(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958121
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】振動発電装置
(51)【国際特許分類】
H02N 2/18 20060101AFI20160714BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
H02N2/18
H01L41/08 G
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-146132(P2012-146132)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-11858(P2014-11858A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390006389
【氏名又は名称】背戸 一登
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098095
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 武志
(72)【発明者】
【氏名】背戸 一登
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 雄一
【審査官】
小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/158473(WO,A1)
【文献】
特開2010−270668(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0215590(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0100180(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/18
H01L 41/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の方向に常時微振動が発生する振動源上に設置される門型構造物と、この門型構造物の振動源振動との共振時において最大歪みが発生する部位での機械的歪みを電気エネルギーに変換する歪み−電力変換装置とを具備しており、門型構造物は、一の方向において互いに対峙された一対の支柱と、一の方向において一対の支柱を連結している上部構造物とを具備しており、歪み−電力変換装置は、最大歪みが発生する部位となる一対の支柱の夫々の最上部及び基部での機械的歪みを電気エネルギーに変換するようになっており、歪み−電力変換装置は、一対の支柱のうちの一方の支柱の最上部において一の方向に対峙する該一方の支柱の最上部の一対の面に夫々設置されていると共に一方の支柱の最大歪みが発生する最上部での機械的歪みを電気エネルギーに変換する第一の圧電素子と、一対の支柱のうちの他方の支柱の最上部において一の方向に対峙する該他方の支柱の最上部の一対の面に夫々設置されていると共に他方の支柱の最大歪みが発生する最上部での機械的歪みを電気エネルギーに変換する第二の圧電素子と、一対の支柱のうちの一方の支柱の基部において一の方向に対峙する該一方の支柱の基部の一対の面に夫々設置されていると共に一方の支柱の最大歪みが発生する基部での機械的歪みを電気エネルギーに変換する第三の圧電素子と、一対の支柱のうちの他方の支柱の基部において一の方向に対峙する該他方の支柱の基部の一対の面に夫々設置されていると共に他方の支柱の最大歪みが発生する基部での機械的歪みを電気エネルギーに変換する第四の圧電素子とを具備している振動発電装置。
【請求項2】
門型構造物は、その固有振動数が2Hzから5Hzまでの間における振動数となるように構成されている請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項3】
門型構造物は、その固有振動数が2.5Hzから4.5Hzまでの間における振動数となるように構成されている請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項4】
門型構造物は、その固有振動数が3Hzから3.5Hzまでの間における振動数となるように構成されている請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項5】
門型構造物は、その固有振動数が3Hzから3.3Hzまでの間における振動数となるように構成されている請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項6】
門型構造物は、その固有振動数が3Hz、3.15Hz又は3.3Hzとなるように構成されている請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項7】
門型構造物は、その固有振動数が振動源の卓越振動数に同調されるように構成されている請求項1から6のいずれか一項に記載の振動発電装置。
【請求項8】
複数個の前記門型構造物が振動源上に設置されており、当該複数個の門型構造物に対応して設けられた複数個の前記歪み−電力変換装置の夫々は、対応の門型構造物の振動源振動との共振時において最大歪みが発生する部位での機械的歪みを電気エネルギーに変換するようになっている請求項1から6のいずれか一項に記載の振動発電装置。
【請求項9】
複数個の門型構造物は、互いに同一の固有振動数を有している請求項8に記載の振動発電装置。
【請求項10】
複数個の門型構造物は、互いに異なる固有振動数を有している請求項8に記載の振動発電装置。
【請求項11】
複数個の門型構造物のうちの少なくとも一つの門型構造物は、その固有振動数が振動源の卓越振動数に同調されるように構成されている請求項8から10のいずれか一項に記載の振動発電装置。
【請求項12】
門型構造物の振動源振動との共振時において最大変位が発生する部位での機械的変位を電気エネルギーに変換する変位−電力変換装置を更に有している請求項1から11のいずれか一項に記載の振動発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面等の振動源上に設置された構造物の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風や地震による超高層ビルの振動を制御するために種々の制振装置が提案されており、この種の制振装置は、振動エネルギーを熱エネルギーに変換して振動を吸収するものであり、一般的にはオイルダンパが用いられている。
【0003】
風や地震による振動エネルギーの有効利用に関しては、例えば特許文献1から3において、振動エネルギーを電気エネルギーに変換して利用する技術が提案されている。
【0004】
特許文献1においては、制振対象物と分離して配設された質量体と、質量体を制振対象物に対して相対変位可能に支持する支持機構と、質量体と制振対象物との相対変位を減衰させる減衰機構とを備えており、減衰機構には、質量体に固定された固定部と、制振構造物に固定された固定部と、両固定部の間に介装された減衰体とが備えられており、減衰体が、質量体と制振対象物との相対変位に伴い伸縮変形する可撓性を有する誘電性基体と、誘電性基体の両面にそれぞれ積層された一対の電極とを備え、誘電性基体の伸縮変形によって一対の電極から電気エネルギーを発生させる発電性を有している制振装置が提案されている。
【0005】
特許文献2においては、橋梁に取り付けられた圧電素子に対し橋梁に発生する機能的変位を発電用エネルギーとして与える橋梁における発電方法が提案されている。
【0006】
特許文献3においては、免震装置及び/又は制震装置と、複数個の圧電素子及び各圧電素子を吊り下げる吊り下げ部とから構成され、免震装置及び/又は制震装置に装置されることによって、免震装置及び/又は制震装置の変形に伴い、吊り下げ部に吊り下げられた複数の圧電素子同士を互いに衝突させて発電を行う発電装置とを備えた建造物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−144892号公報
【特許文献2】特開2004−274810号公報
【特許文献3】特開2008−259354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
原子力発電に替わるエネルギー源が強く求められている今日、自然現象の中で発生する振動をエネルギー源として有効利用する方法やエネルギー回生する方法が提案されており、そのような中で振動力発電等の研究が進められているが、風や地震による振動は、定常的に発生するわけではないので安定したエネルギー源とはなりえない。
【0009】
また、多数の人の歩行によって発生する床面の振動を圧電素子で電力に変える研究もなされているが、これも常時歩行する人の動きが前提となるので定常的に安定したエネルギー源とはなりえない。
【0010】
自然現象の中で発生する振動による振動エネルギーを電気エネルギーに変換する方法としては、圧電素子を板に貼り付け、振動によって板が歪むことで起電力を発生させて振動エネルギーを電気エネルギーに変換する方法が挙げられるが、板の歪み量が小さい場合には十分な発電量を得難い。
【0011】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、振動が定常的に発生する振動源を活用して、この振動源の振動エネルギーを電気エネルギーに効率的に変換することができる振動発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の振動発電装置は、微振動が常時発生する振動源上に設置される構造物と、この構造物の振動源振動との共振時において最大歪みが発生する部位での機械的歪みを電気エネルギーに変換する歪み−電力変換装置とを具備している。
【0013】
本発明の振動発電装置によれば、微振動が常時発生する振動源上に構造物が設置されるために、振動が定常的に発生する振動源を活用することができて、構造物の振動源振動との共振時において最大歪みが発生する部位での機械的歪みを電気エネルギーに変換する歪み−電力変換装置を具備しているために、振動源の振動エネルギーを電気エネルギーに、即ち、電力に効率的に変換することができる。
【0014】
本発明では、振動源は、車両が常時走行する路面であってもよく、工場等において機械設備が設置される基礎であってもよい。
【0015】
本発明の振動発電装置では、構造物は門型構造物からなっていてもよく、斯かる場合には、門型構造物は、一対の支柱と、一対の支柱を連結している上部構造物とを具備していてもよく、歪み−電力変換装置は、最大歪みが発生する部位である一対の支柱の最上部及び基部のうちの少なくとも一つでの、好ましい例では、一対の支柱の最上部及び基部の夫々での機械的歪みを電気エネルギーに変換するようになっていてもよく、このような振動発電装置によれば、最大歪みが発生する部位である一対の支柱の最上部及び基部の夫々の機械的歪みを電気エネルギーを変換するために、振動源の振動エネルギーを電気エネルギーにより効率的に変換することができる。
【0016】
歪み−電力変換装置は、最大歪みが発生する部位に設置されていると共に当該部位での機械的歪みを電気エネルギーに変換する圧電素子を有していてもよい。
【0017】
本発明の振動発電装置では、構造物は、その固有振動数が2Hzから5Hzまでの間、2.5Hzから4.5Hzまでの間、3Hzから3.5Hzまでの間若しくは3Hzから3.3Hzまでの間における振動数となるように又は3Hz、3.15Hz若しくは3.3Hzとなるように構成されてもよく、また、構造物は、その固有振動数が振動源の卓越する振動数に同調されるように構成されていてもよい。このような振動発電装置によれば、振動源上に設置された構造物を共振現象により大きく振動させることができ、例えば、ダンプトラックなどの重量車両が路面を通過する時に発生する振動が概ね3Hz付近に卓越する振動数を有しているので、振動源としての当該路面に設置された構造物の固有振動数を上述のように3Hz若しくはその付近の振動数となるように設定することで、路面上に設置された構造物を共振現象により大きく振動させることができる。
【0018】
本発明の振動発電装置では、複数個の上記の構造物が振動源上に設置されていてもよく、この場合、複数個の構造物に対応して設けられた複数個の上述の歪み−電力変換装置の夫々は、対応の構造物の振動源振動との共振時において最大歪みが発生する部位での機械的歪みを電気エネルギーに変換するようになっていてもよく、また、複数個の構造物は、互いに同一の又は異なる固有振動数を有していてもよく、更には、複数個の構造物のうちの少なくとも一つの構造物は、その固有振動数が振動源の卓越振動数に同調されるように構成されていてもよい。
【0019】
本発明の振動発電装置では、電力変換装置は、構造物の振動源振動との共振時において最大変位が発生する部位での機械的変位を電気エネルギーに変換する変位−電力変換装置を更に有していてもよく、このような振動発電装置によれば、振動源の振動エネルギーを電気エネルギーに更に効率的に変換することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、振動が定常的に発生する振動源を活用して、この振動源の振動エネルギーを電気エネルギーに効率的に変換することができる振動発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明による好ましい実施例の全体説明図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す構造物の変位の振動モード形の説明図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す構造物の歪みの振動モード形の説明図である。
【
図4】
図4は、路面から取得された振動のスペクトル分析に関する説明図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す振動発電装置の設置例の説明図である。
【
図6】
図6は、一自由度系の周波数応答における共振応答曲線に関する説明図である。
【
図7】
図7は、本発明による好ましい他の実施例の全体説明図である。
【
図8】
図8の(a)は、
図7に示す構造物の共振時の変位の振動モード形の説明図であり、
図8の(b)は、
図7に示す構造物の共振時の曲げモーメント(歪み)の振動モード形の説明図である。
【
図9】
図9は、3Hzで共振する塔状構造物の応答倍率曲線に関する説明図である。
【
図10】
図10は、本発明による好ましい更に他の実施例の全体説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0023】
図1に示す本例の振動発電装置1は、交通振動や工場等の機械振動により微振動が常時発生する振動源としての路面2上に設置される構造物としての門型構造物3と、門型構造物3の振動源振動との共振時において振動モード形の最大歪みが発生する部位である最上部15及び16並びに基部17及び18の夫々での機械的歪みを電気エネルギーに変換するべく、当該最上部15及び16並びに基部17及び18の夫々に設置された圧電素子4、5、6及び7を有する歪み−電力変換装置8と、門型構造物3の振動源振動との共振時において振動モード形の最大変位が発生する部位である最上部15及び16での機械的変位を電気エネルギーに変換する変位−電力変換装置9とを具備している。
【0024】
門型構造物3は、鉛直方向に伸びていると共に互いに同一形状である一対の支柱11及び12と、支柱11及び12の最上部15及び16を連結して橋絡していると共に支柱11及び12の剛性に比べて十分に高剛性である上部構造物13とを具備している。
【0025】
図2及び
図3に示すように、門型構造物3の一次モードの振動モード形における変位と曲げモーメント(歪み)において、変位の最大振幅は、支柱11及び12の最上部15及び16に生じ、歪みの最大振幅は、最上部15及び16と基部17及び18との四つの部位に生じ、而して、構造物として門型構造物3を利用することによって、最大振幅が発生する部位を増加させることができ、発電効率の大幅な向上を図り得る。
【0026】
幹線道路を走行するダンプトラックなどの重量車両により路面2で常時発生する振動は、
図4に示すそのスペクトル分析から明らかであるように、3Hz及びその付近に卓越する振動数を有しており、而して、門型構造物3は、その固有振動数が振動源としての路面2の卓越する振動数に、同調されるように、例えば、その固有振動数が2Hzから5Hzまでの間における振動数となるように構成されている。
【0027】
路面2に設置された門型構造物3の固有振動数を上述のように3Hz若しくはその付近の振動数となるように設定すると、ダンプトラックなどの重量車両が路面2を通過する時に発生する振動が概ね3Hz及びその付近に卓越する振動数を有しているので、門型構造物3の路面2の振動との共振現象により門型構造物3の振動を大きくし得る。
【0028】
圧電素子4、5、6及び7は、歪みが与えられることによって起電力を得るので、効率よく電力を得るためには、曲げモーメント(歪み)が最大となる部位に圧電素子4、5、6及び7を取り付けるのがよく、圧電素子4、5、6及び7は、門型構造物3の振動源振動との共振時における一次振動モード形において曲げモーメントが最大となって最大歪みが発生する部位としての支柱11及び12の最上部15及び16並びに基部17及び18に夫々貼り付けられて設けられている。
【0029】
変位−電力変換装置9は、永久磁石21と、永久磁石21を挟む磁性部材22と、永久磁石21及び磁性部材22によって構成される磁気回路23の中において水平方向に可動なコイル25を有した振動体24と、永久磁石21及び磁性部材22を固定支持した筐体27と、筐体27を路面2に水平方向に剛に支持した支柱26と、振動体24が取り付けられていると共に磁性部材22及び筐体27を水平方向に貫通したロッド28及び各一端ではロッド28の各端に連結固定されている一方、各他端では上部構造物13に連結固定された一対の連結部材29を有した支持構造物30とを具備している。
【0030】
振動体24は、常時微振動が発生する路面2上の振動により共振する門型構造物3の振動源振動との共振時における振動モード形の最大変位が発生する部位である門型構造物3の最上部としての上部構造物13に支持構造物30を介して水平方向に剛に支持されている。
【0031】
路面2に固定された磁気回路23と、磁気回路23の中において水平方向に可動なコイル25と、コイル25を門型構造物3において最大変位が発生する部位である上部構造物13に連結する支持構造物30からなる連結手段とを具備している斯かる変位−電力変換装置9は、路面2の振動に基づいて門型構造物3が水平方向に振動した際に、上部構造物13に設置された振動体24が路面2に設置された筐体27に対して水平方向の変位を生じ、これにより起電力を得るように構成されている。なお、本例の変位−電力変換装置9は、導体としてのコイル25が磁束を横切る速度に比例する起電力を利用しているが、振動体24の水平方向の変位が大きければ、結果として、大きな起電力を得ることができるのである。
【0032】
門型構造物3は、一対の支柱11及び12が鉛直方向に伸びている上に、重量物としての上部構造物13が支柱11及び12の最上部15及び16に連結されているために、路面2の変位振幅に対する支柱11及び12の歪み振幅及び振動体24の変位振幅を大幅に増大させることができる。
【0033】
本例の振動発電装置1によれば、常時微振動が発生する振動源としての路面2上に設置される構造物としての門型構造物3と、門型構造物3の振動源振動との共振時における振動モード形の最大歪みが発生する部位となる一対の支柱11及び12の最上部15及び16並びに基部17及び18に設置された圧電素子4、5、6及び7を有した歪み−電力変換装置8とを具備しているために、振動が定常的に発生する振動源を活用することができて、門型構造物3に定常的に安定した振動エネルギーを生じさせることができ、
歪み−電力変換装置8は、支柱11の最上部15において水平方向に対峙する支柱11の最上部15の一対の面に夫々設置されていると共に支柱11の最大歪みが発生する最上部15での機械的歪みを電気エネルギーに変換する圧電素子4と、支柱12の最上部16において水平方向に対峙する支柱12の最上部16の一対の面に夫々設置されていると共に支柱12の最大歪みが発生する最上部16での機械的歪みを電気エネルギーに変換する圧電素子5と、支柱11の基部17において水平方向に対峙する支柱11の基部17の一対の面に夫々設置されていると共に支柱11の最大歪みが発生する基部17での機械的歪みを電気エネルギーに変換する圧電素子6と、支柱12の基部18において水平方向に対峙する支柱12の基部18の一対の面に夫々設置されていると共に支柱12の最大歪みが発生する基部18での機械的歪みを電気エネルギーに変換する圧電素子7とを具備しており、圧電素子4、5、6及び7が門型構造物3の振動源振動との共振時における振動モード形の最大歪みが発生する最上部15及び16並びに基部17及び18に設置されているために、路面2上に設置された門型構造物3の共振現象により大きくされた振動に基づいて、振動エネルギーを電気エネルギーに効率的に変換することができる。
【0034】
振動発電装置1によれば、門型構造物3の振動源振動との共振時における振動モード形の最大変位が発生する部位としての上部構造物13に設置された変位−電力変換装置9を更に有しているために、振動エネルギーを電気エネルギーに効率的に変換することができる。
【0035】
振動発電装置1によれば、構造物が門型構造物3からなっているために、門型構造物3の振動源振動との共振時において振動モード形の最大歪みが発生する部位を支柱11及び12の最上部15及び16並びに基部17及び18の四ヶ所にまで増加させることができ、而して、振動エネルギーを電気エネルギーに効率的に変換することができる。
【0036】
振動発電装置1によれば、門型構造物3の固有振動数が振動源の卓越する振動数に同調されているために、路面2上に設置された門型構造物3の共振現象による振動をより好適に拡大させることができ、例えば、路面2を振動源として設置された門型構造物3の固有振動数を上述のように3Hz若しくはその付近の振動数となるように設定することで、ダンプトラックなどの重量車両が路面2を通過する時に発生する概ね3Hz及びその付近に卓越する振動数を有している振動に対する共振現象による振動を門型構造物3に好適に発生させ得る。
【0037】
また、複数個、例えば、
図5に示すように、三基の門型構造物3を路面2に並設すると共にこの三基の門型構造物3に対応して三基の歪み−電力変換装置8及び三基の変位−電力変換装置9を設けて振動発電装置1を構成してもよく、この場合、門型構造物3の夫々の固有振動数を、
図6の共振応答曲線31、32及び33で示すように、3Hz、3.15Hz、3.3Hzのように、路面2の卓越する振動の3Hz及びその近傍で分散させることにより、三基の門型構造物3、三基の歪み−電力変換装置8及び三基の変位−電力変換装置9を有した振動発電装置1は、路面2の環境に応じて効果的に電力を得ることができる。換言すると、路面2をダンプトラックなどの重量車両が通行する際、卓越振動数が時々刻々と変化しても、発電量変動の少ない振動発電装置となる。
【0038】
上記では、構造物は、門型構造物3からなるが、これに代えて、例えば
図7に示すように、構造物は、質量体40と、最上部39で質量体40を固定支持している一方、ダンプトラックなどが頻繁に通過する路面2に基部36で固定支持されて鉛直方向に伸びた支持構造物41とを有した塔状構造物35からなっていてもよく、斯かる場合には、歪み−電力変換装置8は、塔状構造物35の振動源振動との共振時における振動モード形の最大歪みが発生する部位、例えば一次モードの曲げモーメントが最大となる部位である当該塔状構造物35の基部36に設置された圧電素子37を有していてもよく、変位−電力変換装置9は、振動体24が塔状構造物35の振動源振動との共振時における振動モード形の最大変位が発生する部位としての当該塔状構造物35にロッド28を介して連結固定されている。
【0039】
塔状構造物35では、
図8の(a)及び(b)に示すように、一次振動モードの変位の最大振幅は、塔状構造物35の最上部39で生じ、一次振動モードの曲げモーメントの最大値は、基部36で生じる。
【0040】
また、塔状構造物35は、例えば、
図9に示すように、3Hzの共振周波数と25倍の共振時の応答倍率とを有しており、したがって、路面2に設置された塔状構造物35の基部36の変位振幅が1mmであっても最上部39の変位振幅は、25mmに拡大されるように、路面2の振動が微弱であっても最上部39で共振によって大きく振動するようになっている。
【0041】
図7に示す振動発電装置1おいては、振動体24は、質量体40の質量M、支持構造物41の水平方向のバネ定数Kとすると、路面2の卓越振動数によって共振するように、次式(1)によって求められる固有振動数fで振動するように設定されている。
【0043】
そして、
図7に示す変位−電力変換装置9は、フレミングの法則に基づいて次式(2)で表される起電力をコイル25に生起させる。
【0045】
したがって、例えば、磁気回路23の磁束密度B=0.5T、変位振幅x=5mm、振動数f=3Hz、巻かれたコイルの捲き数約500、コイルの平均直径D=15mmとすると、
図7に示す変位−電力変換装置9では、1V程度の起電力が得られることになり、而して、この1V程度の起電力に圧電素子37による起電力が加算される結果、常時微振動下で定常的に振動発電力が得られる。変位−電力変換装置9の個数を増加したり、その形状を大型に変更すれば、当該増加、変更に応じた振動発電力が得られる。
【0046】
図7に示す塔状構造物35を具備してなる振動発電装置1においても、
図1に示す振動発電装置1と同様の上述の効果を奏し得る。門型構造物3を具備した振動発電装置1では、変位−電力変換装置9を設けなくても圧電素子4、5、6及び7によって振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができ、また、塔状構造物35を具備した振動発電装置1では、例えば
図10に示すように変位−電力変換装置9を設けなくても、圧電素子37によって振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 振動発電装置
2 路面
3 門型構造物
4、5、6、7、37 圧電素子
8 歪み−電力変換装置
9 変位−電力変換装置
35 塔状構造物