(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
励磁コイルを含む共振回路と電力源との間の線路に挿入されたスイッチング素子のオン・オフ動作により、励磁コイルに供給する電力が目標の電力となるように制御して被加熱体を電磁誘導加熱する定着装置であって、
前記スイッチング素子の温度を検出する温度検出手段と、
励磁コイルに電力を供給して被加熱体を電磁誘導加熱する加熱期間の初期及び終期において、励磁コイルに供給する電力を段階的に変化させる第1制御手段と、
前記スイッチング素子の温度が上限温度を超えたときに、第1制御手段による電力供給を禁止し、前記スイッチング素子の温度が上限温度より低い基準温度以下になったときに前記電力供給の禁止を解除する第2制御手段と、
を備え、
前記第1制御手段において、前記電力を段階的に変化させる制御モードとして、第1の制御モードと、第1の制御モードよりも供給する電力が所定レベル以下となる時間が短い第2の制御モードが設定されており、
前記第1制御手段は、
前記スイッチング素子の温度が前記上限温度と基準温度との間の所定温度以上の場合には、次の加熱期間において前記第2の制御モードを実行し、前記所定温度よりも低い場合には、次の加熱期間において前記第1の制御モードを実行する
ことを特徴とする定着装置。
前記第2の制御モードは、前記スイッチング素子の温度に対応付けて複数定められ、各第2の制御モードの前記所定レベル以下となる時間は、当該第2の制御モードに対応する前記スイッチング素子の温度が低くなるのに応じて長くなるように定められ、
前記第1制御手段は、前記スイッチング素子の温度が前記上限温度と基準温度との間の所定温度以上の場合には、次の加熱期間において、前記スイッチング素子の温度に対応する前記第2の制御モードを実行する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【背景技術】
【0002】
プリンター、複写機等の画像形成装置として、ウォームアップ時間の短縮や省電力等の点においてヒーター加熱方式の画像形成装置よりも優れている電磁誘導加熱方式の画像形成装置が利用されるようになってきている。
図11は、従来の電磁誘導加熱方式の画像形成装置の定着装置において用いられる電磁誘導加熱装置の具体例を示す。同図に示すように、電磁誘導加熱装置100は、電力供給源となる商用電源(AC100V)110と接続され、整流回路120、電力検出回路130、インバーター回路140、電磁誘導加熱制御部150等から構成される。商用電源110から供給される交流電力は、整流回路120によって直流電力に整流された後、インバーター回路140に供給される。
【0003】
電力検出回路130は、整流回路120の電力を検出して電磁誘導加熱制御部150に出力する。インバーター回路140は、並列に接続された励磁コイル1411とキャパシター1412とから構成される共振回路141と、共振回路141と直列に接続されているスイッチング素子142とから構成される。インバーター回路140は、スイッチング素子142がオン・オフ制御されることにより、共振回路141への直流電力の供給のオン、オフ動作を繰り返して、励磁コイル1411に高周波の電力を供給し、励磁コイル1411と磁気的に結合された不図示の被加熱体(定着ローラー)を電磁誘導加熱させる。
【0004】
電磁誘導加熱制御部150は、スイッチング素子142のデューティー比を制御するPWM(Pulse Width Modulation)制御を行って励磁コイル1411への供給電力を制御する。ここで、「デューティー比」とは、PWM信号の周期に対する、スイッチング素子のオン時間の割合(%)のことをいい、デューティー比を大きくすることにより、供給電力を多くするように制御し、逆にデューティー比を小さくすることにより供給電力を少なくするように制御することができる。
【0005】
図12は、PWM制御における、スイッチング素子のオン・オフ動作と、スイッチング素子に印加される電圧、電流の変化との関係を表す図である。同図において
図12(a)は、スイッチング素子のオン・オフを示すスイッチング信号を表し、
図12(b)、(c)は、それぞれ、スイッチング素子に印加される電圧、電流の変化を表す。
このPWM制御においては、
図12(a)〜(c)に示すように、スイッチング素子に印加される電圧及び電流が略0となる時点においてオン・オフを切替えるゼロクロス制御を実現することが望ましい。スイッチング素子における電力損失(以下、「スイッチング損失」という。)を防止できると共に、スイッチング素子の過熱や破壊を防止することができるからである。
【0006】
しかしながら、励磁コイルへの供給電力が低電力となる場合(例えば、画像形成装置が、ユーザーからの印刷指示の入力を待っている印刷待ち状態にある場合のように、定着ローラーの温度が充分高く、目標温度との差が少ない場合)、PWM制御におけるスイッチング素子のオン時間が短くなり、これにともなってオン時間中に励磁コイルに蓄積される電力量が少なくなり、その影響で、
図12(d)〜(f)に示すように、スイッチング素子に印加される電圧の振動振幅が小さくなり、当該電圧が0Vまで低下しきらない内にスイッチング素子をオンに切替えるタイミングが到来することになり、ゼロクロス制御をすることができなくなる。
【0007】
その結果、μ秒のオーダーでオン・オフが切替えられるスイッチング素子において、スイッチング素子がオンに切替えられる毎にスイッチング損失が発生し、スイッチング損失量が大きくなるとともに、スイッチング損失による発熱によりスイッチング素子が破壊されてしまうおそれが生じる。
このため、PWM制御を実行する期間が間欠的に繰り返される間欠PWM制御が行われている。これにより、PWM制御を実行している間は、スイッチング素子のオン時間を、上記のように連続してPWM制御を実行する場合よりも長くし、励磁コイルへの供給電力が大きくなるようにしてスイッチング損失の発生を防止することができるとともに、PWM制御を禁止する禁止期間を設けることにより、当該オン時間を長くしたことによる供給電力の過剰供給分を相殺することができる。
【0008】
一方、上記のような間欠PWM制御を行う場合には、PWM制御の実行を禁止している禁止期間からPWM制御を実行する実行期間へ移行する際、及び当該実行期間から禁止期間へ移行する際に急激な磁束変動が発生し、これにより被加熱体(定着ローラー)が変形を繰り返し、その結果、耳障り音が発生してしまうという問題が生じる。このため、PWM制御の実行期間において、PWM制御の実行開始の際及び実行禁止の際に、励磁コイルへの供給電力を段階的に変化させる段階制御を行い、急激な磁束変動が生じないようにして耳障り音の発生を抑制することが行われている。
【0009】
そして、上記のような段階制御をおこなうと、励磁コイルへの供給電力が低電力となり、スイッチング損失が大きくなり、段階制御を繰り返すことにより、スイッチング素子の温度が徐々に上昇するので、スイッチング素子の温度を監視し、当該温度が許容上限温度に達すると、励磁コイルへの供給電力を停止し、当該温度が、所定の温度まで下がった場合に励磁コイルへの電力供給を開始するように制御することがおこなわれている。
【0010】
これにより、段階制御を繰り返すことにより、スイッチング素子の温度が過剰に上昇し、スイッチング素子が破壊されないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態)
以下、本発明に係る一形態の定着装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンター(以下、単に「プリンター」という。)に適用した場合を例にして説明する。
[1]プリンターの構成
先ず、プリンターの構成について説明する。
図1は、プリンターの構成を示す図である。同図に示すように、このプリンター1は、画像プロセス部3、給紙部4、定着装置5、制御部60等を備えている。
【0021】
プリンター1は、ネットワーク(例えばLAN)に接続され、外部の端末装置(不図示)や図示しない表示部を有する操作パネルから印刷指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナー像を形成し、これらを記録シートへ多重転写してフルカラーの画像を形成することにより、記録シートへの印刷処理を実行する。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成要素の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
【0022】
画像プロセス部3は、作像部3Y、3M、3C、3K、露光部10、中間転写ベルト11、二次転写ローラー45などを有している。作像部3Y、3M、3C、3Kの構成は、いずれも同様の構成であるため、以下、主として作像部3Yの構成について説明する。
作像部3Yは、感光体ドラム31Yと、その周囲に配設された帯電器32Y、現像器33Y、一次転写ローラー34Y、および感光体ドラム31Yを清掃するためのクリーナー35Yなどを有しており、感光体ドラム31Y上にY色のトナー像を作像する。現像器33Yは、感光体ドラム31Yに対向し、感光体ドラム31Yに帯電トナーを搬送する。中間転写ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラー12と従動ローラー13に張架されて矢印C方向に周回駆動される。又、従動ローラー13の近傍には、中間転写ベルト上に残留するトナーを除去するためのクリーナー21が配置されている。
【0023】
露光部10は、レーザーダイオードなどの発光素子を備え、制御部60からの駆動信号によりY〜K色の画像形成のためのレーザー光Lを発し、作像部3Y、3M、3C、3Kの各感光体ドラムを露光走査する。この露光走査により、帯電器32Yにより帯電された感光体ドラム31Y上に静電潜像が形成される。作像部3M、3C、3Kの各感光体ドラム上にも同様にして静電潜像が形成される。
【0024】
各感光体ドラム上に形成された静電潜像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの各現像器により現像されて各感光体ドラム上に対応する色のトナー像が形成される。形成されたトナー像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの各一次転写ローラー(
図1では、作像部3Yに対応する一次転写ローラーのみ符号34Yを付し、他の一次転写ローラーについては、符号を省略している。)により、中間転写ベルト11上の同じ位置で重ね合わされるように、中間転写ベルト11上にタイミングをずらして順次一次転写された後、二次転写ローラー45による静電力の作用により中間転写ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に二次転写される。
【0025】
トナー像が二次転写された記録シートは、さらに定着装置5に搬送され、記録シート上のトナー像(未定着画像)が、定着装置5において加熱及び加圧されて記録シートに熱定着された後、排出ローラー71により排紙トレイ72に排出される。
給紙部4は、記録シート(
図1の符号Sで表す)を収容する給紙カセット41と、給紙カセット41内の記録シートを搬送路43上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラー42と、繰り出された記録シートを二次転写位置46に送り出すタイミングをとって記録シートを搬送するタイミングローラー44などを備えている。
【0026】
給紙カセットは、1つに限定されず、複数であってもよい。記録シートとしては、大きさや厚さの異なる用紙(普通紙、厚紙)やOHPシートなどのフィルムシートを利用できる。給紙カセットが複数ある場合には、大きさ又は厚さ又は材質の異なる記録シートを複数の給紙カセットに収納することとしてもよい。
タイミングローラー44は、中間転写ベルト11上の同じ位置で重ね合わされるように中間転写ベルト11上に一次転写されたトナー像が二次転写位置46に搬送されるタイミングに合わせて、記録シートをニ次転写位置46に搬送する。そして、二次転写位置46において、ニ次転写ローラー45により中間転写ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に二次転写される。
【0027】
繰り出しローラー42、タイミングローラー44等の各ローラーは、搬送モーター(不図示)を動力源とし、歯車ギヤーやベルトなどの動力伝達機構(不図示)を介して回転駆動される。この搬送モーターとしては、例えば、高精度の回転速度の制御が可能なステッピングモーターが使用される。
[2]定着装置の構成
図2は、定着装置の構成を示す横断面図である。同図に示すように、定着装置5は、電磁誘導加熱装置50、被加熱体としての定着ローラー51と、加圧ローラー52と第一温度センサー53等を備える。同図の符号Sは、記録シートを示す。又、矢印Aは、定着ローラー51の回転方向を、矢印Bは、加圧ローラー52の回転方向を、矢印Dは、記録シートSの搬送方向をそれぞれ示す。
【0028】
電磁誘導加熱装置50は、図示しない電磁誘導加熱回路と電気的に接続されている励磁コイル531と、コア501と、コイルボビン502と、カバー503等を有し、定着ローラー51の回転軸方向に沿うように配置されている。
励磁コイル531は、記録シートSの幅方向に沿って長く延び、横断面が円弧状の形状になるようにコイルボビン502に巻かれている。励磁コイル531に電磁誘導加熱回路から高周波電力が供給されることにより、励磁コイル531から磁束が発生して定着ローラー51(後述する電磁誘導発熱層514)が電磁誘導加熱される。具体的には、励磁コイル531から発生した磁束は、定着ローラー51の後述する電磁誘導発熱層514に導かれ、これにより、電磁誘導発熱層514に渦電流が発生して電磁誘導発熱層514が電磁誘導加熱される。
【0029】
コア501は、それぞれ高透磁率のフェライトなどからなり、励磁コイル531から発生した磁束を定着ローラー51に効率的に導くために用いられる。コイルボビン502は、定着ローラー51の外周面に対向する部分が定着ローラー51の外周面に沿って円弧状に湾曲し、当該外周面との間に所定の間隔(例えば、3mmの間隔)を空けて固定されている。
【0030】
図3は、電磁誘導加熱装置が有する電磁誘導加熱回路と、当該電磁誘導加熱回路の制御に関わる主要構成要素との関係を示す機能ブロック図である。電磁誘導加熱装置50が有する電磁誘導加熱回路500は、整流回路510、インバーター回路520、電力検出回路550、電磁誘導加熱制御部560、駆動部570等から構成されている。
整流回路510は、交流の商用電源700から供給される交流電力を整流して直流電力に変換してインバーター回路520に出力する。インバーター回路520は、励磁コイル531とキャパシター532とが並列に接続されて構成される共振回路530と、共振回路530と直列に接続されるスイッチング素子540とを有する。
【0031】
インバーター回路520は、電磁誘導加熱制御部560によってスイッチング素子540のオン・オフがPWM(Pulse Width Modulation)制御されることにより、入力された直流電力から高周波電力を生成する。スイッチング素子540としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、トランジスタ、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等を用いることができる。電力検出回路550は、整流回路510の電力を検出して、検出結果を電磁誘導加熱制御部560に出力する。
【0032】
又、スイッチング素子540の近傍には、スイッチング素子540の温度を検出する第二温度センサー541が設けられている。第二温度センサー541は、検出結果を定着制御部54に出力する。第二温度センサー541としては、例えば、サーミスタ、熱電対、赤外線センサー等を用いることができる。
図4は、電磁誘導加熱制御部の構成と電磁誘導加熱制御部と接続されている主要構成要素を示す機能ブロック図である。電磁誘導加熱制御部560は、定着制御部54と通信可能で、CPU5600、ROM5601、RAM5602、記憶部5603等から構成され、電力検出回路550から入力された検出結果と定着制御部54から指示された供給電力の値とに基づいて、駆動部570を介してスイッチング素子540のオン・オフをPWM制御する。これにより、指示された供給電力の値に応じた供給電力を励磁コイル531に供給して、高周波電力を生成させることができる。
【0033】
プリンター1が、例えばユーザーからの印刷指示を待っている印刷指示待ち状態にある場合のように、励磁コイル531への供給電力が低電力となる場合には、電磁誘導加熱制御部560は、定着制御部54からの指示に応じて、スイッチング素子540のオン・オフをPWM制御する期間とPWM制御を禁止する期間とが交互に繰り返される。
すなわち、電磁誘導加熱制御部560がスイッチング素子540のオン・オフをPWM制御して励磁コイル531に電力を供給し、定着ローラー51を電磁誘導加熱する期間(以下、「加熱期間」という。)と、定着制御部54からの指示に応じて、電磁誘導加熱
制御部560が当該PWM制御を禁止し、定着ローラー51の電磁誘導加熱を禁止する期間(以下、「加熱禁止期間」という。)とが交互に繰り返される。その結果、定着ローラー51の温度が、熱定着が可能な定着温度の下限の温度(以下、「定着下限温度」という。ここでは、定着下限温度は140℃とする。)以上の所定の温度範囲(ここでは、140℃〜190℃の温度範囲とする。)に維持されるように温度制御(以下、「スタンバイ温度制御」という。)が行われる。
【0034】
さらに、上記のスタンバイ温度制御においては、加熱期間から加熱禁止期間へ移行する際(以下、「加熱期間の終期」という。)、及び加熱禁止期間から加熱期間へ移行する際(以下、「加熱期間の初期」という。)に急激な磁束変動が発生し、それにより被加熱体である定着ローラー51が変形を繰り返して定着ローラー51から耳障り音が発生する。
これを防止するために、電磁誘導加熱制御部560は、加熱期間の初期及び終期において励磁コイル531への供給電力が段階的に変化するように、スイッチング素子540のオン・オフをPWM制御する。以下、このような励磁コイル531への供給電力を段階的に変化させるPWM制御のことを「段階制御」と呼ぶことにする。
【0035】
電磁誘導加熱制御部560は、加熱期間の初期の場合には、スイッチング素子のデューティー比を段階的に増加させることにより、励磁コイル531への供給電力が目標値に達するまで段階的に増加するようにPWM制御し、加熱期間の終期の場合には、当該デューティー比を段階的に減少させることにより、当該供給電力が目標値から0Wまで段階的に減少するようにPWM制御する。
【0036】
ここで、「目標値」は、スイッチング素子540に印加される電圧及び電流が略0となる時点においてオン・オフを切替えるゼロクロス制御を実現することが可能な供給電力の値であり、供給電力の範囲に応じて予めプリンターの製造者によって定められている値である。ここでは、600Wとする。電磁誘導加熱制御部560は、目標値の電力を供給するためのデューティー比を記憶している。
【0037】
ROM5601には、定着制御部54や電力検出回路550と通信したり、駆動部570を制御したりするための各種プログラムや、後述するスタンバイ時電力制御処理における定着制御部54からの指示に応じて励磁コイル531に供給する電力を段階的に変化させる制御モード(後述する第一段階制御モードと第二段階制御モード)を切り換える処理を行うための制御プログラム等が記憶されている。
【0038】
CPU5600は、ROM5601に記憶されている上記の各プログラムを実行することにより、電磁誘導加熱制御部560が行う各機能を実現する。RAM5602は、CPU5600のプログラム実行時のワークエリアとして用いられる。
記憶部5603は、第一段階制御モードと、第二段階制御モードを記憶している。両モードは、それぞれ、段階制御を行う際の各段階における励磁コイル531への供給電力を段階的に変化させるための情報であり、具体的には、加熱期間の初期及び終期に行う段階制御において用いる、デューティー比と供給電力と供給時間との対応関係を示す情報である。なお、両モードにおいては、励磁コイル531への供給電力が目標値(600W)又は0Wに達する前の各段階における励磁コイル531への供給電力の供給時間が規定されている。
【0039】
両モードにおいては、第二段階制御モードの方が、第一段階制御モードよりも、上記供給電力が所定レベル以下(ここでは、200W以下とする)となる供給電力の供給時間が短くなるように、各段階における供給電力の供給時間が定められている。
図5(a)は、第一段階制御モードの具体例を示し、
図5(b)は、第二段階制御モードの具体例を示す。
図5(a)の第一段階制御モードでは、段階制御の期間中の供給電力が、200W、400Wの各供給時間が、加熱期間の初期及び終期においてそれぞれ20ミリ秒となるように規定されており、第二段階制御モードでは、当該期間中の供給電力が300Wの供給時間が、加熱期間の初期及び終期においてそれぞれ40ミリ秒となるように規定されている。
【0040】
電磁誘導加熱制御部560は、両段階制御モードの内、後述するスタンバイ時電力制御処理において定着制御部54から指示された段階制御モードに従って加熱期間の初期及び終期のデューティー比を制御することにより、段階制御を実行する。
本発明者は、スイッチング損失は励磁コイルへの供給電力が低電力になるほど、大きくなることを考慮し、供給電力が低電力となる段階制御における低電力の供給時間を制御することにより、段階制御期間中に発生するスイッチング損失を小さくし、加熱期間中のスイッチング素子の温度上昇を効率よく抑制することができると考え、所定レベル以下(ここでは、200W以下とする。)の供給電力での励磁コイルへの電力供給時間と、当該段階制御期間中における温度上昇との関係を調べる実験を行った。
【0041】
実験は、第一及び第二段階制御モードを含む、以下の1〜5の各段階制御モードを用いてそれぞれスイッチング素子の温度上昇を調べることにより、行った。なお当該実験は、記憶部5603に記憶されている段階制御モードを除いて、定着装置5と同様の構成の定着装置を用いて行った。
1.段階制御の期間中の励磁コイルへの供給電力が200Wの供給時間が加熱期間の初期及び終期においてそれぞれ40ミリ秒となるように規定されている。
【0042】
2.第一段階制御モード
3.段階制御の期間中の励磁コイルへの供給電力が、200W、300W、400W、500Wの各供給時間が、加熱期間の初期及び終期においてそれぞれ10ミリ秒となるように規定されている。
4.第二段階制御モード
図6は、上記の実験結果を示すテーブルである。同図の符号1は、上記の1の段階制御モードの、符号2は、第一段階制御モードの、符号3は、上記の3の段階制御モードの、符号4は、第二段階制御モードの実験結果をそれぞれ示す。同図に示すように、200W以下での電力供給時間が短くなるに従って段階制御期間中のスイッチング素子の温度上昇は小さくなっている。又、第二段階制御モードや上記の3の段階制御モードのように、段階制御の期間中の供給電力が、200W以下の供給時間が0に近づくと(20ミリ秒以下になると)、当該温度上昇はより小さくなっている。
【0043】
なお、
図6の実験結果では、200W未満の供給電力の例を含めていないが、200W未満の供給電力では、200Wの場合よりも更にスイッチング損失が大きくなるため、200W未満の供給電力を含む200W以下での電力供給時間が短くなるに従って段階制御期間中のスイッチング損失は小さくなり、上記のことがいえる。
このように、スイッチング素子の温度上昇は、供給電力の減少に応じて均等に(直線的に)大きくなるのではなく、ある閾値レベル(ここでは、200W)以下になると、急激にスイッチング素子の温度上昇が大きくなり、当該閾値レベルを超えると、スイッチング素子の温度上昇は、急激に小さくなる。
【0044】
本発明者は、上記の実験結果に基づいて、低電力の供給時間が異なる段階制御モードを切り換えて段階制御を行うことにより、耳障り音の発生と、スイッチング素子の温度上昇とをバランスよく抑制し、スタンバイ温度制御において発生する、スイッチング素子の温度上昇に起因する、加熱禁止期間中の定着ローラーの温度の過剰低下(定着下限温度を下回ること)を防止できると考えました。
【0045】
具体的には、本実施の形態の第一段階制御モードのように、低電力(200W)の供給時間が長く(40ミリ秒)、耳障り音の発生を抑制するのにより効果的な段階制御モードと、本実施の形態の第二段階制御モードのように、低電力(200W)の供給時間が短く(0時間)、スイッチング素子の温度上昇を抑制するのにより効果的な段階制御モードとを、後述するスタンバイ時電力制御処理により適切なタイミングで切り換えて段階制御を行うことにより、耳障り音の発生と、スイッチング素子の温度上昇とをバランスよく抑制し、上記の過剰低下の防止を図りました。
【0046】
図3の説明に戻って、駆動部570は、電磁誘導加熱制御部560の制御下で、スイッチング素子540のオン・オフを切り換える。第一温度センサー53は、定着ローラー51の近傍に設けられ、定着ローラー51の表面温度を検出し、検出結果を定着制御部54に出力する。第一温度センサー53としては、例えば、サーミスタ、熱電対、赤外線センサー等を用いることができる。
【0047】
定着制御部54は、電磁誘導加熱制御部560と通信可能で、定着装置5全体の制御を行う。
図7は、定着制御部の構成と定着制御部の制御対象となる主要構成要素を示す図である。
定着制御部54は、CPU5400、ROM5401、RAM5402、温度記憶部5403等から構成される。ROM5401には、電磁誘導加熱制御部560、第一温度センサー53、第二温度センサー541を制御するための各種プログラムや後述するスタンバイ時電力制御処理を実行するプログラム等が記憶されている。
【0048】
CPU5400は、ROM5401に記憶されている各プログラムを実行することにより、電磁誘導加熱制御部560、第一温度センサー53、第二温度センサー541を制御し、又、後述するスタンバイ時電力制御処理を実行する。RAM5402は、CPU5400のプログラム実行時のワークエリアとして用いられる。
温度記憶部5403は、後述するスタンバイ時電力制御処理において用いられる定着上限温度、定着下限温度、素子上限温度、素子基準温度を記憶している。ここで、「定着上限温度」とは、スタンバイ温度制御において、定着ローラー51の表面温度を所定の範囲(ここでは、140℃〜190℃の温度範囲とする。)に維持するために設定されている、当該所定の範囲の上限の温度(ここでは、190℃)のことをいう。定着上限温度は、定着ローラー51及びその周辺の部品に熱損傷を与えるおそれのない上限温度に設定されている。
【0049】
又、「素子上限温度」とは、スイッチング素子540の動作に支障を与えるおそれのない上限の温度(ここでは、80℃とする。)のことをいう。さらに、「素子基準温度」とは、スイッチング素子540のオン・オフのPWM制御を開始するか否かの判定基準となる温度(ここでは、70℃とする。)のことをいう。
上記各温度は、予めプリンターの製造者側で試験等を行うことにより設定され、温度記憶部5403に記憶されるものとする。
【0050】
図2の説明に戻って、定着ローラー51は、長尺で円柱状の芯金512の外周面に弾性体層513、電磁誘導発熱体層514、弾性体層515、離型層516がこの順に積層されて構成されている。
芯金512は、定着ローラー51を支持する部材であり、例えば円柱体で構成される。芯金512を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等を用いることができる。弾性体層513は、電磁誘導発熱体層514が発熱した熱を芯金512に逃がさないようにするとともに、
図2に示すように加圧ローラー52と定着ニップ5nを形成するための層である。弾性体層513を構成する材料としては、耐熱性及び断熱性の高いものが望ましく、例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の発砲弾性体を用いることができる。
【0051】
電磁誘導発熱層514は、ニッケル等から構成され、励磁コイル531から発せられる磁束により発熱する層である。弾性体層515は、記録シート上のトナー像に均一かつ柔軟に熱を伝えるための層である。弾性体層515を設けることにより、トナー像が押しつぶされたり、トナー像が不均一に溶融されたりするのを防止し、画像ノイズの発生を防止することができる。弾性体層515を構成する材料としては、耐熱性と弾性とを有するゴム材や樹脂材を用いることができる。例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどを用いることができる。
【0052】
離型層516は、定着ローラー51の最外層をなし、定着ローラー51と記録シートとの離型性を高めるための層である。離型層516を構成する材料としては、定着温度での使用に耐えられるとともにトナーに対する離型性に優れたものを使用することができる。例えば、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、PTFE(四フッ化エチレン)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化エチレン共重合体)、PFEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)等のフッ素樹脂を使用することができる。
【0053】
加圧ローラー52は、円柱状の芯金521の周囲に、弾性体層522を介して離型層523が積層されて構成され、定着ローラー51を押圧することにより、定着ローラー51の外周面との間に周方向に所定幅を有する定着ニップ5nを形成する。加圧ローラー52は、図示しない駆動モーターによって駆動され、加圧ローラー52が
図2のB方向に回転することにより、定着ローラー51が
図2のA方向に従動回転する。
【0054】
芯金521は、加圧ローラー52を支持する部材であり、耐熱性と強度を有する材料から構成される。芯金521の材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等を用いることができる。
弾性体層522は、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体で、耐熱性の高い材料で構成される。離型層523は、加圧ローラー52と記録シートとの離型性を高めるための層であり、離型層516と同様の材料及び厚さで構成することができる。
【0055】
[3]スタンバイ時電力制御処理
図8は、定着制御部が行うスタンバイ時電力制御処理の動作を示すフローチャートである。印刷ジョブが終了するか、又は電源オン後、ウォームアップ動作が終了すると、定着制御部54は、スタンバイ温度制御を開始し、第一温度センサー53から定着ローラー51の表面温度の検出温度(ts)を、第二温度センサー541からスイッチング素子540の検出温度(tr)をそれぞれ取得する(ステップS801)。
【0056】
そして、trが温度記憶部5403に記憶されている定着上限温度を超えているか(ステップS802:YES)、又はtsが温度記憶部5403に記憶されている素子上限温度を超えているか(ステップS803:YES)の何れかの場合、定着制御部54は、電磁誘導加熱制御部560に電力供給の禁止指示を送信して、スイッチング素子540のオン・オフのPWM制御の実行を禁止させて、励磁コイル531への電力供給を禁止させる(ステップS805)。
【0057】
さらに、定着制御部54は、電力供給禁止後のスイッチング素子540の温度(tst)を取得し(ステップS806)、その後、第一温度センサー53及び第二温度センサー541を介して定着ローラー51の表面温度の検出温度(ts)及びスイッチング素子540の検出温度(tr)を監視し(ステップS807)、定着ローラー51の表面温度(tr)が、温度記憶部5403に記憶されている定着下限温度以下に下降し(ステップS808:YES)、さらに、スイッチング素子540の温度(ts)が、温度記憶部5403に記憶されている素子基準温度以下に下降すると(ステップS809:YES)、定着制御部54は、励磁コイル531への電力供給禁止を解除する(ステップS810)。
【0058】
そして、定着制御部54は、現在の定着ローラー51の表面温度(tr)に基づいて励磁コイル531へ供給する供給電力値を決定し、tstが所定温度(ここでは、75℃とする。)以上の場合には(ステップS811:YES)、決定した供給電力値の供給電力を、第二段階制御モードで供給するように、電磁誘導加熱制御部560に指示し(ステップS813)、所定温度より低い場合には(ステップS811:NO)、決定した供給電力値の供給電力を、第一段階制御モードで供給するように、電磁誘導加熱制御部560に指示する(ステップS812)。
【0059】
さらに、スタンバイ温度制御が解除されていない場合には(ステップS814:NO)、定着制御部54は、ステップS801の処理に移行する。スタンバイ温度制御は、操作パネルから印刷指示が入力されたり、電源オフ指示が入力されたり、印刷ジョブ終了後、所定時間(例えば、15分)経過した場合に解除される。
又、ステップ802及びステップ803の判定結果が何れも否定的である場合(ステップS802:NO、ステップS803:NO)、定着制御部54は、電力供給期間中である場合には(ステップS804:YES)、ステップS801の処理に移行し、電力供給期間中でない場合には(ステップS804:NO)、ステップS808の処理に移行する。
【0060】
又、ステップS808又はステップS809の判定結果が否定的である場合には(ステップS808:NO又はステップS809:NO)、定着制御部54は、ステップS807の処理に移行する。
図9は、スタンバイ温度制御において、スタンバイ時電力制御処理により制御モードを切り換えた場合における、定着ローラーとスイッチング素子の温度と励磁コイルへの供給電力の経時変化を示す図である。
図10は、スタンバイ温度制御において、上記のスタンバイ時電力制御処理のように、制御モードの切り換えを行うことなく、制御モードを第一段階制御モードに固定した場合における、定着ローラーとスイッチング素子の温度と励磁コイルへの供給電力の経時変化を示す図である。
【0061】
図9に示すように、スタンバイ時電力制御処理により電力供給モードを切り換えた場合には、
図10の場合と比較してスイッチング素子540の温度上昇が抑えられ、段階制御を行っている期間に当該温度が素子上限温度を超えにくくなっている。
具体的には、
図9では、スイッチング素子540の温度が素子上限温度を超えたのが2回であるのに対し、
図10では、7回である。さらに、
図10の場合の方が、素子上限温度を超えたときの温度がより高くなっている。
【0062】
このため、
図9の場合には、スイッチング素子540のオン・オフのPWM制御が禁止された後の加熱禁止期間中に当該温度が素子基準温度まで冷却されるのに要する時間が
図10の場合に比較して短くなり、
図10の場合のように、当該温度が素子基準温度まで下降しない間に、定着ローラー51の表面温度が定着下限温度を下回ることが少なくなっている。さらに、
図10の場合の方が、定着下限温度を下回ったときに、次の加熱期間が開始されるまでに到達する温度がより低くなっている。
【0063】
このように、段階制御期間中の供給電力の変化量が小さく、その分、耳障り音の発生を抑制する効果は高いが、スイッチング損失が大きい第一段階制御モードと、段階制御期間中の200W以下の低電力の供給時間がなく、その分、スイッチング損失の発生を抑制することができるが、耳障り音の発生を抑制する効果が第一段階制御モードに比べて弱い第二段階制御モードとを、励磁コイル531への電力供給の禁止後のスイッチング素子540の温度状態に応じて切り換えて段階制御を行うことにより、耳障り音の発生と、スイッチング素子の温度上昇とをバランスよく抑制することができる。
【0064】
すなわち、段階制御を行うことにより、スタンバイ温度制御の期間中の耳障り音の発生を抑制しつつ、当該電力供給禁止後の温度が、所定温度以上で、次の加熱期間中に素子上限温度に達するおそれがあると推測される場合には、第二段階制御モードで段階制御が実行されるので、当該加熱期間中のスイッチング素子の温度上昇を適切なタイミングで抑制し、スイッチング素子540の温度上昇に起因する被加熱体の過剰な温度低下を抑制することができる。
(変形例)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
【0065】
(1)本実施の形態では、スタンバイ時電力制御処理において、所定温度を75℃としたが、所定温度は、素子上限温度と基準温度との間の温度であればよく、75℃に限定されない。又、本実施の形態のスタンバイ時電力制御処理では、所定温度と比較対象となるスイッチング素子540の温度として、電力供給禁止後のスイッチング素子540の温度を用いることとしたが、当該比較対象となる温度は、電力供給禁止後のスイッチング素子540の温度に限定されず、電力供給期間中のスイッチング素子540の温度であってもよい。例えば、電力供給期間中のスイッチング素子540の温度を定着制御部54が監視し、当該温度が電力供給期間中に所定温度以上になったか否かにより、
図8のステップS811の判定を行うこととしてもよい。後述する変形例(2)〜(5)についても同様である。
【0066】
(2)本実施の形態では、第二段階制御モードにおいて、励磁コイル531への供給電力を、加熱期間の初期の場合は目標値(600W)に達するまで300Wずつ段階的に増加させ、加熱期間の終期の場合は当該供給電力を目標値(600W)から0Wまで300Wずつ段階的に減少させることとしたが、300Wを超える範囲においては、供給電力が段階的に増加及び減少する際の供給電力の変化量を200Wより小さくすることとしてもよい。
【0067】
例えば、加熱期間の初期の場合は、当該供給電力を0Wから300Wまで増加させた後、100Wずつ段階的に当該供給電力を目標値まで増加させ、加熱期間の終期の場合は、目標値から300Wまでは、100Wずつ段階的に減少させた後、300Wから0Wまで減少させることとしてもよい。
又、
図6の符号3の段階制御モードを第二段階制御モードとして用いることとしてもよい。
【0068】
これにより、段階制御において低電力(200W)を超える範囲の供給電力が段階的に増加及び減少する際の供給電力の変化量が小さくなるので、段階制御時における耳障り音の発生をより抑制することができる。
(3)本実施の形態のスタンバイ時電力制御処理においては、第二段階制御モードを1種類としたが、第二段階制御モードを2種類以上設定し、励磁コイル531への電力供給禁止後のスイッチング素子540の温度に応じて、切り換えるべき第二段階制御モードを選択することとしてもよい。具体的には、上記のスイッチング素子540の温度が低くなるのに応じて第二段階制御モードにおいて規定される、200W以下の低電力の供給時間が長くなるように、上記のスイッチング素子540の温度と各第二段階制御モードとを対応付けて、温度記憶部5403に記憶させておき、上記のスイッチング素子540の温度に対応する第二段階制御モードを、切り換えるべき第二段階制御モードとして選択することとしてもよい。
【0069】
例えば、第二段階制御モードとして、
図6の符号3と4の段階制御モードを予め設定して記憶部5603に記憶しておき、各段階制御モードを上記電力供給禁止後のスイッチング素子540の温度(tst)の温度範囲と対応付けて(例えば、符号3の段階制御モードの識別子を、75℃≦tst<80℃の温度範囲に、符号4の段階制御モード(本実施の形態の第二段階制御モード)の識別子を、tst≧80℃の温度範囲にそれぞれ対応付けて)温度記憶部5403に記憶させ、tstに対応する第二段階制御モードを切り換えるべき第二段階制御モードとして選択することとしてもよい。
【0070】
具体的には、
図8のステップS811の判定結果が肯定的である場合に(ステップS811:YES)、定着制御部54は、tstに対応する段階制御モードの識別子の段階制御モードを、第二段階制御モードとして選択し、ステップS813において、決定した供給電力値の供給電力を、選択した第二段階制御モードで供給するように、電磁誘導加熱制御部560に指示することとしてもよい。
【0071】
これにより、スイッチング素子540の温度上昇の程度に応じて第二段階制御モードを選択することができるので、当該温度上昇の程度に応じて第二段階制御モードにおける、耳障り音の発生の抑制と、スイッチング素子の温度上昇の抑制という互いにトレードオフの関係にある両者の重み付けを、きめ細やかに調整することができる。
例えば、上記の例では、tstが80℃以上で、当該温度上昇の程度が非常に大きい場合には、
図6の実験結果において最も当該温度上昇の抑制効果が大きい符号4の段階制御モードが第二段階制御モードとして選択される。又、tstが、80℃より低く、上記の場合に比べ当該温度上昇の程度が低い場合には、符号4の場合よりは当該温度上昇の抑制効果は、小さいが、耳障り音の発生の抑制効果が、符号4の場合よりも大きい
図6の符号3の段階制御モードが第二段階制御モードとして選択される。
【0072】
このように、当該温度上昇の程度に応じて、互いにトレードオフの関係にある両者の重み付けを微調整することにより、段階制御期間中における耳障り音の発生と、スイッチング素子の温度上昇とをよりバランスよく抑制することができる。
(4)本実施の形態では、励磁コイル531と磁気結合される被加熱体として定着ローラー51を用いたが、被加熱体は、定着ローラー51に限定されない。例えば、被加熱体として、本実施の形態の電磁誘導発熱体層514、弾性体層515、離型層516とから構成され、周回走行する無端状の加熱ベルトを用いることとしてもよい。(1)、(2)(3)の変形例についても同様である。
【0073】
(5)本実施の形態では、スイッチング素子のデューティー比を変化させることにより、励磁コイル531への供給電力を変化させて段階制御を行うこととしたが、デューティー比を変化させる代わりに、PWM信号の周波数を変化させることにより、励磁コイル531への供給電力を変化させて段階制御を行うこととしてもよい。(1)〜(4)の変形例についても同様である。