(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生体情報測定装置を腕や手首に装着して生体情報を光学的に測定する場合、発光部から照射された測定光が皮膚で吸収される度合いが、被測定者の腕や手首における皮膚の色で異なる。この皮膚の色の違いが光の吸収に影響を及ぼすため、発光部の発光強度や受光部の出力を増幅するゲインを適切に設定する必要がある。
【0005】
例えば、発光部の発光強度を大きめに設定し過ぎた場合、常時測定用としてあるいは携帯用として使用される生体情報測定装置は、通常、電池を駆動源として用いていることから、消費電力が増大して装置の動作時間が短くなって、利用者の利便性を低下させるという問題がある。
【0006】
また、出力信号からAC成分を取り出して増幅することによって得られる脈波信号について、増幅ゲインを予め大きめに設定し過ぎた場合、脈波信号の振幅が増幅回路のダイナミックレンジ又はA/D変換器のレンジを超えて飽和してしまい、脈波信号を正常に検出できなくなってしまう。逆に、生体情報測定装置の腕や手首への装着状態が不適切であると、脈波信号の振幅が小さくなってしまい、脈波信号を検出できなってしまう。
【0007】
そこで、この発明の課題は、発光部及び受光部を備える光学センサを備え、被測定者の脈波や脈拍数や血圧や酸素飽和度等の生体情報を光学的に測定する生体情報測定装置であって、発光部の発光強度及び/又は受光部の出力を増幅するゲイン等のパラメータを適切に設定できる生体情報測定装置及び該装置におけるパラメータ設定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の局面では、この発明の生体情報測定装置は、
被測定者の被測定部位に装着される本体と、
或る発光強度で発光して前記被測定部位に向けて光を照射する発光部と、前記被測定部位からの反射光又は透過光を受光する受光部と、を有する測定部と、
前記受光部から出力される光電出力を増幅して出力信号として出力する出力信号出力部と、
前記出力信号からAC成分を取り出すとともにAC成分を増幅して脈波信号として出力する脈波信号出力部と、
複数のサンプル被測定者に関して、前記脈波信号の振幅が検出可能となる或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で前記発光部を発光させることによって予め取得された必要発光強度−出力信号の関係を記憶する第1の記憶部と、
前記被測定者に関して前記発光部を前記検出可能発光強度で試行的に発光させることによって前記出力信号出力部で前記出力信号を取得し、前記取得された出力信号と前記第1の記憶部に記憶された前記必要発光強度−出力信号の関係とに基づいて、前記AC成分が前記脈波信号出力部でAC成分を取り出し可能な最低限の振幅を超えるように、前記発光部を発光させる必要発光強度を設定する発光強度設定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本明細書における「検出可能発光強度」は、AC成分(脈波信号)が脈波信号出力部で取り出し可能(すなわち検出可能)である或る大きさの発光強度(駆動電流)のことを意味している。また、本明細書における「必要発光強度」は、AC成分(脈波信号)が脈波信号出力部で検出される最低限の振幅を超えるのに必要な或る大きさの発光強度(駆動電流)のことを意味している。
【0010】
第1の局面の発明の生体情報測定装置では、第1の記憶部が、複数のサンプル被測定者に関して、脈波信号の振幅が検出可能となる或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で発光部を発光させることによって予め取得された必要発光強度−出力信号の関係を記憶している。発光強度設定部が、被測定者に関して発光部を検出可能発光強度で試行的に発光させることによって出力信号出力部で出力信号を取得し、取得された出力信号と第1の記憶部に記憶された必要発光強度−出力信号の関係とに基づいて、AC成分が脈波信号出力部で取り出し可能な最低限の振幅を超えるように、発光部を発光させる必要発光強度を設定している。その結果、生体情報を光学的に測定するための条件を規定するパラメータの一つである発光部での必要発光強度(すなわち駆動電流)が、適切に設定される。したがって、生体情報の測定を簡便に行うことができる。
【0011】
第2の局面では、この生体情報測定装置は、被測定者の被測定部位に装着される本体と、或る発光強度で発光して前記被測定部位に向けて光を照射する発光部と、前記被測定部位からの反射光又は透過光を受光する受光部と、を有する測定部と、前記受光部から出力される光電出力を増幅して出力信号として出力する出力信号出力部と、前記出力信号からAC成分を取り出すとともにAC成分を増幅して脈波信号として出力する脈波信号出力部と、複数のサンプル被測定者に関して、前記脈波信号の振幅が検出可能となる或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で前記発光部を発光させることによって予め取得された必要発光強度−出力信号レベルの関係を記憶する第2の記憶部と、前記被測定者に関して前記発光部を前記検出可能発光強度で試行的に発光させることによって前記出力信号出力部で前記出力信号レベルを取得し、前記取得された出力信号レベルと前記第2の記憶部に記憶された前記必要発光強度−出力信号レベルの関係とに基づいて、前記出力信号レベルの予測値を算出する出力信号予測値算出部と、前記出力信号レベルの予測値に基づいて、前記出力信号レベルが前記出力信号出力部の処理可能レンジに入るように、前記出力信号出力部の増幅ゲインを設定する出力信号増幅ゲイン設定部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
第2の局面の生体情報測定装置では、第2の記憶部が、複数のサンプル被測定者に関して、脈波信号の振幅が検出可能となる或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で発光部を発光させることによって予め取得された必要発光強度−出力信号レベルの関係を記憶している。出力信号予測値算出部が、被測定者に関して発光部を検出可能発光強度で試行的に発光させることによって出力信号出力部で出力信号レベルを取得し、取得された出力信号レベルと第2の記憶部に記憶された必要発光強度−出力信号レベルの関係とに基づいて、出力信号レベルの予測値を算出している。出力信号増幅ゲイン設定部が、出力信号レベルの予測値に基づいて、出力信号レベルが出力信号出力部の処理可能レンジに入るように、出力信号出力部の増幅ゲインを設定している。その結果、生体情報を光学的に測定するための条件を規定するパラメータの一つである出力信号出力部での増幅ゲイン(すなわち受光感度)が、適切に設定されている。したがって、生体情報の測定を簡便に行うことができる。
【0013】
第3の局面では、この生体情報測定装置は、被測定者の被測定部位に装着される本体と、或る発光強度で発光して前記被測定部位に向けて光を照射する発光部と、前記被測定部位からの反射光又は透過光を受光する受光部と、を有する測定部と、前記受光部から出力される光電出力を増幅して出力信号として出力する出力信号出力部と、前記出力信号からAC成分を取り出すとともにAC成分を増幅して脈波信号として出力する脈波信号出力部と、複数のサンプル被測定者に関して、前記脈波信号の振幅が検出可能となる或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で前記発光部を発光させることによって予め取得された必要発光強度−脈波信号の振幅の関係を記憶する第3の記憶部と、前記被測定者に関して前記発光部を前記検出可能発光強度で試行的に発光させることによって前記脈波信号出力部で前記脈波信号の振幅を取得し、前記取得された脈波信号の振幅と前記第3の記憶部に記憶された前記必要発光強度−脈波信号の振幅の関係とに基づいて、前記脈波信号の振幅の予測値を算出する脈波信号予測値算出部と、前記脈波信号の振幅の予測値に基づいて、前記脈波信号の振幅が前記脈波信号出力部の処理可能レンジに入るように、前記脈波信号出力部の増幅ゲインを設定する脈波信号増幅ゲイン設定部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
第3の局面の生体情報測定装置では、第3の記憶部が、複数のサンプル被測定者に関して、脈波信号の振幅が検出可能となる或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で発光部を発光させることによって予め取得された必要発光強度−脈波信号の振幅の関係を記憶している。脈波信号予測値算出部が、被測定者に関して発光部を検出可能発光強度で試行的に発光させることによって脈波信号出力部で脈波信号の振幅を取得し、取得された脈波信号の振幅と第3の記憶部に記憶された必要発光強度−脈波信号の振幅の関係とに基づいて、脈波信号の振幅の予測値を算出している。脈波信号増幅ゲイン設定部が、脈波信号の振幅の予測値に基づいて、前記脈波信号の振幅が前記脈波信号出力部の処理可能レンジに入るように、前記脈波信号出力部の増幅ゲインを設定している。その結果、生体情報を光学的に測定するための条件を規定するパラメータの一つである脈波信号出力部での増幅ゲイン(すなわち脈波信号ゲイン)が、適切に設定されている。したがって、生体情報の測定を簡便に行うことができる。
【0015】
第4の局面では、この生体情報測定装置は、被測定者の被測定部位に装着される本体と、或る発光強度で発光して前記被測定部位に向けて光を照射する発光部と、前記被測定部位からの反射光又は透過光を受光する受光部と、を有する測定部と、前記受光部から出力される光電出力を増幅して出力信号として出力する出力信号出力部と、前記出力信号からAC成分を取り出すとともにAC成分を増幅して脈波信号として出力する脈波信号出力部と、複数のサンプル被測定者に関して、前記脈波信号の振幅が検出可能となる或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で前記発光部を発光させることによって予め取得された必要発光強度−出力信号の関係と、或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で前記発光部を発光させることによって予め取得された必要発光強度−出力信号レベルの関係と、或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で前記発光部を発光させることによって予め取得された必要発光強度−脈波信号の振幅の関係と、をそれぞれ記憶する第4の記憶部と、前記被測定者に関して前記発光部を前記検出可能発光強度で試行的に発光させることによって前記出力信号出力部で前記出力信号を取得し、前記取得された出力信号と前記第4の記憶部に記憶された前記必要発光強度−出力信号の関係とに基づいて、前記AC成分が前記脈波信号出力部でAC成分を取り出し可能な最低限の振幅を超えるように、前記発光部を発光させる必要発光強度を設定する発光強度設定部と、前記検出可能発光強度での試行的な発光によって前記出力信号出力部で前記出力信号レベルを取得し、前記取得された出力信号レベルと前記第4の記憶部に記憶された前記必要発光強度−出力信号レベルの関係とに基づいて、前記出力信号レベルの予測値を算出する出力信号予測値算出部と、前記出力信号レベルの予測値に基づいて、前記出力信号レベルが前記出力信号出力部の処理可能レンジに入るように、前記出力信号出力部の増幅ゲインを設定する出力信号増幅ゲイン設定部と、前記検出可能発光強度での試行的な発光によって前記脈波信号出力部で前記脈波信号の振幅を取得し、前記取得された脈波信号の振幅と前記第4の記憶部に記憶された前記必要発光強度−脈波信号の振幅の関係とに基づいて、前記脈波信号の振幅の予測値を算出する脈波信号予測値算出部と、前記脈波信号の振幅の予測値に基づいて、前記脈波信号の振幅が前記脈波信号出力部の処理可能レンジに入るように、前記脈波信号出力部の増幅ゲインを設定する脈波信号増幅ゲイン設定部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
第4の局面の生体情報測定装置では、第4の記憶部が、複数のサンプル被測定者に関して、脈波信号の振幅が検出可能となる或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で発光部を発光させることによって予め取得された必要発光強度−出力信号の関係と、或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で発光部を発光させることによって予め取得された必要発光強度−出力信号レベルの関係と、或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で発光部を発光させることによって予め取得された必要発光強度−脈波信号の振幅の関係と、をそれぞれ記憶している。発光強度設定部が、被測定者に関して発光部を前記検出可能発光強度で試行的に発光させることによって出力信号出力部で出力信号を取得し、取得された出力信号と第4の記憶部に記憶された必要発光強度−出力信号の関係とに基づいて、AC成分が脈波信号出力部で取り出し可能な最低限の振幅を超えるように、発光部を発光させる必要発光強度を設定している。出力信号予測値算出部が、検出可能発光強度での試行的な発光によって出力信号出力部で出力信号レベルを取得し、取得された出力信号レベルと第4の記憶部に記憶された必要発光強度−出力信号レベルの関係とに基づいて、出力信号レベルの予測値を算出している。出力信号増幅ゲイン設定部が、出力信号レベルの予測値に基づいて、出力信号レベルが出力信号出力部の処理可能レンジに入るように、出力信号出力部の増幅ゲインを設定している。脈波信号予測値算出部が、検出可能発光強度での試行的な発光によって脈波信号出力部で脈波信号の振幅を取得し、取得された脈波信号の振幅と第4の記憶部に記憶された必要発光強度−脈波信号の振幅の関係とに基づいて、脈波信号の振幅の予測値を算出している。脈波信号増幅ゲイン設定部が、脈波信号の振幅の予測値に基づいて、脈波信号の振幅が脈波信号出力部の処理可能レンジに入るように、脈波信号出力部の増幅ゲインを設定している。その結果、生体情報を光学的に測定するための測定条件を規定するパラメータである、発光部での必要発光強度と、出力信号出力部での増幅ゲイン(受光感度)と、脈波信号出力部での増幅ゲイン(脈波信号ゲイン)とが、それぞれ、適切に設定されている。したがって、生体情報の測定を簡便に且つ正確に行うことができる。
【0017】
一実施形態の生体情報測定装置では、前記測定部の前記発光部を前記検出可能発光強度で発光させる期間は、少なくとも1拍分を含む期間であることを特徴とする。
【0018】
この一実施形態の生体情報測定装置では、測定時間の短縮を可能にする。
【0019】
一実施形態の生体情報測定装置では、前記予め取得された必要発光強度−出力信号の関係は、mを定数とし、且つ、或る発光強度での前記AC成分の前記出力信号レベルに対する比をヘモグロビン吸光度と規定するとき、(必要発光強度)=m/{(ヘモグロビン吸光度)×(脈波信号の振幅が検出可能となる或る検出可能発光強度で発光させたときの発光強度1mA当たりの出力信号レベル)}という関係式によって規定されることを特徴とする。
【0020】
この一実施形態の生体情報測定装置では、複数のサンプル被測定者に関して実験で予め取得されるとともに記憶部に記憶された関係式に基づいて必要発光強度が設定されるので、生体情報に関する測定精度を高めることができる。
【0021】
一実施形態の生体情報測定装置では、前記前記予め取得された必要発光強度−出力信号の関係は、fとgを定数とするとき、(必要発光強度)=f/(前記発光部を前記検出可能発光強度で発光させたときに取得される脈波信号の振幅−g)という関係式によって規定されることを特徴とする。
【0022】
この一実施形態の生体情報測定装置では、複数のサンプル被測定者に関して実験で予め取得されるとともに記憶部に記憶された関係式に基づいて必要発光強度が設定されるので、生体情報に関する測定精度を高めることができる。
【0023】
一実施形態の生体情報測定装置では、前記予め取得された必要発光強度−出力信号レベルの関係は、hを定数とするとき、(出力信号レベルの予測値)=h×{(前記発光部を前記検出可能発光強度で発光させたときに取得される出力信号レベル)×(必要発光強度)}という関係式によって規定されることを特徴とする。
【0024】
この一実施形態の生体情報測定装置では、複数のサンプル被測定者に関して実験で予め取得されるとともに記憶部に記憶された関係式に基づいて出力信号出力部での増幅ゲイン(受光感度)が設定されるので、生体情報に関する測定精度を高めることができる。
【0025】
一実施形態の生体情報測定装置では、前記予め取得された必要発光強度−脈波信号の振幅の関係は、fとgを定数とするとき、(脈波信号の振幅の予測値)={f×(前記発光部を前記検出可能発光強度で発光させたときに取得される脈波信号の振幅)−g}×(必要発光強度)という関係式によって規定されることを特徴とする。
【0026】
この一実施形態の生体情報測定装置では、複数のサンプル被測定者に関して実験で予め取得されるとともに記憶部に記憶された関係式に基づいて脈波信号出力部での増幅ゲイン(脈波信号ゲイン)が設定されるので、生体情報に関する測定精度を高めることができる。
【0027】
この発明の生体情報測定装置におけるパラメータ設定方法は、複数のサンプル被測定者に関して、前記脈波信号の振幅が検出可能となる或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で前記発光部を発光させることによって、前記検出可能発光強度と、前記測定された前記出力信号のレベルと前記脈波信号の振幅との関係をそれぞれ予め取得して、当該関係を前記第4の記憶部に記憶するステップと、前記検出可能発光強度で前記発光部を試行的に発光させるステップと、前記被測定者の少なくとも1拍分の期間にわたって、前記出力信号のレベルと前記脈波信号の振幅とを測定するステップと、前記発光強度設定部によって、前記AC成分が前記脈波信号出力部でAC成分を取り出し可能な最低限の振幅を超えるように、前記発光部を発光させる必要発光強度を設定するステップと、前記出力信号予測値算出部によって、前記出力信号のレベルの予測値を算出するステップと、前記出力信号増幅ゲイン設定部によって、前記出力信号出力部における光電出力の増幅ゲインを設定するステップと、前記脈波信号予測値算出部によって、前記脈波信号の振幅の予測値を算出するステップと、前記脈波信号増幅ゲイン設定部によって、前記脈波信号出力部における増幅ゲインを設定するステップと、を備えることを特徴とする。
【0028】
この発明のパラメータ設定方法によれば、生体情報を光学的に測定するための条件を規定するパラメータである、発光部での必要発光強度(駆動電流)と出力信号出力部での増幅ゲイン(受光感度)と脈波信号出力部での増幅ゲイン(脈波信号ゲイン)とが、それぞれ、短時間で適切な値に設定されている。したがって、生体情報の測定を簡便に且つ正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
以上より明らかなように、この発明の生体情報測定装置及び該装置におけるパラメータ設定方法は、発光部の発光強度及び/又は出力信号出力部での増幅ゲイン(受光感度)及び/又は脈波信号出力部での増幅ゲイン(脈波信号ゲイン)という、生体情報の光学的な測定に重要である3つのパラメータを適切に設定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明の都合上、生体情報測定装置1の構成を説明する場合において、図示しない被測定部位の側を本体10の「下面側」、被測定部位の反対側を本体10の「上面側」としている。
【0032】
この発明の一実施形態における生体情報測定装置1は、測定対象である人(以下、被測定者という)の生体情報を光学的に測定する機能を有する。測定される生体情報は、測定部50を含む本体10が被測定者の被測定部位に対して密着した状態で光学的に測定することが要求されるものであり、例えば、脈波や脈拍数や血圧や酸素飽和度等の生体情報である。したがって、この発明の生体情報測定装置1は、例えば、脈波測定装置である。また、生体情報測定装置1が装着される被測定部位は、例えば、手首又は腕である。以下、生体情報測定装置1が脈波測定装置である場合について説明する。
【0033】
まず、
図1を参照して、脈波測定装置1の構成を説明する。
【0034】
図1の模式的断面図に示すように、脈波測定装置1は、本体10と、バンド20と、を含む。
【0035】
脈波測定装置1の本体10は、下面15から上面16にかけて、基部11と首部12と頭部13とが、順次積層された積層構造をしている。首部12は、基部11と頭部13との間に位置する。基部11と首部12と頭部13のいずれもが、略直方体形状をしており、各略直方体のコーナー部分には丸みが形成されている。本体10は、被測定者の被測定部位(図示しない)に対して密着して配置されて被測定部位との接触面を形成する下面15と、当該下面15の反対側に位置する上面16と、を有する。本体10は、下面15に沿った面方向に関して、頭部13のサイズが基部11のサイズよりも小さく、首部12のサイズが頭部13のサイズよりも小さく構成された段差構造をしている。すなわち、本体10の首部12が、くびれた形状をしている。
【0036】
脈波測定装置1の本体10は、下面15の側に配置されて被測定者の生体情報を測定する測定部50と、上面16の側に配置されて測定部50によって測定された生体情報に関する情報を表示する表示部114と、を備える。下面15の側に配置された測定部50は、赤外光又は近赤外光を発光する発光ダイオードのような発光素子54と、フォトダイオード又はフォトトランジスタのような受光素子56と、を備える光学式センサである。発光素子54は、被測定部位に向けて或る発光強度で光を照射する発光部として働く。また、受光素子56は、被測定部位からの反射光又は透過光を受光する受光部として働く。
【0037】
本体10が被測定部位に密着して配置された状態で、発光素子54から発せられた測定光(例えば赤外光又は近赤外光)を被測定部位にある動脈に照射すると、動脈を流れる赤血球によって照射光が反射され、この反射光が受光素子56で受光される。受光素子56で受光される反射光の光量は、脈波に応じて変化する。したがって、当該測定部50により、脈波情報を検出して脈拍数を計測することができる。なお、
図1では、測定部50が下面15に接するように配置されているが、測定部50が本体10の内部に配置されるとともに、本体10の内部に配置された測定部50と本体10の下面15と連通する空間部を備える構成であってもよい。また、
図1に示した脈波測定装置1は、測定部50が発光素子54と発光素子54の近傍に配置された受光素子56とから構成されて、被測定部位からの反射光を検出するタイプのものを例示しているが、測定部50が発光素子54と発光素子54に対して対向配置された受光素子56とから構成されて、被測定部位を透過した透過光を検出するタイプとすることもできる。
【0038】
表示部114が、本体10の上面16の側すなわち頭部13に配置されている。表示部114は、表示画面(例えば、LCD(Liquid Crystal Display)またはEL(Electroluminescence)ディスプレイなど)を含む。表示部114は、被測定者の生体情報に関する情報(例えば、脈拍数)等を表示画面に表示する。当該表示画面の制御は、表示制御部として機能する制御部111によって行われる。
【0039】
本体10を被測定者の被測定部位に取り付けるためのバンド20は、本体10を密着保持するための本体保持部23と、被測定部位を取り巻くための取り巻き部25と、を有する。
【0040】
本体保持部23に形成された開口部24は、表示部114に対応する位置に形成されて、表示部114が本体10の外部から見えることを許容する窓部として機能して、本体10の頭部13及び首部12を受け入れるように開いている。上述したように、本体10の頭部13及び首部12がコーナー部分に丸みを持った略矩形形状をしているので、本体10の当該矩形形状に対応して、バンド20の開口部24も、バンド20の面方向に関して、コーナー部分が丸みを持った略矩形形状をしている。開口部24の開口サイズは、くびれた首部12の外形サイズに略一致するように構成されている。本体10をバンド20に取り付けた脈波測定装置1においては、首部12の外形部分と略矩形の開口部24とが係合している。したがって、本体10の基部11の上面から下面15とは反対側に向けて突出する部分すなわち本体10の首部12の4つの側面部分と、バンド20の略矩形の開口部24を構成する4つの開口辺と、によって、本体10とバンド20とが本体10の下面15に沿った面方向に関して相対的に移動することを規制する規制部を形成している。
【0041】
取り巻き部25と、終端部27の上面22aとにおいては、長手方向に延びる長めの雌側面ファスナー26及び長手方向に延びる短めの雄側面ファスナー28がそれぞれ取り付けられている。雌側面ファスナー26及び雄側面ファスナー28は、互いに着脱自在に係合する面ファスナー係合構造を形成する。本体保持部23の左側端部29には、略矩形形状に屈折されたバックル部材30が取り付けられている。左側端部29とバックル部材30との間には、取り巻き部25を挿通させることのできる隙間を持った取り付け穴32が形成されている。
【0042】
次に、
図2を参照して、脈波測定装置1のハードウェア構成について説明する。
【0043】
図2は、脈波測定装置1をネットワーク上でも使用可能な構成として例示したものである。脈波測定装置1は、ネットワーク(図示しない)を介して、サーバ(図示しない)に対して有線又は無線によって相互に通信可能であるように構成されている。
【0044】
図2に示すように、脈波測定装置1の本体10は、制御部111と、記憶部112と、電源113と、表示部114と、操作部115と、測定部50と、通信部122と、を含む。
【0045】
制御部111は、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)およびその補助回路を含み、脈波測定装置1を構成する各部を制御し、記憶部112に記憶されたプログラムおよびデータに従って各種の処理を実行する。すなわち、制御部111は、操作部115、および、通信部122から入力されたデータを処理し、処理したデータを、記憶部112に記憶させたり、表示部114で表示させたり、通信部122から出力させたりする。
【0046】
制御部111は、CPUがプログラムを実行することにより、測定部50の発光素子54及び受光素子56の発光及び受光をそれぞれ制御して、測定部50によって測定されたデータ(例えば、脈波)に基づいて脈拍数を算出する、脈拍数算出部として働く。
【0047】
制御部111は、算出された脈拍数を表示部114に表示することを制御する表示制御部として働く。
【0048】
記憶部112は、制御部111でプログラムを実行するために必要な作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)と、制御部111で実行するための基本的なプログラムを記憶するためのROM(Read Only Memory)と、を含む。また、記憶部112の記憶領域を補助するための補助記憶装置の記憶媒体として、半導体メモリ(メモリカード、SSD(Solid State Drive))などを用いることができる。記憶部112は、被測定者の脈拍数を時系列で被測定者毎に記憶部112に格納することができる。
【0049】
記憶部112のROMは、第1乃至第4の記憶部として、後で詳細に説明する関係であって、必要発光強度−出力信号の関係と、必要発光強度−出力信号レベルの関係と、必要発光強度−脈波信号の振幅の関係をそれぞれ記憶している。
【0050】
操作部115は、例えば、脈波測定装置1の電源113をON又はOFFするために操作される電源スイッチと、被測定者毎の測定結果を記憶部112に保存するためにいずれの被測定者であるか、あるいは、どのような測定を行うか、を選択するために操作される操作スイッチと、を備える。なお、操作部115は、本体10の上面16の側あるいは側面に設置することができる。
【0051】
通信部122は、ネットワークを介して、制御部111によって生成されたデータや記憶部112に格納されていたデータをサーバへ送信したり、サーバの制御部(図示しない)によって生成されたデータやサーバの記憶部(図示しない)に格納されていたデータを受信したりするために用いられる。ここで、サーバとあるのは、通常のサーバに加えて、例えば、パーソナルコンピュータのような据え置き型端末、あるいは、携帯電話やスマートフォンやPDA(パーソナル・デジタル・アシスタンツ)やタブレット(tablet)のような携帯型端末を含む広い概念を意味している。
【0052】
次に、
図3を参照して、脈波測定装置1の測定部50の回路構成を例示する。測定部50は、
図3に示すように、発光素子54のパルス駆動を制御するパルス駆動回路47と、発光素子54の発光強度(すなわち駆動電流)を制御する発光強度制御回路45と、受光素子56の受光感度(すなわち光電出力の増幅ゲイン)を制御する出力信号増幅回路46と、出力信号(DC成分)S
DCからAC成分を取り出すとともにAC成分を増幅して脈波信号S
ACとして取り出す脈波信号増幅回路40と、AC成分用のA/D変換回路43と、DC成分用のA/D変換回路44と、を備える。なお、A/D変換回路43,44は、CPU111に内蔵された態様であってもよい。
【0053】
制御部としてのCPU111がパルス駆動回路47に接続されており、パルス駆動回路47は、CPU111から供給された駆動パルスでnpn形のトランジスタをスイッチングすることにより、発光素子54の発光状態(周波数とデューティ)を制御する。そして、CPU111が発光強度制御回路45に接続されており、発光強度制御回路45は、CPU111からの発光強度制御信号に応じて、可変抵抗の抵抗値によって規定される駆動電流で発光素子54を駆動することにより、発光素子54の発光強度を制御する。すなわち、発光素子54を流れる駆動電流が大きくなるほど、発光素子54の発光強度(すなわち発光光量)が大きくなる。
【0054】
したがって、CPU111及び発光強度制御回路45は、後述するように、被測定者に関して発光素子54を検出可能発光強度で発光させて出力信号増幅回路46で出力信号S
DCを取得し、取得された出力信号S
DCと記憶部112に記憶された必要発光強度−出力信号の関係とに基づいて、AC成分が脈波信号増幅回路40で取り出される最低限の振幅を超えるように、発光素子54を発光させる必要発光強度を設定する発光強度設定部として働く。
【0055】
受光素子56は、受光した光の強さに応じた光電出力を出力する。出力信号増幅回路46は、CPU111からの光電出力制御信号に応じて、可変抵抗の抵抗値を増減させることで、受光素子56からの光電出力を増幅して、出力信号S
DCとして出力する。出力信号増幅回路46から出力された出力信号S
DCのレベル、すなわち出力電圧V
DCは、図示しない増幅器及びDC成分用のA/D変換器44を経て、デジタル信号となる。デジタルの出力信号レベルV’
DCは、CPU111に入力されて、脈波等の生体情報の演算処理に用いられる。
【0056】
したがって、CPU111及び出力信号増幅回路46は、受光素子56から出力される光電出力を増幅して、出力信号レベルV
DCを持った出力信号S
DCを出力する出力信号出力部として働く。
【0057】
脈波信号増幅回路40は、出力信号増幅回路46から出力された出力信号S
DCに対して、所定の周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタ41で帯域制限を施すことで出力信号S
DCからAC成分を取り出した後、オペアンプ42でAC成分を増幅し、脈波信号S
ACとして出力する。オペアンプ42は、CPU111からの脈波信号制御信号に応じて、図示しない入力抵抗と帰還抵抗との抵抗比を調整することによって、脈波信号の増幅ゲインを制御する。オペアンプ42から出力された脈波信号S
ACは、AC成分用のA/D変換器43を経て、デジタル信号の脈波信号として出力される。デジタルで出力された脈波信号の振幅V’
ACは、CPU111に入力されて、生体情報の演算処理に用いられる。
【0058】
したがって、CPU111及び脈波信号増幅回路40は、出力信号S
DCからAC成分を取り出すとともに、当該AC成分を増幅して脈波信号S
ACを出力する脈波信号出力部として働く。
【0059】
受光素子56から出力される出力信号S
DCは、組織や滞留している血液などに吸収及び散乱された光から生じて周期的に変動しないDC成分(直流成分)に対して、生体の脈動(すなわち血液の脈波)を反映して周期的に変動するAC成分(交流成分)が重畳した波形として出力される。そして、AC成分がDC成分よりも相対的に微小であるので、脈波信号増幅回路40によってAC成分が増幅される。受光素子56から出力される出力信号S
DC及び脈波信号増幅回路40から出力される脈波信号S
ACの一例を、それぞれ、
図4及び5に示す。
図4において、横軸が時間(秒)を表し、縦軸が出力信号レベルV
DC(単位を省略)を表す。また、
図5において、横軸が時間(秒)を表し、縦軸が脈波信号S
ACの振幅V
AC(単位を省略)を表す。
図4に示した出力信号S
DCでは周期的な変動がほとんど見えないのに対して、
図5に示した脈波信号S
ACは、生体の脈動(すなわち血液の脈波)に応じて周期的に変化していることを示している。
【0060】
被測定者の脈波を光学的に測定する脈波測定装置1は、発光素子54での発光強度(駆動電流)と、出力信号増幅回路46での増幅ゲイン(受光感度)と、脈波信号増幅回路40での増幅ゲイン(脈波信号ゲイン)と、という主要な3つのパラメータによって光学的測定条件を規定することができる。当該3つのパラメータは、記憶部112のROMに記憶された以下に説明する関係式に基づいて求めることができる。この発明では、3つのパラメータの内の少なくとも1つを関係式に従って算出することを特徴としており、関係式に従って算出されないその他のパラメータについては、予め準備されていて記憶部112のROMに記憶された典型的な所与の値を用いることができる。
【0061】
発光素子54の必要発光強度と、脈波信号増幅回路40から出力される脈波信号S
ACの振幅V
ACとの間の関係は、以下の手順によって求めることができる。
【0062】
複数のサンプル被測定者について、脈波信号(AC成分)S
ACが脈波信号増幅回路40(脈波信号出力部)で取り出し可能(検出可能)となる検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)を少なくとも含む複数の発光強度(例えば、駆動電流が、2mA、6mA、11mA)で発光素子54を発光させる。すると、各発光強度に対する脈波信号S
ACの振幅V
ACが得られる。発光強度を横軸(x軸)に、得られた脈波信号S
ACの振幅V
ACを縦軸(y軸)にして、得られた脈波信号S
ACの振幅V
ACをそれぞれプロットした散布図(図示しない)を作成する。この散布図から最小二乗法で求められる回帰直線の傾き[(脈波信号S
ACの振幅V
AC)/(発光強度)]を算出する。
【0063】
そして、検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)での脈波信号S
ACの振幅V
ACを横軸(x軸)に、上記の傾き[(脈波信号S
ACの振幅V
AC)/(発光強度)]を縦軸(y軸)にして、複数のサンプル被測定者について得られた測定結果をそれぞれプロットする。その結果を
図6に示す。なお、
図6において、横軸(x軸)の単位はVであり、縦軸(y軸)の単位はV/mAである。
図6の散布図から分かるように、検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)で発光素子54を試行的に発光させた場合において、x軸の脈波信号S
ACとy軸の傾き[(脈波信号S
ACの振幅V
AC)/(発光強度)]との間には右上がりの相関関係が認められた。そして、散布図に示した点列の測定データに最もよくフィットする回帰直線を最小二乗法で求めると、当該回帰直線の式は、
y=a・x±b (式1)
として求められる。但し、xが検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)での脈波信号S
ACの振幅V
AC、yが傾き[(脈波信号S
ACの振幅V
AC)/(発光強度)]を表し、a、bは
図6の散布図から求められる定数である。
【0064】
上記の(式1)を変形すると、
(脈波信号S
ACの振幅V
AC)={f×(検出可能発光強度で発光させたときの脈波信号S
ACの振幅V
AC)−g}×(発光強度) (式1−1)
となる。但し、f、gは実験的に決められる定数である。(式1−1)によれば、検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)で発光素子54を試行的に発光させた場合に得られる脈波信号S
ACの振幅V
ACを用いて、発光強度と脈波信号S
ACの振幅V
ACとの間の関係を求めることができる。
【0065】
そして、AC成分が脈波信号増幅回路40で取り出される最低限の振幅を超えるような必要発光強度が発光強度制御回路45によって設定されると、以下の(式1−2)によって、脈波信号増幅回路40で取り出し可能な最低限の振幅を有する脈波信号S
ACの振幅V
ACの予測値が算出される。上記の(式1−1)を変形すると、脈波信号S
ACの振幅V
ACの予測値(単位:V)は、
(脈波信号S
ACの振幅V
ACの予測値)={f×(検出可能発光強度で発光させたときの脈波信号S
ACの振幅V
AC)−g}×(必要発光強度) (式1−2)
となる。但し、f、gは実験的に決められる定数である。
【0066】
なお、(式1−2)において、gは、
図6に示した散布図における回帰直線からのオフセット誤差を示している。
図7は、
図6に示した散布図における回帰直線からのオフセット誤差を例示している。オフセット誤差の大小は、複数のサンプル被測定者における皮膚の色の違い等による個人差を反映している。
【0067】
このように、(式1−2)は、検出可能発光強度で発光させたときの脈波信号S
ACの振幅V
ACを含んでいることから、必要発光強度−出力信号の一部分である脈波信号S
ACの振幅V
ACの関係を示す関係式である。
【0068】
検出可能発光強度は、AC成分(脈波信号)が脈波信号増幅回路40(脈波信号出力部)で取り出し可能(検出可能)である或る大きさの発光強度(駆動電流)である。検出可能発光強度というのは、例えば6mAの駆動電流のことである。必要発光強度は、AC成分(脈波信号)が脈波信号増幅回路40(脈波信号出力部)で取り出される最低限の振幅を超えるのに必要な或る大きさの発光強度(駆動電流)である。脈波信号S
ACの振幅V
ACの予測値は、必要発光強度で発光素子54を発光させたときに脈波信号増幅回路40から出力されることが予測される、脈波信号の振幅である。
【0069】
逆に、或る大きさd(単位:V)の脈波信号S
ACの振幅V
ACが、回路処理上、最低限必要とされる場合、或る大きさd(V)の脈波信号S
ACの振幅V
ACを得るために必要な発光強度すなわち必要発光強度(単位:mA)は、
(式1−2)における左辺の(脈波信号S
ACの振幅V
ACの予測値)にdを代入して整理すると、
(必要発光強度)=d/{f×(検出可能発光強度で発光させたときの脈波信号S
ACの振幅V
AC)−g} (式2)
となる。但し、f、gは実験的に決められる定数である。
【0070】
ここで、(式2)は、検出可能発光強度で発光させたときの脈波信号S
ACの振幅V
ACを含んでいることから、必要発光強度−出力信号の一部分である脈波信号S
ACの振幅V
ACの関係を示す関係式である。したがって、(式2)の関係式を用いて、必要発光強度を算出することができる。
【0071】
発光素子54の必要発光強度と、受光素子56から出力される出力信号レベル(出力電圧)V
DCとの間の関係は、上記脈波信号S
ACの振幅V
ACの場合と同様の手順によって求めることができる。
【0072】
複数のサンプル被測定者について、AC成分(脈波信号S
AC)が脈波信号増幅回路40(脈波信号出力部)で取り出し可能(検出可能)となる検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)を少なくとも含む複数の発光強度(例えば、駆動電流が、2mA、6mA、11mA)で発光素子54を発光させる。すると、各発光強度に対する出力信号レベルV
DCが得られる。発光強度を横軸(x軸)に、得られた出力信号レベルV
DCを縦軸(y軸)にして、得られた出力信号レベルV
DCをそれぞれプロットした散布図(図示しない)を作成する。この散布図から最小二乗法で求められる回帰直線の傾き[(出力信号レベルV
DC)/(発光強度)]を算出する。
【0073】
そして、検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)での出力信号レベルV
DCを横軸(x軸)に、上記の傾き[(出力信号レベルV
DC)/(発光強度)]を縦軸(y軸)にして、複数のサンプル被測定者について得られた測定結果をそれぞれプロットする。その結果を
図8に示す。なお、
図8において、横軸(x軸)の単位はVであり、縦軸(y軸)の単位はV/mAである。
図8の散布図から分かるように、検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)で発光素子54を試行的に発光させた場合において、x軸の出力信号レベルV
DCとy軸の傾き[(出力信号レベルV
DC)/(発光強度)]との間には右上がりの相関関係が認められた。そして、散布図に示した点列の測定データに最もよくフィットする回帰直線を最小二乗法で求めると、当該回帰直線の式は、
y=a’・x±b’ (式3)
として求められる。但し、xが検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)での出力信号レベルV
DC、yが傾き[(出力信号レベルV
DC)/(発光強度)]を表し、a’、b’は
図8の散布図から求められる定数である。
【0074】
上記の(式3)を変形すると、
(出力信号レベルV
DC)={h×(検出可能発光強度で発光させたときの出力信号レベルV
DC)}×(発光強度) (式3−1)
となる。但し、hは実験的に決められる定数である。(式3−1)によれば、検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)で発光素子54を試行的に発光させた場合に得られる出力信号レベルV
DCを用いて、発光強度と出力信号レベルV
DCとの間の関係を求めることができる。
【0075】
そして、AC成分が脈波信号増幅回路40で取り出される最低限の振幅を超えるような必要発光強度が発光強度制御回路45によって設定されると、以下の(式3−2)によって、受光素子56から出力されると予測される出力信号レベルV
DCの予測値が算出される。
上記の(式3−1)を変形すると、出力信号レベルV
DCの予測値(単位:V)は、
(出力信号レベルV
DCの予測値)={h×(検出可能発光強度で発光させたときの出力信号レベルV
DC)}×(必要発光強度) (式3−2)
となる。但し、f、gは実験的に決められる定数である。
【0076】
このように、(式3−2)は、検出可能発光強度で発光させたときの出力信号レベルV
DCを含んでいることから、必要発光強度−出力信号の一部分である出力信号レベルV
DCの関係を示す関係式である。
【0077】
上述したように、(式2)の関係式を用いて、必要発光強度が求められるが、必要発光強度は、以下に説明する関係を用いることによっても求めることができる。
【0078】
脈波信号の振幅が検出可能となる或る検出可能発光強度で発光素子54を発光させたときのAC成分(脈波信号S
AC)の出力信号レベル(V
DC)に対する比をヘモグロビン吸光度と規定するとき、AC成分(脈波信号S
AC)が脈波信号増幅回路40(脈波信号出力部)で取り出し可能な最低限の振幅を超えるのに必要な必要発光強度は、
(必要発光強度)=m/{(ヘモグロビン吸光度)×(脈波信号S
ACの振幅V
ACが検出可能となる或る検出可能発光強度で発光させたときの発光強度1mA当たりの出力信号レベル)} (式4)
という関係式によって求めることができる。但し、mは設計的に決められる値である。ヘモグロビン吸光度は、複数のサンプル被測定者における皮膚の色の違い等による個人差を反映したものであり、例えば、0.01〜0.4の値を取る。
【0079】
ここで、(式4)は、ヘモグロビン吸光度の項目において、検出可能発光強度で発光させたときの脈波信号S
ACの振幅V
ACを含んでいることから、必要発光強度−出力信号の一部分である脈波信号S
ACの振幅V
ACの関係を示す関係式である。
【0080】
図9は、複数のサンプル被測定者について、(式4)の関係式を用いて、必要発光強度を算出した結果である。
図9において、例えば、被測定者IDが3であるものは必要発光強度が非常に小さくても脈波信号S
ACの振幅V
ACを測定することができ、被測定者IDが17であるものは必要発光強度が非常に大きなものでなければ脈波信号S
ACの振幅V
ACを測定することができないことを示している。したがって、
図9は、皮膚の色の違い等による個人差を反映している。
【0081】
そして、上述した(式1−2)、(式2)、(式3−2)及び(式4)の関係式が、脈波信号S
ACの振幅V
ACが検出可能となる或る検出可能発光強度を少なくとも含む発光強度で発光素子54を発光させることによって予め取得された関係式として、記憶部112のROMにそれぞれ記憶されている。記憶部112のROMに記憶された(式2)及び(式4)の関係式、(式3−2)の関係式、及び、(式1−2)の関係式は、それぞれ、必要発光強度、受光感度、及び、脈波信号ゲインを算出する際に使用される。
【0082】
(必要発光強度、受光感度及び脈波信号ゲインを関係式に基づいて算出する場合)
次に、
図10を参照しながら、この発明の第1実施形態に係る脈波測定装置1の動作について詳細に説明する。
図10のフローチャートに示される処理は、制御部111のCPUが、記憶部112のROMに格納されたプログラム及びデータを読み出して、
図2及び3に示した各構成要素を制御することで実行される。
【0083】
或る特定の被測定者の腕や手首に脈波測定装置1を装着し、脈波測定装置1の操作部115に設けられている電源スイッチをONにしたあと測定開始スイッチをONにすることで、一連の処理が開始される。測定開始スイッチをONにすると、まず、発光素子54での必要発光強度(駆動電流)と、出力信号増幅回路46での増幅ゲイン(受光感度)と、脈波信号増幅回路40での増幅ゲイン(脈波信号ゲイン)と、という3つのパラメータがすでに決定されているか否かが判断される。当該パラメータがすでに決定されているならば、通常の脈波測定を行う。当該パラメータが決定されていないならば、
図10のフローチャートに示される処理を行う。
【0084】
図10に示すように、ステップS10では、或る特定の被測定者の被測定部位に脈波測定装置1の測定部50を密着して配置した状態で、測定部50の発光素子54を、脈波信号S
ACの振幅V
ACが検出可能となる或る検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)で、少なくとも1拍分の期間にわたって試行的に発光させる。試行的な発光時の発光素子54の検出可能発光強度の制御は、CPU111が発光強度制御回路45の可変抵抗の抵抗値を調整することによって行われる。発光素子54から発せられた光が被測定部位の動脈に照射されると、動脈を流れる赤血球によって照射光が反射され、この反射光が受光素子56で受光される。試行的な発光の期間は、少なくとも1拍分の期間に限定されるものではないが、少なくとも1拍分の期間によって、出力信号の測定に対する十分な測定データが得られて、測定時間の短縮が可能になる。
【0085】
ステップS11では、少なくとも1拍分の期間にわたる出力信号S
DC及び脈波信号S
ACの測定が行われる。すなわち、反射光を受光した受光素子56は、受光した反射光の強さに応じた光電出力を出力する。出力された光電出力は、出力信号増幅回路46によって或る増幅ゲインで増幅されて、出力信号レベルV
DCを持った出力信号S
DCが出力される。出力信号S
DCの出力信号レベルV
DCは、A/D変換器44を経て、デジタル信号の出力信号として出力され、デジタル処理された出力信号の出力信号レベルV’
DCは、記憶部112のRAMに記憶される。
【0086】
それとともに、出力された出力信号S
DCが、バンドパスフィルタ41を通過することによって出力信号S
DCからAC成分が取り出される。取り出されたAC成分は、オペアンプ42によって、或る増幅ゲインで増幅されて、振幅V
ACを持った脈波信号S
ACが出力される。脈波信号S
ACの振幅V
ACは、A/D変換器43を経て、デジタル信号の脈波信号として出力され、デジタル処理された脈波信号の振幅V’
ACは、記憶部112のRAMに記憶される。
【0087】
ステップS12では、予め取得されているとともに記憶部112のROMに記憶された必要発光強度−出力信号の関係式に基づいて、必要発光強度が設定される。すなわち、上述したように、複数のサンプル被測定者に関して、必要発光強度−出力信号(脈波信号S
ACの振幅V
AC)の関係を示す(式2)の関係式と、必要発光強度−出力信号(脈波信号S
ACの振幅V
AC)の関係を示す(式4)の関係式とが、それぞれ、予め取得されているとともに記憶部112のROMに記憶されている。記憶部112のRAMに記憶されている脈波信号の振幅V’
ACと、(式2)及び/又は(式4)の関係式とに基づいて、脈波信号S
ACの振幅V
ACが脈波信号増幅回路40で取り出し可能な最低限の振幅を超える(すなわち検出可能なレンジに入る)のに必要な必要発光強度(すなわち駆動電流)がCPU111によって算出される。算出された必要発光強度は、記憶部112のRAMに記憶される。記憶部112のRAMに記憶された必要発光強度は、或る特定の被測定者の脈波測定に適した発光強度として設定される。
【0088】
ステップS13では、予め取得されているとともに記憶部112のROMに記憶された必要発光強度−出力信号レベルの関係式に基づいて、出力信号レベルV
DCの予測値が算出される。すなわち、上述したように、複数のサンプル被測定者に関して、必要発光強度−出力信号レベルの関係を示す上述の(式3−2)の関係式が、予め取得されているとともに記憶部112のROMに記憶されている。記憶部112のRAMに記憶されている必要発光強度と、(式3−2)の関係式とに基づいて、受光素子56から出力されると予測される出力信号レベルV
DCの予測値がCPU111によって算出される。そして、算出された出力信号レベルV
DCの予測値は、被測定者の脈波測定に適した出力信号レベルV
DCとして、記憶部112のRAMに記憶される。
【0089】
ステップS14では、出力信号レベルV
DCが記憶部112のRAMに記憶された出力信号レベルV
DCの予測値になるように、CPU111が出力信号増幅回路46の可変抵抗の抵抗値を調整することにより、受光素子56の受光感度(すなわち光電出力の増幅ゲイン)が制御される。制御された受光感度は、記憶部112のRAMに記憶される。記憶部112のRAMに記憶された受光感度は、或る特定の被測定者の脈波測定に適した受光感度として設定される。
【0090】
ステップS15では、予め取得されているとともに記憶部112のROMに記憶された必要発光強度−脈波信号の振幅の関係式に基づいて、S
ACの振幅V
ACの予測値が算出される。すなわち、上述したように、複数のサンプル被測定者に関して、必要発光強度−脈波信号の振幅の関係を示す(式1−2)の関係式が、予め取得されているとともに記憶部112のROMに記憶されている。記憶部112のRAMに記憶されている必要発光強度と、上述した(式1−2)の関係式とに基づいて、脈波信号増幅回路40で取り出し可能な最低限の振幅を有する脈波信号S
ACの振幅V
ACの予測値がCPU111によって算出される。そして、算出された脈波信号S
ACの振幅V
ACの予測値は、被測定者の脈波測定に適した脈波信号S
ACの振幅V
ACとして、記憶部112のRAMに記憶される。
【0091】
ステップS16では、脈波信号S
ACの振幅V
ACが記憶部112のRAMに記憶された脈波信号S
ACの振幅V
ACの予測値になるように、CPU111は、脈波信号増幅回路40のオペアンプ42の抵抗比を調整することにより、脈波信号増幅回路40の増幅ゲイン(脈波信号ゲイン)を制御する。制御された脈波信号ゲインは、記憶部112のRAMに記憶される。記憶部112のRAMに記憶された脈波信号ゲインは、或る特定の被測定者の脈波測定に適した脈波信号ゲインとして設定される。
【0092】
上記プロセスによって、或る特定の被測定者についての脈波測定を行う上で重要な3つのパラメータが設定されたので、パラメータ設定に関する一連の処理が終了し、通常の脈波測定を行うルーチンに戻る。
【0093】
このように、この実施形態では、或る特定の被測定者に対して少なくとも1拍分の期間にわたる試行的な発光によって取得された出力信号と、予め取得されている関係式とに基づいて、必要発光強度、受光感度及び脈波信号ゲインという3つのパラメータが、CPU111によって算出されて、或る特定の被測定者に対する脈波測定を行うのに適したパラメータとして設定される。その結果、発光素子54の必要発光強度と、出力信号増幅回路46での増幅ゲイン(受光感度)と、脈波信号増幅回路40での増幅ゲイン(脈波信号ゲイン)という3つのパラメータを短時間で適切に設定することができる。したがって、或る特定の被測定者の脈波測定を簡便に且つ正確に行うことができる。
【0094】
(受光感度及び脈波信号ゲインとして、所与のものを用いる場合)
次に、必要発光強度については試行的な発光によって取得された出力信号に基づいて設定して、受光感度及び脈波信号ゲインについては典型的な所与の値を用いる、この発明の第2実施形態に係る脈波測定装置1の動作を、
図11を参照しながら説明するが、上記第1実施形態と重複する部分については、その説明を省略する。
【0095】
脈波測定装置1の操作部115に設けられた電源スイッチ及び測定開始スイッチをONにすることで、一連の処理が開始される。まず、必要発光強度、受光感度及び脈波信号ゲインという3つのパラメータがすでに決定されているか否かが判断されて、当該パラメータが決定されていないならば、
図11のフローチャートに示される処理を行う。
【0096】
図11に示すように、ステップS20では、或る特定の被測定者に対して、脈波信号S
ACの振幅V
ACが検出可能となる或る検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)で、少なくとも1拍分の期間にわたって、発光素子54を試行的に発光させる。或る特定の被測定者の被測定部位で反射した反射光が受光素子56で受光される。
【0097】
ステップS21では、少なくとも1拍分の期間にわたる出力信号S
DC及び脈波信号S
ACの測定が行われて、測定された出力信号S
DCの出力信号レベルV’
DC及び脈波信号S
ACの振幅V’
ACは、記憶部112のRAMにそれぞれ記憶される。
【0098】
ステップS22では、記憶部112のRAMに記憶されている脈波信号の振幅V’
ACと、上述した(式2)及び/又は(式4)の関係式とに基づいて、必要発光強度がCPU111によって算出される。算出された必要発光強度は、記憶部112のRAMに記憶される。記憶部112のRAMに記憶された必要発光強度は、或る特定の被測定者の脈波測定に適した発光強度として設定される。
【0099】
出力信号レベルV
DCが出力信号増幅回路46の処理可能なレンジに入る或る典型的な受光感度の値が、予め準備されているとともに記憶部112のROMに記憶されていて、ステップS23では、当該或る典型的な受光感度の値が、或る特定の被測定者の脈波測定用の受光感度として設定される。
【0100】
脈波信号S
ACの振幅V
ACが脈波信号増幅回路40の処理可能なレンジに入る或る典型的な脈波信号ゲインの値が、予め準備されているとともに記憶部112のROMに記憶されていて、ステップS24では、当該或る典型的な脈波信号ゲインの値が、或る特定の被測定者の脈波測定用の脈波信号ゲインとして設定される。
【0101】
上記プロセスによって、或る特定の被測定者についての脈波測定を行う上で重要な3つのパラメータが設定されたので、パラメータ設定に関する一連の処理が終了し、通常の脈波測定を行うルーチンに戻る。
【0102】
このように、この実施形態では、或る特定の被測定者に対して少なくとも1拍分の期間にわたる試行的な発光によって取得された出力信号と、予め取得されている関係式とに基づいて、必要発光強度のパラメータが、CPU111によって算出且つ設定されるとともに、残りの受光感度及び脈波信号ゲインのパラメータが或る典型的な値にそれぞれ設定される。その結果、発光素子54の必要発光強度と、出力信号増幅回路46での増幅ゲイン(受光感度)と、脈波信号増幅回路40での増幅ゲイン(脈波信号ゲイン)という3つのパラメータを短時間で適切に設定することができる。したがって、或る特定の被測定者の脈波測定を簡便に行うことができる。
【0103】
(必要発光強度及び脈波信号ゲインとして、所与のものを用いる場合)
次に、受光感度については試行的な発光によって取得された出力信号に基づいて設定して、必要発光強度及び脈波信号ゲインについては典型的な所与の値を用いる、この発明の第3実施形態に係る脈波測定装置1の動作を、
図12を参照しながら説明するが、上記第1実施形態と重複する部分については、その説明を省略する。
【0104】
脈波測定装置1の操作部115に設けられた電源スイッチ及び測定開始スイッチをONにすることで、一連の処理が開始される。まず、必要発光強度、受光感度及び脈波信号ゲインという3つのパラメータがすでに決定されているか否かが判断されて、当該パラメータが決定されていないならば、
図12のフローチャートに示される処理を行う。
【0105】
図12に示すように、ステップS30では、或る特定の被測定者に対して、脈波信号S
ACの振幅V
ACが検出可能となる或る検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)で、少なくとも1拍分の期間にわたって、発光素子54を試行的に発光させる。或る特定の被測定者の被測定部位で反射した反射光が受光素子56で受光される。
【0106】
ステップS31では、少なくとも1拍分の期間にわたる出力信号S
DC及び脈波信号S
ACの測定が行われて、測定された出力信号S
DCの出力信号レベルV’
DC及び脈波信号S
ACの振幅V’
ACは、記憶部112のRAMにそれぞれ記憶される。
【0107】
脈波信号S
ACの振幅V
ACが脈波信号増幅回路40で取り出し可能なレンジに入る或る典型的な必要発光強度の値が、予め準備されているとともに記憶部112のROMに記憶されていて、ステップS32では、当該或る典型的な必要発光強度の値が、或る特定の被測定者の脈波測定用の必要発光強度として設定される。
【0108】
ステップS33では、記憶部112のRAMに記憶されている必要発光強度と、上述した(式3−2)の関係式とに基づいて、受光素子56から出力されると予測される出力信号レベルV
DCの予測値がCPU111によって算出される。算出された出力信号レベルV
DCの予測値は、記憶部112のRAMに記憶される。
【0109】
ステップS34では、出力信号レベルV
DCが記憶部112のRAMに記憶された出力信号レベルV
DCの予測値になるように、CPU111が出力信号増幅回路46の可変抵抗の抵抗値を調整することにより、受光素子56の受光感度が制御される。制御された受光感度は、記憶部112のRAMに記憶される。記憶部112のRAMに記憶された受光感度は、或る特定の被測定者の脈波測定に適した受光感度として設定される。
【0110】
脈波信号S
ACの振幅V
ACが脈波信号増幅回路40の処理可能なレンジに入る或る典型的な脈波信号ゲインの値が、予め準備されているとともに記憶部112のROMに記憶されていて、ステップS35では、当該或る典型的な脈波信号ゲインの値が、或る特定の被測定者の脈波測定用の脈波信号ゲインとして設定される。
【0111】
上記プロセスによって、或る特定の被測定者についての脈波測定を行う上で重要な3つのパラメータが設定されたので、パラメータ設定に関する一連の処理が終了し、通常の脈波測定を行うルーチンに戻る。
【0112】
このように、この実施形態では、或る特定の被測定者に対して少なくとも1拍分の期間にわたる試行的な発光によって取得された出力信号と、予め取得されている関係式とに基づいて、受光感度のパラメータが、CPU111によって算出且つ設定されるとともに、残りの必要発光強度及び脈波信号ゲインのパラメータが或る典型的な値にそれぞれ設定される。その結果、発光素子54の必要発光強度と、出力信号増幅回路46での増幅ゲイン(受光感度)と、脈波信号増幅回路40での増幅ゲイン(脈波信号ゲイン)という3つのパラメータを短時間で適切に設定することができる。したがって、或る特定の被測定者の脈波測定を簡便に行うことができる。
【0113】
(必要発光強度及び受光感度として、所与のものを用いる場合)
次に、脈波信号ゲインについては試行的な発光によって取得された出力信号に基づいて設定して、必要発光強度及び受光感度については典型的な所与の値を用いる、この発明の第4実施形態に係る脈波測定装置1の動作を、
図13を参照しながら説明するが、上記第1実施形態と重複する部分については、その説明を省略する。
【0114】
脈波測定装置1の操作部115に設けられた電源スイッチ及び測定開始スイッチをONにすることで、一連の処理が開始される。まず、必要発光強度、受光感度及び脈波信号ゲインという3つのパラメータがすでに決定されているか否かが判断されて、当該パラメータが決定されていないならば、
図13のフローチャートに示される処理を行う。
【0115】
図13に示すように、ステップS40では、或る特定の被測定者に対して、脈波信号S
ACの振幅V
ACが検出可能となる或る検出可能発光強度(例えば駆動電流が6mA)で、少なくとも1拍分の期間にわたって、発光素子54を試行的に発光させる。或る特定の被測定者の被測定部位で反射した反射光が受光素子56で受光される。
【0116】
ステップS41では、少なくとも1拍分の期間にわたる出力信号S
DC及び脈波信号S
ACの測定が行われて、測定された出力信号S
DCの出力信号レベルV’
DC及び脈波信号S
ACの振幅V’
ACは、記憶部112のRAMにそれぞれ記憶される。
【0117】
脈波信号S
ACの振幅V
ACが脈波信号増幅回路40で取り出し可能なレンジに入る或る典型的な必要発光強度の値が、予め準備されているとともに記憶部112のROMに記憶されていて、ステップS42では、当該或る典型的な必要発光強度の値が、或る特定の被測定者の脈波測定用の必要発光強度として設定される。
【0118】
ステップS43では、出力信号レベルV
DCが出力信号増幅回路46の処理可能なレンジに入る或る典型的な受光感度の値が、予め準備されているとともに記憶部112のROMに記憶されていて、ステップS44では、当該或る典型的な受光感度の値が、或る特定の被測定者の脈波測定用の受光感度として設定される。
【0119】
ステップS44では、記憶部112のRAMに記憶されている必要発光強度と、上述した(式1−2)の関係式とに基づいて、脈波信号増幅回路40で取り出し可能な最低限の振幅を有する脈波信号S
ACの振幅V
ACの予測値がCPU111によって算出される。そして、算出された脈波信号S
ACの振幅V
ACの予測値は、記憶部112のRAMに記憶される。
【0120】
ステップS45では、脈波信号S
ACの振幅V
ACが記憶部112のRAMに記憶された脈波信号S
ACの振幅V
ACの予測値になるように、CPU111が脈波信号増幅回路40のオペアンプ42の抵抗比を調整することにより、脈波信号増幅回路40の増幅ゲイン(脈波信号ゲイン)が制御される。制御された脈波信号ゲインは、記憶部112のRAMに記憶される。記憶部112のRAMに記憶された脈波信号ゲインは、或る特定の被測定者の脈波測定に適した脈波信号ゲインとして設定される。
【0121】
上記プロセスによって、或る特定の被測定者についての脈波測定を行う上で重要な3つのパラメータが設定されたので、パラメータ設定に関する一連の処理が終了し、通常の脈波測定を行うルーチンに戻る。
【0122】
このように、この実施形態では、或る特定の被測定者に対して少なくとも1拍分の期間にわたる試行的な発光によって取得された出力信号と、予め取得されている関係式とに基づいて、脈波信号ゲインのパラメータが、CPU111によって算出且つ設定されるとともに、残りの必要発光強度及び受光感度のパラメータが或る典型的な値にそれぞれ設定される。その結果、発光素子54の必要発光強度と、出力信号増幅回路46での増幅ゲイン(受光感度)と、脈波信号増幅回路40での増幅ゲイン(脈波信号ゲイン)という3つのパラメータを短時間で適切に設定することができる。したがって、或る特定の被測定者の脈波測定を簡便に行うことができる。
【0123】
以上説明したように、この発明の脈波測定装置1及び該装置1におけるパラメータ設定方法によれば、或る特定の被測定者に対して少なくとも1拍分の期間にわたる試行的な発光によって取得された出力信号と、複数の被測定者に関して予め取得されている関係式とに基づいて、必要発光強度、受光感度及び脈波信号ゲインという3つのパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータが、CPU111によって算出されて、或る特定の被測定者に対する生体情報の光学的測定を行うのに適したパラメータとして設定される。したがって、生体情報の測定を簡便且つ正確に行うことができる。
【0124】
なお、生体情報測定装置1が装着される被測定部位として、手首又は腕を例示したが、他の装着可能な被測定部位として、指部、足首部、大腿部又は頸部等を挙げることができる。また、生体情報測定装置1として、脈波測定装置を例示したが、生体情報測定装置1は、脈拍数や血圧や酸素飽和度等を測定するための装置であってよい。
【0125】
上述した実施形態及びその変形例は、この発明の理解を容易にするための例示であり、限定的に解釈するべきではない。この発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定されるべきである。