(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958273
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】自動車の側面衝突試験方法及び側面衝突試験装置
(51)【国際特許分類】
G01M 7/08 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
G01M7/00 H
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-234779(P2012-234779)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-85249(P2014-85249A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰則
(72)【発明者】
【氏名】大岡 数則
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳一郎
【審査官】
田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−049780(JP,A)
【文献】
特開平08−015083(JP,A)
【文献】
特開2000−154510(JP,A)
【文献】
特開2006−208093(JP,A)
【文献】
特開昭61−277033(JP,A)
【文献】
米国特許第05623094(US,A)
【文献】
特開2001−147173(JP,A)
【文献】
特開昭59−214729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/08
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛体壁の前面に置かれた試験車両の側面に向かって、衝突台車を加速装置により加速して衝突させ、衝突台車が試験車両に衝突した後、衝突台車と加速装置との間に設けられたエネルギ吸収装置により衝突台車の前進を停止させ、剛体壁で停止した試験車両に衝突台車が再度衝突することを防止することを特徴とする自動車の側面衝突試験方法。
【請求項2】
剛体壁と、その前面に置かれた試験車両の側面に衝突される衝突台車と、この衝突台車を試験車両に向けて加速する加速装置とからなり、
衝突台車と加速装置との間を、一端がエネルギ吸収装置に接続された牽引ワイヤにより連結し、衝突台車が試験車両に衝突した後、このエネルギ吸収装置により衝突台車の前進を停止させることを特徴とする自動車の側面衝突試験装置。
【請求項3】
加速装置が、油圧によりピストンを押し出す油圧式加速装置であることを特徴とする請求項2記載の自動車の側面衝突試験装置。
【請求項4】
エネルギ吸収装置が、金属管を軸圧潰させることによりエネルギを吸収させる装置であることを特徴とする請求項2記載の自動車の側面衝突試験装置。
【請求項5】
衝突台車が、その後退を防止する制動装置を備えたものであることを特徴とする請求項2記載の自動車の側面衝突試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の開発設計段階において行われる側面衝突性能の評価のための、自動車の側面衝突試験方法及び側面衝突試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の開発設計段階において、車体の衝突性能の評価は不可避であり、自動車メーカーでは試作車(フルビィークル)を作り、大型の衝突試験装置を用いて性能評価を実施している。
【0003】
特に自動車の側面衝突試験は重要な試験項目であり、例えば特許文献1に示すように、ガイドレール上に置かれた試験車両を動力ワイヤで牽引して所定の衝突速度まで加速し、衝突対象構造物に衝突させる装置が使用されている。しかしこのようなワイヤ巻取り方式の装置では0.5G以下の加速度しか得られず、所定の衝突速度を得るためには長い加速距離が必要となる。
【0004】
また、停止した試験車両に側面から衝突台車を衝突させる側面衝突試験を行う場合には、衝突後の試験車両と衝突台車が自由に動いて停止するに必要十分な敷地面積を設けていたこともあり、側面衝突試験装置は大型で高価な設備となっている。
【0005】
このため、側面衝突試験装置の台数は容易に増加させることができず、従って側面衝突試験装置は常に不足気味であり、試験実施までに長い待ち時間が必要となって開発工程の遅延の一因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−147173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、フルビィークルでの側面衝突試験を広い面積を要することなく行うことができる自動車の側面衝突試験方法と、そのための小型かつ安価な側面衝突試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明の自動車の側面衝突試験方法は、剛体壁の前面に置かれた試験車両の側面に向かって、衝突台車を加速装置により加速して衝突させ、衝突台車が試験車両に衝突した後、衝突台車と加速装置との間に設けられたエネルギ吸収装置により衝突台車の前進を停止させ、剛体壁で停止した試験車両に衝突台車が再度衝突することを防止することを特徴とするものである。
【0009】
また、上記の課題を解決するためになされた本発明の自動車の側面衝突試験装置は、剛体壁と、その前面に置かれた試験車両の側面に衝突される衝突台車と、この衝突台車を試験車両に向けて加速する加速装置とからなり、衝突台車と加速装置との間を、一端がエネルギ吸収装置に接続された牽引ワイヤにより連結し、衝突台車が試験車両に衝突した後、このエネルギ吸収装置により衝突台車の前進を停止させることを特徴とするものである。
【0010】
なお請求項3のように、加速装置が油圧によりピストンを押し出す形式の油圧式加速装置であることが好ましい。また請求項4のように、エネルギ吸収装置が、金属管を軸圧潰させることによりエネルギを吸収させる装置であることが好ましい。さらに請求項5のように、衝突台車がその後退を防止する制動装置を備えたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、衝突台車を加速装置により急速に加速して試験車両の側面に衝突させるとともに、衝突後はエネルギ吸収装置により衝突台車の前進を急速に停止させる。加速装置として油圧によりピストンを押し出す形式の油圧式加速装置を用いれば、1m以下の加速距離で950kgの衝突台車を64km/hの速度まで加速することができ、ワイヤ巻取り方式の加速装置に較べて装置全体のサイズを1/10程度にまで小型化することができる。また、衝突時には衝突台車も試験車両とほぼ同様の速度で前進するが、試験車両は剛体壁で停止するため、衝突台車が再び試験車両に衝突することがあるが、本発明ではエネルギ吸収装置により衝突台車の前進を急激に停止させるので、再衝突を防止することができる。
【0012】
このように、本発明によれば自動車の側面衝突試験装置を従来の1/10の僅か20m程度の長さにまで縮小し、しかも従来と全く同様の試験結果を得ることができる。このため自動車メーカー以外の素材メーカーや部品メーカーでも比較的容易に性能評価を行うことが可能となり、自動車の安全性向上に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の側面衝突試験装置の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1は実施形態の側面衝突試験装置の全体斜視図であり、1は加速装置、2は衝突台車、3はフルビィークルの試験車両、4は剛体壁、5はその前面に配置された緩衝材である。試験車両3は剛体壁4から数m離れた位置に横向きに配置され、後記する加速装置1によって加速された衝突台車2がその側面に衝突する。衝突の瞬間及びその直後の挙動は、上方に設置されたカメラ6により撮影され分析される。7は試験車両3を照らすために周囲に設置された複数の照明灯である。なお、衝突台車2の先端と試験車両3までの距離は1mであり、本実施形態の加速装置1は、この短い加速距離で衝突台車2を、例えば64km/hの速度まで加速することができる。
【0015】
このような大きい加速度を質量が約1トンの衝突台車2に与えるために、加速装置1には大きい推力(たとえば50トン)を持つものが使用される。この実施形態では加速装置1は、油圧によりピストンを押し出す形式の油圧式加速装置である。より詳細には、窒素アキュムレータ8で作動油を加圧してシリンダ9に供給し、短時間で開放する油圧制御系を持つ加速装置を用いた。この構造により大きい油圧を一挙にシリンダ9に加え、ピストン10を瞬間的に前進させて短距離のうちに衝突台車2を必要速度まで加速することが可能となる。
【0016】
衝突台車2は加速装置1のピストン10の先端で押し出されるもので、加速に耐えられる十分に強度の高い構造のものである。衝突台車2はタイヤ車輪11を備えている。
【0017】
この衝突台車2が試験車両3に衝突したとき、衝突台車2も試験車両3とほぼ同様の前進速度を持つ。しかし試験車両3は剛体壁4まで移動してその位置で停止するため、そのままでは衝突台車2が停止した試験車両3に再び衝突することがある。この再衝突による車体の変形は、後の車体の変形分析のためには好ましくない。そこで本発明では、牽引ワイヤ12とエネルギ吸収装置13とにより、衝突後における衝突台車2の前進を急激に停止させ、再衝突を防止する。
【0018】
図2に示すように、牽引ワイヤ12はその一端を加速装置1のベース等に動かないように固定し、その多端を衝突台車2に設けたエネルギ吸収装置13に接続している。このエネルギ吸収装置13は
図3に示したように、固定壁14と、可動壁15と、これらの2つの壁を貫通するロッド16と、これらの2つの壁の間に配置された鋼管等の金属パイプ17とからなる。ロッド16の先端は可動壁15の前面の頭部18と連結または一体化されている。またロッド16の基端には牽引ワイヤ12が連結されている。牽引ワイヤ12の長さは、衝突台車2の前進を停止させたい距離、すなわち再衝突を防止できる距離としておく。
【0019】
衝突台車2の加速時には、
図3の上段図のように牽引ワイヤ12は緩んでいる。しかし衝突後の衝突台車2の前進に伴い、
図3の中段図のように牽引ワイヤ12が延びた状態になる。この状態となると、牽引ワイヤ12が連結されているロッド16はそれ以上前進することができない。しかし慣性によって衝突台車2は更に前進しようとするため、鋼管等の金属パイプ17に軸方向の荷重が加わり、
図3の下段図のように金属パイプ17が軸圧潰する。この軸圧潰により衝突台車2の前進運動エネルギを吸収し、衝突台車2を停止させることができる。
【0020】
このようなエネルギ吸収装置13によれば、断面積とその降伏強度の異なる金属パイプ17を用いることによって、制動ストローク(停止させるまでの距離)を任意に設定することができ、この実施形態では衝突後、0.3mで衝突台車2を完全に停止させることができる。このため、衝突台車2が停止した試験車両3に再び衝突する再衝突を防止することができる。油圧ダンパや摩擦発熱を利用したエネルギ吸収装置もあるが、上記のエネルギ吸収装置13に比較して大型で重くなる。
【0021】
図3の下段図の状態においては牽引ワイヤ12に弾性エネルギが蓄えられているので、衝突台車2は停止した後にこの弾性エネルギによって後退し、加速装置1に衝突する可能性がある。この後退速度はさほど大きくはないためタイヤによる摩擦制動でも対応可能であるが、ブレーキを作動させるタイムラグを小さくしたり制御系の信頼性を向上させる必要があるため、装置が複雑高価となってしまう。
【0022】
そこでこの実施形態では
図4に示すように、衝突台車2の車軸に制動装置として一方向クラッチ19を組み込み、衝突台車2の後退を防止した。このような構造とすれば、外部からの制御信号がなくても後退のみを制動することができ、衝突台車2が加速装置1に衝突するトラブルを防止することができる。
【0023】
以上に説明したように、本発明によれば、衝突台車2を加速装置1により加速し、剛体壁1の前面に置かれた試験車両3の側面に向かって衝突させる試験を行い、衝突時の挙動をカメラ6により撮影して分析することができる。また衝突台車2が試験車両3に衝突した後は、エネルギ吸収装置13により衝突台車2の前進を停止させ、試験車両3に衝突台車2が再度衝突することを防止することができる。
【0024】
また本発明によれば、ワイヤ巻取り式の従来装置では200m以上の長さが必要であった側面衝突試験装置を、わずか20m程度の長さにまで小型化することができ、しかも衝突台車2の衝突速度は従来と変わらないので、全く同様の試験結果を得ることができる利点がある。
【符号の説明】
【0025】
1 加速装置
2 衝突台車
3 試験車両
4 剛体壁
5 緩衝材
6 カメラ
7 照明灯
8 窒素アキュムレータ
9 シリンダ
10 ピストン
11 車輪
12 牽引ワイヤ
13 エネルギ吸収装置
14 固定壁
15 可動壁
16 ロッド
17 金属パイプ
18 頭部
19 一方向クラッチ