記憶されているロック動作中である旨を示す情報を消去する。
【0042】
このように、音声出力装置1は、電源オフや電源遮断等を行ってもロック動作を維持する。そのため、ロック動作中にも電源オンオフの操作のみ受け付ける態様としても、ロック動作を継続させることができ、管理者が電源オフ時にロック解除操作を行う必要がなくなるだけでなく、電源オン後に再度ロック操作を行う必要もなくなる。
【0043】
次に、
図4および
図7を参照して、音量変更動作の第2の例を説明する。
図4中のグラフは、
図2(A)のグラフと同様に、横軸は時間経過を示しており、横軸下欄にはVR12のそれぞれの時点の音量設定値を示している。縦軸は、出力音声の音量(設定記憶部15に記憶される音量設定値)あるいはVR12の音量設定値を示している。グラフ中の太い実線が出力音声の音量を示し、点線はVR12の音量設定値を示す。
図2(A)との違いは、ロック解除操作を受け付けた時の動作である。そのため、ロック解除操作を受け付けた場合の動作のみ説明する。また、
図7に示すフローチャートにおいても、
図6に示したフローチャートとの違いのみ説明する。
【0044】
この第2の例では、制御部11は、ロック解除操作を受け付けたとき(s13、Yes)、まずVR12が操作されているか否かを確認する(s24)。VR12が操作されるまでは、この判断を繰り返す。つまり、増幅器18の音量設定値は固定されたままとなる。VR12が操作されたとき(s24、Yes)、制御部11は、VR12が示す音量設定値と、設定記憶部15に記憶している音量設定値とを対比し(s25)、これらの音量設定値が同一でなければ(s26、Yes:相違している)、s24の判断から処理を繰り返し、同一となった場合(s26、No:相違しない)、VR12が示す音量設定値に応じて増幅器18の音量設定値を変更する。
【0045】
つまり、第1の例(
図2(A)の例)では、制御部11は、ロック解除操作を受け付けたときに、VR12が示す音量設定値に増幅器18に設定する音量設定値を一致させるが、この第2の例では、
図4に示すようにロック解除操作を受け付けた場合でも、VR12の音量設定値に関わらず増幅器18に設定する音量設定値を維持する。ただし、VR12が操作され、VR12の音量設定値と増幅器18に設定している音量設定値と、が一致した場合には、VR12が示す音量設定値に応じて音量を変更する(s27)。この場合、ユーザがある程度VR12を操作し、音量変更を指示した場合に実際の音量が変化されるため、ユーザの音量操作の意図を反映した適切な音量変化を実現することができ、ユーザに対する違和感を低減することができる。
【0046】
次に、
図5および
図8を参照して、音量変更動作の第3の例を説明する。
図5中のグラフも、
図2(A)のグラフと同様に、横軸は時間経過を示しており、横軸下欄にはVR12のそれぞれの時点の音量設定値を示している。縦軸は、出力音声の音量(設定記憶部15に記憶される音量設定値)あるいはVR12の音量設定値を示している。グラフ中の太い実線が出力音声の音量を示し、点線はVR12の音量設定値を示す。
図2(A)との違いは、ロック解除操作を受け付けた時の動作である。そのため、ロック解除操作を受け付けた場合の動作のみ説明する。また、
図8に示すフローチャートにおいても、
図6に示したフローチャートとの違いのみ説明する。
【0047】
この第3の例では、制御部11は、ロック解除操作を受け付けたとき(s13、Yes)、まずVR12が操作されているか否かを確認する(s34)。VR12が操作されるまでは、この判断を繰り返す。つまり、増幅器18の音量設定値は固定されたままとなる。VR12が操作されたとき(s34、Yes)、制御部11は、VR12が示す音量設定値と、設定記憶部15に記憶している音量設定値とを対比し(s35)、これらの音量設定値が同一でなければ(s36、Yes:相違していれば)、増幅器18に設定している音量設定値をVR12が示す音量設定値まで所定の変化率で変化させる(s37)。
図5の例では、制御部11は、ロック解除操作を受け付けたときに、VR12が音量設定値4を示しているのに対し、設定記憶部15に音量設定値2が記憶され、増幅器18に音量設定値2を設定しているため、VR12が示す音量設定値4まで増幅器18に設定している音量設定値を変化させ、設定記憶部15の音量設定値を更新する。VR12が示す音量設定値と増幅器18に設定している音量設定値が一致した場合は、VR12が示す音量設定値に応じて増幅器18に設定する音量設定値を変更する。
【0048】
ただし、この例では、VR12の示す音量設定値が、連続的に音量設定値4から音量設定値2まで変化しているため、増幅器18の変化率は固定ではなく、徐々に変化率を小さくし、非リニアとしている。無論、変化率は、徐々に大きくなるようにしてもよいし、リニアに変化させたり、断続的に変化させたりする態様も可能である。
【0049】
また、この例においても、目標とする音量設定値は、実際のVR12の値と完全に一致させる必要はない。例えば、VR12が示す音量設定値よりも少し大きい、あるいは小さい値としてもよい。あるいは、現時点の出力音声の音量と、VR12が示す音量設定値との平均値を目標としてもよい。
【0050】
第3の例では、ユーザのVR12の操作が音量変化のトリガとなるため、VR12を操作しても音量が変化しないという違和感を低減することができ、ユーザの音量変更操作の意図を反映した適切な音量変化を実現することが可能となる。
【0051】
なお、上述の第1の例、第2の例、第3の例の全ての例において、音声出力装置は、ロック動作中に、以下のように警告音を発する動作を行うことが好ましい。
図9は、警告音を発する場合の音声出力装置の動作を示すフローチャートである。
図9に示す動作は、制御部11がロック操作を受け付けたことがトリガとなる。
【0052】
まず、制御部11は、ロック操作を受け付けた場合、VR12が操作されているか否かを確認する(s41)。制御部11は、VR12が操作されたと判断した場合(s41、Yes)、再生部17に警告音を再生するように指示する(s42)。警告音に係る音データは、コンテンツ記憶部16に記憶されている。再生部17は、コンテンツ記憶部16から警告音に係る音データを読み出し、上記マスカ音と同様に、スピーカ20から出力させる処理を行う。
【0053】
制御部11は、これらs41からs42までの処理を、ロック解除操作を受け付けるまで行う(s43、Yes)。ロック解除操作を受け付けた場合は、
図9の動作を終え、以後は警告音を発することがない。
【0054】
このように、ロック動作中にVR12が操作された場合に警告音を発することで、管理者91等がVR12を操作されたことに気づくことができる。例えば、子供のいたずらによりVR12が操作された場合や、不注意によりVR12が操作された場合に、すぐに管理者91がかけつけて元の音量設定値に戻すことも可能であるし、子供にこれ以上のいたずらをさせないように注意する(あるいは自発的にいたずらを抑制させる)ことができる。
【0055】
特に、
図1(C)に示したように、音声出力装置が本実施形態のようなマスカ音を出力する装置であり、管理者91が音声出力装置1から離れた場所に居て、いたずら等を監視することが難しい場合でも、音声出力装置が警告音を発することにより、管理者91は、いたずらや不注意による操作がなされたことに気づくことができる。
【0056】
なお、警告音は、単に「プ・プ・プ」等の電子音であってもよいし、「チャイルドロック中です」等の音声であってもよい。また、警告音の音量は、設定記憶部15に記憶されている音量設定値(すなわち、増幅器18に設定している音量設定値)に応じて設定される態様であってもよいが、警告音だけ最大音量等、増幅器18に設定している音量設定値と異なる音量となるようにしてもよい。
【0057】
例えば、
図10の応用例に係る音声出力装置のブロック図に示すように、増幅器18とは異なる第2の増幅器21と、増幅器18および増幅器21の出力する音声信号を合成するミキサ22を設ける。この場合、再生部17は、マスカ音に係る音声信号は増幅器18に入力し、警告音に係る音声信号は増幅器21に入力する。ここで、増幅器21の音量設定値をあらかじめ固定値(例えば常に最大音量)として設定しておけば、警告音だけが最大音量で出力されることになる。この場合、VR12の音量設定値が低く、マスカ音を小さい音量で出力している場合においても、管理者91が警告音に気づき、VR12を操作されたことに気づく、あるいは子供を驚かせることでこれ以上のいたずらを抑制することができる。
【0058】
また、出力する警告音の種類毎に音量設定値を設定してもよい。例えば、「プ・プ・プ」等の電子音は人の注意を引く音であるが、「チャイルドロック中です」等の音声は電子音に比較して相対的に注意を引かない音である。したがって、「チャイルドロック中です」等の音声は相対的に音量を大きく設定する。
【0059】
この場合、
図10の音声出力装置1においては、コンテンツ記憶部16に「チャイルドロック中です」等の音声に係る音データを記憶しておく場合に、増幅器21に比較的大きな(例えば最大音量の)音量設定値を設定し、コンテンツ記憶部16に「プ・プ・プ」等の電子音に係る音データを記憶しておく場合に、増幅器21に比較的小さな(例えば最大音量の半分程度の)音量設定値を設定しておく。