(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記障害部材が前記賦形空間に2つ以上配されており、前記障害部材のうち少なくとも2つが、その端部間で隙間を形成する請求項1〜4の何れかに記載の生体内留置部材用賦形型。
前記生体内留置部材用賦形型が、前記開孔を備える第1凹型と、該第1凹型と組み合わせて前記賦形空間を形成する第2凹型とを備える請求項1〜6の何れか1項に記載の生体内留置部材用賦形型。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る生体内留置部材の製造方法及びそれに用いる賦形型の実施形態について図面を参照して説明する。尚、後述する各部材の形状、材料、大きさ、長さ等は例示として説明するものであって、適宜変更可能である。
【0015】
(1)一次コイル
本発明では、金属素線を巻き回して形成された一次コイルに対して賦形加工を行う。
本発明で用いる一次コイルは、例えば、金属素線を芯線に巻き回して得られる直線状の一次コイルを用いることができる。また、芯線を使用する場合は、二次コイル形成工程前に取り外しても良いし、後述する二次コイル形成工程の後に取り外してもよい。
金属素線の材料としては、特に限定はなく、例えば、プラチナ(白金)、タングステン、金、タンタル、イリジウム、チタニウム、ステンレス、ニッケル、及び、これらの金属から選択された2種以上の金属を含有する合金等が挙げられる。また、金属素線の断面形状は円形に限定されず、楕円、角形など様々な形状が選択可能である。更に、金属素線の断面形状が円形の場合、その直径(線径)は、瘤の大きさにもよるが、φ0.010mm〜0.200mm程度で任意に選択可能である。金属素線の断面形状が円形ではない場合は、その最大幅として、0.010mm〜0.200mm程度で任意に選択可能である。
【0016】
一次コイルのピッチ間隔は特に限定はない。例えば、
図1(a)に示すように隣接する金属素線1同士が密着していても良いし、
図1(b)に示すように、隣接する金属素線1同士の間に所定の間隔5が開いていてもよい。
【0017】
また、このような金属素線を巻き回してできた一次コイルの外径は、最終的に得られる生体内留置部材を瘤へ誘導するために使用するマイクロカテーテル等の内腔部の大きさに合わせて適宜選択すればよく、例えば、マイクロカテーテルが0.010インチ〜0.018インチ用である場合は、φ0.20mmからφ0.45mmとすればよい。また、一次コイルの外径は全長に亘って均一であっても良いし、任意に変化させてもよい。例えば、マイクロカテーテルが0.010インチ〜0.018インチ用である場合、
図2に示す一次コイル4のように部分的に外径がφ0.20mmからφ0.45mmになるように変化させてもよい。
図2に示す例では、金属素線1を巻き回した時の外径が最も大きい部分A、部分Aより小さい部分B、部分Bより小さい部分Cが、C、B、A、B、C・・・と順次連続した形状である。もっとも、A、B、Cの順序はこれに限られない。また、外径の大きさは、
図2のように3種に限られず、2種又は4種以上であっても良い。
図2に示すような一次コイルは、例えば、段付やテーパー形状を有する芯線を用いて作製することができる。
【0018】
(2)生体内留置部材用賦形型
本発明では、上記の一次コイルの賦形加工を行うに際して、一次コイルが装填される所定形状を有する賦形空間と、該賦形空間と外部とを連通する開孔と、前記賦形空間に配され、前記開孔を介して前記賦形空間に挿入される前記一次コイルが接触する障害部材と、を備える生体内留置部材用賦形型(以下、単に「賦形型」と称する場合がある。)を用いる。以下に、本発明に係る生体内留置部材用賦形型の実施形態を、図面を用いて説明する。
下記各実施形態の賦形型を構成する部材の材質は、特に限定はなく、金属、ガラス、樹脂等を用いることができる。但し、後述するように、賦形加工時に加熱する場合は、加熱温度での耐熱性を有するものを用いる必要がある。尚、石英ガラス等の耐熱ガラスを用いると、賦形型の内部を目視にて確認し得るため、賦形型内に挿入される一次コイルの状態を確認できる利点がある。
【0019】
<実施形態の第1例>
図3、4は、本発明に係る生体内留置部材用賦形型の実施形態の第1例を示したものであり、
図3はその斜視図であり、
図4は
図3のI−I断面図である。但し、
図3では、便宜上、障害部材は省略している。
【0020】
図3、4に示すように、本例の賦形型10は、それぞれ直方体状の第1凹型11と第2凹型12からなる割り型であり、第1凹型11と第2凹型12とを組み合わせることで、それぞれの型に形成された凹部により、賦形空間13が形成される。第1凹型11には、賦形空間13と外部とを連通する開孔14が設けられている。後述するように、開孔14を介して一次コイルが賦形空間13に挿入される。開孔14は、本例では、小径の孔であるが、これに限られず、一定の幅を有するスリット状であってもよい。また、第1凹型11及び第2凹型12には、障害部材20a〜24a、20b〜24bを賦形空間13に配するため、障害部材の形状に対応したスリット15〜19が設けられている。本例では、スリット15〜19は、開孔14の軸方向に対して直交する方向に配され、型の一方端から他方端に亘って形成され、賦形空間13と外部とが連通する構造となっている。また、
図4に示すように、障害部材20a〜24aがそれぞれスリット15〜19の一方端から挿入され、障害部材20b〜24bがそれぞれスリット15〜19の他方端から挿入され、賦形空間13で、例えば障害部材20aと20bとが、それぞれの端部20c、20dとの間に隙間を形成することが可能となっている。障害部材21a(21b)〜24a(24b)についても同様である。
【0021】
また、障害部材20a(20b)〜24a(24b)は、スリットに沿って、賦形空間13(賦形型10)に対して相対的に進退(移動)可能であり、例えば、障害部材20aと20bの端部20cと20dの隙間の幅を任意に調整可能である。そのため、後述するように、一次コイルを賦形空間に挿入する際に任意に使用する案内管25(
図5(a)参照)や一次コイルを障害部材の端部間で把持して固定したりすること、一次コイルの挿入を補助することがより容易となる。また、障害部材20a(20b)〜24a(24b)は、第1凹型11、第2凹型12から脱着可能となっている。
【0022】
以上のような構成により、賦形空間13は、障害部材により複数に区画され、後述するように、これらの各区画に一次コイルを順次装填することができる。
【0023】
本例では、障害部材20a(20b)〜24a(24b)の形状は、平板状の板状体であるが、棒状体又は棒状体と板状体とを組合せたものであっても良い。障害部材が棒状体のみの場合は、障害部材により賦形空間13が区画されるものではないが、板状体の場合と同様に、棒状体により、一次コイルを挿入する際に任意に使用する案内管や一次コイルを、障害部材の端部間で把持して固定したりすることがより容易になり、区画された場合と同程度の効果が期待できる。
また、障害部材の形状は、本例では、方形であるが、賦形型10の形状、構造等を考慮して適宜決定することができる。また、障害部材20a(20b)〜24a(24b)の移動方向は、何れも同じ方向であるが、開孔14の軸方向に対して直交する方向で、任意に設定可能である。尚、開孔14の軸方向に対して直交する方向以外の方向へ変化させる場合は、
図6に示す第2例において説明する。
更に、障害部材の数は5組(10個)であるが、適宜決定すれば良い。
【0024】
また、図示しないが、5組の障害部材20a(20b)〜24a(24b)に替えて、各スリット15〜19に1つの障害部材を配するようにして、各障害部材には、開孔14の中心軸と同軸になるように貫通孔を設けるとともに、当該貫通孔を開閉可能な扉を設けたものを採用することも可能である。この場合は、スリット15〜19は、賦形型10の一方端から他方端に亘り連通していなくてもよい。
【0025】
本発明の賦形型では、例えば
図5(a)〜(f)に示すように、開孔14を介して案内管25を賦形空間13に挿入してもよい。本図では、案内管25は、外部と賦形空間13を連通するように配されており、外部から一次コイルの賦形空間13への挿入がより容易になる。また、案内管25は、賦形空間13に対して進退可能であることが好ましい。これにより、
図5(a)〜(f)に示すように、障害部材により仕切られ、区画された部分に一次コイルを順次装填することが容易となる。
【0026】
<実施形態の第2例>
次に、本発明に係る生体内留置部材用賦形型の実施形態の第2例について説明する。
図6(a)は、本例における賦形型30の斜視図であり、
図6(b)は、
図6(a)におけるII−II方向の断面図である。但し、
図6(a)では、便宜上、障害部材は省略している。
図7は、
図6(a)におけるIII−III方向の断面図であるが、
図7では、障害部材が配された状態を示したものである。
【0027】
図6、
図7(a)に示すように、本例の賦形型30は、それぞれ直方体状の第1凹型31と第2凹型32を備えた割り型であり、第1凹型31と第2凹型32とを組み合わせることで、それぞれの型に形成された凹部により、賦形空間33が形成される。第1凹型31には、賦形空間33と外部とを連通する開孔34が設けられている。後述するように、開孔34を介して一次コイルが賦形空間33に挿入される。開孔34は、本例では、小径の孔であるが、これに限られず、一定の幅を有するスリット状であってもよい。また、第1凹型31及び第2凹型32には、障害部材38、41、44を賦形空間33に配するため、障害部材38、41、44の棒状体39、42、45部分の形状に対応した貫通穴35、36、37がそれぞれ設けられている。本例では、貫通穴35、36、37は、外部から賦形空間33に連通するように形成されており、貫通穴35、36、37及び開孔34の軸方向の中心軸線が同一平面上に存在するように配されている。また、3つの貫通穴の各中心軸線が、賦形空間13の中心を中心点として、隣り合う中心軸線と120°になるように、貫通穴35、36、37が設けられている(
図7参照)。
【0028】
また、本例では、障害部材38、41、44は、主として貫通穴35、36、37に位置する棒状体39、42、45と、賦形空間33内に位置する板状体40、43、46との組合せである。そして、板状体40、43、46により、賦形空間13が実質的に区画されるとともに、板状体40、43、46の端部47、48、49間には隙間が形成されるようにもなっている。
【0029】
また、障害部材38、41、44は、外部に位置する棒状体39、42、45を操作することで、貫通穴35、36、37に沿って賦形空間33に対して進退(移動)可能な板状体40、43、46の構造を有している。本例では、板状体40、43、46の構造は、半円又は半楕円の平板状の構造を有する。そして、半円の径又は半楕円の長径及び短径は、板状体40、43、46の端部47、48、49間に形成される隙間の大きさと、板状体によってより確実に仕切られる区画面の大きさを考慮して、適宜調整される。そのため、後述するように、一次コイルを挿入する際に任意に使用する案内管25(
図7(b)参照)や一次コイルを障害部材の端部間で把持して固定したりすることがより容易になり、一次コイルの挿入を補助することが可能となる。また、障害部材38、41、44は、第1凹型31、第2凹型32から脱着可能となっている。
【0030】
以上のような構成により、賦形空間33は、障害部材により複数に区画され、後述するように、この各区画に一次コイルを順次装填することができる。
【0031】
本例では、障害部材38、41、44の板状体40、43、46の形状は、半円または半楕円であるが、これに限られず、三角形状、台形状その他の形状を用いても良い。また、障害部材の形状も、板状体と棒状体の組合せに限らず、板状体のみであっても良いし、棒状体のみであっても良い。板状体のみの場合は、例えば
図3及び4に示した障害部材及びスリットを賦形空間の中心を中心として120°間隔で3つ配すればよい。棒状体のみの場合も、同様にして120°間隔で3つ配すれば良い。棒状体のみの場合の作用は、
図3の例の場合と同様である。
また、障害部材の数は、本例では3つであるが、適宜決定すれば良い。
【0032】
本発明の賦形型では、例えば
図7(b)〜(d)に示すように、開孔34を介して賦形空間33に案内管25を挿入してもよい。本図では、案内管25は、外部と賦形空間33を連通するように配されており、外部から一次コイルの賦形空間33への挿入を容易にすることができる。また、案内管25は、賦形空間33に対して進退可能であることが好ましい。これにより、
図7(b)〜(d)に示すように、障害部材により仕切られ、区画された部分に一次コイルを順次装填することが容易となる。
【0033】
<実施形態の第3例>
図8は、本発明に係る生体内留置部材用賦形型の実施形態の第3例を示したものである。
図8(a)は、第3例の賦形型の斜視図である。但し、
図8(a)では、便宜上、障害部材は省略している。
図8(b)は、
図8(a)におけるIV−IV方向の断面図であるが、
図8(b)では、障害部材が配された状態を示したものである。
【0034】
図8(a)に示すように、本例の賦形型60は、それぞれ直方体状の第1凹型61と第2凹型62からなる割り型であり、第1凹型61と第2凹型62とを組み上げることで、それぞれの型に形成された凹部により、賦形空間63が形成される。
【0035】
第1凹型61には、賦形空間63と外部とを連通する開孔64が設けられている。本例では、開孔64は円柱状の中空構造を有する。後述するように、開孔64を介して一次コイルが賦形空間63に挿入される。また、一次コイルの挿入をより容易にするため、開孔64には、任意の構成である案内管69が挿入されている。本例では、案内管69が開孔64内をその径方向に移動可能なように、開孔64の径が案内管69の外径より大きくなっている。このような構成にすることにより、障害部材によって区画される各区分内への一次コイルの誘導が容易になる。
【0036】
第1凹型61及び第2凹型62には、障害部材70〜73(
図8(b)参照)を賦形空間63に配するため、障害部材の形状に対応したスリット65〜68が設けられている。本例では、スリット65〜68は、開孔64の軸に対して平行な平面上で且つ開孔64の軸方向に対して直交する方向において、開孔64の軸中心から放射状に配される。この放射状の態様としては、本例では、
図8(b)の断面図に示すように、スリット65〜68ないしは障害部材70〜73の中心線は、開孔64の中心点からずれるとともに、スリット65〜68ないしは障害部材70〜73の一方の面を示す線は、開孔64の中心点を通るように配されている。その結果、
図8(b)の例では、障害部材71と、その反対側に位置する障害部材73とは、その端部の先端面同士で当接しないようにスリット66、68が配されている。スリット67(障害部材72)とスリット65(障害部材70)についても同様である。また、本例の場合、障害部材70の端部の先端面は隣接する障害部材73の端部の側面に、障害部材71の端部の先端面は隣接する障害部材70の端部の側面に、障害部材72の端部の先端面は隣接する障害部材71の端部の側面に、障害部材73の端部の先端面は隣接する障害部材72の端部の側面に、それぞれ当接するようにスリット65、66、67、68が設けられる。また、これらの側面は、
図8(b)に示す断面では、何れも開孔部64の中心点に向かって左側の側面に該当する。尚、同様の態様で、右側の側面に当接するようにスリットと障害部材を配するようにしてもよい。
【0037】
スリット65〜68は、賦形空間13と外部とが連通する構造となっている。そして、後述するように、開孔64の中心軸を中心として、スリット65〜68を介して賦形空間63に配される障害部材70〜73により、賦形空間63が複数に区画され、この各区画に一次コイルを順次装填することができる(
図9参照)。
【0038】
また、本例では、隣接する障害部材の端部間に隙間を形成することが可能となっており、例えば、
図9(a)に示すように、障害部材70の端部と障害部材71の端部の端部間に隙間を形成することが可能となっている。
【0039】
障害部材70〜73は、スリット65〜68に沿って、賦形空間63(賦形型60)に対して相対的に進退(移動)可能であり、各障害部材の端部間の隙間の幅を任意に調整可能である。そのため、後述するように、ある隣接する障害部材の端部間の隙間を設けるとともに、他の端部間に隙間を設けないか、所定の区画内に装填された一次コイルの動きを抑制できる程度に隙間を狭くすることで、所定の区画に一次コイルを順次装填すること、一次コイルを挿入する際に任意に使用する案内管69や一次コイルを障害部材の端部間で把持して固定したりすることがより容易になり、一次コイルの挿入を補助することが可能となる。また、障害部材70〜73は、第1凹型61、第2凹型62から脱着可能となっている。
【0040】
以上のような構成により、賦形空間63は、障害部材により複数に区画され、後述するように、これらの各区画に一次コイルを順次装填することができる。
【0041】
障害部材70〜73の形状、配置する数等は、第1例及び第2例の場合と同様に、適宜決定することができる。
【0042】
<実施形態の第4例>
図10は、本発明に係る生体内留置部材用賦形型の実施形態の第4例を示したものである。
図11(a)〜(d)は、
図10に示す賦形型を用いた生体内留置部材の製造方法における一次コイルを挿入する工程を模式的に示した断面図であり、断面の方向は、
図10のV−V方向である。尚、
図11(a)〜(d)では、
図10と異なり、賦形型80の賦形空間に案内管108を挿入するとともに、案内管108に一次コイル2を挿通させている状態を示した図である。
【0043】
本例の賦形型80は、
図10に示すように、複数の一次賦形部81、82、83、84が(略)直線状に順次並んで連設されており、一次賦形部81、82、83、84は、連結部85、86、87により隣接する2つの一次賦形部同士が連結されている。また、複数の一次賦形部のうちの一方端に位置する一次賦形部84には、開孔94が設けられている。更に、連結部85、86、87には、一次コイルと接触する障害部材88〜93が設けられている。本例の賦形型の構造を採用することで、開孔94から一次コイルを挿入して他端側の一次賦形部81から順次中空部の形状に対応した形状を形成することができる。
【0044】
各一次賦形部81、82、83、84は、所定形状を有する中空部を備える。本例では、
図11(a)〜(d)に示すように、各中空部95、96、97、98の形状は略球状であるが、当該形状に限られず、上述した他の例と同様に各種の形状にすることができる。また、本例では、一次賦形部81、82、83、84は、略球形状の外観形状を有しているが、第1〜3例の場合のように方形でもよいし、その他の形状でもよい。但し、後述するように、各一次賦形部を直線状から所定の状態に並び変える観点からは、略球形状が好ましい。また、一方端部に位置する一次賦形部81は、隣接する一次賦形部82の中空部96と連結部85を介して連通可能となるように、1つの連通口を設けているが、一次賦形部82、83は、両隣りに一次賦形部が配されそれぞれの中空部と連通可能とするため2つの連通口を設けている。もう一方の端部に位置する一次賦形部84には、隣接する1つの一次賦形部83との連通口が設けられているとともに、一次コイル及び案内管を中空部98に挿入するための開孔94が設けられている。また、一次賦形部に設けられているこれらの連通口及び開孔94は、同軸状に配されるのが好ましい。これにより、案内管及び一次コイルを容易に挿入することが可能になる。
【0045】
一次賦形部81の隣には、一次賦形部82が配されており、両者は、筒状の連結部85により連結されている。また、連結部85は、中空部95と中空部96を連通させる連結穴99を備えている。更に、本例では、連結部85には、障害部材88、89を保持するための突部102が配され、突部102には、障害部材88、89の形状に対応したスリット105が設けられている。スリット105は、外部と、連結部85の連結穴99とを連通するように設けられ、スリット105を介して、障害部材88、89が外部から連結穴99内に挿入される。また、必要時には、障害部材88、89の端部間で一次コイルを把持可能であるとともに、不要時には、連結穴99から障害部材88、89を除去可能となるように、スリット105を設けることが好ましい。この場合、障害部材88、89は、連結穴99に対して進退可能であり、脱着可能にすることも可能である。本例では、連結部85の軸方向に直交する方向で、且つ、障害部材88、89の移動方向が同一軸状になるようにスリット105を設けている。
一次賦形部82、83、84及び連結部86、87は、それぞれ一次賦形部81及び連結部85と略同じ構造を有している。また、一次賦形部82、83、84には、それぞれ中空部95と同等の構造を有する中空部96、97、98が設けられ、連結部86、87には、それぞれ連結穴99と同等の構造を有する連結穴100、101、突部102と同等の構造を有する突部103、104、スリット105と同等の構造を有するスリット106、107、が設けられている。
尚、各一次賦形部の構造(外観、中空部等)は同一でも良いし、異なっていてもよい。また、各連結部の構造(外観、連結穴、スリット等)は同一でも良いし、異なっていてもよい。
【0046】
本例の賦形空間は、中空部95、96、97、98及び連結穴99、100、101により構成され、当該部分に一次コイルが配されることとなる。従って、本例の賦形空間の形状は、中空部と連結穴の形状により適宜決定することができる。また、本例では、賦形空間が、複数の一次賦形部により、ある程度区画され得るものではあるが、障害部材88〜93と一次コイルとを接触させ、障害部材により一次コイルを把持することで、賦形空間を確実に区画して、一次コイルを各一次賦形部の中空部に所望長さだけ装填することが可能となる。
【0047】
本例では、一次賦形部の数は4つであるが、最終的に得られる生体内留置部材の大きさ、形状を考慮して、連設する一次賦形部の数を適宜変更可能である。また、連結部の構造、材質、大きさ(長さ、幅)は特に限定はなく、適宜決定することが可能であるが、
図12や
図13に示すように、直線状に配された一次賦形部を平面状や立体状等に並び変えることを容易にする観点からは、可撓性があるような構造、材質を選択したり、連結部を着脱可能な構造にしたり、連結部を分割可能な構造にしたりすることが好ましい。
【0048】
また、一次賦形部は、中空部から賦形された一次コイルの取り出しを容易にする等の観点から、割り型構造等のように、開閉可能な構造としてしてもよい。一次賦形部を割り型構造にする場合の割る方向は、特に限定はなく、例えば、第1〜3例のように、開孔94の軸方向に直交する平面で分割する割り型構造としてもよいし、当該軸方向と平行な平面で分割する構造でもよいし、その他の分割構造を採用してもよい。
更に、一次賦形部と連結部は、一体であってもよいし、連結部の所定の部分で分割可能な構造であってもよい。
【0049】
本例では、障害部材の構造は、特に限定はなく、例えば、板状体、棒状体又は棒状体と板状体との組合せ等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、本例のような構造物に限られず、人の指を用いることも可能である。
【0050】
本例では、連結部を用いなくとも良い(図示せず)。この場合は、一次コイルが装填される賦形空間は、一次賦形部の中空部から構成されることになる。また、障害部材は、把持具、人の指などを採用すると良い。
【0051】
本発明の賦形型では、例えば
図11(a)〜(d)に示すように、開孔94を介して各中空部及び連結穴により構成される賦形空間に案内管108を挿入してもよい。本図では、案内管108は、外部と賦形空間を連通するように配されており、外部から一次コイルの賦形空間への挿入を容易にすることができる。また、案内管108は、賦形空間に対して進退可能であることが好ましい。これにより、
図11(a)〜(d)に示すように、各一次賦形部に一次コイルを順次装填することが容易となる。
【0052】
(3)生体内留置部材の製造方法
<1>一次コイルの賦形加工
次に、本発明に係る生体内留置部材用賦形型を用い、一次コイルに賦形加工を行って、賦形型の賦形空間形状に対応した形状を有する生体内留置部材の製造方法について、図面に基づき説明する。
【0053】
[1] 賦形型の第1例を用いた場合
図3、4に示す賦形型10を用いた賦形加工について説明する。
図5は、賦形型の実施形態の第1例を用いた場合の生体内留置部材の製造工程を模式的に示したものである。
図5(a)に示す賦形型は、
図3、4に示す賦形型10の賦形空間13に対して、開孔14を介して案内管25を挿入し、5組の障害部材20a〜24aと20b〜24bの端部の隙間に配したものである。案内管25は、一次コイルが挿通可能なように、両端で開口し、全長に亘って連通している。
【0054】
本第1例の賦形型10を用いる場合は、先ず、
図5(a)に示すように、開孔14から挿入された案内管25は、開孔14から最も離れた一組の障害部材24a、24bの間に先端部分が位置するように配置される。そして、案内管25の他端の開口部分から一次コイル2を挿通し、賦形空間13を構成する壁面と障害部材24a、24bとで仕切られた区画(第1区画)に一次コイル2が装填される。この時、一次コイル2は、当該区画内に所定長さ装填される際に、障害部材24a、24bとも接触して、一次コイルの進行方向が変化し、当該区画の形状に概ね対応するように装填される。
【0055】
一次コイルを所望の長さ分だけこの区画(第1区画)に装填した後、案内管25を外部側に移動させ、その先端部が一組みの障害部材23a、23bの間に位置するように配置させるとともに、一組みの障害部材24a、24bを、それぞれの端部の隙間が一次コイル2の外径に対応するように移動させる。そして、
図5(b)に示すように、一次コイル2が、更に所定長さ分だけ挿入され、二組の障害部材23a、23b、24a、24bにより仕切られた区画(第2区画)に装填される。この時、一組みの障害部材24a、24bの端部の隙間が一次コイル2に対応した大きさになっている場合、当該隙間部分での一次コイル2の動きが規制され、一次コイル2を外部から押し込んだ時に、第1区画に既に装填されている部分から連続している一次コイル2が第2区画に曲がりながら挿入されことがより容易になる。また、一旦第2区画に入り込んだ一次コイル2は障害部材23a、23b、24a、24bに接触して、進行方向が変化し、当該区画の形状に概ね対応した形状に賦形される。この操作を順次繰り返すことで、
図5(c)〜(e)に示すように、二組の障害部材22a、22b、23a、23bにより仕切られた区画(第3区画)、二組の障害部材21a、21b、22a、22bにより仕切られた区画(第4区画)、二組の障害部材20a、20b、21a、21bにより仕切られた区画(第5区画)、
図5(f)に示すように、賦形空間13を構成する壁面と障害部材20a、20bとで仕切られた区画(第6区画)に、当該区画の形状に概ね対応した形状が形成される。
【0056】
第1例の賦形型を用いて一次コイルを賦形加工する場合、以上のように、一次コイル2の先端側から順番に所定の形状に賦形し、全体として瘤の形状に対応した全体形状を有する3次元構造を形成することが可能となる。そのため、得られた生体内留置部材を後述するプッシャーなどに接続してマイクロカテーテルを介して瘤内に挿入し、マイクロカテーテルから放出された時に、直線状に戻してマイクロカテーテル内に配された生体内留置部材は先端側から順番に賦形された元の形状に復元することが可能なため、より確実に、賦形した3次元構造を有する全体形状に復元することができ、瘤内に安定して配することが可能な生体内留置部材を得ることが可能となる。
【0057】
本発明では、上記のようにして、一次コイルを所定長さだけ賦形型の賦形空間に入れ込んだ後、賦形型ごと熱処理を行うことができる。これにより、賦形型の賦形空間に対応した形状をより効果的に固定することが可能になる。熱処理の条件としては、特に限定はないが、賦形型による形状をより効果的に固定する観点から、例えば、300〜900℃で行うとよい。また、熱処理の雰囲気としても特に限定はなく、例えば、大気中、真空中、窒素やアルゴンといった不活性ガス中、水素や水素混合ガスといった還元ガス中等が挙げられる。
熱処理を行った後、賦形型を冷却する。冷却方法は特に限定はなく、室温中に放置する等、一般的な方法で行うとよい。賦形型が冷却した後、賦形型を取り外し、賦形空間の構造にほぼ対応した3次元構造を有する生体内留置部材6が得られる(
図5(g)参照)。
【0058】
[2] 賦形型の第2例を用いた場合
図6、
図7(a)に示す賦形型30(第2例)を用いた賦形加工について説明する。
図7(b)〜(e)は、賦形型の実施形態の第2例を用いた場合の生体内留置部材の製造工程を模式的に示したものである。
図7(b)に示す賦形型は、
図6、7(a)に示す賦形型30の賦形空間33に対して、開孔34を介して案内管25を挿入し、案内管25の先端部分が、賦形空間33の中心部付近で、3つの障害部材38、41、44の端部部分に近接するように配したものである。案内管25は、一次コイルが挿通可能なように、両端で開口し、全長に亘って連通している。
【0059】
本第2例の賦形型30を用いる場合は、先ず、
図7(b)に示すように、障害部材38と障害部材41とが、それらの端部47、48で接するようにし、障害部材44と障害部材38とは、それらの端部49、47間で隙間を形成し、この隙間を介して一次コイル2を挿入できるように、案内管25の先端部分を障害部材38、44の端部に近接させる。そして、外部から一次コイル2を賦形空間33に押し込んで、賦形空間33の内壁面、障害部材38、44とで仕切られた区画(第1区画)に一次コイル2が装填される。この時、一次コイル2は、当該区画内に所定長さ挿入される際に、障害部材38、41、44と接触して、一次コイル2の進行方向が変化し、当該区画の形状に概ね対応するように配される。
【0060】
一次コイルの所望の長さ分だけこの区画(第1区画)に挿入した後、障害部材38の端部47と障害部材44の端部49との隙間を小さく調整するとともに、障害部材38の端部47と障害部材41の端部48との間に隙間を形成し、この隙間を介して一次コイル2を挿入できるように、案内管25の先端部分を障害部材38、41の端部に近接させる。そして、
図7(c)に示すように、一次コイル2が、更に所定長さ分だけ挿入され、賦形空間33の内壁面、障害部材38、41により仕切られた区画(第2区画)に装填される。この時、障害部材38、41の端部の隙間が一次コイル2の外径に対応した大きさになっている場合、当該隙間部分での一次コイル2の動きが規制され、一次コイル2を外部から押し込んだ時に、第1区画に既に挿入されている部分から連続している一次コイル2が第2区画に曲がりながら挿入されことがより容易になる。また、一旦第2区画に入り込んだ一次コイル2は障害部材38、41に接触して、進行方向が変化し、当該区画の形状に概ね対応するように装填される。
【0061】
一次コイル2を所望の長さ分だけ第2区画に装填した後、障害部材38、41、44の端部47、48、49間の隙間が小さくなるように調整するとともに、案内管25の先端が開孔34における賦形空間33側開口部分付近に位置するように外部側に後退させる。そして、
図7(d)示すように、一次コイル2が、更に所定長さ分だけ挿入され、賦形空間33の内壁面、障害部材41、44により仕切られた区画(第3区画)に装填される。この時、障害部材38、41、44の端部の隙間が一次コイル2の外径に対応した大きさになっている場合、当該隙間部分での一次コイル2の動きが規制され、一次コイル2を外部から押し込んだ時に、第2区画に既に装填されている部分から連続している一次コイル2が第3区画に曲がりながら挿入されことがより容易になる。また、一旦第3区画に入り込んだ一次コイル2は障害部材41、44に接触して、進行方向が変化し、当該区画の形状に概ね対応するように装填される。
【0062】
第2例の賦形型を用いて一次コイルを賦形加工する場合も、第1例の場合と同様に、一次コイル2の先端側から順番に所定の形状に賦形し、全体として瘤の形状に対応した全体形状を有する3次元構造を形成することが可能となる。そのため、同様の理由により、瘤内に安定して配することが可能な生体内留置部材を得ることが可能となる。
【0063】
本第2例の賦形型を用いた場合も、第1例の場合と同様にして、一次コイルを所定長さだけ賦形型の賦形空間に入れ込んだ後、賦形型ごと熱処理を行うことができる。そして、賦形型が冷却した後、賦形型を取り外し、賦形空間の構造にほぼ対応した3次元構造を有する生体内留置部材7が得られる(
図7(e)参照)。
【0064】
[3] 賦形型の第3例を用いた場合
図8に示す賦形型60を用いた賦形加工について説明する。
図9は、賦形型の実施形態の第3例を用いた場合の生体内留置部材の製造工程を模式的に示したものであり、
図8に示す賦形型60の開孔64の軸方向に垂直方向の断面図により製造工程を説明するものである。
図9(a)に示す賦形型60は、
図8に示す賦形型60の賦形空間63に対して、開孔64を介して挿入された案内管69を障害部材70、71、73の端部の間に配したものである。案内管69は、一次コイルが挿通可能なように、両端で開口し、全長に亘って連通している。
【0065】
本第3例の賦形型60を用いる場合は、先ず、
図9(a)に示すように、開孔64から挿入された案内管69は、障害部材70、71、73の端部の間に形成された隙間に配置され、障害部材70、73の端部の先端面、障害部材71の端部の側面は案内管69に当接した状態にある。この
図9(a)に示す状態は、
図8(b)の状態から、障害部材70を賦形空間63から引き出す方向に移動させた状態である。本例では、案内管69は、開孔64と同軸状にはなっておらず、開孔64の軸方向に直交する方向において開孔64に内接するように配されている。案内管69の先端の位置(開孔64の軸方向における賦形空間63内の位置:深さ)は、賦形空間63の任意の位置でよい。
そして、案内管69の他端の開口部分から一次コイル2を挿通し、賦形空間63を構成する壁面と、障害部材70の側面及び端部の先端面、障害部材71の側面及び障害部材73の端部の先端面とで仕切られた区画(第1区画)に一次コイル2が装填される。この時、一次コイル2は、当該区画内に所定長さ挿入される際に、障害部材70、71とも接触して、一次コイルの進行方向が変化し、当該区画の形状に概ね対応するように装填される。
図9(a)に示すように、第1区画は、障害部材70、71、73の端部で接しているため、障害部材70、71、73により仕切られた区画(第1区画)以外の区画に一次コイル2が挿入されることは防止される。
【0066】
一次コイル2が所定長だけこの区画(第1区画)に装填された後、障害部材71を賦形空間63から引き出す方向に移動させ、障害部材71の端部の先端面と障害部材72の端部の側面との間に形成された隙間に、案内管69を移動させる。この時、必要に応じて、障害部材70を賦形空間63に向けて移動させてもよい(図示せず)。
そして、外部から一次コイル2を更に押し込み、賦形空間63を構成する壁面と、障害部材71、72とで仕切られた区画(第2区画)に、第1区画から連続した一次コイル2が装填される。第1区画に一次コイル2が所定長さ装填され、第1区画内における一次コイル2の動きが抑制されると、一次コイル2を外部から押し込んだ時に、第1区画に既に装填されている部分から連続している一次コイル2が第2区画に曲がりながら挿入されることになる。また、一旦第2区画に入り込んだ一次コイル2は、賦形空間63を構成する壁面、障害部材71、72に接触して、進行方向が変化し、当該区画の形状に概ね対応するように配される。尚、障害部材70を賦形空間63に向けて移動させ、障害部材70と障害部材71の端部間の隙間を一次コイル2の外径に対応する程度の幅にすることで、一次コイル2が障害部材70、71の端部間で把持されて一次コイル2の動きがより抑制され、第2区画への一次コイル2の挿入がより容易になる(図示せず)。
【0067】
以上の操作を順次繰り返すことで、
図9(c)、(d)に示すように、障害部材72、73により仕切られた区画(第3区画)、障害部材73、70により仕切られた区画(第4区画)に、一次コイル2が装填され、これら区画の形状に概ね対応した形状が形成される。
尚、各区画に装填する順序は、適宜決定することができる。
【0068】
第3例の賦形型を用いて一次コイルを賦形加工する場合も、第1例及び第2例の場合と同様に、一次コイル2の先端側から順番に所定の形状に賦形し、全体として瘤の形状に対応した全体形状を有する3次元構造を形成することが可能となる。そのため、同様の理由により、瘤内に安定して配することが可能な生体内留置部材を得ることが可能となる。
【0069】
本第3例の賦形型を用いた場合も、第1例及び第2例の場合と同様にして、一次コイルを所定長さだけ賦形型の賦形空間に装填した後、賦形型ごと熱処理を行うことができる。そして、賦形型が冷却した後、賦形型を取り外し、賦形空間の構造にほぼ対応した3次元構造を有する生体内留置部材8が得られる(
図9(e)参照)。
【0070】
[4] 賦形型の第4例を用いた場合
図10に示す賦形型80を用いた賦形加工について説明する。
図11(a)〜(d)は、賦形型の実施形態の第4例を用いた場合の生体内留置部材の製造工程のうち、各一次賦形部を略直線上に並べ、前記賦形空間に前記開孔を介して一次コイルを装填する工程を模式的に示したものである。また、
図12(a)は、一次コイルが装填され、略直線上に並べられている各一次賦形部を平面状に並べる工程を模式的に示したものである。
図11(a)〜(d)に示す賦形型は、
図10に示す賦形型80の中空部95〜98及び連結穴99〜101から構成される賦形空間(以下、単に「賦形空間」と称する場合がある。)に対して、開孔94を介して案内管108を挿入し、障害部材88〜93の端部の隙間に配したものである。案内管108は、一次コイルが挿通可能なように、両端で開口し、全長に亘って連通している。
【0071】
本第4例の賦形型80を用いる場合は、先ず、例えば
図11(a)に示すように、開孔94から挿入された案内管108は、略直線上に並べられた一次賦形部81〜84のうち、開孔94から最も離れた一次賦形部81の中空部95に先端部分が位置するように配置される。そして、案内管108の他端の開口部分から一次コイル2を挿通し、中空部95に一次コイル2が装填される。
【0072】
一次コイル2を所望の長さ分だけ中空部95に装填した後、案内管108を外部側に移動させ、その先端部が一組みの障害部材88、89より一次賦形部82側か、一組みの障害部材90、91に近い側の連通口付近に位置するように配置させ、一組みの障害部材88、89を、それぞれの端部の隙間が一次コイル2の外径に対応するように移動させ、障害部材88、89にて一次コイル2を把持する。
そして、
図11(b)に示すように、一次コイル2が、更に所定長さ分だけ挿入され、一次賦形部82の中空部96に装填される。この時、一組みの障害部材88、89の端部間で一次コイル2が把持されていると、当該隙間部分での一次コイル2の動きが規制され、一次コイル2を外部から押し込んだ時に、一次賦形部81に既に装填されている部分から連続している一次コイル2が一次賦形部82に曲がりながら挿入されことが容易になる。また、一旦一次賦形部82の中空部96に入り込んだ一次コイル2は中空部96を構成する壁面に接触して、進行方向が変化し、中空部96の形状に概ね対応した形状に賦形される。この操作を順次繰り返すことで、
図11(c)〜(d)に示すように、第一賦形部83の中空部97、第一賦形部84の中空部98の形状に概ね対応した形状が形成される。
【0073】
次に、一次コイル2が装填され、略直線上に並べられている各一次賦形部81〜84を、
図12(a)に示すように、平面状に並べる。
図12(a)では、4つの一次賦形部81〜84を順次U字状に並べ替え、平面状になるように配している。ここで平面状とは、例えば、各一次賦形部のある代表点(例えば、重心等が挙げられる。)が略同一平面上に存在する場合を意味する。
図12(a)の例では、略球状の各一次賦形部の略重心が概ね同一平面上になるように配されている。一次賦形部81〜84は、所望の形状に並べた状態を維持することが可能な容器109内に配される。尚、
図12では連結部は省略している。もっとも、連結部が着脱可能な場合は、
図12は連結部を取り外した時の状態を示したものとなる。
また、本例では、略直線上に並べられている一次賦形部を立体状に並べ変えることもできる。ここで立体状とは、例えば、各一次賦形部の重心を結ぶ最も簡易な形状が3次元構造を有する場合を意味する。例えば、略直線上に並べられている8つの一次賦形部110を
図13(a)に示すように、立方体となるように並べ替えてもよいし、同じく略直線上に並べられている6つの一次賦形部112を
図13(b)に示すように8面体になるように並べ替えてもよい。また、これらは、ぞれぞれ、
図13に示すように、所望の並び変えた形状を維持することが可能な容器111、113内に配される。尚、
図13では連結部は省略しているが、連結部が着脱可能な場合はこの限りではない。
一次賦形部を直線状から並べ変えた後の構造は、最終的に得られる生体内留置部材が配される瘤の構造に応じて適宜決定すればよく、平面状、立体状、平面状と立体状を組み合わせた構造等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
本例では、直線状に並べた一次賦形部の連結関係を保持しつつ、平面状や立体状等に並べ変えることとなる。そのため、一次コイル2はその先端側から順番に所定の形状に賦形され、全体として瘤の形状に対応した全体形状を有する3次元構造を形成することが可能となる。そのため、得られた生体内留置部材を後述するプッシャーなどに接続してマイクロカテーテルを介して瘤内に挿入し、マイクロカテーテルから放出された時に、直線状に戻してマイクロカテーテル内に配された生体内留置部材は先端側から順番に賦形された元の形状に復元することが可能になる。その結果、より確実に、賦形した3次元構造を有する全体形状に復元することができ、瘤内に安定して配することが可能な生体内留置部材を得ることが可能となる。
【0075】
本発明では、上記のように、所定の構造に並べ替えられた一次賦形部を容器109に配した状態で、熱処理を行うことができる。これにより、賦形型の賦形空間に対応した形状及び並び変えた後の形状をより効果的に固定することが可能になる。熱処理の条件としては、第1〜3例の賦形型を用いた場合と同様にすればよい。
熱処理を行った後、第1〜3例の場合と同様にして、賦形型を冷却する。賦形型が冷却した後、賦形型を取り外し、賦形空間の構造及び並び変えた後の形状にほぼ対応した3次元構造を有する生体内留置部材9が得られる(
図12(b)参照)。
【0076】
<2>その他の加工工程
本発明では、必要に応じて、例えば、以下の工程を適宜行うことができる。
(i)伸張防止用ワイヤーの接合
一次コイルの内部に伸張防止用ワイヤーを配する必要がある場合は、一次コイルを形成した後に、伸張防止用ワイヤーを一次コイルの内部に挿入して、所定の位置で一次コイルに連結する。伸張防止用ワイヤーの材質、当該ワイヤーと一次コイルの連結方法、連結位置は特に限定はなく、従来の材質を用いることができ、従来の方法、位置を採用することができる。
(ii)一次コイルの端部の加工
一次コイルの一方端に、半球状の頭部を設ける加工を行うことができる。この加工は、(i)の伸張防止用ワイヤーの接合と同時に行うことができる。また、その他の従来の方法、材質を用いて行うことができる。また、必要に応じて、一次コイルの他方端部に伸張防止用ワイヤー及び/又は後述する配置用ワイヤーとの連結部材を接合することができる。
【0077】
(4)生体内留置部材を用いた医療用デバイス
以上のようにして得られた生体内留置部材は、従来から一般に使用されているプッシャーなどの配置用ワイヤーの先端部分に接合し、配置用ワイヤーをシース内に配置して、血管内の瘤を閉塞する際に使用される医療用デバイスとして使用することができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。
【0079】
(実施例1)
素線径φ0.045mmのプラチナ合金の金属素線を、略一定の外径を有する直線状の芯金(芯線)の周りに巻きまわし、外径φ0.250mmの密巻きの一次コイルを作製した。その後、芯金を取り外した。
一次コイルの内部に伸張防止用ワイヤー0.010mmを挿入し、一次コイルの一方端部に当該ワイヤーの先端部をレーザーで溶接を行った。
図3及び4に示す賦形型を用い、
図5に示す工程に従って、伸張防止ワイヤーを配した一次コイルを賦形型内に挿入した。
一次コイルが挿入された状態の賦形型に対して熱処理を700℃、1時間行った。冷却した後、賦形型から取り出して、賦形型の賦形空間の形状に対応した3次元構造である球状の生体内留置部材を得た。
【0080】
(比較例1)
実施例1と同様にして、伸張防止用ワイヤーが配された一次コイルを作製した。この一次コイルを
図14に示す、第1凹型51と第2凹型52とからなり、球状の賦形空間53のみを有する賦形型50に開孔54を介して挿入した。
この一次コイルが挿入された賦形型を、700℃、1時間で熱処理を行った。冷却後に賦形型から取り出すと、一次コイルが略同一外径を有するように巻き回された螺旋形状の生体内留置部材は得られたが(
図14参照)、賦形型の賦形空間の形状に対応した球形ではなかった。
【0081】
(評価)
実施例1及び比較例1の生体内留置部材を、透明なガラス製の動脈瘤モデルに挿入し、評価を行った。
動脈瘤モデル内にマイクロカテーテルを挿入した後、賦形された形状を解除して直線状にした実施例1及び比較例1の生体内留置部材をマイクロカテーテルを介して動脈瘤内に配置した結果、カテーテル先端部より放出されると実施例1の生体内留置部材では球形の形状に戻り、動脈瘤内で安定していることを確認した。一方、比較例1の生体内留置部材では上記の螺旋形状には戻るものの、動脈瘤の形状に則した形状でなないため、動脈瘤内から飛び出すおそれが解消されないことが分かった。