(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のバンドギャップリファレンス回路10の構成図である。トランジスタQ11,Q12の個数比Q11:Q12を1:n、抵抗R11,R12の抵抗比R11:R12を1:mで構成することによって、トランジスタQ11の電流密度に対してトランジスタQ12の電流密度は、1/(m・n)となる。その結果、
VBE1−VBE2=Vt・ln(m・n) ・・・(1)
が得られる。VBE1,VBE2は、それぞれ、トランジスタQ11,Q12のベース・エミッタ間電圧であり、Vt(=k・T/q)は、トランジスタQ11,Q12の熱電圧である。k(=1.38×10
−23)はボルツマン定数、Tは絶対温度、q(=1.602×10
−19)は素電荷である。例えば25℃のときの熱電圧Vtは、25.7mV程度である。
【0003】
VBE1−VBE2を抵抗R10で受けることにより、トランジスタQ12に流れる電流I12は、
I12=Vt・ln(m・n)/R10 ・・・(2)
で表され、トランジスタQ11に流れる電流I11は、
I11=m・I12 ・・・(3)
で表される。
【0004】
VBE1−VBE2は、正の温度係数を持った電圧であり、VBE1−VBE2と抵抗R10により作られた電流を受ける抵抗R11,R12には正の温度特性を持った電圧が発生する。ダイオードの順方向電圧(ダイオード接続されたトランジスタQ11,Q12のベース・エミッタ間のPN接合の順方向電圧)の温度特性は負であり、抵抗R11,R12で発生する電圧の温度特性は正であるため、互いの温度係数の絶対値が一致するR11,R12を選択すれば、温度依存性の小さいバンドギャップリファレンス電圧VBGがオペアンプ11から出力される。
【0005】
ところが、製造ばらつきによって抵抗の抵抗値やトランジスタの飽和電流がばらつくと、バンドギャップリファレンス電圧VBGの温度依存性が大きくなる場合がある。このような場合に対応するため、特許文献1では、レーザ光照射でヒューズ素子を切断することにより、抵抗に流れる電流の電流値を変化させることによって、バンドギャップリファレンス電圧VBGの温度依存性の最小化が図られている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、各図面において、ゲートに丸印を付したトランジスタはPチャネル型MOSFETを表し、ゲートに丸印を付していないトランジスタはNチャネル型MOSFETを表す。
【0013】
図2は、本発明の第1の実施形態であるバンドギャップリファレンス回路20の構成図である。バンドギャップリファレンス回路20は、第1の半導体素子のPN接合の順方向電圧と第2の半導体素子のPN接合の順方向電圧との電圧差が持つ正の温度特性と、該電圧差によって生成される基準電流が流れるPN接合の順方向電圧が持つ負の温度特性とを利用する。バンドギャップリファレンス回路20は、これらの正と負の温度特性を利用して、バンドギャップリファレンス電圧VBGを、温度に依存しない基準電圧として生成する。
【0014】
バンドギャップリファレンス回路20は、基準電圧生成回路23と、補正電流加減算回路22(以下、「補正回路22」という)とを備えている。補正をトリミングと言い換えてもよい。
【0015】
基準電圧生成回路23は、互いに異なる電流密度で動作する第1の半導体素子及び第2の半導体素子として、トランジスタQ1,Q2を有している。基準電圧生成回路23は、トランジスタQ1のベース・エミッタ間のPN接合の順方向電圧とトランジスタQ2のベース・エミッタ間のPN接合の順方向電圧との電圧差によって生成された基準電流I0に基づいて、バンドギャップリファレンス電圧VBGを出力する回路である。補正回路22は、基準電流I0に対して補正電流Itを加減算する回路である。
【0016】
したがって、本構成によれば、基準電流I0から補正電流Itを減算できるだけでなく、基準電流I0に補正電流Itを加算することができるため、抵抗R1,R2に流れる電流I1,I2の増減の微調整ができる。これにより、バンドギャップリファレンス電圧VBGの大きさの増減の微調整が容易にできる。その結果、例えば製造ばらつきによってバンドギャップリファレンス電圧VBGが変動しても、バンドギャップリファレンス電圧VBGを容易に且つ高精度に補正できる。また、バンドギャップリファレンス電圧VBGの温度による変化を容易に且つ高精度に補償できる。
【0017】
次に、バンドギャップリファレンス回路20の構成について更に詳細に説明する。
【0018】
基準電圧生成回路23は、オペアンプ21と、オペアンプ21の出力端子と接地電位VSSとの間に抵抗R1とトランジスタQ1とが直列に接続された第1の直列回路と、オペアンプ21の出力端子と接地電位VSSとの間に抵抗R2と抵抗R0とトランジスタQ2とが直列に接続された第2の直列回路とを有している。これらの第1の直列回路と第2の直列回路は、互いに並列に接続されている。
【0019】
トランジスタQ1,Q2は、ダイオード接続されたNPNバイポーラトランジスタである。トランジスタQ1のP型領域(ベース)は、抵抗R1の低電位側端部に接続され、トランジスタQ2のP型領域(ベース)は、抵抗R0の低電位側端部に接続されている。トランジスタQ1,Q2のベース・エミッタ間のPN接合には、順方向のバイアス電圧が印加されている。なお、トランジスタQ1,Q2は、ダイオード接続されたPNPバイポーラトランジスタでもよい。
【0020】
また、抵抗R1の低電位側端部とトランジスタQ1のP型領域(ベース)とが接続されるノードn1は、オペアンプ21の非反転入力端子に接続され、抵抗R2の低電位側端部と抵抗R0の高電位側端部とが接続されるノードn2は、オペアンプ21の反転入力端子に接続されている。
【0021】
トランジスタQ1のベース・エミッタ間のPN接合の順方向電圧VBE1とトランジスタQ2のベース・エミッタ間のPN接合の順方向電圧VBE2との電圧差VBE1−VBE2は、抵抗R0に印加される。電圧差VBE1−VBE2が抵抗R0に印加されることによって、抵抗R0に流れる一定の基準電流I0が決まる。基準電流I0に応じた電流I1,I2が流れる抵抗R1,R2には、正の温度特性の電圧が発生する。したがって、トランジスタQ1,Q2の順方向電圧VBE1,VBE2の負の温度特性と抵抗R1,R2に発生する電圧の正の温度特性とが相殺されるように、抵抗R1,R2の抵抗値が選定されるとよい。これにより、温度依存性の小さいバンドギャップリファレンス電圧VBGがオペアンプ21から出力される。
【0022】
一方、補正回路22によって生成される補正電流Itは、ノードn2で入出力される。したがって、抵抗R2に流れる電流I2は、
I2=I0−It ・・・(4)
で表すことができる。
【0023】
抵抗R0及びトランジスタQ2のベース・エミッタ間のPN接合部に流れる基準電流I0は、オペアンプ21の負帰還によって一定に維持される。したがって、補正回路22は、ノードn2に補正電流Itを供給することによって、基準電流I0から補正電流Itの供給量が減算された電流I2を抵抗R2に流すことができる。補正回路22は、ノードn2に供給する補正電流Itを増やすことによって、電流I2を減らすことができ、ノードn2に供給する補正電流Itを減らすことによって、電流I2を増やすことができる。また、補正回路22は、ノードn2から補正電流Itを吸い込むことによって、基準電流I0に補正電流Itの吸い込み量が加算された電流I2を抵抗R2に流すことができる。補正回路22は、ノードn2から吸い込む補正電流Itを増やすことによって、電流I2を増やすことができ、ノードn2から吸い込む補正電流Itを減らすことによって、電流I2を減らすことができる。このように、電流I2は、基準電流I0に対して補正電流Itが加減算された補正基準電流である。
【0024】
電流I2の増減に応じて、抵抗R1及びトランジスタQ1に流れる電流I1も増減する。電流I1,I2が増えることによって、抵抗R1,R2に発生する電圧は大きくなるため、バンドギャップリファレンス電圧VBGを大きく調整できる。一方、電流I1,I2が減ることによって、抵抗R1,R2に発生する電圧は小さくなるため、バンドギャップリファレンス電圧VBGを小さく調整できる。このように、補正電流Itの供給と吸い込みを切り替え可能な補正回路22が、補正電流Itの供給量又は吸い込み量を調整することによって、バンドギャップリファレンス電圧VBGを容易に且つ高精度に補正できる。
【0025】
図3は、本発明の第2の実施形態であるバンドギャップリファレンス回路30の構成図である。上述の実施形態と同様の点についての説明は省略する。
【0026】
バンドギャップリファレンス回路30は、基準電圧生成回路33と、補正電流加減算回路22(補正回路22)とを備えている。基準電圧生成回路33は、オペアンプ31を有している。
【0027】
図4は、オペアンプ31の一構成例である。オペアンプ31の差動入力対として、互いに異なる電流密度で動作するトランジスタQ31,Q32が構成されている。トランジスタQ31のP型領域のベースが、オペアンプ31の反転入力端子に接続され、トランジスタQ32のP型領域のベースが、オペアンプ31の非反転入力端子に接続されている。トランジスタQ31,Q32のN型領域のエミッタが、共通の電流源35を介して、接地電位VSSに接続されている。差動対Q31,Q32は、負荷回路32を介して、オペアンプ31の出力端子に接続されている。
【0028】
差動対Q31,Q32の個数比Q31:Q32を1:n、差動対Q31,Q32の電流比をm:1で構成することによって、オペアンプ31の入力換算オフセットVBE31−VBE32が発生する。入力換算オフセットVBE31−VBE32は、
VBE31−VBE32=Vt・ln(m・n) ・・・(5)
で表すことができる。
【0029】
図3に示されるように、VBE31−VBE32をオペアンプ31の差動入力対に挟まれた抵抗R5で受けることにより、抵抗R3,R4には、正の温度特性の電圧が発生する。したがって、トランジスタQ3のベース・エミッタ間のPN接合の順方向電圧VBE3の負の温度特性と抵抗R3,R4,R5に発生する電圧の正の温度特性とが相殺されるように、抵抗R3,R4の抵抗値が選定されるとよい。これにより、温度依存性の小さいバンドギャップリファレンス電圧VBGがオペアンプ31から出力される。
【0030】
このように、基準電圧生成回路33は、入力換算オフセットVBE31−VBE32によって生成された基準電流I5に基づいて、バンドギャップリファレンス電圧VBGを出力する回路である。また、補正回路22は、基準電流I5に対して補正電流Itを加減算する回路である。
【0031】
したがって、本構成によれば、基準電流I5から補正電流Itを減算できるだけでなく、基準電流I5に補正電流Itを加算することができるため、抵抗R3に流れる電流I3の増減の微調整ができる。これにより、バンドギャップリファレンス電圧VBGの大きさの増減の微調整が容易にできる。その結果、例えば製造ばらつきによってバンドギャップリファレンス電圧VBGが変動しても、バンドギャップリファレンス電圧VBGを容易に且つ高精度に補正できる。また、バンドギャップリファレンス電圧VBGの温度による変化を容易に且つ高精度に補償できる。
【0032】
次に、バンドギャップリファレンス回路30の構成について更に詳細に説明する。
【0033】
基準電圧生成回路33は、オペアンプ31と、オペアンプ31の出力端子と接地電位VSSとの間に抵抗R4と抵抗R5と抵抗R3とトランジスタQ3とが直列に接続された直列回路を有している。
【0034】
トランジスタQ3は、ダイオード接続されたNPNバイポーラトランジスタである。トランジスタQ3のP型領域(ベース)は、抵抗R3の低電位側端部に接続されている。トランジスタQ3のベース・エミッタ間のPN接合には、順方向のバイアス電圧が印加されている。なお、トランジスタQ3は、ダイオード接続されたPNPバイポーラトランジスタでもよい。
【0035】
また、抵抗R4の低電位側端部と抵抗R5の高電位側端部とが接続されるノードN3は、オペアンプ31の反転入力端子に接続され、抵抗R5の低電位側端部と抵抗R3の高電位側端部とが接続されるノードN2は、オペアンプ31の非反転入力端子に接続されている。
【0036】
オペアンプ31の入力換算オフセットVBE31−VBE32は、抵抗R5に印加される。VBE31−VBE32が抵抗R5に印加されることによって、抵抗R5に流れる一定の基準電流I5が決まる。基準電流I5に応じた電流I3,I4が流れる抵抗R3,R4には、正の温度特性の電圧が発生する。したがって、トランジスタQ3の順方向電圧VBE3の負の温度特性と抵抗R3,R4,R5に発生する電圧の正の温度特性とが相殺されるように、抵抗R3,R4の抵抗値が選定されるとよい。これにより、温度依存性の小さいバンドギャップリファレンス電圧VBGがオペアンプ31から出力される。
【0037】
一方、補正回路22によって生成される補正電流Itは、ノードN2で入出力される。したがって、抵抗R3に流れる電流I3は、
I3=I5+It ・・・(6)
で表すことができる。電流I3は、抵抗R3及びトランジスタQ3のベース・エミッタ間のPN接合部に流れる。
【0038】
抵抗R5に流れる基準電流I5は、オペアンプ31の負帰還によって一定に維持される。したがって、補正回路22は、ノードN2に補正電流Itを供給することによって、基準電流I5に補正電流Itの供給量が加算された電流I3を抵抗R3に流すことができる。補正回路22は、ノードN2に供給する補正電流Itを増やすことによって、電流I3を増やすことができ、ノードN2に供給する補正電流Itを減らすことによって、電流I3を減らすことができる。また、補正回路22は、ノードN2から補正電流Itを吸い込むことによって、基準電流I5に補正電流Itの吸い込み量が減算された電流I3を抵抗R3に流すことができる。補正回路22は、ノードN2から吸い込む補正電流Itを増やすことによって、電流I3を減らすことができ、ノードN2から吸い込む補正電流Itを減らすことによって、電流I3を増やすことができる。このように、電流I3は、基準電流I5に対して補正電流Itが加減算された補正基準電流である。
【0039】
電流I3の増減に応じて、トランジスタQ3に流れる電流も増減する。電流I3が増えることによって、抵抗R3に発生する電圧は大きくなるため、バンドギャップリファレンス電圧VBGを大きく調整できる。一方、電流I3が減ることによって、抵抗R3に発生する電圧は小さくなるため、バンドギャップリファレンス電圧VBGを小さく調整できる。このように、補正電流Itの供給と吸い込みを切り替え可能な補正回路22が、補正電流Itの供給量又は吸い込み量を調整することによって、バンドギャップリファレンス電圧VBGを容易に且つ高精度に補正できる。
【0040】
このように、バンドギャップリファレンス回路30は、バンドギャップリファレンス電圧VBGを発生させるためのトランジスタと抵抗の組が1系統である基準電圧生成回路33と、この1系統の回路に流れる基準電流I0に対して補正電流Itを加減算する補正回路22とを備えている。この構成により、バンドギャップリファレンス電圧VBGが増加する側への調整時と減少する側への調整時の感度が一致する。このため、補正電流Itによる電流補正を実行する前に測定されたバンドギャップリファレンス電圧VBGに基づいて、バンドギャップリファレンス電圧VBGに対して行われるべき補正量を算出することが容易となる。
【0041】
また、バンドギャップリファレンス電圧VBGを発生させるためのトランジスタと抵抗の組を1系統とすることで、消費電流を削減し、回路面積を縮小できる。また、ノイズの発生源となり得る抵抗とトランジスタが減るため、低ノイズ化を実現できる。
【0042】
また、補正回路22を有することで、バンドギャップリファレンス電圧VBGの出力変化を安定化できる。例えば、単位調整ステップを基準電流I5のa%とし、bステップ調整した場合のバンドギャップリファレンス電圧VBGの電圧変化量を演算すると、ノードN2に補正電流Itを供給する場合、
抵抗R5に発生する電圧VR5:
VR5=VBE31−VBE32=Vt・ln(m・n)
抵抗R3に発生する電圧VR3:
VR3=VR5・(R3/R5)
抵抗R3に+a%×bステップの補正電流Itを追加したときの電圧VR3の電圧変化量ΔVR3:
ΔVR3=VR5・(R3/R5)・a/100・b
トランジスタQ3に+a%×bステップの補正電流Itを追加したときのトランジスタQ3のベース・エミッタ間の電圧変化量ΔVQ3:
ΔVQ3=Vt・ln(1+a/100×b)
(例えば、b=1において、a=1%のとき、ΔVQ3は0.00995・Vtとなり、a=2%のとき、ΔVQ3は0.0198・Vtとなる)
バンドギャップリファレンス電圧VBGの電圧変化量ΔVBGR:
ΔVBGR=ΔVR3+ΔVQ3
=VR5・(R3/R5)・a/100・b
+Vt・ln(1+a/100×b)
という結果が得られる。
【0043】
図5は、基準電圧生成回路33の一構成例である。
図4の負荷回路32は、
図5の破線部に相当する。
【0044】
図5において、差動対Q31,Q32の電流比をm:1としたことで、各トランジスタの電流比は、Q31:Q32:Q4:Q5:Q6:M1:M2=m:1:(m+1):1:m:2:2mに設定するのが望ましい。
【0045】
トランジスタM6,M7,M8は、オペアンプの出力抵抗を向上させるために付加している。トランジスタM6,M7,M8は、無くてもよい。また、トランジスタM4,M5,M6,M7,M8,M9,Q7を削除して、差動対Q31,Q32の負荷回路をトランジスタM1,M2とし、出力バッファにトランジスタM3を用いる構成でもよい。
【0046】
バンドギャップリファレンス電圧VBGを電圧補正するための補正電流Itの入出力点は、ノードN3でもよいし、ノードN2でもよいし、ノードN1でもよいし、抵抗R3、R4が複数の抵抗要素に分割されて構成されているときには、それらの抵抗要素間の中間点でもよい。
【0047】
図6は、補正回路22の一構成例である。補正回路22は、
図2のバンドギャップリファレンス回路20で使用される場合、基準電流I0に対して加算される第1の補正電流を生成する第1の生成回路として、吸い込み電流Itbを生成する電流吸い込み回路27を有し、基準電流I0に対して減算される第2の補正電流を生成する第2の生成回路として、供給電流Itaを生成する電流供給回路26を有している。補正回路22は、
図3のバンドギャップリファレンス回路30で使用される場合、基準電流I0に対して加算される第1の補正電流を生成する第1の生成回路として、供給電流Itaを生成する電流供給回路26を有し、基準電流I0に対して減算される第2の補正電流を生成する第2の生成回路として、供給電流Itbを生成する電流吸い込み回路27を有している。補正電流Itは、供給電流Itaと吸い込み電流Itbとを合わせた電流である。すなわち、電流供給回路26は、補正電流Itを生成するための上流側電流源であり、電流吸い込み回路27は、補正電流Itを生成するための下流側電流源である。
【0048】
補正回路22は、補正電流Itの増減量を調整するための調整データに応じて、電流供給回路26と電流吸い込み回路27に対して補正制御信号Sta,Stbを出力する制御回路25を有している。制御回路25は、補正制御信号Sta,Stbを出力することによって、補正電流Itの増減を制御する。制御回路25は、論理回路で構成されてもよいし、マイクロコンピュータで構成されてもよい。
【0049】
補正電流Itの調整データは、例えば、不揮発性メモリ24に記憶されている。不揮発性メモリ24の具体例として、EEPROM、フラッシュROM、OTPROMが挙げられる。
【0050】
補正電流Itの調整データを変更することによって、補正電流Itの単位調整量(単位調整幅)を調節できる。制御回路25は、例えば、補正制御信号Sta,Stbによって、補正電流Itをバイナリで重み付けして増減するとよい。これにより、電流供給回路26と電流吸い込み回路27を構成するトランジスタM*,S*の数が少なくても、補正電流Itの単位調整量を小さくできる。補正電流Itの単位調整量が小さいほど、バンドギャップリファレンス電圧VBGの単位調整幅を小さくできるため、バンドギャップリファレンス電圧を精度良く調整できる。また、制御回路25は、温度計コードに従って、補正電流Itの増減を制御してもよい。
【0051】
また、補正回路22は、バンドギャップリファレンス電圧VBGを生成するために供給されるバイアス電流Ib(
図5参照)に基づいて、補正電流Itを生成するとよい。バイアス電流Ibは、バンドギャップリファレンス電圧VBGが出力されるノードN4よりも上流の出力バッファM3,M6から供給される。
図5と
図6のbias1,bias2はともに接続され、補正電流Itの生成基準電流Iaは、バイアス電流IbがトランジスタM3,M6,M10,M20によってコピーされて生成される。生成基準電流Iaは、補正電流Itの単位調整量を精度の良い値にするため、バイアス電流Ibよりも小さな値にコピーされる。
【0052】
バンドギャップリファレンス電圧VBGを得るためのバイアス電流Ibをコピーして補正を行うことによって、単位補正ステップ当たりの調整量が容易に求められる。そのため、バンドギャップリファレンス電圧VBGを測定すれば、電圧調整ステップ数が容易に求められ、調整工程においての工数を低減できる。
【0053】
また、電流印加で補正を行うため、抵抗値補正のときのように、抵抗R0,R3,R4(
図5参照)に対してオン抵抗が十分小さなトランジスタM*やスイッチS*(
図6参照)を使用しなくてもよいため、小面積化を実現できる。また、電流供給回路26又は電流吸い込み回路27を構成するトランジスタM*やスイッチS*のオン抵抗が電源電圧VDDによって影響しにくいため、電源電圧VDDによるバンドギャップリファレンス電圧VBGの変動を低減できる。
【0054】
図7は、バンドギャップリファレンス回路を起動するスタートアップ回路34の一構成例である。スタートアップ回路34は、バンドギャップリファレンス電圧VBGに応じてスタートアップ電流Isの出力をオン/オフする。スタートアップ回路34は、バンドギャップリファレンス電圧VBGが所定値よりも低いとき、スタートアップ電流Isの出力をオンし、バンドギャップリファレンス電圧VBGが所定値よりも高いとき、スタートアップ電流Isの出力をオフする。
【0055】
スタートアップ電流Isは、
図2の場合、ノードn1とノードn4との間に挟まれた任意のノードに供給されるとよく、
図3の場合、ノードN4とノードN1との間に挟まれた任意のノードに供給されるとよい。
【0056】
図7において、バンドギャップリファレンス電圧VBGがソースフォロワのNMOSトランジスタM44のゲート閾値電圧よりも低いとき、トランジスタM44は、NチャネルMOS側の電流源M46の出力をオフさせる。これにより、スタートアップ用のソースフォロアのNMOSトランジスタM43のゲート電圧が上昇するため、スタートアップ電流Isが出力される。一方、バンドギャップリファレンス電圧VBGがトランジスタM44のゲート閾値電圧よりも高いとき、トランジスタM44は、電流源M46の出力をオンさせる。これにより、トランジスタM43のゲート電圧が低下するため、スタートアップ電流Isの出力は自動的にオフする。このとき、PMOS側の電流源M42よりもNMOS側の電流源M46の電流能力が高くなるように、トランジスタM41,M42,M45,M46のサイズが予め調整されているとよい。
図7の回路構成の場合、電圧検出のためのソースフォロワと電流印加のためのソースフォロワとによって構成された簡単な回路でスタートアップ回路を実現でき、小面積化を図ることができる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形、組み合わせ、改良、置換などを行うことができる。
【0058】
例えば、
図6の補正回路22のスイッチS*の代わりに、ヒューズ素子を用いてもよい。