特許第5958311号(P5958311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5958311連続鋳造機の湯面レベル制御装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958311
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】連続鋳造機の湯面レベル制御装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/18 20060101AFI20160714BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20160714BHJP
   G05D 9/12 20060101ALI20160714BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20160714BHJP
   G05B 13/02 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   B22D11/18 B
   B22D11/16 104F
   G05D9/12 D
   G05B11/36 N
   G05B13/02 C
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-266278(P2012-266278)
(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公開番号】特開2014-111267(P2014-111267A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】仲 篤起
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−114660(JP,A)
【文献】 特開2008−290082(JP,A)
【文献】 特開平10−314911(JP,A)
【文献】 特開平07−310780(JP,A)
【文献】 特許第3591422(JP,B2)
【文献】 特開2002−248555(JP,A)
【文献】 特開2012−170984(JP,A)
【文献】 特開2000−312957(JP,A)
【文献】 特開平07−266016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00−11/22
G05B 11/00−13/04
G05D 9/00− 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造機の操業中に鋳型の内部の湯面レベルを検出し、この検出レベルと予め定めた目標レベルとの偏差を用いて求めた開度指令に従って前記鋳型への注湯手段の開度を変更して、前記湯面レベルを前記目標レベルに維持するように制御する連続鋳造機の湯面レベル制御装置であって、
前記開度指令を入力とし、前記検出レベルを出力とする湯面レベル変動プロセスモデルの伝達関数を、前記鋳型への湯落ちに要するむだ時間要素を含むように想定し、
前記偏差を入力とし、前記注湯手段の開度変更量を演算して出力する開度演算手段と、
前記開度演算手段から出力される前記開度変更量と、補正量演算手段から出力される開度補正量とを加え合わせて前記開度指令として出力する第1の加え合わせ手段と、
前記第1の加え合わせ手段から出力される前記開度指令と、前記検出レベルとを入力とし、前記開度補正量を演算して出力する前記補正量演算手段とを備え、
前記補正量演算手段は、
前記第1の加え合わせ手段から出力される前記開度指令を遅延させる遅延手段と、
前記検出レベルを入力とし、前記湯面レベル変動プロセスモデルのノミナルモデルの離散化した逆伝達関数モデルで演算した結果を出力する演算手段と、
前記演算手段の出力と前記遅延手段の出力との差である外乱推定値を出力する第2の加え合わせ手段と、
前記第2の加え合わせ点から出力される前記外乱推定値を入力とし、前記開度補正量を出力する処理手段とを備えたことを特徴とする連続鋳造機の湯面レベル制御装置。
【請求項2】
前記補正量演算手段の伝達関数が離散時間系で記述されることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造機の湯面レベル制御装置。
【請求項3】
前記処理手段が、特定の周波数域を通過させるバンドパスフィルタと、前記むだ時間に対応するステップ先の予測器としての機能を有することを特徴とする請求項2に記載の連続鋳造機の湯面レベル制御装置。
【請求項4】
前記予測器として、正弦波の位相を前記むだ時間に対応するステップ分進める位相進み器を用いることを特徴とする請求項3に記載の連続鋳造機の湯面レベル制御装置。
【請求項5】
湯面レベルの変動を引き起こす周期的な外乱の周波数成分を推定する周波数推定手段を備え、
前記周波数推定手段により推定した周波数成分に応じて前記バンドパスフィルタを通過させる周波数域を変更することを特徴とする請求項3又は4に記載の連続鋳造機の湯面レベル制御装置。
【請求項6】
連続鋳造機の操業中に鋳型の内部の湯面レベルを検出し、この検出レベルと予め定めた目標レベルとの偏差を用いて求めた開度指令に従って前記鋳型への注湯手段の開度を変更して、前記湯面レベルを前記目標レベルに維持するように制御する連続鋳造機の湯面レベル制御方法であって、
前記開度指令を入力とし、前記検出レベルを出力とする湯面レベル変動プロセスモデルの伝達関数を、前記鋳型への湯落ちに要するむだ時間要素を含むように想定し、
前記偏差を入力とし、前記注湯手段の開度変更量を演算して出力する開度演算手段と、
前記開度演算手段から出力される前記開度変更量と、補正量演算手段から出力される開度補正量とを加え合わせて前記開度指令として出力する第1の加え合わせ手段と、
前記第1の加え合わせ手段から出力される前記開度指令と、前記検出レベルとを入力とし、前記開度補正量を演算して出力する前記補正量演算手段とを備え、
前記補正量演算手段は、
前記第1の加え合わせ手段から出力される前記開度指令を遅延させる遅延ステップと、
前記検出レベルを入力とし、前記湯面レベル変動プロセスモデルのノミナルモデルの離散化した逆伝達関数モデルで演算した結果を出力する演算ステップと、
前記演算ステップでの出力と前記遅延ステップでの出力との差である外乱推定値を出力する加え合わせステップと、
前記加え合わせステップで出力される前記外乱推定値を入力とし、前記開度補正量を出力する処理ステップとを実行することを特徴とする連続鋳造機の湯面レベル制御方法。
【請求項7】
連続鋳造機の操業中に鋳型の内部の湯面レベルを検出し、この検出レベルと予め定めた目標レベルとの偏差を用いて求めた開度指令に従って前記鋳型への注湯手段の開度を変更して、前記湯面レベルを前記目標レベルに維持するように制御する連続鋳造機の湯面レベルを制御するためのプログラムであって、
前記開度指令を入力とし、前記検出レベルを出力とする湯面レベル変動プロセスモデルの伝達関数を、前記鋳型への湯落ちに要するむだ時間要素を含むように想定し、
前記偏差を入力とし、前記注湯手段の開度変更量を演算して出力する開度演算手段と、
前記開度演算手段から出力される前記開度変更量と、補正量演算手段から出力される開度補正量とを加え合わせて前記開度指令として出力する第1の加え合わせ手段と、
前記第1の加え合わせ手段から出力される前記開度指令と、前記検出レベルとを入力とし、前記開度補正量を演算して出力する前記補正量演算手段としてコンピュータを機能させ、
前記補正量演算手段は、
前記第1の加え合わせ手段から出力される前記開度指令を遅延させる遅延手段と、
前記検出レベルを入力とし、前記湯面レベル変動プロセスモデルのノミナルモデルの離散化した逆伝達関数モデルで演算した結果を出力する演算手段と、
前記演算手段の出力と前記遅延手段の出力との差である外乱推定値を出力する第2の加え合わせ手段と、
前記第2の加え合わせ点から出力される前記外乱推定値を入力とし、前記開度補正量を出力する処理手段として機能することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造機において鋳型の内部の湯面レベルを周期的な変動がなく、かつ目標レベルに維持するように制御する連続鋳造機の湯面レベル制御装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
図7に、連続鋳造機の概要を示す。上下に開口を有する鋳型1の上方には、溶湯(溶融金属)2を貯留するタンディッシュ20が配されている。タンディッシュ20の底面には注湯ノズル3が連設され、鋳型1の内部にまで延長されており、タンディッシュ20内の溶湯2は、注湯ノズル3のスライディングゲート30を経て鋳型1内に注湯される。鋳型1内に注湯された溶湯2は、鋳型1の水冷された内壁との接触により冷却されて外側から凝固し、凝固シェルにより外側を被覆された鋳片4となって鋳型1の下方に連続的に引き抜かれる。鋳片4の引き抜きは、鋳型1の下方に所定の間隔毎に並設された複数対のガイドロール5により案内されながら、予め定めた鋳込み速度を保って行われる。この引き抜きの間に、鋳片4は、図示しないスプレ帯から噴射される冷却水により冷却され、最内部にまで凝固が進行した段階にて所定の寸法に切断され、圧延等の後工程において用いられる製品鋳片となる。
【0003】
このような連続鋳造機においては、鋳型1の上部からの溶湯2の溢出、ブレークアウトの発生等、安定操業を阻害する各種の不都合を未然に防止して生産能率の向上を図るとともに、鋳型1の内部での冷却、凝固状態を安定化させ、製品鋳片の品質向上を図るため、鋳型1の内部に滞留する溶湯2の表面レベル(湯面レベル)を周期的な変動がなく、かつ適正レベルに維持することが重要である。
【0004】
連続鋳造機の操業中、鋳型1の内部の湯面レベルは、該溶湯2の表面に臨ませたレベル計6により検出され、この検出レベルyが湯面レベル制御装置Cに与えられる。また、湯面レベル制御装置Cには、目標レベル設定器7に設定された鋳型1の内部にて維持すべき湯面レベルの目標値(目標レベルr)が与えられる。湯面レベル制御装置Cは、レベル計6による検出レベルyと目標レベル設定器7に設定された目標レベルrとの偏差を求め、この偏差を解消するためのスライディングゲート30の開度変更量を求める。そして、求めた開度変更量を得るべく、スライディングゲート30の開閉用アクチュエータ(油圧シリンダ)31に開閉指令uを発し、この開閉指令uに応じたアクチュエータ31の動作によりスライディングゲート30の開度を変更し、鋳型1への注湯量を調節する。
【0005】
一般的に、開度変更量は、定常レベルを一定に保つため、低周波ゲインを高くする必要があり、前記偏差を入力とするPI演算又はPID演算により求められ、制御対象を含めた制御系の安定化を図るようにしている。
【0006】
ところが、連続鋳造機の操業においては、鋳型1から引き抜かれる鋳片4のバルジング等、湯面レベルの変動を引き起こす周期的な外乱が存在する。バルジングとは、図8に示すように、鋳型1の下方に引き抜かれる鋳片4の外側の凝固シェルが、引き抜き経路に沿って並設された多数のガイドロール5による挾持部間において外側に膨らむように変形する現象である。このとき、鋳型1の内部の湯面レベルの変動は、凝固シェルの内側の溶湯が、バルジングに伴う変形により鋳型1に対して出入りすることにより発生し、バルジング量の時間的な変化が周期性レベル変動を引き起こすとされている。特に、ガイドロール5が同一ピッチで並設されている場合、各ガイドロール5でのバルジング量が同一位相にて変化するため、大きな変動幅を有する周期的なレベル変動が発生する。
このような外乱に起因して鋳型1の内部に発生する周期的なレベル変動は、上述した一般的な湯面レベル制御では抑制することが難しい。
このような事情により従来から、周期的なレベル変動の抑制を図った湯面レベル制御方法が種々提案されている(例えば特許文献1を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3591422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、鋳型の内部の湯面レベルの周期的なレベル変動を効果的に抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の連続鋳造機の湯面レベル制御装置は、連続鋳造機の操業中に鋳型の内部の湯面レベルを検出し、この検出レベルと予め定めた目標レベルとの偏差を用いて求めた開度指令に従って前記鋳型への注湯手段の開度を変更して、前記湯面レベルを前記目標レベルに維持するように制御する連続鋳造機の湯面レベル制御装置であって、前記開度指令を入力とし、前記検出レベルを出力とする湯面レベル変動プロセスモデルの伝達関数を、前記鋳型への湯落ちに要するむだ時間要素を含むように想定し、前記偏差を入力とし、前記注湯手段の開度変更量を演算して出力する開度演算手段と、前記開度演算手段から出力される前記開度変更量と、補正量演算手段から出力される開度補正量とを加え合わせて前記開度指令として出力する第1の加え合わせ手段と、前記第1の加え合わせ手段から出力される前記開度指令と、前記検出レベルとを入力とし、前記開度補正量を演算して出力する前記補正量演算手段とを備え、前記補正量演算手段は、前記第1の加え合わせ手段から出力される前記開度指令を遅延させる遅延手段と、前記検出レベルを入力とし、前記湯面レベル変動プロセスモデルのノミナルモデルの離散化した逆伝達関数モデルで演算した結果を出力する演算手段と、前記演算手段の出力と前記遅延手段の出力との差である外乱推定値を出力する第2の加え合わせ手段と、前記第2の加え合わせ点から出力される前記外乱推定値を入力とし、前記開度補正量を出力する処理手段とを備えたことを特徴とする。
また、本発明の連続鋳造機の湯面レベル制御装置の他の特徴とするところは、前記補正量演算手段の伝達関数が離散時間系で記述される点にある。
また、本発明の連続鋳造機の湯面レベル制御装置の他の特徴とするところは、前記処理手段が、特定の周波数域を通過させるバンドパスフィルタと、前記むだ時間に対応するステップ先の予測器としての機能を有する点にある。この場合に、前記予測器として、正弦波の位相を前記むだ時間に対応するステップ分進める位相進み器を用いるようにしてもよい。また、湯面レベルの変動を引き起こす周期的な外乱の周波数成分を推定する周波数推定手段を備え、前記周波数推定手段により推定した周波数成分に応じて前記バンドパスフィルタを通過させる周波数域を変更するようにしてもよい。
本発明の連続鋳造機の湯面レベル制御方法は、連続鋳造機の操業中に鋳型の内部の湯面レベルを検出し、この検出レベルと予め定めた目標レベルとの偏差を用いて求めた開度指令に従って前記鋳型への注湯手段の開度を変更して、前記湯面レベルを前記目標レベルに維持するように制御する連続鋳造機の湯面レベル制御方法であって、前記開度指令を入力とし、前記検出レベルを出力とする湯面レベル変動プロセスモデルの伝達関数を、前記鋳型への湯落ちに要するむだ時間要素を含むように想定し、前記偏差を入力とし、前記注湯手段の開度変更量を演算して出力する開度演算手段と、前記開度演算手段から出力される前記開度変更量と、補正量演算手段から出力される開度補正量とを加え合わせて前記開度指令として出力する第1の加え合わせ手段と、前記第1の加え合わせ手段から出力される前記開度指令と、前記検出レベルとを入力とし、前記開度補正量を演算して出力する前記補正量演算手段とを備え、前記補正量演算手段は、前記第1の加え合わせ手段から出力される前記開度指令を遅延させる遅延ステップと、前記検出レベルを入力とし、前記湯面レベル変動プロセスモデルのノミナルモデルの離散化した逆伝達関数モデルで演算した結果を出力する演算ステップと、前記演算ステップでの出力と前記遅延ステップでの出力との差である外乱推定値を出力する加え合わせステップと、前記加え合わせステップで出力される前記外乱推定値を入力とし、前記開度補正量を出力する処理ステップとを実行することを特徴とする。
本発明のプログラムは、連続鋳造機の操業中に鋳型の内部の湯面レベルを検出し、この検出レベルと予め定めた目標レベルとの偏差を用いて求めた開度指令に従って前記鋳型への注湯手段の開度を変更して、前記湯面レベルを前記目標レベルに維持するように制御する連続鋳造機の湯面レベルを制御するためのプログラムであって、前記開度指令を入力とし、前記検出レベルを出力とする湯面レベル変動プロセスモデルの伝達関数を、前記鋳型への湯落ちに要するむだ時間要素を含むように想定し、前記偏差を入力とし、前記注湯手段の開度変更量を演算して出力する開度演算手段と、前記開度演算手段から出力される前記開度変更量と、補正量演算手段から出力される開度補正量とを加え合わせて前記開度指令として出力する第1の加え合わせ手段と、前記第1の加え合わせ手段から出力される前記開度指令と、前記検出レベルとを入力とし、前記開度補正量を演算して出力する前記補正量演算手段としてコンピュータを機能させ、前記補正量演算手段は、前記第1の加え合わせ手段から出力される前記開度指令を遅延させる遅延手段と、前記検出レベルを入力とし、前記湯面レベル変動プロセスモデルのノミナルモデルの離散化した逆伝達関数モデルで演算した結果を出力する演算手段と、前記演算手段の出力と前記遅延手段の出力との差である外乱推定値を出力する第2の加え合わせ手段と、前記第2の加え合わせ点から出力される前記外乱推定値を入力とし、前記開度補正量を出力する処理手段として機能することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鋳型の内部の湯面レベルの周期的なレベル変動を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る湯面レベル制御装置を含む湯面レベル制御系を表すブロック線図である。
図2】実施形態における連続鋳造機の湯面レベル変動プロセスモデル伝達関数P(s)を示す図である。
図3】補正量演算部の処理部の構成を示す図である。
図4】実施形態に係る湯面レベル制御装置を含む湯面レベル制御系の他の例を表すブロック線図である。
図5】シミュレーション結果を示す図である。
図6図5の事例を周波数解析した結果を示す図である。
図7】連続鋳造機の概要を示す図である。
図8】バルジングを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、既述した構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
図1は、実施形態に係る湯面レベル制御装置Cを含む湯面レベル制御系を表すブロック線図である。目標レベル設定器7に設定された目標レベルをr、レベル計6による検出レベルをyとする。また、制御対象となる連続鋳造機の湯面レベル変動プロセスモデルの伝達関数をP(s)(sはラプラス演算子)とする。また、操業中に湯面レベルの変動を引き起こす外乱をd(ノズル開度に換算したもの)とする。
湯面レベル制御装置Cは、連続鋳造機の操業中に鋳型1の内部の湯面レベルyを検出し、この検出レベルyと予め定めた目標レベルrとの偏差を用いて求めた開度指令uに従って注湯手段である注湯ノズル3のスライディングゲート30の開度を変更して、湯面レベルを目標レベルrに維持するように制御する。
【0013】
ここで、特許文献1にもあるように、開度指令uを入力とし、検出レベルyを出力とする連続鋳造機の湯面レベル変動プロセスモデルの伝達関数P(s)は、注湯ノズル3の内部での湯落ちに要するむだ時間要素(鋳型1への湯落ちに要するむだ時間要素)Pd(s)=exp(−Ls)を含むように想定される。Lは、注湯ノズル3の内部での湯落ちに要するむだ時間である。
本実施形態では、図2に示すように、湯面レベル変動プロセスモデル伝達関数P(s)に、注湯ノズル3の内部での湯落ちに要するむだ時間要素Pd(s)だけでなく、注湯ノズル3のスライディングゲート30の動特性(一次遅れとして近似して使用)Psn(s)、及びレベル計6の動特性(一次遅れとして近似して使用)Pse(s)も含むものと想定している。即ち、湯面レベル変動プロセスモデルの伝達関数P(s)は、(1)式のように表される。Kは係数、Tsnは注湯ノズル3のスライディングゲート30の一次遅れ時定数、Tseはレベル計6の一次遅れ時定数である。
なお、外乱dには、詳細にいえば、現状の湯面レベルの位置に発生するものd1(バルジング)、溶湯2の注湯位置に発生するものd2(ノズル詰まり)がある。
【0014】
【数1】
【0015】
図1に示すように、湯面レベル制御装置Cは、加え合わせ点101と、開度演算部102と、加え合わせ点103と、補正量演算部104とを備える。湯面レベル制御装置Cは、通常、ディジタル制御器の中で演算されるため離散系伝達関数として取り扱われる。
加え合わせ点101は、入力として与えられる目標レベルrと検出レベルyとの偏差信号eを出力する。
開度演算部102は、加え合わせ点101から出力される偏差信号eを入力とし、開度変更量u0を演算して出力する。
加え合わせ点103は、開度演算部102から出力される開度変更量u0と、補正量演算部104から出力される開度補正量vとを加え合わせて開度指令uとして出力する。
補正量演算部104は、開度指令uと検出レベルyとを入力とし、開度補正量vを演算して出力する。
【0016】
開度演算部102の伝達関数をC(q-1)とする。湯面レベル制御装置Cは離散系で処理することから、離散時間系にしたときの演算子qを用いた伝達関数として表される(以下、湯面レベル制御装置Cに関しては同様)。一般的に伝達関数C(q-1)は定常レベルを一定に保つため、低周波ゲインを高くする必要があり、PIDコントローラが使用される。ただし、開度演算部102の構成は限定されるものではなく、例えば図4に示すようなRST型コントローラが使用されてもよい。
【0017】
補正量演算部104は、湯面レベル制御装置Cから出力される開度指令uを遅延させる遅延部104aと、検出レベルyを入力とし、湯面レベル変動プロセスモデルのノミナルモデル(設計上の理想モデル)Pn(s)の離散化した逆伝達関数モデルで演算した結果を出力する演算部104bと、演算部104bの出力と遅延部104aの出力との差である外乱推定値d^(d^はdの上に^が付されているものとする)を出力する加え合わせ点104cと、加え合わせ点104cから出力される外乱推定値d^を入力とし、開度補正量vを出力する処理部104dを備える。
【0018】
遅延部104aは、湯面レベル制御装置Cから出力される開度指令uを、むだ時間Lに対応するステップmだけ遅延させて出力する。湯面レベル制御装置Cでの演算周期をΔTとすると、L/ΔT=mとなる。
むだ時間はパデ近似等の近似手法で表現する方法もあるが、パデ近似を用いると非最小位相系となり、高周波帯域で位相特性がずれる等の問題が発生する。これに対して、離散系での表記を用いると、むだ時間に最大サンプル時間分相当の量子化誤差が発生するケースがあるものの、サンプル時間が短いケースでは近似精度がよい。
【0019】
演算部104bは、その伝達関数が、湯面レベル変動プロセスモデルのノミナルモデルPn(s)の離散化した逆伝達関数モデルP-1n(q-1)で表される。湯面レベル制御装置Cは離散系で処理することから、離散時間系にしたときの演算子qを用いた伝達関数として表される。
ここで、現在の検出レベルyは、L秒前の入力である開度指令uと外乱入力であるdの和による湯面レベル変動プロセスモデルの伝達関数P(s)の結果である。演算部104bの伝達関数はノミナルモデルPn(s)の離散化した逆伝達関数モデルとなっており、これは言い換えると、演算部104bからは、現在の検出レベルyが結果となる、L秒前の開度指令uと外乱入力であるdの和が出力されることになる。
本件でのノミナルモデルはむだ時間を含まない構造を示しており、ここでもexp(−Ls)・P(q-1)≒q-m・Pn(q-1)と設定している。
ノミナルモデルは設備設計値や単独試運転結果から得られる値を用いるケースもあるが、入出力データから二乗誤差を最小にするモデルを推定する手法である逐次型システム同定法や部分空間同定法等を用いて得られるモデルを用いるとよい結果が得られる。
なお、通常プロセスモデルは厳にプロパー(分子次数より分母次数の方が大きい)であるケースが多く、逆伝達関数はプロパー関数とはならない。このため、ノミナルモデルの離散化した逆伝達関数モデルを実装するためには、1次や2次遅れの関数を組み合わせて表現することが一般的である。この場合、信号の同一性を保たせるために、遅延部104aにも同様の関数を組み合わせる必要がある。この際の組み合わせ関数の時定数は外乱周波数帯域より5〜10倍以上高い値とするのがよい。
【0020】
遅延部104aの出力と演算部104bの出力とが入力される結果、加え合わせ点104cは、mステップ(むだ時間Lに対応)前の開度指令uと、いま検出された検出レベルyが結果となる、L秒前の開度指令uとの差である外乱推定値d^を出力することになる。
【0021】
処理部104dは、加え合わせ点104cから出力される外乱推定値d^を入力とし、開度補正量vを出力する。処理部104dの伝達関数をV(q-1)とする。湯面レベル制御装置Cは離散系で処理することから、離散時間系にしたときの演算子qを用いた伝達関数として表される。
ここで、処理部104dでは、複数の周波数成分を含む外乱推定値d^から、除去したい周波数成分、即ち湯面レベルの変動を引き起こす周期的な外乱の周波数成分を抽出する必要がある。
また、加え合わせ点104cから出力される外乱推定値d^は、mステップ(むだ時間Lに対応)前の外乱を推定したものである。処理部104dの出力は、湯面レベル制御装置Cから出力される現在の開度指令uに対する開度補正量vとすべきであるので、現在の外乱を推定する必要がある。
【0022】
このような処理部104dの伝達関数V(q-1)を設計する手法として、ベズー(Bezout)方程式による逆行列計算を行う手法が挙げられる。
外乱→湯面レベルの伝達関数Gyd(q-1)は、(2)式のようになる。(2)式において、[1−V(q-1)q-m]は、補正量演算部104を設けたことにより追加される項である。
そして、(3)式のようにV(q-1)をおいて、(4)式となるように伝達関数V(q-1)を設計すればよい。(4)式において、[(1−2cosω・q-1+q-2)/(1−α・2cosω・q-1+α2・q-2)]は、外乱周波数を減衰させるフィルタ(α:減衰の急峻度)となる項である。
【0023】
【数2】
【0024】
【数3】
【0025】
ここで、(5)式に示すBezout方程式において、左右に係数比較によってJ(q-1)及びNv(q-1)を求める。(6)式、(7)式に示す係数比較の公式において、両辺に左からMの逆行列をかけて、J(q-1)及びNv(q-1)を得る。
【0026】
【数4】
【0027】
【数5】
【0028】
ところで、操業中に実際に生じる湯面レベルの変動状態に応じて、除去したい周波数成分(湯面レベルの変動を引き起こす周期的な外乱の周波数成分)を適宜に変更することにより、外乱に起因して鋳型1の内部に発生する周期的なレベル変動を高い精度で抑制することが可能となる。
しかしながら、除去したい周波数成分(湯面レベルの変動を引き起こす周期的な外乱の周波数成分)を変更する場合、その都度、補正量演算部104の実機において上記のような計算を実行させるのでは、計算負荷が大きく、実際の計算周期(数十msec程度)で計算を実行するのは現実的には難しい。
【0029】
図3(a)に示すように、本来、周期的な外乱を除去するためには処理部104dは、特定の周波数域を通過させるバンドパスフィルタ105と、mステップ先予測器106としての機能が必要となる。
しかし、mステップ先予測器106の入力、即ちバンドパスフィルタ105を通過した特定の周波数信号は、湯面レベルの変動を引き起こす周期的な外乱であり、特にバンドパスフィルタの急峻度が高い場合には正弦波とみなすことができる。したがって、mステップ先を予測することは、正弦波の位相をmステップ分進めるのと等価である。そこで、図3(b)に示すように、mステップ先予測器106として、正弦波の位相をmステップ分進める位相進み器107を用いればよい。
これにより、除去したい周波数成分(湯面レベルの変動を引き起こす周期的な外乱の周波数成分)を変更するような場合、バンドパスフィルタ105を通過させる周波数域を変更するだけでよい。したがって、上述したようにBezout方程式を解く必要がなくなり、補正量演算部104における計算負荷が小さくなる。
【0030】
図1に示すように、周波数推定装置108は、操業中に実際に生じる湯面レベルの変動状態に応じて、除去したい周波数成分(湯面レベルの変動を引き起こす周期的な外乱の周波数成分)を推定する。この推定した周波数成分に応じてバンドパスフィルタ105を通過させる周波数域を変更し、推定外乱を除去する方向の出力信号を開度演算部102の出力に加算することにより、外乱に起因して鋳型1の内部に発生する周期的なレベル変動を高い精度で抑制することが可能となる。
なお、周波数推定装置108による周波数推定の方式は限定されるものではない。例えば特許文献1には、検出レベルy及び開度指令uから得た外乱推定値、或いは検出レベルyを高速フーリエ変換(FFT)して、それらの周波数分布を推定する構成が開示されている。また、本実施形態の場合、外乱推定値d^を高速フーリエ変換(FFT)して、それらの周波数分布を推定するようにしてもよい。また、高速フーリエ変換(FFT)以外の手法を利用したものであってもよい。
【0031】
図5(a)は、実機で採取されたレベル変動波形を示す図であり、横軸は時間、縦軸は湯面変動である。このレベル変動波形を図1のdの位置に入力してシミュレーションを実行した。
図5(b)は、処理部104dの伝達関数V(q-1)の設計をベズー(Bezout)方程式による逆行列計算を行った場合のシミュレーション結果を示す。横軸は時間、縦軸は湯面変動である。一方、図5(c)は、処理部104dをバンドパスフィルタ105と位相進み器107とを用いて構成した場合(図3(b)を参照のこと)のシミュレーション結果を示す。横軸は時間、縦軸は湯面変動である。
いずれの場合も、入力に対して出力を減衰させることができており、処理部104dをバンドパスフィルタ105と位相進み器107とを用いて構成した場合にも、ベズー(Bezout)方程式による逆行列計算を行った場合と同等の性能を得られることがわかる。
【0032】
図6(a)、(b)は、図5の事例を周波数解析した結果を示す。図6(a)、(b)の特性線601は、入力である、図5(a)に示したレベル変動波形を高速フーリエ変換(FFT)して、周波数分布を推定した結果である。
図6(a)の特性線602は、図5(b)に示した出力を高速フーリエ変換(FFT)して、周波数分布を推定した結果である。一方、図6(b)の特性線603は、図5(c)に示した出力を高速フーリエ変換(FFT)して、周波数分布を推定した結果である。
いずれの場合も、入力にみられる大きな周波数ピーク帯の外乱2個を除去することができており、処理部104dをバンドパスフィルタ105と位相進み器107とを用いて構成した場合にも、ベズー(Bezout)方程式による逆行列計算を行った場合と同等の性能を得られることがわかる。
【0033】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
本発明を適用した連続鋳造機の湯面レベル制御装置は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ装置により実現される。
また、本発明は、本発明の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0034】
C:湯面レベル制御装置、1:鋳型、2:溶湯(溶融金属)、20:タンディッシュ、3:注湯ノズル、30:スライディングゲート、31:開閉用アクチュエータ(油圧シリンダ)、4:鋳片、5:ガイドロール、6:レベル計、101:加え合わせ点、102:開度演算部、103:加え合わせ点、104:補正量演算部、104a:遅延部、104b:演算部、104c:加え合わせ点、104d:処理部、105:バンドパスフィルタ、106:mステップ先予測器、107:位相進み器、108:周波数推定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8