(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体の1分子中の3つの官能基の1つにN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランをアダクトしたアダクト化合物を含み難接着性の塗装面とシーリング材との接着に用いられるウレタン系プライマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明について詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0014】
本実施形態に係るウレタン系プライマー組成物(以下「本実施形態の組成物」という。)は、イソシアネート化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体の1分子中の3つの官能基の1つにN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランをアダクトしたアダクト化合物とを含む。
【0015】
<イソシアネート化合物>
本実施形態の組成物に含まれるイソシアネート化合物(以下「ポリイソシアネート化合物」という。)は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。ポリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)のような脂環式ポリイソシアネート;これらポリイソシアネートの付加反応物、例えば、トリメチロールプロパンやグリコール等を用いたアダクト体;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;アロハネート変性ポリイソシアネート;ビュレット変性ポリイソシアネート等が挙げられる。このようなポリイソシアネート化合物は、それぞれ1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
本実施形態においては、難接着性の塗装面に対する接着性がより良好となるという観点から、上記ポリイソシアネート化合物がイソシアネート基を3個以上有していることが好ましい。イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
なお、本実施形態において、難接着性の塗装面とは、アクリル電着塗装面、陽極酸化塗装面、フッ素系塗装面、シリコーン系塗装面等の接着し難い塗装面のことをいう。
【0018】
これらのうち、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートの何れか一方または両方と、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物との組み合わせで用いることが好ましい。また、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェートと、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物との組み合わせで用いることも好ましい。これらを組み合わせて用いることにより難接着性の塗装面に対する接着性を向上できる。
【0019】
上記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物を三量化して得られる、ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を好適に用いることができる。上記ジイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、上記で例示した芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらのうち、TDIとHDIの混合物を反応させて得られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物であるのが、難接着性の塗装面に対する接着性がより良好となり十分な接着性が得られるという観点から好ましい。
【0020】
上記ポリイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート(ディスモジュールRFE、バイエル社製)、HDIとTDIの混合物を反応させて得られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物(ディスモジュールHL、バイエル社製)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(スミジュール44V−10、住化バイエルウレタン株式会社製)等を挙げることができる。これらのなかでも、HDIとTDIの混合物を反応させて得られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物(ディスモジュールHL、バイエル社製)を好適に用いることができる。
【0021】
<アダクト化合物>
本実施形態の組成物に含まれるアダクト化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体の1分子中の3つの官能基の1つにN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランをアダクトした化合物である。以下、アダクト化合物をアダクト体ともいう。
【0022】
(HDIビュレット体)
本実施形態の組成物に含有されるHDIビュレット体は、下記式(1)で表される化合物である。
【0024】
(アダクト体)
本実施形態の組成物に含有されるアダクト体は、1分子中に1個以上の加水分解可能なアルコキシシリル基を有する、HDIビュレット体のシラン変性物である。
【0025】
アダクト体が有するアルコキシシリル基は、例えば、炭素原子数1〜18の分岐してもよい、1〜3個のアルキコキシ基を有するシリル基が挙げられる。炭素原子数1〜18の分岐してもよいアルキコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
【0026】
シリル基に結合する残基は、特に制限されず、例えば、炭素原子数1〜18の分岐してもよい、1〜3個のアルキル基が挙げられる。炭素原子数1〜18の分岐してもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0027】
アダクト体は、イソシアネート基を有することができる。アダクト体がイソシアネート基を有する場合、アダクト体のイソシアネート基がウレタンプレポリマーのイソシアネート基と反応してアダクト体が生成物の骨格に組み込まれるという観点から、アダクト体1分子中のイソシアネート基の数は1〜2であるのが好ましい。また、アダクト体としては、反応性の高いウレタンプレポリマーを用いた場合このようなウレタンプレポリマーとアダクト体とが反応して生成されたウレア結合が骨格に組み込まれるという観点から、イソシアネート基を有さないものを使用することができる。
【0028】
アダクト体は、難接着性の塗装面との耐温水接着性により優れるという観点から、HDIビュレット体と、芳香環が窒素原子に直接結合している第二級アミノ基とアルコキシシリル基とを有する第二級アミノアルコキシシランとを反応させることによって得られるものであるのが好ましい。
【0029】
なお、本実施形態において、耐温水接着性とは、所定の硬化・養生条件下で硬化させた後、更に所定温度の温水中に所定時間浸漬した後の接着性のことをいう。
【0030】
第二級アミノアルコキシシランは、難接着性の塗装面との耐温水接着性により優れるという観点から、下記式(2)で表されるアルコキシシランであるのが好ましい。
【0032】
式中、R
1は芳香族炭化水素基、R
2は炭素原子数1〜18の分岐してもよいアルキレン基であり、R
3およびR
4はそれぞれ独立に炭素原子数1〜18の分岐してもよいアルキル基であり、nは1〜3の整数である。
【0033】
アダクト体を製造する際に使用されるHDIビュレット体は上記と同義である。
【0034】
アダクト体を製造する際に使用される上記式(2)で表されるアルコキシシランにおいて、R
1は芳香族炭化水素基であり、具体的には、例えば、フェニル基、p−トルイル基などが挙げられる。R
2は炭素数1〜18の分岐してもよいアルキレン基であり、好ましくは炭素数2〜6のアルキレン基である。
【0035】
R
3およびR
4はそれぞれ独立に炭素数1〜18の分岐してもよいアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、メチル基またはエチル基であることがさらに好ましい。nは1〜3の整数であり、複数のR
3またはR
4は同一であっても異なっていてもよい。ここで、上記アルキレン基および上記アルキル基は、直鎖状のものでもよく、分岐状のものでもよく、ヘテロ原子(O、N、S等)を有していてもよい。
【0036】
また、第二級アルコキシシランは芳香環が窒素原子に直接結合しているため、得られるアダクト体は剛直な構造を有することとなり、本実施形態の組成物がこのようなアダクト体を含有する場合、難接着性の塗装面に対して、良好な接着性を示すことができる。
【0037】
第二級アルコキシシランとしては、例えば、下記式(3)で示されるN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが好適に挙げられる。
【0039】
HDIビュレット体と第二級アミノアルコキシシランとの反応は、イソシアネート基/アミノ基(第二級アミノアルコキシシラン中のアミノ基に対するポリイソシアネート中のイソシアネート基の比。以下、NCO/NHとする。)が3.0/2.0〜3.0/0.2であるのが好ましく、より好ましくは3.0/2.0〜3.0/0.5となるように行う。このとき、未反応のHDIビュレット体が残っていてもよい。NCO/NHがこの範囲である場合、アダクト体の接着性の改善効果が十分に発揮されるので好ましい。
【0040】
アダクト体の製造は、例えば、HDIビュレット体と第二級アミノアルコキシシランとを溶剤中で、40℃以上60℃以下の条件下で反応させることによって行うことができる。また、必要に応じて、例えば、有機錫化合物、有機ビスマス、アミン等の触媒を用いることができる。
【0041】
アダクト体は、1分子中に平均1個以上の加水分解可能なアルコキシシリル基を有する。なかでも、アダクト体は、難接着性の塗装面との耐温水接着性により優れるという観点から、1分子中に平均1個以上のイソシアネート基と平均2個以上の加水分解可能なアルコキシシリル基とを有するのが好ましく、1分子中に平均1個以上のイソシアネート基と平均3個の加水分解可能なアルコキシシリル基とを有するのがより好ましい。
【0042】
本実施形態の組成物に含まれるアダクト体としては、上記式(1)で示されるHDIビュレット体の1分子中の3つの官能基の1つに、上記式(3)で示されるN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランをアダクトした反応生成物を好適に挙げることができる。
【0043】
アダクト体の数平均分子量は、難接着性の塗装面との耐温水接着性により優れるという観点から、1500未満のものであるのが好ましく、600以上1200以下であるのがより好ましく、600以上1000以下であるのがさらに好ましい。
【0044】
本実施形態の組成物に含まれるアダクト体の含有量は、貯蔵安定性が良好であると共に、難接着性の塗装面との耐温水接着性により優れるという観点から、アダクト体とイソシアネート化合物との合計量100に対して好ましくは20質量%以上100質量%以下、より好ましくは20質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下である。
【0045】
本実施形態の組成物に含まれるアダクト化合物は、HDIビュレット体とアダクト体との混合物であってもよい。
【0046】
<シランカップリング剤>
本実施形態の組成物は、更に、シランカップリング剤を含むことができる。シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基、メルカプト基、ウレイド基(アミノ基)、アミノ基、(ポリ)スルフィド基、ビニル基、メタクリロキシ基、カルボキシ基、イソシアネート基、ハロゲンおよびシクロプロピル基からなる群より選択される少なくとも1つの有機官能基を持つシランカップリング剤が挙げられる。本実施形態の組成物に含まれるシランカップリング剤は、分子内にエポキシ基又はメルカプト基を有するものが好ましい。
【0047】
シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン化合物;
【0048】
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン化合物;γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基含有シラン化合物;
【0049】
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等の(ポリ)スルフィド基含有シラン化合物;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニル基含有シラン化合物;γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ基含有シラン化合物;
【0050】
β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン化合物;γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートエチルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートエチルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートエチルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート基含有シラン化合物;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(メチルジメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(メチルジエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン基含有シラン化合物;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン化合物;メチルシリルエステル等のシリルエステル;オルソケイ酸エステル等のシラン化合物等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を混合または反応して用いてもよい。
【0051】
上記のシランカップリング剤のなかでも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランが、特に難接着性の塗装面への接着性を向上させる効果に優れることから好適に挙げられる。
【0052】
上記シランカップリング剤は、被着体の塗装面の種類に応じて適宜選択して用いることが好ましい。上記シランカップリング剤は、市販品を用いてもよく、製造してもよい。製造条件は特に限定されず、公知の方法、条件で行うことができる。上記シランカップリング剤の市販品としては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−187、A−183等を好適に用いることができる。
【0053】
シランカップリング剤は、アダクト体とイソシアネート化合物との合計量100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下含有されるのが好ましい。この範囲であれば、硬化物の物性に悪影響を及ぼすことなく、貯蔵安定性が良好であると共に、プライマー組成物の難接着性の塗装面に対する接着性をさらに向上させることができる。
【0054】
本実施形態の組成物は、エポキシ基又はメルカプト基を有するシランカップリング剤を含有するので、難接着性の塗装面に対する接着性をさらに向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態の組成物は、上記成分以外に造膜樹脂を含むことができる。造膜樹脂は、NCO基に対して低活性あるいは不活性であり、かつ、造膜性を有する樹脂であれば特に限定されず、一般に用いられるものを使用できる。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、塩化ゴム、テルペン樹脂等が好適に例示される。
【0056】
これらのなかでも、好ましくは、塩化ゴムを挙げることができる。塩化ゴムは、天然ゴムや合成ゴム等の原料を四塩化炭素等の塩素に不活性な塩素系の溶剤に溶解させて塩素化を行う方法や、ゴムラテックスを塩素化する方法等により得られるゴムである。塩化ゴムとしては、市販品を用いることもできる。具体的には、例えば、ペルグートS20、ペルグートS170(いずれも住化バイエル社製)が、難接着性の塗装面に対する接着性を特に向上でき、また、入手が容易であるという点から好適に挙げられる。
【0057】
本実施形態の組成物は、必要に応じて、本実施形態の効果を損なわない範囲で、溶剤、脱水剤、接着性付与剤、硬化触媒、充填剤、可塑剤、紫外線吸収剤、分散剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤等を含有することができる。これらの中の2種類以上を含有してもよい。
【0058】
本実施形態の組成物を製造する方法は特に限定されないが、例えば、上記各成分を減圧下または窒素等の不活性ガス雰囲気下で、ボールミル、万能かくはん機、混合ミキサー等の撹拌装置を用いて充分に混練し、均一に分散させる等により混合する方法が挙げられる。
【0059】
このように、本実施形態の組成物は、HDIビュレット体の1分子中の3つの官能基の1つにN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランをアダクトしたアダクト化合物を含むことを特徴とするプライマー組成物である。本実施形態の組成物のアダクト化合物は、HDIビュレット体の1分子中の3つの官能基の1つにN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランをアダクトすることにより疎水基を導入することができるため、プライマー組成物の加水分解を抑制することができ、耐温水接着性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態の組成物のアダクト化合物は、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランをアダクトした化合物であるため、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを単純配合した組成物に比べて貯蔵安定性を良好とすることができる。
【0061】
よって、本実施形態の組成物は、貯蔵安定性が良好であると共に、難接着性の塗装面に対して優れた耐温水接着性を有することができる。
【0062】
また、本実施形態の組成物のアダクト化合物は、HDIビュレット体の1分子中の3つの官能基の1つにN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランをアダクトした化合物であるため、アダクト化合物とシランカップリング剤とを共存配合させることができるため、難接着性の塗装面に対して接着性をさらに向上させることができる。
【0063】
本実施形態の組成物を適用する被着体としては、例えば、ガラス、金属、木材、プラスチックおよびこれらの表面に塗装が施されたもの等が挙げられる。また、難接着性の塗装板としては、アクリル系塗装板、エポキシ系塗装板、シリコーン系塗装板等が挙げられる。
【0064】
本実施形態の組成物は、難接着性の塗装部材用のプライマーとして好適に使用できる。本実施形態の組成物を好適に使用できる難接着性の塗装部材の材料としては、例えば、アクリル電着塗装部材、フッ素焼付け塗装部材、陽極酸化塗装部材などが挙げられる。これらの難接着性の塗装部材は、例えば、自動車、車輌、建築、電子部品等に使用される。また、本実施形態の組成物は、難接着性の塗装部材以外の部材にも使用することができる。
【0065】
また、本実施形態の組成物は、以上のような優れた特性を有することから、建築用、土木用、コンクリート用、木材用、金属用、ガラス用、プラスチック用等のシーリング材等の用途にも好適に用いられる。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<アダクト化合物の調製>
表1に示す各成分を、同表に示す配合量(質量部)で、配合しこれらを均一に混合して反応温度40℃以上60℃以下の条件下で4時間攪拌して反応させて、アダクト化合物を調製した。各成分の配合量を表1に示す。なお、実施例4〜6、9、10については、アダクト化合物と未反応のHDIビュレット体との配合量を表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
上記表1に示される各成分は、以下のとおりである。
・HDIビュレット体:商品名「タケネートD−165N」、武田薬品工業株式会社製
・シランカップリング剤:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、商品名「KBM−573」、信越化学工業株式会社製
・溶剤:酢酸エチル、関東化学株式会社製
【0069】
<プライマー組成物の調製>
表2に示す各成分を、同表に示す配合量(質量部)で、配合しこれらを均一に混合して、表2に示される各プライマー組成物を調製した。各々の実施例、比較例における各成分の配合量を表2に示す。
【0070】
<滴下試験>
図1は、滴下試験の様子を示す斜視図である。得られた各プライマー組成物10を陽極酸化塗装アルミ板(被着体1)11及び各種陽極酸化塗装複合皮膜アルミ板(被着体2〜5)11に滴下し、以下に示す硬化・養生条件で硬化させて試験体を得た。なお、被着体1〜5は各サッシメーカーの陽極酸化塗装複合皮膜アルミ板で、複合塗料のメーカーや製造工程の条件が異なるものである。
(硬化・養生条件)
・初期接着性:23℃で3日間放置
・耐温水接着性:23℃で3日間放置した後、50℃で4日間放置し、更に50℃の温水中に7日間浸漬
【0071】
得られた各試験体について、以下に示す方法で、各プライマー組成物の接着性を評価した。
図1に示すように、各プライマー組成物10に対してカッターナイフによるクロスカットを入れ、カッターで弾いて硬化膜の状態を目視で観察した。その評価結果を表2に示す。
図2は、滴下試験の評価の状態を示す図である。
図2に示すように、表2中、1〜5の評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
・評価5:硬化膜に割れ、剥離などの異常が認められない
・評価4:硬化膜に割れがなく、弾くと一部に剥離が生じる
・評価3:クロス部に沿って硬化膜が割れ、弾くと全面に剥離が生じる
・評価2:クロス部に沿って硬化膜が割れ、弾くと全面に剥離が生じる
・評価1:カッターを入れた時に、硬化膜の全面に剥離が生じる
「評価3」以上であれば接着性に優れると評価した。
【0072】
<剥離試験(ピール試験)>
得られた各プライマー組成物を陽極酸化塗装アルミ板(被着体1)及び各種陽極酸化塗装複合皮膜アルミ板(被着体2〜5)に塗布し、20℃で30分間放置した後、ポリサルファイド系のシーラント(商品名:ハマタイトSC−M500、横浜ゴム株式会社製)を塗布し、以下に示す硬化・養生条件で硬化させて試験体を得た。なお、被着体1〜5は、上述した滴下試験と同様のものである。
(硬化・養生条件)
・初期接着性:23℃で3日間放置
・耐温水接着性:23℃で3日間放置した後、50℃で4日間放置し、更に50℃の温水中に7日間浸漬
【0073】
得られた各試験体について、以下に示す方法で、各プライマー組成物の90°剥離試験(ピール試験)を行い、破壊状態を評価した。破壊状態の評価結果を表2に示す。表2中の評価基準は以下の通りである。CF、TCFであれば接着性に優れると評価した。
(評価基準)
・CF:シーリング材の凝集破壊の面積率
・TCF:シーリング材組成物の薄層破壊の面積率
・AF:被着体とプライマー組成物との界面破壊の面積率
・PS:プライマー組成物とシーリング材との界面破壊の面積率
【0074】
<貯蔵安定性>
表2で得られた各組成物を50℃で14日間養生後、各プライマー組成物の状態を確認した。接着剤が被着体に塗布可能な状態を「○」、粘度上昇が激しく塗布が困難な状態を「×」と表記した。貯蔵安定性の評価結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
上記表2に示される各成分は、以下のとおりである。
・溶剤:酢酸エチル、関東化学株式会社製
・造膜樹脂:塩化ゴム、商品名「ペルグートS170」、住化バイエル株式会社製
・脱水剤:商品名「ゼオラムA3」、東ソー株式会社製
・イソシアネート化合物:HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)とTDI(トリレンジイソシアネート)のアダクト体、横浜ゴム株式会社製
・HDIビュレット体:商品名「タケネートD−165N」、武田薬品工業株式会社製
・シランカップリング剤1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、商品名「A−187」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製
・シランカップリング剤2:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、商品名「A−183」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製
・接着性付与剤:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、商品名「KBM−573」、信越化学工業株式会社製
・触媒:アミン系触媒、商品名「ファーミンDM4098」、花王株式会社製
・アダクト化合物:上記表1で調製して得られたアダクト化合物
【0077】
表2に示す結果から、滴下試験は、実施例1〜10では、被着体1〜5に対して初期接着性および耐温水接着性の何れも「評価3」以上であり、何れの被着体に対しても初期接着性および耐温水接着性に優れることが確認された。また、剥離試験は、実施例1〜10では、被着体1〜5に対して初期接着性および耐温水着性の何れも破壊形態がCF、TCFであり、何れの被着体に対しても初期接着性および耐温水接着性に優れることが確認された。
【0078】
これに対して、滴下試験が、比較例1では初期接着性が何れの被着体に対しても「評価2」以下、耐温水接着性が測定不能、比較例2では初期接着性が被着体5に対して「評価2」であり、初期接着性に劣ることが確認された。また、耐温水接着性が、比較例4の被着体2、5以外は何れも「評価2」以下であるため、比較例1〜5は何れも耐温水接着性に劣ることが確認された。
【0079】
また、剥離試験が、比較例1〜5では初期接着性は何れの被着体に対してもCF、TCFであるが、耐温水接着性がAF、PSである被着体が多いため、比較例1〜5は何れも耐温水接着性に劣ることが確認された。
【0080】
貯蔵安定性は、実施例1〜10では何れも「○」であり良好であることが確認された。これに対して、比較例1〜3では「○」であるが、比較例4、5では「×」であり、貯蔵安定性に劣ることが確認された。
【0081】
よって、HDIビュレット体の1分子中の3つの官能基の1つにN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランをアダクトしたアダクト化合物を含むプライマー組成物の方が、アダクト化合物を含まないプライマー組成物と比べて、貯蔵安定性が良好であると共に、難接着性の塗装面に対する接着性を向上させることができる。また、初期接着性および耐温水接着性に優れることから、難接着性の塗装面のプライマー組成物として好適に用いることができる。