(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルキル基の炭素数1〜6であるアルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキル基の炭素数1〜10であるアルキルアルコールを含む有機溶剤(E)を、5〜30重量%含有する請求項1または2記載の金属包装材用水性塗料。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の金属包装材用水性塗料は、アクリル変性エポキシ樹脂(A)の水分散体と分散粒子の平均粒子径が0.01〜15μmであるワックス水性分散体(B)を含んでなり、25℃での高せん断速度の粘度が特定範囲内にあり、且つ、低せん断速度と高せん断速度の粘度の比が特定範囲内にあることが特徴である。そのため、当該金属包装材用水性塗料は、高速塗工装置、例えば、リバースコート方式、ダイコート方式で塗装したときに塗装性に優れ、その硬化塗膜は、塗装欠陥が生じにくく平滑で均一な塗膜表面が得られる。さらに製蓋工程においてカットエッジラフやワックス堆積の発生を抑制することができる。
【0017】
本発明の金属包装材用水性塗料(以下、単に水性塗料ともいう)は、その粘度特性を特定範囲内にすることが重要である。詳しくは、25℃条件、せん断速度10000s
-1の高せん断速度条件において、その粘度η
Hが20〜100mPa・sであることが好ましい。この範囲にある水性塗料は、例えばリバースコート方式の塗装において、塗料のピックアップ性、あるいはロールとロールの間の塗料転移性が良好になり優れた塗装性を発現する。せん断速度10000s
-1の粘度η
Hが20mPa・s未満だとリバースコート方式による塗装において、塗料のピックアップ量が不足したり、ロール間の塗料の転移不足が発生したりし、形成される硬化塗膜の塗膜量が少なくなってしまい、塗膜の加工性や耐摩耗性が低下する。また、ロール間の塗料転移が不均一になる場合もあり、ムラの塗装欠陥が発生する。粘度η
Hが100mPa・sよりも大きいとロール間の塗料転移量が過剰となってしまい、硬化塗膜の塗膜量が多くなりすぎたり、塗膜形成時に水性媒体等の揮発性物質が泡として塗膜中に留まり、ワキが発生したりする。
【0018】
さらに、本発明の水性塗料はせん断速度0.1s
-1の低せん断速度条件の粘度η
Lと、前述のせん断速度10000s
-1における粘度η
Hとの粘度比η
L/η
Hが1〜8であることが好ましい。粘度比がこの範囲内にある塗料は、リバースコート方式の塗装において優れた塗装性を示し、特に、硬化塗膜の表面が平滑かつ均一になりやすい。η
L/η
Hが8を超える場合は、塗装直後のレベリング性が著しく悪くなり、一方ロールから他方のロールに塗料を転移したときに生じる、いわゆるリブ模様が硬化塗膜に残存する恐れがある。また、η
L/η
Hが1未満、即ち一般にダイラタンシーと呼ばれる流動性の場合は、塗装時の粘度が塗料を静置している時の粘度よりも高くなるため、塗装機上での塗料の流動安定性が著しく低下する。そのため塗膜量の調整が困難となったり、平滑な塗装表面が得られない場合がある。
【0019】
尚、本発明の水性塗料のη
L/η
Hを調整するには様々な方法を挙げることができ、一例として、アクリル変性エポキシ樹脂(A)の樹脂構造制御、各種レオロジー制御剤の添加、水性塗料中に含有される溶剤の組成調整等を示すことができる。η
L/η
Hを高くするためには、例えば、アクリル変性エポキシ樹脂(A)の樹脂構造について言及すれば、(1)アクリル樹脂部分の分子量を大きくする。(2)アクリル樹脂部分の比率を高くする。(3)エポキシ当量の低いエポキシ樹脂を使用する。(4)後述するエステル化反応においてその反応程度を高くする、等の方法がある。(5)アクリル変性エポキシ樹脂(A)の水分散体の分散粒径を小さくすることもη
L/η
Hを高くするには有効である。一方で、η
L/η
Hを低くするように調整するには、上記とは逆の所作を行うことが効果的である。
また、レオロジー制御剤では、いわゆるチキソトロピック剤の使用がη
L/η
Hを高めるのに有効であり、例えば、セルロース類やポリウレタン類、ポリアクリル酸類、ポリアマイド類等が挙げられる。
さらに、水性塗料中の溶剤組成では、親水性の高い溶剤を多く用いれば一般にη
L/η
Hが低くなり、比較的疎水性の溶剤組成となればη
L/η
Hは高くなる傾向にある。
【0020】
尚、本発明において特定のせん断速度における粘度は、25℃条件の下、Anton Paar社製レオメーター「Physica MCR301」により、直径50mm、コーン角度1°のコーンローターを使用して測定した。η
Lはせん断速度0.1s
-1において60秒間保持後、及びη
Hはせん断速度10000s
-1において10秒間保持後の粘度をそれぞれ測定したものである。
【0021】
続いて、本発明で使用するアクリル変性エポキシ樹脂(A)、ワックス水性分散体(B)、カルボキシル基含有モノマーを含むエチレン性不飽和モノマー(C)、エポキシ樹脂(D)について詳細に説明する。尚、以下の説明においては、カルボキシル基含有モノマーを含むエチレン性不飽和モノマー(C)を、単にエチレン性不飽和モノマー(C)と省略して記載する場合がある。
【0022】
本発明において用いられるアクリル変性エポキシ樹脂(A)は、エチレン性不飽和モノマー(C)とエポキシ樹脂(D)とを使用して得られた複合樹脂であることが好ましい。
【0023】
本発明において用いるエチレン性不飽和モノマー(C)は、カルボキシル基含有モノマー、及び他のエチレン性不飽和モノマーを使用することが好ましい。
カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸〔「アクリル酸」と「メタクリル酸」とを併せて「(メタ)アクリル酸」と表記する。以下同様。〕、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。
その他のエチレン性不飽和モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、
ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー、
スチレン、メチルスチレン等の芳香族系モノマー、
N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマーが挙げられる。
【0024】
エチレン性不飽和モノマー(C)は、アクリル変性エポキシ樹脂(A)の溶液安定性、塗料の流動特性、塗膜を形成した際の加工性や金属密着性を考慮すると、そのカルボキシル基濃度が2.7〜7.1mmol/gとなるように配合することが好ましい。カルボキシル基濃度が2.7mmol/g未満であると、水分散性が低下して水性塗料としての保存安定性が損なわれることがある。また、せん断速度10000s
-1のような高せん断速度の粘度が低下し、塗装時に十分な塗膜量が確保できなかったり、ムラのような塗装欠陥が生じたりすることがある。一方、カルボキシル基濃度が7.1mmol/gより大きいと塗膜を形成した際の加工性、金属密着性、耐レトルト性が得にくい場合がある。尚、本発明におけるカルボキシル基濃度は、エチレン性不飽和モノマー(C)の配合組成中に含まれるカルボキシル基含有モノマー量から求められる理論値であり、単位重量当たりに存在するカルボキシル基のモル数を指すものである。
【0025】
エチレン性不飽和モノマー(C)は、後述のエポキシ樹脂(D)との重量比にして、(C)/(D)=10/90〜50/50となるように使用することが好ましい。エチレン性不飽和モノマー(C)の重量比が10よりも小さいと、溶液安定性が低下したり、高せん断速度粘度が低くなって水性塗料の塗装性が劣ったりすることがある。また、エチレン性不飽和モノマー(C)の重量比が50よりも大きいと、塗膜を形成した際の加工性、金属密着性、耐レトルト性が劣る傾向にある。また、低せん断速度粘度が高くなり、低せん断速度粘度と高せん断速度粘度の比が大きくなるため、ロール目等の塗装欠陥が発生し、良好な塗膜表面が得られない場合もある。
【0026】
本発明で使用するエポキシ樹脂(D)は、ビスフェノール型、ノボラック型、ナフタレン型、ビフェニル型等のエポキシ樹脂が好ましい。これらの中でも、塗膜にした際の加工性、耐レトルト性、金属密着性を考慮すると、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0027】
本発明においてエポキシ樹脂(D)は、重量平均分子量が2500〜70000であるものが好ましい。重量平均分子量が2500に満たない場合は、ビスフェノールA等の未反応物の残存量が多くなり、加工性、耐レトルト性が悪化する場合がある。一方、重量平均分子量が70000を越えると、金属密着性が悪化する場合がある。
【0028】
本発明においてエポキシ樹脂(D)の市販品としては、例えば、三菱化学(株)製のJER1007、JER1009、JER1010等が挙げられる。
【0029】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)は、前述の通り、エチレン性不飽和モノマー(C)とエポキシ樹脂(D)とを使用して得られた複合樹脂であることが好ましく、その製造方法の例として、(ア)グラフト重合法、(イ)エステル化法、(ウ)直接重合法等が挙げられる。即ち、
(ア)グラフト重合法:エポキシ樹脂(D)の存在下でラジカル重合開始剤を用いて、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーを必須成分とするエチレン性不飽和モノマー(C)を重合することにより、アクリル共重合体がエポキシ樹脂にグラフトしたアクリル変性エポキシ樹脂(A)を得る方法である。
(イ)エステル化法:(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーを必須成分とするエチレン性不飽和モノマー(C)を重合してカルボキシル基を有するアクリル重合体を得、このカルボキシル基の一部と、エポキシ樹脂(D)中のエポキシ基の一部とを塩基性化合物の存在下にエステル化反応することによりアクリル変性エポキシ樹脂(A)を得る方法である。
(ウ)直接重合法:エポキシ樹脂(D)中のエポキシ基の一部を、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーのカルボキシル基と反応せしめ、この化合物とカルボキシル基含有モノマーを必須成分とするエチレン性不飽和モノマー(C)を共重合することによってアクリル変性エポキシ樹脂(A)を得る方法である。
【0030】
また、アクリル変性エポキシ樹脂(A)は上記の手法を組み合わせても得ることが可能である。例えば、エポキシ樹脂(D)の存在下でエチレン性不飽和モノマー(C)を重合してグラフト重合を行った後、塩基性化合物を加えてエステル化反応する方法や、エポキシ樹脂(D)と(メタ)アクリル酸等との反応生成物の存在下、エチレン性不飽和モノマー(C)を共重合して直接重合を行い、次いで、エステル化反応する方法等が挙げられる。
【0031】
上記方法において、重合に使用するラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、過硫酸塩、アゾビス化合物、及びこれらと還元剤とを組み合わせたレドックス系を用いることが好ましい。本発明においては、過酸化物系開始剤が好ましく、特に過酸化ベンゾイルが好ましい。
【0032】
ラジカル重合開始剤は、エチレン性不飽和モノマー(C)の合計100重量部に対して1〜10重量部用いることが好ましく、1〜6重量部がより好ましい。
尚、重合時の温度、時間等の反応条件は特別なものではなく、公知の条件を用いることができる。水性塗料とした時の粘度特性が最適なものとなるよう適宜反応条件を調整し、アクリル変性エポキシ樹脂(A)を得ることが肝要である。
【0033】
また、上記方法において、エステル化反応の際に用いる塩基性化合物としては、ジメチルエタノールアミン(ジメチルアミノエタノール)、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール等のアルコールアミン類や、
トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン類、
モルホリン、アンモニア等の揮発性アミン等が挙げられる。
塩基性化合物は、カルボキシル基含有モノマー100モル%に対して、1〜80モル%、より好ましくは5〜60モル%の割合で反応に使用することが好ましい。尚、エステル化反応時の温度、時間等の反応条件は特別なものではなく、公知の条件を用いて行うことができるが、得られる水性塗料の流動性を最適なものとするように適宜反応条件を調整し、アクリル変性エポキシ樹脂(A)を得ることが重要である。
【0034】
得られたアクリル変性エポキシ樹脂(A)を水分散体とするには、常法の手法と同様にして得ることができる。詳しくは、アクリル変性エポキシ樹脂(A)中に存在するカルボキシル基を、塩基性化合物等で中和して、親水性を付与する方法である。さらに詳しくは、アクリル変性エポキシ樹脂(A)に塩基性化合物を加えた後、水等の水性媒体を添加して水分散体とする方法や、アクリル変性エポキシ樹脂(A)に、塩基性化合物を含有する水等の水性媒体を添加して水分散体とする方法等が例示できる。
【0035】
本発明で用いるワックス水性分散体(B)とは、ワックスを水性媒体中に分散したものである。その分散粒子の平均粒子径は、0.01〜15μmであることが好ましい。ワックス水性分散体(B)の平均粒子径が前記範囲内にあることで、滑り性や耐摩耗性等の塗膜性能と、製蓋時におけるワックス堆積やカットエッジラフの抑制を両立しやすくなる。
尚、本発明においてワックス水性分散体(B)の分散粒子の平均粒子径は、日機装(株)製「ナノトラックUPA−EX150」、PARTICLE SIZING SYSTEMS社製「AccuSizer780」を用いて測定したものである。
【0036】
本発明のワックス水性分散体(B)の水性媒体には、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、アセテート類の各種親水性溶剤等や水が挙げられ、これらを単独で用いても良いし、それぞれを混合して使用しても良い。
【0037】
本発明のワックス水性分散体(B)は、その性状から乳化型と非乳化型の2種類に大別される。この特徴として、乳化型は分散粒子の平均粒子径が小さく、0.01〜1μm程度であり、被乳化型は平均粒子径が大きく、0.5〜15μm程度である。乳化型は分散粒子の平均粒子径が小さいため分散安定性に富み、また、塗膜を形成する際に塗膜樹脂の表面を比較的均一に被覆できるという特徴を有する。非乳化型は平均粒子径が大きいために塗膜に優れた耐摩耗性が付与できるという特徴を持つ。本発明は、両者を用途に合わせて単独使用、もしくは併用することができる。
【0038】
本発明のワックス水性分散体(B)のワックスには、天然ワックスと、合成ワックスを挙げることができる。
【0039】
天然ワックスとしては、例えば蜜蝋、ラノリンワックス、鯨蝋、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ホホバ油等の動植物系ワックスを挙げることができる。また、モンタンワックス、オゾゲライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の鉱物、石油系ワックス等を挙げることができる。これらの中でも塗膜を形成した際の滑り性、耐摩耗性を考慮すると、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ラノリンワックス、マイクロクリスタリンワックスが好ましい。
【0040】
合成ワックスとしては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックス、
モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス、
硬化ヒマシ油、硬化ヒマシ油誘導体等の水素化ワックス、
ポリテトラフロロエチレン(PTFE)ワックス等が挙げられる。硬化塗膜の滑り性、耐摩耗性を考慮すると、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス誘導体が好ましい。
【0041】
本発明におけるワックス水性分散体(B)の市販品としては、
Shamrock Technologies社製のHydrocer100(ポリエチレンワックス)、Hydrocer257(ポリエチレンワックス)、Hydrocer600(マイクロクリスタリン/ポリエチレン混合ワックス)、Hydrocer901(ポリエチレン/パラフィン混合ワックス)、Hydrocerf9174(PTFE)、Fluoro AQ60(PTFE)、Hydrocer EC98(乳化カルナバワックス)、Hydrocer EE95(乳化ポリエチレンワックス)Hydrocer EM08(乳化マイクロクリスタリンワックス)、Hydrocer EP91(乳化パラフィンワックス)、
BYK社製のCERACOL39(ポリエチレンワックス)、CERACOL79(カルナバワックス)、CERACOL601(カルナバワックス)、AQUACER498(乳化パラフィンワックス)、AQUACER507(乳化ポリエチレンワックス)、AQUACER1547(乳化ポリエチレンワックス)、
エレメンティス・ジャパン(株)製のSL506(カルナバワックス)、SL508(カルナバワックス)、SL19(ポリエチレンワックス)、SL145E(乳化パラフィンワックス)、SL535E(乳化カルナバワックス)、SL330E(乳化ポリエチレンワックス)、
東邦化学工業(株)製のHYTEC E−5403P(乳化ポリエチレンワックス)、HYTEC E−8237(乳化ポリエチレンワックス)、E−1000(乳化ポリエチレンワックス)、HYTEC E−4A)、
MICRO POWDERS社製のMicrospersion215−50(ポリエチレンワックス)、Microspersion250(ポリエチレンワックス)、Microspersion930(ポリエチレンワックス)、Microspersion190−50(ポリエチレン/PTFE混合ワックス)、Microspersion411(ポリエチレン/PTFE混合ワックス)等が例示できる。
【0042】
本発明のワックス水性分散体(B)は、酸価が100〜500mgKOH/gであり、数平均分子量が2000〜50000である樹脂を高分子界面活性剤として用い、ワックスを水性媒体中に乳化分散させたワックス水性分散体(b1)を含むことが好ましい。
【0043】
前記樹脂は、樹脂中のカルボキシル基等を後述する塩基性化合物で中和することにより、高分子界面活性剤として使用できる。前記樹脂の酸価が100mgKOH/g未満であると、中和後の乳化機能が小さく、ワックスを安定に分散し難くなり、ワックス水性分散体(b1)中にワックスの凝集物を生成する場合がある。一方、酸価が500mgKOH/gを超えるとワックス水性分散体(b1)を含有する本発明の水性分散体組成物から得られる塗膜の耐水性が低下する場合がある。また、前記樹脂は数平均分子量が2000〜50000になることでワックスをさらに乳化、または分散しやすくなる。前記樹脂の数平均分子量は2000〜20000がより好ましい。該樹脂は、カルボキシル基を有するアクリル樹脂、もしくはカルボキシル基を有するポリエステル樹脂のうち少なくとも1種であることが好ましい。
【0044】
ワックス水性分散体(b1)は、樹脂とワックスとの合計100重量部中、樹脂は1〜50重量部、ワックスは50〜99重量部であることが好ましい。樹脂とワックスを前記の配合量で使用すると、分散安定性及び塗膜性能を両立しやすくなる。尚、樹脂は2〜20重量部であることがより好ましい。
【0045】
ワックス水性分散体(b1)に用いられる樹脂のうち、カルボキシル基を有するアクリル樹脂は、上段で説明したエチレン性不飽和モノマー(C)を重合することにより得られる。
【0046】
ワックス水性分散体(b1)に用いられる樹脂のうち、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂は、常法に従い、多価アルコール成分と多塩基酸成分との反応により得ることができる。
多価アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノエタン、ペンタエリスリット、ジペンタエリトリット、ジグリセリン等の2価以上のアルコール等のアルコール成分が挙げられる。
多塩基酸成分としては(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、(無水)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)ハイミック酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)トリメリット酸、メチレンジクロヘキセントリカルボン酸(無水物)、(無水)ピロメリット酸等の多価カルボン酸もしくはその無水物、及び必要に応じて併用する安息香酸やt−ブチル安息香酸等の一塩基酸等が挙げられる。
反応においては、これらを単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0047】
この他、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂としては、前記のアルコール成分と酸成分に加えてヒマシ油、脱水ヒマシ油、桐油、サフラワー油、大豆油、アマニ油、トール油、ヤシ油等、及びそれらの脂肪酸のうちの1種もしくは2種以上の混合物である油成分を、上記酸成分及びアルコール成分に加えて、3成分を反応させて得られるアルキッド樹脂が挙げられる。また、不飽和結合を有するポリエステル樹脂にアクリル樹脂をグラフトすることにより変性したグラフト変性ポリエステル樹脂も挙げられる。
【0048】
ワックス水性分散体(b1)は、上記の特定の酸価、及び数平均分子量の樹脂の中和物を高分子界面活性剤として利用することによって、ワックスを水性媒体中に分散せしめたものである。中和には塩基性化合物を用い、特に揮発性を有するものが好ましく、アンモニアの他、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン(ジメチルアミノエタノール)、シクロヘキシルアミン等のアミン類を挙げることができる。
【0049】
ワックス水性分散体(b1)を得るには種々の手段があるが、一例として、樹脂、ワックス、塩基性化合物、水性媒体をワックスの融点以上の温度で撹拌する方法、樹脂とワックスを溶融混合液とし、これと塩基性化合物及び水性媒体とを撹拌混合する方法、樹脂とワックス、水性媒体を溶融混合液とし、これと塩基性化合物とを撹拌混合する方法、さらに、樹脂と水性媒体、及び塩基性化合物を混合して得られる樹脂水溶液もしくは水分散液と、溶融状態のワックスとを撹拌混合する方法等が挙げられる。
【0050】
樹脂、ワックス、揮発性塩基、及び水性媒体の量、中和の割合、混合条件(混合速度、撹拌条件、温度等)等を種々変えることにより、分散粒子の大きさの異なる種々のワックス水性分散体(b1)を得ることができる。
【0051】
また、上記ワックスの水性媒体中への分散過程で存在する有機溶剤は、必要に応じ減圧下で除去することが可能である。この時、水と有機溶剤とを共沸混合物として除去してもよい。このような場合にはより脱有機溶剤を行い易いもの、即ち比較的低沸点の有機溶剤を使用することがより好ましい。
【0052】
ワックス水性分散体(b1)の分散粒子の平均粒子径は、水性媒体中に分散するときの温度や撹拌速度あるいは、用いる樹脂の酸価やワックスとの比率等により変化するが、さらに、良好な分散安定性、及び塗膜を形成した際の良好な滑り性や耐摩耗性を得るためには、平均粒子径は0.1〜1μmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.5μmであり、0.2〜0.4μmであることが最も好ましい。
【0053】
さらに、本発明のワックス水性分散体(B)は、界面活性剤の不存在下でワックスを水性媒体中に分散させたワックス水性分散体(b2)を含むことが好ましい。ワックス水性分散体(b2)は、例えば、高速撹拌されている水性媒体中に、ワックスの融点以上にそれぞれ加熱したワックスと親水性溶剤とを徐々に添加し分散したり、ワックスと親水性溶剤との混合物をワックスの融点以上に加熱し、かかる混合物を同様に高速撹拌下、水性媒体中に徐々に添加し分散したり、あるいは、ワックスと親水性溶剤を含む水性媒体とをワックスの融点以上に加熱して混合溶液とした後、高速撹拌下、これを徐々にワックスの融点以下に冷却して分散したりすることにより得ることができる。
【0054】
ワックス水性分散体(b2)を製造する際、分散過程に用いられる親水性溶剤としては、水と混合しやすいものが好ましく、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、アセテート類を例示できる。また、これらの親水性溶剤はワックスを分散した後、必要に応じて減圧下、もしくは水との共沸によって除去することも好ましい。
【0055】
ワックス水性分散体(b2)は、界面活性剤を含んでいないため、このワックス水性分散体(b2)を含有する水性塗料を用いて塗膜を形成した場合、塗膜の耐水性が優れている。尚、ここで言う界面活性剤とは、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、エチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールモノステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、等の比較的低分子量のものを主として指すが、本発明においては、ワックス水性分散体(b1)に用いられる「酸価100〜500mgKOH/g、数平均分子量2000〜50000である樹脂」も、ここでいう「界面活性剤」に包含されるものとする。
【0056】
ワックス水性分散体(b2)に用いられるワックスとしては、前述同様のものを例示できる。但し、ワックス水性分散体(b2)において、合成ワックスを用いる場合には、単独で用いるよりも天然ワックスと併用することが望ましい。天然ワックスが合成ワックスの分散安定化を補助し、水性媒体中で凝集物が発生しにくくなり安定化しやすくなるという効果がある。
【0057】
ワックス水性分散体(b2)は、良好な分散安定性とこれを含有する水性塗料から形成される塗膜の高硬度と優れた耐摩耗性とを確保するために、その分散粒子の平均粒子径を1〜15μmとすることが好ましく、さらには、1〜10μmとすることが好ましい。
【0058】
ワックスは、アクリル変性エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部用いることが好ましい。ワックスが0.1重量部未満であると、得られる硬化塗膜の滑り性、耐磨耗性が低下する傾向にある。また、ワックスが10重量部を超えると、塗膜に存在するワックス量が増加するのでワックス堆積を引き起こす懸念がある。
【0059】
本発明の水性塗料は、その表面張力が25〜33mN/mであることが好ましい。表面張力が25mN/m未満では、ロール目等の塗装欠陥が生じ場合がある。一方、33mN/mを超えると、金属板に対する水性塗料のヌレ性が悪くなったり、形成される硬化塗膜にハジキ欠陥が生じたりする場合がある。尚、本発明において表面張力は、協和界面科学(株)社製の全自動表面張力計「CBVP−Z型」を用い、測定子に白金プレートを使用したWilhelmy法により測定したものである。
【0060】
本発明の水性塗料には、塗装性を向上させる目的で有機溶剤を5〜30%含むことが好ましい。有機溶剤は、アクリル変性エポキシ樹脂(A)を得る際、反応工程にて使用したものをそのまま本発明の水性塗料に含有していても良いし、別途、必要に応じて添加しても良い。
【0061】
有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、下記に示すような比較的親水性の高い溶剤が好ましい。具体的には、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、n−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、トリデカノール等のアルコール類、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のグリコール類、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルプロピレングリコール、メチルプロピレンジグリコール、プロピルプロピレングリコール、プロピルプロピレンジグリコール、ブチルプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等のアセテート類等が例示できる。
本発明では、水性塗料の保存安定性、表面張力の制御効果、塗装時の溶剤揮発速度の観点から、用いられる有機溶剤(E)は、アルキル基の炭素数が1〜6であるアルキレングリコールモノアルキルエーテル、またはアルキル基の炭素数が1〜10であるアルキルアルコールが好ましく、両者を併用することがより好ましい。
【0062】
本発明の水性塗料には、さらに、必要に応じて塗膜の硬化性や金属密着性を向上させる目的で、フェノール樹脂、アミノ樹脂等の硬化剤を1種または2種以上添加することができる。
【0063】
フェノール樹脂やアミノ樹脂は、自己架橋反応する他、アクリル変性エポキシ樹脂(A)中のカルボキシル基と反応し得る。また、アクリル変性エポキシ樹脂(A)が水酸基を有する場合には、フェノール樹脂やアミノ樹脂は、それらの水酸基とも反応し得る。さらに、エチレン性不飽和モノマー(C)がアミド系モノマーを含み、アクリル変性エポキシ樹脂(A)がこのアミド系モノマーに由来する架橋性官能基を有する場合は、これら架橋性官能基とも反応し得る。
【0064】
本発明においてフェノール樹脂としては、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール等の3官能フェノール化合物や、o−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール等の2官能フェノール化合物とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させたもの等を挙げることができる。この場合、フェノール化合物は単独あるいは2種以上の組み合わせにて使用される。
【0065】
本発明においてアミノ樹脂としては、尿素やメラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ化合物にホルムアルデヒドを付加反応させたもの等を挙げることができる。この場合、アミノ化合物は単独あるいは2種以上の組み合わせにて使用される。
【0066】
上記フェノール樹脂やアミノ樹脂は、ホルムアルデヒドの付加により生成したメチロール基の一部ないし全部を、炭素数が1〜12なるアルコール類によってエーテル化した形のものも好適に用いられる。
【0067】
フェノール樹脂やアミノ樹脂を用いる場合には、アクリル変性エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、0.5〜20重量部添加することが好ましく、1〜10重量部添加することがより好ましい。
【0068】
本発明の金属包装材用水性塗料は、必要に応じて塗装性を改良するための溶剤、界面活性剤や消泡剤を加えることも可能である。
【0069】
本発明の金属包装材用水性塗料は、種々の基材に適用することができ、金属板上に該水性塗料から形成された塗膜層を有する金属包装材を得ることができる。基材としては、例えばアルミニウム板、鋼板、ブリキ板等の無処理のまたは表面処理された各種金属や、これらの金属にプライマーを塗装した金属、あるいはこれらの金属にポリエステルフィルム(PET)をラミネートしたPET被覆金属等が挙げられる。本発明の金属包装材の用途としては、飲料や食品等を収容する金属缶が好ましい。その種類はDI缶(Drawing&Ironing法により製造された缶)、DR缶(Drawing&Redrawing法により製造された缶)、各種3ピース缶、フィルムラミネート缶等がある。
【0070】
また基材の形状は、板状であっても有底円筒状であってもよい。本発明の金属包装材用水性塗料をこれら基材に塗布、硬化した後に、さらに変形加工を加えてもよい。種々の加工工程を経て、包装材を得ることができる。
【0071】
本発明の金属包装材用水性塗料を基材に塗装する方法としては、公知の各種の方法、例えばロールコータ塗装、スプレー塗装、浸漬塗装や電着塗装等が適用できる。塗装した塗料の乾燥条件としては、通常、基材の表面温度が120〜300℃となる条件で10秒〜30分間が好ましい。
【0072】
乾燥後の塗膜量は用途によって適宜選定すればよいが、通常5〜200mg/dm
2程度が好ましい。特に、蓋の外面部として使用する場合は、10〜100mg/dm
2が好ましい。
【0073】
また、本発明の金属包装材は、その塗膜層の表面自由エネルギーが25〜45mN/mであることが好ましい。塗膜層の表面自由エネルギーが25mN/m未満であると、塗膜層に存在するワックス量が過多となり、ワックス堆積を引き起こす可能性がある。また、塗膜層の表面自由エネルギーが45mN/mよりも大きいと、塗膜層に存在するワックス量が少なくなる傾向にあり、塗膜の滑り性が低下したり、耐摩耗性が低下したりする懸念がある。尚、本発明における塗膜層の表面自由エネルギーとは、塗膜と液体試料の接触角を測定し算出したものである。測定には協和界面科学(株)製の自動接触角計「CA−V型」を使用し、液体試料に水、ヨウ化メチレン、n−ヘキサデカンを用い、それぞれの接触角を計測した。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、これは本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例中「部」、「%」はそれぞれ「重量部」、「重量%」を示す。
【0075】
[製造例1]
<アクリル変性エポキシ樹脂(A−1)の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、JER1009(三菱化学(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を210.0部、エチレングリコールモノブチルエーテル80部、n−ブタノール75部を仕込んで、120℃まで昇温して溶解させた。反応容器内の温度を120℃に保ちながら、メタクリル酸28.0部、スチレン35.0部、アクリル酸エチル7.0部、及び過酸化ベンゾイル2.8部からなる混合物を滴下槽から1時間にわたって連続滴下した。滴下終了から1時間後、及び2時間後に過酸化ベンゾイル0.4部をそれぞれ添加し、滴下終了から3時間にわたって反応を続け、その後に90℃まで冷却した。続いて、ジメチルアミノエタノール10.2部を添加して10分間撹拌した後、水485部を1時間かけて滴下し、不揮発分30%のアクリル変性エポキシ樹脂(A−1)の水分散体を得た。
【0076】
[製造例2]
<アクリル変性エポキシ樹脂(A−2)の合成>
製造例1同様の反応容器に、JER1009を210.0部、エチレングリコールモノブチルエーテル80部、n−ブタノール75部を仕込んで、120℃まで昇温して溶解させた。反応容器内の温度を120℃に保ちながら、メタクリル酸28.0部、スチレン35.0部、アクリル酸エチル7.0部、及び過酸化ベンゾイル2.8部からなる混合物を滴下槽から1時間にわたって連続滴下した。滴下終了から1時間後、及び2時間後に過酸化ベンゾイル0.4部をそれぞれ添加し、滴下終了から3時間にわたって反応を続け、その後に90℃まで冷却した。
続いて、ジメチルアミノエタノール5.8部、水5.8部を混合して添加し、90℃で1時間エステル化反応を行った。
反応終了後にジメチルアミノエタノール4.4部を添加して10分間撹拌した後、水479部を1時間かけて滴下し、不揮発分30%のアクリル変性エポキシ樹脂(A−2)の水分散体を得た。
【0077】
[製造例3]
<アクリル変性エポキシ樹脂(A−3)の合成>
メタクリル酸を17.5部、スチレンを46.9部、アクリル酸エチルを5.6部とした以外は製造例1と同様にして、不揮発分30%のアクリル変性エポキシ樹脂(A−3)の水分散体を得た。
【0078】
[製造例4]
<アクリル変性エポキシ樹脂(A−4)の合成>
メタクリル酸を42.0部、スチレンを18.9部、アクリル酸エチルを9.1部とした以外は製造例1と同様にして、不揮発分30%のアクリル変性エポキシ樹脂(A−4)の水分散体を得た。
【0079】
[製造例5]
<アクリル変性エポキシ樹脂(A−5)の合成>
製造例1同様の反応容器に、JER1009を238.0部、エチレングリコールモノブチルエーテル80部、n−ブタノール75部を仕込んで、120℃まで昇温して溶解させた。反応容器内の温度を120℃に保ちながら、メタクリル酸16.8部、スチレン21.0部、アクリル酸エチル4.2部、及び過酸化ベンゾイル1.7部からなる混合物を滴下槽から1時間にわたって連続滴下した。滴下終了から1時間後、及び2時間後に過酸化ベンゾイル0.3部をそれぞれ添加し、滴下終了から3時間にわたって反応を続け、その後に90℃まで冷却した。続いて、ジメチルアミノエタノール10.2部を添加して10分間撹拌した後、水486部を1時間かけて滴下し、不揮発分30%のアクリル変性エポキシ樹脂(A−5)の水分散体を得た。
【0080】
[製造例6]
<アクリル変性エポキシ樹脂(A−6)の合成>
製造例1同様の反応容器に、JER1009を168.0部、エチレングリコールモノブチルエーテル80部、n−ブタノール75部を仕込んで、120℃まで昇温して溶解させた。反応容器内の温度を120℃に保ちながら、メタクリル酸44.8部、スチレン56.0部、アクリル酸エチル11.2部、及び過酸化ベンゾイル4.5部からなる混合物を滴下槽から1時間にわたって連続滴下した。滴下終了から1時間後、及び2時間後に過酸化ベンゾイル0.7部をそれぞれ添加し、滴下終了から3時間にわたって反応を続け、その後に90℃まで冷却した。続いて、ジメチルアミノエタノール10.2部を添加して10分間撹拌した後、水482部を1時間かけて滴下し、不揮発分30%のアクリル変性エポキシ樹脂(A−6)の水分散体を得た。
【0081】
[製造例7]
<アクリル変性エポキシ樹脂(A−7)の合成>
製造例1同様の反応容器に、JER1009を210.0部、エチレングリコールモノブチルエーテル80部、n−ブタノール75部を仕込んで、120℃まで昇温して溶解させた。反応容器内の温度を120℃に保ちながら、メタクリル酸28.0部、スチレン35.0部、アクリル酸エチル7.0部、及び過酸化ベンゾイル4.2部からなる混合物を滴下槽から1時間にわたって連続滴下した。滴下終了から1時間後、及び2時間後に過酸化ベンゾイル0.6部をそれぞれ添加し、滴下終了から3時間にわたって反応を続け、その後に90℃まで冷却した。続いて、ジメチルアミノエタノール8.7部を添加して10分間撹拌した後、水484部を1時間かけて滴下し、不揮発分30%のアクリル変性エポキシ樹脂(A−7)の水分散体を得た。
【0082】
[製造例8]
<アクリル変性エポキシ樹脂(A−8)の合成>
製造例1同様の反応容器に、JER1009を210.0部、エチレングリコールモノブチルエーテル80部、n−ブタノール75部を仕込んで、120℃まで昇温して溶解させた。反応容器内の温度を120℃に保ちながら、メタクリル酸28.0部、スチレン35.0部、アクリル酸エチル7.0部、及び過酸化ベンゾイル2.8部からなる混合物を滴下槽から1時間にわたって連続滴下した。滴下終了から1時間後、及び2時間後に過酸化ベンゾイル0.4部をそれぞれ添加し、滴下終了から3時間にわたって反応を続け、その後に90℃まで冷却した。
続いて、ジメチルアミノエタノール10.2部、水10.2部を混合して添加し、90℃で2時間エステル化反応を行った。
反応終了後に水474部を1時間かけて滴下し、不揮発分30%のアクリル変性エポキシ樹脂(A−8)の水分散体を得た。
【0083】
[製造例9]
<ワックス分散用アクリル樹脂溶液(f)の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、n−ブタノール590部を仕込み110℃に昇温した。メタクリル酸90部、スチレン105部、アクリル酸エチル105部、n−ブタノール100部、過酸化ベンゾイル5部の混合物を滴下槽から3時間にわたって連続滴下した。滴下終了から1時間後、及び2時間後に過酸化ベンゾイル0.5部をそれぞれ添加し、滴下終了から3時間にわたって反応を続け、数平均分子量17000、酸価195mgKOH/g、不揮発分30%のアクリル樹脂溶液を得た。これをワックス分散用アクリル樹脂溶液(f)とする。
【0084】
[製造例10]
<ワックス水性分散体(B−1)の製造>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、精製カルナバワックス100部、製造例4で得られたワックス分散用アクリル樹脂溶液(f)16.2部を仕込み、90℃に昇温して混合溶解した。次いで、ジメチルアミノエタノール3.1部を加えて撹拌した後、反応容器内の温度を85〜90℃に保持しながら水880部を徐々に添加することで乳化した。添加終了後、1時間かけて40℃まで冷却して不揮発分11%、ワックス分濃度10%、平均粒子径0.3μmのワックス分散体を得た。これをワックス水性分散体(B−1)とする。
【0085】
[製造例11]
<ワックス水性分散体(B−2)の製造>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、「S394−N5」(Shamrock Technologies社製ポリエチレンワックス)80部、精製カルナバワックス20部、エチレングリコールモノブチルエーテル900部を仕込み、120℃に昇温して混合溶解した後、ジメチルアミノエタノール2.1部を仕込み撹拌した。次いで、界面活性剤の不存在の条件で、高速撹拌下において反応容器内の混合溶解物を1時間かけて60℃まで序序に冷却してワックスを析出させ、さらに40℃まで冷却して不揮発分10%、平均粒子径8μmのワックス分散体を得た。これをワックス水性分散体(B−2)とする。
【0086】
[製造例12]
<ワックス水性分散体(B−3)の製造>
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、「S394−N5」20部、エチレングリコールモノブチルエーテル80部を仕込み撹拌して、不揮発分20%、平均粒子径18μmのワックス分散体を得た。これをワックス水性分散体(B−3)とする。
【0087】
[実施例1]
製造例1で得られたアクリル変性エポキシ樹脂(A−1)の水分散体を100部、「Hydrocer257」(Shamrock Technologies社製ポリエチレンワックス水性分散体、平均粒子径5μm、不揮発分50%)を0.60部、「SL506」(エレメンティス・ジャパン株式会社製カルナバワックス水性分散体、平均粒子径2μm、不揮発分18.5%)を1.62部、水7部を添加し、不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のせん断速度10000s
-1における粘度η
H(以下、単にη
Hと言う)は47mPa・sであり、せん断速度0.1s
-1の低せん断速度条件の粘度η
Lと、前述のせん断速度10000s
-1における粘度η
Hとの粘度比η
L/η
H(以下、単にη
L/η
Hと言う)は3.2であった。表面張力は27.1mN/mであった。
【0088】
[実施例2]
実施例1で得られた金属包装材用水性塗料100部の撹拌下に、粘度調整剤としてジメチルアミノエタノールを0.1部添加し、不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは68mPa・sであり、η
L/η
Hは4.5であった。表面張力は26.9mN/mであった。
【0089】
[実施例3]
実施例1で得られた金属包装材用水性塗料100部の撹拌下に、ジメチルアミノエタノール0.3部を撹拌混合し、不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは98mPa・sであり、η
L/η
Hは5.2であった。表面張力は27.0mN/mであった。
【0090】
[実施例4]
アクリル変性エポキシ樹脂(A−1)の代わりに、アクリル変性エポキシ樹脂(A−2)の水分散体を100部用いた以外は、実施例1同様にして不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは45mPa・sであり、η
L/η
Hは7.6であった。表面張力は26.7mN/mであった。
【0091】
[実施例5]
「SL506」の代わりにワックス水性分散体(B−1)を3部用い、水を6部添加した以外は、実施例1と同様にして不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは43mPa・sであり、η
L/η
Hは3.3であった。表面張力は26.8mN/mであった。
【0092】
[実施例6]
「Hydrocer257」の代わりにワックス水性分散体(B−2)を3部用い、水を5部添加した以外は、実施例1と同様にして不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは51mPa・sであり、η
L/η
Hは3.2であった。表面張力は26.9mN/mであった。
【0093】
[実施例7]
「SL506」、「Hydrocer257」の代わりにワックス水性分散体(B−1)を3部、ワックス水性分散体(B−2)を3部それぞれ用い、水を3部添加した以外は、実施例1と同様にして不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは49mPa・sであり、η
L/η
Hは3.5であった。表面張力は27.0mN/mであった。
【0094】
[実施例8]
アクリル変性エポキシ樹脂(A−1)の代わりに、アクリル変性エポキシ樹脂(A−3)の水分散体を100部用いた以外は、実施例1と同様にして不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは39mPa・sであり、η
L/η
Hは3.3であった。表面張力は27.3mN/mであった。
【0095】
[実施例9]
アクリル変性エポキシ樹脂(A−1)の代わりに、アクリル変性エポキシ樹脂(A−4)の水分散体を100部用いた以外は、実施例1と同様にして不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは59mPa・sであり、η
L/η
Hは3.8であった。表面張力は27.2mN/mであった。
【0096】
[実施例10]
アクリル変性エポキシ樹脂(A−1)の代わりに、アクリル変性エポキシ樹脂(A−5)の水分散体を100部用いた以外は、実施例1と同様にして不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは40mPa・sであり、η
L/η
Hは2.8であった。表面張力は27.4mN/mであった。
【0097】
[実施例11]
アクリル変性エポキシ樹脂(A−1)の代わりに、アクリル変性エポキシ樹脂(A−6)の水分散体を100部用いた以外は、実施例1と同様にして不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは52mPa・sであり、η
L/η
Hは5.8であった。表面張力は27.1mN/mであった。
【0098】
[実施例12]
実施例1で得た金属包装材用水性塗料100部の撹拌下に、「PR−C−10」(住友ベークライト(株)製フェノール樹脂溶液、不揮発分50%)1.65部、水1部を添加し、不揮発分が28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは48mPa・sであり、η
L/η
Hは3.5であった。表面張力は27.0mN/mであった。
【0099】
[比較例1]
アクリル変性エポキシ樹脂(A−1)の代わりに、アクリル変性エポキシ樹脂(A−7)の水分散体を100部用いた以外は、実施例1と同様にして不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは18mPa・sであり、η
L/η
Hは2.5であった。表面張力は26.9mN/mであった。
【0100】
[比較例2]
アクリル変性エポキシ樹脂(A−1)の代わりに、アクリル変性エポキシ樹脂(A−8)の水分散体を100部用いた以外は、実施例1と同様にして不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは46mPa・sであり、η
L/η
Hは8.6であった。表面張力は27.5mN/mであった。
【0101】
[比較例3]
実施例1で得られた金属包装材用水性塗料100部の撹拌下に、ジメチルアミノエタノール0.6部を撹拌混合し、不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは119mPa・sであり、η
L/η
Hは5.6であった。表面張力は27.4mN/mであった。
【0102】
[比較例4]
「Hydrocer257」の代わりにワックス水性分散体(B−3)を1.5部用い、水を6部添加した以外は、実施例1と同様にして不揮発分28%の金属包装材用水性塗料を得た。得られた塗料のη
Hは49mPa・sであり、η
L/η
Hは3.5であった。表面張力は26.9mN/mであった。
【0103】
[物性の評価]
実施例1〜12、比較例1〜4で得られた金属包装材用水性塗料の塗装性を評価した。また、各水性塗料を塗装して試験パネルを作成し、下記に示す項目において塗膜の諸物性を評価した。尚、試験パネルは、0.26mm厚のアルミ板上に各水性塗料を乾燥塗膜重量が45mg/dm
2となるようバーコーターで塗装し、次いで、250℃に設定されたオーブンにて1分間焼付けて作成した。
【0104】
<塗装性>
リバースコーターを用い、実施例1〜12、及び比較例1〜4で得られた金属包装材用水性塗料の塗装性を確認した。室温26℃で塗膜量45mg/dm
2になるように、リバースコーターの条件を「周速比:バックアップロール/アプリケーションロール/ピックアップロール=1/1.1〜1.7/0.3」として塗装しその塗膜状態を目視にて評価した。塗装は、バックアップロール上に貼付した、枚葉状のアルミニウム板を基材としておこなった。評価基準は下記のとおりである。
◎:塗装欠陥なし。良好。
○:ごくわずかに塗装ムラ、ロール目、ワキのいずれかがある。実用上問題なし。
△:はっきりと塗装ムラ、ロール目、ワキのいずれかがある。使用できない。
×:著しい塗装ムラ、ロール目、ワキのいずれかがある。使用できない。
【0105】
<動摩擦係数>
試験パネルの塗膜面に、3個の鋼球がついた重さ1kgの錘を、鋼球が塗膜面と接するようにして乗せ、この錘を150cm/分の速さで引っ張り、このときの動摩擦係数を測定した。動摩擦係数が小さいほど滑り性は良好である。
【0106】
<引っ掻き測定>
トライボギアHEIDON−22H(新東科学(株)製)を使用し、引っ掻き針ダイヤ100ミクロン、引っ掻き長さ50mm、引っ掻き速度300mm/分の条件において、連続的に0〜500gまで荷重を掛けて引っ掻き測定を行った。塗膜に傷が発生し、その傷がアルミ基材に到達した際の荷重を測定した。
◎:傷の発生なし。良好。
○:荷重400g以上。実用上問題なし。
△:荷重300g以上400g未満。使用できない。
×:荷重300g未満。使用できない。
【0107】
<耐摩耗性>
トライボギアHEIDON−22H(新東科学(株)製)を使用し、荷重1000g、往復幅2mm、往復速度300mm/分の条件において、接触子φ3mmのステンレス球を試験パネル上で往復運動させた。塗膜に傷が発生し、その傷がアルミ基材に到達するまでの往復回数を測定した。
◎:往復回数が1000回以上。良好。
○:500回以上1000回未満。実用上問題なし。
△:200回以上500回未満。使用できない。
×:200回未満。使用できない。
【0108】
<折り曲げ加工性>
試験パネルを大きさ30mm×50mmに切断し、塗膜を外側にして、試験部位が30mmの幅になるように手で予め折り曲げ、この2つ折りにした試験片の間に厚さ0.26mmのアルミ板を5枚はさみ、1kgの荷重を高さ40cmから折り曲げ部に落下させて完全に折り曲げた。次いで、試験片の折り曲げ先端部を濃度1%の食塩水中に浸漬させ、試験片の、食塩水中に浸漬されていない金属部分と、食塩水との間を6.0V×6秒通電した時の電流値を測定した。
塗膜の加工性が乏しい場合、折り曲げ加工部の塗膜がひび割れて、下地の金属板が露出して導電性が高まるため、高い電流値が得られる。
◎:5.0mA未満。良好。
○:5.0mA以上10mA未満。実用上問題なし。
△:10mA以上20mA未満。使用できない。
×:20mA以上。使用できない。
【0109】
<密着性>
試験パネルを水に浸漬したまま、レトルト釜で130℃−1時間レトルト処理を行った。処理後の塗膜面にカッターにてクロスカットをした後、セロハン粘着テープを貼着し、強く剥離した後の塗膜面の剥離状態について評価を行った。
◎:全く剥離なし。良好。
○:5%未満の剥離あり。実用上問題なし。
△:5〜20%の剥離あり。使用できない。
×:20%を超える剥離あり。使用できない。
【0110】
<耐水性>
試験パネルを水に浸漬したまま、レトルト釜で130℃−1時間レトルト処理を行い、塗膜の外観について目視で評価した。
◎:未処理の塗膜と変化なし。良好。
○:軽微な白化。実用上問題なし。
△:やや白化。使用できない。
×:著しく白化。使用できない。
【0111】
<ワックス堆積性>
製蓋プレス機を用いて、各試験パネルにつき200枚の製蓋加工を行った後、試験パネルからプレス金型に付着堆積したワックスについて目視で評価した。
◎:堆積物なし。良好。
○:わずかに堆積物あり。実用上問題なし。
△:堆積物あり。使用できない。
×:著しく堆積物あり。使用できない。
【0112】
表2に実施例1〜12、及び比較例1〜4で得られた金属包装材用水性塗料の塗装性、及びこれら水性塗料から得られた塗膜物性の評価結果を示す。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
表2に示すように、実施例1〜12の金属包装材用水性塗料は、すべての物性が良好であったのに対し、比較例1〜4の金属包装材用水性塗料では物性のいずれかが不良であり、全てが良好となるものは得られなかった。