特許第5957904号(P5957904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957904
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】液体用紙容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/40 20060101AFI20160714BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160714BHJP
   B32B 1/02 20060101ALI20160714BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20160714BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   B65D5/40
   B32B27/00 H
   B32B1/02
   B32B27/10
   B32B27/32 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-11817(P2012-11817)
(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公開番号】特開2013-151296(P2013-151296A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2015年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 友之
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−022411(JP,A)
【文献】 特開2004−181752(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0089656(US,A1)
【文献】 特開2007−268934(JP,A)
【文献】 特開2008−143585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/00− 5/76
B32B 1/02
B32B27/00
B32B27/10
B32B27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア層の蒸着面にアンカーコート剤を塗工し、アンカーコート層を形成しながら、前記アンカーコート層上に押し出し温度280℃で接着性熱可塑性樹脂を押し出して、シーラント層とラミネートし、内層フイルムを形成する工程と、
前記内層フイルムのバリア層側に接着層を介して、紙基材をラミネートする工程と、
前記紙基材上に熱可塑性樹脂層を形成する工程と、
ブランクス形状に打ち抜き、加熱溶着により、スリーブを作成する工程とを含むことを特徴とする液体用紙容器の製造方法
【請求項2】
前記接着性熱可塑性樹脂は、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の液体用紙容器の製造方法
【請求項3】
前記アンカーコート層の乾燥後の塗布量が0.5g/mであることを特徴とする請求項1または2に記載の液体用紙容器の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の風味が変わらない液体用紙容器に関する。バリア性基材を積層した紙を主体とする積層体を使用した液体用紙容器において接着層由来の樹脂臭成分が溶出することの少ない紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や医薬品などを包装する包装材料として、例えば、紙層/ポリエチレン層/アルミ箔層/ポリエステル層/シーラント層のような各層が積層されてなる積層体を用いた紙容器が広く用いられてきた。
この積層体のポリエステル層とシーラント層との貼り合わせは、通常はポリエステルフィルムからなるポリエステル層に二液硬化型ポリウレタン系などのドライラミネート用接着剤を塗布してから、シーラント層を押出ラミネートすることにより行っていた。そして、このような積層体は適度のラミネート強度やガスバリア性などを有しており、食品や医薬品などを包装するための包装材料として広く使用されている。
【0003】
しかしながら、従来のドライラミネート用接着剤を使用している液体用紙容器においては、殺菌処理を目的とした加熱充填により内容液側に溶出してくる接着剤由来成分が多いために内容液そのものの風味が変質してしまうという問題があった。
特に内容物の飲料成分としてアルコールを含有する場合にはこの接着剤由来成分の溶出による充填や保存の過程での風味変質の問題は深刻であった。
【0004】
一方、内容物には、アルカリ性物質、香料、界面活性剤、高沸点有機溶剤などを含有するものも多くあり、これらの内容物を包装すると、接着層を構成する接着剤に悪影響を及ぼし、積層体におけるラミネート強度の低下を招いたり剥離が生じることがあった。
【0005】
このような状況に対応するため、ラミネート加工に使用される接着剤の改良が種々行われており、アルカリ性の高い内容物に対する耐性を向上させ、さらには各種プラスチックフィルムに対する接着力を向上させた接着剤などが提案されている。
例えば、特許文献1には、有機ポリオール化合物、有機ポリイソシアネート化合物、鎖延長剤を反応して得られるNH基およびNH基を有するポリウレタン樹脂であって、分子量とアミン価が特定の範囲にあるポリウレタン樹脂と、有機ポリイソシアネート化合物とを配合した接着剤組成物が提案されている。
【0006】
包装する内容物が湿布薬や浴用剤などの場合、これらには揮発性物質が含まれているので、前述したような構成の積層体を包装材料として使用し、これらの内容物を包装した時、揮発性物質の強い浸透力によってポリエステルフィルムからなるポリエステル層とシーラント層間のラミネート強度が経時的に低下し、その結果デラミネーション(剥離)を引き起こすという問題があった。
【0007】
これに対して、特許文献5では、基材上に、一級アミングラフトアクリル系ポリマーであるアミン含有ポリマーからなる第1接着層と、ジイソシアネートモノマー、または、ジイソシアネートモノマーのアダクトタイプ、ビューレットタイプ、あるいはトリマー(イソシアヌレート)タイプの誘導体のいずれかからなる第2接着層との二層構成の接着層を設け、さらに第2接着層上にはシーラント層を設けてある積層体が提案されている。
【0008】
また、特許文献3には、基材の上に、1級アミングラフトアクリル系ポリマーとウレタン変性エポキシ樹脂を、樹脂中のエポキシの混合当量が、アミンに対して少ない一定範囲
で混合してなる第1接着層が形成され、その上にイソシアネート化合物からなる第2接着層が形成され、その上にシーラント層が押出しラミネート法又は熱ラミネート法により積層され、第2の接着層と第1の接着層とが反応して形成された架橋反応物で基材とシーラント層が強固に接着されている積層体が提案されている。
【0009】
さらに特許文献4には、基材の上に少なくとも接着層とシーラント層がこの順序で設けられていて、接着層がイソシアネート化合物からなる積層体が、また特許文献2には、主剤よりも硬化剤の配合割合の方が大きく、また1μm以下の非常に薄くて緻密な接着層が提案されている。
接着層の強度低下に対するこのような対策は同時に接着層に含まれる低分子量物質の溶出を抑制する付随的な効果もあると考えられるが、逆に接着層中の低分子量物質を増加させる効果も考えられる。
【0010】
二液硬化型ウレタン接着剤として用いられる一般的なポリエステルポリオールやポリエステルポリウレタンポリオールを主剤とした接着層にはその重合や製造段階に於いて加熱反応で生じる低分子量の副生成物成分が残存していることが多く、ドライラミネート、養生硬化後に溶出物試験によってしてしばしば検出されていた。
従来は、接液面から紙容器の材料に含まれる低分子物質が溶出することが内容物の香りや味に影響することを防止するための対策として、環状ポリオレフィンなどからなる吸収層をシーラント層に用いるなどの対応が行われてきた。
【0011】
特許文献6、特許文献7には接着剤由来の低分子量物質の溶出が少なく、時には重合触媒およびシランカップリング剤等からの分解残留物も少ないドライもしくはノンソルベントラミネーション用接着剤として、主剤が、ダイマー脂肪酸類とそのエステル化合物とグリコール類との反応によりできるポリエステルレジンでなるドライラミネーション用接着剤が提案されている。
【0012】
特許文献8には高ガスバリア性を維持しつつ、包装材のヘッドスペース分の酸素を酸素吸収剤で消費させ、高ガスバリア層中のガスバリア性被膜層の性能を水蒸気吸収剤で消費させ、ボイル・レトルト直後から高ガスバリア性を発現させる包装材として、ベースフィルム層を含む多層ガスバリア性層とポリオレフィン樹脂からなるシーラント層との層間に、酸素吸収剤又は/及び水蒸気吸収剤を含むポリオレフィン樹脂単体又はポリオレフィン樹脂と環状ポリオレフィンとのブレンドによるポリオレフィン樹脂層を積層し、多層ガスバリア性層とポリオレフィン樹脂層との層間にドライラミネーション用接着剤層を積層した包装材が提案されている。
【0013】
特許文献9には、接着剤由来のエステルオリゴマーを低減させ、内容物を充填保存した場合も、ボイル、レトルト等の高温殺菌処理した場合にも内容物に影響を与えないラミネート用接着剤組成物として、 主としてポリオールとポリイソシアネートとから成り、ポリオール及び又はポリイソシアネート中にポリエステル樹脂を含有する二液型ラミネート用接着剤組成物であって、該ポリエステル樹脂の脂肪族酸に基づくエステル結合濃度が一定量以下のラミネート用接着剤組成物が提案されている。
【0014】
特許文献10、特許文献11には、複合フィルムの内容物中に溶出する低分子量化合物を低減して、その内容物が本来有する性能を損なわせることのない、ラミネート用接着剤として、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを含み、ポリオール成分中に、ポリエステルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを反応させることによって得られるポリエステルポリウレタンポリオールを含有するラミネート用接着剤であって、そのラミネート用接着剤によって接着された複合フィルムから抽出された抽出水中の環状エステル化合物の濃度が一定値以下であるラミネート用接着剤が提
案されている。
【0015】
低分子量成分の溶出防止を試みたこれらの提案は、シーラント層とバリア層の接着において特殊な接着剤を必要とする点で、とくに苛酷な条件に適用するには工程の設計及び効果対費用の点で無理があった。
そこで、本発明者は、紙容器を構成する積層体の内容物に近い接液側でバリア層とシーラント層を接着する際に用いられる接着層の加工条件を検討した結果、接着層樹脂を押し出すときの加工温度を特定の値とすることによって、接着強度を落とすことなく、樹脂臭を減少させて内容液の風味変質を防止することが出来る液体用紙容器とすることが可能であることを見出し本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平10−130615号公報
【特許文献2】特開2006−187908号公報
【特許文献3】特開2006−82465号公報
【特許文献4】特開2005−335374号公報
【特許文献5】特開2004−249656号公報
【特許文献6】特開2002−155260号公報
【特許文献7】特開2004−238050号公報
【特許文献8】特開2004−136479号公報
【特許文献9】特開2000−290631号公報
【特許文献10】特開2001−107016号公報
【特許文献11】特開2001−107017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、液体用紙容器の構成部材から容器内に放出される成分を低減して内容液の味覚や風味の変質を防止することを目的としている。
その課題とするところは、紙容器を構成する積層体の内容物に近い接液側でバリア層とシーラント層を接着する際に用いられる接着層樹脂層を樹脂臭を発生しがたい条件で押し出しラミネートすることによって、内容液側に放出されてくる接着剤由来成分を減少させて内容液の風味変質を防止することが出来る液体用紙容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の請求項1に記載の発明は、バリア層の蒸着面にアンカーコート剤を塗工し、アンカーコート層を形成しながら、前記アンカーコート層上に押し出し温度280℃で接着性熱可塑性樹脂を押し出して、シーラント層とラミネートし、内層フイルムを形成する工程と、
前記内層フイルムのバリア層側に接着層を介して、紙基材をラミネートする工程と、
前記紙基材上に熱可塑性樹脂層を形成する工程と、
ブランクス形状に打ち抜き、加熱溶着により、スリーブを作成する工程とを含むことを特徴とする液体用紙容器の製造方法である。
【0019】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記接着性熱可塑性樹脂は低密度ポリエチレン、または直鎖上低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の液体用紙容器の製造方法である。
【0020】
本発明の請求項3に記載の発明は、前記アンカーコート層の乾燥後の塗布量が0.5g/mであることを特徴とする請求項1または2に記載の液体用紙容器の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に係る液体用紙容器の製造方法によれば、バリア層の接液面側に設けた接着層として280℃の低温押し出しによる接着性熱可塑性樹脂層を用いてシーラント層とラミネートした積層体を用いることにより、従来の押し出し温度が高いために発生していた樹脂臭を抑えることが出来る。
アンカーコート剤を用いる場合でも、従来のドライラミネートの場合の接着剤の塗布量に比べてアンカーコート剤の塗布量を押さえることが出来る。
また、押し出し温度を低温とすることで起こり得る接着力の低下を防止する手段としてはバリア層表面に対するオゾン処理等の方法によることも可能であり、充填適性、紙容器生産適性等の従来の液体用紙容器としての機能性を保持したままで内容物の味覚改良に寄与する液体用紙容器とすることが可能である。
【0022】
請求項2に係る液体用紙容器の製造方法によれば、LDPEまたはLLDPEを使うことによって低温でラミネートした場合の接着性が向上する。
また、アンカーコート層を用いれば接着性がらに向上する。
そのため、食品や飲料等が充填されている場合、特にアルコール飲料の容器として、その食品や飲料等が本来有する味やにおい等の味覚的な特徴を損わせることがすくない液体用紙容器として好適に使用することが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の液体用紙容器に用いる積層体の概略の構成例を示す説明図である。(A)はバリア層に蒸着フィルムを用いた場合、(B)はアルミニウム箔を用いた場合のそれぞれ断面を示す。
図2】本発明の液体用紙容器の容器形状の例(ゲーベルトップ型)を示す説明図である。(A)は形状外観、(B)はブランクスを示す。
図3】本発明の液体用紙容器の容器形状の例(フラットトップ型)を示す説明図である。(A)は形状外観、(B)はブランクスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の液体用紙容器に用いる積層体の一例の概略の断面構成を示している。図1(A)はバリア層に蒸着フィルムを用いた場合、図1(B)はバリア層にアルミニウム箔を用いた場合のそれぞれ断面を示す
図1(A)に示した積層体は、容器外側となる紙基材(1)の上面に熱可塑性樹脂層(2)を積層し、下面に接着層(7)、バリア層(3)、接着層(4)、シーラント層(5)を順次に積層してなる積層体である。外側の熱可塑性樹脂層(2)の表面には印刷インキ層(6)が必要に応じて設けられている。
【0025】
本発明の液体用紙容器に用いる積層体を構成する紙基材(1)としては、通常、カップ原紙等の板紙が用いられる。坪量と密度は容器の容量やデザインにより適宜選定されるが、通常は坪量200g/m〜500g/mの範囲で密度0.6g/cm〜1.1g/cmの範囲のカップ原紙がよく用いられる。
本発明の液体用紙容器に用いる積層体を構成する熱可塑性樹脂層(2)としては、主に低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン系樹脂が用いられ、押し出し加工により紙表面にコートを行なう。インキの密着性を向上させるために印刷時に押し出し面にコロナ処理を行なうことが多い。
【0026】
本発明の液体用紙容器に用いる積層体を構成する接着層(7)は、紙基材(1)とバリ
ア層(3)の接着を行なうものであり、バリア層(3)の上に、押し出し加工による高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンーメタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレンーアクリル酸共重合体(EAA)、アイオノマー、ポリプロピレン(PP)等の接着性のある熱可塑性樹脂層が用いられる。厚みとしては10μm〜60μmの範囲が適当であり、10μm以下では充分な接着強度が得られない。
その際、アンカーコート、オゾン処理、コロナ処理等を施すことによって接着強度を向上させることも可能である。
【0027】
本発明の液体用紙容器に用いる積層体を構成するバリア層(3)としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンなどのプラスチックの延伸または未延伸のフィルムにアルミニウムなどの金属やアルミナ、酸化珪素などの金属酸化物の薄膜(5nm〜100nm)を蒸着した厚みが6μm〜25μm程度の透明蒸着加工フィルム、さらに厚みが5μm〜15μm程度のアルミニウム箔などが適用できる。
アルミニウム箔とポリエステルフィルムをドライラミネートしたフィルムでもよい。この場合アルミニウム箔の厚みは5μm〜15μm程度、ポリエステルフィルムの厚みは6μm〜25μm程度がよい。
それらの一方の面にコロナ処理などの必要な表面処理がなされていてその上に接着層が安定的に形成できるようになっていれば、いずれのタイプのフィルムでもバリア層基材として使用可能である。
【0028】
接着層(4)は、前記のバリア層(3)の上に、押し出し加工による高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンーメタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレンーアクリル酸共重合体(EAA)、アイオノマー、ポリプロピレン(PP)等の接着性のある熱可塑性樹脂が用いられるが低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いるのが接着性の面からさらに好ましい。
【0029】
この場合の押し出し温度が280℃の低温押し出しによるラミネートとすることによって特にLDPEでは低臭効果が顕著である。
その際、例えばバリア層(3)の接液面側にアンカーコート、オゾン処理、コロナ処理等を施すことによって接着強度を向上させることも可能である。アンカーコート剤の塗布量は0.01g/mから1.0g/mの範囲が適当である。
【0030】
他方、接着層(4)上に設けられるシーラント層(5)は、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などからなる層である。
具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモ・ブロック・ランダムの各ポリプロピレン樹脂や、プロピレン−αオレフィン共重合体などのプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体などのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチルやエチレン−アクリル酸エチルやエチレン−メタクリル酸メチルやエチレン−メタクリル酸エチルなどのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物、カルボン酸部位をナトリウムイオン、亜鉛イオンで架橋した、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリオレフィン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂の単体あるいは2種以上のブレンド物などにより設けられる。
【0031】
中では密度0.925g/cm以下でメルトインデックス4以上の直鎖状低密度ポリエチレンが望ましい。
シーラント層は単層で形成されていてもよく、多層でも構わない。厚みは特に限定はないが30μm〜100μmの範囲が好ましい。通常はTダイ法またはインフレーション法により製膜されるが、押し出しラミネート法により「バリア層/ポリエチレン押し出し層/ポリエチレン押し出し層」の構成としてもよい。
【0032】
図1(B)は本発明の液体用紙容器に用いる積層体の他の一例の概略の断面構成を示したものである。
図1(A)に示した例ではバリア層として蒸着プラスチックフィルムを用いたが図1(B)の例ではバリア層としてバリア性の高いアルミニウム箔を用い中間層としてポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンなどのプラスチックの非蒸着フィルムを用いた構成例を示した。
【0033】
図1(B)の積層体は、容器外側となる紙基材(1)の上面に熱可塑性樹脂層(2)を積層し、下面にアルミニウム箔からなるバリア層(3)、接着層(9)、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンなどのプラスチックの非蒸着フィルムからなる中間層(10)、接着層(4)、シーラント層(5)を順次に積層してなる積層体である。
外側の熱可塑性樹脂層(2)の表面には印刷インキ層(6)が必要に応じて設けられている。
【0034】
以上、本発明に係る液体用紙容器に用いる積層体について説明したが、これらの積層体は上記のような構成のものに限定されるものではなく、液体用紙容器としての用途を考慮し、容器として要求される剛性や耐久性などを向上する目的で、他の層を介在させた構成であってもよい。
【0035】
本発明に係る液体用紙容器を用いた場合には、バリア層の接液面側に設けた接着層として280℃の低温押し出しによる接着性熱可塑性樹脂層を用いてシーラント層とラミネートした積層体を用いることにより、押し出し温度が高いために発生していた樹脂臭を抑えることが出来る。
押し出し温度を低温にすることで起こり得る接着力の低下を防止するためにアンカーコート剤を用いるアンカーコート剤の塗布量を押さえることが出来る。
【0036】
また、接着力の低下はバリア層表面に対するオゾン処理等の方法によることも出来る。
それにより充填適性、紙容器生産適性等の従来の液体用紙容器としての機能性を保持したままで内容物の味覚改良に寄与する液体用紙容器とすることが可能である。
そのため、食品や飲料等が充填されている場合にも、その食品や飲料等が本来有する味やにおい等の味覚的な特徴を損わせることがすくない液体用紙容器として好適に使用することが出来るようになる。
【0037】
本発明の液体用紙容器に用いる構成の積層体は、例えば次のようにして作製できる。
すなわち作製方法の一つとしては、前記バリア層の無機化合物蒸着面にコロナ処理などの表面処理を行い、アンカーコート剤を押出ラミネートの塗工部において塗工して接着層を設ける。
その後に、この接着層上に、LLDPEからなる接着層をダイ下温度280℃で押し出しLLDPEフィルムからなるシーラント層を積層し、バリア層/接着層/シーラント層の三層からなる構成の積層体(内層フィルム)を得る方法が例示できる。
【0038】
このときの押し出し温度としては、280℃が好ましい。280℃未満ではオゾン処理を施しても押出樹脂の酸化不足により層間ラミネート強度が不十分となり、280℃を超
えると熱分解等による樹脂臭が強くなり、その結果内容物の味覚に悪影響を与える。
また、このときのオゾン処理条件としては、5mg/m〜20mg/mが好ましい。5mg/m未満では押出樹脂の酸化不足により層間ラミネート強度が不十分となり、20mg/mを超えると過度の酸化により押出樹脂の凝集力が低下し、その結果層間ラミネート強度が不十分となる。
上記押出温度にオゾン処理条件を適宜組み合わせることによって、低温で押し出しラミネートした場合でも層間ラミネート強度がさらに向上した積層体を得ることができる。
【0039】
以上のような作製方法によれば、液体用紙容器の内層フィルムに用いる、バリア層とシーラント層とのラミネート強度が良好で、かつ接着層の押し出し時の樹脂臭に起因する内容物液体に対する悪影響が少ない積層体を作製することができる。
【0040】
この内層フィルムとカップ原紙をポリエチレンの押出し加工により貼り合せて、カップ原紙の反対面に熱可塑性樹脂層を形成し、さらに熱可塑性樹脂層の表面にコロナ処理を行う。
次工程で印刷、ブランクス形状に打ち抜き加工を行い、さらに加熱溶着によりスリーブを作成する。具体的にはこの紙を基材とした積層体を容器の形状に合わせて所定の形状に打ち抜き、同時に折曲げ用の罫線を入れたブランクスとして成形する。そのブランクスを罫線に沿って折曲げ、組み立てて必要な部分を接着することによって本発明の液体用紙容器を製造することが出来る。
【0041】
たとえば図2(A)に示したゲーベルトップ型(屋根型)の液体用紙容器は図2(B)に示したブランクスから通常の方法で容易に製造することが出来る。
一般的な紙箱ブランクスを折り曲げて箱を形成する場合には、まず、ブランクス(B)を給紙部から折りぐせ部に供給して折ぐせを付けた後、底折り部に供給して底板を内側に折込んで側板に重ねると共に、耳部を外側に折込む。
次に、糊付け部において、耳部の裏面側と接着フラップの表面側に接着材層をそれぞれ形成した後、残りの底板を内側に折り曲げて側板に重ねる。
次に、本折り部において、側板を折込んで一方の底板を他方の底板に折り重ねることにより、一方の底板の耳部の接着材層が他方の底板に接着すると共に、接着フラップの接着材層が側板に接着し、折り畳まれた状態の紙箱(スリーブ)を完成する。
【0042】
この状態での紙箱は接着部分の乾燥が完了していないので、圧着搬送部の上下一対の圧着ベルトにて紙箱を圧着しながら搬送して紙箱の接着を促進して成形を完了し、排出部によって次工程に排出される。
この折り畳まれた状態の紙箱に充填装置によってボトム成形後に内容物の充填と必要な部分の封止を行うことによって内容物の充填された容器を作成する。
図3(A)に示したフラット型の液体用紙容器も同様に図3(B)に示したブランクスから通常の方法で容易に製造することが出来る。
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0043】
<実施例1>
以下の層構成の積層体を作成した。
LDPE樹脂層(20μm)/板紙(350g/m)/EMAA(20μm)/アルミナ蒸着PETフィルム(12μm)/アンカーコート(0.5g/m)/LDPE(30μm)/シーラントLLDPEフィルム(30μm)。
厚みが12μmのアルミナ蒸着二軸延伸PETフィルムを使用し、その蒸着面にアンカーコート剤をグラビアコート法で塗工してアンカーコート層を形成しながら、厚み30μmのLDPE樹脂を前記アンカー層上に押し出し温度280℃、加工速度80m/minで押し出してシーラント層としてのLLDPEフィルムを積層し、内層フィルムを得た。アンカーコート層の乾燥後の塗布量は0.5g/mであった。
【0044】
坪量350g/mのカップ原紙と上記内層フィルムをEMAA樹脂の押出しラミネートにより貼り合わせて、容器外側となるカップ原紙の反対面にLDPE樹脂を20μmの厚みで押出してさらにその表面にコロナ処理を行った。
コロナ処理面に印刷を施し印刷寸法に合わせて、ゲーベルトップ型の柱状容器(図2B)となるようなブランクス形状に打ち抜き加工をし、さらに必要部分を加熱溶着により接着して折り畳まれた状態(スリーブ状態)の紙容器を得た。
さらに、充填工程に於いて、容器のボトム成形後に内容物として20%エタノール水溶液を充填してからトップ成形して充填済み容器を作成した。
【0045】
<実施例2>
シーラントLLDPEフィルムとアルミナ蒸着PETフィルムを接着する接着層として用いる樹脂をLDPE樹脂からLLDPE樹脂に代えた他は実施例1と同様にして充填済み容器を作成した。
【0046】
<比較例1>
シーラントLLDPEフィルムとアルミナ蒸着PETフィルムを接着する接着層として用いる樹脂の押し出し温度を320℃に代えた他は実施例1と同様にして充填済み容器を作成した。
【0047】
<比較例2>
シーラントLLDPEフィルムとアルミナ蒸着PETフィルムを接着する接着層としてウレタン系接着剤による接着層(乾燥時塗布量2.0g/m)を用い、シーラント層として厚みが60μmのLLDPEフィルムを用いた他は実施例1と同様にして充填済み容器を作成した。
【0048】
<評価>
実施例1,2および比較例1,2で作成した液体用紙容器の充填成型前の物性試験および充填成型後の物性試験および味覚試験を行なった。
充填成型後の物性試験および味覚試験は以下の項目である。
・味覚試験…40℃で1週間保存し、比較例1と実施例1、実施例2、比較例2とを3点識別法により比較して比較例1との相対評価を行なった。
・シールチェック…充填成型後に充分なシールが出来ているか(漏れがないか)を確認した。
・落下試験…80cmの高さより5回落下させ破袋なきことを確認した。
【0049】
充填成型前の物性試験は以下の項目である。
・シール強度…紙容器のパネル貼り合わせ部強度を測定した。
・ラミネート強度…紙容器に用いた積層体のラミネート強度を測定した。
・罫線入り具合と折れ曲げ強度…充填可能な充填適性のある罫線が入っているかを確認した。
【0050】
<結果>
結果は表1に示した。実施例1および実施例2の液体用紙容器は味覚試験において比較例1および比較例2の液体用紙容器に比べて明らかに味覚向上が認められた他は液体用紙容器としての充填適性と紙容器としての物性差は認められなかった。
表1の評価結果で◎は味覚変化なし、○は良好、△は味覚変化ややありを意味する。
【表1】
【0051】
結果から明らかなように本発明の液体用紙容器は、接着層から放出される樹脂臭が従来の接着層に比較して極端に少なく、そのため、食品や飲料等が充填されている場合にも、その食品や飲料等が本来有する味を損わせることがなく容器として好適に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の液体用紙容器は、特にアルコール飲料やノンアルコール飲料などの味覚に敏感な内容物の容器として利用できるが、内容物が接着剤等により影響を受け易い非食品用の紙容器にも応用できる。
【符号の説明】
【0053】
1…紙基材
2…熱可塑性樹脂層
3…バリア層
4…接着層
5…シーラント層
6…印刷インキ層
7…接着層
9…接着層
10…中間層
図1
図2
図3