(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回路層の厚さtcが、0.1mm≦tc≦3mmとされ、補助セラミックス板の厚さtsが、0.15mm≦ts≦1mmとされ、前記緩衝アルミ層の厚さtaが、0.4mm≦ta≦3mmとされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパワーモジュール用基板。
前記アルミニウム板接合工程は、前記補助セラミックス板の接合面及び前記アルミニウム板の接合面のうち少なくとも一方に、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素を固着し、前記添加元素を含有する固着層を形成する固着工程と、前記固着層を介して前記補助セラミックス板と前記アルミニウム板と積層する積層工程と、積層された前記補助セラミックス板と前記アルミニウム板とを積層方向に加圧するとともに加熱し、前記補助セラミックス板と前記アルミニウム板との界面に溶融金属領域を形成する加熱工程と、この溶融金属領域を凝固させることによって、前記補助セラミックス板と前記アルミニウム板とを接合する凝固工程と、を有し、前記加熱工程において、前記固着層の元素を前記アルミニウム板側に拡散させることにより、前記補助セラミックス板と前記アルミニウム板との界面に、前記溶融金属領域を形成することを特徴とする請求項5に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
前記緩衝アルミ層と前記セラミックス基板とを接合するセラミックス基板接合工程を有し、前記銅板接合工程と前記アルミニウム板接合工程と前記セラミックス基板接合工程とを同時に行うことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。
図1に、本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板、ヒートシンク付パワーモジュール用基板及びパワーモジュールを示す。
このパワーモジュール1は、回路層12が配設されたパワーモジュール用基板10と、回路層12の表面にはんだ層2を介して接合された半導体素子3と、パワーモジュール用基板10の他方側(
図1において下側)に配設されたヒートシンク40とを備えている。ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。なお、本実施形態では、回路層12とはんだ層2との間にNiメッキ層(図示なし)が設けられている。
【0024】
パワーモジュール用基板10は、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面側(
図1において上側)に配設された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面(
図1において下面)に接合された金属層13とを備えている。
そして、セラミックス基板11と回路層12との間には、セラミックス基板11の一方の面に接合されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる緩衝アルミ層16と、緩衝アルミ層16の一方の面に接合されるとともに回路層12の他方の面に接合された補助セラミックス板17と、が配設されている。
【0025】
セラミックス基板11は、一方の面側に配設された回路層12と他方の面側に配設された金属層13との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAlN(窒化アルミ)で構成されている。また、セラミックス基板11の厚さt
0は、0.2mm≦t
0≦1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、t
0=0.635mmに設定されている。
【0026】
金属層13は、
図4に示すように、セラミックス基板11の他方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板23が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、金属層13は、純度が99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板23がセラミックス基板11に接合されることで形成されている。
【0027】
回路層12は、
図3に示すように、補助セラミックス板17の一方の面に、銅又は銅合金からなる銅板22が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、回路層12は、無酸素銅によって形成されている。
また、回路層12の厚さtcは、0.1mm≦tc≦3mmとされており、本実施形態では、tc=1.0mmとされている。
【0028】
緩衝アルミ層16は、
図3に示すように、補助セラミックス板17の他方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板26が接合されることにより形成されている。緩衝アルミ層16は、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることができるが、本実施形態では、純度が99.99質量%以上のアルミニウム板26が補助セラミックス板17に接合されることで形成されている。
また、緩衝アルミ層16の厚さtaは、0.4mm≦ta≦3mmとされており、本実施形態では、ta=2.0mmとされている。
【0029】
補助セラミックス板17は、例えばAlN、Al
2O
3、Si
3N
4等のセラミックス材料で構成されており、本実施形態では、AlN(窒化アルミ)で構成されている。補助セラミックス板17の厚さtsは、0.15mm≦ts≦1mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、ts=0.635mmに設定されている。
そして、本実施形態においては、
図1又は
図3に示すように、補助セラミックス板17に、厚さ方向に延在する複数のスリット18が設けられており、このスリット18によって、補助セラミックス板17が予め分割されているのである。
【0030】
ヒートシンク40は、前述のパワーモジュール用基板10を冷却するためのものであり、パワーモジュール用基板10と接合される天板部41と、冷却媒体(例えば冷却水)を流通するための流路42と、を備えている。ヒートシンク40(天板部41)は、熱伝導性が良好な材質で構成されることが望ましく、本実施形態においては、A6063(アルミニウム合金)で構成されている。
【0031】
以下に、本実施形態であるパワーモジュール用基板10、ヒートシンク付パワーモジュール用基板及びパワーモジュール1の製造方法について、
図2から
図5を参照して説明する。
このパワーモジュール1の製造方法は、
図2に示すように、銅板22と補助セラミックス板17とを接合する銅板接合工程S01と、補助セラミックス板17とアルミニウム板26とを接合するアルミニウム板接合工程S02と、緩衝アルミ層16とセラミックス基板11及びセラミックス基板11と金属層13となるアルミニウム板23とを接合するセラミックス基板接合工程S03と、パワーモジュール用基板10とヒートシンク40とを接合するヒートシンク接合工程S04と、回路層12の一面に半導体素子3を接合する半導体素子接合工程S05と、を備えている。
【0032】
(銅板接合工程S01/アルミニウム板接合工程S02)
まず、
図3に示すように、補助セラミックス板17の一方の面側(
図3において上側)に、ろう材50を介して銅板22を積層する。また、補助セラミックス板17の他方の面側(
図3において下側)に第1ろう材51を介してアルミニウム板26を積層する。
ここで、アルミニウム板26と補助セラミックス板17との間に介在される第1ろう材51は、Al−Si系合金とされており、本実施形態では、Al−7.5質量%Siからなる厚さ5〜30μmのろう材箔を用いている。
【0033】
そして、銅板22と補助セラミックス板17との間に介在されるろう材50は、その固相温度がアルミニウム板26の融点未満とされている。具体的には、ろう材50は、Ag−Cu−Ti系合金に、In,Bi,Li,Snから選択される1種又は2種以上の低融点元素が添加された構成とされており、本実施形態では、Ag−24質量%Cu−2質量%Ti−14質量%In合金とされている。また、ろう材50の厚さは10〜100μmとされている。
【0034】
次に、積層された銅板22、補助セラミックス板17、アルミニウム板26を、積層方向に加圧(圧力1.5〜35kgf/cm
2)した状態で真空加熱炉内に装入して加熱し、銅板22と補助セラミックス板17との界面に溶融金属領域60を形成し、補助セラミックス板17とアルミニウム板26との界面に第1溶融金属領域61を形成する。
ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10
−6Pa以上10
−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は630℃以上655℃以下の範囲内に設定している。
【0035】
ついで、上述の溶融金属領域60及び第1溶融金属領域61を凝固させることによって、銅板22と補助セラミックス板17、補助セラミックス板17とアルミニウム板26とを接合する。すなわち、本実施形態においては、銅板接合工程S01とアルミニウム板接合工程S02とが同時に実施されているのである。
【0036】
(セラミックス基板接合工程S03)
次に、
図4に示すように、緩衝アルミ層16の他方の面側に第2ろう材52を介してセラミックス基板11を積層し、セラミックス基板11の他方の面側に第3ろう材53を介して金属層13となるアルミニウム板23を積層する。
ここで、第2ろう材52及び第3ろう材53は、本実施形態では、Al−7.5質量%Si合金とされている。また、第2ろう材52及び第3ろう材53の厚さは5〜30μmとされている。
【0037】
積層された回路層12、補助セラミックス板17及び緩衝アルミ層16とセラミックス基板11とアルミニウム板23とを積層方向に加圧(圧力1.5〜35kgf/cm
2)した状態で真空加熱炉内に装入して加熱し、緩衝アルミ層16とセラミックス基板11との間に第2溶融金属領域62を形成し、セラミックス基板11とアルミニウム板23との間に第3溶融金属領域63を形成する。
ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10
−6Pa以上10
−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は630℃以上655℃以下の範囲内に設定している。
【0038】
ついで、上述の第2溶融金属領域62及び第3溶融金属領域63を凝固させることによって、緩衝アルミ層16とセラミックス基板11、セラミックス基板11とアルミニウム板23とを接合する。
このようにして、本実施形態であるパワーモジュール用基板10が製出される。
【0039】
(ヒートシンク接合工程S04)
次に、
図5に示すように、パワーモジュール用基板10の金属層13の他方側(
図5において下側)に、第4ろう材54を介してヒートシンク40を積層する。この第4ろう材54は、第2ろう材52、第3ろう材53よりも固相温度が低い合金で構成されており、本実施形態では、Al−10質量%Si合金とされている。また、第4ろう材54の厚さは50〜100μmとされている。
【0040】
積層されたパワーモジュール用基板10とヒートシンク40とを積層方向に加圧(圧力1.5〜20kgf/cm
2)した状態で真空加熱炉内に装入して加熱し、金属層13とヒートシンク40との間に第4溶融金属領域64を形成する。
そして、この第4溶融金属領域64を凝固させることで、ヒートシンク40とパワーモジュール用基板10とを接合する。このようにして、本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板が製出される。
【0041】
(半導体素子接合工程S05)
次に、回路層12の表面に形成されたNiメッキ層(図示なし)の上に、はんだ材を介して半導体素子3を載置し、還元炉内においてはんだ接合する。これにより、半導体素子3が、はんだ層2を介してパワーモジュール用基板10上に接合され、本実施形態であるパワーモジュール1が製出される。
【0042】
以上のような構成とされた本実施形態によれば、回路層12が、変形抵抗が比較的大きい銅板22によって構成されているので、回路層12表面におけるうねりやシワの発生を抑制することができる。よって、鉛フリーはんだ材を用いた場合であっても、はんだ層2におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0043】
そして、セラミックス基板11と回路層12との間に、緩衝アルミ層16と補助セラミックス板17とが介装されているので、回路層12とセラミックス基板11との熱膨張係数の差に起因する熱応力を緩衝アルミ層16で吸収することができ、セラミックス基板11の割れを防止できる。よって、セラミックス基板11の一方側と他方側とで絶縁性を確保することができる。
【0044】
また、本実施形態では、補助セラミックス板17に、厚さ方向に延在する複数のスリット18が設けられているので、補助セラミックス板17が容易に変形することになり、緩衝アルミ層16と補助セラミックス板17の変形によって、回路層12とセラミックス基板11との熱膨張係数の差に起因する熱応力を効率的に吸収することができる。さらに、あらかじめ補助セラミックス板17にスリットを形成しておくことで、熱応力によって補助セラミックス板17が不規則に割れてしまうことを防止できる。
さらに、本実施形態では、緩衝アルミ層16が、4Nアルミニウムで構成されているので、緩衝アルミ層16の変形抵抗が小さくなり、この緩衝アルミ層16の変形によって、熱応力を効率的に吸収することができる。
【0045】
また、回路層12の厚さtcが、0.1mm≦tc≦3mmとされ、本実施形態では、tc=1.0mmとされているので、回路層12における導電性を確保することができるとともに、回路層12の変形抵抗が必要以上に大きくならず、セラミックス基板11の割れの発生を抑制することができる。
さらに、補助セラミックス板17の厚さtsが、0.15mm≦ts≦1mmとされ、本実施形態では、ts=0.635mmとされているので、回路層12と確実に接合することができるとともに、積層方向の熱抵抗を抑えることができ、熱をヒートシンク40側に向けて効率良く放散することができる。
また、緩衝アルミ層16の厚さtaが、0.4mm≦ta≦3mmとされ、本実施形態では、ta=2.0mmとされているので、緩衝アルミ層16において熱応力を確実に吸収することができるとともに、積層方向の熱抵抗を抑えることができ、熱をヒートシンク40側に向けて効率良く放散することができる。
【0046】
また、本実施形態では、セラミックス基板11の他方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層13が形成されており、この金属層13を介してヒートシンク40が接合されているので、ヒートシンク40とセラミックス基板11との熱膨張係数の差に起因する熱応力を、金属層13で吸収することができ、セラミックス基板11の割れの防止及びヒートシンク40とセラミックス基板11との接合信頼性の向上を図ることができる。
【0047】
そして、本実施形態では、回路層12を形成する銅板接合工程S01と、緩衝アルミ層16を形成するアルミニウム板接合工程S02とを、同時に実施する構成としているので、補助セラミックス板17における反りの発生を抑えることができる。
また、銅板接合工程S01において、固相温度がアルミニウム板26の融点未満とされたろう材50を用いているので、アルミニウム板26の融点未満の温度条件においても、銅板22と補助セラミックス板17とを確実に接合することができる。
本実施形態では、ろう材50として、Ag−Cu−Ti系合金に、In,Bi,Li,Snから選択される1種又は2種以上の低融点元素を添加した合金、具体的には、Ag−24質量%Cu−2質量%Ti−14質量%In合金を用いているので、固相温度が620℃となり、アルミニウム板26の融点未満の温度条件で銅板22と補助セラミックス板17とを強固に接合することができる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施形態について、
図6から
図13を参照して説明する。
本実施形態であるパワーモジュール101は、回路層112が配設されたパワーモジュール用基板110と、回路層112の表面にはんだ層102を介して接合された半導体素子103と、パワーモジュール用基板110の他方側(
図6において下側)に配設されたヒートシンク140とを備えている。ここで、はんだ層102は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。なお、本実施形態では、回路層112とはんだ層102との間にNiメッキ層(図示なし)が設けられている。
【0049】
パワーモジュール用基板110は、セラミックス基板111と、このセラミックス基板111の一方の面側(
図6において上側)に配設された回路層112と、セラミックス基板111の他方の面(
図6において下面)に接合された金属層113とを備えている。
そして、セラミックス基板111と回路層112との間には、セラミックス基板111の一方の面に接合された緩衝アルミ層116と、緩衝アルミ層116の一方の面に接合されるとともに回路層112の他方の面に接合された補助セラミックス板117と、が配設されている。
【0050】
セラミックス基板111は、一方の面側に配設された回路層112と他方の面側に金属層113との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAl
2O
3(アルミナ)で構成されている。また、セラミックス基板111の厚さt
0は、0.2mm≦t
01≦1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、t
0=0.635mmに設定されている。
【0051】
金属層113は、
図11に示すように、セラミックス基板111の他方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板123が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、金属層113は、純度が99.99質量%以上のアルミニウム板123がセラミックス基板111に接合されることで形成されている。
【0052】
回路層112は、
図11に示すように、補助セラミックス基板117の一方の面に、銅又は銅合金からなる銅板122が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、回路層112は、無酸素銅によって形成されている。
また、回路層112の厚さtcが0.1mm≦tc≦0.6mmとされ、本実施形態では、tc=1.0mmとされている。
【0053】
緩衝アルミ層116は、
図11に示すように、補助セラミックス板117の他方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板126が接合されることにより形成されている。緩衝アルミ層116は、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることができるが、本実施形態では、純度が99.99質量%以上のアルミニウム板126が補助セラミックス板117に接合されることで形成されている。
また、緩衝アルミ層116の厚さtaが0.4mm≦ta≦3.0mmとされ、本実施形態では、ta=1.5mmとされている。
【0054】
補助セラミックス板117は、例えばAlN、Al
2O
3、Si
3N
4等のセラミックス材料で構成されており、本実施形態では、Al
2O
3(アルミナ)で構成されている。補助セラミックス板117の厚さtsは、0.15mm≦ts≦1mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、ts=0.3mmに設定されている。
【0055】
ヒートシンク140は、前述のパワーモジュール用基板110を冷却するためのものである。本実施形態では、ヒートシンク140は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成された放熱板とされている。
【0056】
そして、
図7に示すように、補助セラミックス板117と緩衝アルミ層116との接合界面においては、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてCuが固溶している。
ここで、緩衝アルミ層116の補助セラミックス板117との接合界面近傍には、接合界面から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が低下する濃度傾斜層171が形成されている。また、この濃度傾斜層171の接合界面側(緩衝アルミ層116の補助セラミックス板117との接合界面近傍)の添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が、0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。
なお、緩衝アルミ層116の補助セラミックス板117との接合界面近傍の添加元素の濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、
図7のグラフは、緩衝アルミ層116の中央部分において積層方向にライン分析を行い、縦軸のCu濃度は前述の50μm位置でのCu濃度を基準として求めたものである。
【0057】
また、
図8に示すように、緩衝アルミ層116とセラミックス基板111、セラミックス基板111と金属層113との接合界面においては、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてCuが固溶している。
ここで、緩衝アルミ層116及び金属層113とセラミックス基板111との接合界面近傍には、接合界面から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が低下する濃度傾斜層172,173が形成されている。また、この濃度傾斜層172,173の接合界面側(緩衝アルミ層116及び金属層113のセラミックス基板111との接合界面近傍)の添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が、0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。
なお、緩衝アルミ層116及び金属層113のセラミックス基板111との接合界面近傍の添加元素の濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、
図8のグラフは、緩衝アルミ層116及び金属層113の中央部分において積層方向にライン分析を行い、縦軸のCu濃度は前述の50μm位置でのCu濃度を基準として求めたものである。
【0058】
さらに、
図9に示すように、金属層113とヒートシンク140との接合界面においては、金属層113及びヒートシンク140に、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてCuが固溶している。
ここで、金属層113及びヒートシンク140の接合界面近傍には、接合界面から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が低下する濃度傾斜層174、175が形成されている。また、この濃度傾斜層174、175の接合界面側(金属層113及びヒートシンク140の接合界面近傍)の添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が、0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。
なお、この金属層113及びヒートシンク140の接合界面近傍の添加元素の濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、
図9のグラフは、金属層113及びヒートシンク140の中央部分において積層方向にライン分析を行い、縦軸のCu濃度は前述の50μm位置でのCu濃度を基準として求めたものである。
【0059】
以下に、本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板およびパワーモジュール101の製造方法について、
図10から
図14を参照して説明する。
このパワーモジュール101の製造方法は、銅板122と補助セラミックス板117とを接合する銅板接合工程S101と、補助セラミックス板111と緩衝アルミ層116となるアルミニウム板126とを接合するアルミニウム板接合工程S102と、緩衝アルミ層116とセラミックス基板111、セラミックス基板111と金属層113となるアルミニウム板123とを接合するセラミックス基板接合工程S103と、パワーモジュール用基板110とヒートシンク140とを接合するヒートシンク接合工程S104と、回路層112の一面に半導体素子103を接合する半導体素子接合工程S105と、を備えている。
【0060】
(銅板接合工程S101/アルミニウム板接合工程S102/セラミックス基板接合工程S103/ヒートシンク接合工程S104)
まず、
図11に示すように、アルミニウム板126の一方の面にスパッタリングによって添加元素(Cu)を固着して第1固着層151を形成するとともに、アルミニウム板126の他方の面にスパッタリングによって添加元素(Cu)を固着して第2固着層152を形成する。また、アルミニウム板123の一方の面にスパッタリングによって添加元素(Cu)を固着して第3固着層153を形成するとともに、アルミニウム板123の他方の面にスパッタリングによって添加元素(Cu)を固着して第4固着層154を形成する。ここで、第1固着層151、第2固着層152、第3固着層153及び第4固着層154における添加元素量は0.01mg/cm
2以上10mg/cm
2以下の範囲内とされており、本実施形態では、添加元素としてCuを用いており、第1固着層151、第2固着層152、第3固着層153及び第4固着層154におけるCu量が0.08mg/cm
2以上2.7mg/cm
2以下に設定されている。
【0061】
そして、
図11に示すように、補助セラミックス板117の他方の面側(
図11において下側)に、アルミニウム板126を積層し、アルミニウム板126の他方の面側にセラミックス基板111を積層し、セラミックス基板111の他方の面側にアルミニウム板123を積層し、さらに、アルミニウム板123の他方の面側にヒートシンク140を積層する。
また、補助セラミックス板117の一方の面側(
図11において上側)に、ろう材150を介して銅板122を積層する。
【0062】
ここで、銅板122と補助セラミックス板117との間に介在されるろう材150は、その固相温度がアルミニウム板123、126、ヒートシンク140の融点未満とされている。具体的には、ろう材150は、Ag−Cu−Ti系合金に、In,Bi,Li,Snから選択される1種又は2種以上の低融点元素が添加された合金とされており、本実施形態では、Ag−24質量%Cu−2質量%Ti−14質量%In合金とされている。また、ろう材150の厚さは10〜100μmとされている。
【0063】
次に、銅板122、補助セラミックス板117、アルミニウム板126、セラミックス基板111、アルミニウム板123、ヒートシンク140を、その積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm
2)した状態で真空加熱炉内に装入して加熱する。ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10
−3〜10
−6Paの範囲内に設定し、加熱温度は630℃以上655℃以下の範囲内に設定している。
【0064】
すると、ろう材150が溶融することにより、銅板122と補助セラミックス板117との界面に溶融金属領域160が形成される。
また、補助セラミックス板117とアルミニウム板126との界面に第1溶融金属領域161が形成される。
さらに、アルミニウム板126とセラミックス基板111との界面に第2溶融金属領域162が形成され、セラミックス基板111とアルミニウム板123との界面に第3溶融金属領域163が形成される。
また、アルミニウム板123とヒートシンク140との界面に第4溶融金属領域164が形成される。
【0065】
ここで、補助セラミックス板117とアルミニウム板126との界面に形成される第1溶融金属領域161は、
図12に示すように、第1固着層151の添加元素(Cu)がアルミニウム板126側に拡散することによって、アルミニウム板126の第1固着層151近傍の添加元素の濃度(Cu濃度)が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
【0066】
また、アルミニウム板126とセラミックス基板111との界面に形成される第2溶融金属領域162及びセラミックス基板111とアルミニウム板123との界面に形成される第3溶融金属領域163は、
図13に示すように、第2固着層152の添加元素(Cu)がアルミニウム板126側に、第3固着層153の添加元素(Cu)がアルミニウム板123側に拡散することによって、アルミニウム板126の第2固着層152近傍の添加元素の濃度(Cu濃度)及びアルミニウム板123の第3固着層153近傍の添加元素の濃度(Cu濃度)が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
【0067】
また、アルミニウム板123とヒートシンク140との界面に形成される第4溶融金属領域164は、
図14に示すように、第4固着層154の添加元素(Cu)がアルミニウム板123側及びヒートシンク140側に拡散することによって、アルミニウム板123及びヒートシンク140の第4固着層154近傍の添加元素の濃度(Cu濃度)が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
【0068】
次に、第1溶融金属領域161、第2溶融金属領域162、第3溶融金属領域163、第4融金属領域164が形成された状態で温度を一定に保持しておく。
すると、第1溶融金属領域161、第2溶融金属領域162、第3溶融金属領域163、第4溶融金属領域164中のCuが、さらに拡散し、第1溶融金属領域161、第2溶融金属領域162、第3溶融金属領域163、第4溶融金属領域164であった部分のCu濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していく。これにより、補助セラミックス板117とアルミニウム板126、アルミニウム板126とセラミックス基板111、セラミックス基板111とアルミニウム板123、アルミニウム板123とヒートシンク140とが接合される。
【0069】
つまり、補助セラミックス板117とアルミニウム板126、アルミニウム板126とセラミックス基板111、セラミックス基板111とアルミニウム板123、アルミニウム板123とヒートシンク140は、いわゆる液相拡散接合(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)によって接合されているのである。このようにして凝固が進行した後に、常温にまで冷却を行う。
そして、冷却する過程において、銅板122と補助セラミックス板117との界面に形成された溶融金属領域160が凝固し、銅板122と補助セラミックス板117とが接合される。
【0070】
このようにして、銅板122、補助セラミックス板117、アルミニウム板126、セラミックス基板111、アルミニウム板123、ヒートシンク140が接合され、本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板が製造されることになる。すなわち、本実施形態においては、銅板接合工程S101と、アルミニウム板接合工程S102と、セラミックス基板接合工程S103と、ヒートシンク接合工程S104とが、同時に実施されているのである。
【0071】
(半導体素子接合工程S105)
次に、回路層112の表面に形成されたNiメッキ層(図示なし)の上に、はんだ材を介して半導体素子103を載置し、還元炉内においてはんだ接合する。これにより、半導体素子103が、はんだ層102を介してパワーモジュール用基板110上に接合され、本実施形態であるパワーモジュール101が製出される。
【0072】
以上のような構成とされた本実施形態によれば、回路層112が銅板122によって構成され、金属層113がアルミニウム板123で構成されているので、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することが可能となる。
また、本実施形態では、回路層112となる銅板123と、セラミックス基板111と、金属層113となるアルミニウム板123と、ヒートシンク140と、同時に接合する構成とされていることから、接合時におけるセラミックス基板111の反りの発生を抑制することができる。また、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造コストを低減することができる。
【0073】
本実施形態では、補助セラミックス板117と緩衝アルミ層116、緩衝アルミ層116とセラミックス基板111とが、いわゆる液相拡散接合法によって接合されているので、補助セラミックス板117と緩衝アルミ層116、緩衝アルミ層116とセラミックス基板111とを強固に接合できる。
【0074】
さらに、本実施形態では、セラミックス基板111と金属層113となるアルミニウム板123とについても液相拡散接合法によって接合されているので、セラミックス基板111と金属層113とが強固に接合され、接合信頼性に優れたパワーモジュール用基板10を製造することができる。
さらに、本実施形態では、アルミニウム板123とヒートシンク140との接合も、液相拡散接合法によって接合されているので、アルミニウム板123とヒートシンク140とを強固に接合できる。
【0075】
また、本実施形態では、緩衝アルミ層116のうち補助セラミックス板117との接合界面近傍及びセラミックス基板111との接合界面近傍に、添加元素であるCuが固溶しているので、緩衝アルミ層116の接合界面近傍の強度を向上させることができる。
具体的には、緩衝アルミ層116のうち補助セラミックス板117及びセラミックス基板111との接合界面近傍におけるCu濃度が0.05質量%以上とされているので、緩衝アルミ層116の接合界面側部分を確実に強化することができ、緩衝アルミ層116における亀裂の発生を防止できる。また、緩衝アルミ層116のうち補助セラミックス板117及びセラミックス基板111との接合界面近傍におけるCu濃度が5質量%以下とされているので、緩衝アルミ層116の接合界面の強度が必要以上に高くなることを防止できる。よって、このパワーモジュール用基板110に熱サイクルが負荷された際の熱応力を緩衝アルミ層116で吸収することができ、セラミックス基板111の割れ等を防止できる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、補助セラミックス板及びセラミックス基板として、AlN、Al
2O
3で構成されたものを例示して説明したが、これに限定されることはなく、Si
3N
4等の他のセラミックス材料で構成されたものであってもよい。
【0077】
また、本実施形態においては、回路層とセラミックス基板との間に、一つの緩衝アルミ層と一つの補助セラミックス板が介装されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、複数の緩衝アルミ層及び複数の補助セラミックス板が介装された構成としてもよい。
【0078】
さらに、第1の実施形態において、補助セラミックス板に、厚さ方向に貫通したスリットを設けたものとして説明したが、これに限定されることはなく、厚さ方向に貫通しない溝部を形成してもよい。この場合、冷熱サイクルによって熱応力が負荷された際に、この溝部を起点として補助セラミックス板が割れることになり、不規則な割れの発生を抑制することが可能となる。
【0079】
また、第2の実施形態において、添加元素としてCuを固着して接合するものとして説明したが、これに限定されることはなく、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を固着してもよい。
なお、MgやCa等の易酸化元素を用いる場合には、アルミニウムとともに添加元素を固着することが好ましい。これにより、MgやCa等の易酸化元素が酸化損耗することを抑制することができる。
【0080】
また、第2の実施形態において、アルミニウム板にCuを固着するものとして説明したが、これに限定されることはなく、補助セラミックス板、セラミックス基板やヒートシンク側に添加元素を固着してもよい。
さらに、スパッタによってCuを固着するものとして説明したが、これに限定されることはなく、めっき、蒸着、CVD、コールドスプレー、又は、粉末が分散しているペースト又はインクなどの塗布等でCuを固着させてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、ヒートシンクをA6063合金で構成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、A1100合金、A3003合金、A5052合金、A7N01合金等の他の金属材料で構成されたものであってもよい。
さらに、ヒートシンクの構造は、本実施形態に限定されることはなく、他の構造のヒートシンクを採用してもよい。
【0082】
また、本実施形態では、ヒートシンクの上に一つのパワーモジュール用基板が接合された構成として説明したが、これに限定されることはなく、一つのヒートシンクの上に複数のパワーモジュール用基板が接合されていてもよい。
【実施例】
【0083】
以下に、本発明の効果を確認すべく実施した確認実験の結果について説明する。
表1に示す銅板、補助セラミックス板、緩衝アルミ層、セラミックス基板、金属層、ヒートシンクを備えた、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を製出し、評価した。
【0084】
(本発明例1−6)
銅板と補助セラミックス板との接合には、Ag−24質量%Cu−2質量%Ti−14質量%In合金からなり、厚さ50μmのろう材を用いた。
補助セラミックス板と緩衝アルミ層となるアルミニウム板との接合には、Al−7.5質量%Si合金からなり、厚さ20μmのろう材を用いた。
銅板と補助セラミックス板と緩衝アルミ層となるアルミニウム板とを、積層方向に圧力15kgf/cm
2で加圧した状態で、真空炉(圧力10
−4Pa、温度650℃)に装入し、銅板と補助セラミックス板、補助セラミックス板と緩衝アルミ層となるアルミニウム板を同時に接合した。
【0085】
次に、緩衝アルミ層とセラミックス基板、セラミックス基板と金属層となるアルミニウム板、金属層となるアルミニウム板とヒートシンクとの接合には、Al−10質量%Si合金からなり、厚さ50μmのろう材を用いた。
銅板、補助セラミックス板及び緩衝アルミ層と、セラミックス基板と、金属層となるアルミニウム板と、ヒートシンクとを、積層方向に圧力3.5kgf/cm
2で加圧した状態で、真空炉(圧力10
−4Pa、温度610℃)に装入し、緩衝アルミ層とセラミックス基板、セラミックス基板と金属層となるアルミニウム板、金属層となるアルミニウム板とヒートシンクとを同時に接合した。
なお、本発明例4−6においては、補助セラミックス板として、7mm間隔で複数のスリットが形成されたものを用いた。
【0086】
(本発明例7−12)
銅板と補助セラミックス板との接合には、Ag−24質量%Cu−2質量%Ti−14質量%In合金からなり、厚さ50μmのろう材を用いた。
また、緩衝アルミ層となるアルミニウム板の両面及び金属層となるアルミニウム板の両面に、スパッタリングによってCuを固着した。Cuの固着量は、0.15mg/cm
2とした。
【0087】
銅板、補助セラミックス板、緩衝アルミ層となるアルミニウム板、セラミックス基板、金属層となるアルミニウム板、ヒートシンクを、積層し、これを積層方向に圧力20kgf/cm
2で加圧した状態で、真空炉(圧力10
−4Pa、温度650℃)に装入し、銅板と補助セラミックス板、補助セラミックス板と緩衝アルミ層となるアルミニウム板、緩衝アルミ層となるアルミニウム板とセラミックス基板、セラミックス基板と金属層となるアルミニウム板、金属層となるアルミニウム板とヒートシンクと、を同時に接合した。
なお、本発明例10−12においては、補助セラミックス板として、7mm間隔で複数のスリットが形成されたものを用いた。
【0088】
(比較例1,2)
比較例として、セラミックス基板の一方の面に銅板を接合し、セラミックス基板の他方の面に金属層となるアルミニウム板を接合し、かつ、金属層とヒートシンクを接合して、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を製出した。
【0089】
比較例1においては、銅板とセラミックス基板との接合には、Ag−24質量%Cu−2質量%Ti−14質量%In合金からなり、厚さ50μmのろう材を用いた。また、セラミックス基板と金属層となるアルミニウム板との接合には、Al−7.5質量%Si合金からなり、厚さ20μmのろう材を用いた。
銅板とセラミックス基板と金属層となるアルミニウム板とを、積層方向に圧力15kgf/cm
2で加圧した状態で、真空炉(圧力10
−4Pa、温度650℃)に装入し、銅板とセラミックス基板、セラミックス基板と金属層となるアルミニウム板を同時に接合し、パワーモジュール用基板を製出した。
【0090】
パワーモジュール用基板とヒートシンクとの接合には、Al−10質量%Si合金からなり、厚さ50μmのろう材を用いた。パワーモジュール用基板とヒートシンクとを積層方向に圧力3.5kgf/cm
2で加圧した状態で、真空炉(圧力10
−4Pa、温度610℃)に装入し、パワーモジュール用基板とヒートシンクとを接合した。
【0091】
比較例2においては、銅板とセラミックス基板との接合には、Ag−24質量%Cu−2質量%Ti−14質量%In合金からなり、厚さ50μmのろう材を用いた。
また、金属層となるアルミニウム板の両面に、スパッタリングによってCuを固着した。Cuの固着量は、0.15mg/cm
2とした。
銅板、セラミックス基板、金属層となるアルミニウム板、ヒートシンクを、積層し、これを積層方向に圧力20kgf/cm
2で加圧した状態で、真空炉(圧力10
−4Pa、温度650℃)に装入し、銅板とセラミックス基板、セラミックス基板と金属層となるアルミニウム板、金属層となるアルミニウム板とヒートシンクと、を同時に接合した。
【0092】
(冷熱サイクル前後の電気抵抗値評価)
得られたヒートシンク付パワーモジュール用基板について、冷熱サイクル試験を実施し、冷熱サイクル負荷前後の電気抵抗値の変化について評価した。
電気抵抗値は、
図15及び
図16に示すように、回路層上の中心点Aとヒートシンク上の点B間をテスタ(KEITHLEY社製:2010MULTIMETER)を用いて、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の積層方向の電気抵抗値を測定した。なお、ヒートシンク上の点Bは、点Aから回路層の最短の端部を求め、点Aと前記端部を通る直線上であって、点Aと前記端部の距離Hと同距離だけ前記端部から離れたところからヒートシンク上に垂線を下ろした地点とした。ここで、電気抵抗値が10
10Ω以上の場合には、〇と評価し、10
8Ω未満の場合には、×と評価した。
【0093】
冷熱サイクルは、エスペック株式会社製TSB−51を用いて、液相としてフロリナート(住友スリーエム株式会社製)を使用して実施した。−40℃×5分←→125℃×5分を1サイクルとして3000サイクル実施した。そして、冷熱サイクル負荷前後の電気抵抗値を測定した。評価結果を表2に示す。
【0094】
(セラミックス基板の外周部クラック観察)
冷熱サイクル負荷後のヒートシンク付パワーモジュール用基板について、外観から観察できるセラミックス基板の外周部でのクラックの有無を観察した。セラミックス基板の外周部のいずれかにクラックが認められたものは×とし、クラックが認められなかったものは〇と評価した。評価結果を表2に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
本発明例においては、冷熱サイクル負荷前後で電気抵抗値が大きく変化せず、絶縁性が確保されていることが確認される。
これに対して、比較例1,2においては、冷熱サイクル負荷後に電気抵抗値が大幅に低下しており、十分に絶縁されていないことが確認される。これは、セラミックス基板に割れが生じたためと推測される。
以上のことから、本発明によれば、回路層を銅板で構成しても、セラミックス基板の割れを防止でき、絶縁性を確保することができる。