(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記副冷却水通路の端部近傍に、シリンダブロックの冷却水通路に連通する導入口が設けられたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水冷エンジンのシリンダヘッド。
【背景技術】
【0002】
水冷エンジンでは、特許文献1に開示されているように、冷却水は、シリンダブロックの冷却水通路を流れてシリンダブロックを冷却した後、シリンダヘッドの冷却水通路を流れてシリンダヘッドを冷却している。
【0003】
図7に示す従来の水冷エンジン100におけるシリンダヘッド101は、各気筒#1〜#4の燃焼室102の中心に配置される点火プラグ103の周囲を気筒配列方向に延びる主冷却水通路106と、この主冷却水通路106から燃焼室102における吸気ポート104側の周囲に沿って延びる吸気側副冷却水通路107と、主冷却水通路106から燃焼室102における排気ポート105側の周囲に沿って延びる排気側副冷却水通路108と、を備える冷却水通路109を有する。
【0004】
このシリンダヘッド101の冷却水通路109では、冷却水は、図示しないシリンダブロックを冷却した後、排気側副冷却水通路108に連通する導入口110から排気側副冷却水通路108内を流れ、主冷却水通路106及び吸気側副冷却水通路107内を流れて、燃焼室102の排気ポート105側、点火プラグ103周囲、及び燃焼室102の吸気ポート104側を冷却し、その後、吸気側副冷却水通路107側に形成された冷却水通路109の冷却水出口部111から流出して、図示しないラジエータへ流れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、
図7に示すようなシリンダヘッド101の冷却水通路109では、吸気側副冷却水通路107が排気側副冷却水通路108と同様に連通状態に構成されているため、導入口110から排気側副冷却水通路108に流入した冷却水は、吸気側副冷却水通路107を経て冷却水出口部111へ流れ、主冷却水通路106の点火プラグ103周囲に流れる流量が不十分になる恐れがある。このような場合には、シリンダヘッド101における燃焼室102周りの冷却性が低下してノッキングが発生しやすくなり、水冷エンジン100の特にシリンダヘッド101の耐久性が低下してしまう。
【0007】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、点火プラグ周辺の冷却性能を向上させることができる水冷エンジンのシリンダヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、直列に配置された複数の燃焼室と、前記燃焼室における互いに反対側に配置された吸気ポート及び排気ポートと、前記吸気ポートの前記燃焼室側の開口端に設けられた吸気バルブシートと、前記排気ポートの前記燃焼室側の開口端に設けられた排気バルブシートと、前記燃焼室の中心に配置される点火プラグの周囲に設けられた点火プラグボスと、この点火プラグボス周りを気筒配列方向に延びる主冷却水通路、及びこの主冷却水通路から前記燃焼室の周囲に沿って延びる副冷却水通路を備えた冷却水通路と、を有する水冷エンジンのシリンダヘッドであって、
前記冷却水通路は、気筒配列方向の中央部分に冷却水出口部を備え、前記副冷却水通路は、
前記冷却水出口部から気筒配列方向に離れて気筒配列方向の両端に配置された気筒の前記副冷却水通路が、連通状態を遮断するように、前記吸気バルブシートを挟んで前記点火プラグと反対側に端部を有するよう構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、
気筒配列方向の両端に配置された気筒の副冷却水通路では、吸気バルブシートを挟んで点火プラグと反対側に端部が設けられたので、吸気バルブシート周りの
上記副冷却水通路は、端部によって
連通状態が遮断される。このため、
気筒配列方向の両端に配置された気筒の副冷却水通路では、吸気バルブシート
周りの冷却水が、主冷却水通路の点火プラグボス周囲へ流れるので、この点火プラグボス周囲を流れる冷却水の流量が増大して、点火プラグ周辺の冷却性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る水冷エンジンのシリンダヘッドにおける一実施形態をシリンダブロックと共に示す断面図である。また、
図2は、
図1のシリンダヘッドを示す側面図である。これらの
図1及び
図2に示すエンジン(水冷エンジン)10は、例えば自動二輪車に搭載された直列多気筒エンジン(本実施形態では直列4気筒エンジン)であり、そのシリンダヘッド11及び図示しないヘッドカバーに動弁装置、本実施形態ではDOHC型の動弁装置14を備える。
【0012】
つまり、
図1及び
図3に示すように、エンジン10のシリンダヘッド11は、シリンダブロック13との間に直列に配置されて形成された例えば4つの燃焼室15と、この燃焼室15に連通され各燃焼室15に2つの吸気ポート16と、燃焼室15に連通され各燃焼室15に2つの排気ポート17と、を有する。これらの吸気ポート16と排気ポート17とは、燃焼室15における互いに反対側に配置されている。
【0013】
吸気ポート16には、燃焼室15側の開口端に吸気バルブシート18が設けられ、また、排気ポート17には、燃焼室15側の開口端に排気バルブシート19が設けられる。更にシリンダヘッド11には、各燃焼室15の中心に配置される点火プラグ20(
図3)の周囲に点火プラグボス21(
図1)が設けられる。
【0014】
前記動弁装置14は、
図1に示すように、吸気ポート16のそれぞれに設けられた吸気バルブ22と、排気ポート17のそれぞれに設けられた排気バルブ23とを開閉駆動するものである。
【0015】
吸気バルブ22は吸気ポート16を開閉させる。この吸気バルブ22は、傘形状の弁体24と、この弁体24の中心から略上方に向かって延設されたバルブステム25とを備える。一方、シリンダヘッド11は、バルブステム25が摺動自在に挿通されるステムガイド26を備える。
【0016】
また、排気バルブ23は排気ポート17を開閉させる。この排気バルブ23は、傘状の弁体27と、この弁体27の中心から略上方に向かって延設されたバルブステム28とを備える。一方、シリンダヘッド11は、バルブステム28が摺動自在に挿通されるステムガイド29を備える。そして、シリンダヘッド11の側面視において、吸気バルブ22及び排気バルブ23は、バルブステム25、28が略V字形状を描くように配設される。
【0017】
動弁装置14は、シリンダヘッド11に回転自在に軸支された吸気側カムシャフト30と、この吸気側カムシャフト30に設けられた吸気側カム31と、この吸気側カム31のカムプロフィールに従い吸気バルブ22をリフトさせる吸気側タペット32と、吸気バルブ22を閉じる方向に付勢させる吸気側バルブスプリング33とを備える。
【0018】
更にこの動弁装置14は、シリンダヘッド11に回転自在に軸支された排気側カムシャフト34と、この排気側カムシャフト34に設けられた排気側カム35と、この排気側カム35のカムプロフィールに従い排気バルブ23をリフトさせる排気側タペット36と、排気バルブ23を閉じる方向に付勢させる排気側バルブスプリング37とを備える。
【0019】
吸気側カムシャフト30は、吸気バルブ22の上方に位置づけられ、シリンダヘッド11及びヘッドカバー(不図示)によって回転自在に軸支される。吸気側カムシャフト30の軸心は、吸気バルブ22のバルブステム25の略延長線上に配置される。また、吸気側カム31は、吸気側カムシャフト30の軸方向に緩やかに傾斜するカムプロフィールを有する所謂3次元カムであり、吸気側カムシャフト30に軸方向にスライド可能で且つ回転方向に一体に配設される。この吸気側カム31は、図示しないカムスライド機構によりエンジン10の出力に応じて吸気側カムシャフト30の軸方向に移動し、吸気バルブ22のリフト量、作用角及びリフトタイミングを無段階に可変する。
【0020】
吸気側タペット32は、吸気バルブ22と吸気側カム31との間に設けられたローラ式のタペットである。この吸気側タペット32は、シリンダヘッド11に設置されたタペットガイド38により案内されて、吸気バルブ22のバルブステム25の軸方向に往復移動可能に設けられ、吸気側カム31の回転運動を吸気バルブ22の往復運動に変換する。
【0021】
吸気側バルブスプリング33は、バルブステム25の上端部に設けられたスプリングリテーナ39と、ステムガイド26に遊嵌されたスプリングシート40との間に設けられる。吸気側バルブスプリング33は、スプリングリテーナ39を介して吸気バルブ22を閉じる方向に付勢させる。吸気バルブ22の弁体24は、吸気側バルブスプリング33の付勢力によって吸気バルブシート18に押圧され吸気ポート16を閉じる。
【0022】
排気側カムシャフト34は、排気バルブ23の上方に位置付けられ、シリンダヘッド11及びヘッドカバー(不図示)によって回転自在に軸支される。排気側カムシャフト34の軸心は、排気バルブ23のバルブステム28の略延長線上に配置される。吸気側カムシャフト30及び排気側カムシャフト34は、相互の軸心が略平行になるよう配置される。
【0023】
排気側カム35は、排気側カムシャフト34に一体に形成される。また、排気側カム35は、それぞれの排気バルブ23をリフト可能な適宜の位置に設けられる。排気側タペット36は、排気バルブ23と排気側カム35との間に挟まれ、排気側カム35の回転運動を排気バルブ23の往復運動に変換させる。
【0024】
排気側バルブスプリング37は、バルブステム28の上端部に設けられたスプリングリテーナ41とステムガイド29に遊嵌されたスプリングシート42との間に設けられる。排気側バルブスプリング37は、スプリングリテーナ41を介して排気バルブ23を閉じる方向に付勢させる。排気バルブ23の弁体27は、排気側バルブスプリング37の付勢力によって排気バルブシート19に押圧され排気ポート17を閉じる。
【0025】
動弁装置14は、吸気側カムシャフト30及び吸気側カム31を一体に回転させ、この吸気側カム31と吸気側バルブスプリング33の作用で、吸気側タペット32を介して吸気バルブ22を開閉動作させる。この際、カムスライド機構(不図示)により吸気側カム31が吸気側カムシャフト30の軸方向に移動することで、吸気バルブ22のリフト量、作用角及びリフトタイミングが無段階に可変制御される。また、動弁装置14は、排気側カムシャフト34及び排気側カム35を一体に回転させ、この排気側カム35と排気側バルブスプリング37の作用で、排気タペット36を介して排気バルブ23を開閉動作させる。
【0026】
ここで、吸気側カムシャフト30及び排気側カムシャフト34の回転は、これらのカムシャフト30及び34の一端部に設置されたカムドリブンスプロケット(図示せず)と、クランクシャフトの一端に設置されたカムドライブスプロケット(共に図示せず)との間に巻き回された図示しないカムチェーンによってなされる。
図3に示すカムチェーン室43は、前記カムチェーンを収容する。
【0027】
ところで、エンジン10は水冷エンジンであり、シリンダブロック13のシリンダ44の周囲に冷却水通路45が形成されてシリンダブロック44が冷却されると共に、シリンダヘッド11に、
図4の実線に示す冷却水通路46が形成される。この冷却水通路46は、
図1、
図4及び
図5に示すように、点火プラグボス21周りを臨み気筒#1〜#4の配列方向に延びる主冷却水通路47と、この主冷却水通路47から燃焼室15の吸気バルブシート18周囲に沿って延びる吸気側副冷却水通路48と、主冷却水通路47から燃焼室15の排気バルブシート19周囲に沿って延びる排気側副冷却水通路49と、を有する。
【0028】
吸気側副冷却水通路48及び排気側副冷却水通路49には、
図1及び
図4に示すように、シリンダブロック13の冷却水通路45に連通する導入口50が設けられ、シリンダブロック13を冷却した後の冷却水がシリンダヘッド11の冷却水通路46に流入する。このシリンダヘッド11の冷却水通路46には、気筒#1〜#4の配列方向中央部分に冷却水出口部51が設けられる。この冷却水出口部51は、
図6に示すようにサーモスタット52を備えると共に、ラジエータ53、ウォーターポンプ54に順次接続される。
【0029】
シリンダヘッド11における冷却水通路46内の冷却水は、シリンダヘッド11を冷却して所定温度以上になったときに、サーモスタット52及びウォーターポンプ54の作用でラジエータ53に導かれて冷却される。このラジエータ53にて冷却された冷却水は、ウォーターポンプ54により昇圧されてシリンダブロック13の冷却水通路45に流入し、シリンダブロック13を冷却した後、導入口50を経てシリンダヘッド11の冷却水通路46内に流入し、シリンダヘッド11を冷却する。
【0030】
図4に示すように、シリンダヘッド11の冷却水通路46のうち吸気側副冷却水通路48では、冷却水出口部51から気筒#1〜#4の配列方向に離れた位置の吸気側副冷却水通路48、即ち両端に配置された気筒#1及び#4の吸気側副冷却水通路48が端部55を有する。この端部55は、吸気バルブシート18を挟んで点火プラグ20と反対側に設けられたものであり、この端部55により当該吸気側副冷却水通路48の連通状態が遮断される。
【0031】
また、気筒#1〜#4の配列方向で冷却水出口部51近傍位置の吸気側副冷却水通路48(即ち気筒#2及び#3の吸気側副冷却水通路48)、並びに排気側副冷却水通路49は端部55が設けられず、連通状態に構成される。つまり、気筒#2及び#3の吸気側副冷却水通路48では、吸気バルブシート18を挟んで点火プラグ20と反対側に狭隘部56が形成されて流路断面積が減少するものの、連通状態に保持される。また、排気側副冷却水通路49では、排気バルブシート19を挟んで点火プラグ20と反対側が連通状態に保持される。
【0032】
前記導入口50は、シリンダヘッド11の冷却水通路46における吸気側副冷却水通路48及び排気側副冷却水路49に設けられるが、このうち、端部55を備えた気筒#1及び#4の吸気側副冷却水通路48では、端部55近傍に導入口50が設けられ、狭隘部56を備えた気筒#2及び#3の吸気側副冷却水通路48では、狭隘部56の近傍に導入口50が設けられる。
【0033】
端部55近傍の導入口50からの冷却水は、吸気側副冷却水近傍48内を端部55とは反対の一方向へ流れて燃焼室15の吸気バルブシート18周りを冷却した後、主冷却水通路47の点火プラグボス21(
図5)周囲に流れてこの点火プラグボス21を冷却する。端部55近傍以外の導入口50、例えば狭隘部56近傍の導入口50や排気側副冷却水通路49に設けられた導入口50等は、各導入口50から反対方向を含む複数方向へ流れて、燃焼室15における吸気バルブシート18や排気バルブシート19周りを冷却した後、主冷却水通路47の点火プラグボス21周囲へ流れてこの点火プラグボス21を冷却する。
【0034】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)〜(5)を奏する。
(1)
図4に示すように、吸気バルブシート18周りの吸気側副冷却水通路48では、吸気バルブシート18を挟んで点火プラグ20と反対側に端部55が設けられたので、この吸気側副冷却水通路48は、端部55によって連通状態が遮断される。このため、吸気バルブシート18周りを冷却した吸気側副冷却水通路48内の比較的温度の低い冷却水が、主冷却水通路47の点火プラグボス21(
図5)周囲へ流れるので、この点火プラグボス21周囲を流れる冷却水の流量が増大して、点火プラグ20周辺の冷却性能を向上させることができる。この結果、シリンダヘッド11における燃焼室15周りの冷却を十分に確保できるため、ノッキングの発生を防止できると共に、エンジン10(特にシリンダヘッド11)の耐久性を向上させることができる。
【0035】
(2)
図4に示すように、排気バルブシート19周りの排気側副冷却水通路49では、端部55が形成されず連通状態に保持されるので、この排気側副冷却水通路49内を流れる冷却水によって、吸気バルブシート18周りに比べて高温になる排気バルブシート19周りを十分に冷却できる。この結果、シリンダヘッド11の熱分布が均一化されて、シリンダヘッド11の応力緩和を実現できると共に、熱によるシリンダヘッド11の変形や強度低下を防止でき、更に、排気バルブ23も十分に冷却できる。
【0036】
(3)シリンダブロック13の冷却水通路45に連通する導入口50が、吸気側副冷却水通路48及び排気側副冷却水通49に設けられている。このため、シリンダブロック13を冷却した後に、シリンダヘッド11の燃焼室15における吸気バルブシート18及び排気バルブシート19周りを冷却することで、これらの吸気バルブシート18及び排気バルブシート19周りの冷却性能を向上させることができる。
【0037】
(4)吸気側副冷却水通路48では、端部55近傍に導入口50が設けられている。この端部55近傍の導入口50からの冷却水は、端部55と反対の一方向に当該吸気側副冷却水通路48内を流れるので、その流れが整流化され、これによりこの吸気側副冷却水通路48内での冷却水の圧力損失を低減できる。
【0038】
(5)冷却水通路46の冷却水出口部51から気筒#1〜♯4の配列方向に離れた位置の吸気側副冷却水通路48(例えば気筒#1及び#4の吸気側副冷却水通路48)が端部55を有し、冷却水出口部51近傍の吸気側副冷却水通路48(例えば気筒#2及び#3の吸気側副冷却水通路48)は、端部55を有さず連通状態に保持されている。このため、冷却水出口部51近傍の吸気側副冷却水通路48では流れの慣性効果を利用して、この冷却水出口部51近傍の吸気側副冷却水通路48内を流れる冷却水の流量を増大させることができる。
【0039】
以上実施形態について説明してきたが、本発明は、上述したような実施形態の具体的構成に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。