(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予め設定された基準回転方向と反対方向に前記指針を回転移動させた場合には、当該基準回転方向への回転に対して前記輪列機構の噛み合せに係る隙間がないように前記輪列機構の前記複数の歯車の回転位置を調整する輪列機構調整手段を備え、
前記隙間判別手段は、前記早送りの方向が前記反対方向である場合には、前記隙間が存在すると判別する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアナログ電子時計。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態のアナログ電子時計の内部構成を示すブロック図である。
このアナログ電子時計1は、CPU31(Central Processing Unit)と、ROM32(Read Only Memory)と、RAM33(Random Access Memory)と、発振回路34と、分周回路35と、時刻計数回路36と、電源部37と、操作部38と、ピエゾ素子39と、ピエゾ素子のドライバ40と、モータ駆動回路41と、時針51及び分針52と、輪列機構61、62と、ステッピングモータ71、72などを備えている。
【0013】
CPU31は、アナログ電子時計1の全体動作を制御統括し、各種の演算処理を行う。ROM32には、制御プログラムや初期設定データが格納されている。初期設定データには、時針51及び分針52のバックラッシュに相当する駆動ステップ数を示す規定ステップ数32aが予め設定記憶されている。規定ステップ数は、各製品で指針ごとに個別に設定される。ここでは、例えば、時針51の輪列機構61に係る規定ステップ数が「20」であり、分針52の輪列機構62に係る規定ステップ数が「10」である。なお、経年変化により、規定ステップ数32aの値が変化する場合を考慮して、ROM32の代わりに書き換え可能な不揮発性メモリを用いたり、或いは、アナログ電子時計1が別個に不揮発性メモリを備えたりすることとしてもよい。RAM33は、CPU31に作業用メモリ空間を提供し、一時データを記憶する揮発性メモリである。
【0014】
発振回路34は、一定の周波数信号を生成して出力する。この発振回路34としては、特に限られないが、水晶発振回路が用いられる。分周回路35は、発振回路34から入力された信号をCPU31及び時刻計数回路36が使用する各種周波数の信号に分周して出力する。時刻計数回路36は、分周回路35から入力された所定の周波数信号の入力回数を計数し、現在時刻の初期値に加算していくことにより現在時刻を計数する。
【0015】
電源部37は、CPU31及びアナログ電子時計1の各部に所定の電圧で必要な電力を供給する。この電源部37の電源は、長期間継続的に電力供給が可能なものであり、例えば、ソーラー電池と二次電池とが組み合わされて用いられる。
【0016】
操作部38は、ユーザによる入力操作を受け付け、電気信号に変換してCPU31に出力する。この操作部38は、押しボタンスイッチやりゅうずなどを有し、ユーザがこれらの押しボタンスイッチを押下したり、りゅうずを回転させたりすることで、アナログ電子時計1の各機能の切り替え、動作状態の変更、及び、設定入力に係る指針位置の変更などの動作が行われる。
【0017】
ピエゾ素子(圧電素子、PZT)39は、ドライバ40から供給される電圧信号に応じてブザー音を発生する。このブザー音は、アラーム時刻の報知やタイマ設定時間の経過の報知などに用いられる。
【0018】
モータ駆動回路41は、CPU31から入力される制御信号に基づき、ステッピングモータ71、72のロータをそれぞれ回転駆動させるための駆動電圧波形を出力する。
【0019】
ステッピングモータ72は、輪列機構62を介して分針52を回転動作させる。分針52は、ステッピングモータ72が1ステップ駆動されると1度回転し、360ステップの駆動で一周する。従って、分針52は、時刻表示状態では、10秒に1回1度ずつ回転していくことで、60分で一周する。ステッピングモータ71は、輪列機構61を介して時針51を回転動作させる。時針51は、ステッピングモータ71が1ステップ駆動されると1度回転し、360ステップの駆動で一周する。従って、時針51は、時刻表示状態では、2分間に1回1度ずつ回転していくことで、12時間で一周する。CPU31は、ステッピングモータ72を駆動させる制御信号をモータ駆動回路41に出力すると共に、この制御信号の出力が12回行われるごとに、ステッピングモータ71を駆動させる制御信号をモータ駆動回路41に出力することで、表示時刻の修正や早送りの際に時針51と分針52を見た目上連動して回転移動させることが可能となっている。或いは、10秒周期で入力される制御信号に基づき、モータ駆動回路41がステッピングモータ72に毎回駆動パルスを出力し、ステッピングモータ71には12回に1回駆動パルスを出力することが可能な構成であっても良い。
【0020】
次に、本実施形態のアナログ電子時計1における指針早送り動作について説明する。
このアナログ電子時計1では、操作部38のりゅうずが所定時間内に設定角度以上回転された場合に、継続的な指針の早送り状態に移行し、早送り中に、更に同方向に設定角度以上の回転が検出されると、早送り速度が上昇する。本実施形態のアナログ電子時計1では、モータ駆動回路41から出力される駆動電圧波形により、正転方向及び逆転方向にそれぞれ32pps(Pulse per second)、64pps、96pps、128ppsの4段階の速度で指針を早送り移動させることができる。一方、早送り中に、反対方向にりゅうずが回転されると、早送りが停止される。
【0021】
ここで、通常の状態では、時針51及び分針52の輪列機構61、62は、常に正転方向にバックラッシュに係る隙間が生じないように位置寄せがなされた状態で維持されている。従って、逆転方向に指針を移動させる場合には、当該隙間に対応する規定ステップ数ずつ輪列機構61、62がそれぞれ回転された後に時針51及び分針52が動き出すことになる。
【0022】
図2は、アナログ電子時計1において、一本の指針を逆転方向に早送りさせる場合の動作状態の変化について説明する図である。
この場合に早送りされる一本の指針は、時針51又は分針52の何れであってもよく、何れの場合であっても同一の動作がなされる。何れの指針を回転させるかは、実行中の機能や、押しボタンスイッチの操作などにより選択される。
【0023】
先ず、りゅうずが所定の時間内に逆転方向に対応する向きに所定角度以上回転したことが検知されると、逆転方向への指針の早送りが開始される。このとき、先ず、バックラッシュの隙間を解消する動作が最高速の128ppsで行われる(期間(s))。
【0024】
輪列機構が規定ステップ数回転すると、次いで、指針を32pps(速度レベル1)で1ステップずつ逆転させていく(期間(t))。速度レベル1での回転動作中に、りゅうずが同一方向に更に回転されると、指針の移動速度が64pps(速度レベル2)に変更になる(期間(u))。同様に、速度レベル2での回転動作中にりゅうずが同一方向に回転されると、指針の移動速度が96pps(速度レベル3)に変更になり(期間(v))、速度レベル3での回転動作中にりゅうずが同一方向に回転されると、指針の移動速度が128pps(速度レベル4)に変更になる(期間(w))。
【0025】
一方、指針の早送り移動中に、りゅうずが早送りに係る方向とは反対向きに回転されたことが検出されると、指針の早送りが停止される。
【0026】
図3は、本実施形態のアナログ電子時計1において、CPU31が実行する指針早送り処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0027】
この指針早送り処理は、ユーザのりゅうずや押しボタンスイッチの操作による手動早送りの際に呼び出されて実行される処理である。
指針早送り処理が起動されると、先ず、CPU31は、早送りの方向が逆転方向であるか否かを判別する(ステップS11)。逆転方向ではない(正転方向である)と判別された場合には(ステップS11で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS17に移行する。指針の早送り方向が逆転方向であると判別された場合には(ステップS11で“YES”)、CPU31は、規定ステップ数32aのうち、早送りされる指針についての値X0を取得して、変数Xに代入する(ステップS12)。また、CPU31は、指針の早送り速度Vを128ppsに設定する(ステップS13)。
【0028】
CPU31は、設定された早送り速度で指針を1ステップ逆転させるための制御信号をモータ駆動回路41に出力する(ステップS14)。それから、CPU31は、変数Xから1を減算し(ステップS15)、変数Xが「0」となったか否かを判別する(ステップS16)。
【0029】
変数Xが「0」ではないと判別された場合には(ステップS16で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS13に戻り、CPU31は、ステップS13〜S16の処理を繰り返してバックラッシュの隙間を解消する処理を継続する。変数Xが「0」であると判別された場合には(ステップS16で“YES”)、CPU31は、早送り速度Vを32ppsに設定する(ステップS17)。そして、CPU31は、この早送り速度Vで指針を1ステップ運針させる(ステップS18)。
【0030】
CPU31は、早送りの終了に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS19)。検出されたと判別された場合には(ステップS19で“YES”)、CPU31は、指針早送り処理を終了する。検出されていないと判別された場合には(ステップS19で“NO”)、CPU31は、続いて、早送り速度の上昇に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS20)。検出されていないと判別された場合には(ステップS20で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS17に戻り、CPU31は、32ppsでの早送りを継続する。
【0031】
早送り速度の上昇に係る入力操作が検出されたと判別された場合には(ステップS20で“YES”)、CPU31は、早送り速度Vを64ppsに設定する(ステップS21)。そして、CPU31は、この早送り速度Vで指針を1ステップ運針させる(ステップS22)。
【0032】
CPU31は、早送りの終了に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS23)。検出されたと判別された場合には(ステップS23で“YES”)、CPU31は、指針早送り処理を終了する。検出されていないと判別された場合には(ステップS23で“NO”)、CPU31は、続いて、早送り速度の上昇に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS24)。検出されていないと判別された場合には(ステップS24で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS21に戻り、CPU31は、64ppsでの早送りを継続する。
【0033】
早送り速度の上昇に係る入力操作が検出されたと判別された場合には(ステップS24で“YES”)、CPU31は、早送り速度Vを96ppsに設定する(ステップS25)。そして、CPU31は、この早送り速度Vで指針を1ステップ運針させる(ステップS26)。
【0034】
CPU31は、早送りの終了に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS27)。検出されたと判別された場合には(ステップS27で“YES”)、CPU31は、指針早送り処理を終了する。検出されていないと判別された場合には(ステップS27で“NO”)、CPU31は、続いて、早送り速度の上昇に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS28)。検出されていないと判別された場合には(ステップS28で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS25に戻り、CPU31は、96ppsでの早送りを継続する。
【0035】
早送り速度の上昇に係る入力操作が検出されたと判別された場合には(ステップS28で“YES”)、CPU31は、早送り速度Vを128ppsに設定する(ステップS29)。そして、CPU31は、この早送り速度Vで指針を1ステップ運針させる(ステップS30)。
【0036】
CPU31は、早送りの終了に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS31)。検出されたと判別された場合には(ステップS31で“YES”)、CPU31は、指針早送り処理を終了する。検出されていないと判別された場合には(ステップS31で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS29に戻り、CPU31は、128ppsでの早送りを継続する。
【0037】
なお、ステップS19、S23、S27、S31において、早送りが終了となった場合には、指針早送り処理を終了する前に、当該早送りされた指針に係る輪列機構の隙間が正転方向の回転に対して存在しないように、CPU31は、ステップ数「X0」正転方向にステッピングモータを回転動作させておく。
【0038】
以上のように、第1実施形態のアナログ電子時計1によれば、ユーザによる操作部38への入力操作により早送りの命令が検知された場合に、その早送りの方向が逆転方向であると判別されると、予め規定ステップ数32aとして記憶されている早送り対象の各指針のバックラッシュに係る空回りステップ数を取得し、当該空回りステップの逆転運針を、早送りの初速である32ppsよりも高速の128ppsで行わせる。これにより、ユーザ操作による早送り命令のように、次の早送り方向が分からず、且つ、移動ステップ数も分からないような場合でも、速やかに指針の早送り移動を開始させることが出来る。
【0039】
また、特に、一般的な時計の動作に合わせて、通常では正転方向への指針動作に対してバックラッシュに係る隙間が生じないように輪列機構の位置が設定されているので、バックラッシュに係る隙間が実際にあるか否かを計数しなくても、単純に逆転早送りの際にバックラッシュの除去に係るステッピングモータの高速逆転駆動をすればよい。従って、判別処理を軽減させて速やかにステッピングモータの駆動、即ち、指針の回転を開始させることが出来る。
【0040】
また、特に、ステッピングモータの駆動可能速度の中で最も早い駆動速度でバックラッシュの除去を行うので、最も素早く指針の逆転早送り動作を開始させることが出来る。
【0041】
一方で、指針の早送り動作自体は低速から始めるので、指針を移動目標位置へユーザが容易に合わせる操作を行うことができる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のアナログ電子時計1について説明する。
この第2実施形態のアナログ電子時計1の構成は、第1実施形態のアナログ電子時計1と同一であり、説明を省略する。
【0043】
続いて、本実施形態のアナログ電子時計1において、時針51及び分針52を連動させて表示時刻を早送りする場合の早送り動作について説明する。
【0044】
図4は、時針51及び分針52による表示時刻を逆転早送りする場合の早送り動作について説明する図である。
【0045】
時針51及び分針52の両指針を逆転早送りさせる場合、時針51と分針52とでは規定ステップ数が異なるので、同時に等速で輪列機構61、62の回転動作を開始すると、規定ステップ数の少ない輪列機構62により分針52が先に動き始めてしまう。そこで、本実施形態のアナログ電子時計1では、規定ステップ数の多い輪列機構61に係るバックラッシュの解消を最高速度で行わせ、規定ステップ数の少ない輪列機構62に係るバックラッシュの解消を、時針51と分針52の規定ステップ数の比で減速させた早送り速度で行わせることとする。
【0046】
即ち、分針52の輪列機構62に係るバックラッシュの解消は、時針51に係る輪列機構61の早送り速度128ppsに対し、分針52の規定ステップ数「10」と時針51の規定ステップ数「20」との比である1/2の速度、即ち、64ppsで行われるように設定がなされる。このような設定により、時針51と分針52のバックラッシュは、最短且つ同時に解消されて、時針51と分針52の早送り移動が同時に開始される。
【0047】
時針51は、上述のように、分針52の回転動作に係る制御信号が12回出力されるごとに1回、CPU31から時針51の回転動作に係る制御信号がモータ駆動回路41に出力されて、1度ずつ回転する。分針52は、上記一の指針を早送りさせる場合と同様に、先ず、32ppsで早送りが開始され、りゅうずの回転操作により早送り速度の上昇指示が検知された場合には、64pps、96pps、128ppsの順に段階的に高速な早送りに移行する。時針51の駆動速度は、分針52の駆動速度の変化に応じて連動して変化する。そして、りゅうずが反対向きに回転されることで、早送りが停止される。
【0048】
図5は、本実施形態のアナログ電子時計1において、時針51と分針52による表示時刻を早送りさせる表示時刻早送り処理のCPU31による制御手順を示すフローチャートである。
【0049】
この表示時刻早送り処理は、時刻修正時やアラーム時刻の設定時などにりゅうずの回転や押しボタンスイッチの押下といったユーザによる入力操作に基づいて起動される処理である。
【0050】
表示時刻早送り処理が開始されると、先ず、CPU31は、早送りの方向が逆転方向であるか否かを判別する(ステップS61)。逆転方向ではない(正転方向である)と判別された場合には(ステップS61で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS67に移行する。指針の早送り方向が逆転方向であると判別された場合には(ステップS61で“YES”)、CPU31は、ROM32の規定ステップ数32aを参照して、時針51の規定ステップ数Xh0と分針52の規定ステップ数Xm0を取得し、それぞれ変数Xh、Xmに代入する(ステップS62)。
【0051】
CPU31は、変数XhがXmより大きいか否かを判別する(ステップS63)。変数XhがXmより大きいと判別された場合には(ステップS63で“YES”)、CPU31は、時針51に係る輪列機構61の早送り速度Vhを128ppsに設定する。また、CPU31は、分針52に係る輪列機構62の早送り速度Vmを128×(Xm/Xh)に設定する(ステップS64)。そして、CPU31の処理は、ステップS66に移行する。一方、変数XhがXmより大きくないと判別された場合には(ステップS63で“NO”)、CPU31は、輪列機構62の早送り速度Vmを128ppsに設定する。また、CPU31は、輪列機構61の早送り速度Vhを128×(Xh/Xm)に設定する(ステップS65)。そして、CPU31の処理は、ステップS66に移行する。
【0052】
ステップS64又はステップS65の処理が終了すると、CPU31は、設定された早送り速度で輪列機構61、62をそれぞれ回転させるための制御信号をモータ駆動回路41に出力する(ステップS66)。CPU31は、モータ駆動回路41にステッピングモータ71、72をそれぞれ駆動させて、早送り速度Vhで輪列機構61を変数Xhと等しいステップ数逆転方向に回転させ、この輪列機構61の回転とは独立に、早送り速度Vmで輪列機構62を変数Xmと等しいステップ数逆転方向に回転させる。バックラッシュの解消に係る輪列機構61、62の回転が何れも終了すると、CPU31の処理は、ステップS67に移行する。
【0053】
ステップS67の処理に移行すると、CPU31は、分針52の早送り速度Vmを32ppsに設定する。それから、CPU31は、この早送り速度Vmでモータ駆動回路41に時刻表示を10秒分(1ステップ)変更させる制御信号を出力する(ステップS68)。即ち、CPU31は、モータ駆動回路41に分針52を毎回1ステップ回転移動させると共に、時針51を12回に一ステップずつ回転移動させる。
【0054】
CPU31は、早送りの終了に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS69)。検出されたと判別された場合には(ステップS69で“YES”)、CPU31は、表示時刻早送り処理を終了する。検出されていないと判別された場合には(ステップS69で“NO”)、CPU31は、続いて、早送り速度の上昇に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS70)。検出されていないと判別された場合(ステップS70で“NO”)には、CPU31の処理は、ステップS67に戻り、CPU31は、32ppsでの早送りを継続する。
【0055】
早送り速度の上昇に係る入力操作が検出されたと判別された場合には(ステップS70で“YES”)、CPU31は、分針52の早送り速度Vmを64ppsに設定する(ステップS71)。そして、CPU31は、この早送り速度Vmで分針52を1ステップ運針させると共に、時針51を12回に一ステップずつ運針させる。(ステップS72)。
【0056】
CPU31は、早送りの終了に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS73)。検出されたと判別された場合には(ステップS73で“YES”)、CPU31は、表示時刻早送り処理を終了する。検出されていないと判別された場合には(ステップS73で“NO”)、CPU31は、続いて、早送り速度の上昇に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS74)。検出されていないと判別された場合(ステップS74で“NO”)には、CPU31の処理は、ステップS71に戻り、CPU31は、64ppsでの早送りを継続する。
【0057】
早送り速度の上昇に係る入力操作が検出されたと判別された場合には(ステップS74で“YES”)、CPU31は、分針52の早送り速度Vmを96ppsに設定する(ステップS75)。そして、CPU31は、この早送り速度Vmで分針52を1ステップ運針させると共に、時針51を12回に一ステップずつ運針させる。(ステップS76)。
【0058】
CPU31は、早送りの終了に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS77)。検出されたと判別された場合には(ステップS77で“YES”)、CPU31は、表示時刻早送り処理を終了する。検出されていないと判別された場合には(ステップS77で“NO”)、CPU31は、続いて、早送り速度の上昇に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS78)。検出されていないと判別された場合には(ステップS78で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS75に戻り、CPU31は、64ppsでの早送りを継続する。
【0059】
早送り速度の上昇に係る入力操作が検出されたと判別された場合には(ステップS78で“YES”)、CPU31は、分針52の早送り速度Vmを128ppsに設定する(ステップS79)。そして、CPU31は、この早送り速度Vmに対応する周波数信号に合わせて分針52を1ステップ運針させると共に、時針51を12回に一ステップずつ運針させる。(ステップS80)。
【0060】
CPU31は、早送りの終了に係る入力操作が検出されたか否かを判別する(ステップS81)。検出されたと判別された場合には(ステップS81で“YES”)、CPU31は、表示時刻早送り処理を終了する。検出されていないと判別された場合には(ステップS81で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS79に戻り、CPU31は、128ppsでの早送りを継続する。
【0061】
以上のように、第2実施形態のアナログ電子時計1によれば、複数の指針を逆転早送りさせる場合において、バックラッシュの除去に最も時間がかかる指針に合わせて他の指針に係るステッピングモータの駆動速度を設定するので、バックラッシュに係るステップ数が経時変化などにより変化してしまった場合などに、先にバックラッシュの除去が行われた指針が更に不自然に移動してしまったりする状況を避けることができる。また、全ての指針に係るステッピングモータを必要以上に高速で駆動する必要がないので、駆動タイミングの制御が容易になる。
【0062】
また、時刻表示に係る指針の早送り時には、時刻表示に合わせて時針51と分針52を連動させて早送り移動させることが出来る一方、バックラッシュの除去を行う際には、この連動早送りとは別に、高速でステッピングモータ71、72をそれぞれ個別に駆動するので、見た目上の不自然さを生じさせずに速やかに時針51及び分針52の早送り動作を開始させることが出来る。
【0063】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、時針51と分針52が各々独立に早送り移動される場合について説明したが、一のステッピングモータにより複数の指針が連動して回転する構成に対しても本発明を適用することができる。また、3本以上の指針の早送りに対しても同様に速やかなバックラッシュの除去を行うことができる。
【0064】
また、上記実施の形態では、指針の早送り動作に係るステッピングモータの駆動速度を途中で上昇可能とする場合について説明したが、一度上昇させた駆動速度を再度低下させることが可能な構成であっても良い。また、ユーザ操作の利便性から、早送りに係る初速が非常に速い場合、即ち、初速が128ppsのように設定可能な最高速度のような場合は、一般的に想定されないが、初速が早送り駆動可能に設定された最低速度である必要はない。
【0065】
また、指針によって逆転早送りと正転早送りが混在するような場合には、先ず、逆転早送りが行われる指針に対してのみ本発明に係るバックラッシュを除去する処理を行い、その後、全ての早送り対象の指針に対して通常の早送り動作を行わせれば良い。
【0066】
また、上記実施形態では、全てのステッピングモータの最高駆動速度が何れも128ppsであるとして説明したが、複数の最高駆動速度が混在しているケースについても本発明を適用することができる。この場合には、バックラッシュの除去に係る所要時間が当該最高駆動速度と規定ステップ数32aの両方により定まり、当該所要時間に応じて全てのステッピングモータの駆動速度を設定すれば良い。
【0067】
また、同時に駆動されるステッピングモータの本数が多く、全て最高駆動速度でバックラッシュの除去に係る連続駆動を行うことが困難な場合などには、必ずしも全てのステッピングモータを当該最高駆動速度で駆動する必要は無い。少なくとも、指針の早送り動作に係る最初の低速駆動時の駆動速度よりも高速に駆動されれば、指針の移動が始まるまでの不必要なタイムラグを短縮することができる。
【0068】
また、
図5に示したように、全ての指針に係るバックラッシュの除去が必ずしも同時に終了する実施形態には限られず、バックラッシュに係るステッピングモータの駆動ステップ数が相対的に特に少ないものについて適宜駆動速度を遅くする程度で、終了タイミングに若干のばらつきがあってもよいし、或いは、単純に全て同一の駆動速度としたりしても良い。また、同様に、全ての指針に係るバックラッシュの除去を必ずしも同時に開始する必要は無い。例えば、バックラッシュの隙間解消に要する駆動ステップ数が少ないステッピングモータの回転動作を開始するタイミングを他のステッピングモータの回転動作の開始より遅く設定することが出来る。即ち、隙間解消が必要な指針に係るステッピングモータを駆動ステップ数の多い順に異なるタイミングで駆動を開始し、略同時に各輪列機構のバックラッシュに係る隙間が無くなるようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、時刻表示に係る指針の動作について説明したが、タイマ機能のように、他の計測値や設定値に係る指針位置の早送り動作にも本発明を適用することが出来る。
【0070】
また、減算タイマの報知時間設定のように、設定後の動作に係る指針の回転方向が逆転方向である場合には、逆転方向への回転に対してバックラッシュに係る隙間が生じないように輪列機構の回転位置を設定し、正転方向への早送り命令に対してバックラッシュの除去に係る上記処理を行うこととしてもよい。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、数値、制御手順などの細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0072】
[付記]
<請求項1>
ステッピングモータと、
前記ステッピングモータの回転動作に応じて所定の角度ずつ回転する指針と、
複数の歯車の噛み合わせにより、前記ステッピングモータから入力された回転動作を前記指針に伝達する輪列機構と、
ユーザの入力操作を受け付ける操作手段と、
前記操作手段からの入力操作に基づいて前記ステッピングモータを連続的に回転動作させ、前記指針を早送り移動させる早送り制御手段と、
当該早送り制御手段による前記指針の早送り移動中に、前記ステッピングモータの駆動速度を変化させる変速制御手段と、
前記早送り制御手段による前記指針の早送り移動が開始される前に、当該早送り移動の回転方向に、前記指針に回転動作を伝達する輪列機構の歯車の噛み合わせに係る隙間が存在するか否かを判別する隙間判別手段と、
当該隙間判別手段により前記隙間があると判別された輪列機構に対して回転動作を入力するステッピングモータを、前記隙間に対応するステップ数回転動作させる隙間解消制御手段と
を備え、
前記隙間解消制御手段は、
前記回転動作させるステッピングモータが一個の場合には、当該ステッピングモータの駆動速度を前記早送り移動に係る予め設定された最初の駆動速度よりも高速とし、
前記回転動作させるステッピングモータが複数個の場合には、当該複数個のステッピングモータを前記最初の駆動速度で回転動作させることで全ての前記隙間を解消させるのに要する時間よりも、当該全ての隙間を解消させるのに要する時間が短くなるように、前記回転動作の前記ステップ数に応じて前記回転動作させるステッピングモータのうち少なくとも一個の駆動速度を前記最初の駆動速度よりも高速とする
ことを特徴とするアナログ電子時計。
<請求項2>
前記隙間解消制御手段は、
複数の前記輪列機構に係る前記隙間を並列的に解消する場合には、当該隙間の解消に要する時間が何れも等しくなるように、前記回転動作させるステッピングモータの駆動速度をそれぞれ定める
ことを特徴とする請求項1記載のアナログ電子時計。
<請求項3>
予め設定された基準回転方向と反対方向に前記指針を回転移動させた場合には、当該基準回転方向への回転に対して前記輪列機構の噛み合せに係る隙間がないように前記輪列機構の前記複数の歯車の回転位置を調整する輪列機構調整手段を備え、
前記隙間判別手段は、前記早送りの方向が前記反対方向である場合には、前記隙間が存在すると判別する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアナログ電子時計。
<請求項4>
前記早送り制御手段は、予め定められた速度範囲内の駆動速度で前記ステッピングモータを回転動作させることが可能であり、
前記隙間解消制御手段は、
前記回転動作させるステッピングモータが一個の場合には、当該ステッピングモータを前記速度範囲における上限の駆動速度で回転動作させ、
前記回転動作させるステッピングモータが複数個の場合には、当該ステッピングモータの一部又は全部を前記上限の駆動速度で回転動作させ、当該上限の駆動速度で駆動させない他のステッピングモータがある場合には、当該他のステッピングモータの回転動作による前記隙間の解消に要する時間が、前記上限の駆動速度で駆動させる前記ステッピングモータの回転動作による全ての前記隙間の解消に要する時間以下となるように、前記他のステッピングモータの駆動速度を設定して回転動作させる
ことを特徴とする請求項1記載のアナログ電子時計。
<請求項5>
前記早送り制御手段は、前記速度範囲における下限の駆動速度を前記最初の駆動速度とし、
前記変速制御手段は、前記駆動速度を上昇させる
ことを特徴とする請求項4記載のアナログ電子時計。
<請求項6>
前記指針には、異なる時刻単位を各々表示する複数の時刻指針が含まれ、
前記早送り制御手段は、前記時刻指針により表示される時刻が単調増加又は単調減少するように当該複数の時刻指針に係る前記ステッピングモータの駆動速度を連動させて各々早送りさせる時刻表示早送り制御手段を備える
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のアナログ電子時計。