特許第5958187号(P5958187)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958187
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/02 20060101AFI20160714BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   B60R21/02 N
   B60R21/207
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-189175(P2012-189175)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-46726(P2014-46726A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】二井 孝彰
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕之
(72)【発明者】
【氏名】西山 明宏
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−253674(JP,A)
【文献】 特開2004−034936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00 − 21/207
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側面衝突時に、ドアトリムと乗員との間の空間に展開されるサイドエアバッグと、
前記ドアトリムにおいて車室内側に向けて膨出するように突設された膨出部と、
流体が封入されて変形自在に設けられ、前記膨出部を膨出させている膨出空間に内蔵されて前記膨出部の形状を保持する収縮バッグと、
前記ドアトリムの車室外側であって前記膨出部の下方に設けられ、流入される前記流体の体積に応じて変形する膨張バッグと、
前記側面衝突時に、前記収縮バッグに封入された前記流体を流出させるとともに前記収縮バッグの内部と前記膨張バッグの内部とが遮断された遮断状態から前記収縮バッグの内部と前記膨張バッグの内部とが連通された連通状態とに切換える開閉部と、を備え
前記膨張バッグは、前記側面衝突時に、前記ドアトリムを車室内側へ押し出して膨張変形する
ことを特徴とする、乗員保護装置
【請求項2】
前記開閉部は、開閉弁を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記開閉部は、前記流体を圧送するポンプを有する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記膨出部は、溝又は蛇腹を有する
ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記膨出部は、アームレストである
ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の乗員保護装置。
【請求項6】
前記膨出部における前記膨出空間を囲繞する囲繞面と前記収縮バッグの車室内側の外面とが連結部材を介して連結された
ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突時に車両乗員の胴部を保護する乗員保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の側面への衝突(以下、単に「側突」という)時に、乗員に加えられる左右方向の衝撃力を緩和して乗員を保護する技術が開発されている。このような技術が例えば特許文献1及び2に開示されている。
【0003】
特許文献1には、エアバッグとこのエアバッグ内部にガスを供給するインフレータとをシート内部に収容したサイドエアバッグ装置が開示されている。この装置では、側突時にエアバッグ内部にインフレータによりガスが供給され、エアバッグが膨出しながらシートの表皮を破断させて乗員とドアトリムとの間に展開される。このように、サイドエアバッグ装置では、車両側方から衝撃が加わると、衝撃によって車室内に侵入するドアトリムと乗員との間にエアバッグが膨出展開し、乗員を保護する。
【0004】
また、特許文献2には、アームレストの基端部のサイドドア内部に収容された保護バッグが開示されている。この保護バッグは、内部に非圧縮液体を封入するものであり、側突時にアウターパネルの変形に追従するように変形可能とされる。また、ドアトリムの裏面には、保護バッグ内の圧力上昇によって破断する破断部が設けられる。これにより、側突時に保護バッグがアームレストの下部から乗員の腰部に向かって展開する。アームレストの下方の空間には保護バッグの展開を妨げる障害物が少ないため、保護バッグがスムーズに展開する。この展開された保護バッグが乗員の腰部に沿って接触することで、側突時に加わる乗員への荷重が分散され、乗員の腰部が保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−56506号公報
【特許文献2】特開2007−22269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献2に示されるアームレストのように、ドアトリムには、車室内側に向けて膨出するように突設された膨出部が成形されているものがある。このようなドアトリムと乗員との間の空間では、膨出部と乗員との間が狭くなっている狭隘部が形成される。そのため、特許文献1の技術のようにドアトリムと乗員との間の空間にエアバッグを展開する場合、エアバッグが狭隘部に引っ掛かりこの展開が阻害される可能性がある。
【0007】
一方、特許文献2の技術では、ドアトリムに突設されたアームレストの下部に保護バッグを展開するため、この展開を妨げる障害物が少なく、保護バッグはスムーズに展開される。しかしながら、ドアトリムにおけるアームレスト及びこれよりも上部と乗員との間の空間には保護バッグは展開されず、乗員の腹部や胸部といった腰部よりも上部の胴部の保護を図ることができない。
【0008】
また、特許文献2の技術に、特許文献1の技術のようなサイドエアバッグ装置を組み合わせたとしても、アームレストと乗員との間の空間には狭隘部が形成されているため、狭隘部においてエアバッグの展開が阻害される可能性がある。このため、アームレストに対向している腹部を含む乗員の胴部を適切に保護することができない可能性がある。
本発明は、かかる課題に鑑み創案されたものであり、車両の側突時に乗員の胴部を適切に保護することができるようにした、乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するために、本発明の乗員保護装置は、車両の側面衝突時(側突時)に、ドアトリムと乗員との間の空間に展開されるサイドエアバッグと、前記ドアトリムにおいて車室内側に向けて膨出するように突設された膨出部と、流体が封入されて変形自在に設けられ、前記膨出部を膨出させている膨出空間に内蔵されて前記膨出部の形状を保持する収縮バッグと、前記ドアトリムの車室外側であって前記膨出部の下方に設けられ、流入される前記流体の体積に応じて変形する膨張バッグと、前記側突時に、前記収縮バッグに封入された前記流体を流出させるとともに前記収縮バッグの内部と前記膨張バッグの内部とが遮断された遮断状態から前記収縮バッグの内部と前記膨張バッグの内部とが連通された連通状態とに切換える開閉部と、を備え、前記膨張バッグは、前記側突時に、前記ドアトリムを車室内側へ押し出して膨張変形することを特徴としている。すなわち、前記収縮バッグは前記膨出部の形状を保持するように機能し、また、前記膨出部は、収縮バッグの収縮変形に応じて車室外側へと変形する。
【0011】
)前記開閉部は、開閉弁を有することが好ましい。
)また、前記開閉部は、前記流体を圧送するポンプを有することが好ましい。
【0012】
)前記膨出部は、溝又は蛇腹を有することが好ましい。敷衍して言えば、前記膨出部には、その構造を弱化させ、変形し易くする弱化部が設けられていることが好ましい。
)前記膨出部は、アームレストであることが好ましい。
)前記膨出部における前記膨出空間を囲繞する囲繞面と前記収縮バッグの車室内側の外面とが連結部材を介して連結されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の乗員保護装置によれば、車両の側突時には、開閉部が収縮バッグに封入された流体を流出させるため、変形自在に設けられた収縮バッグは流体の体積の減少に応じて収縮するように変形する。この収縮バッグの収縮変形により、その形状を収縮バッグに保持されている膨出部も収縮するように、即ち、車室外側に引き込まれるように変形する。よって、ドアトリムと乗員との間の空間では、膨出部の車室内側への膨出により狭められていた領域(以下、狭隘部という)が、膨出部の車室外側への変形により拡げられる。同時に、サイドエアバッグがドアトリムと乗員との間の空間に展開される。サイドエアバッグの展開を阻害する狭隘部が拡げられるため、サイドエアバッグを充分に展開することができる。したがって、側突時に乗員の胴部を適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る乗員保護装置を模式的に示す側面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る乗員保護装置を模式的に示す断面図であり、(a)は側突時よりも前(通常使用時)のものを示し、(b)及び(c)は側突時以後のものを示す。つまり、図2では、(a),(b),(c)の順で時系列に沿って乗員保護装置を示している。
図3】本発明の第1実施形態に係る乗員保護装置の要部の一部を切断して模式的に示す拡大斜視図であり、(a)には通常使用時のものを示し、(b)には側突後のものを示す。
図4】本発明の第1実施形態に係る乗員保護装置が適用されるサイドドアの一部を破断して、車室内側から視た斜視図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る乗員保護装置を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明に係る実施形態について説明する。本発明の乗員保護装置は、自動車を含む車両の乗員を保護するためのものであり、車両に適用される。本実施形態では、車両の進行方向を前方とし、この逆方向を後方とし、重力の方向を下方とし、この逆方向を上方とし、これらの前後方向及び上下方向の何れの方向にも直交する方向を車幅方向とする。また、車室の中心に向かう側を車室内側とし、その逆を車室外側として説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
[構成]
本実施形態の乗員保護装置は、乗員が着座するシートに収容されたサイドエアバッグと、このサイドエアバッグを収容するシートに隣接するサイドドアに内蔵されたバッグ類とを有して構成されている。なお、乗員が着座するシートとしては、運転席や助手席や後部座席等が挙げられる。かかる場合、これらの座席にそれぞれ隣接しているサイドドアにバッグ類が内蔵されている。
【0017】
図4に示すように、車両のサイドドア5には、乗員保護装置のバッグ類1(破線で示す)が内蔵されている。このサイドドア5は、車室外側から順に、アウターパネル6とインナーパネル7とドアトリム8とを有し、それぞれが相互に間隔を空けて配置される。したがって、アウターパネル6とインナーパネル7との間には空間が形成され、インナーパネル7とドアトリム8との間にも空間が形成され、これらのアウターパネル6とインナーパネル7とドアトリム8とが層状に設けられている。これらのパネル6,7は、例えば鋼板をプレス加工して形成されたものであり、アウターパネル6は車幅方向において最も外側に位置する。また、ドアトリム8は、例えば樹脂材料がインジェクション成形(射出成形)により成形されたものである。このドアトリム8は、アームレスト(膨出部)80を含む凹凸が一体に成形された成形ドアトリムである。
【0018】
ドアトリム8に設けられるものとしては、サイドドア5を開閉するハンドルやウインドガラスを昇降する操作スイッチ(何れも図示略)といった種々の部材を挙げることができるが、ここでは、アームレスト80とドアポケット81とに着目してこれらの構成を説明する。
アームレスト80は、ドアトリム8において車室内側に向けて膨出するように突設され、乗員の肘掛として機能するものである。このアームレスト80は、ドアトリム8において上下方向中間部に前後方向に沿って延在して設けられている。
【0019】
また、ドアポケット81は小物を収納するための収納部であり、アームレスト80の下方に設けられ、上部に開口を有する箱状に形成される。このドアポケット81は、ドアトリム8の下部に前後方向に沿って延在して設けられている。
本実施形態の乗員保護装置の一部を構成するバッグ類1は、上記のアームレスト80やドアポケット81が設けられたドアトリム8とその車室外側のインナーパネル7との間に設けられており、サイドドア5に内蔵されている。このバッグ類1は、収縮バッグ10と膨張バッグ20とこれらのバッグ10,20の間に介装された開閉部30とを有して構成されている。
【0020】
図1及び図2(a)に示すように、収縮バッグ10は、その内部に流体Fを封入し、変形自在に構成された袋状のものである。この収縮バッグ10は、角を丸められた直方体形状をなしており、側面視(図1参照)で長方形の長辺が車両の前後方向に沿った形状を有し、アームレスト80を車室内側に膨出させている膨出空間Sに設けられている。つまり、収縮バッグ10は、サイドドア5においてアームレスト80を膨出させている膨出空間Sに内蔵されている。なお、図1では、収縮バッグ10の前後方向の長さが乗員Pの膝と背中との距離と略同じに形成されたものを例示しているが、収縮バッグ10の前後方向の長さはこれに限られず、乗員Pの膝と背中との距離よりも長くてもよいし短くてもよい。
【0021】
この収縮バッグ10に封入されている流体Fは衝撃吸収作用を有しており、窒素やヘリウムといった不燃性のガス(気体)や、シリコンなどの非圧縮性或いは不燃性の液体を用いることができる。
この収縮バッグ10はアームレスト80に内蔵されて設けられているため、この収縮バッグ10の上下方向位置(高さ)は、アームレスト80の高さとほぼ同様である。この上下方向位置は、乗員Pの腹部の上下方向位置に対応している。つまり、収縮バッグ10は、アームレスト80を介して乗員Pの腹部と対向する位置に設けられている。ここでいう「対向」とは、車幅方向に互いに向き合うことを意味する。
【0022】
膨張バッグ20は、折畳まれた袋状のものである。この膨張バッグ20は、角を丸められた直方体形状をなしており、側面視(図1参照)で略正方形の形状を有し、上記の収縮バッグ10の下方に設けられている。また、膨張バッグ20の上下方向位置は、ドアポケット81を介して乗員Pの腰部と対向する位置に設けられている。
開閉部30は、収縮バッグ10の内部と膨張バッグ20の内部とが遮断された遮断状態と、これらのバッグ10,20の内部を連通させる連通状態とを切換えるものである。この開閉部30は、連通路30cと開閉弁30vとを有して構成されている。
【0023】
連通路30cは、可撓性を有する中空管状の部材である。この連通路30cは、その一端(上端)が収縮バッグ10に接続され、その他端(下端)が膨張バッグ20に接続されている。また、開閉弁30vは、上記の連通路30cに介装され、開放及び閉鎖して連通路30cの連通及び遮断を切換えるものである。つまり、開閉弁30vが開放されれば連通状態になり、逆に、開閉弁30vが閉鎖されれば遮断状態となる。なお、通常使用時には、開閉弁30vが閉鎖された遮断状態である。このため、流体Fは流出することなく収縮バッグ10に封入された状態が保持されている。
【0024】
また、車室内には、乗員Pが着座するシート4が設けられている。このシート4は、背凭れ部(シートバッグ)4aと座部(シートクッション)4bとを有して構成されている。この背凭れ部4aには、サイドエアバッグ装置(一点鎖線で示す)40が収容されている。
このサイドエアバッグ装置40は、側突時に備えて配備されたものであり、詳細は後述するが、側突時にドアトリム8と乗員Pとの間の空間に展開される袋状のサイドエアバッグ40a(一点鎖線で示す)やこのサイドエアバッグ40a内部にガスを供給するインフレータ(図示略)を有している。このサイドエアバッグ40aは、折畳まれた状態でサイドエアバッグ装置40に格納されている。なお、サイドエアバッグ40aは、乗員Pの胸部,腹部及び腰部の上下方向領域に亘って展開される。
【0025】
以下、アームレスト80及び収縮バッグ10の構成の詳細を説明する。
図3(a)に示すように、アームレスト80(二点鎖線で示す)は、上側から順に、上面部80aと立面部80bと斜面部80cとを有して構成されている。上面部80aは、車室外側から車室内側に突設するように設けられ、乗員P(図1等参照)の肘が上方から置かれる部分である。また、立面部80bは、上下方向に沿って設けられ、乗員P(図1等参照)の腹部に対向する部分である。また、斜面部80cは、上下方向に対して傾斜して設けられ、立面部80bの下部から車室外側に引き込まれるように形成された部分である。
【0026】
上面部80a及び斜面部80cのそれぞれには、溝部Gが前後方向に沿って形成されている。溝部Gは、各面部80a,80cの一部を薄肉化したものであるため、その構造を弱化させ、折り曲げなどの変形をし易くする弱化部として機能する。なお、図3(a)では、溝部Gが各面部80a,80cの車幅方向中央部に一条形成されたもの示すが、これに限られず、溝部Gは、任意の箇所に形成することができ、二条以上の複数条形成されていてもよい。
【0027】
また、アームレスト80における面部80a,80b,80cの車室外側の面(以下、「囲繞面」という)DFは、それぞれ膨出空間Sの三方を囲んでいる。なお、図3(a)では立面部80bの囲繞面に符号DFを付している。
収縮バッグ10は、車室内側端部に設けられた内面部10aと、車室外側端部に設けられた外面部10cと、これらの面部10a,10cの上部及び下部のそれぞれを接続している蛇腹部10bとを有して構成されている。これらの面部10a,10c及び蛇腹部10bにより囲繞される空間に流体Fが封入されている。
【0028】
内面部10aは、その車室内側端部の外面OFがアームレスト80における立面部80bの囲繞面DFと接着材や両面テープなどの連結部材により接合されている。すなわち、内面部10aの外面OFと立面部80bの囲繞面DFとは、互いに接合される接合面であり、連結部材を介して連結されている。
【0029】
また、外面部10cは、その車室外側端部の外面BFがインナーパネル7(二点鎖線で示す)の車室内側の面IFに連結されている。この連結は、上記の内面部10aと立面部80bの連結と同様に、接着材や両面テープなどの連結部材を用いて行うことができる。
これらの面部10a,10cの間に設けられる蛇腹部10bは、収縮バッグ10の上面及び下面を形成しており、車幅方向に収縮バッグ10を伸縮自在にしている部位である。この蛇腹部10bには、ビニールやゴムなどの樹脂材料(天然樹脂や合成樹脂)を用いることができる。この図3(a)には、通常使用時を示しており、収縮バッグ10の蛇腹部10bが伸長した状態のものを示している。このように伸張状態の収縮バッグ10では、その蛇腹部10bが伸長するように、流体Fが満杯に封入されている。一方、詳細は後述するが、側突後には、収縮バッグ10はその蛇腹部10bが収縮した状態になる。このような収縮状態の収縮バッグ10では、その流体Fの封入量が、伸張状態の収縮バッグ10における流体Fの封入量よりも少ない。
【0030】
ところで、アームレスト80の車室内側への膨出(形状)は、ドアトリム8と一体に成形されることで保持されているが、これに加えて、収縮バッグ10によっても保持されている。その理由は、アームレスト80の上面部80a及び斜面部80cには溝部Gが形成されているため、アームレスト80は変形し易く例えば一般的なアームレストよりも強度が低下されたものとなっているからである。このアームレスト80の強度低下分を助勢すべく、収縮バッグ10はアームレスト80の膨出を保持している。
【0031】
詳細には、流体Fが満杯に封入され伸張状態の収縮バッグ10は、その形状が固定されており、その一端(車室外側端)に設けられた外面部10cがインナーパネル7に連結され、その他端(車室内側端)に設けられた内面部10aがアームレスト80の立面部80bに連結されているため、アームレスト80は、その立面部80bを介して収縮バッグ10に支持されている。例えば、立面部80bを車室内から車室外に向けて押圧する力が作用した場合、この立面部80bに作用する押圧力は、その形状が固定された収縮バッグ10を介してインナーパネル7に伝達されるが、この伝達力に応じた反力がインナーパネル7から収縮バッグ10を介して立面部80bに作用し、押圧力と反力とが略バランスする。したがって、アームレスト80の変形を抑制するように収縮バッグ10はアームレスト80の強度を助勢している。なお、上面部80aを下方に押圧する力が作用した場合も同様に、アームレスト80の強度は収縮バッグ10により助勢される。
【0032】
次に、収縮バッグ10が変形(体積変化)する構成について説明する。
収縮バッグ10の内部に封入された流体Fが流出すると、図3(b)に示すように、収縮バッグ10は車幅方向の長さ(厚み)を短くするように収縮する。つまり、収縮バッグ10は、その内部に封入している流体Fの体積に応じて収縮変形するように構成されている。なお、図3(b)には、側突後の収縮バッグ10及びこの周辺構造を示しており、開閉弁30v(図1等参照)が開放されて流体Fが流出したものを示す。
【0033】
上記のように、収縮バッグ10は、一端(車室外側端)がインナーパネル7に連結され、他端(車室内側端)がアームレスト80に連結されている。このため、収縮バッグ10の収縮変形に応じて、アームレスト80は変形する。また、アームレスト80にはその構造を弱化させ変形し易くしている溝部Gが形成されている。よって、アームレスト80は、収縮バッグ10に連動してスムーズに変形する。
つまり、収縮バッグ10は厚みを小さくするように収縮変形するのに連動して、溝部Gにより変形し易くなっているアームレスト80は、車室外側に引き込まれるように変形する。
【0034】
このように、収縮バッグ10は封入している流体Fの体積が減少するに従って収縮変形する。一方、膨張バッグ20もその内部の流体Fの体積に応じて変形する。つまり、詳細は図示しないが、膨張バッグ20(図1等参照)も、車幅方向の長さを伸縮自在にしている蛇腹部を有し、封入している流体の体積が増加するにしたがって膨張変形するように構成されている。具体的には、開閉弁30v(図1等参照)が開放されることにより両バッグ10,20の内部が連通されると、膨張バッグ20に流体Fが流入される。そして、折畳まれた膨張バッグ20に流入される流体Fの体積に応じて車幅方向の長さを長くし、ドアトリム8を車室内側に押し出すように膨張変形する。
【0035】
図1及び図2(a)に示す開閉弁30vとサイドエアバッグ装置40とには、それぞれ車両ECU(図示略)が接続されている。この車両ECUは、車両の側突を検知又は予知(以下、これらの検知又は予知をまとめて単に「検知」という)すると、乗員保護装置作動の要否を判定する。乗員保護装置を作動させる場合、車両ECUは、開閉弁30vを開放させる指示信号を伝達し、また、サイドエアバッグ装置40にそのサイドエアバッグ40aを展開させる指示信号を伝達する。例えば、車両ECUには車両の加速度を検出する加速度センサ(図示略)が接続され、この加速度センサにより検出された加速度が、所定の加速度以上である場合に、車両ECUが開閉弁30v及びサイドエアバッグ装置40のそれぞれに指示信号を伝達する。
【0036】
なお、車両ECUは、開閉弁30vを開放するタイミングと、サイドエアバッグ装置40のサイドエアバッグ40aを展開させるタイミングとを制御してもよい。例えば、開閉弁30vの開放により両バッグ10,20が連通して流体Fの移動(収縮バッグ10からの流体Fの流出及び膨張バッグ20への流体Fの流入)が完了する時点とサイドエアバッグ40aの展開が完了する時点とが一致するように、予め実験的又は経験的に設定された各指示信号の伝達タイミングが記憶され、かかる伝達タイミングに応じて各指示信号を伝達してもよい。
【0037】
[作用及び効果]
第1実施形態の乗員保護装置は、上述のように構成されているため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
車両への側突時には、図2(a)〜(c)に示すように、本実施形態の乗員保護装置は作用する。なお、図2(a)は通常使用時のものを示しており、この図2(a)に示す状態から図2(b)そして図2(c)に示す状態に移行する。また、ここでは側突として他の車両が自車の側方に衝突した場合を例示して説明する。この側突時には、サイドドア5を車室内に侵入させるように衝撃が作用している。
【0038】
側突時には、車両ECUが車両への側突を検知し、開閉弁30vを開放させる指示信号を伝達し、また、サイドエアバッグ装置40にそのサイドエアバッグ40aを展開させる指示信号を伝達する。
つまり、図2(b)に示すように、開閉弁30vの開放により両バッグ10,20の内部が連通し、収縮バッグ10から流体Fが流出するとともに膨張バッグ20に流体Fが流入する。よって、流体Fの流出により収縮バッグ10が収縮変形するとともに、これに連動してアームレスト80が車室外側に向けて引き込まれるように変形する。一方、膨張バッグ20は流体Fの流入により膨張変形する。同時に、サイドエアバッグ装置40のサイドエアバッグ40aは、ドアトリム8と乗員Pとの間の空間への展開を開始する。
【0039】
そして、図2(c)に示すように、流体Fの移動が完了することにより収縮バッグ10の収縮変形が完了するとともに膨張バッグ20の膨張変形が完了する。また、ドアトリム8と乗員Pの胴部との間へのサイドエアバッグ40aの展開も完了する。なお、図2(c)では、変形完了後における両バッグ10,20の厚みが略等しいものを例示している。
【0040】
したがって、本実施形態の乗員保護装置によれば、車両の側突時には、開閉部30の開閉弁30vが開放され、収縮バッグ10から流体Fが流出するため、変形自在に設けられた収縮バッグ10が流体Fの体積の減少に応じて収縮するように変形する。この収縮バッグ10の収縮変形により、その形状を収縮バッグ10に保持されているアームレスト80も収縮するよう変形する。具体的には、アームレスト80における膨出空間Sを区画する囲繞面DFと収縮バッグ10の車室内側端部の外面OFとが連結部材を介して連結されているため、側突時の収縮バッグ10の収縮変形によりアームレスト80の囲繞面DFが車室外側に引っ張られ、アームレスト80は車室外側に引き込まれるように変形する。よって、ドアトリム8と乗員Pとの間の空間では、アームレスト80の車室内側への膨出により狭められていた領域(以下、狭隘部という)が、アームレスト80の車室外側への変形により拡げられる、或いは、狭められることを抑制する。同時に、サイドエアバッグ40aがドアトリム8と乗員Pの胴部との間の空間に展開される。サイドエアバッグ40aの展開を阻害する狭隘部が拡げられるように変化するため、サイドエアバッグ40aを充分に展開することができる。これにより、側突時に乗員Pの胴部を適切に保護することができる。
【0041】
一方、通常使用時には、アームレスト80は車室内側へ膨出された状態が、収縮バッグ10にその強度を助勢されて保持されているため、アームレスト80の強度の低下を招くことがなく、通常使用時のユーティリティを低下させることがない。
【0042】
また、側突時には、開閉部30の開閉弁30vが閉鎖された状態から開放された状態に切換えられることにより、収縮バッグ10の内部と膨張バッグ20の内部とが遮断された遮断状態からこれらのバッグ10,20の内部が連通された連通状態に切換えられるため、収縮バッグ10に封入された流体Fが膨張バッグ20に流入する。よって、収縮バッグ10の収縮変形と連動して膨張バッグ20が膨張変形する。ドアトリム8の車室外側に設けられた膨張バッグ20は、ドアトリム8を車室内側に押し出すように膨張変形する。
【0043】
一方、通常使用時には、開閉部30の開閉弁30vが閉鎖されており、収縮バッグ10の内部と膨張バッグ20の内部とが遮断された遮断状態にされているため、ドアトリム8のアームレスト80は突設された状態を保持しており、アームレスト80以外のドアトリム8の形状も保持されている。
これらより、通常使用時におけるドアトリム8の凹凸と側突時におけるドアトリム8の凹凸とを切換えることができる。
【0044】
また、膨張バッグ20がアームレスト80に内蔵された収縮バッグ10の下方に設けられているため、側突時には、膨張バッグ20の膨張変形に伴いドアトリム8におけるアームレスト80の下方が車室内側に押し出されるように変形する。これにより、アームレスト80と、この下方に形成されていたいわば凹部との段差を速やかに小さくして、狭隘部を速やかに拡げることができる。
【0045】
また、開閉部30は開閉弁30vを有するため、この弁30vの開閉により両バッグ10,20内部にかかる遮断状態及び連通状態を切換えることができる。また、開閉弁30vには複雑な構造を要せず、乗員保護装置を簡素な構成にすることができる。
【0046】
また、アームレスト80には溝部Gが形成されているため、アームレスト80は変形し易い。したがって、側突時に、アームレスト80を速やかに変形させることができる。これにより、ドアトリム8と乗員Pとの間の空間の狭隘部を拡げる時間を短縮することができ、サイドエアバッグ40aの展開タイミングの調節幅を広げることができる。
【0047】
また、側突時には、アウターパネル6及びインナーパネル7と乗員Pの胴部との間には、衝撃吸収作用を有する流体Fとガスが供給されたサイドエアバッグ40aとが介装された状態になるため、側突によって乗員Pに加わるエネルギーをサイドエアバッグ40aに加えて流体Fに吸収させることができる。これにより、乗員Pの胴部をさらに確実に保護することができる。
【0048】
〔第2実施形態〕
次に、図面を用いて本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態に係る乗員保護装置は、側突後のサイドエアバッグの展開範囲と収縮バッグ及び膨張バッグの構成とが異なる。なお、ここで説明する点を除いては第1実施形態の乗員保護装置と同様の構成になっており、これらについては同様の符号を付し、各部の説明を省略する。また、本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、第1実施形態の構成に適宜組み合わせてもよい。
【0049】
図5に示す側突後の乗員保護装置では、展開されたサイドエアバッグ40a′は、乗員Pの胸部及び腹部の上下方向領域に対応する範囲に亘って展開されている。つまり、本実施形態のサイドエアバッグ40a′は、通常使用時には、乗員Pの胸部及び腹部の上下方向領域に対応する範囲に亘って展開可能な大きさ袋状のものがサイドエアバッグ装置40(図1等参照)に格納されている。したがって、このサイドエアバッグ40a′は上述のサイドエアバッグ40aよりも小さい。
また、側突後、つまり、流体Fの移動完了後には、収縮バッグ10′の厚みよりも膨張バッグ20′の厚みの方が大きい。
【0050】
本実施形態の各バッグ10′,20′は、その内部が外部と連通した状態では、自ずから折畳み状態となるように付勢されている。これらの収縮バッグ10′と膨張バッグ20′とでは、各付勢力の大きさが異なる点以外は同様に構成されているため、ここでは収縮バッグ10′に着目してその構成を説明する。
【0051】
収縮バッグ10′は、その車幅方向の中間部10b′がビニール膜やゴム膜などの弾性部材から構成されている。この収縮バッグ10′に流体Fが封入された状態では、中間部10b′を構成している弾性部材が伸張した状態であり、この弾性部材による弾性力が流体Fを車室外側からと車室内側からとで圧縮するように作用する。つまり、収縮バッグ10′では、流体Fを押し出すように弾性力が作用している。この弾性力は、中間部10b′を構成している弾性部材の弾性係数K1に応じた大きさとなる。なお、収縮バッグ10′が折畳まれた状態では、中間部10b′を構成している弾性部材が収縮した状態であり、この弾性部材による弾性力は小さい或いは作用していない。
【0052】
また、本実施形態の収縮バッグ10′は、アームレスト80と連結されていない。つまり、収縮バッグ10′の車室内側の部位はアームレスト80に接合されていない。このため、アームレスト80は、収縮バッグ10′に引っ張られるような力が作用することはない。
このアームレスト80は、展開中のサイドエアバッグ40a′により車室外側へ押されて変形する。つまり、側突時には、収縮バッグ10′が収縮変形するとともに、アームレスト80が車室外側へ引き込まれる方向に変形する。よって、アームレスト80は、収縮バッグ10′の収縮変形に応じて変形するものといえる。
【0053】
膨張バッグ20′は、上記の収縮バッグ10′と同様に、その車幅方向の中間部20b′がビニール膜やゴム膜などの弾性部材から構成されている。この中間部20b′を構成している弾性部材の弾性係数K2は、上記の収縮バッグ10′の弾性係数K1よりも小さい(K1>K2)。
このように収縮バッグ10′の弾性係数K1の方が膨張バッグ20′の弾性係数K2よりも大きいため、両バッグ10′,20′内部の流体Fに作用する圧力がつり合った状態、すなわち、開閉弁30vが開放している側突後には、収縮バッグ10′の厚みよりも膨張バッグ20′の厚みの方が大きくなるように構成されている。
【0054】
したがって、本実施形態の乗員保護装置によれば、側突時には、開閉弁30vが開放して収縮バッグ10′及び膨張バッグ20′の内部が連通し、また、サイドエアバッグ40a′の展開が開始される。そして、収縮バッグ10′から流体Fが流出することにより収縮バッグ10′が収縮変形し、膨出空間S(図2等参照)内では収縮バッグ10′の占有体積が減少する。つまり、アームレスト80の中空度合が上昇する。したがって、収縮バッグ10′の収縮変形により、アームレスト80の強度が低下する。同時に、膨張バッグ20′に流体が流入して膨張バッグ20′が膨張変形し、ドアトリム8の下部を車室内側へ押し出すように変形する。
【0055】
アームレスト80の強度が低下されると同時に、サイドエアバッグ40a′がドアトリム8と乗員Pとの間の空間に展開されるため、このアームレスト80における上面部80aや立面部80b(何れも図3参照)などの車室内側の面に展開中のサイドエアバッグ40aの外面が接触し、アームレスト80はサイドエアバッグ40aが展開する空間を形成するように、即ち、車室外側に引き込まれる方向に変形する。この際、アームレスト80は強度が低下しているため、サイドエアバッグ40a′がアームレスト80を変形させるのに要する力は小さいものとなる。このためサイドエアバッグ40a′の展開を阻害しない。そして、サイドエアバッグ40a′が乗員Pの胸部及び腹部の上下方向領域に対応する範囲に亘って充分に展開される。
【0056】
また、乗員Pの腰部には、衝撃吸収作用を有する流体Fが流入した膨張バッグ20′がドアトリム8を介して当接される。
したがって、乗員Pの胸部及び腹部はサイドエアバッグ40a′により適切に保護され、乗員Pの腰部は膨張バッグ20′内部の流体Fにより適切に保護される。よって、乗員Pの胴部を適切に保護することができる。
【0057】
なお、収縮バッグ10′の弾性係数K1と膨張バッグ20′の弾性係数K2とを適宜設定すれば、側突時におけるアームレスト80の引き込み度合とこの下方のドアトリム8の押し出し度合とを調整することができる。延いては、側突後のドアトリム8の凹凸形状を自在に設定することができる。
【0058】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の実施形態では、乗員保護装置が膨張バッグ20を有するものを示したが、膨張バッグ20は無くてもよい。この場合、側突時には、収縮バッグ10に封入された流体Fが流出され、これに伴って収縮バッグ10が収縮変形する。
【0059】
また、上述の実施形態では、連通路30cに開閉弁30vが介装されたものを示したが、これに替えて又は加えて、ポンプが介装されていてもよい。つまり、開閉部30がポンプを有していてもよい。このポンプは、側突時に作動して流体Fを圧送する。この場合、側突時に収縮バッグ10から膨張バッグ20へと流体Fを速やかに流出させることができる。これにより、ドアトリム8のアームレスト80を速やかに変形させることができる。また、サイドエアバッグ40aの展開タイミングの調節幅を広げることができる。
【0060】
また、上述の実施形態では、アームレスト80の上面部80a及び斜面部80cに溝部Gが形成されたものを示したが、これに替えて、上面部80a及び斜面部80cが蛇腹を有していてもよい。この場合、アームレスト80単体では車室内側へ膨出させた状態を保持する強度が低下するため、例えば流体の封入圧を高めることで収縮バッグ10による強度の助勢を大きくする。一方、単体での強度が低下したアームレスト80は、さらに変形し易くなるため、側突時においてアームレスト80はさらに速やかに変形することができ、サイドエアバッグ40aの展開タイミングの調節幅をさらに広げることができる。
さらに、ドアトリム8の下部、即ち膨張バッグ20に押し出される部位が、上記の溝部や蛇腹を有していてもよい。この場合、ドアトリム8の下部は変形し易くなり、膨張バッグ20の膨張変形によりドアトリム8の下部は速やかに変形することができる。
【0061】
また、アームレスト80を布や皮(以下、「布等」という)で形成してもよい。つまり、ドアトリム8の一部を布等で形成することによりアームレスト80を設けてもよい。この場合、布等はアームレスト80を膨出させる構造を保持する強度を有しておらず、アームレスト80単体ではその車室内側への膨出を保持する強度がない。このため、アームレスト80の車室内側への膨出は、流体を満杯に封入しているためその形状が固定される収縮バッグ10により保持される。一方、布等のアームレスト80は、極めて変形し易いため、側突時においてアームレスト80は極めて速やかに変形することができ、サイドエアバッグ40aの展開タイミングの調節幅をさらに広げることができる。
【0062】
また、上述の実施形態では、膨張バッグ20が収縮バッグ10の下方に設けられたものを示したが、これに限られず、膨張バッグ20は、インナーパネル7とドアトリム8との間であれば任意の箇所に配置することができる。さらに、収縮バッグ10も、アームレスト80を膨出している膨出空間Sに限られず、アームレスト80以外の車室内側に向けて膨出するように突設された箇所に配置することができる。したがって、通常使用時に膨出させるとともに側突時に凹ませたい箇所に収縮バッグ10を設け、逆に、通常使用時に凹ませるとともに側突時に膨出させたい箇所に膨張バッグ20を設ければ、ドアトリム8の凹凸を状況に応じて自在に切換えることができる。
【符号の説明】
【0063】
5 サイドドア
8 ドアトリム
10 収縮バッグ
20 膨張バッグ
30 開閉部
30v 開閉弁
40 サイドエアバッグ装置
40a サイドエアバッグ
80 アームレスト
F 流体
G 溝部
S 膨出空間
P 乗員
DF 囲繞面,
OF 収縮バッグ10の車室内側の外面
図1
図2
図3
図4
図5