(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記低透磁率部を挟む、前記第1磁性体の端部の厚さ及び前記第2磁性体の端部の厚さは、前記第1磁性体の端部以外の部分の厚さ及び前記第2磁性体の端部以外の部分の厚さより厚い
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の非接触給電装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
《第1実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係る非接触給電装置の斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面のうち、送電側の構成を示す断面図である。本例の非接触給電装置は、例えば、車両に搭載されたバッテリに対して非接触で充電する装置として用いられる。以下、本例の非接触給電装置を車両用の給電装置として適用した例を説明するが、車両以外の他の装置に適用してもよい。
【0011】
非接触給電装置は、送電部100と受電部200とを備えている。送電部100は地上側に設けられ、受電部200は車両側に設けられる。送電部100は、コイル10と、磁性体20と、遮蔽板30とを備えている。コイル10は、受電部200の受電用のコイル40との間で、非接触で磁気的な結合により電力を供給する送電コイルである。コイル10は、道路などの地上に設けられ、コイル10の幅方向の長さは、車両の車幅より短い。
【0012】
ここで、
図3、
図4を用いて、コイル10の構成を説明する。
図3はコイル10の斜視図を、
図3のIV-IV線に沿う断面図である。コイル10は、
図3の紙面上で右側に配置されたコイル11と、左側に配置されたコイル12とを有し、コイル11及びコイル12は同一平面上で並べられている。コイル11は、矩形状のコイル面をもち、当該コイル面状で複数回、巻回されている。コイル12は、コイル11と同形状で、矩形状のコイル面をもち、当該コイル面状で複数回、巻回されている。またコイル11とコイル12は隙間を空けつつ、互いに隣接している。コイル11及びコイル12は8の字形状に巻回されている。なお、コイル面は、配線により1巻のコイルが形成される面を示し、後述するように本例では、配線の一部に段差を設けているため、当該段差による高さを含めてコイル面としてもよい。
【0013】
コイル10の全体は、上記のコイル面と同一面上でみた時に、短辺及び長辺をもった矩形状になるように形成されている。また短辺に対して長辺は十分に長くなっている。そして、当該同一面上でみたときに、コイル10の頂点部分に、コイルの引出線131、132が設けられている。引出線131とコイル11とを導通するための配線部133は、引出線131から屈曲して、コイル10の短辺に沿うよう当該短辺の中心部分まで形成され、引出線131から延在した配線である。
【0014】
ここで、コイル10の長手方向(コイル10の長辺に沿う方向)をX方向とし、コイル10の幅方向(コイル10の短辺に沿う方向)をY方向とし、コイル10のコイル面の法線方向をZ方向とする。
【0015】
コイル11は、配線部111〜118を有している。配線部111は、配線部133の端部からコイル10の長辺方向(
図3の負側のX方向)に屈曲して、当該端部から延在した配線である。配線部112は、配線部111の端部からコイル10の短辺方向(
図3の正側のY方向)に屈曲して、コイル11を形成するよう、当該端部から延在した配線である。配線部113は、配線部112の端部からコイル10の長辺方向(
図3の正側のX方向)に屈曲し、配線部111の延在方向(
図3の負側のX方向)と反対側の方向(
図3の正側のX方向)に延在した配線部である。配線部114は、配線部113の端部から屈曲し、配線部112の延在方向(
図3の正側のY方向)と反対側の方向(
図3の負側のY方向)に延在した配線である。これにより、配線111〜114で、1回巻のコイルが形成される。配線部115〜118は、配線部111〜114と同様に、矩形状のコイルを形成する配線である。
【0016】
コイル12は、配線部121〜127を有している。配線部121は、配線部118の端部からコイル10の(
図3の負側のX方向)に屈曲して、当該端部から延在した配線である。配線部122は、配線部121の端部からコイル10の短辺方向(
図3の負側のY方向)に屈曲して、コイル12を形成するよう、当該端部から延在した配線である。配線部123は、配線部122の端部からコイル10の長辺方向(
図3の正側のX方向)に屈曲し、配線部121の延在方向(
図3の負側のX方向)と反対側の方向(
図3の正側のX方向)に延在した配線部である。配線部124は、配線部123の端部から屈曲し、配線部122の延在方向(
図3の負側のY方向)と反対側の方向(
図3の正側のY方向)に延在した配線である。これにより、配線121〜124で、1回巻のコイルが形成される。配線部125〜127は、配線部121〜123と同様に矩形状のコイルの一部を形成する配線である。
【0017】
各配線部111〜118、121〜127は、互いに交差しないように、それぞれの両端で段差をつけて、コイルの高さを変えている。また引出線131から引出線132までのコイル11及びコイル12を形成する配線部111〜118、121〜127は、分岐しておらず、一本の直線で角柱状の配線をつなぎ合わせることで、コイル11、12が形成されている。なお、コイル11、12の配線は、一本の導線でもよく、あるいは複数の導線を捻ることで形成されてもよい。
【0018】
また、配線部111、113、115、117、121、123、125、127は、同一平面上に形成されている。これにより、コイル11とコイル12が同一平面上で隣接する位置で並べられている。また、コイル11及びコイル12は、コイル10の中央部分で接続されており、配線部118と配線部121により接続されている。
【0019】
図4に示すように、YZ面の断面において、コイル11の内側の配線が、配線部111、115となり、コイル11の外側の配線が配線部113、117となる。また、コイル12の内側の配線が配線部121、125となり、コイル11の外側の配線が配線部123、127となる。
【0020】
コイル11の巻回方向は時計回りの方向であり、コイル12の巻回方向は反時計回りの方向である。すなわち、コイル11の巻回方向とコイル12の巻回方向は互いに逆方向になっている。引出線131から引出線132に電流を流すと、ある時刻において、配線部111、115に
図3の負側のX軸方向に電流が流れた場合には、配線部113、117には
図3の正側のX軸方向に電流が流れ、配線部121、125には
図3の負側のX軸方向に電流が流れ、配線部123、125には
図3の正側のX軸方向に電流が流れる。
【0021】
図1、2に戻り、磁性体20は、コイル10の上下面である一対の表面(Z方向を法線とする表面)のうち、受電側のコイル20と対向する対向面と反対側の表面上に設けられている。磁性体20は、鉄(電磁鋼)などの磁性材料で、板状に形成されている。磁性体20は、コイル10の表面(下面)に対して、隙間を空けた状態で配置されている。磁性体20は、一枚の板状の磁性材の部材を分割することで形成された、2枚の磁性体である磁性体21及び磁性体22を備えている。磁性体21及び磁性体22はそれぞれ板状に形成され、同一平面上に隣り合って配置されている。
【0022】
図2に示すように、コイル10のコイル面の法線方向(Z方向)及びコイル10の幅方向(Y方向)に沿う断面(YZ面)において、磁性体21の一端は配線部115の一端の下部に配置され、磁性体21の他端は配線部113の端部に配置されている。磁性体22の一端は配線部121の下部に配置され、磁性体21の他端は配線部127の下部に配置されている。すなわち、磁性体21はコイル11のコイル面の下方から、所定の間隔を空けつつ、当該コイル面を覆うように配置され、磁性体22はコイル12のコイル面の下方から、所定の間隔を空けつつ、当該コイル面を覆うように配置されている。
【0023】
磁性体21と磁性体22との間には、隙間80が配置されており、隙間80は磁性体21、22の透磁率より低くなっている。そのため、隙間80は磁性体20の透磁率より低い透磁率をもつ部分となる。隙間80は、
図2のYZ面の断面において、コイル11の内側の配線である配線部115と、コイル12の内側の配線である配線部121との間の中心線A(言い換えると、コイル10の中心軸の線)の線上に配置されている。また、隙間80は、
図2のYZ面の断面において、Y方向への隙間80の長さを、配線部113と配線部127との間の長さより短くする。
【0024】
遮蔽板30は、磁性体20の上下面である一対の表面のうち、コイル10と対向する対向面と反対側の表面上に設けられている。遮蔽板30は、アルミニウムなどの導体で、板状に形成されている。遮蔽板30は、磁性体20の下面に対して、隙間を空けた状態で配置されている。遮蔽板30は、コイル10のコイル面を含む平面と平行な平面において、コイル10及び磁性体20より広くなるよう形成されている。いいかえると、磁性体20と対向する遮蔽板30の対向面の面積は、遮蔽板30と対向する磁性体20の対向面の面積より大きい。
【0025】
次に、受電部200について説明する。コイル40は、車両のシャーシに設けられている。コイル40の形状は、コイル10と同様の形状で、縮小させた形になっている。磁性体50は、コイル40の上面に所定の間隔を空けて配置されている。遮蔽板60は、磁性体50の上面に所定の間隔を空けた配置されており、車両のシャーシに相当する。そして、コイル40を備えた車両が、コイル10を配置された道路を走行すると、コイル40がコイル10に対して所定の間隔を空けつつ、相対的に移動する。
【0026】
コイル10には、図示しない電源から交流電源が供給され、コイル10の上側にコイル40が配置されると、コイル10からコイル40へ、非接触で給電される。そして、車両に設けられたバッテリ(図示しない)が、給電された電力により充電される。
【0027】
ここで、本例の非接触給電装置を車両用に適用した場合における、結合係数及び漏れ磁束について説明する。非接触給電装置において、二次側への供給電力を高くするためには、送電効率を向上させて、また外部への磁束の影響を低減させることが求められる。そして、本例のような非接触で磁気的な結合により電力を供給する方式では、送電効率を向上させるために、コイル10とコイル40との間の磁気結合を高めなければならない。
【0028】
コイル10、40間の送電効率をη、結合係数をκとするとコイルのQ値との間には、以下の式(1)の関係が成立する。
【数1】
そして、式(1)より、送電効率を向上させるには、結合係数(κ)またはQ値を高くすることが必要である。
【0029】
またQ値は、角周波数(ω)、自己インダクタンス(L)、抵抗値(R)を用いて、以下の式(2)で表わされる。
【数2】
式(2)より、自己インダクタンス(L)の増加または抵抗値(R)の低減させることで、送電効率を向上することができる。
【0030】
上記のように本例の非接触給電装置は、走行または停止中、車両側に電力を供給するために、車両の進行方向に対して、地上側のコイル10を車両側のコイル40と比較して非常に長くなるように構成されている。これは、地上側のコイルを小さくして、複数のコイルを車両の長さに合わせ、複数のコイルを配置した場合には、各コイルを制御するインバータの数が多くなる、という問題があるためである。その一方、地上側のコイル10を車両側のコイル40と比較して非常に長くした場合には、以下の問題が発生する。
【0031】
第一に、コイル10、40間の鎖交磁束とコイルから発生する磁束の比である結合係数κが大幅に低下し、送電効率が悪化する。また、結合係数(κ)が0.02以下となると制御が困難になり、相手コイル40を検出することができない場合がある。
【0032】
第二に、地上側のコイル10が発生する磁束のほとんど(約90%以上)が車両側のコイル40を鎖交せず漏れ磁束となってしまい、磁気ガイドラインや電波法をクリアすることが困難になる。
【0033】
そのため、本例は、上記のように、送電部100を構成することで、漏れ磁束の低減、特に地上側コイルで車両が対向していない部分においての漏れ磁界の低減を図る。
【0034】
次に、
図5〜
図8を用いて、比較例のコイルと本実施形態に係るコイルの磁束の様子を説明する。
図5〜7は比較例1〜3に係るコイルの磁束の様子を説明する図であり、
図8は本発明に係るコイルの磁束の様子を説明する図である。
図5〜
図8は、非接触給電装置の送電部100の断面図であり、
図2の断面図と同様の断面である。なお、
図8において、説明を容易にするため遮蔽板30を省略している。
【0035】
比較例1は
図3に示すコイル10のみを送電側に設けている。比較例2は、
図3に示すコイル10と、1枚の板状の磁性体301(隙間80を有していない磁性体)を送電側に設けている。比較例3は、
図6のコイル10及び磁性体301に、遮蔽板30を送電側に加えている。なお、
図5〜
図8において、コイル10の上部に記されている記号は電流の向きを表している。また
図5〜
図8に示す磁束は、送電側のコイルのみに一定電流を流した時に発生する磁束線図である。
【0036】
図5に示すように、比較例1では、コイル12からの磁束が、配線部111、115、121、125の上部を通ってコイル11に入り、また、コイル12の外側に配置された配線123、127で短絡している。同様に、コイル11の外側に配置された配線113、117でも、コイル11からの磁束が短絡している。
【0037】
図6に示すように、比較例2では、コイル12からの磁束が、磁性体301の下面側を通ってコイル11に入っている。また、比較例1で、コイル11、12の外側に配置された配線部113、117、123、127で短絡していた磁束は、比較例2では、磁性体301で遮断されるため、コイル12からの磁束が、配線部123、127を回り込んで磁性体301の下側に戻り、磁性体301の下側を通って、配線部113、117を回り込んで、コイル11に入っている。
【0038】
図7に示すように、比較例3では、比較例2と比較して、コイル12から配線部123、127を回り込んだ磁束は、磁性体301の下面と遮蔽板30の上面との間に入り込んでコイル11に戻りつつ、遮蔽板30の下側を通ってコイル11に戻る。
【0039】
コイル11、12の外側の配線部113、117、123、127で短絡していた短絡磁束が、比較例2、3では、磁性体301、遮蔽板30で遮断されるため、磁束のループが大きくなり、コイル20のコイル面に対して平行な面に沿う方向(
図6、7のY方向)への漏れ磁束が増大になっている。磁石を例にして説明すると、比較例2、3では、磁性体301のうちコイル12と対向する部分をN極とすると、磁性体301のうちコイル11と対向する部分がS極のようになって、磁束が発生している。すなわち、比較例2、3では、送電部100の外部への磁束が増加している。
【0040】
図8に示すように、本発明では、磁性体30の下面において、コイル11から磁性体21を介して出た磁束が、磁性体22を介してコイル12に入っている。しかしながら、コイル11、12の下面側と比較して、コイル11、12の上面側の磁束が多くなっている。本例では、磁性体21と磁性体22との間に隙間80を設けているため、磁性体21、22の上面、下面の極性がそれぞれ変わり、
図8では、磁性体21の上面がS極に下面がN極に、磁性体22の上面がN極に下面がS極になる。そのため、磁性体21、22の下面に沿って貫く(
図8のY方向に横断する)磁束が発生しにくくなるため、磁性体21、22の下面側への漏れ磁束を防ぐことができる。その結果として、コイル11からコイル12への漏れ磁束が減少する。
【0041】
上記のように、本発明は、コイル10のコイル面に対して平行な面に沿って、磁性体21、22を設けて、磁性体21と磁性体22との間に、磁性体21、22より透磁率を低くした隙間80を設ける。これにより、本例は、コイル10で発生する磁束量について、受電側のコイル40と対向する側への磁束量を低減することなく、コイル10のコイル面に沿う方向への磁束量、及び、磁性体21、22と対向する側への磁束量を低減することができる。その結果として、コイル40と対向するコイル10の対向面に対して反対側で、コイル11からコイル12に向かって通る磁束を減少することができるため、漏れ磁束を抑制することができる。
【0042】
また本例は、
図4のYZ面による断面において、配線部115と配線部121との間の中心線Aの線上に隙間80の一部が配置されている。これにより、極性の異なる磁性体21、22が、コイル11、12にそれぞれ対向して配置されるため、コイル40と対向するコイル10の対向面に対して反対側で、コイル11からコイル12に向かって通る磁束を減少することができるため、漏れ磁束を抑制することができる。
【0043】
また本例は、
図4のYZ面による断面において、隙間80の幅方向への長さを、配線部113、117と配線部123、127との間の長さより短くする。これにより、コイル40と対向するコイル10の対向面に対して反対側で、コイル11からコイル12に向かって通る磁束を減少することができるため、漏れ磁束を抑制することができる。
【0044】
なお、本例では、隙間80を、コイル11とコイル12との中央部分に配置したが、コイル11のコイル面またはコイル12のコイル面と対向する位置に配置してもよい。この際、
図2のY方向において、磁性体21の長さと磁性体22の長さは異なる長さとなる。
【0045】
また本例は、磁性体21、22に対して透磁率の低い部分を隙間80で形成したが、隙間80の代わりに、磁性体21、22の透磁率より透磁率の低い材料(例えばアルミニウムなど)で形成してもよい。この際、磁性体21と磁性体22との間に、低透磁率の材料で形成された部材を狭持させればよい。
【0046】
上記のコイル10が本発明の「送電コイル」に相当し、磁性体21が本発明の「第1磁性体」に相当し、磁性体22が本発明の「第2磁性体」に相当し、隙間80及び隙間80と対応する低透磁率の材料で形成された部材が本発明の「低透磁率部」に相当する。
【0047】
《第2実施形態》
図9は、発明の他の実施形態に係る非接触給電装置の送電部の断面図である。本例では、第1実施形態に対して、磁性体23と隙間81、82を設けている点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであるため、その記載を適宜、援用する。
【0048】
磁性体23は、磁性体21、22と同材料で板状に形成されている。磁性体23は、磁性体21と磁性体22との間に、両端に所定の間隔を空けつつ配置されている。また、磁性体23の少なくとも一部分は、YZ方向の断面において、配線部115と配線部121との間の中心線Aの線上に配置されている。すなわち、磁性体21〜23は、一枚の板状の磁性材料の部材を二分割することで形成された、3枚の磁性体である。
【0049】
磁性体21と磁性体23との間には隙間81が配置されており、磁性体22と磁性体23との間には隙間82が配置されている。隙間81、82は磁性体21〜23の透磁率より低くなっている。そのため、隙間81、82は磁性体21〜23の透磁率より低い透磁率をもつ部分となる。また隙間81、82は、中心線Aに対して線対称になるよう配置されている。さらに、YZ面の断面において、中心線Aから隙間81、82までの距離は、中心線Aから配線部111、115、121、125までの距離より長くなっている。
【0050】
次に、
図10を用いて、本実施形態に係るコイルの磁束の様子を説明する。
図10は、非接触給電装置の送電部100の断面図であり、
図2の断面図と同様の断面である。
【0051】
本発明では、実施形態1に係る発明と同様に、コイル11、12の下面側と比較して、コイル11、12の上面側の磁束が多く、磁性体21、22の表面に沿って貫く(
図8のY方向に横断する)磁束が発生しにくくなっている。また、
図8に示した1つの隙間80の状態から、隙間80を二分割した隙間81、82を磁性体21、22の端部へ動かしていくと(
図10を参照)、磁束線図が比較例1に近い状態(
図5を参照)から比較例2の状態(
図6を参照)に近づいていることがわかる。すなわち、隙間81、82を2カ所にし、磁性体23を設けることで、磁性体20の中央部分で磁気抵抗が低くなるため、コイル12からコイル11への磁束量が増加する。また、実施形態1に係る発明と同様に、漏れ磁束も低減されている。
【0052】
上記のように、本例は、磁性体21と磁性体23との間に隙間81を配置し、磁性体22と磁性体23との間に隙間82を配置する。これにより、本例では漏れ磁束を低減することができる。また、磁性体20の中央部分で磁気抵抗が低くなるため、鎖交磁束を増加させることができる。
【0053】
また本例は、磁性体23の少なくとも一部を中心線Aの線上に配置する。本例は、隙間81、82を中心線Aに対して線対称に配置する。本例は、YZ面の断面において、中心線Aから隙間81、82までの距離を、中心線Aから配線部111、115、121、125までの距離より長くする。これにより、中心線Aの部分で磁気抵抗を低くすることができるため、鎖交磁束を増加させることができる。
【0054】
また本例は、磁性体21〜23に対して透磁率の低い部分を隙間81、82で形成したが、隙間81、82の代わりに、磁性体21、22の透磁率より透磁率の材料(例えばアルミニウムなど)で形成してもよい。この際、磁性体21と磁性体23との間及び磁性体22と磁性体23との間に、低透磁率の材料で形成された部材をそれぞれ狭持させればよい。
【0055】
上記の磁性体23が本発明の「第3磁性体」に、隙間81が本発明の「第1透磁率部」に、隙間82が本発明の「第2低透磁率部」に相当する。
【0056】
《第3実施形態》
図11は、発明の他の実施形態に係る非接触給電装置の送電部の断面図である。本例では、第2実施形態に対して、遮蔽板30を設けている点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第3実施形態の記載を適宜、援用する。
【0057】
遮蔽板30は、磁性体21〜23の上下面である一対の表面のうち、コイル10と対向する対向面と反対側の表面上に設けられている。遮蔽板30は、アルミニウムなどの導体で、板状に形成されている。遮蔽板30は、磁性体21〜23の下面に対して、所定の隙間を空けた状態で配置されている。遮蔽板30は、コイル10のコイル面を含む平面と平行な平面において、コイル10及び磁性体20より広くなるよう形成されている。そして、磁性体21〜23と遮蔽板30との間の所定の隙間により、絶縁部90が形成される。これにより、遮蔽板30が導体層になり、絶縁部90が絶縁層になる。
【0058】
上記のように、本例は、磁性体21〜23の一対の表面のうち、コイル10と対向する磁性体21〜23の対向面に対して反対側の表面上に、絶縁部90を介して、遮蔽板30を設ける。また、本例において、遮蔽板30は、コイル10のコイル面を含む平面と平行な平面(
図2のXY面)において、コイル10より広くなるよう形成されている。これにより、コイル10の、磁性体21〜23側への漏れ磁束を遮蔽板30により遮断することができる。
【0059】
また、本例の送電部100を地上側の道路に設けると、市街地などでは道路に金属配管が設置されていたり、橋架部や高架部に建設された道路の下側に金属導体が配置されたりする場合がある。かかる場合には、本例は、遮蔽板30を設けることで、コイル10に対して地上側への磁束漏れを抑え、当該金属配管等への磁束漏れによる影響を防ぐことができる。
【0060】
《第4実施形態》
図12は、発明の他の実施形態に係る非接触給電装置の送電部の断面図である。本例では、第1実施形態に対して、磁性体21及び磁性体22の一部の端部の形状が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであるため、その記載を適宜、援用する。
【0061】
磁性体21の両端のうち、中心線A側の端部211の厚さ(Z方向への長さ)は他の部分の厚さより厚くなっている。また、磁性体22の両端のうち、中心線A側の端部212の厚さ(Z方向への長さ)は他の部分の厚さより厚くなっている。そして、隙間80は、磁性体21の厚くなっている端部211と磁性体22の厚くなっている端部221との間に挟まれている。
【0062】
磁性体20に隙間80を形成すると、磁気抵抗が増加し鎖交磁束が低下するが、本例は、端部211と端部221との間に挟まれた隙間80において、端部211、221と接する面の面積を広くするため、隙間80の周囲の磁気抵抗を低くすることができ、鎖交磁束の低減を抑制することができる。
【0063】
《第5実施形態》
図13は、発明の他の実施形態に係る非接触給電装置の送電部の断面図である。本例では、第1実施形態に対して、磁性体20の構成が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第4実施形態の記載を適宜、援用する。
【0064】
磁性体20は、磁性体21、22、24、25、26、27を有している。磁性体21、24、26は一体に形成され、磁性体22、25、27は一体に形成されている。磁性体21、22、24、25、26、27は、磁性材料により、板状に形成されている。
【0065】
磁性体21は、コイル11の表面のうち、コイル40と対向する対向面と反対側の表面(コイル11の下面)上の一部に配置され、配線部111、115の下部に配置されている。磁性体24は、コイル40と対向するコイル11の対向面上の一部に配置され、配線部113、117の上部に配置されている。磁性体26はコイル11のコイル面を通り、磁性体21の端部と磁性体24の端部とを接続するように形成されている。磁性体26の長手方向(
図13のZ軸方向)は、コイル11のコイル面の法線方向と平行になっている。磁性体21、24は、コイル面と平行な面に沿うよう形成されている。
【0066】
磁性体22は、コイル12の表面のうち、コイル40と対向する対向面と反対側の表面(コイル12の下面)上の一部に配置され、配線部121、125の下部に配置されている。磁性体25は、コイル40と対向するコイル12の対向面上の一部に配置され、配線部123、127の上部に配置されている。磁性体27はコイル12のコイル面を通り、磁性体22の端部と磁性体25の端部とを接続するように形成されている。磁性体27の長手方向(
図13のZ軸方向)は、コイル12のコイル面の法線方向と平行になっている。磁性体22、25は、コイル面と平行な面に沿うよう形成されている。
【0067】
磁性体20のうち、コイル11側に配置される磁性体21、24、26は、コイル11のコイル面に対して上下面で段差の形状になるように配置され、コイル12側に配置される磁性体22、25、27は、コイル12のコイル面に対して上下面で段差の形状になるように配置されている。また、YZ面において、磁性体21、22は、磁性体24、25より内側(Y方向で、磁性体24、25より内側)に配置され、言い換えると、磁性体21、22はより中心軸Aに近い側に配置されている。磁性体21と磁性体22との間に、隙間80が形成される。そして、磁性体24はコイル11の上側のギャップ面に配置され、磁性体25はコイル12の上側のギャップ面に配置されている。
【0068】
次に、
図14を用いて、本実施形態に係るコイルの磁束の様子を説明する。
図14は、非接触給電装置の送電部100の断面図であり、
図13の断面図と同様の断面である。
【0069】
図14に示すように、磁性体25から磁束が発生し、磁性体24に入っているため、鎖交磁束が増大している。また、コイル11、12の内側の配線部111、115、121、125の下部には、磁性体21、22が配置されているため、コイル11、12のコイル面の上面の磁束が短絡することなく、循環している。そのため、鎖交磁束の減少が抑制されている。
【0070】
上記のように、本例はコイル11のコイル面の上面の上に磁性体24を配置し、コイル12のコイル面の上面の上に磁性体25を配置する。これにより、コイル11、12のギャップ面を通過する磁束の磁気抵抗を低減することができる。また本例は、磁性体21、22を配線部111、115、121、125の下部に配置する。これにより、磁性体20の中央部分で、コイル11とコイル12との間を通る短絡磁束を低減することができる。さらに、本例は、磁性体26、27をコイル11、12のコイル面をそれぞれ通るよう配置することで、磁性体20はコイル面に対して上下面で段差の形状に形成する。これにより、コイル10及び磁性体20のZ方向への高さを抑えることができるため、送電部100を薄くすることができる。
【0071】
上記の磁性体24、25、26、27が本発明の「第4磁性体」、「第5磁性体」、「第6磁性体」及び「第7磁性体」に相当する。
【実施例】
【0072】
以下、本発明をさらに具現化した実施例及び比較例により本発明の効果を確認した。以下の実施例及び比較例は、上述した実施形態における漏洩磁束の低下効果を確認するためのものである。
【0073】
<実施例1>
実施例1では、実施形態1において説明した
図1〜
図4に示すような、コイル10、磁性体20及び遮蔽板30を次の条件で設計した。コイル10の幅(
図2のY方向の長さ)を295mm、コイル11の幅を142.5mm、コイル12の幅を142.5mm、コイル11とコイル12との間隔の幅を10mm、磁性体20の幅(
図2のY方向で、磁性体21の外縁から磁性体22の外縁までの長さ)を295mm、隙間80の幅を10mm、遮蔽板30の幅を415mmとした。また磁性体20には鉄を用い、遮蔽板30にはアルミニウムを用いた。
【0074】
また、受電側のコイル40、磁性体50、遮蔽板60の、それぞれの幅は、上記の送電側と同様にした。コイル40の形状はコイル10の形状と同様であるが、磁性体50には、磁性体20のように隙間80を形成していない。
【0075】
<実施例2>
実施形態3において説明した
図11に示すような、コイル11、磁性体20及び遮蔽板30を次の条件で設計した。コイル10の幅を295mm、コイル11の幅を142.5mm、コイル12の幅を142.5mm、コイル11とコイル12との間隔の幅を10mm、磁性体20の幅(
図11のY方向で、磁性体21の外縁から磁性体22の外縁までの長さ)を295mm、隙間81、82の幅を5mm、遮蔽板30の幅を415mmとした。また磁性体20には鉄を用い、遮蔽板30にはアルミニウムを用いた。
【0076】
受電側の構成は、実施例1と同様である。
【0077】
<比較例1>
比較例1では、実施形態1の比較例1として説明した
図5に示すように、送電側の構成を、実施例1、2のコイル10のみの構成とし、磁性体及び遮蔽板を備えてない。受電側の構成は、実施例1と同様である。
【0078】
<比較例2>
比較例2では、実施形態1の比較例2として説明した
図6に示すように、送電側の構成を、実施例1、2のコイル10と、隙間80を有さない磁性体301とを備えた構成とし、遮蔽板を備えてない。受電側の構成は、実施例1と同様である。
【0079】
<比較例3>
比較例3では、実施形態1の比較例3として説明した
図7に示すように、送電側の構成を、実施例1、2のコイル10と、隙間80を有さない磁性体301と、実施例1、2の遮蔽板30を備えた構成とした。受電側の構成は、実施例1と同様である。
【0080】
まず、
図15に示すように送電側のコイルから3m円周上での送電側のコイルの磁束分布を
図16に示す。ただし、送電側のコイルへの入力電流は一定にした。なお、3mの円周は、送電側のコイルの長手方向(
図1のX方向)の中心を円の中心として、YZ面上に描いた円となる。
図16の横軸は、
図15のZ軸を0度として、YZ面の円周上に半時計回りで、Z軸に対する角度を示している。また縦軸は磁束密度を表わしており、磁束密度が低いほど漏れ磁束が少なくなる。
【0081】
比較例1では、全周で最も磁束密度が小さくなったが、鎖交磁束が小さいため、漏れ磁束も小さくなっているにすぎない。比較例2では、全角度で磁束密度が高くなった。比較例3では、コイルの上面(角度0度または360度付近)で磁束密度が高く、コイルの下面(角度180度付近)では遮蔽板の遮蔽効果により磁束が低くなったが、コイルのコイル面に沿う方向(角度90、270度付近)では実施例1、2と比較して、磁束密度が高くなった。
【0082】
一方、実施例1では、全角度で磁束密度が抑制されており、漏れ磁束の低減を確認することができた。また実施例2では、隙間を2か所設けることで、コイルの上面では磁束密度を高めつつ、それ以外の角度では磁束密度を抑え、漏れ磁束が低減されていることが確認できた。
【0083】
次に、
図15、
図16と同様に、3m地点での磁束密度(コイル面に沿う方向(角度90、270度付近)の磁束密度)と結合係数を評価した。なお、結合係数を評価する際、コイル10とコイル40とを正対させた状態(対向させた状態)にし、コイル間に150mmのギャップを設けた。
図17に示すように、3m地点の磁束密度を横軸に、結合係数を縦軸にとる。
【0084】
比較例1では、磁束密度が小さいが結合係数も小さいため、鎖交磁束が低いことが分かる。比較例2、3では、結合係数が高いが、磁束密度も高いため、漏れ磁束が多くなっていた。一方、実施例1では、漏れ磁束を抑えつつ、比較例1より結合係数を増加できていることが確認できた。
【0085】
次に、コイルの幅方向(Y方向)への位置ずれに対して、結合係数を評価した。
図18は、送電側のコイルの中心点と、受電側のコイルの中心点とが同軸上にある場合をゼロとし、Y方向に受電側のコイルをずらした場合の結合係数の特性を示す。コイル間の位置ずれが無い状態で、実施例1の結合係数は、比較例1の結合係数に対して、22パーセント増加しており、コイル間の位置ずれが100mmの場合には、実施例1の結合係数は、比較例1の結合係数に対して、44パーセント増加した。ゆえに、実施例1は、比較例1に対して、幅方向のコイルの位置ずれに対して、結合係数を向上させている、ことが確認できた。
【0086】
次に、送電側のコイルの自己インダクタンスを評価した。
図19に示すように、実施例1の自己インダクタンスは、比較例1に対して、29パーセント増加した。これにより、実施例1は、コイルのQ値を増加させて、送電効率を増加できることが確認できた。
【0087】
最後に、
図20に示すように送電側のコイルから5m円周上での送電側のコイルの磁束分布を磁場解析した結果を
図21に示す。なお、当該5m円周は、
図15で示した3m円周と同様である。またコイル間が正対しており、出力を2kWとした。これにより、実施例1では、比較例1に対して、漏れ磁束の低減効果が確認できた。なお、コイル間に位置ずれが生じた場合には、比較例1と実施例1との漏れ磁束の磁束密度の差は、さらに広がる。
【0088】
以上のように、実施例1、2では、比較例に対して、結合係数が増加し、漏洩磁束が低下することが確認できた。