(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダイヤフラムを前記第1開口部側または前記第2開口部側へ付勢し、前記弁座に対して前記ダイヤフラムを与圧する与圧部をさらに備える、請求項1又は2に記載のバルブ。
【背景技術】
【0002】
従来、液体貯蔵部に貯蔵されている液体を、バルブを介して液体消費部へ送る送液システムが知られている。
【0003】
図10は、特許文献1の送液システム800の概略構成図である。この送液システム800は、燃料を貯蔵する燃料カートリッジ1(液体貯蔵部)と、耐圧用バルブ2と、受動バルブ3と、燃料を輸送するポンプ4と、ポンプ4から燃料の供給を受けて発電する発電セル5(液体消費部)と、流路7、8と、からなる。燃料は、例えばメタノールである。
【0004】
ポンプ4は、燃料を吸引する吸引孔41と、燃料を吐出する吐出孔42と、燃料の逆流を防ぐ逆止弁43、44と、を有する。
受動バルブ3は、バルブ筺体10と、該バルブ筺体10内を分割して第1バルブ室11と第2バルブ室12をバルブ筺体10内に構成するダイヤフラム20と、を有する。
【0005】
バルブ筺体10には、第1バルブ室11に連通する第1開口部15と、第2バルブ室12に連通する第2開口部16と、第3開口部17とが形成されている。さらに、バルブ筺体10には、第3開口部17の周囲からダイヤフラム20側へ突出し、ダイヤフラム20に当接するOリング(弁座)30が設けられている。
【0006】
そして、燃料カートリッジ1は耐圧用バルブ2及び流路7を介して、受動バルブ3の第2開口部16とポンプ4の吸引孔41とに接続されている。ポンプ4の吐出孔42は、流路8を介して第1開口部15に接続されている。さらに、第3開口部17は、発電セル5に接続されている。
【0007】
以上の構成において、ポンプ4のポンピング動作が開始すると、燃料カートリッジ1に貯蔵されている燃料は耐圧用バルブ2及びポンプ4を介して第1開口部15から第1バルブ室11に流入し、第1バルブ室11の圧力が高まる。この結果、受動バルブ3のダイヤフラム20が第2バルブ室12側へ湾曲してOリング30から離間し、第1開口部15と第3開口部17とが連通する。即ち受動バルブ3が開く。
【0008】
これにより、燃料カートリッジ1に貯蔵されている燃料は、ポンプ4のポンピング動作により、耐圧用バルブ2、ポンプ4、及び受動バルブ3を介して発電セル5に供給される。発電セル5は、当該燃料の供給を受けて発電する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願の発明者は、前述の送液システム800を改良して、以下に示す構成の、薬液を送液する送液システムを考案した。
図11は、本発明の比較例に係る送液システム900の概略構成図である。
図12は、
図11に示す送液システム900の滅菌ガス注入時の概略構成図である。
図13は、
図11に示す送液システム900の滅菌ガス排出時の概略構成図である。
【0011】
この送液システム900は、薬液を貯蔵する薬液バッグ6を燃料カートリッジ1の代わりに備え、薬液バッグ6の薬液を発電セル5の代わりに人体9に送液し、耐圧用バルブ2が備えられていない点で、前述の送液システム800と相違する。その他の点については同じである。
【0012】
送液システム900は医療現場で使用され、薬液は、例えばブドウ糖輸液等であり、医療現場で薬液バッグ6に入れられる。薬液バッグ6に入れられた薬液は、ポンプ4のポンピング動作により、ポンプ4、及び受動バルブ3を介して人体9に供給される。
【0013】
送液システム900を含む医療用途の機器は通常、製造後、医療現場へ提供される前に滅菌する必要がある。送液システム900は、
図12に示すように例えばポリエチレンからなる滅菌袋Hに密封され、滅菌釜に入れられてガス滅菌される。
【0014】
送液システム900に対してガス滅菌を行った場合、薬液バッグ6の入力から滅菌ガスEが充填され、薬液に接液する流路全てを滅菌ガスEで満たすことができる。この滅菌ガスEは、例えばエチレンオキサイドガスである。そして、滅菌終了後、滅菌釜内を減圧し、滅菌ガスEを送液システム900外に排出する(
図13参照)。
【0015】
しかしながら、前記滅菌袋Hは医療現場で開封されるため、滅菌時にポンプ4を動作させることができない。そのため、送液システム900では
図13に示すように、ポンプ4に設けられた逆止弁44から流路8を介して受動バルブ3の第1バルブ室11までの流路に満たされた滅菌ガスEが、送液システム900外に排出されない。すなわち、送液システム900では、大量の滅菌ガスEが送液システム900内に残留してしまうという問題がある。
【0016】
そこで本発明は、液体が接液する流路全てを滅菌ガスで満たすことができ、且つ該滅菌ガスを送液システム外へ確実に排出できるバルブ、及びこのバルブを備える送液システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のバルブは、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
【0018】
(1)第1開口部および第2開口部が形成され、前記第1開口部または前記第2開口部の周囲に弁座が形成されたバルブ筺体と、
一方の主面にかかる圧力と他方の主面にかかる圧力との差により、前記弁座に対し接触又は離間して、前記第1開口部と前記第2開口部とを連通させたり、前記第1開口部と前記第2開口部との連通を遮断したりするよう前記バルブ筺体に固定されたダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムを前記第1開口部または前記第2開口部から押圧し、前記ダイヤフラムを前記弁座から強制的に離間させるバルブ開放機構と、を備える。
【0019】
この構成では、例えば、ポンプの吐出孔を第1開口部に接続し、液体貯蔵部をポンプの吸引孔に接続し、液体消費部を第2開口部に接続する。
【0020】
この構成では、バルブ開放機構が、押圧によりダイヤフラムを弁座から強制的に離間させているため、バルブは滅菌時、常に開放されている。そのため、例えバルブの第1開口部に逆止弁を有するポンプ等が接続されていたとしても、バルブによる流路の閉塞が行われることがなく、充填された滅菌ガスが、第2開口部から送液システム外に排出される。すなわち、この構成では、滅菌ガスが送液システム内に残留しない。
【0021】
したがって、この構成のバルブによれば、液体が接液する流路全てを滅菌ガスで満たすことができ、且つ該滅菌ガスを送液システム外へ確実に排出できる。
【0022】
なお、滅菌後のバルブ及びこのバルブを備える送液システムは医療現場へ提供され、看護師等の医療従事者がバルブ開放機構を解除する。これにより、バルブ開放機構の押圧により弁座から強制的に離間させられていたダイヤフラムが弁座に当接する。即ち、バルブが強制的に開放されているのは送液がなされる前のみである。
【0023】
そして、滅菌後の送液時には、ダイヤフラムが、一方の主面にかかる圧力と他方の主面にかかる圧力との差により弁座に対し接触又は離間して、第1開口部と第2開口部とを連通させたり、第1開口部と第2開口部との連通を遮断したりする。そのため、この構成のバルブを備える送液システムにおいても、液体貯蔵部に貯蔵される液体は、ポンプのポンピング動作により、前述と同様に、ポンプ及びバルブを介して液体消費部に供給される。
【0024】
(2)前記バルブは、前記第1開口部または前記第2開口部と、前記バルブ筺体の外部とを連通する流路をさらに備え、
前記バルブ開放機構は、前記流路の内壁の一部を構成する弾性体と、前記弾性体を貫通して、前記ダイヤフラムを前記第1開口部または前記第2開口部から押圧するピンとを有する。
【0025】
この構成では、ピンが弾性体から引き抜かれると、弾性体の圧縮応力により貫通孔が収縮して塞がる。そのため、送液時、流路から弾性体を介してバルブの外部へ薬液が漏れることを防止できる。
【0026】
(3)前記ダイヤフラムを前記第1開口部側または前記第2開口部側へ付勢し、前記弁座に対して前記ダイヤフラムを与圧する与圧部をさらに備える。
【0027】
この構成では送液時、与圧部が与圧する圧力までは流量の変化が抑制される。よって、送液システムの周辺環境に変化が生じても、液体消費部に供給される液体の流量を安定させることができる。
【0028】
また、本発明の送液システムは、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
【0029】
(4)前述の(1)から(3)のいずれかに記載のバルブと、
液体を貯蔵する液体貯蔵部と、
前記液体を吸引する吸引孔と前記液体を吐出する吐出孔と前記液体の逆流を防ぐ逆止弁とを有し、前記吸引孔が前記液体貯蔵部に接続され、前記吐出孔が前記バルブの前記第1開口部に接続されるポンプと、を備え、
前記バルブの前記第2開口部は、前記ポンプのポンピング動作によって前記液体貯蔵部から前記ポンプを介して送られた前記液体を消費する液体消費部に接続される、送液システム。
【0030】
前述の(1)から(3)のいずれかに記載のバルブを用いることで、当該バルブを備える送液システムにおいても同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、液体が接液する流路全てを滅菌ガスで満たすことができ、且つ該滅菌ガスを送液システム外へ確実に排出できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
《本発明の実施形態》
以下、本発明の実施形態に係る送液システム100について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る送液システム100の概略構成図である。送液システム100は、薬液を貯蔵する薬液バッグ101と、定流量バルブ103と、薬液を輸送するポンプ104と、流路107、108と、を備える。
【0034】
送液システム100は病院等の医療現場で使用され、薬液は医療現場で薬液バッグ101に入れられる。薬液は、例えばブドウ糖輸液である。薬液バッグ101に入れられた薬液は、ポンプ104のポンピング動作により、ポンプ104、及び定流量バルブ103を介して人体109(後述の
図7参照)に供給される。薬液バッグ101は、当該薬液を入れるための開口部98と、当該薬液の逆流を防ぐ逆止弁99とを有する。
【0035】
なお、薬液バッグ101が、本発明の「液体貯蔵部」に相当する。また、人体109が、本発明の「液体消費部」に相当する。
【0036】
ポンプ104は、薬液を吸引する吸引孔141と、薬液を吐出する吐出孔142と、薬液の逆流を防ぐ逆止弁143、144と、を有する。
【0037】
定流量バルブ103は略直方体形状である。定流量バルブ103は、バルブ筺体110と、該バルブ筺体110内を分割して第1バルブ室111と第2バルブ室112をバルブ筺体110内に構成するダイヤフラム120と、詳細を後述するバルブ開放機構150と、を有する。
【0038】
なお、バルブ筐体110は、例えばPPS(PolyPhenyleneSulfide)樹脂で構成される。また、ダイヤフラム120は、例えばシリコーンゴムで構成される。
【0039】
バルブ筺体110には、第1バルブ室111に連通する第1開口部115と、第2開口部117と、第2バルブ室112に連通する第3開口部118と、が形成されている。バルブ筺体110は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂で構成されている基板125に、表面実装されている。この基板125には、ポンプ104の吐出孔142と第1開口部115とを連通する流入路155と、バルブ筺体110外部と第2開口部117とを連通する流出路157と、が形成されている。
【0040】
そして、薬液バッグ101は流路107を介して、定流量バルブ103の第3開口部118とポンプ104の吸引孔141とに接続されている。ポンプ104の吐出孔142は、流路108を介して定流量バルブ103の流入路155に接続されている。
なお、定流量バルブ103の流出路157は送液時、後述の
図7に示す人体109に、例えばチューブ(不図示)を介して接続される。
【0041】
次に、定流量バルブ103の構造について詳述する。
図2は、
図1に示す送液システム100に備えられる定流量バルブ103の分解斜視図である。定流量バルブ103は、
図2に示すように、第3開口部118が形成された天板121と、第2のバルブ室112を構成する円形の開口領域が形成された側板122と、ダイヤフラム120と、第1のバルブ室111を構成する円形の開口領域が形成された側板123と、第1開口部115及び第2開口部117が形成された底板124と、流入路155及び流出路157が形成された基板125と、を備え、これらを順に積層した構造を有している。
【0042】
ここで、側板122の厚みは、第2のバルブ室112の高さを構成し、側板123の厚みは、第1のバルブ室111の高さを構成する。また、天板121、側板122、側板123、及び底板124がバルブ筐体110を構成する。
【0043】
第1のバルブ室111には、
図1、
図2に示すように、Oリング130が底板124に接着して設けられている。Oリング130は、第2開口部117の周囲からダイヤフラム120側へ突出し、ダイヤフラム120に当接してバルブ閉塞時に液漏れを防ぐ(後述の
図7参照)。Oリング130は、例えばNBR(Nitrile Butadiene Rubber)で構成される。
なお、Oリング130が、本発明の「弁座」に相当する。
【0044】
また、第2のバルブ室112には、
図1、
図2に示すように、バネ129が天板121に嵌入して設けられている。バネ129は、ダイヤフラム120を第2開口部117側へ付勢し、Oリング130に対してダイヤフラム120を与圧する。
なお、バネ129が、本発明の「与圧部」に相当する。
【0045】
また、ダイヤフラム120は、第1バルブ室111側の一方の主面にかかる圧力と第2バルブ室112側の他方の主面にかかる圧力との差によりOリング130に対し接触又は離間して、第1開口部115と第2開口部117とを連通させたり、第1開口部115と第2開口部117との連通を遮断したりするようバルブ筺体110に固定されている。
【0046】
また、基板125には、
図1に示すように、バルブ開放機構150が取り付けられる。バルブ開放機構150は、基板125の流出路157に嵌入されたゴム153と、ゴム153に予め形成された孔を貫通して、ダイヤフラム120を第2開口部117から第2バルブ室112側へ先端で押圧するピン151と、ピン151の後端が嵌入する取手部材152と、を有する。
【0047】
バルブ開放機構150は、ピン151の押圧により、ダイヤフラム120をOリング130から強制的に離間させている。そのため、ピン151が抜かれるまで、定流量バルブ103は常に開放状態となる。
【0048】
なお、ピン151は、例えばPPS(PolyPhenyleneSulfide)樹脂で構成される。取手部材152は、例えば金属からなる。ゴム153は、例えばシリコーンゴムで構成される。
【0049】
次に、送液システム100を滅菌する第1の場面について説明する。送液システム100の滅菌は、送液システム100の製造後、医療現場へ提供される前に行われる。
【0050】
図3は、
図1に示す送液システム100の滅菌ガス注入時の概略構成図であり、
図4は、
図1に示す送液システム100の滅菌ガス排出時の概略構成図である。
図5は、
図1に示す送液システム100の空気注入時の概略構成図であり、
図6は、
図1に示す送液システム100の空気排出時の概略構成図である。送液システム100の滅菌は次の手順で行われる。
【0051】
まず、送液システム100は、
図3に示すように例えばポリエチレンからなる滅菌袋Hに密封され、滅菌釜に入れられる。次に、滅菌釜内を減圧して滅菌釜内の空気を排出してから滅菌ガスEを滅菌釜内に注入する。滅菌ガスEは、エチレンオキサイドガスである。
【0052】
この結果、滅菌釜内の圧力が(例えば数十kPaまで)上昇し、滅菌ガスEが滅菌袋Hを透過し、薬液バッグ101の開口部98や定流量バルブ103の流出路157から流入して、送液システム100の流路全てを滅菌ガスEで満たすことができる。これにより、送液システム100の流路全てが滅菌される。
【0053】
次に、所定時間経過後、滅菌釜内を(例えばマイナス数十kPaまで)減圧する。
図4に示すように、この構成では、バルブ開放機構150が、押圧によりダイヤフラム120をOリング130から強制的に離間させているため、定流量バルブ103は常に開放されている。
【0054】
そのため、例え定流量バルブ103の第1開口部115に、逆止弁を有するポンプ等が接続されていたとしても、定流量バルブ103による流路108の閉塞が行われることがなく、充填された滅菌ガスEを流出路157から送液システム100外に排出できる。
【0055】
次に、送液システム100の流路内に吸着したり残留したりする微量の滅菌ガスEを確実に排出するため、
図5に示すように新鮮な空気Aを滅菌釜内に注入する。この結果、滅菌釜内の圧力が(例えば数十kPaまで)上昇し、新鮮な空気Aが滅菌袋Hを透過し、薬液バッグ101の開口部98や流出路157から流入して、送液システム100の流路全てを新鮮な空気Aで満たすことができる。これにより、送液システム100の流路内に吸着したり残留したりする微量の滅菌ガスEに、新鮮な空気Aが接触できる。
【0056】
この後、
図6に示すように、滅菌釜内を(例えばマイナス数十kPaまで)減圧する。この構成では、バルブ開放機構150が、押圧によりダイヤフラム120をOリング130から強制的に離間させているため、滅菌ガスEの排出時と同様に、新鮮な空気Aを滅菌ガスEとともに流出路157から送液システム100外に排出できる。
なお、新鮮な空気Aの注入と排出は、送液システム100の流路内における滅菌ガスEの吸着量や残留量に応じて複数回行っても良い。
【0057】
以上より、送液システム100では、例え定流量バルブ103の第1開口部115に、ポンプ104のように逆止弁144を有するポンプ等が接続されていたとしても、定流量バルブ103による流路108の閉塞が行われることがなく、充填された滅菌ガスEが第2開口部117に連通する流出路157から送液システム100外に排出される。すなわち、送液システム100では、滅菌ガスEが送液システム100内に残留しない(
図6参照)。
【0058】
したがって、この実施形態の定流量バルブ103によれば、薬液が接液する流路全てを滅菌ガスEで満たすことができ、且つ該滅菌ガスEを送液システム100外へ確実に排出できる。
【0059】
また、この実施形態の定流量バルブ103を用いることで、当該定流量バルブ103を備える送液システム100においても同様の効果を奏する。
【0060】
次に、滅菌後の送液システム100によって薬液を送液する第2の場面について説明する。
図7は、
図1に示す送液システム100の送液時の概略構成図である。
図8(A)は、
図7に示す定流量バルブ103の弁閉時の断面図である。
図8(B)は、
図7に示す定流量バルブ103の弁開時の断面図である。
【0061】
滅菌後の送液システム100は医療現場へ提供され、看護師等の医療従事者は、滅菌袋Hから送液システム100を取り出し、取手部材152を持ってピン151をゴム153から引き抜く。そして、医療従事者は、薬液を薬液バッグ101に入れ、ポンプ104を駆動し、送液システム100の流路内の空気を排出する。送液システム100の流路内の空気を排出した後、医療従事者は、定流量バルブ103の流出路157を人体109に例えばチューブ(不図示)を介して接続する。
【0062】
なお、医療従事者によってピン151が引き抜かれると、
図7に示すように、ピン151の押圧によりOリング130から強制的に離間させられていたダイヤフラム120がOリング130に当接する。即ち、定流量バルブ103では以後、ダイヤフラム120が、一方の主面にかかる圧力と他方の主面にかかる圧力との差によりOリング130に対し接触又は離間して、第1開口部115と第2開口部117とを連通させたり、第1開口部115と第2開口部117との連通を遮断したりする。即ち、定流量バルブ103が強制的に開放されている状態は送液がなされる前のみである。
【0063】
また、ゴム153を貫通していたピン151が医療従事者によってゴム153から引き抜かれると、ゴム153の圧縮応力により貫通孔(不図示)が収縮して塞がる。そのため、送液時、流出路157からゴム153を介して定流量バルブ103の外部へ薬液が漏れることを防止できる。
【0064】
医療従事者が定流量バルブ103の流出路157を人体109に接続した後、ポンプ104の停止時には、定流量バルブ103は
図8(A)に示すように閉じている。ポンプ104を駆動させることにより、薬液バッグ101に貯蔵されている薬液はポンプ104を介して第1開口部115から第1バルブ室111に流入し、第1バルブ室111の圧力が高まる。
【0065】
ここで、
図8(A)に示すように、第1バルブ室111に面し、Oリング130より外側に位置するダイヤフラム120の第1領域の面積をS1とし、ダイヤフラム120の第1領域にかかる圧力(即ちポンプ104の吐出圧力)をP1とし、第2バルブ室112に面するダイヤフラム120の第2領域の面積をS2とし、ダイヤフラム120の第2領域にかかる圧力をP2とし、第1バルブ室111に面し、Oリング130より内側に位置するダイヤフラム120の第3領域の面積をS3とし、ダイヤフラム120の第3領域にかかる圧力をP3としたとき、圧力の釣り合いから、
図8(B)に示すように定流量バルブ103が開く条件は、P1×S1=P1×(S2−S3)>P2×S2となる。
【0066】
そのため、ダイヤフラム120の第1領域にかかる圧力P1がこの条件を満たすと、定流量バルブ103のダイヤフラム120が第2バルブ室112側へ湾曲してOリング130から離間し、第1開口部115と第2開口部117とが連通する。即ち定流量バルブ103が開く。
【0067】
これにより、薬液バッグ101に貯蔵されている薬液は、ポンプ104のポンピング動作により、ポンプ104及び定流量バルブ103を介して人体109に供給される。
【0068】
なお、この送液時、薬液バッグ101が流路107を介して定流量バルブ103の第3開口部118に接続されているため、薬液バッグ101の圧力が急激に高まる等、送液システム100の周辺環境に変化が生じても、人体109に供給される薬液の流量を安定させることができる。
【0069】
また、この送液時、定流量バルブ103はバネ129を有しているため、バネ129が与圧する圧力までは流量の変化を抑制できる。よって、ポンプ104の吐出圧力が急激に高まる等、送液システム100の周辺環境に変化が生じても、人体109に供給される薬液の流量を安定させることができる。
【0070】
《その他の実施形態》
前記実施形態では滅菌ガスとしてエチレンオキサイドガスを用いているが、これに限るものではない。例えば当該滅菌ガスが、ホルムアルデヒドガス、オゾン等の他の滅菌ガスであっても本送液システムに適用できる。
【0071】
また、前記実施形態では液体としてブドウ糖輸液を用いているが、これに限るものではない。例えば当該液体が、インスリン等の他の液体であっても本送液システムに適用できる。
【0072】
また、前記実施形態ではダイヤフラム120はシリコーンゴムから構成しているが、これに限るものではない。可撓性を有する材料であれば、他の材料であってもよい。
【0073】
また、前記実施形態では定流量バルブ103の第3開口部118が薬液バッグ101に接続されているが、これに限るものではない。
図9に示すように定流量バルブ103の第2バルブ室112が第3開口部118を介して大気開放してもよい。
【0074】
また、前記実施形態では弁座は第2開口部117の周囲に設けられているが、これに限るものではない。例えば第1開口部115の周囲に弁座が設けられていてもよい。
【0075】
また、前記実施形態ではバルブ開放機構150は第2開口部117からバルブ筐体110内に挿入されてダイヤフラム120を押圧しているが、これに限るものではない。バルブ開放機構150は、例えば第1開口部115からバルブ筐体110内に挿入されてダイヤフラム120を押圧していてもよい。
【0076】
また、前記実施形態のゴムは、これに限るものではなく、加硫ゴムや熱可塑性エラストマーのような弾性体であってもよい。また、流体の漏れを防ぐ部材であれば、例えば逆止弁であってもよい。
【0077】
前記実施形態では弁座としてOリング130が設けられているが、これに限るものではない。例えば、Oリング130を設けず、ダイヤフラム120が弁閉時に当接するバルブ筐体110内における第2開口部117の周囲を弁座としてもよい。
【0078】
なお、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。