(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」の総称であり、「(メタ)アクリレート」についても同様である。
【0026】
[コーティング用樹脂組成物]
本発明のコーティング用樹脂組成物は、重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)7〜30重量%と、水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートよりなる単量体(b)15〜30重量%と、単量体(b)以外の(メタ)アクリル酸系単量体(c)50〜70重量%とを重合させてなる重合体(I)100重量部に対し、(メタ)アクリル酸系単量体(d)20〜100重量部を重合させてなる重合体(II)と、水酸基を有する(メタ)アクリル酸系重合体(III)とを含むものであり、好ましくはこれらが溶剤に溶解された溶液として提供され、このコーティング用樹脂組成物にイソシアネート系架橋剤を添加すると硬化反応が起こり、塗膜が形成される。
【0027】
<重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)>
重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)としては、下記式(1)で表され、その数平均分子量が500〜11000の片末端ラジカル重合性ポリジメチルシロキサンが好適である。
【0029】
(式(1)中、R
1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R
2は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。nは3以上、好ましくは3〜150の数を表す。なお、式(1)中の複数のR
2は互いに同一であってもよく、異なるものであってもよい。)
【0030】
上記式(1)において、R
1は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、R
2は炭素数1〜6の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はフェニル基が好ましい。具体的には、R
1としては水素原子、メチル基、エチル基が、R
2としてはメチル基、エチル基、フェニル基が例示される。
【0031】
重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)の数平均分子量は500〜11000、特に1000〜10000程度が好適である。重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)の数平均分子量が小さ過ぎると水と油の接触角は低く、かつ水の滑落性、油の滑落性の向上に効果が十分でない。数平均分子量が大きすぎると、水酸基を有する(メタ)アクリル酸系重合体(III)との相溶性が悪くなり、硬化塗膜が不透明になるとともに、水の滑落性も悪くなる傾向がある。
【0032】
<単量体(b)>
単量体(b)は水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートであり、好ましくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。
【0033】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、炭素数1〜10、特に1〜6のものが好適であり、特にエチル基、プロピル基、ブチル基が好適である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、特に2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好適である。
【0034】
<単量体(c)>
単量体(c)は、上記の単量体(b)以外の(メタ)アクリル酸系単量体(c)である。単量体(c)としては、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好適である。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、炭素数1〜20、特に1〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好適であり、アルキル(メタ)アクリレートとしては、特にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が好適である。
【0035】
<重合体(I)>
重合体(I)は、上述の重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)と水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートである単量体(b)と(メタ)アクリル酸系単量体(c)とを所定の割合で用い、常法に従って、重合させることにより製造される。
【0036】
重合体(I)の製造原料における重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)の割合は7〜30重量%、水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)の割合は15〜30重量%、(メタ)アクリル酸系単量体(c)の割合は50〜70重量%であり、重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)と水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)との重量比率は好ましくは重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)/水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)=40/100〜180/100である。ここで、重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)の割合が多過ぎると重合反応終了後白色の濁りを生じ、少なすぎるとこの後のグラフト重合を行って重合体(II)としても、また更に水酸基を有する(メタ)アクリル酸系重合体(III)と混合しても、水と油の接触角は低く、かつ水の滑落性、油の滑落性の向上に十分な効果が得られない。また、水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)の割合が多過ぎると重合反応終了後室温に冷却されると蛍光色調の濁りを生じ、また塗膜にしたときに膜が濁りかつ水の滑り性が発現しなくなる傾向があり、少なすぎると重合反応時に白濁して終了後静置すると、短時間に2層分離し、または室温に冷却されると蛍光色調の濁りを生じ、塗膜にしたときに水の滑り性が発現しない傾向がある。また、(メタ)アクリル酸系単量体(c)の割合が多過ぎると重合反応終了後室温に冷却されると白色調の濁りを生じ、また塗膜にしたときに膜が濁りかつ水の滑り性が発現しなくなる傾向があり、少なすぎると重合反応終了後室温に冷却されると白色調の濁りを生じ、塗膜にしたときに水の滑り性が発現しない傾向がある。
【0037】
重合体(I)の製造原料における重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)の割合は10〜25重量%、水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)の割合は15〜20重量%、(メタ)アクリル酸系単量体(c)の割合は50〜70重量%であることが好ましい。
【0038】
重合体(I)の水酸基価は40〜150mg−KOH/g、特に60〜130mg−KOH/g程度であることが好ましい。重合体(I)の水酸基価が上記範囲よりも大きすぎても小さすぎても、反応を終了して室温に冷却されると蛍光色調の濁りを生じ、また水酸基を有する(メタ)アクリル酸系重合体(III)との混合における相溶性の関係から、水と油の滑落性の向上効果を十分に得ることができない。
【0039】
なお、重合体(I)の製造には、重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、単量体(b),(c)についてもそれぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、重合体(I)の製造には、本発明の目的を損なわない範囲において、重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)と単量体(b),(c)以外の共重合成分を用いてもよい。
【0040】
<重合体(II)>
重合体(II)は、上述の重合体(I)に対して、(メタ)アクリル酸系単量体(d)をグラフト重合させてなるものである。(メタ)アクリル酸系単量体(d)としては、前記水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートよりなる単量体(b)と(メタ)アクリル酸系単量体(c)から選ばれるものが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸系単量体(c)から選ばれるものが挙げられる。
【0041】
重合体(II)の製造に当っては、重合体(I)の100重量部に対して、単量体(d)を20〜100重量部グラフト重合させる。ここで、単量体(d)のグラフト量が多過ぎると相溶性が悪くなり液が二層分離し、また滑落性の発現も無くなり、少なすぎると水の滑落性に効果が十分でない。重合体(II)は、特に、重合体(I)の100重量部に対して、単量体(d)を30〜80重量部グラフト重合させたものが好ましい。
【0042】
なお、重合体(I)に重合させる単量体(d)はガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であることが、得られる塗膜の表面硬度を高くすることができる点において好ましい。この単量体(d)のガラス転移温度(Tg)は特に−80〜−10℃であることが好ましい。このような単量体(d)としては、n−ブチルアクリレート(Tg=−45.4℃)、イソブチルアクリレート(Tg=−24℃)、エチルアクリレート(Tg=−24℃)、n−プロピルアクリレート(Tg=−37℃)、ヘキシルアクリレート(Tg=−57℃)、ヘプチルアクリレート(Tg=−60℃)、オクチルアクリレート(Tg=−65℃)、エチルヘキシルアクリレート(Tg=−55.3℃)、ノニルアクリレート(Tg=−58℃)、メチルブチルアクリレート(Tg=−32℃)、ジメチルブチルアクリレート(Tg=−15℃)、オクチルメタアクリレート(Tg=−70℃)、デシルメタアクリレート(Tg=−70℃)、ドデシルメタアクリレート(Tg=−65℃)などが挙げられる。
【0043】
なお、重合体(II)の製造には、単量体(d)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、重合体(II)の製造には、本発明の目的を損なわない範囲において、単量体(d)以外のグラフト成分を用いてもよい。
【0044】
重合体(II)の水酸基価は25〜115mg−KOH/g、特に40〜100mg−KOH/g程度であることが好ましい。重合体(II)の水酸基価が上記範囲よりも大きすぎても小さすぎても、水酸基を有する(メタ)アクリル酸系重合体(III)との混合における相溶性の関係から、水と油の滑落性の向上効果を十分に得ることができない。
【0045】
<重合体(III)>
重合体(III)は、水酸基を有する(メタ)アクリル酸系重合体であればよく、特に制限はないが、上記単量体(b)及び単量体(c)の共重合体が好適であり、その水酸基価は50〜225mg−KOH/g、特に70〜200mg−KOH/g程度であることが好ましい。このため、重合体(III)の製造原料における単量体(b),(c)の合計における単量体(b)の割合は20〜50重量%、特に25〜45重量%程度で、単量体(c)の割合は50〜80重量%、特に55〜75重量%程度であることが好ましい。
【0046】
重合体(III)の水酸基価が上記範囲よりも大きすぎると重合体(II)との相溶性が悪くなり形成される塗膜が濁り、水の滑落性の発現も無くなる傾向にあり、小さすぎると重合体(II)との相溶性が悪くなり形成される塗膜が白濁し、滑落性に効果がなくなる傾向がある。
【0047】
なお、重合体(III)の製造には、単量体(b),(c)の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、重合体(III)の製造には、本発明の目的を損なわない範囲において、単量体(b),(c)以外の共重合成分を用いてもよい。
【0048】
<重合体(I)〜(III)の製造方法>
重合体(I)〜(III)は、公知の方法、例えば、溶液重合で得られる。その際に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などを用いることができる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。合成時の単量体の仕込み濃度は、20〜50重量%程度が好ましい。
【0049】
重合開始剤としては、通常の過酸化物またはアゾ化合物、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチルバレノニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオクトエート、クメンヒドロキシペルオキシドなどの1種又は2種以上が用いられ、重合温度は、50〜140℃、好ましくは70〜120℃である。
【0050】
<重合体(II)と重合体(III)との割合>
本発明のコーティング用樹脂組成物において、重合体(II)と重合体(III)との混合割合は、重合体(II)と重合体(III)との合計100重量部中、重合体(II)が2〜99重量部、特に4〜86重量部となる割合であることが好ましい。この範囲よりも重合体(II)が多いとシロキサン成分を低減して安価なコーティング用樹脂組成物を提供する本発明の目的を十分に達成し得ず、少ないと水と油の接触角が低く、かつ水の滑落性、油の滑落性の向上効果が十分でない傾向がある。
【0051】
また、本発明において、コーティング用樹脂組成物の固形分に対する重合体(II)由来のポリシロキサン濃度(単量体(a)の割合)は、0.5〜5重量%、特に1〜3重量%であることがシロキサン成分を低減した状況下で、水と油の接触角は高く、また水と油の滑落性に効果を成し、かつ塗膜の硬度が発現する点において好ましい。
【0052】
<溶剤>
本発明のコーティング用樹脂組成物は、通常、重合体(II)と重合体(III)とを溶媒に溶解させた溶液として調製される。その溶媒としては、上記の重合体(I)〜(III)の溶液重合に用いられる溶媒を用いることができ、本発明のコーティング用樹脂組成物における重合体(II)と重合体(III)の合計の固形分濃度は10〜60重量%、特に30〜40重量%であることが好ましい。この固形分濃度が上記範囲よりも大きいと、形成される塗膜が平滑にならず、また水と油の接触角が低く、かつ水の滑落性、油の滑落性の向上効果が十分でなく、小さいと塗膜を形成し得ない傾向がある。
【0053】
[イソシアネート系架橋剤]
本発明のコーティング用樹脂組成物は、重合体(II)と重合体(III)とを架橋させるためのイソシアネート系架橋剤を添加した塗膜形成材料(塗料)として塗膜形成に用いられる。
【0054】
重合体(II)と重合体(III)とを架橋させるための架橋剤としては、通常のイソシアネート系架橋剤が用いられ、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらのイソシアヌレート変性体、ウレトジオン変性体、ビウレット変性体等が挙げられる。
【0055】
架橋剤の添加量は、水酸基当量とNCO当量の比により決定され、水酸基当量/NCO当量が1.0/1.8〜1.8/1.0、とりわけ1.0/1.5〜1.5/1.0の範囲となるように用いられる。水酸基当量/NCO当量が上記範囲より小さいと、NCOから誘導される尿素など親水性の構造を持つもののために滑落性が発現せず、大きいと、十分な硬化塗膜とならず、耐久性に劣り、耐溶剤性、耐候性などが不十分になる傾向がある。
【0056】
なお、上記のイソシアネート系架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、本発明の塗膜形成材料には、組成物中の架橋性官能基を架橋させるために、必要に応じて上記イソシアネート系架橋剤以外の種々の架橋剤を用いることもできる。
【0057】
[その他の成分]
本発明のコーティング用樹脂組成物及び塗膜形成材料においては、必要に応じ、本発明による効果を妨げない範囲で、充填剤、チクソトロピー付与剤、着色顔料、体質顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、硬化剤等の各種の添加剤を含有していてもよい。
【0058】
[塗膜の形成]
本発明の塗膜形成材料は、撥水・撥油性、撥インキ性、防汚性、水の滑落性、着雪防止性等の各種の機能が必要とされる基材表面に塗布され、基材との密着性、加工性、各種の耐候性に優れたコーティングがなされる。その塗布方法には特に限定はないが、浸漬塗装、吹き付け塗装、刷毛塗りなどで塗布することができる。塗装された塗膜は、風乾または30〜300℃で数秒〜数週間養生することにより、強靱な塗膜とすることができる。
【0059】
なお、形成される塗膜の膜厚には特に制限はなく、適用対象基材に応じて適宜決定されるが、通常5〜60μm程度である。
【0060】
本発明の塗膜形成材料は、自動車用のフロントガラス、リアガラス、ドアガラス、フェンダーミラー、ドアミラー及び鉄道、飛行機等の輸送用機器用のガラス、高層建築の窓ガラス、一般窓ガラス、酵素等保存用ガラス瓶、アンプル瓶、試薬保存瓶、その他一般に使用されるガラス瓶、鏡等のガラス製品、更に、医療関連分野、食品、工業、農業等の各種産業分野及び一般家庭において使用されるプラスチック製品、各種フィルム製品、金属製品、コンクリート、セラミック製品、布、皮革製品等で、撥水・撥油性、防汚性、耐候性等が必要とされる各種の用途、例えば、撥水性ガラス、防曇鏡、酵素、試薬等非付着性ガラス瓶、防菌、防黴性プラスチック、インクジェットプリンターヘッド、着雪・着氷防止塗装板、厨房用防汚アルミシート、水無しオフセット版等の印刷版材料、オフセット印刷で使用する捨て版用塗料、及びその他の印刷版関連製品等に使用可能である。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例について説明する。なお、以下において、「部」、「%」はそれぞれ「重量部」、「重量%」を意味する。
【0062】
[塗膜特性の評価方法]
以下の実施例及び比較例における、塗膜の特性(透明性、鉛筆硬度、接触角、水滑落角、45°傾斜面滑落水量、油滑り性)の評価方法は次の通りである。
【0063】
(1) 透明性
塗膜の透明性を目視観察により評価した。
【0064】
(2) 鉛筆硬度
JISK5600−5−4に従う鉛筆法により、塗膜の硬度を測定する。
試験を行う鉛筆の芯先を、固い平らな面に置いた研磨紙400番に対し直角にあて、先が平らで角が鋭くなるように研ぎ、研いだ芯を試験面に対して45°にあて、縦に引っ掻き、塗膜が破れるか否かを調べた。鉛筆を硬度の高い順に用いて試験を行い、塗膜が破れなくなった芯の硬度を鉛筆硬度とした。
【0065】
(3) 接触角
得られた塗膜について、接触角計「CA−X150型」(協和界面科学株式会社製)を用い、蒸留水又は食用菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、商品名「キャノーラ油」)を用いて、接触角(度)を測定した。
【0066】
(4) 水滑落角
塗膜上に水2滴(9μL)を5箇所に滴下した後、塗膜を形成したガラス板を徐々に傾斜させ、2番目〜4番目の水滴が転がりはじめたときの傾斜角度を水滑落角とした。また、この水滑落角から、水滑落性を以下の基準で評価した。
◎:水滑落角が30°未満である
○:水滑落角が30°以上、50°未満である
△:水滑落角が50°以上、75°未満である
×:水滑落角が75°以上、或は90°でも滑落しない
【0067】
(5) 45°傾斜面滑落水量
以下の手順で評価した。
(i) 塗膜を形成したガラス板を45°に傾斜させた状態で保持する。
(ii) マイクロピペッターで3μLの水を押出し、針の先に水滴を作る。
(iii) マイクロピペッターを塗膜面に静かに移動させて、水滴を塗膜に付着させる。
(iv) 針を元の位置に戻し、再度、水滴を針の先に押し出し、前の水滴に付着させる。
(v) (ii)〜(iv)を繰り返し、塗膜面の水滴が滑り始めた量を滑落水量とする。
【0068】
(6) 油滑り性
食用菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、商品名「キャノーラ油」)2滴(0.0130g)を、塗膜に付着させた後、塗膜を形成したガラス板を9.5°傾斜させ、90秒後の液滴の移動距離(単位mm)を計測する。
【0069】
[重合体(I)の合成]
<合成例1:重合体(I−1)の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えた500mlのフラスコに、イソプロピルアルコール45部、4−メチル−2−ペンタノン40部、シクロヘキサノン15部と共に、表1の通り、メチルメタクリレート40部、n−ブチルアクリレート15部、n−ブチルメタクリレート9部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15部、メタクリル酸1部、ジアルキルシリコン基を含有するアクリル樹脂「サイラプレンFM−0721」(JNC株式会社製商品名;片末端ラジカル重合性メタクリロイル型ポリジメチルシロキサン、数平均分子量5000)20部を入れ、攪拌して均一にした後、窒素ガスをフィードしながら昇温した。温度が70℃に達した後、別途4−メチル−2−ペンタノン50部にアゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」と記載する。)3.0部を溶解させた溶液を一括で添加し、窒素ガスを微量に流しながら反応温度94℃に保持し、3時間反応させた。その後、更にAIBN0.1部を添加し、同温度にて1時間反応させ、固形分濃度40%、水酸基価(固形分値)64.2mg−KOH/gの重合体(I−1)の溶液250部を得た。
【0070】
<合成例2〜12:重合体(I−2)〜(I−12)の合成>
合成例1において、原料配合を表1に示す通り変更したこと以外は同様にして、それぞれ重合体(I−2)〜(I−12)(いずれも固形分濃度40%)を得た。得られた各重合体の水酸基価(固形分値)を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
[重合体(II)の合成]
<合成例13:重合体(II−1)の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えた500mlのフラスコに、合成例1で得られた重合体(I−1)の溶液を全量(約250部、固形分として100部)入れ、攪拌及び窒素ガスをフィードしながら昇温した。70℃に達した後、別途4−メチル−2−ペンタノン14部に溶解させたAIBN0.3部を添加し、更に昇温した。温度が94℃に達した後、別途、イソプロピルアルコール27部、4−メチル−2−ペンタノン40部、シクロヘキサノン9部と共に、表2の通り、n−ブチルアクリレート60部、並びにAIBN1.8部を溶解しておいた溶液を窒素ガスを微量流しながら温度を94℃に保ったまま滴下ロートにより1時間かけて添加した。その後、更にAIBN0.1部を添加し、同温度にて1時間反応させて、水酸基価(固形分値)40.1mg−KOH/gの重合体(II−1)の溶液(固形分濃度40%)を得た。
【0073】
<合成例14〜26:重合体(II−2)〜(II−14)の合成>
合成例13において、原料配合を表2に示す通り変えたこと以外は同様にしてそれぞれ重合体(II−2)〜(II−14)(いずれも固形分濃度40%)を合成した。得られた各重合体の水酸基価(固形分値)を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
[重合体(III)の合成]
<合成例27:重合体(III−1)の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えた500mlのフラスコに、イソプロピルアルコール45部、4−メチル−2−ペンタノン40部、シクロヘキサノン15部と共に、表3の通り、メチルメタクリレート50部、n−ブチルアクリレート15部、n−ブチルメタクリレート9部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート25部、およびメタクリル酸1部を入れ、攪拌して均一にした後、窒素ガスをフィードしながら昇温した。温度が70℃に達した後、別途4−メチル−2−ペンタノン50部にAIBN3.0部を溶解させた溶液を一括で添加し、窒素ガスを微量に流しながら反応温度94℃に保持し、3時間反応させた。その後、更にAIBN0.1部を添加し、同温度にて1時間反応させて、水酸基価(固形分値)107mg−KOH/gの重合体(III−1)の溶液(固形分濃度40%)を得た。
【0076】
<合成例28〜30:重合体(III−2)〜(III−4)の合成>
合成例27において、原料配合を表3に示す通り変えたこと以外は同様にしてそれぞれ重合体(III−2)〜(III−4)(いずれも固形分濃度40%)を合成した。得られた各重合体の水酸基価(固形分値)を表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
[コーティング用樹脂組成物の調製、塗膜の形成及びその評価]
<実施例1>
合成例13で得られた重合体(II−1)溶液を固形分として12部、および合成例27で得られた重合体(III−1)溶液を固形分として88部十分に混合して均一化した後、混合樹脂の水酸基価から算出した架橋剤「タケネートD−170N」(三井化学株式会社商品名、ヘキサメチレンジイソシナネートヌレート変性、NCO%20.7)を水酸基当量/NCO当量=1/1となるように13.9部添加し、十分に混合してコーティング用樹脂組成物(固形分濃度40%)とした。
このコーティング用樹脂組成物を、アプリケータにて、ガラス板の上に乾燥後の膜厚が50μmとなるように塗布し、室温下、7日間養生して成膜した。
この塗膜の特性の評価結果を、組成物物性と共に表4に示した。
【0079】
<実施例2〜
9>
重合体(II),(III)として表4に示すものを用い、架橋剤の添加量を表4に示す通りとしたこと以外は実施例1と同様にしてコーティング用樹脂組成物(いずれも固形分濃度40%)を調製して同様に膜厚50μmの塗膜を成膜した。形成された塗膜の特性の評価結果を、組成物物性と共に4に示した。
【0080】
<比較例1〜19>
表5,6に示す組成物配合としたこと以外は実施例1と同様にして、コーティング用樹脂組成物を調製して表5,6に示す膜厚の塗膜を成膜した。形成された塗膜の特性の評価結果を表5,6に示した。
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
表4〜6の通り、本発明のコーティング用樹脂組成物により形成される塗膜は、撥水・撥油性に優れ、硬度も高い。
なお、実施例1、比較例16、18の塗膜についてX線電子分光分析により塗膜の表面から深さ20nmまでの範囲と表面から100〜200nmまでの範囲のケイ素原子の割合を測定したところ次の通りであった。
【0085】
【表7】