特許第5958112号(P5958112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958112
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】電動車
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20060101AFI20160714BHJP
   B60K 1/04 20060101ALI20160714BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20160714BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   B60L3/00 N
   B60K1/04 Z
   B60L11/18 C
   H02J7/00 Y
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-142144(P2012-142144)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-7861(P2014-7861A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 隆司
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−213556(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0043355(US,A1)
【文献】 特開2004−090810(JP,A)
【文献】 特開2010−119168(JP,A)
【文献】 実開昭59−174945(JP,U)
【文献】 特開2009−083671(JP,A)
【文献】 特開2008−279938(JP,A)
【文献】 特開2010−035277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
H02J 7/00−7/36
B60K 1/00−8/00
B60Q 3/00−3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動用モータを駆動する駆動用電池と、前記車両の車室外に設けられ外部電源から前記駆動用電池または前記駆動用電池から外部機器へ電力を出入力する出入力口と、を有する電動車であって、
前記電動車の故障を検出する故障検出手段と、
前記故障の種類に基づいて故障の緊急度を判定する緊急度判定手段と、
前記緊急度判定手段の緊急度判定に基づいて異なる態様で前記故障を報知する報知手段と、
前記車両の停車状態を検出する停車状態検出手段と、
前記出入力口に設けられた蓋の開閉状態を検出する開閉状態検出手段と、を備え、
前記報知手段は、前記出入力口または前記出入力口近傍に設けられた出入力口用照明装置と、前記車両の車室内に設けられた車内用照明装置とであり、前記停車状態検出手段により前記車両が停車状態にないと検出された際に前記開閉状態検出手段により前記蓋の開状態が検出された場合は前記車内用照明装置を点灯させるとともに、前記停車状態検出手段により前記車両が停車状態にあると検出された際に前記開閉状態検出手段により前記蓋の開状態が検出された場合は前記緊急度判定に基づいて前記出入力口用照明装置の点灯態様を変更する、
ことを特徴とする電動車。
【請求項2】
前記報知手段は、前記緊急度が大きいほど前記出入力口用照明装置の単位時間当たりの点滅回数を多くすることを特徴とする請求項1に記載の電動車。
【請求項3】
前記報知手段は、給電時の故障と充電時の故障とを識別し、前記給電時の故障については、所定時間経過後に前記出入力口用照明装置を点滅から消灯し、前記充電時の故障については、前記所定時間経過後に前記出入力口用照明装置を点滅点灯から連続点灯に切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の電動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の周辺状況などに応じて、運転者に緊急を報知するシステムが知られている。たとえば、下記特許文献1では、報知する情報の緊急度に応じて設定された時間周波数もしくは空間周波数に基づいて、表示手段における輝度を制御して、車両で得られた各種情報を報知する車両用表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−240768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、動力の少なくとも一部に電力を用いて走行する電気自動車やハイブリット自動車などの電動車が普及している。電動車には、充電口(電力の出入力口)から外部電力を供給して充電をおこなうプラグインタイプの車両がある。また、電動車には、走行用に蓄電された電力を他の電気機器に供給し、電源として使用できるようにした給電機能を備えた車両もある。このように、電動車ではユーザが外部から外部電源供給機構(たとえば充電ガンなど)を充電口に抜き差しして充電または給電をおこなう機会がある。このときに、車両の故障をユーザに報知することができれば、電動車の利便性の向上につながる。
【0005】
上述した特許文献1は、車両の走行中などに運転者の周辺の情報を報知するに留まり、特許文献1を適用しても、電動車の利便性を向上させることはできない。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、電動車の利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、発明にかかる電動車は、車両の駆動用モータを駆動する駆動用電池と、前記車両の車室外に設けられ外部電源から前記駆動用電池または前記駆動用電池から外部機器へ電力を出入力する出入力口と、を有する電動車であって、前記電動車の故障を検出する故障検出手段と、前記故障の種類に基づいて故障の緊急度を判定する緊急度判定手段と、前記緊急度判定手段の緊急度判定に基づいて異なる態様で前記故障を報知する報知手段と、前記車両の停車状態を検出する停車状態検出手段と、前記出入力口に設けられた蓋の開閉状態を検出する開閉状態検出手段と、を備え、前記報知手段は、前記出入力口または前記出入力口近傍に設けられた出入力口用照明装置と、前記車両の車室内に設けられた車内用照明装置とであり、前記停車状態検出手段により前記車両が停車状態にないと検出された際に前記開閉状態検出手段により前記蓋の開状態が検出された場合は前記車内用照明装置を点灯させるとともに、前記停車状態検出手段により前記車両が停車状態にあると検出された際に前記開閉状態検出手段により前記蓋の開状態が検出された場合は前記緊急度判定に基づいて前記出入力口用照明装置の点灯態様を変更する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
発明によれば、駆動用電池を有する電動車において、故障の緊急度判定に基づいて異なる態様で当該故障を報知する報知手段を設けたので、ユーザが当該故障に対して的確に対応できる可能性を向上させることができる。
発明によれば、報知手段を照明装置とし、駆動用電池への電力の出入力口または出入力口近傍に照明装置を設けたので、電動車の充電中または給電中に故障を報知する必要がある場合に、ユーザに対して迅速に報知を伝達することができる。
発明によれば、故障の緊急度が大きいほど照明装置の単位時間当たりの点滅回数を多くするので、故障の緊急度を直感的にユーザに伝達することができる。
発明によれば、給電時の故障と充電時の故障とを識別し、給電時の故障については所定時間経過後に点滅から消灯させるので、駆動用電池内の電力消費を抑制し、故障からの復帰後の給電時に利用可能な電力を確保することができる。また、充電時の故障については、所定時間経過後に点滅点灯から連続点灯に切り替えるので、出入口周辺での作業をしやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態にかかる電動車20の外観を示す説明図である。
図2】電動車20の出入力口22の拡大図である。
図3】電動車20の機能的構成を示すブロック図である。
図4】故障の種類および緊急度の一例を例示した表である。
図5】照明装置28の点灯態様の変更方法の一例を例示する表である。
図6】電動車20による処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる電動車の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる電動車20の外観を示す説明図である。実施の形態にかかる電動車20は、車両の駆動用モータを駆動する駆動用電池(バッテリー)を有し、動力の少なくとも一部に電力を用いて走行する。本実施の形態では、電動車20は、駆動用電池内の電力によってモータを回転させて駆動する電気自動車であるものとする。電動車20には、電動車20を充電する際に外部電力供給機構30が接続される出入力口22が設けられている。
【0012】
外部電力供給機構30(充電器)は、電動車20に電力を供給して電動車20の駆動用電池を充電する。外部電力供給機構30は、本体部32、充電ケーブル34、充電ガン36を含んで構成される。本体部32には、外部電力供給機構30の動作を制御する制御部(充電コントローラ)や、外部電力供給機構30の充電状態や充電設定、操作画面などが表示されるユーザインターフェースなどが設けられている。
【0013】
本体部32からは充電ケーブル34が伸びており、充電ケーブル34の先端には、充電ガン36(コネクタ)が設けられている。充電ガン36の先端には、車両側の結合部26に接続される結合部38が設けられている。結合部38には、電動車20に対して電力を供給する電力供給用インターフェースの他、電動車20とデータの授受をおこなうデータ用インターフェースが設けられている。
【0014】
電動車20の出入力口22は、蓋24に覆われており、その中には結合部26が設けられている。電動車20の充電時には、充電ガン36が出入力口22に挿入され、外部電力供給機構30側の結合部38と電動車20側の結合部26が接触して電力の授受をおこなう。結合部26には、外部電力供給機構30からの受給を受ける電力受給用インターフェースの他、外部電力供給機構30とデータの授受をおこなうデータ用インターフェースが設けられている。
【0015】
また、電動車20は、駆動用電池内に蓄電された走行用電力を他の電気機器に供給し、電源として使用できるようにした給電機能を備えている。本実施の形態では、電動車20の給電機能を利用するとき(給電時)は、出入力口22の結合部38に給電用のアダプタ(図示なし)を接続して、アダプタを介して他の電気機器に供給する。すなわち、出入力口22は、外部電源から駆動用電池または駆動用電池から外部機器へ電力を出入力するために設けられている。
【0016】
図2は、電動車20の出入力口22の拡大図である。ここで、出入力口22または出入力口22の近傍には、電動車20の故障を報知する報知手段206が設けられている。本実施の形態では、報知手段206の一例として、照明装置28が設けられているものとする。出入力口22の近傍とは、たとえば出入力口22内部の結合部38周辺や蓋24の裏面、電動車20のボディ上の出入力口22周辺などである。本実施の形態では、照明装置28は出入力口22内部の結合部38周辺に設けられている。
【0017】
照明装置28を充電および給電時に点灯させることにより、出入力口22の周囲を明るくし、充給電作業をしやすくすることができる。すなわち、照明装置28を設けることによって、充給電時の作業効率を向上させることができる。特に、電動車20は、給油場所がガソリンスタンドなどに限定されるガソリン車やディーゼル車と異なり、外部電力供給機構30があればいかなる場所でも充電可能である。外部電力供給機構30が設置されている場所は、ガソリンスタンドなど照明設備が整った場所であるとは限らず、夜間や屋外など比較的作業性の悪い状態にある可能性もある。電動車20に照明装置28を設けることによって、どのような場所での充給電時にも一定の作業性を確保することができる。など、本実施の形態では、出入力口22の開放操作(たとえば出入力口22の開放レバーに対する開放操作)がおこなわれると、照明装置28が通常の照明として点灯するものとする。
【0018】
また、照明装置28は、上述した報知手段206として、電動車が報知対象となる所定の故障状態となっている場合に点灯して、電動車20の故障をユーザに報知する。このように、照明装置28は、通常の照明としての機能とともに、電動車20の故障を報知する報知手段206の機能を有する。報知手段206として照明装置28が点灯する場合、通常の照明としての点灯とは異なる点灯態様で点灯するものとする。たとえば通常の照明としての点灯時には常時点灯するのに対し、報知手段206としての点灯時には所定時間ごとに点滅する、などである。報知手段206としての照明装置28の動作は、図3に示す電動車20の構成によって実現される。
【0019】
図3は、電動車20の機能的構成を示すブロック図である。図3には、電動車20における故障報知機能に関する構成のみを図示している。電動車20は、故障検出手段202、緊急度判定手段204、報知手段206(本実施の形態では照明装置28)によって構成される。図3に示した電動車20の構成のうち、故障検出手段202、緊急度判定手段204は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などによって構成される電動車20のECUによって実現される。また、報知手段206は、上記ECUによって照明装置28を点灯制御することによって実現する。
【0020】
故障検出手段202は、電動車20の故障を検出する。故障検出手段202は、たとえば電動車20のシフトギアの位置やサイドギアのオンオフ、駆動用電池の残存容量(電池電圧)、駆動用電池異常の有無、電動車20に接続されたケーブル等の型番、車両周辺の外気温度、その他電動車20の各所に設けられた各種センサの検出値、BMU(Battery Management Unit)などの他の演算処理部からの情報、結合部26(図1参照)のデータ用インターフェースを介して入力された情報などから、電動車20の故障を検出する。
【0021】
緊急度判定手段204は、故障検出手段202によって検出された故障の種類に基づいて、故障の緊急度を判定する。緊急度判定手段204は、たとえば図4に示すような故障内容および分類を示すデータを保持しており、電動車20が故障した際に当該故障の緊急度を判定する。
【0022】
図4は、故障の種類および緊急度の一例を例示した表である。図4の表300は、故障の緊急度を小・中・大の3段階に分類し、それぞれの緊急度に該当する故障の内容を挙げたものである。なお、図4には、一般的に故障とされる状態の他、ユーザの操作ミスなどを報知するものも含まれている。
【0023】
たとえば、緊急度が小(比較的緊急度が低い)の故障としては、充給電開始時にシフトギアの位置がP(パーキング)以外の位置にある、またはサイドギアがオフとなっている、充電ガン36との接触異常、充給電ケーブルが正規品でない、外気温低下による充電推奨、などが挙げられる。これらの状態は、たとえばユーザ自身によって対応可能な車両トラブルや操作ミスなどの事象である。
【0024】
各状態の詳細を説明すると、充給電開始時にシフトギアの位置がP(パーキング)以外の位置にある、またはサイドギアがオフとなっている、とは、電動車20では、充給電時にはシフトギアの位置をP(パーキング)にし、さらにサイドギアをオンにしなければ充給電を開始できないようになっているため、このままでは充給電を開始できないことをユーザに報知するものである。なお、この状態を報知する際は、運転者が車内にいる段階で報知を受けることができる方が利便性が高いので、照明装置28とともに、電動車20のルームランプおよびマップランプを点滅させる。
【0025】
充電ガン36との接触異常とは、充電ガン36の結合部38と電動車20側の結合部26との接触が完全ではなく、充電ガン36側から電力の受給を受けることができない状態を示す。充給電ケーブルが正規品でない、とは、電動車20側の結合部26に接続された充給電ケーブル(図1の例では充電ケーブル34および充電ガン36)が、電動車20の製造者(製造メーカー)によって使用が推奨されている正規品ではない状態(たとえば延長コードの使用など)を示す。これは、外部電力供給機構30からのパイロット信号などによって判断する。
【0026】
外気温度低下による充電推奨とは、駆動用電池内の二次電池の充放電特性が電池温度によって変化することに着目したものである。二次電池の充放電特性は、低温環境で低下する。このことから、電動車20周辺の外気温度が所定温度以下である(または所定温度以下になることが予測される)場合には、電動車20が停車された直後に充電を推奨する報知をおこなって、電池温度が低下する前の充電を促す。
【0027】
また、緊急度が中(緊急度が中程度)の故障としては、たとえば、交換可能なケーブルの異常や補機用駆動用電池の能力低下などが挙げられる。これらの状態は、たとえば電動車20の販売会社や自動車修理店などに持ち込めば、修理可能な事象である。
【0028】
また、緊急度が大(緊急度が高い)の故障としては、たとえば、駆動用電池等からの漏電、充給電時におけるセル電圧の異常、駆動用電池電圧の異常、駆動用電池温度の異常、各種センサの不検知、コンタクタの開放、電池セルの膨張などが挙げられる。これらの状態は、電動車20が走行不能能となる可能性がある事象である。
【0029】
各状態の詳細を説明すると、駆動用電池等からの漏電とは、駆動用電池と接続された電動車20の電力系統のいずれかにおいて漏電が生じている状態を示す。充電給電時におけるセル電圧の異常とは、充電または給電開始後、駆動用電池(組電池)を構成する複数の電池セルのうち、電圧の上昇度合いまたは下降度合いが他の電池セルと異なる電池セルがある状態である。この場合、当該電池セルは短絡をおこしている可能性がある。
【0030】
駆動用電池電圧の異常とは、駆動用電池電圧が充電可能範囲内にない場合(充電下限電圧以下、または充電上限電圧以上)になった状態を示す。たとえば、駆動用電池内の残存容量が低下した状態で放置すると、駆動用電池電圧が充電下限電圧を下回り、再充電が禁止される。また、駆動用電池内の残存容量が満充電状態に近い場合は、充電上限電圧を上回り、充電が禁止される。
【0031】
また、駆動用電池内の各電池セル(または各セルモジュール)レベルで電圧を確認し、最高電圧と最低電圧の差分が閾値電圧以上の場合は、報知対象状態としてもよい。これは、電池セル間の電圧差が大きいと、電池セル内部での内部短絡や微小短絡などの異常が生じている可能性があるためである。なお、各電池セル間の劣化の個体差を考慮して、報知対象状態と判定する閾値電圧を、駆動用電池の使用期間(時間軸)に連動して変更してもよい。各電池セル間の劣化の個体差は、駆動用電池使用時における各電池セルの温度差や各電池セルの耐久性の個体差などに起因する。
【0032】
駆動用電池温度の異常とは、駆動用電池温度が使用可能範囲内にない場合(使用下限温度以下、または使用上限温度以上)になった状態を示す。また、駆動用電池内の各電池セル(または各セルモジュール)レベルで温度を確認し、最高温度と最低温度の差分が閾値温度以上の場合は、報知対象状態としてもよい。これは、電池セル間の温度差が大きいと、特定の電池セルの異常な発熱やボルト部の締結のゆるみに起因する発熱が生じている可能性があるためである。なお、各電池セル間の劣化の個体差を考慮して、報知対象状態と判定する閾値温度を、駆動用電池の使用期間(時間軸)に連動して変更してもよい。
【0033】
各種センサの不検知とは、各種センサ自体の不良またはセンサとECU間の接続の不良によって、各種センサによる検出値が取得できない状態を示す。コンタクタの開放とは、車両衝突時などにおいて、駆動用電池からの漏電等を防止するようにコンタクタが開放されている状態を示す。
【0034】
電池セルの膨張とは、駆動用電池(組電池)を構成する電池セルのうち、通常の状態と比較して所定量以上の体積膨張が生じた電池セルがある状態を示す。この場合、当該電池セルは劣化している可能性がある。
【0035】
緊急度判定手段204は、故障検出手段202によって検出された故障の種類に基づいて、当該故障がいずれの緊急度に分類されているかを判定する。
【0036】
なお、図4に示した故障の種類は、主に電動車20の電力系統に関する状態を挙げている。報知手段206である照明装置28は、出入力口22または出入力口22の近傍に設けられているため、ユーザが照明装置28の点灯を確認するのは、主に充電時または給電時である。このため、照明装置28によって報知する故障の種類を、電動車20の電力系統に関する状態とすれば、照明装置28で報知された状態に対してユーザがスムーズに対応することができる。
【0037】
報知手段206は、緊急度判定手段204によって判定された故障の緊急度(緊急度判定)に基づいて、異なる態様で故障を報知する。本実施の形態では、報知手段206は照明装置28なので、報知手段206は、故障の緊急度判定に基づいて照明装置28の点灯態様を変更する。点灯態様とは、たとえば、照明装置28の単位時間当たりの点滅回数、照明装置28の点灯照度、照明装置28の色などである。また、本実施の形態では、故障に該当しない場合であっても、充給電時の作業性の向上のために照明装置28は点灯される。通常時(故障していない場合)の点灯態様は、故障している場合の点灯態様と明らかに区別できるようにする。
【0038】
図5は、照明装置28の点灯態様の変更方法の一例を例示する表である。図5の表400には、照明装置28の変更対象となる点灯態様と緊急度判定との関係、および通常時(故障していない場合)の点灯態様が示されている。図5の例では、変更対象となる点灯態様の例として点滅回数、点灯照度、色を挙げている。変更対象となる点灯態様は、これら(図5の例では点滅回数、点灯照度、色)のうち1つであってもよいし、複数を組み合わせてもよい。
【0039】
たとえば、変更対象となる点灯態様が点滅回数の場合、緊急度が小の場合は1分間(単位時間)あたりの点灯回数を12回(すなわち、5秒に1回点滅)とする。また、緊急度が中の場合は1分間あたりの点灯回数を20回(すなわち、3秒に1回点滅)とする。また、緊急度が大の場合は1分間あたりの点灯回数を60回(すなわち、1秒に1回点滅)とする。すなわち、報知手段206は、緊急度が大きいほど照明装置28の単位時間当たりの点滅回数を多くする。一方、通常時には照明の点滅はおこなわないものとする。
【0040】
また、たとえば、変更対象となる点灯態様が点灯照度の場合、通常時の照度を100とすると、緊急度が小の場合は照度50、緊急度が中の場合は照度150、緊急度が大の場合は照度200に変更する。また、たとえば、変更対象となる点灯態様が色の場合、通常時は白色灯色で点灯し、緊急度が小の場合は青、緊急度が中の場合は黄、緊急度が大の場合は赤で点灯する。
【0041】
また、電動車20の車内照明(ルームランプやマップランプ)を報知手段206に含めて、電動車20が故障している場合、照明装置28とともに車内照明の点灯態様を変更するようにしてもよい。本実施の形態では、運転者(ユーザ)が車内にいる段階で報知を受けることができる方が利便性が高い状態、具体的には、充給電開始時にシフトギアの位置がP(パーキング)以外の位置にある、またはサイドギアがオフとなっている場合に、照明装置28とともに車内照明を用いて報知をおこなうようにした。
【0042】
図6は、電動車20による処理の手順を示すフローチャートである。図6のフローチャートでは、変更対象となる点灯態様を点滅回数とした場合を例に挙げている。図6のフローチャートにおいて、電動車20は、出入力口22の開放を検知する(ステップS601:Noのループ)。出入力口22の開放の検知は、たとえば、電動車20内に設けられた出入力口22の開放レバーへの操作を検知することによっておこなう。出入力口22の開放を検知すると(ステップS601:Yes)、照明装置28は通常時の点灯態様で点灯する(通常点灯、ステップS602)。
【0043】
つぎに、電動車20は、故障検出手段202によってシフトギアおよびサイドギアの位置情報を取得して、シフトギアの位置がP(パーキング)以外の位置にある、またはサイドギアがオフとなっているか否かを判定する(ステップS603)。シフトギアの位置がP(パーキング)以外の位置にある、またはサイドギアがオフとなっている場合(ステップS603:Yes)、報知手段206は、照明装置28を点滅させるとともに、電動車20のルームランプおよびマップランプを点滅させる(ステップS604)。これは、シフトギアまたはサイドギアの位置が充給電をおこなうことができない状態にあることを、運転者が車内にいる段階でも知ることができるようにしたものである。また、図4に示したように、充給電時にシフトギアの位置がP(パーキング)以外の位置にある、またはサイドギアがオフとなっている状態は、緊急度が小と分類されている状態なので、報知手段206は、緊急度が小の場合の点灯態様で照明装置28を点滅させる。
【0044】
一方、シフトギアの位置がPかつサイドギアがオンとなっている場合(ステップS603:No)、故障検出手段202は、電動車20の故障を検出したか否かを判断する(ステップS605)。ステップS605における故障とは、たとえば、駆動用電池等からの漏電、駆動用電池電圧の異常、駆動用電池温度の異常、コンタクタの開放、電池セルの膨張などがある状態などであり、すなわち充電および給電が制限される状態を指す。
【0045】
電動車20の故障を検出した場合(ステップS605:Yes)、ステップS612に移行し、緊急度判定手段204によって、電動車20が該当する故障の緊急度を判定する。そして、故障の緊急度判定に対応する点灯態様で照明装置28を点滅させて(ステップS613)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0046】
一方、電動車20の故障が検出されない場合(ステップS605:No)、すなわち充給電可能な場合、電動車20は、出入力口22に充電ケーブルまたは給電ケーブル(以下、「充給電ケーブル」という)が接続されるまで待機する(ステップS606:Noのループ)。なお、出入力口22が開放されてから所定時間経過しても充給電ケーブルが接続されない場合は、出入力口22を自動的に閉めるようにしてもよい。
【0047】
出入力口22に充給電ケーブルが接続されると(ステップS606:Yes)、故障検出手段202は、外部電力供給機構30からのパイロット信号を取得して、接続された充給電ケーブルが正規品でないものか否かを判断する(ステップS607)。充給電ケーブルが正規品でない場合(ステップS607:Yes)、ステップS612に移行し、緊急度判定手段204によって、充給電ケーブルが正規品でない状態の緊急度(緊急度:小)を判定し(ステップS612)、緊急度に対応する点灯態様で照明装置28を点滅させて(ステップS613)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0048】
一方、充給電ケーブルが正規品である場合(ステップS607:No)、充電または給電が開始されるまで待機して(ステップS608:Noのループ)、充電または給電が開始されると(ステップS608:Yes)、報知手段206は、通常点灯を消灯する(ステップS609)。これは、充電または給電が開始された後は、基本的に出入力口22付近で作業する必要がなく、照明装置28を点灯させる必要もないためである。このため、充電または給電の開始後は、照明装置28を消灯して駆動用電池内の電力消費量を抑える。
【0049】
なお、充電または給電中にキーレスシステムへの操作などによって電動車20のドアが開放されたり、充給電ケーブルの取り外しや充給電の一時停止操作などがあった場合には、出入力口22付近での作業が予測されるため、照明装置28の点灯をおこなう。また、充電または給電中にこのような操作がおこなわれた後、次の操作が所定時間以上おこなわれない場合は、必要な場合にはユーザへの報知(クラクションやアラーム音の発生など)をおこなった上で照明装置28を消灯する。
【0050】
充電または給電中は、故障検出手段202によってセル電圧情報を取得して、セル電圧に異常があるか否かを判断する(ステップS610)。セル電圧に異常がある場合(ステップS610:Yes)、ステップS612に移行し、緊急度判定手段204によって、充給電時にセル電圧に異常がある状態の緊急度(緊急度:大)を判定し(ステップS612)、緊急度に対応する点灯態様で照明装置28を点滅させて(ステップS613)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0051】
なお、充電または給電中に異常があった場合、充電中であるか給電中であるかによって、照明装置28の点灯態様を変更してもよい。たとえば、給電中に異常があった場合には、照明装置28を30秒間点滅させた後、照明装置28を消灯させる。一方で、充電中に異常があった場合は、照明装置28を30秒間点滅させた後、さらに30秒間連続点灯させる。すなわち、報知手段206は、給電時の故障と充電時の故障とを識別し、給電時の故障については、所定時間経過後に点滅から消灯し、充電時の故障については、所定時間経過後に点滅点灯から連続点灯に切り替えるようにしてもよい。これは、充電時は電動車20に充電ケーブルが接続された状態であり電力を得ることが可能な状態である一方で、給電時には駆動用電池内の電力が限られた状態であるので、照明装置28をなるべく点灯させずに電力の消費を抑えるためである。
【0052】
一方、セル電圧に異常がない場合(ステップS610:No)、充給電が終了するまでは(ステップS611:No)、ステップS610に戻り、セル電圧の監視を継続する。そして、充給電が終了すると(ステップS611:Yes)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0053】
以上説明したように、実施の形態にかかる電動車20は、故障の緊急度判定に基づいて異なる態様で当該故障を報知する報知手段206を設けたので、ユーザが当該故障に対して的確に対応できる可能性を向上させることができる。また、電動車20は、報知手段206を照明装置28とし、駆動用電池への電力の出入力口22または出入力口22近傍に照明装置を設けたので、電動車20の充電中または給電中に故障を報知する必要がある場合に、ユーザに対して迅速に報知を伝達することができる。
【0054】
また、電動車20は、故障の緊急度が大きいほど照明装置28の単位時間当たりの点滅回数を多くするので、故障の緊急度を直感的にユーザに伝達することができる。さらに、電動車20は、給電時の故障と充電時の故障とを識別し、給電時の故障については所定時間経過後に点滅から消灯させるので、駆動用電池内の電力消費を抑制し、故障からの復帰後の給電時に利用可能な電力を確保することができる。また、充電時の故障については、所定時間経過後に点滅点灯から連続点灯に切り替えるので、出入口周辺での作業をしやすくすることができる。
【符号の説明】
【0055】
20……電動車、22……出入力口、24……蓋、26……結合部、28……照明装置、30……外部電力供給機構、32……本体部、34……充電ケーブル、36……充電ガン、38……結合部、202……故障検出手段、204……緊急度判定手段、206……報知手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6