特許第5958032号(P5958032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958032
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】自動変速機の制御システム
(51)【国際特許分類】
   F02D 21/08 20060101AFI20160714BHJP
   F16H 61/21 20060101ALI20160714BHJP
   F02D 13/04 20060101ALI20160714BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   F02D21/08 301H
   F16H61/21
   F02D13/04 A
   F02D21/08 311B
   F02D29/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-86711(P2012-86711)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-217232(P2013-217232A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】岸本 義久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−303162(JP,A)
【文献】 特開2011−106565(JP,A)
【文献】 特開2010−144558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00−28/00
F02D 29/00−29/06
F02D 9/04
F02D 9/06
F01L 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから入力される回転力を所定の変速比で変速して出力する自動変速機の制御システムであって、
前記エンジンの圧縮行程時に排気バルブを開弁する圧縮開放ブレーキを作動可能な圧縮開放ブレーキ機構と、
前記エンジンの排気を吸気系に再循環させる排気再循環量をバルブの開度に応じて変化させる排気再循環装置と、
前記エンジンと前記自動変速機の間に介設されたクラッチと、
前記自動変速機の変速、前記圧縮開放ブレーキ機構の作動、前記バルブの開度、及び前記クラッチの断接を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記自動変速機の変速制御時にエンジン回転数を低減して変速機回転数と同期させる場合は、前記バルブの開度を増加させた後に前記エンジンの筒内圧を減少させてから前記クラッチを断すると共に前記圧縮開放ブレーキ機構を作動させることを特徴とする自動変速機の制御システム。
【請求項2】
エンジンから入力される回転力を所定の変速比で変速して出力する自動変速機の制御システムであって、
前記エンジンの圧縮行程時に排気バルブを開弁する圧縮開放ブレーキを作動可能な圧縮開放ブレーキ機構と、
前記エンジンの排気を吸気系に再循環させる排気再循環量をバルブの開度に応じて変化させる排気再循環装置と、
前記自動変速機の変速、前記圧縮開放ブレーキ機構の作動及び、前記バルブの開度を制御する制御手段と、
前記エンジンの筒内圧を検出する筒内圧検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記自動変速機の変速制御時にエンジン回転数を低減して変速機回転数と同期させる場合は、前記バルブの開度を増加させて前記エンジンの筒内圧を減少させてから前記圧縮開放ブレーキ機構を作動させ、
前記制御手段は、前記自動変速機の変速制御時に前記圧縮開放ブレーキ機構を作動させる場合において、前記筒内圧検出手段の検出値が前記圧縮開放ブレーキ機構を作動できる上限閾値よりも高い時は、該検出値が該上限閾値よりも低くなるまで前記バルブの開度を全開に制御することを特徴とする自動変速機の制御システム。
【請求項3】
前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、
前記自動変速機の変速時にエンジン回転数と変速機回転数とを同期させる前記エンジンの目標回転数を設定する目標回転数設定手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、前記自動変速機の変速制御時に前記回転数検出手段の検出値が前記目標回転数になるまで前記圧縮開放ブレーキ機構の作動を継続させる請求項1又は2に記載の自動変速機の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の制御システムに関し、特に、変速制御時に圧縮開放ブレーキを作動してエンジン回転数と変速機回転数とを同期させる自動変速機の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮開放ブレーキは、エンジンの圧縮行程時に排気バルブを開弁させて圧縮圧力を開放し、膨張行程時にピストンを押し下げる力の発生を抑制することで、圧縮行程で得た制動力を有効に作用させてエンジンブレーキ力を高めている。
【0003】
このような圧縮開放ブレーキを自動変速機の変速時に作動させて、エンジン回転数を低減することにより、エンジン回転数と変速機回転数とを同期させる技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−106565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧縮開放ブレーキは耐久性の要因から作動できる筒内圧に制限があるため、筒内圧が高い状態では作動させることができない。そのため、上述の従来技術では、変速時に筒内圧が高い場合は筒内圧が低下するまで圧縮開放ブレーキを作動させることができず、結果として変速時間が長くなる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、その目的は、変速制御時に筒内圧が高い場合においても、変速時間を効果的に短縮することができる自動変速機の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明の自動変速機の制御システムは、エンジンから入力される回転力を所定の変速比で変速して出力する自動変速機の制御システムであって、前記エンジンの圧縮行程時に排気バルブを開弁する圧縮開放ブレーキを作動可能な圧縮開放ブレーキ機構と、前記エンジンの排気を吸気系に再循環させる排気再循環量をバルブの開度に応じて変化させる排気再循環装置と、前記自動変速機の変速、前記圧縮開放ブレーキ機構の作動及び、前記バルブの開度を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記自動変速機の変速制御時にエンジン回転数を低減して変速機回転数と同期させる場合は、前記バルブの開度を増加させて前記エンジンの筒内圧を減少させてから前記圧縮開放ブレーキ機構を作動させることを特徴とする。
【0008】
また、前記エンジンの筒内圧を検出する筒内圧検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記自動変速機の変速制御時に前記圧縮開放ブレーキ機構を作動させる場合において、前記筒内圧検出手段の検出値が前記圧縮開放ブレーキ機構を作動できる上限閾値よりも高い時は、該検出値が該上限閾値よりも低くなるまで前記バルブの開度を全開に制御するものであってもよい。
【0009】
また、前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、前記自動変速機の変速時にエンジン回転数と変速機回転数とを同期させる前記エンジンの目標回転数を設定する目標回転数設定手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記自動変速機の変速制御時に前記回転数検出手段の検出値が前記目標回転数になるまで前記圧縮開放ブレーキ機構の作動を継続させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動変速機の制御システムによれば、変速制御時に筒内圧が高い場合においても、変速時間を効果的に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御システムを示す模式的な全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御システムを示す模式的な側面概略図である。
図3】本発明の一実施形態に係る変速機ECUによる制御内容を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係るエンジンECUによる制御内容を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御システムによる圧縮開放ブレーキの作動時期、クラッチの断接、EGRバルブのバルブ開度、エンジン回転数、筒内圧の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1〜5を用いて、本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御システムを説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0013】
まず、図1,2に基づいて、本実施形態に係る自動変速機の制御システムの全体構成から説明する。
【0014】
本実施形態のディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)10は、圧縮行程時に排気バルブを開閉動作させる圧縮開放ブレーキ機構40を備えている。なお、図示の関係上、図1にはエンジン10の複数気筒のうち1気筒のみを示し、他の気筒については図示を省略している。
【0015】
エンジン10のシリンダヘッド11には、吸気バルブ12の開閉により気筒内に吸気を導入する吸気ポート13と、排気バルブ14の開閉により気筒内から排気を排出する排気ポート15とが設けられている。
【0016】
吸気ポート13には吸気通路16が接続され、この吸気通路16には吸気上流側から順にエアフィルタ21、可変容量型過給機30の一部を構成するコンプレッサ31、インタークーラ22が設けられている。排気ポート15には排気通路17が接続され、この排気通路17には可変容量型過給機30の一部を構成する可変ノズル33を備えたタービン32が設けられている。
【0017】
可変容量型過給機30は、吸気を圧送供給するコンプレッサ31と、排気により駆動するタービン32と、タービン32に付設された可変ノズル33と、可変ノズル33のノズル開度を変化させるアクチュエータ34とを備えている。これらコンプレッサ31とタービン32とは、回転軸を介して連結されている。また、アクチュエータ34の作動は、後述するエンジンECU80から入力される指示信号に応じて制御される。可変容量型過給機30は、ノズル開度を増加させるとタービン32の開口面積が増加する一方、ノズル開度を減少させるとタービン32の開口面積が減少する。これにより、ノズル開度を増加させた場合には排気圧が低下して過給量も減少する一方、ノズル開度を減少させた場合には排気圧が上昇して過給量も増加するように構成されている。
【0018】
圧縮開放ブレーキ機構40は公知の構造を有するものであって、シリンダヘッド11の上部に設けられている。この圧縮開放ブレーキ機構40は、何れも図示しないブレーキ用カムがブレーキ用ロッカアームを揺動させた際に作動油を介して伝達される油圧で排気バルブ14を押し下げる(開弁)ことにより、圧縮行程時に圧縮開放ブレーキを作動させる。圧縮開放ブレーキ機構40への作動油の供給は、後述するエンジンECU80から電磁ソレノイド41に入力される指示信号に応じて制御される。
【0019】
また、エンジン10は、排気の一部を吸気系に再循環する排気再循環装置(Exhaust Gas Recirculation:以下、EGRという)50を備えている。EGR装置50は、排気通路17と吸気通路16とを接続するEGR通路51と、再循環排気を冷却するEGRクーラ52と、EGR量を調整するEGRバルブ53と、EGRバルブ53のバルブ開度を変化させるアクチュエータ54とを備えている。このアクチュエータ54の作動は、後述するエンジンECU80から入力される指示信号に応じて制御される。EGR装置50は、EGRバルブ53のバルブ開度を増加させるとEGR量も増加し、タービン32に導入される排気流量が減少する。これにより、タービン32の駆動は低下して過給量も減少する。一方、EGRバルブ53のバルブ開度を減少させるとEGR量も減少し、タービン32に導入される排気流量が増加する。これにより、タービン32の駆動は上昇して過給量も増加する。
【0020】
自動変速機2は、クラッチ3を介してエンジン10と断接可能に接続されており(図2参照)、エンジン10から入力される回転力をアクセル操作量や車速に応じて所定の変速比で変速してプロペラシャフト4に出力する。これらクラッチ3の断接作動及び、自動変速機2の変速作動は、後述する変速機ECU70から入力される指示信号に応じて制御される。
【0021】
また、本実施形態の自動変速機の制御システムは、電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)としての変速機ECU70とエンジンECU80とを備えている。
【0022】
変速機ECU70は、クラッチ3や自動変速機2の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。これら各種制御を行うために、変速機ECU70には、エンジン回転センサ60、アクセルポジションセンサ61、車速センサ62、シフトポジションセンサ63等の各種センサの出力信号が入力される。
【0023】
また、変速機ECU70は、変速制御時にアクセルポジションセンサ61から入力されるアクセル操作量、車速センサ62から入力される車速、シフトポジションセンサ63から入力される現在のシフトポジション等に基づいて、エンジン10の回転数を自動変速機2の回転数に同期させるための目標回転数を演算する。そして、目標回転数がエンジン回転センサ60から入力される実回転数よりも低い場合は、エンジンECU80に圧縮開放ブレーキの作動を準備させる信号(以下、圧縮開放ブレーキ作動準備信号という)を出力する。さらに、変速制御時に圧縮開放ブレーキを作動させてエンジン回転数を低減させるタイミングになると、エンジンECU80に圧縮開放ブレーキを作動させる信号(以下、圧縮開放ブレーキ作動指示信号という)を出力する。
【0024】
エンジンECU80は、エンジン10や圧縮開放ブレーキ機構40、可変ノズル33、EGRバルブ53等の各種制御を行うもので、変速機ECU70と同様に公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。これら各種制御を行うために、エンジンECU80には、エンジン回転センサ60、アクセルポジションセンサ61、車速センサ62、筒内圧センサ64等の各種センサの出力信号が入力される。
【0025】
また、エンジンECU80は、変速機ECU70から圧縮開放ブレーキ作動準備信号が入力されると、筒内圧センサ64から入力される筒内圧が圧縮開放ブレーキを作動できる上限閾値を超えているか否かを判定する。筒内圧が上限閾値を超えていない場合、エンジンECU80は、変速機ECU70から入力される圧縮開放ブレーキ作動指示信号に応じて、圧縮開放ブレーキを作動させる。すなわち、圧縮開放ブレーキ作動指示信号が入力されると、エンジンECU80は、圧縮開放ブレーキ機構40の電磁ソレノイド41に電流を印可する指示信号を出力する。
【0026】
一方、筒内圧が上限閾値を超えている場合、エンジンECU80は筒内圧センサ64の検出値がこの上限閾値よりも低くなるまでEGR装置50のアクチュエータ54にEGRバルブ53のバルブ開度を増加(本実施形態では全開)させる指示信号を出力する。これにより、筒内圧は圧縮開放ブレーキを作動できる上限閾値以下に低下される。その後、エンジンECU80は、変速機ECU70から入力される圧縮開放ブレーキ作動指示信号に応じて圧縮開放ブレーキを作動、すなわち圧縮開放ブレーキ機構40の電磁ソレノイド41に電流を印可する指示信号を出力する。なお、EGRバルブ53のバルブ開度を増加させる際に、可変容量型過給機30の可変ノズル33のノズル開度も増加もしくは全開に制御してもよい。
【0027】
次に、本実施形態の自動変速機の制御システムによる制御内容を図3,4フローチャートに基づいて説明する。
【0028】
図3は、変速機ECU70による制御内容を示すフローチャートである。本制御は変速機ECU70による自動変速機2の変速制御開始と同時にスタートする。
【0029】
ステップ(以下、ステップを単にSと記載する)100では、アクセルポジションセンサ61から入力されるアクセル操作量、車速センサ62から入力される車速、シフトポジションセンサ63から入力される現在のシフトポジション等に基づいて、エンジン10の回転数を自動変速機2の回転数に同期させるための目標回転数が演算される。
【0030】
さらに、S110では、圧縮開放ブレーキを作動させてエンジン10の回転数を低減させる必要があるか否かが確認される。エンジン回転センサ60から入力される実回転数が目標回転数よりも高い場合(YES)、S120でエンジンECU80に圧縮開放ブレーキ作動準備信号を出力する。一方、エンジン回転センサ60から入力される実回転数が目標回転数以下の場合(NO)、本制御はリターンされる。
【0031】
S120で圧縮開放ブレーキ作動準備信号が出力されると、S130では圧縮開放ブレーキを作動させてエンジン回転数を低減させるタイミングか否かが確認される。エンジン回転数を低減させるタイミングの場合(YES)、S140でエンジンECU80に圧縮開放ブレーキ作動指示信号を出力した後に本制御はリターンされる。一方、エンジン回転数を低減させるタイミングでない場合(NO)、本制御はそのままリターンされる。
【0032】
次に、エンジンECU80による制御内容を図4に示すフローチャートに基づいて説明する。本制御は図3に示す変速機ECU70による変速制御の開始と同時にスタートする。
【0033】
S200では、変速機ECU70から圧縮開放ブレーキ作動準備信号が入力されたか否かが確認される。圧縮開放ブレーキ作動準備信号が入力されている場合(YES)はS210に進む。一方、圧縮開放ブレーキ作動準備信号が入力されていない場合(NO)、本制御はリターンされる。
【0034】
S210では、筒内圧センサ64から入力される筒内圧が圧縮開放ブレーキを作動できる上限閾値を超えているか否かを判定する。筒内圧センサ64の検出値が上限閾値を超えていない場合、すなわち圧縮開放ブレーキを作動できる場合(YSE)はS220に進む。一方、筒内圧センサ64の検出値が上限閾値を超えている場合、すなわち圧縮開放ブレーキを作動できない場合(NO)は、S230でEGRバルブ53のバルブ開度を増加(本実施形態では全開)させる指示信号を出力した後、再びS210に戻される。これにより、筒内圧が圧縮開放ブレーキを作動できる上限閾値以下に低下するまで、EGRバルブ53のバルブ開度は全開状態に維持される。なお、S230で同時に可変容量型過給機30の可変ノズル33のノズル開度を増加もしくは全開に制御してもよい。
【0035】
S220では、変速機ECU70から圧縮開放ブレーキ作動指示信号が入力されたか否かが確認される。圧縮開放ブレーキ作動指示信号が入力されている場合(YES)はS240に進む。一方、圧縮開放ブレーキ作動指示信号が入力されていない場合(NO)、本制御はリターンされる。
【0036】
S240では、圧縮開放ブレーキ機構40の電磁ソレノイド41に電流を印可する指示信号を出力して圧縮開放ブレーキを作動させる。さらに、S250では、エンジン回転センサ60から入力される実回転数が変速機ECU70で演算された目標回転数と等しくなったか否かが確認される。実回転数と目標回転数とが等しくない場合(NO)、これら実回転数と目標回転数とが等しくなるまで圧縮開放ブレーキの作動を継続させるようにS240に戻される。一方、実回転数と目標回転数とが等しくなった場合(YES)、本制御はリターンされる。
【0037】
次に、本実施形態の自動変速機の制御システムによる作用効果について説明する。
【0038】
図5に示すように、自動変速機2による変速制御開始時(A線参照)に、エンジン10の目標回転数が実回転数よりも高い場合、エンジン10の筒内圧が圧縮開放ブレーキを作動できる上限閾値(X線参照)よりも高いか否かが確認される。筒内圧が上限閾値よりも高い場合は、EGRバルブ53のバルブ開度を増加(本実施形態では全開)させて、圧縮開放ブレーキを作動可能な筒内圧まで早期に低下させる。
【0039】
その後、筒内圧が圧縮開放ブレーキを作動できる上限閾値よりも低くなると、圧縮開放ブレーキを作動(B線参照)させてエンジン10の実回転数を目標回転数まで低減させる。そして、エンジン10の回転数と自動変速機2の回転数とが同期すると、クラッチ3を断から接にして変速制御を終了する。
【0040】
すなわち、本実施形態の自動変速機の制御システムでは、変速制御時に筒内圧が高い場合は、EGRバルブ53のバルブ開度を増加(全開)させることにより、筒内圧は圧縮開放ブレーキが作動できる筒内圧まで早期に低下される。結果として、従来技術のように筒内圧が低下するまで圧縮開放ブレーキの作動を待たせる必要がなくなり、圧縮開放ブレーキを必要なタイミングで効果的に作動させることが可能になる。
【0041】
したがって、本実施形態の自動変速機の制御システムによれば、変速制御時に筒内圧が高い場合においても、圧縮開放ブレーキを早期に作動させることが可能となり、変速時間を効果的に短縮することができる。
【0042】
また、変速制御のために圧縮開放ブレーキを筒内圧が高い状態で作動させる必要もなくなるので、耐久性を要因とする圧縮開放ブレーキ機構40の故障等の発生を効果的に防止するができる。
【0043】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0044】
例えば、本発明が適用されるエンジン10は、ディーゼルエンジンに限られず、ガソリンエンジン等にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
2 自動変速機
10 エンジン
30 可変容量型過給機
33 可変ノズル
40 圧縮開放ブレーキ機構
50 EGR装置(排気再循環装置)
53 EGRバルブ
64 筒内圧センサ(筒内圧検出手段)
70 変速機ECU(制御手段)
80 エンジンECU(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5