(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電極をプレスする工程では、前記電極を巻き取る工程における前記電極の巻き取り径が増大するに従って、前記第1ロールのプレス面と前記第2ロールのプレス面との温度差を減少させる、請求項1または2記載の電極の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属箔上に活物質層が形成されてなる蓄電装置用電極の製造においては、活物質層が形成された電極をいったん巻取ロールに巻き取る。電極を巻取ロールに巻き取ると、コアの曲率に沿ってカールが発生する。電極にカールが発生すると、たとえば、電極を打ち抜く際、精度良く電極を打ち抜くことが難しいという問題がある。また、たとえば電極を積層したり捲回したりする際、EPC(Edge Position Control)による電極エッジの読み取り精度が低下するという問題がある。しかしながら、上述した従来の方法では、電極のカールを抑制することは難しかった。
【0006】
本発明は、電極のカールを抑制することができる電極の製造方法および電極の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電極の製造方法は、活物質とバインダ樹脂とを含む活物質層が金属箔の少なくとも一方の面に形成されてなる電極の製造方法であって、金属箔の一方の面側に配置された第1ロールと金属箔の他方の面側に配置された第2ロールとによって、金属箔の少なくとも一方の面に電極材が塗布された電極をプレスする工程と、金属箔の他方の面が外周側に配置されるよう、プレスされた電極を巻き取る工程と、を含み、電極をプレスする工程では、第1ロールのプレス面の温度を第2ロールのプレス面の温度よりも高くする。
【0008】
この電極の製造方法によれば、電極をプレスする工程では、第1ロールと第2ロールとによって、電極がプレスされる。この際、金属箔の一方の面側に配置された第1ロールのプレス面の温度は、金属箔の他方の面側に配置された第2ロールのプレス面の温度よりも高くされる。よって、金属箔の少なくとも一方の面に塗布された電極材は、圧縮されながら熱膨張する。これにより、プレス後の電極は、金属箔の他方の面が凹状となるようにカールする。その後、電極を巻き取る工程では、金属箔の他方の面が外周側に配置されるよう、電極が巻き取られる。このように、電極をプレスする工程において、電極が巻き取られる方向とは逆方向に電極をカールさせることで、結果として電極のカールを抑制することができる。
【0009】
また、電極をプレスする工程では、第1ロールのプレス面の温度をバインダ樹脂の熱分解温度以下としてもよい。この場合、バインダ樹脂の熱分解が防止されて、塗膜すなわち活物質層の剥離を防止することができる。バインダ樹脂の結着材としての機能を十分に発揮させることができる。
【0010】
また、電極をプレスする工程では、電極を巻き取る工程における電極の巻き取り径が増大するに従って、第1ロールのプレス面と第2ロールのプレス面との温度差を減少させてもよい。電極を巻き取る工程において、巻き取り始めの曲率半径は小さく(すなわち曲率は大きく)、巻き取り径が増大するに従って、曲率半径は大きく(すなわち曲率は小さく)なる。上記方法によれば、電極の巻き取り径が増大するに従って、第1ロールのプレス面と第2ロールのプレス面との温度差が減少するため、他方の面が凹状となるカールにおける曲率は小さくなる。したがって、巻き取られた電極のカールの度合いに応じて、逆方向のカールの度合いを変更することができ、結果として電極を一層平坦にできる。
【0011】
また、電極材のバインダ樹脂は、第1樹脂と、第1樹脂よりも熱膨張係数の高い第2樹脂とを有してもよい。この場合、第2樹脂の熱膨張によって、金属箔の他方の面が凹状となるように、金属箔を確実にカールさせることができる。
【0012】
また、第2樹脂はポリウレタン樹脂であってもよい。ポリウレタン樹脂は熱膨張係数が大きいので、ポリウレタン樹脂の熱膨張によって、金属箔の他方の面が凹状となるように、金属箔を確実にカールさせることができる。
【0013】
また、電極をプレスする工程は、第1ロールと第2ロールとによって、金属箔の両面に電極材が塗布された電極をプレスする工程であり、金属箔の一方の面に塗布された電極材のバインダ樹脂の熱膨張係数は、金属箔の他方の面に塗布された電極材のバインダ樹脂の熱膨張係数より大きくてもよい。この場合、電極をプレスする工程では、金属箔の一方の面に塗布された電極材は、金属箔の他方の面に塗布された電極材よりも大きく熱膨張する。これにより、プレス後の電極は、金属箔の他方の面が凹状となるようにカールする。よって、上記したように、結果として電極のカールを抑制することができる。
【0014】
また、本発明の電極の製造装置は、活物質とバインダ樹脂とを含む活物質層が金属箔の少なくとも一方の面に形成されてなる電極の製造装置であって、金属箔の一方の面側に配置された第1ロールと金属箔の他方の面側に配置された第2ロールとを有し、金属箔の少なくとも一方の面に電極材が塗布された電極をプレスするロールプレス機と、金属箔の他方の面が外周側に配置されるよう、プレスされた電極を巻き取る巻取ロールと、第1ロールのプレス面の温度を制御する制御部と、を備え
、制御部は、第1ロールのプレス面の温度が第2ロールのプレス面の温度よりも高くなるように、第1ロールのプレス面の温度を制御する。
また、電極の製造装置は、第1ロールのプレス面の温度を検出する第1温度検出器と、第2ロールのプレス面の温度を検出する第2温度検出器と、を備え、制御部は、第1温度検出器および第2温度検出器のそれぞれで検出された温度に基づいて、第1ロールのプレス面の温度が第2ロールのプレス面の温度よりも高くなるように、第1ロールのプレス面の温度を制御してもよい。
【0015】
この電極の製造装置によれば、第1ロールと第2ロールとによって、電極がプレスされる。この際、制御部によって、金属箔の一方の面側に配置された第1ロールのプレス面の温度を、金属箔の他方の面側に配置された第2ロールのプレス面の温度よりも高くすることができる。その場合、金属箔の少なくとも一方の面に塗布された電極材は、圧縮されながら熱膨張する。これにより、プレス後の電極は、金属箔の他方の面が凹状となるようにカールする。その後、電極を巻き取る工程では、金属箔の他方の面が外周側に配置されるよう、巻取ロールに電極が巻き取られる。このように、ロールプレス機のロールの温度を制御部によって制御することにより、電極が巻き取られる方向とは逆方向に電極をカールさせることができる。その結果として、電極のカールを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電極のカールを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
以下の説明では、本発明の一実施形態に係る製造方法および製造装置によって製造される電極が、リチウムイオン二次電池に適用される例について説明する。本発明の一実施形態に係る製造方法および製造装置によって製造される電極は、リチウムイオン二次電池以外の蓄電装置に適用されてもよい。たとえば、電極は、電気二重層キャパシタ等に適用されてもよい。
【0020】
図1および
図2を参照して、リチウムイオン二次電池(以下、二次電池という)100の構成について説明する。
図1および
図2に示されるように、二次電池100は、ケース10と、ケース10内に収容された電極組立体20とを備える。電極組立体20は、正極(電極)30と、負極(電極)40と、正極30と負極40との間に配置されたセパレータ50とを備える。正極30、負極40およびセパレータ50は、たとえばシート状である。複数の正極30および複数の負極40は、セパレータ50を介して交互に積層されている。ケース10内には、電解液60が充填されている。
【0021】
正極30は、縁に形成されたタブ30aを有する。タブ30aには、正極活物質が担持されていない。正極30は、タブ30aを介して導電部材32に接続されている。導電部材32は、正極端子34に接続されている。正極端子34は、絶縁リング36を介してケース10に取り付けられている。
【0022】
負極40は、縁に形成されたタブ40aを有する。タブ40aには、負極活物質が担持されていない。負極40は、タブ40aを介して導電部材42に接続されている。導電部材42は、負極端子44に接続されている。負極端子44は、絶縁リング46を介してケース10に取り付けられている。
【0023】
正極30および負極40のそれぞれは、金属箔8の両面に形成された活物質層19a,19bを有する(
図4参照)。活物質層19a,19bは、活物質とバインダ樹脂とを含む電極材9a,9bが金属箔8の両面に塗布され、ロール6a,6bによってプレスされることにより形成される。
【0024】
セパレータ50としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布または不織布等が例示される。
【0025】
電解液60としては、たとえば有機溶媒系または非水系の電解液等が挙げられる。
【0026】
図3および
図4を参照して、電極(すなわち正極30または負極40)の製造装置1について説明する。以下の説明では、活物質とバインダ樹脂とを含む電極材9a,9bが金属箔8に塗布された、プレスされる前の電極Aを電極A1と称し、プレス後の電極Aを電極A2と称する。
【0027】
製造装置1は、電極A1を巻き出す巻出機2と、電極A1をプレスするためのロールプレス機3と、プレス後の電極A2を巻き取る巻取機4とを備える。また、製造装置1は、ロールプレス機3におけるロールのプレス面の温度を制御する制御部70を備える。
【0028】
巻出機2は、コア2bに電極A1が巻かれてなる巻出ロール2aを備える。巻出ロール2aにおいては、電極A1の一方の面(図示下側の面)A1bが内側に配置されるよう、電極A1が巻かれている。言い換えれば、電極A1の他方の面A1a(図示上側の面)が外周側に配置されるよう、電極A1が巻かれている。金属箔8を基準として、金属箔8の一方の面8bに塗布された電極材9bはコア2b側に配置され、金属箔8の他方の面8aに塗布された電極材9aはコア2bの反対側に配置される。
【0029】
次に、電極材9a,9bについて説明する。金属箔8は、たとえば銅箔またはアルミニウム箔である。電極材9a,9bは、巻出機2の前段に配置された塗布部(図示せず)において金属箔8の両面に塗布される。
【0030】
一方の面8bに塗布される電極材9bと、他方の面8aに塗布される電極材9aとは、中性またはアルカリ性である。電極材9a,9bのpHは、たとえば7以上12以下である。電極材9a,9bは、活物質とバインダ樹脂と溶剤とを含む。電極材9a,9bは、たとえばアセチレンブラック等の導電助剤を更に含んでもよい。
【0031】
電極材9a,9bに含まれる活物質は、正極活物質または負極活物質である。正極活物質としては、たとえば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等が挙げられる。複合酸化物は、マンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つとリチウムとを含む。負極活物質としては、たとえば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。バインダは、例えばポリアミドイミド、ポリイミド等の熱可塑性樹脂であってもよく、主鎖にイミド結合を有するポリマー樹脂であってもよい。溶剤は、例えばNMP(N−メチルピロリドン)、メタノール、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤であってもよく、水であってもよい。
【0032】
ここで、一方の面8bに塗布される電極材9bのバインダ樹脂は、他方の面8aに塗布される電極材9aのバインダ樹脂とは異なっている。
【0033】
電極材9aのバインダ樹脂は、たとえばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)樹脂である。PVDFは、溶剤が有機系の溶剤である場合に用いられる。一方、電極材9bのバインダ樹脂は、少なくとも2種類の樹脂を含んでいる。電極材9bのバインダ樹脂は、熱膨張係数の異なる複数種類の樹脂を含んでいる。より詳細には、電極材9bのバインダ樹脂は、第1樹脂と、第1樹脂よりも熱膨張係数(言い換えれば、熱膨張率)の高い第2樹脂とを有する。第1樹脂としては、たとえばPVDF樹脂が挙げられる。第2樹脂は、第1樹脂中に混合される。第2樹脂は、熱硬化性樹脂である。「熱膨張係数」は、線熱膨張係数(線熱膨張率)であってもよい。第2樹脂の線膨張係数は、たとえば100(10
−6/℃)以上である。第2樹脂としては、たとえばポリウレタン樹脂が挙げられる。第2樹脂は、フェノール樹脂であってもよい。なお、第2樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよい。
【0034】
溶剤が水系の溶剤である場合には、電極材9aのバインダ樹脂として、たとえばSBR(スチレン・ブタジエンゴム)を用いてもよい。溶剤が水系の溶剤である場合には、電極材9bのバインダ樹脂の第1樹脂として、たとえばSBRを用いてもよい。
【0035】
以上のように構成された電極材9a,9bにおいて、金属箔8の一方の面8bに塗布される電極材9bのバインダ樹脂の熱膨張係数は、金属箔8の他方の面8aに塗布される電極材9aのバインダ樹脂の熱膨張係数より大きい。
【0036】
図3に示されるように、ロールプレス機3は、筐体3aと、搬送されるシート状の電極Aを支持する複数のローラ3bと、筐体3aに収容されて、電極A1をプレスするロールプレス部6とを備える。
【0037】
ロールプレス部6は、金属箔8の一方の面8b側(たとえば下側または裏面側)に配置されたロール(第1ロール)6bと、金属箔8の他方の面8a側(たとえば上側または表面側)に配置されたロール(第2ロール)6aとを有する。ロール6a,6bのそれぞれは、円柱形状をなしており、たとえばSUSなどの鋼からなる。ロール6aの直径と、ロール6bの直径とは略等しい。ロール6aとロール6bとは、互いに対向している。
【0038】
ロール6aおよびロール6bは、所定の位置に配置されてプレス面6c,6d間に電極Aを挟み込み、電極Aをプレスする。ロール6aは、回転軸線Laを中心に回転自在である。ロール6bは、回転軸線Lbを中心に回転自在である。電極Aがプレスされる際、ロール6aは回転方向Baに回転し、ロール6bが回転方向Baとは反対向きの回転方向Bbに回転する。たとえば、ロール6aは、電極Aの搬送方向Cに交差する方向(たとえば鉛直方向)に可動であり、ロール6bは、固定されている。
【0039】
ロール6a内には、プレス面6cを加熱するための加熱部16aが設けられている。ロール6b内には、ロール6bを加熱するための加熱部16bが設けられている。加熱部16aおよび加熱部16bのそれぞれは、制御部70によって制御されて、ロール6a,6bを加熱することによりプレス面6c,6dを加熱する。プレス面6c,6dは、電極A1に圧接されるロール6a,6bの周面である。なお、ロール6aの加熱部16aを省略してもよい。この場合、ロール6aのプレス面6cの温度は周囲の温度(室温)と略同等である。ロール6aには、加熱部16aに代えて、冷却部を設けてもよい。
【0040】
ロール6aのプレス面6cの近傍には、プレス面6cの温度を検出する温度検出器17aが配置されている。ロール6bのプレス面6dの近傍には、プレス面6dの温度を検出する温度検出器17bが配置されている。温度検出器17aおよび温度検出器17bのそれぞれは、プレス面6c,6dの温度を検出し、検出した温度を制御部70に出力する。なお、プレス面6c,6dの温度検出器は、ロール6a,6b内にそれぞれ内蔵されてもよい。プレス面6cの温度検出器17aを省略してもよい。
【0041】
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイス等を有するコンピュータから構成される。制御部70は、温度検出器17aおよび温度検出器17bのそれぞれから出力されるプレス面6c,6dの温度を入力する。制御部70は、入力したプレス面6c,6dの温度に基づいて、加熱部16aおよび加熱部16bのそれぞれを制御し、ロール6a,6bを加熱することによりプレス面6c,6dを加熱する。なお、ロール6aに冷却部が設けられる場合には、制御部70は、プレス面6cを冷却制御してもよい。さらに、制御部70は、制御部70は、巻取ロール4aにおける電極A2の巻き取り径を検出可能である。
【0042】
巻取機4は、コア4bに電極A2が巻き取られてなる巻取ロール4aを備える。巻取ロール4aにおいては、電極A2の一方の面(図示下側の面)A2b、すなわち金属箔8の一方の面8bが内側に配置されるよう、電極A2が巻き取られる。言い換えれば、電極A2の他方の面A2a(図示上側の面)が外周側に配置されるよう、電極A2が巻き取られる。金属箔8を基準として、金属箔8の一方の面8bに形成された活物質層19bはコア4b側に配置され、金属箔8の他方の面8aに形成された活物質層19aはコア4bの反対側に配置される。
【0043】
次に、電極(すなわち正極30または負極40)の製造方法について説明する。まず、図示しない塗布部において、金属箔8の両面8a,8bに、電極材9a,9bを塗布する。上述したように、ここで塗布される電極材9bのバインダ樹脂の熱膨張係数は、電極材9aのバインダ樹脂の熱膨張係数より大きい。その後、図示しない乾燥部において、電極材9a,9bを乾燥させてもよい。金属箔8に電極材9a,9bを塗布することにより、または、電極材9a,9bを乾燥させることにより、電極A1を得る。電極A1は、間欠塗工電極としてもよい。
【0044】
次に、巻出機2によって、巻出ロール2aに巻かれた電極A1をロールプレス機3のロールプレス部6に供給する。ロール6aおよびロール6bによって、ロールプレス部6に供給された電極A1を挟み込み、プレスする。このプレス工程により、電極材9a,9bを圧縮して活物質層19a,19bを形成し、電極A2を得る。
【0045】
このプレス工程では、制御部70によって加熱部16aおよび加熱部16bのそれぞれを制御し、ロール6bのプレス面6dの温度をロール6aのプレス面6cの温度よりも高くする。より詳細には、制御部70は、ロール6bのプレス面6dの温度を電極材9bのバインダ樹脂の熱分解温度以下とする。ロール6bのプレス面6dの温度をどの程度高めるかは、バインダ樹脂の種類(バインダ樹脂に配合される第1樹脂および第2樹脂の種類)によって決められる。
【0046】
低温側のロール6aのプレス面6cの温度は、たとえば20〜120℃である。ロール6aのプレス面6cの温度は、30〜100℃であってもよい。高温側のロール6bのプレス面6dの温度は、たとえば60〜150℃である。ロール6bのプレス面6dの温度は、70〜130℃であってもよい。ロール6aのプレス面6cの温度と、ロール6bのプレス面6dの温度との差は、たとえば10〜100℃である。ロール6aのプレス面6cと、ロール6bのプレス面6dとの温度差は、20〜60℃であってもよい。ロール6aのプレス面6cと、ロール6bのプレス面6dとの温度差を適宜可変とすることもできる。
【0047】
このプレス工程では、電極材9aにおける空隙が減少することにより、電極材9aが高密度化され、活物質層19aが形成される。電極材9bにおける空隙が減少することにより、電極材9bが高密度化され、活物質層19bが形成される。特に、ロール6bのプレス面6dの温度が高められているため、電極材9bは熱膨張する。言い換えれば、電極材9aの膨張率よりも電極材9bの膨張率の方が高くなる。また、ロール6bのプレス面6dの温度が高められているため、電極材9bが柔らかくなるという効果も奏される。
【0048】
さらに、このプレス工程では、制御部70は、電極A2を巻き取る工程における電極A2の巻き取り径が増大するに従って、ロール6bのプレス面6dとロール6aのプレス面6cとの温度差を減少させる。より詳細には、制御部70は、巻取ロール4aにおける電極A2の巻き取り径が増大するに従って、ロール6aのプレス面6cを加熱することにより、ロール6aのプレス面6cの温度をロール6bのプレス面6dの温度に近づける。
【0049】
そして、電極A2の他方の面A2a(すなわち金属箔8の他方の面8a)が外周側に配置されるよう、巻取ロール4aに電極A2を巻き取る。そして、巻き取られた電極A2を再度巻き出し、適宜カットすることにより、正極30または負極40を得る。
【0050】
以上説明した電極30,40の製造方法および製造装置1によれば、電極A1をプレスする工程では、ロール6bとロール6aとによって、電極A1がプレスされる。この際、制御部70によって、金属箔8の一方の面8b側に配置されたロール6bのプレス面6dの温度は、金属箔8の他方の面8a側に配置されたロール6aのプレス面6cの温度よりも高くされる。よって、金属箔8の一方の面8bに塗布された電極材9bは、圧縮されながら熱膨張する。これにより、プレス後の電極A2は、金属箔8の他方の面8aが凹状となるようにカールする(
図4参照)。その後、電極A2を巻き取る工程では、金属箔8の他方の面8aが外周側に配置されるよう、電極A2が巻き取られる。このように、電極A1をプレスする工程において、電極A2が巻き取られる方向とは逆方向に電極Aをカールさせることで、結果として電極30,40のカールを抑制し、平坦な電極30,40を作製することができる。
【0051】
通常、電極材9a,9bが塗布された塗工部は、プレスされた後、剛直になる。そのため、巻取ロール4aに巻かれることにより発生するカールは、巻取ロール4aから電極A2を巻き出した後も維持される。このようなカールの矯正は困難である。しかしながら、上記製造方法および製造装置1によれば、ロールプレスに用いられる2つのロールの温度を異ならせることで、高温ロール側の電極材9bを膨張させ、延伸させることができる。電極材9bの膨張・延伸によって、電極A2を逆カールさせる(すなわち巻取ロール4aに巻かれる方向とは逆方向にカールさせる)応力が生じる。この応力は、電極Aが巻取ロール4aに巻き取られた後も残留応力として残存する。よって、巻取ロール4aから巻き出されたときに、電極A2は、より平坦な状態を保つ。したがって、電極Aを容易かつ高精度に打ち抜くことができる。また、電極Aを積層したり捲回したりする際、EPCによる電極エッジの読み取り精度が高められる。
【0052】
また、電極A1をプレスする工程では、ロール6bのプレス面6dの温度がバインダ樹脂の熱分解温度以下とされるため、バインダ樹脂の熱分解が防止されて、塗膜すなわち活物質層19bの剥離を防止することができる。バインダ樹脂の結着材としての機能を十分に発揮させることができる。
【0053】
電極A2を巻き取る工程において、巻き取り始めの曲率半径は小さく(すなわち曲率は大きく)、巻き取り径が増大するに従って、曲率半径は大きく(すなわち曲率は小さく)なる。上記方法によれば、電極A2の巻き取り径が増大するに従って、ロール6bのプレス面6dとロール6aのプレス面6cとの温度差が減少するため、他方の面8aが凹状となるカールにおける曲率は小さくなる。したがって、巻取ロール4aに巻き取られた電極A2のカールの度合いに応じて、前段における逆方向のカールの度合いを変更することができ、結果として電極Aを一層平坦にできる。
【0054】
また、電極材9bのバインダ樹脂は、第1樹脂と、第1樹脂よりも熱膨張係数の高い第2樹脂とを有するため、第2樹脂の熱膨張によって、金属箔8の他方の面8aが凹状となるように、金属箔8を確実にカールさせることができる。
【0055】
ここで、第2樹脂として用いられるポリウレタン樹脂は熱膨張係数が大きいので、ポリウレタン樹脂の熱膨張によって、金属箔8の他方の面8aが凹状となるように、金属箔8を確実にカールさせることができる。
【0056】
電極をプレスする工程では、金属箔8の一方の面8bに塗布された電極材9bは、金属箔8の他方の面8aに塗布された電極材9aよりも大きく熱膨張する。これにより、プレス後の電極A2は、金属箔8の他方の面8aが凹状となるようにカールする。よって、上記したように、結果として電極30,40のカールを抑制することができる。
【0057】
次に、
図5を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。
図5は、他の実施形態に係る電極の製造方法において、電極A1がプレスされる状態を示す図である。
図5に示される電極の製造方法では、電極A1において、金属箔8の一方の面8bにのみ電極材9bが塗布されており、金属箔8の他方の面8aには電極材が塗布されていない。よって、電極A2において、金属箔8の一方の面8bにのみ活物質層19bが形成されており、金属箔8の他方の面8aには活物質層が塗布されていない。その他の点は、先の実施形態と同様である。
【0058】
このような電極の製造方法によっても、先の実施形態と同様、金属箔8の一方の面8b側に配置されたロール6bのプレス面6dの温度は、金属箔8の他方の面8a側に配置されたロール6aのプレス面6cの温度よりも高くされる。よって、金属箔8の一方の面8bに塗布された電極材9bは、圧縮されながら熱膨張する。これにより、プレス後の電極A2は、金属箔8の他方の面8aが凹状となるようにカールする(
図5参照)。その後、電極A2を巻き取る工程では、金属箔8の他方の面8aが外周側に配置されるよう、電極A2が巻き取られる。このように、電極A1をプレスする工程において、電極A2が巻き取られる方向とは逆方向に電極Aをカールさせることで、結果として電極30,40のカールを抑制し、平坦な電極30,40を作製することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。たとえば、一方の面8bに塗布される電極材9bのバインダ樹脂と、他方の面8aに塗布される電極材9aのバインダ樹脂とを同一にしてもよい。電極材9bのバインダ樹脂の熱膨張係数と、電極材9aのバインダ樹脂の熱膨張係数とを同一にしてもよい。巻取ロール4aにおける電極A2の巻き取り径に関わらず、ロール6bのプレス面6dとロール6aのプレス面6cとの温度差を一定としてもよい。電極Aは、間欠塗工電極である場合に限られない。