(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記周面被覆部は、前記端面被覆部が設けられた前記積層柱状体の一端面側から他端面側に向かって厚さが薄いテーパ形状のベース被覆部と、前記ベース被覆部の表面から突出し、前記積層柱状体の軸方向に延びる突条とを具え、
前記突条の突出高さは、前記端面被覆部が設けられた前記積層柱状体の一端面側から前記他端面側に向かって高い請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
スイッチング素子と、前記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを具え、前記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換するコンバータであって、
前記リアクトルは、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトルであるコンバータ。
入力電圧を変換するコンバータと、前記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを具え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するための電力変換装置であって、
前記コンバータは、請求項6に記載のコンバータである電力変換装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リアクトルの組立作業性の向上が望まれている。
【0007】
上述のように複数のコア片及びギャップ材を組み合せて磁性コアを形成する場合、コア片やギャップ材の製造誤差によっては、内側コア部の長さにばらつきが生じ得る。上記ばらつきが大きいと、例えば、並列された一対の内側コア部のうち、一方の内側コア部と外側コア部とを接合すると、他方の内側コア部と外側コア部との間に隙間が生じたり、外側コア部が傾いて配置されたりする。内側コア部と外側コア部とが適正に連結されていない場合、このリアクトルは、所望のインダクタンスを精度よく得られない恐れがある。
【0008】
例えば、接着剤の厚さを調整して、上記隙間を埋めたり、傾きを是正したりすることができる。しかし、この場合は、並列された内側コア部に対して、接着剤の塗布量が異なることから、組立作業性の低下を招く。
【0009】
一方、コア片やギャップ材の寸法精度を高めることが考えられる。しかし、ギャップ材が、例えばアルミナといった非常に高硬度な難加工材料から構成されている場合、加工し難い。特に、板材では、全面に亘って均一的な厚さに加工する必要があり、更に加工し難い。従って、寸法精度の向上による対処には限界がある。そのため、上述のような接着剤などによる補正が必要となり、組立作業性の向上が望まれる。
【0010】
特に、複数のギャップ材を具えるリアクトルとする場合に、全てのギャップ材を上述のような難加工材料から構成されたものとすると、製造誤差が合計されるため、ばらつきが大きくなり易く、補正作業の必要が増す。また、ギャップ材の個数が多いと、部品点数及び工程数が増大することからも、組立作業性の低下を招く。
【0011】
更に、上述のように磁性コアと筒状ボビンなどとが別部材であると、部品点数及び工程数が増大し、組立作業性の低下を招く。
【0012】
そこで、本発明の目的の一つは、組立作業性に優れるリアクトルを提供することにある。また、本発明の他の目的は、寸法精度に優れ、リアクトルの組立作業性の向上に寄与することができるリアクトル用コア部品を提供することにある。更に、本発明の他の目的は、組立作業性に優れるリアクトルを具えるコンバータ、このコンバータを具える電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、コア片とギャップ材との積層体の外周を樹脂で覆った成形体とすると共に、この積層体の一端面又は両端面の少なくとも一部にも樹脂を存在させ、この樹脂を上記外周を覆う樹脂との一体物とすることで上記目的を達成する。
【0014】
本発明のリアクトルは、筒状のコイルと、上記コイルが配置される磁性コアとを具えるものであり、上記磁性コアのうち上記コイルの内側に配置される箇所を構成する以下の積層柱状体と、上記積層柱状体の表面の少なくとも一部を覆う以下の被覆樹脂とを具える。積層柱状体は、磁性材料からなる複数のコア片と、上記コア片よりも透磁率が低い材料から構成される少なくとも一つのギャップ材とが積層されている。被覆樹脂は、上記積層柱状体の外周面の少なくとも一部を覆って上記コア片と上記ギャップ材とを一体に保持する周面被覆部と、上記積層柱状体の端面の少なくとも一部を覆う端面被覆部とが一体に成形されている。
【0015】
本発明リアクトルに具える上記磁性コアの構成部品として、上記積層柱状体と上記被覆樹脂とを具える本発明リアクトル用コア部品を好適に利用することができる。本発明のリアクトル用コア部品は、筒状のコイルが配置される磁性コアに用いられる部品であり、上述の複数のコア片と上述の少なくとも一つのギャップ材とが積層された積層柱状体と、上述の周面被覆部と上述の端面被覆部とが一体に成形された被覆樹脂とを具える。
【0016】
本発明では、磁性コアの一部(代表的には、コイルの内側に配置される内側コア部)が、複数のコア片とギャップ材との積層柱状体で構成されているものの、周面被覆部によって一体化された一体物(代表的には、本発明のコア部品)となっている。そのため、コイルと磁性コアとの組み付けなどに際して上述の一体物を容易に取り扱える。この周面被覆部は、コイルと磁性コアとの間に介在されて両者間の絶縁材として機能できる。従って、本発明では、上述の筒状ボビン及び配置工程を省略できる。
【0017】
また、本発明では、上述の一体物の少なくとも一端面に、一般に磁性コアを構成するコア片よりも透磁率が低い樹脂から構成される端面被覆部を具えることで、この端面被覆部を磁気ギャップに利用できる。従って、本発明では、ギャップ材の個数及び積層工程数を低減できる。
【0018】
かつ、被覆樹脂の成形に金型を利用し、積層柱状体の端面に設ける端面被覆部の厚さを当該金型によって規定すると、上述の一体物を高精度に成形できる。具体的には、金型を調整して端面被覆部の厚さを調整し、この厚さによって、積層柱状体を構成するコア片やギャップ材の製造誤差を吸収することで、寸法精度に優れる一体物を製造できる。この寸法精度に優れる一体物を利用することで、磁性コアを良好に構築することができ、上述した接着剤を局所的に厚く塗布するなどの補正作業が不要である。更に、コア片と共に積層するギャップ材の寸法精度を更に高めるための加工も不要であり、利用可能なギャップ材の自由度が大きい。
【0019】
以上から、本発明リアクトルは、部品点数及び工程数が少なく、組立作業性に優れる。本発明リアクトル用コア部品は、寸法精度に優れることから、リアクトルの組立作業性の向上に寄与することができる。
【0020】
本発明リアクトルの一形態として、上記コイルが一対のコイル素子を具え、上記磁性コアが、各コイル素子の内側にそれぞれ配置され、上記積層柱状体から構成される一対の内側コア部と、上記コイル素子が配置されず、並列された両内側コア部を挟むように配置される一対の外側コア部とを具える形態が挙げられる。この形態において上記被覆樹脂は、上記一対の内側コア部のうち、一方の内側コア部を構成する上記積層柱状体を覆う上記周面被覆部及び上記端面被覆部と、以下の枠状部とを具える形態が挙げられる。枠状部は、上記コイル素子の端面と上記外側コア部における上記内側コア部側に配置される内端面との間に介在され、当該端面被覆部に一体に成形されている。また、本発明リアクトル用コア部品の一形態として、上記コイルが一対のコイル素子を具え、上記積層柱状体が上記一対のコイル素子のうち、一方のコイル素子の内側に配置される形態であり、上記被覆樹脂が上記積層柱状体を覆う上記周面被覆部及び上記端面被覆部と、以下の枠状部とを具える形態が挙げられる。枠状部は、上記磁性コアにおいて両コイル素子が配置されない箇所と上記両コイル素子の端面との間に介在され、当該端面被覆部に一体に成形されている。
【0021】
上記形態は、磁性コアにおいて両コイル素子が配置される箇所:内側コア部が被覆樹脂によって一体化されている上に、コイルが配置されない箇所:外側コア部と両コイル素子の端面との間に介在される枠状部も一体化されていることで、部品点数が少なく、リアクトルの組立工程数を低減できる。従って、上記形態のリアクトルは、組立作業性に優れ、上記形態のリアクトル用コア部品は、リアクトルの組立作業性の向上に寄与することができる。また、上記形態は、枠状部を具えることで、コイルが配置されない箇所:外側コア部と両コイル素子との間の絶縁性を高められる。
【0022】
上述の枠状部を具える形態として、上記端面被覆部が、上記積層柱状体の一端面の一部のみを覆い、当該一端面の他部が上記被覆樹脂から露出され、上記枠状部が、上記端面被覆部と、以下の貫通孔とを具える形態が挙げられる。貫通孔は、上記一対の内側コア部のうち、他方の内側コア部が挿通される、或いは上記一対のコイル素子のうち、他方の上記コイル素子の内側に配置される別の積層柱状体が挿通される。
【0023】
上記形態は、枠状部に一体化されている内側コア部(積層柱状体)とは別の内側コア部(積層柱状体)が挿通される貫通孔を具えることで、枠状部に一体の内側コア部(積層柱状体)に対する別の内側コア部(積層柱状体)の位置決めを容易に行える。従って、上記形態は、各コイル素子に対して二つの内側コア部(積層柱状体)を精度よく位置決めでき、組立作業性に優れる。
【0024】
本発明の一形態として、上記周面被覆部が、上記端面被覆部が設けられた上記積層柱状体の一端面側から他端面側に向かって厚さが薄いテーパ形状のベース被覆部と、上記ベース被覆部の表面から突出し、上記積層柱状体の軸方向に延びる突条とを具える形態が挙げられる。上記突条の突出高さは、上記端面被覆部が設けられた上記積層柱状体の一端面側から上記他端面側に向かって高い。
【0025】
上記形態は、被覆樹脂の成形に有底筒状の金型を用い、積層柱状体の一端側をこの金型の開口側、他端側をこの金型の底面側に位置するようにコア片やギャップ材を収納し、樹脂を充填、適宜硬化することで製造できる。この製造方法を利用すると、ベース被覆部における肉厚側が開口側に位置することから、成形体を容易に抜き取ることができ、離型性に優れる。また、上記形態は、例えば、積層柱状体を内側コア部とする場合、突条を具えることでコイルとの接触面積が小さく、コイルへの挿入性に優れることから、組立作業性に優れる。更に、上記積層柱状体の軸方向に伸びる突条によってコイルを支持でき、上記形態は、コイルと内側コア部との間の絶縁性を高められる。
【0026】
本発明の一形態として、上記ギャップ材が磁性粉末と非磁性材料とを含む混合物から構成された形態が挙げられる。
【0027】
上記形態は、磁性粉末を含まない材料からなるギャップ材に比べ、当該ギャップ材部分に生じ得る漏れ磁束を効果的に低減でき、低損失なリアクトルとすることができる。
【0028】
本発明リアクトルは、コンバータの構成部品に好適に利用することができる。本発明のコンバータは、スイッチング素子と、上記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを具え、上記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換するものであり、上記リアクトルが本発明リアクトルである形態が挙げられる。この本発明コンバータは、電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。本発明の電力変換装置は、入力電圧を変換するコンバータと、上記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを具え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するための電力変換装置であって、上記コンバータが本発明コンバータである形態が挙げられる。
【0029】
本発明コンバータや本発明電力変換装置は、組立作業性に優れる本発明リアクトルを具えることで、生産性に優れ、車載部品などに好適に利用できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明リアクトルは、組立作業性に優れる。本発明リアクトル用コア部品は、寸法精度に優れて、リアクトルの組立作業性の向上に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、実施形態のリアクトルを説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0033】
[実施形態1]
(リアクトルの全体構成)
図1〜
図4を参照して、実施形態1のリアクトル1を説明する。リアクトル1は、一対のコイル素子2a,2bを有するコイル2と、コイル2が配置される磁性コア3とを具える。磁性コア3は、各コイル素子2a,2bの内側にそれぞれ配置される一対の柱状の内側コア部31と、コイル素子2a,2bが配置されず、並列された両内側コア部31を挟むように配置される一対の柱状の外側コア部32とを具える環状体である。各内側コア部31は、複数のコア片31mと複数のギャップ材31gとが交互に積層された積層柱状体によって構成されている(
図3)。
【0034】
リアクトル1の特徴とするところは、磁性コア3の構成部品として、上述の積層柱状体の外周と一端面の一部とが樹脂で覆われて一体に成形された成形体:コア部品4A,4Bを具える点にある。以下、各構成をより詳細に説明する。
【0035】
(コイル)
コイル2は、接合部の無い1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回してなる一対のコイル素子2a,2bと、両コイル素子2a,2bを連結する連結部2rとを具える。各コイル素子2a,2bは、互いに同一の巻数である中空の筒状体であり、各軸方向が平行するように並列(横並び)され、コイル2の一端側(
図1(A)では左側)に巻線2wの端部が配置され、コイル2の他端側(
図1(A)では右側)において巻線2wの一部がU字状に屈曲されて連結部2rが形成されている。この構成により、両コイル素子2a,2bの巻回方向は同一となっている。
【0036】
その他、各コイル素子を別々の巻線により作製し、各コイル素子の巻線の一端部同士が溶接や半田付け、圧着などにより接合されたコイルとすることができる。
【0037】
巻線2wは、銅やアルミニウム、その合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を具える被覆線を好適に利用できる。ここでは、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線を利用し、各コイル素子2a,2bは、この被覆平角線をエッジワイズ巻きにしたエッジワイズコイルである。エッジワイズコイルは、占積率を高め易く、小型にできる。また、ここでは、各コイル素子2a,2bの端面形状を長方形の角部を丸めた形状としているが、端面形状は、円形状など適宜変更することができる。
【0038】
コイル2の一端側に配置された巻線2wの両端部は、ターン形成部分から適宜引き延ばされ、絶縁被覆が剥がされて露出された導体部分に端子金具(図示せず)が接続される。この端子金具を介して、コイル2に電力供給を行う電源などの外部装置(図示せず)が接続される。
【0039】
(コア部品)
リアクトル1は、磁性コア3の一部、具体的にはコイル素子2a,2bの内側にそれぞれ配置される箇所:内側コア部31を構成するコア部品4A,4Bを具える。両コア部品4A,4Bは同形状の部材であることから、以下、主として、コア部品4Aを例に挙げて説明する。図面において、コア部品4Aに対応するコア部品4Bの各構成要素は、同じ数字を付すと共に、Aに代えてBを付した符号を用いている。また、
図2(A)に示すコア部品4Aを水平方向に180°回転すると、
図2(B)に示す状態となり、
図2(B)に示すコア部品4Bを水平方向に180°回転すると、
図2(A)に示す状態となる。
【0040】
コア部品4Aは、磁性コア3のうち、内側コア部31を構成する複数のコア片31m及びギャップ材31gの積層柱状体と、積層柱状体を一体に保持する被覆樹脂5Aとを主要構成要素とする。そして、コア部品4Aは、積層柱状体の外周面を覆う周面被覆部51oAと、積層柱状体の端面の一部を覆う端面被覆部51eAとを具える点を最大の特徴とする。端的に言うと、コア部品4Aは、内側コア部31を構成する積層柱状体と、筒状ボビンと、枠状ボビンとが一体に成形され、この枠状ボビンに設けられていた一方の開口部に端
面被覆部51eAが設けられ、他方の開口部はそのまま貫通孔となった部材である(
図2(A))。
【0041】
〔積層柱状体(内側コア部)〕
積層柱状体は、
図3に示すようにコア片31mとギャップ材31gとが交互に配置された積層体である。各コア片31mは、鉄などの鉄族金属やその合金などに代表される軟磁性粉末を用いた成形体や、絶縁被膜を有する磁性薄板(例えば、ケイ素鋼板に代表される電磁鋼板)を複数積層した積層体が挙げられ、公知のものが利用できる。上記成形体は、圧粉成形体、焼結体、軟磁性粉末と樹脂とを含む混合体を射出成形や注型成形などした複合材料が挙げられる。上記成形体は、種々の立体形状を成形でき、形状の自由度が大きい。圧粉成形体は、軟磁性粉末の表面に絶縁層(代表的には、シリコーン樹脂やリン酸塩など)を具える粉末を利用して製造し、軟磁性粉末の粒子間に絶縁物が存在する形態とすることで、渦損の低減を図ることができる。ここでは、各コア片は、鉄や鋼などの鉄を含有する軟磁性粉末の圧粉成形体としている。
【0042】
ギャップ材31gは、コア片31mよりも透磁率が低い材料によって構成され、環状の磁性コア3に適宜配置されてインダクタンスを調整する。具体的な構成材料は、アルミナやガラスエポキシ樹脂、不飽和ポリエステルなどの非磁性材料、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、フェノール樹脂などの非磁性材料と磁性粉末(例えば、鉄粉などの軟磁性粉末)とを含む混合物などが挙げられる。上記混合物からなるギャップ材とすると、ギャップ部分の漏れ磁束を低減でき、漏れ磁束に伴う損失を低減でき、この効果は、混合物の透磁率(或いは比透磁率)が高いほど得られるものの、高過ぎると磁束飽和が生じ得る。従って、上記混合物から構成されるギャップ材の比透磁率が1.0超〜1.2程度となるように、磁性粉末の材質や含有量を調整することが好ましい。また、上記混合物は、樹脂を含むことで射出成形や注型成形などの適宜な成形方法を利用して所望の形状に容易に成形できる上に、アルミナなどのセラミックスと比較して柔らかいため、切削なども容易に行え、寸法精度に優れるギャップ材を得易い。ここでは、ギャップ材31gは、PPS樹脂と鉄粉とを含む混合物(比透磁率:1.15程度)から構成されるものとしている。
【0043】
コア片31mやギャップ材31gの形状は、積層柱状体が所望の外形となるように適宜選択することができる。ここでは、コア片31mを直方体状(ここではコイル素子の外形に応じて角部を丸めている)、ギャップ材31gを矩形板状とし、積層柱状体は、これらを組み合せた直方体状(ここでは角部が丸いもの)である。その他、積層柱状体は、円柱状などの種々の形状とすることができる。
【0044】
ここでは、ギャップ材31gは、
図3に示すように対向する表裏面において外周縁領域(
図3では上方領域及び下方領域)が枠状に切り欠かれて段差形状となった板材である。そのため、ギャップ材31gの外周縁部分の厚さが薄く、中央部分が厚い。また、対向する表裏面における上述の中央部分の面積がコア片31mの端面の面積よりも小さく、外周縁で囲まれる輪郭面積(上述の厚さが薄い外周縁領域を含む箇所の面積)が上記中央部分の面積よりも大きく、かつコア片31mの端面とほぼ同じ大きさである。従って、積層柱状体におけるギャップ材31gは、コア片31mの外周から実質的に突出しない。このような形状によってギャップ材31gは、コア片31mに挟まれると、上述の厚さが薄い外周縁領域と、コア片31mの端面との間に隙間ができ、この隙間に被覆樹脂5Aの構成樹脂が充填される。
【0045】
ギャップ材31gの形状・大きさ(厚さ、面積)は、適宜選択することができ、上述の形態に限らない。例えば、上述の突出部分を有さず、厚さが均一的な平板としてもよいし、平板の最大面積をコア片31mの端面よりも小さくしてもよいし、等しくしてもよいし、大きくしてもよい。また、平板の平面形状も、矩形以外の形状、例えば、円形でも、多角形でもよい。上述の混合物からなるギャップ材31gとすると、上述のように適宜な成形方法を利用することで、複雑な形状であっても容易に成形できたり、成形後、切削などで形状や寸法の調整を容易に行える。本例のギャップ材31gのように、平板状(一部の厚さが異なる場合を含む)とすると、積層し易く、組立作業性に優れる。
【0046】
リアクトル1が所望のインダクタンスとなるようにコア片やギャップ材の個数を適宜選択することができる。また、コア片31mとギャップ材31gとの積層順序も適宜選択することができ、積層柱状体の両端は、コア片31mでもギャップ材31gでもよいし、本例のように積層柱状体の一端がコア片31m、他端がギャップ材31gでもよい。積層柱状体の少なくとも一端がギャップ材31gであり、このギャップ材31gの上に端面被覆部51eAを具える場合、この一端側のギャップ長さは、ギャップ材31gと端面被覆部51eAとの合計厚さになる。本例のように積層柱状体の少なくとも一端がコア片31mであり、このコア片31mの上に端面被覆部51eAを具える場合、この一端側のギャップ長さは、端面被覆部51eAのみの厚さになる。
【0047】
コア片31mとギャップ材31gとは、接着剤などで一体化することができる。接着剤は、エポキシ系接着剤などの熱硬化型、シアノアクリレート系接着剤などの常温硬化型など適宜なものが利用できる。本発明では、被覆樹脂5Aによってコア片31mとギャップ材31gとを一体に保持することから、接着剤を省略できる。或いは、接着剤は、被覆樹脂5Aを成形するまでの仮固定材として利用できる。仮固定を行うと、積層柱状体を一体物として取り扱えることから、金型への収納などが容易に行えて、作業性に優れる。
【0048】
〔被覆樹脂〕
主として、
図2,
図3を参照して被覆樹脂5Aを説明する。被覆樹脂5Aは、
図2(A)に示すように上述のコア片31mとギャップ材31gとの積層柱状体(内側コア部31)において、その積層方向のほぼ全長に亘ってその全周を覆う周面被覆部51oAと、積層柱状体の一端面の一部を覆う端面被覆部51eAとを具え、両被覆部51oA,51eAは一体に成形されている。
【0049】
周面被覆部51oAは、主として、コア片31mとギャップ材31gとの相互の位置を固定し、一体化する機能を有すると共に、コイル素子2a(
図1(A))と内側コア部31との絶縁性を高める機能を有する。本例では、上述のようにギャップ材31gを特定の形状とすることで、コア片31m及びギャップ材31gと被覆樹脂5Aとの接触面積が十分に大きく、
図3に示すように被覆樹脂5Aの構成樹脂が両者間に十分に介在することで、両者を強固に保持できる。
【0050】
周面被覆部51oAは、コア片31mとギャップ材31gとを一体に保持できれば、その被覆領域は適宜選択することができる。例えば、コア片31mの外周面の一部が周面被覆部51oAから露出された形態とすることができる。本例のように積層柱状体の外周面を実質的に全面覆う形態は、(1)コア片31mとギャップ材31gとの接合強度を高められ、両者が外れ難い、(2)コイル2と積層柱状体(主としてコア片31m)との間の絶縁性を高められる、(3)金型からの離型性に優れる、(4)積層柱状体を保護できる、といった利点がある。ここでは、積層柱状体の他端面を構成するギャップ材31gが周面被覆部51oAから若干突出している(
図3)。
【0051】
周面被覆部51oAの厚さは、適宜選択することができ、例えば、全体を均一的な厚さとすることができる。ここでは、周面被覆部51oAは、積層柱状体において端面被覆部51eAが設けられた一端面側から、ギャップ材31
gが露出された他端面側に向かって厚さが薄い領域と、この領域に連続し、他端面に至るまで均一的な厚さで、かつ薄い領域とを具える。つまり、周面被覆部51oAは、外形がテーパ形状である領域と、平坦な薄肉領域とを具える。
【0052】
上述のテーパ形状の領域は、テーパ状の外形をつくるベース被覆部513と、ベース被覆部513の表面から突出し、積層柱状体の軸方向に延びる突条515とを具える。ベース被覆部513は、
図3に示すように、その全長に亘って、その厚さが一端側(
図3では左側)から他端側(
図3では右側)に向かって薄い。突条515は、ベース被覆部513の全長に亘って一直線上に連続して設けられ、ベース被覆部513の表面からの突出高さが、一端側から他端側に向かって高い。但し、突条515における積層柱状体(コア片31m)の表面(外周面)からの突出高さは、一定である。従って、突条515によってコイル素子2aを支持した状態では、積層柱状体(コア片31m)とコイル素子2aとの間の距離は、コイル素子2aの内周面の周方向に亘って、及び全長に亘って一様である。
【0053】
突条51
5の断面形状、突条51
5の個数、ベース被覆部513に対する形成領域は適宜選択することができる。ここでは、突条51
5は、断面矩形状であって、ベース被覆部513の全長に亘って連続して設けられた直方体状であり、このような形状の複数の突条51
5がベース被覆部513の表面に並行に設けられている(
図2)。ここでは、直方体状であるベース被覆部513を構成する四つの面にそれぞれ2本ずつ、合計8本の突条515が設けられている。この形態は、コイル2との接触面積を低減でき、コイル2への挿入性に優れる上に、コイル2と積層柱状体(特にコア片31m)との間に所定の距離を確保でき、両者の絶縁性を高められる。なお、連続した直線状の突条515に代えて、例えば、複数の独立した突起が直線状に配置された形態、或いは、複数の不連続な突起が直線状ではなく点在された形態などとすることができる。
【0054】
上述の薄肉領域は、コア部品4Aに組み付ける別のコア部品4Bに具える係合筒部53B(
図2(B))が嵌め込まれる係合部517として機能する。係合部517と係合筒部53A,53Bとの嵌合によって、コア部品4A,4Bを精度よく組み付けられる。ここでは、係合筒部53A,53Bの外周に、突条515と同様な複数の突条を設けている。係合部517の厚さは、コア部品4Aの係合部517と、コア部品4Bの係合筒部53Bとを組み合せたときに両者の突条の最大突出高さが等しくなるように調整している。
【0055】
端面被覆部51eAは、積層柱状体の一端面に形成されてギャップとして機能する。特に、本発明では、端面被覆部51eAを周面被覆部51oAと一体の構成とすることで、被覆樹脂5Aの成形時、コア片31mとギャップ材31gとを一体化しつつ、成形に用いる金型によって、端面被覆部51eAの厚さを決めることができる。そのため、コア片31mやギャップ材31gに製造誤差があっても、被覆樹脂5Aの成形時、端面被覆部51eAの厚さを調整することで、製造誤差を吸収でき、所定の長さのコア部品4Aを成形できる。従って、コア部品4Aは、寸法精度に優れており、外側コア部32(
図1(A))に適切に組み付けられる。
【0056】
端面被覆部51eAの厚さt
51eは、適宜選択することができる。ギャップとして機能させることから、端面被覆部51eAの厚さをギャップ材31gと同程度としてもよいが、ある程度厚くする、例えば、4mm超とすると、上述の製造誤差の吸収代を多く確保できる。但し、厚過ぎるとギャップ部分の漏れ磁束が増大するため、端面被覆部51eAの厚さは、4mm超6mm以下程度が挙げられる。
【0057】
端面被覆部51eAの平面形状は、適宜選択することができる。ここでは、矩形状であって、その中央に円筒状の中空穴510を具える。中空穴510からは、積層柱状体の端面(ここでは、内側コア部31の端面31eを構成するコア片31m)が露出している。つまり、中空穴510の底面は、積層柱状体の端面によって構成される。中空穴510は、例えば、内側コア部31の端面31eと外側コア部32(
図1(A))とを接合するための接着剤を充填する領域として利用することができる。
【0058】
中空穴510の形状・大きさ・数・形成位置は適宜選択することができる。ここでは、中空穴510において開口側の断面積と、積層柱状体側の断面積とが異なっており、積層柱状体側の領域に、積層柱状体の端面に向かって断面積が小さくなるように設けられた傾斜部511を具える。また、ここでは、端面被覆部51eAは、その中央に中空穴510を一つ具える形態であるが、中空穴510を複数具える形態、中空穴510を有しておらず積層柱状体の端面全面を覆う形態とすることができる。
【0059】
中空穴510は、後述するように被覆樹脂5Aの成形時に積層柱状体の一端面を支持する支持部材によって形成される。従って、中空穴510が所望の形状・大きさ・数となるように後述する支持部材の形状・大きさ・数を選択する。
【0060】
更に、ここでは、被覆樹脂5Aは、枠状部52Aも一体に具える。枠状部52Aは、コイル素子2a,2b(
図1(A))の端面と、コイル素子2a,2b内にそれぞれ配置されて内側コア部31(
コア部品4A,4Bに具える積層柱状体)の端面31eに対向配置される外側コア部32の内端面32e(
図4)との間に介在されて、主として両者の絶縁性を高める機能を有する。
【0061】
ここでは、枠状部52Aは、並列されたコイル素子2a,2bがつくる外形に類似する矩形枠状である。枠状部52Aにおけるコイル2側に配置される表面であって、コイル素子2aが配置される側には、上述の周面被覆部51oAが連結されると共に、端面被覆部51eAが一体化され、中空穴510を具え、コイル素子2bが配置される側には、係合筒部53Aが連結され、枠状部52Aの表裏面(コイル2側の表面と外側コア部32側の表面)に連通する貫通孔530を具える。
【0062】
貫通孔530には、別のコア部品4Bにおける係合部517(
図2(B))が嵌め込まれて、
図1(B)に示すように両コア部品4A,4Bを互いに位置決めする。このため、周面被覆部51oA,51oBの外周にそれぞれ配置されるコイル素子2a,2bに対する内側コア部31(積層柱状体)を適切に位置決めできる。
【0063】
ここでは、係合筒部53Aの長さは、係合部517の長さと同程度としている。また、係合筒部53Aは、周面被覆部51oAのベース被覆
部513と同様に、枠状部52A側から当該係合筒部53Aの周縁に向かって厚さが薄いテーパ形状の筒体で構成され、このテーパ状の面から突出する複数の突条を具える。係合筒部53Aに具える突条も、周面被覆部51oAの突条515と同様に、枠状部52A側に向かって突出高さが低くなっている。そして、両コア部品4A,4Bを組み付けたとき、
図1(B)に示すように別のコア部品4Bの周面被覆部51oBに設けられた突条515に繋がるように、係合筒部53Aの突条の位置・突出高さ、及びテーパ状の面を調整している。
【0064】
その他、枠状部52Aは、コイル2の連結部2rが載置される台座54A、外側コア部32の位置決め部55A、コイル素子2a,2b間に介在される仕切り56Aを一体に具える。
【0065】
台座54Aは、枠状部52Aにおける外側コア部32側に配置される表面から外方に突出し、
図1(A)に示すようにコア部品4Aに組み付けた外側コア部32の一面(ここでは上面)の一部を覆うように配置される平板状の部材である。リアクトル1に具える二つのコア部品4A,4Bのうち、一方の台座(ここでは台座54B)は、連結部2rと外側コア部32の一面との間に介在されて両者の絶縁性を高める。
【0066】
位置決め部55Aは、枠状部52Aにおいて外側コア部32側に配置される表面から外方に突出し、外側コア部32の位置決めに利用される部材である。ここでは、位置決め部55Aは、外側コア部32の側面(ここでは上述の台座54Aが載置される上面に繋がり、コイル2の軸方向に沿って配置される面)を挟む一対の帯部によって構成される。帯部は、台座54Aに連続して設けられている。従って、枠状部52Aにおいて外側コア部32側の表面には、]状の突出物があり、この一部が台座54Aであり、他部が位置決め部55Aである。位置決め部55Aの形状は適宜選択することができ、小さな突起などでもよい。
【0067】
仕切り56Aは、枠状部52Aにおいてコイル2側に配置される表面から内方(コイル2側)に突出し、コア部品4A,4Bに組み付けたコイル素子2a,2b間に介在されて、両素子2a,2bを非接触状態に保持する部材である。仕切り56Aの形状や大きさ(コイルの軸方向に沿った長さ・コイルの軸方向及びコイル素子2a,2bの横並び方向の双方に直交する方向の長さなど)は適宜選択することができる。ここでは、仕切り56Aは、コイル2の軸方向に沿って配置される帯状体とし、コイル素子2a,2b間の一部にのみ配置される大きさとしている。
【0068】
コア部品4Aは、係合
筒部53A、台座54A、位置決め部55A、及び仕切り56Aの少なくとも一つを省略した形態とすることができる。本例のようにこれらを全て具えることで、コア部品4A,4Bの組付作業性の向上、コイル2と磁性コア3との絶縁性の向上、コイル素子2a,2b間の絶縁性の向上、コア部品4A,4Bと外側コア部32との組付作業性の向上を図ることができる。
【0069】
また、ここでは、枠状部52Aにおいてコイル2側に配置される面は、コイル素子2a,2bの端面形状に応じた傾斜形状(周面被覆部51oAの周方向に沿って厚さが異なる形状)となっている。従って、枠状部52A,52Bによって、コイル素子2a,2bを挟むと、両素子2a,2bの端面が枠状部52A,52Bのコイル2側の面に沿って位置決めされて、両素子2a,2bの端面と枠状部52A,52Bのコイル2側の面との間に隙間が生じ難い。その結果、コイル2とコア部品4A,4Bとの組物の長さ(ここでは、組物におけるコイル2の軸方向に沿った長さ)を短くでき、リアクトル1の小型化を図ることができる。
【0070】
被覆樹脂5Aの構成材料には、PPS樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6、ナイロン66、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。ここでは、被覆樹脂5Aの構成材料は、PPS樹脂としている。
【0071】
〔コア部品の製造方法〕
上記構成を具えるコア部品4Aは、代表的には、積層柱状体を中子とするインサート成形によって製造できる。具体的には、例えば、有底筒状の第一金型と、この有底筒状の金型の開口部を塞ぐように配置される平板状の第二金型とを用いることが挙げられる。そして、有底筒状の第一金型に積層柱状体を収納し、積層柱状体の両端面を第一金型・第二金型で支持した状態で、両金型内に所望の樹脂を充填し、積層柱状体のほぼ全周面、及び一端面の一部を覆うことでコア部品4Aが得られる。
【0072】
有底筒状の第一金型に対する積層柱状体の収納方向は適宜選択することができる。代表的には、この第一金型の底面に積層柱状体の外周面が対向するように収納する形態(以下、横型収納形態と呼ぶ)、この第一金型の底面に積層柱状体の一端面が対向するように収納する形態(以下、縦積み収納形態と呼ぶ)が挙げられる。縦積み収納形態は、(1)接着剤によって積層柱状体を(仮)一体化していない場合でも、積層状態を維持し易い、(2)第一金型の底面によって積層柱状体の端面を支持でき、支持構造を簡便にできる、(3)周面被覆部51oAにおける被覆領域を大きく取り易く、コア片31mの露出領域を低減できる、といった利点がある。また、縦積み収納形態では、上述のように周面被覆部51oAを構成するベース被覆部513の外形をテーパ形状としたり、更に突条515を具える場合、テーパ形状や突条515を成形可能な金型(傾斜面や溝を有する金型)を用いることで、成形後のコア部品4Aを金型から容易に抜き取ることができる。
【0073】
上記縦積み収納形態とする場合、積層柱状体の一端面の支持には、例えば、上述の第二金型として、端面被覆部51eAを形成するための適宜な形状(ここでは円柱状)の突起を有するもの、或いは端面被覆部51eAを形成するための適宜な形状の棒状体と、この棒状体を挿通可能な貫通孔を有し、貫通孔に挿通された棒状体を進退可能に保持する板状金型とを具えるものを用いることが挙げられる。後者の進退可能な棒状体を具える形態では、任意の時期に棒状体を抜き取ることができる。例えば、充填した樹脂が完全に硬化する前に棒状体を抜き取ると、上述の積層柱状体の端面全面を覆うコア部品を形成したり、中空穴の深さを調整したりすることができる。
【0074】
ここでは、有底筒状の第一金型と、円柱状の突起を具える第二金型とを利用し、縦積み収納形態によってコア部品4A,4Bを成形した。第一金型の底面は、積層柱状体の端面に位置するギャップ材31gにおいて、表面側部分及び外周縁部分の一部を保持可能な段差溝を形成した。ギャップ材31gにおいて段差溝に嵌め込まれた部分が、上述のように周面被覆部51oAから突出する。また、第二金型に具える円柱状の突起の端面側領域は、端面に向かって先細りした形状のものを用い、上述の傾斜部511が形成されるようにした。このような先細り形状とすることで、上記突起を抜き取り易く、離型性に優れる。
【0075】
まず、第一金型にギャップ材31g及びコア片31mを交互に収納する。上述のように接着剤などで(仮)固定した一体物を収納してもよい。次に、第一金型の開口側に配置されたコア片31mに第二金型の突起を適宜押し当てて、収納した積層物を支持する。このとき、第二金型の突起と第一金型の底面とで挟まれる距離が、コア部品4A,4Bの所定の長さとなるように、突起の位置を調整する。また、ここでは、係合筒部53A,53Bの貫通孔530を形成するための中子を適宜配置する。上述の支持状態で両金型によりつくられる空間に所望の樹脂を充填し、適宜硬化し、金型から抜き取ることで、コア部品4A,4Bを成形できる。得られたコア部品4A,4Bには、上述の第二金型の突起の外形に応じた中空穴510が形成されている。
【0076】
(外側コア部)
上記コア部品4A,4Bに組み付ける各外側コア部32は、ここでは、コイル素子2a,2bに対向する面:内端面32eが一様な平面で構成され、内端面32eに繋がる平行な二面が台形状である柱状体である(
図1(A),
図4)。また、ここでは、台形の斜辺が湾曲した形状であるが、斜辺を直線状とすることができる。更に、ここでは、外側コア部32をコア片31mと同様に、圧粉成形体としている。
【0077】
コア部品4A,4Bに具える内側コア部31(積層柱状体)と上述の一対の外側コア部32とによって環状の磁性コア3が形成され、この磁性コア3は、コイル2を励磁したとき、閉磁路を形成する。
【0078】
その他、ここでは、外側コア部32の設置側の面(
図1(A)では下面)は、内側コア部31(積層柱状体)の設置側の面(同)よりも突出し、かつコイル2の設置側の面(同)と面一である。従って、リアクトル1は、両コイル素子2a,2b及び外側コア部32
で設置面が構成され、設置面積が広いことから、安定性に優れる。また、外側コア部32も圧粉成形体であることで、外側コア部32において内側コア部31よりも突出した箇所は、磁束の通路や放熱経路に利用できる。
【0079】
(その他の構成部材)
上記構成を具えるリアクトル1は、そのままでも利用することができるが、更に、有底筒状のケース(更に蓋があってもよい)に収納したり、ケース内に封止樹脂を充填したり、リアクトル1の表面を別の樹脂(外側樹脂と呼ぶ)で覆ったりすることができる。ケースや外側樹脂を具えるリアクトルは、コイル2及び磁性コア3の機械的保護や環境からの保護、ハンドリング性の向上などを図ることができる。封止樹脂や外側樹脂を具えるリアクトルは、端面被覆部51eAに設けられた中空穴510を封止樹脂や外側樹脂の充填空間とすることができ、これらの樹脂によって内側コア部31と外側コア部32とを接合することができる。
【0080】
ケースは、アルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金などの軽金属製とすると、熱伝導性に優れる上に、軽量である。また、底部と、底部に立設される側壁部とを別部材とし、底部を上述のような金属、側壁部をPPS樹脂などの樹脂といった異種の材料からなるケースとすると、コイル2が配置される底部が放熱性に優れる上に、軽量化を図ることができる。封止樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。更に、窒化珪素、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、窒化ほう素、ムライト、及び炭化珪素から選択される少なくとも1種のセラミックスからなるフィラーを含有する樹脂を封止樹脂に用いると、絶縁性に優れる上に、放熱性も高められる。
【0081】
その他、上述の金属や上述の熱伝導性に優れるセラミックスなどからなる放熱板を接着剤やボルト、外側樹脂などで固定した形態とすると、放熱性を高められる。
【0082】
(リアクトルの製造方法)
上記構成を具えるリアクトル1は、例えば、コイルの準備,コア部品の準備⇒組み付けという工程によって製造することができる。
【0083】
具体的には、まず、上述のようにコイル2、内側コア部31(積層柱状体)を構成するためのコア片31m,ギャップ材31g、外側コア部32を構成するためのコア片を用意する。
【0084】
上述のようにインサート成形などにより、コア部品4A,4Bを成形する。ここでは、コア部品4A,4Bを同形状としているため、一つの金型で製造でき、コア部品4A,4Bは、生産性に優れる。
【0085】
次に、コイル2と、コア部品4A,4Bと、外側コア部32とを組み付ける。
図4に示すように、一方のコア部品4Aにおいて周面被覆部51oAに覆われた積層柱状体:内側コア部31を一方のコイル素子2aに挿入し、他方のコア部品4Bにおいて周面被覆部51oBに覆われた積層柱状体:内側コア部31を他方のコイル素子2bに挿入する。コア部品4A,4Bは、係合筒部53A,53Bと係合部517とを具えることで、容易に、かつ精度よく嵌め合わせることができる。また、コア部品4A,4Bは、枠状部52A,52Bのコイル2側の面がコイル素子2a,2bの端面形状に沿っていることで、コイル2とコア部品4A,4Bとを精度よく組み合せることができる。
【0086】
更に、一方のコア部品4Aにおける枠状部52Aと、他方のコア部品4Bにおける枠状部52Bとを挟むように外側コア部32を配置して、内側コア部31と外側コア部32とを環状に形成することで、リアクトル1が得られる。上述のようにコア部品4Aの端面被覆部51eAの中空穴510及びコア部品4Bの端面被覆部の中空穴に接着剤などを充填すると共に、コア部品4A,4Bの貫通孔530から露出した内側コア部31の端面31eに接着剤などを塗布して、内側コア部31と外側コア部32とを接合してもよい。
【0087】
上述のようにケースや封止樹脂などを具える形態では、更に、ケースへの収納、封止樹脂の充填、外側樹脂の形成、放熱板の接合などを行う。
【0088】
(用途)
上記構成を具えるリアクトル1は、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。
【0089】
(効果)
リアクトル1は、磁性コア3の一部(ここでは内側コア部31)を構成するコア片31mやギャップ材31gに製造誤差があっても、両コア部品4A,4Bに具える被覆樹脂5A,5Bにおいて端面被覆部の厚さを成形時に調整することで、当該製造誤差を端面被覆部51eA,51eBによって吸収できる。従って、リアクトル1の構成要素であるコア部品4A,4Bは、コア片31mとギャップ材31gとの積層物の積層方向の長さが金型によって規定されるため、寸法精度に優れている。そのため、これらコア部品4A,4Bは、別途、接着剤の厚さなどを調整することなく、外側コア部32を適切に組み付けられる。
【0090】
また、リアクトル1は、両コア部品4A,4Bに具える端面被覆部51eA,51eBをギャップとして機能させることで、別途用意するギャップ材31
gの個数を低減でき、工程数の低減、ギャップ材31
gの寸法精度を向上するための加工の低減や省略を図ることができる。
【0091】
更に、リアクトル1は、周面被覆部51oA,51oBによってコア片31mとギャップ材31gとの積層物を一体に保持した一体物として取り扱えることで、独立した筒状ボビンを省略でき、部品点数及び組立工程数の低減を図ることができる。
【0092】
これらの点から、リアクトル1は、組立作業性に優れる。また、コア部品4A,4Bを利用することで、リアクトル1の組立作業性の向上を図ることができる。
【0093】
その他、リアクトル1は、以下の効果を奏する。
(1) 内側コア部31と外側コア部32とが適切に組み付けられて、所望のインダクタンスを精度よく得ることができる。
(2) 被覆樹脂5A,5Bによって、コイル2と磁性コア3との間の絶縁性を高められる。
【0094】
(3) コア部品4A,4Bは、枠状部52A,52Bも一体に具えることで、部品点数及び組立工程数を更に低減でき、組立作業性に更に優れる。
(4) コア部品4A,4Bは、係合部517と係合筒部53A,53Bとを具えることで、両部品4A,4Bの位置決めを行い易く、組立作業性に優れる。
(5) コア部品4A,4Bは、周面被覆部51oA,51oBに突条515を具えることで、コイル素子
2a,2bとの接触面積を低減でき、コイル素子
2a,2bに内側コア部31(積層柱状体)を挿入し易く、組立作業性に優れる。
(6) コア部品4A,4Bは、枠状部52A,52Bに外側コア部32の位置決め部55A,55Bを具えることで、内側コア部31との連結面である内端面32eが平坦な形状であっても、外側コア部32の位置決めを容易に行えて、組立作業性に優れる。
【0095】
(7) コア部品4A,4Bが同形状であるため、製造性に優れる上に、取り扱い易い。
(8) ギャップ材31
gの構成材料を、磁性粉末と非磁性材料とを含む混合物とすることで、漏れ磁束に起因する損失を低減できる上に、所望の形状に容易に成形でき、ギャップ材31
gの製造性に優れる。
(9) コア部品4A,4Bは、周面被覆部51oA,51oBの外形を主としてテーパ形状とすることで、離型性に優れることから、製造性に優れる。
【0096】
[変形例1]
実施形態1に具えるコア部品4A,4Bは、周面被覆部51oA,51oBに薄肉の係合部517を具え、枠状部52A,52Bに係合筒部53A,53Bを具える形態を説明した。その他、係合部及び係合筒部を省略したコア部品とすることができる。この形態では、周面被覆部は、実施形態1と同様に、その全長に亘って厚さが異なるテーパ形状としてもよいし、更に突条を設けてもよいし、或いは、その全長に亘って厚さが均一な平坦な形状としてもよい。この形態では、枠状部に、積層柱状体の他端側が挿入可能な貫通孔を設けておく。この形態は、コア部品の形状が比較的単純になり、金型の形状を簡素化することができる。
【0097】
[変形例2]
実施形態1に具えるコア部品4A,4Bはそれぞれ、積層柱状体を一つ具える形態を説明した。その他、積層柱状体を二つ具えるコア部品とすることができる。このコア部品は、例えば、一つの枠状部に、周面被覆部に覆われた二つ積層柱状体が一体に連結され、各積層柱状体の一端面にそれぞれ端面被覆部が設けられた形態が挙げられる。合計二つの端面被覆部は、上記一つの枠状部に一体に成形される。
【0098】
この形態では、このコア部品の両積層柱状体の他端面に連結される外側コア部と、コイル素子の端面との間に介在される枠状部材を別途用意すると、コイルと磁性コアとの間の絶縁性を高められる。枠状部材は、二つの積層柱状体がそれぞれ挿通可能な二つの貫通孔を具えるもの、更に、二つの係合筒部を具えるものが利用できる。
【0099】
この形態は、例えば、上述のコア部品に具える二つの積層柱状体に、同時にコイル素子を挿通配置することができ、組立作業性に優れる。
【0100】
[変形例3]
実施形態1に具える部品4A,4Bは、枠状部52A,52Bを一体に具える形態を説明した。その他、枠状部を省略したコア部品とすることができる。このコア部品では、被覆樹脂が周面被覆部及び端面被覆部のみを具えるため、形状が単純になり、金型の形状を簡素化することができる。周面被覆部において係合部も省略すると、更に形状を単純にできる。
【0101】
一対のコイル素子を含むコイルを具えるリアクトルとする場合、例えば、上述の変形例2で説明した二つの貫通孔、更に二つの係合筒部を有する枠状部材を一対、別途用意して、変形例3の形態のコア部品に組み付けると、コイルと外側コア部との絶縁性を高められる。一つのコイルを具えるリアクトルとする場合、例えば、係合筒部の周縁から外方に延びるフランジを具える環状部材を用意して、この変形例3の形態のコア部品に組みつけると、磁性コアにおいてコイルの端面側に配置される箇所とコイルとの絶縁性を高められる。
【0102】
[実施形態2]
実施形態1や変形例1〜3のリアクトルは、例えば、車両などに載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを具える電力変換装置の構成部品に利用することができる。
【0103】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両1200は、
図5に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)1220とを具える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジンを具える。なお、
図5では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを具える形態とすることができる。
【0104】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V〜300V程度のメインバッテリ1210の直流電圧(入力電圧)を400V〜700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。また、コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0105】
コンバータ1110は、
図6に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトルLとを具え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子1111には、FET,IGBTなどのパワーデバイスが利用される。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、上記実施形態1や変形例1〜3のリアクトルを具える。組立作業性に優れるリアクトル1などを具えることで、電力変換装置1100やコンバータ1110は生産性に優れる。
【0106】
なお、車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を具える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150の中には、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、上記実施形態1や変形例1〜3のリアクトルなどと同様の構成を具え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用することができる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、上記実施形態1や変形例1〜3のリアクトルなどを利用することもできる。
【0107】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本発明リアクトル用コア部品を磁性コアにおいてコイルが配置されない箇所:外側コア部の構成部品とすることができる。