(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態によるデジタルアナログ変換装置の構成例を示す図である。デジタルアナログ変換装置は、インバータ101、遅延器102、加算部103、デジタルアナログ変換器104及びローパスフィルタ105を有する。
【0010】
図2は、
図1のデジタルアナログ変換器104のデジタルフィードスルーを説明するためのタイミングチャートである。デジタルアナログ変換器104は、クロック信号CKに同期して、イネーブル信号(チップイネーブル信号)CSが有効(ローレベル)である期間に入力したNビットのシリアルデジタル信号A4をアナログ信号に変換する。ここで、Nは自然数である。シリアルデジタル信号A4は、第1の変換サイクルで変換されるNビットのシリアルデジタル信号201と、第2の変換サイクルで変換されるNビットのシリアルデジタル信号202とを有する。シリアルデジタル信号A4は、イネーブル信号CSが有効(ローレベル)である期間では有効となり、イネーブル信号CSが無効(ハイレベル)である期間では無効になる。シリアルデジタル信号B4は、シリアルデジタル信号A4の具体的なレベルの例を示す。シリアルデジタル信号B4は、時刻t1、t3及びt5で立ち上がり、時刻t2及びt4で立ち下がる。立ち上がり回数は、時刻t1、t3及びt5の3回であり、立ち下がり回数は、時刻t2及びt4の2回である。このように、デジタルアナログ変換器104は、入力シリアルデジタル信号A4の立ち上がり回数と立ち上がり回数が異なる場合に、デジタルフィードスルーにより、例えば
図4(A)に示すように、出力アナログ信号A5にノイズが発生する。
【0011】
このノイズは、入力シリアルデジタル信号A4の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの急激なレベル変化が発生することにより、デジタルアナログ変換器104のデジタル入力部とアナログ出力部の間のクロストークに起因して発生する、アナログ出力部における電源電圧変動又はグランド電位変動等により発生するノイズである。また、デジタル入力部とアナログ出力部とで電源線やグランド線が共通化されている場合は、入力シリアルデジタル信号A4の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの急激なレベル変化に起因してデジタル入力部において発生した電源線又はグランド線の電位変動等が、アナログ出力部における電源線又はグランド線の電位変動等を引き起こし、これが出力アナログ信号A5のノイズの原因となる。
図4(A)は、横軸が周波数を示し、縦軸がアナログ信号A5のノイズ成分の振幅スペクトルを示すシミュレーション結果である。
【0012】
図1のデジタルアナログ変換装置は、デジタルフィードスルーを低減するために、デジタルアナログ変換器104の他に、インバータ101、遅延器102、加算部103及びローパスフィルタ105を有する。
【0013】
図3は、
図1のデジタルアナログ変換装置の処理例を示すタイミングチャートである。イネーブル信号CSは、例えばチップセレクト信号である。第1のシリアルデジタル信号A1は、第1の変換サイクルで変換されるNビットのシリアルデジタル信号201と、第2の変換サイクルで変換されるNビットのシリアルデジタル信号202とを有する。
【0014】
インバータ101は、第1のシリアルデジタル信号A1を入力し、第1のシリアルデジタル信号A1を反転した第2のシリアルデジタル信号A2を生成する。遅延器102は、クロック信号CKに同期して、第2のシリアルデジタル信号A2をNクロック分遅延し、第3のシリアルデジタル信号A3を出力する。加算部103は、イネーブル信号CSのタイミングに合わせ、第1のシリアルデジタル信号A1及び第3のシリアルデジタル信号A3を加算し、第4のシリアルデジタル信号A4を出力する。第4のシリアルデジタル信号A4は、Nビットデジタル信号201及び反転Nビットデジタル信号301を有する。Nビットデジタル信号201は、第1のシリアルデジタル信号A1の一部の信号である。反転Nビットデジタル信号301は、第3のシリアルデジタル信号A3の一部の信号である。加算部103は、イネーブル信号CSが有効(ローレベル)である時刻t10〜t11の期間に第1のシリアルデジタル信号A1のNビットデジタル信号201を出力し、イネーブル信号CSが無効(ハイレベル)である時刻t11〜t12の期間に第3のシリアルデジタル信号A3の反転Nビットデジタル信号301を出力する。
【0015】
遅延器102及び加算部103は、タイミング調整部であり、第1のシリアルデジタル信号A1及び第2のシリアルデジタル信号A2を入力し、イネーブル信号CSが有効(ローレベル)である時刻t10〜t11の期間に第1のシリアルデジタル信号A1のNビットデジタル信号201を出力し、イネーブル信号CSが無効(ハイレベル)である時刻t11〜t12の期間に第2のシリアルデジタル信号A2の反転Nビットデジタル信号301を出力する。
【0016】
デジタルアナログ変換器104は、クロック信号CKに同期して、加算部103により出力される第4のシリアルデジタル信号A4を入力し、イネーブル信号CSが有効(ローレベル)である時刻t10〜t11の期間に入力したNビットデジタル信号201をアナログ信号A5に変換する。ここで、第4のシリアルデジタル信号A4は、イネーブル信号CSが有効(ローレベル)である期間では有効となり、イネーブル信号CSが無効(ハイレベル)である期間では無効になる。
【0017】
デジタルアナログ変換器104は、第4のシリアルデジタル信号A4として、イネーブル信号CSが有効である時刻t10〜t11の期間にNビットデジタル信号201を入力し、その期間の後のイネーブル信号CSが無効である時刻t11〜t12の期間に反転Nビットデジタル信号301を入力する。例えば、
図2と同様に、Nビットデジタル信号201は、立ち上がり回数が3回であり、立ち下がり回数は2回である。これに対し、反転Nビットデジタル信号301は、Nビットデジタル信号201の反転信号であるので、立ち下がり回数が3回であり、立ち上がり回数が2回である。第4のシリアルデジタル信号A4は、Nビットデジタル信号201及び反転Nビットデジタル信号301を有するので、立ち上がり回数が3+2=5回であり、立ち下がり回数が2+3=5回であり、立ち上がり回数と立ち下がり回数が同じである。これにより、
図4(B)に示すように、デジタルアナログ変換器104は、電荷の変化が打ち消し合い、
図4(A)に比べ、デジタルフィードスルーによるアナログ信号A5のノイズを低減することができる。
図4(B)は、横軸が周波数を示し、縦軸がアナログ信号A5のノイズ成分の振幅スペクトルを示すシミュレーション結果であり、特にアナログ信号A5の低周波数帯域のノイズ成分が低減されていることが分かる。
【0018】
ローパスフィルタ105は、デジタルアナログ変換器104により変換されたアナログ信号A5に対してローパスフィルタリングを行い、アナログ信号A6を出力する。具体的には、ローパスフィルタ105は、入力アナログ信号A5に対して高周波数成分を減衰させ、低周波数成分を通過させ、アナログ信号A6を出力する。ローパスフィルタ105により、
図4(B)のアナログ信号A5のノイズ成分は、さらに高周波数成分が低減され、全周波数成分に対して低減される。
【0019】
以上のように、本実施形態のデジタルアナログ変換装置は、第1のシリアルデジタル信号A1を入力し、デジタルフィードスルーによるノイズが低減されたアナログ信号A6を出力することができる。このデジタルアナログ変換装置の後段の回路は、時刻t12の後に、アナログ信号A6をラッチすることにより、ノイズが低減されたアナログ信号A6を得ることができる。デジタルアナログ変換装置は、上記の時刻t10〜t12を1サイクルとして、デジタルアナログ変換を繰り返し行うことができる。
【0020】
デジタルアナログ変換器104は、イネーブル信号CSが無効である時刻t11〜t12の期間に反転Nビットデジタル信号301を入力するので、
図3のタイミングチャートは、
図2のタイミングチャートに対して、デジタルアナログ変換時間が同じであり、デジタルアナログ変換器104の入力信号である第4のシリアルデジタル信号A4の周波数も同じにしながら、デジタルフィードスルーによるノイズを低減できる効果がある。
【0021】
(第2の実施形態)
図5は第2の実施形態によるデジタルアナログ変換装置の構成例を示す図であり、
図6は
図5のデジタルアナログ変換装置の処理例を示すタイミングチャートである。
図5のデジタルアナログ変換装置は、
図1のデジタルアナログ変換装置に対して、遅延器501を追加したものである。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。
【0022】
遅延器501は、クロック信号CKに同期して、第1のシリアルデジタル信号A1を2×Nクロック分遅延し、シリアルデジタル信号C1を出力する。加算部103は、イネーブル信号CSのタイミングに合わせ、シリアルデジタル信号C1及び第3のシリアルデジタル信号A3を加算し、第4のシリアルデジタル信号A4を出力する。第4のシリアルデジタル信号A4は、Nビットデジタル信号201及び反転Nビットデジタル信号301を有する。Nビットデジタル信号201は、シリアルデジタル信号C1の一部の信号である。反転Nビットデジタル信号301は、第3のシリアルデジタル信号A3の一部の信号である。加算部103は、イネーブル信号CSが無効(ハイレベル)である時刻t11〜t12の期間に第3のシリアルデジタル信号A3の反転Nビットデジタル信号301を出力し、イネーブル信号CSが有効(ローレベル)である時刻t12〜t13の期間にシリアルデジタル信号C1のNビットデジタル信号201を出力する。
【0023】
遅延器102,501及び加算部103は、タイミング調整部であり、第1のシリアルデジタル信号A1及び第2のシリアルデジタル信号A2を入力し、イネーブル信号CSが有効(ローレベル)である時刻t12〜t13の期間に第1のシリアルデジタル信号A1のNビットデジタル信号201を出力し、イネーブル信号CSが無効(ハイレベル)である時刻t11〜t12の期間に第2のシリアルデジタル信号A2の反転Nビットデジタル信号301を出力する。
【0024】
デジタルアナログ変換器104は、クロック信号CKに同期して、加算部103により出力される第4のシリアルデジタル信号A4を入力し、イネーブル信号CSが有効(ローレベル)である時刻t12〜t13の期間に入力したNビットデジタル信号201をアナログ信号A5に変換する。
【0025】
デジタルアナログ変換器104は、第4のシリアルデジタル信号A4として、イネーブル信号CSが有効である時刻t12〜t13の期間にNビットデジタル信号201を入力し、その期間の前のイネーブル信号CSが無効である時刻t11〜t12の期間に反転Nビットデジタル信号301を入力する。第1の実施形態と同様に、第4のシリアルデジタル信号A4は、立ち上がり回数と立ち下がり回数が同じである。これにより、デジタルアナログ変換器104は、電荷の変化が打ち消し合い、デジタルフィードスルーによるアナログ信号A5のノイズを低減することができる。ローパスフィルタ105は、デジタルアナログ変換器104により変換されたアナログ信号A5に対してローパスフィルタリングを行い、ノイズが低減したアナログ信号A6を出力する。
【0026】
以上のように、デジタルアナログ変換器104は、イネーブル信号CSが無効である時刻t11〜t12の期間に反転Nビットデジタル信号301を入力するので、
図6のタイミングチャートは、
図2のタイミングチャートに対して、デジタルアナログ変換時間が同じであり、デジタルアナログ変換器104の入力信号である第4のシリアルデジタル信号A4の周波数も同じにしながら、デジタルフィードスルーによるノイズを低減できる効果がある。
【0027】
(第3の実施形態)
図7は第3の実施形態によるデジタルアナログ変換装置の構成例を示す図であり、
図8は
図7のデジタルアナログ変換装置の処理例を示すタイミングチャートである。
図7のデジタルアナログ変換装置は、
図5のデジタルアナログ変換装置に対して、遅延器701及び加算部702を追加したものである。以下、本実施形態が第2の実施形態と異なる点を説明する。
【0028】
遅延器102は、クロック信号CKに同期して、第2のシリアルデジタル信号A2を2×N−mクロック分遅延し、シリアルデジタル信号C2を出力する。mは、0以上かつN以下の整数である。加算部103は、イネーブル信号CSのタイミングに合わせ、シリアルデジタル信号C1及びシリアルデジタル信号C2を加算し、シリアルデジタル信号C3を出力する。シリアルデジタル信号C3は、Nビットデジタル信号201及び反転mビットデジタル信号801を有する。Nビットデジタル信号201は、シリアルデジタル信号C1の一部の信号である。反転mビットデジタル信号801は、シリアルデジタル信号C2の一部の信号である。加算部103は、イネーブル信号CSが無効(ハイレベル)である時刻t21〜t22の期間に反転mビットデジタル信号801を出力し、イネーブル信号CSが有効(ローレベル)である時刻t22〜t23の期間にNビットデジタル信号201を出力する。
【0029】
遅延器701は、クロック信号CKに同期して、シリアルデジタル信号C2をNクロック分遅延し、シリアルデジタル信号C4を出力する。加算部702は、イネーブル信号CSのタイミングに合わせ、シリアルデジタル信号C3及びシリアルデジタル信号C4を加算し、第4のシリアルデジタル信号A4を出力する。第4のシリアルデジタル信号A4は、Nビットデジタル信号201、反転mビットデジタル信号801及び反転N−mビットデジタル信号802を有する。Nビットデジタル信号201は、シリアルデジタル信号C3の一部の信号である。反転mビットデジタル信号801は、シリアルデジタル信号C3の他の一部の信号である。反転N−mビットデジタル信号802は、シリアルデジタル信号C4の一部の信号である。反転mビットデジタル信号801はNビットデジタル信号201の前部のmビットの反転デジタル信号であり、反転N−mビットデジタル信号802はNビットデジタル信号201の後部のN−mビットの反転デジタル信号である。すなわち、反転デジタル信号801及び802は、Nビットデジタル信号201の反転信号を2分割したNビットの信号である。
【0030】
加算部702は、イネーブル信号CSが無効(ハイレベル)である時刻t21〜t22の期間に反転mビットデジタル信号801を出力し、イネーブル信号CSが有効(ローレベル)である時刻t22〜t23の期間にNビットデジタル信号201を出力し、イネーブル信号CSが無効(ハイレベル)である時刻t23〜t24の期間に反転N−mビットデジタル信号802を出力する。
【0031】
遅延器102,501,701及び加算部103,702は、タイミング調整部であり、第1のシリアルデジタル信号A1及び第2のシリアルデジタル信号A2を入力し、イネーブル信号CSが有効である時刻t22〜t23の期間に第1のシリアルデジタル信号A1のNビットデジタル信号201を出力し、時刻t22〜t23の期間の前のイネーブル信号CSが無効である時刻t21〜t22の期間に第2のシリアルデジタル信号A2の一部の反転mビットデジタル信号801を出力し、時刻t22〜t23の期間の後のイネーブル信号CSが無効である時刻t23〜t24の期間に第2のシリアルデジタル信号A2の他部の反転N−mビットデジタル信号802を出力する。
【0032】
デジタルアナログ変換器104は、クロック信号CKに同期して、加算部702により出力される第4のシリアルデジタル信号A4を入力し、イネーブル信号CSが有効(ローレベル)である時刻t22〜t23の期間に入力したNビットデジタル信号201をアナログ信号A5に変換する。
【0033】
デジタルアナログ変換器104は、第4のシリアルデジタル信号A4として、イネーブル信号CSが有効である時刻t22〜t23の期間にNビットデジタル信号201を入力し、時刻t22〜t23の期間の前のイネーブル信号CSが無効である時刻t21〜t22の期間に反転mビットデジタル信号801を入力し、時刻t22〜t23の期間の後のイネーブル信号CSが無効である時刻t23〜t24の期間に反転N−mビットデジタル信号802を入力する。第1及び第2の実施形態と同様に、第4のシリアルデジタル信号A4は、立ち上がり回数と立ち下がり回数が同じである。これにより、デジタルアナログ変換器104は、電荷の変化が打ち消し合い、デジタルフィードスルーによるアナログ信号A5のノイズを低減することができる。ローパスフィルタ105は、デジタルアナログ変換器104により変換されたアナログ信号A5に対してローパスフィルタリングを行い、ノイズが低減したアナログ信号A6を出力する。
【0034】
以上のように、デジタルアナログ変換器104は、イネーブル信号CSが無効である時刻t21〜t22及び時刻t23〜t24の期間に反転デジタル信号801及び802を入力するので、
図8のタイミングチャートは、
図2のタイミングチャートに対して、デジタルアナログ変換時間が同じであり、デジタルアナログ変換器104の入力信号である第4のシリアルデジタル信号A4の周波数も同じにしながら、デジタルフィードスルーによるノイズを低減できる効果がある。
【0035】
また、本実施形態は、第1及び第2の実施形態に比べ、反転mビットデジタル信号801とNビットデジタル信号201との時間間隔が短く、反転N−mビットデジタル信号802とNビットデジタル信号201との時間間隔が短い。そのため、本実施形態のアナログ信号A5のノイズ成分は、第1及び第2の実施形態のアナログ信号A5のノイズ成分(
図4(B))に比べ、より高周波数帯域のノイズ成分も除去され、広周波数帯域のノイズ成分が除去される。
【0036】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。