(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)熱可塑性樹脂、(B)炭素繊維および(C)チタン化合物を含む熱可塑性樹脂組成物であって、(A)熱可塑性樹脂と(B)炭素繊維の合計量を100重量%として、(A)熱可塑性樹脂10〜65重量%、(B)炭素繊維35〜90重量%であり、(A)熱可塑性樹脂と(B)炭素繊維の合計量を100重量部として、(C)チタン化合物が0.01〜5重量部からなり、(C)チタン化合物の配合量が、(B)炭素繊維の配合量の0.1〜1.5重量%である炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
ポリアミド系樹脂がポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6、ポリアミド9T、ポリアミド10Tおよびこれらの共重合ポリアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項4〜6のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
ポリアミド系樹脂が、(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂および(b)非晶性ポリアミド樹脂を含有し、その合計量を100重量%として、(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂が1〜99重量%、(b)非晶性ポリアミド樹脂が99〜1重量%である請求項4に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂の示差走査熱量計(DSC)を用いた熱分析により得られる融点(Tm)と降温結晶化温度(Tc)との差が0℃以上50℃以下である請求項8または9に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂がポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド6T/66、ポリアミド12T、10T/1012およびポリアミド6Tからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項8〜10のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物、そのペレットおよび成形品について具体的に説明する。
【0031】
本発明に使用する(A)熱可塑性樹脂とは、特に制限はなく、従来成形材料として使用されているものから任意に選択して使用することができる。オリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー、交互ブロックポリマー、グラフトコポリマー、星型ブロックコポリマー、アイオノマー、デンドリマーなど、または上記を少なくとも1つ含む組み合わせを含む任意の材料であってよい。
【0032】
適切な熱可塑性樹脂として、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ乳酸に代表される植物由来の熱可塑性樹脂、ポリアリーレンスルフィド、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリット酸イミド、ポリキノキサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキシンドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリ酸無水物、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリシロキサン、ポリブタジエン、ポリイソプレンが挙げられる。機械特性に優れることから、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂が好ましく、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂がより好ましく、ポリアミド系樹脂がさらに好ましい。
【0033】
ポリアミド系樹脂としては、ポリマーの繰り返し構造中にアミド結合を有するものであれば、特に限定されるものではない。ポリアミド系樹脂としては、熱可塑性ポリアミド樹脂が好ましく、ラクタム、アミノカルボン酸及び/又はジアミンとジカルボン酸などのモノマーを重合して得られるホモポリアミドおよびコポリアミドそしてこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
前記ラクタムとしては、炭素数6〜12のラクタム類が好ましく、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等が挙げられる。また、前記アミノカルボン酸としては炭素数6〜12のアミノカルボン酸が好ましく、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸および13−アミノトリデカン酸が挙げられる。前記ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式ジアミン、及びm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。前記ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸等の芳香族または環状構造を有するジカルボン酸が挙げられる。
【0035】
具体的な例として、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン11T(H))、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMDT)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)及びこれらの共重合物、混合物等が挙げられ、中でも、成形性および表面外観の観点から、ナイロン6、ナイロン66、ナイロンMXD6、ナイロン9T、ナイロン10Tおよびこれらの共重合ポリアミドが好ましく、ナイロン9T、ナイロン10T、ナイロンMXD6がより好ましく、ナイロン9Tが特に好ましい。さらにこれらの熱可塑性ポリアミド樹脂を、耐衝撃性、成形加工性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
【0036】
これらポリアミド系樹脂の重合度には特に制限がないが、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度として、1.5〜7.0の範囲のものが好ましく、特に2.0〜6.0の範囲が好ましい。
【0037】
本発明において使用するポリアミド系樹脂を製造するためには、上記のようなジアミン成分とジカルボン酸成分とを加えて、触媒の存在下に加熱することにより製造することができる。また、この反応において、ジアミン成分の全モル数が、ジカルボン酸成分の全モル数より多く配合されることが好ましく、特に好ましくは全ジカルボン酸成分を100モルとした時、全ジアミン成分が100〜120モルである。この反応は、通常は不活性ガス雰囲気下で行なわれ、一般には反応容器内を窒素ガスなどの不活性ガスで置換する。また、ポリアミドの重縮合反応を制御するために、水を予め封入しておくことが望ましく、水に可溶な有機溶媒、例えばメタノール、エタノールなどのアルコール類が含有されていてもよい。
【0038】
本発明で使用するポリアミド系樹脂を製造する際に用いられる触媒としては、リン酸、その塩およびリン酸エステル化合物;亜リン酸、その塩およびエステル化合物;並びに、次亜リン酸、その塩およびエステル化合物を使用することができる。これらの中でも、リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム等が好ましい。これらのリン酸化合物は、単独であるいは組み合わせて使用することができる。このようなリン系化合物は、上記のようなジカルボン酸100モルに対して、通常は0.01〜5モル、好ましくは0.05〜2モルの割合で用いられる。
【0039】
本発明で使用するポリアミド系樹脂を製造するためには、末端封止剤を使用することが好ましい。この末端封止剤としては、安息香酸、安息香酸のアルカリ金属塩、酢酸等を使用することができる。このような末端封止剤は、ジカルボン酸100モルに対して、通常は0.1〜5モル、好ましくは0.5〜2モルの範囲内の量で使用される。この末端封止剤の使用量を調整することにより、得られる重縮合物の極限粘度[η]を制御することができる。
【0040】
このような重縮合物を調製する際の反応条件は、具体的には、反応温度は通常200〜290℃、好ましくは220〜280℃、反応時間は通常0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間である。さらにこの反応は常圧から加圧のいずれの条件で行うことができるが、加圧条件で反応を行うことが好ましく、反応圧は、通常2〜5MPa、好ましくは2.5〜4MPaの範囲内に設定される。
【0041】
このようにして重縮合反応を行うことにより、25℃の96.5%硫酸中でウベローデ型粘度計を用いて測定した極限粘度[η]が、通常は0.05〜0.6dl/g、好ましくは0.08〜0.3dl/gの範囲内にある低次縮合物を得ることができる。こうして水性媒体中に生成したポリアミド低次縮合物は、反応液と分離される。このポリアミド低次縮合物と反応液との分離には、例えば濾過、遠心分離等の方法を採用することもできるが、生成したポリアミド低次縮合物を含有する反応液を、ノズルを介して大気中にフラッシュすることにより、固液分離する方法が効率的である。
【0042】
本発明で使用するポリアミド系樹脂の製造方法の好ましい態様においては、上記のようにして得られたポリアミド低次縮合物について、さらに後重合を行なう。この後重合は、上記ポリアミド低次縮合物を乾燥した後に加熱して、溶融状態にし、この溶融物に剪断応力を付与しながら行なうことが好ましい。この反応に際しては、乾燥ポリアミド低次縮合物が少なくとも溶融する温度に加熱する。一般には、乾燥ポリアミド低次縮合物の融点以上の温度、好ましくはこの融点よりも10〜60℃高い温度に加熱される。剪断応力は、例えばベント付き二軸押出機、ニーダー等を用いることにより溶融物に付与することができる。こうして溶融物に剪断応力を付与することにより、溶融状態にある乾燥ポリアミド低次縮合物が相互に重縮合すると共に、縮合物の重縮合反応も進行するものと考えられる。
【0043】
本発明で使用するポリアミド系樹脂の製造方法の他の好ましい態様においては、上記のようにして得られたポリアミド低次縮合物について、さらに固相重合を行なう。すなわち、上記のようにして得られたポリアミド低次縮合物を、公知・公用の方法により、固相重合させて、上記方法にて測定した極限粘度[η]が0.5〜2.0dl/gの範囲のポリアミドを調製することができる。
【0044】
本発明で使用するポリアミド系樹脂の製造方法の他の好ましい態様においては、上記のようにして得られたポリアミド低次縮合物について、固相重合を行なったのち、さらに溶融重合を行なう。すなわち、上記のようにして得られたポリアミド低次縮合物を、公知・公用の方法により、固相重合させて、極限粘度[η]が0.5〜1.5dl/gの範囲のポリアミド前駆体を調製し、さらにこの前駆体を溶融重合させて、極限粘度[η]が0.8〜3.0dl/gの範囲にすることができる。極限粘度が、この範囲にある場合、流動性に優れ、高靭性に優れるポリアミド系樹脂を得ることができる。
【0045】
ポリアミド系樹脂が結晶性樹脂である熱可塑性ポリアミド樹脂の場合、ガラス転移温度(Tg)まで冷却しなくとも樹脂が結晶化して固化すれば脱型できる。したがって、溶融状態から結晶状態にする結晶化速度が生産性を左右する。溶融状態からの高分子の結晶化は、融点よりやや低い過冷却温度で結晶核が生成し、その結晶核を中心に結晶が成長していくことで進行する。したがって結晶化速度は、結晶核の生成速度を高めることか、成長速度を高めることのいずれかで速くなる。
【0046】
上記結晶化速度に関しては、示差走査熱量計(DSC)を用いた熱分析により評価できる。結晶化速度の速いポリマーは、冷却過程でより高い温度で、結晶核が発生して成長する。結晶化の過程で結晶化発熱を示すため、融点(Tm)と結晶化発熱のピーク温度(Tc)との差で表される過冷却温度差(Tm−Tc)で結晶化速度を評価することができる。
【0047】
ここで融点(Tm)とは、セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC EXSTAR 6000を用い、30℃から20℃/分の速度で昇温して測定したときの融解吸熱ピーク温度を意味する。結晶化温度(Tc)とは、熱可塑性ポリアミド樹脂が完全に溶融した状態から、20℃/分の速度で降温したときの結晶化発熱ピーク温度を意味する。
【0048】
本発明に使用する(A)熱可塑性樹脂において熱可塑性ポリアミド樹脂を用いる場合、過冷却温度差(Tm−Tc)が70℃以下であることが好ましく、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下、最も好ましくは40℃以下である。過冷却温度差を70℃以下とすることで、短時間で結晶化が進行し生産性に優れると共にうねり凹凸の少ない成形品を得ることができるため好ましい。また下限について特に制限はないが、過冷却温度差(Tm−Tc)は10℃以上が好ましく、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上である。10℃未満の場合には、固化が速くなりすぎるため、溶融加工成形性に劣るため好ましくない。
【0049】
本発明で使用する熱可塑性ポリアミド樹脂は、示差走査熱量計(DSC)を用いた熱分析より得られる融点(Tm)が250℃以上であることが好ましく、より好ましくは260℃以上である。また、示差走査熱量計(DSC)を用いた熱分析より得られる融点(Tm)の上限は、350℃以下が好ましく、より好ましくは330℃以下、さらに好ましくは320℃以下、最も好ましくは300℃以下である。示差走査熱量計(DSC)を用いた熱分析より得られる融点(Tm)がこの好ましい範囲であると、優れた耐熱性、成形性を有し、機械的特性、表面外観に優れる炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0050】
熱可塑性ポリアミド樹脂には、長期耐熱性を向上させる添加物として、銅化合物が好ましく用いられる。なかでも1価の銅化合物とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、熱可塑性ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。銅化合物の添加量がこの好ましい範囲であると、溶融成形時に金属銅の遊離が起こり難く、着色も起こらない。銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、ヨウ化カリウムおよびヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0051】
本発明に使用する(A)熱可塑性樹脂として、ポリアミド系樹脂を用いる場合、(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂および、(b)非晶性ポリアミド樹脂を用いることが好ましい。(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂および、(b)非晶性ポリアミド樹脂を用いることで、表面外観(うねり状凹凸)が改良され、金属同等の剛性を有しながら、表面外観および吸水特性が良好な炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0052】
本発明における(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂とは、半芳香族結晶性ポリアミド樹脂、全芳香族結晶性ポリアミド樹脂である。
【0053】
本発明で用いることができる半芳香族ポリアミド樹脂または全芳香族ポリアミド樹脂は、特に限定されないが、下記の半芳香族結晶性ポリアミド樹脂(x)または(y)が好ましく用いられる。
【0054】
半芳香族結晶性ポリアミド樹脂(x)は、ジアミン成分とジカルボン酸成分とから構成される。半芳香族結晶性ポリアミド樹脂(x)を構成するジアミン成分は、直鎖状の炭素原子数4〜12の脂肪族ジアミン成分単位および/または側鎖を有する炭素原子数4〜12の脂肪族ジアミン成分単位からなることが好ましい。
【0055】
また、上記ジアミン成分を100モル%としたとき、前記直鎖状の炭素原子数4〜12の脂肪族ジアミン成分単位と側鎖を有する炭素原子数4〜12の脂肪族ジアミン成分単位との合計が100モル%となることが好ましい。ジアミン成分としては、具体的には、炭素原子数4〜12の直鎖アルキレンジアミン成分単位および/または側鎖アルキル基を有する炭素原子数4〜12のアルキレンジアミン成分単位が用いられる。
【0056】
炭素原子数4〜12の直鎖アルキレンジアミン成分単位としては、具体的には、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、およびこれらの組合せから誘導される成分単位などが挙げられる。これらのなかでは、炭素原子数6〜10の直鎖アルキレンジアミンから誘導される成分単位が、好ましくは、1,6−ジアミノヘキサン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカンから誘導される成分単位が、さらに好ましくは、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカンから誘導される成分単位が好ましく用いられる。
【0057】
また、側鎖アルキル基を有する炭素原子数4〜12のアルキレンジアミン成分単位としては、特に、炭素原子数6〜10のアルキレンジアミン成分単位が好ましく、具体的には以下のものが挙げられる。合計炭素原子数6のアルキレンジアミンから誘導される例としては、2−メチル−1,5−ジアミノペンタンから誘導される成分単位が、合計炭素原子数7のアルキレンジアミンから誘導される成分単位の例としては、2−メチル−1,6−ジアミノヘキサン、3−メチル−1,6−ジアミノヘキサン、2,2−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、2,4−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、3,3−ジメチル−1,5−ジアミノペンタンから誘導される成分単位が、合計炭素原子数8のアルキレンジアミンから誘導される成分単位の例としては、2−メチル−1,7−ジアミノヘプタン、3−メチル−1,7−ジアミノヘプタン、4−メチル−1,7−ジアミノヘプタン、2,2−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、2,4−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、2,5−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、3,3−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサンから誘導される成分単位が、合計炭素原子数9のアルキレンジアミンから誘導される成分単位の例としては、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン、3−メチル−1,8−ジアミノオクタン、4−メチル−1,8−ジアミノオクタン、2,3−ジメチル−1,7−ジアミノヘプタン、2,4−ジメチル−1,7−ジアミノヘプタン、2,5−ジメチル−1,7−ジアミノヘプタン、2,2−ジメチル−1,7−ジアミノヘプタン、2,2,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン、2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサンから誘導される成分単位が、合計炭素原子数10のアルキレンジアミンから誘導される成分単位の例としては、2−メチル−1,9−ジアミノノナン、3−メチル−1,9−ジアミノノナン、4−メチル−1,9−ジアミノノナン、5−メチル−1,9−ジアミノノナン、1,3−ジメチル−1,8−ジアミノオクタン、1,4−ジメチル−1,8−ジアミノオクタン、2,2−ジメチル−1,8−ジアミノオクタン、2,4−ジメチル−1,8−ジアミノオクタン、3,4−ジメチル−1,8−ジアミノオクタン、4,5−ジメチル−1,8−ジアミノオクタン、2,4−ジエチル−1,6−ジアミノヘキサンから誘導される成分単位が挙げられる。
【0058】
本発明で用いられる半芳香族結晶性ポリアミド樹脂(x)を構成するジカルボン酸成分は、テレフタル酸成分単位40〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜60モル%および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位0〜60モル%からなることが好ましい。上記テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位としては、たとえばイソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびこれらの組み合わせから誘導される成分単位などが挙げられる。
【0059】
また、脂肪族ジカルボン酸成分単位は、その炭素原子数を特に限定するものではないが、炭素原子数が4〜20、好ましくは4〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導されるものが望ましい。このような脂肪族ジカルボン酸成分単位を誘導するために用いられる脂肪族ジカルボン酸の例としては、たとえば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸およびドデカンジカルボン酸等が挙げられる。これらのなかでも、アジピン酸が特に好ましい。
【0060】
また、ジカルボン酸成分には、上記のようなテレフタル酸成分単位、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位および脂肪族ジカルボン酸成分単位と共に、少量、たとえば、10モル%以下の量の多価カルボン酸成分単位が含まれていてもよい。このような多価カルボン酸成分単位としては、具体的には、トリメリット酸およびピロメリット酸等のような三塩基酸および多塩基酸から誘導されるものを挙げることができる。
【0061】
好ましい半芳香族結晶性ポリアミド樹脂(x)の例としては、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6T/66)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12T)、デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカノアミドコポリアミド(10T/1012)、ポリアミド6Tが挙げられ、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド6T/66がより好ましく、ポリアミド9T、ポリアミド10Tがさらに好ましい。
【0062】
一方、本発明で用いられる半芳香族結晶性ポリアミド樹脂(y)の例としては、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンアジパミド/ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6/PXD6)、ポリメタキシリレンアジパミド/ポリメタキシリレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミドMXD6/MXDI)が挙げられ、ポリアミドMXD6が好ましい。
【0063】
本発明で用いられる(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂は、25℃における98%濃硫酸中で測定した極限粘度が、1.5〜7.0の範囲のものが好ましく、特に2.0〜6.0の範囲が好ましい。
【0064】
本発明で使用する(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂は、結晶性であるため融点を有し、上記製造法にて得られたポリアミド樹脂について、DSCを用いて20℃/分で昇温した時に融解に基づく吸熱ピークを融点とした場合、融点の上限が350℃以下であることが好ましく、330℃以下がより好ましく、320℃以下がさらに好ましい。一方、融点の下限は200℃以上であることが好ましく、250℃以上がより好ましく、260℃以上がさらに好ましい。融点がこの好ましい範囲にあると、優れた耐熱性、成形性を有し、機械的特性、表面外観に優れる炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0065】
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物に使用する(b)非晶性ポリアミド樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて窒素雰囲気下で20℃/分の昇温速度により測定した融解熱量が、4J/g未満であるものをいう。
【0066】
(b)非晶性ポリアミド樹脂としては、例えば、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体、テレフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタムの重縮合体、イソフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタムの重縮合体等が挙げられる。また、これらの重縮合体を構成するテレフタル酸成分及び/又はイソフタル酸成分のベンゼン環が、アルキル基やハロゲン原子で置換されたものも含まれる。さらに、これらの非晶性ポリアミドは2種以上併用することもできる。好ましくは、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体、又はテレフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、又はイソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体とテレフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体との混合物が用いられる。
【0067】
本発明における(b)非晶性ポリアミド樹脂は、特に制限はないが、ガラス転移温度が80℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。またガラス転移温度の上限は、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましい。非晶性ポリアミド樹脂のガラス転移温度がこの好ましい範囲であると、より優れた表面外観を得ることができる。ガラス転移温度とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて窒素雰囲気下で20℃/分の条件により測定して得られるガラス転移温度である。
【0068】
(b)非晶性ポリアミド樹脂の配合量は、(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂と(b)非晶性ポリアミド樹脂の合計量を100重量%として、(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂1〜99重量%、(b)非晶性ポリアミド樹脂99〜1重量%が好ましい。(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂の配合量が50重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましい。一方(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂の配合量の上限は、95重量%以下がより好ましく、80重量%以下がさらに好ましい。(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂が1重量%以上である場合、剛性および吸水特性がより向上する。99重量%以下である場合、表面外観の改良が十分である。
【0069】
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)を用いた熱分析により得られる、(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂の融点(Tm)と結晶化温度(Tc)との差、すなわちTm−Tcが50℃以下であることが好ましく、40℃以下がより好ましい。また、0℃以上であることが好ましく、10℃以上がより好ましい。Tm−Tcがこの好ましい範囲であると、短時間で結晶化が進行し生産性に優れるとともに、うねり凹凸の少ない成形品を得ることができる。
【0070】
ここで融点(Tm)とは、セイコーインスツルメンツ株式会社製EXSTAR DSC6000を用い、30℃から20℃/分の速度で昇温して測定したときの融解吸熱ピーク温度を意味する。結晶化温度(Tc)とは、EXSTAR DSC6000を用い、熱可塑性ポリアミド樹脂が完全に溶融した状態から、20℃/分の速度で降温したときの結晶化発熱ピーク温度を意味する。
【0071】
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば4,4’−ジヒドロキシジアリールアルカン系ポリカーボネート等が挙げられる。具体例としては、ビスフェノールA系ポリカーボネート(PC)、変性ビスフェノールA系ポリカーボネート、難燃化ビスフェノールA系ポリカーボネート等を挙げることができる。
【0072】
ポリカーボネート系樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、好ましくは10,000〜50,000であり、より好ましくは15,000〜40,000であり、最も好ましくは15,000〜30,000である。
【0073】
ポリエステル系樹脂としては、例えば芳香族ジカルボン酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコールとを重縮合させたものが挙げられる。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0074】
スチレン系樹脂としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン等の単独重合体又はこれらの共重合体、あるいはこれらと共重合可能な不飽和単量体との共重合体等が挙げられる。具体的には、一般用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、耐熱性ポリスチレン(例えば、α−メチルスチレン重合体あるいは共重合体等)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−α−メチルスチレン共重合体(α−メチルスチレン系耐熱ABS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−フェニルマレイミド共重合体(フェニルマレイミド系耐熱ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−塩素化ポリスチレン−スチレン系共重合体(ACS)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体(AES)、アクリルゴム−アクリロニトリル−スチレン共重合体(AAS)あるいはシンディオタクティクポリスチレン(SPS)等が挙げられる。また、スチレン系樹脂は、ポリマーブレンドしたものであっても良い。
【0075】
ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)としては、例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル等のホモポリマーが挙げられ、これをスチレン系樹脂で変性したものを用いることもできる。
【0076】
ポリオレフィン系樹脂としては、代表的には、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンの単独重合体又はこれらの共重合体、あるいはこれらと他の共重合可能な不飽和単量体との共重合体等が挙げられる。代表例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等のメタロセン系エチレン−αオレフィン共重合体等のポリエチレン類、アタクチックポリプロピレン、シンディオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレンあるいはプロピレン−エチレンブロック共重合体又はランダム共重合体等ポリプロピレン類、ポリメチルペンテン−1等を挙げることができる。
【0077】
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば塩化ビニル単独重合体や塩化ビニルと共重合可能な不飽和単量体との共重合体が挙げられる。具体的には、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、これらのポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化して塩素含有量を高めたものも使用できる。
【0078】
ポリアセタール樹脂(POM)としては、例えば単独重合体ポリオキシメチレンあるいはトリオキサンとエチレンオキシドから得られるホルムアルデヒド−エチレンオキシド共重合体等が挙げられる。
【0079】
アクリル系樹脂としては、例えばメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル単独重合体又はこれらの共重合体、あるいはこれらと他の共重合可能な不飽和単量体との共重合体等が挙げられる。メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル単量体としては、メタクリル酸あるいはアクリル酸のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチルエステル等が挙げられる。代表的には、メタクリル樹脂(PMMA)が挙げられる。
【0080】
これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0081】
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物に使用する(B)炭素繊維とは、特に制限がなく、公知の各種炭素繊維、例えばポリアクリロニトリル、ピッチ、レーヨン、リグニン、炭化水素ガス等を用いて製造される炭素質繊維や黒鉛質繊維であり、また、これらの繊維を金属でコートした繊維でもよい。なかでも機械的特性向上が可能なPAN系炭素繊維が好ましく利用できる。炭素繊維(B)は通常チョップドストランド、ロービングストランド、ミルドファイバーなどの形状であり、直径15μm以下、好ましくは5〜10μmである。
【0082】
本発明に用いる(B)炭素繊維の形態は、特に制限されないが、数千から数十万本の炭素繊維の束、あるいは粉砕したミルド状の形態で用いられる。炭素繊維束については、連続繊維を直接使用するロービング法、あるいは所定長さにカットしたチョップドストランドを使用する方法を適用し、用いることが可能である。
【0083】
本発明に用いる(B)炭素繊維はチョップドストランドを用いることが好ましく、チョップド炭素繊維の前駆体である炭素繊維ストランドのフィラメント数は1,000〜150,000本が好ましい。炭素繊維ストランドのフィラメント数がこの好ましい範囲であると、製造コストを抑制でき、生産工程における安定性を確保できる。
【0084】
本発明に用いる(B)炭素繊維のストランド弾性率は、特に制限はないが、
150GPa以上が好ましく、220GPa以上がより好ましく、250GPa以上であることがさらに好ましい。またストランド弾性率の上限は、1000GPa以下が好ましく、700GPa以下がより好ましく、さらに好ましくは500GPa以下である。ストランド弾性率がこの好ましい範囲であると、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の機械特性が十分発現し、製造コストを抑制できる。
【0085】
本発明に用いる(B)炭素繊維のストランド強度は、特に制限はないが、1GPa以上が好ましく、4GPa以上がより好ましく、5GPa以上がさらに好ましい。一方、ストランド強度の上限は、20GPa以下であることが好ましく、15GPa以下がより好ましく、10GPa以下がさらに好ましい。ストランド強度がこの好ましい範囲であると、得られる炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の強度が発現し、製造コストを抑制できる。
【0086】
ここで、ストランド弾性率およびストランド強度とは、炭素繊維単繊維3,000〜90,000本よりなる連続繊維束にエポキシ樹脂を含浸硬化させて作製されたストランドの弾性率および強度をいい、ストランド試験片をJIS R 7601に準拠して引張り試験に供して得られた値である。
【0087】
本発明に用いる(B)炭素繊維は、(A)熱可塑性樹脂と(B)炭素繊維との接着性を向上するために、(B)炭素繊維に表面酸化処理を行ってもよく、その場合、通電処理による表面酸化、オゾンなどの酸化性ガス雰囲気中での酸化処理をしても良い。
【0088】
また、(B)炭素繊維の表面に、樹脂の濡れ性の改善、取り扱い性の向上を目的として、カップリング剤や集束剤等を付着させたものを用いてもよい。カップリング剤としては、例えば、アミノ系、エポキシ系、クロル系、メルカプト系、及びカチオン系のシランカップリング剤等が挙げられ、アミノ系シラン系カップリング剤が好適に使用可能である。集束剤としては、例えば、無水マレイン酸系化合物、ウレタン系化合物、アクリル系化合物、エポキシ系化合物、フェノール系化合物及びこれら化合物の誘導体から選ばれる1種以上を含有する集束剤が挙げられ、ウレタン系化合物、エポキシ系化合物を含有する集束剤が好適に使用可能である。(B)炭素繊維中の集束剤の含有量は、0.1〜10.0重量%であることが好ましく、0.3〜8.0重量%がさらに好ましく、0.5〜6.0重量%が特に好ましい。
【0089】
また、本発明に用いる(B)炭素繊維のストランドにサイジング剤を付与し、さらにチョップド炭素繊維とする方法としては、例えば特公昭62−9541号公報におけるガラス繊維チョップドストランドで採用されている方法や、例えば特開昭62−244606号公報や、特開平5−261729号公報などの方法を適用することができる。
【0090】
本発明における(B)炭素繊維の配合量は、(A)熱可塑性樹脂と(B)炭素繊維の合計量を100重量%として、(A)熱可塑性樹脂10〜65重量%、(B)炭素繊維35〜90重量%である。(B)炭素繊維の配合量が40重量%以上であることが好ましく、45重量%以上がさらに好ましい。一方(B)炭素繊維の配合量の上限は70重量%以下が好ましく、65重量%以下がさらに好ましい。(B)炭素繊維の配合量がこの好ましい範囲であると、十分な機械特性と安定した生産性とが両立できる。
【0091】
本発明において使用される(C)チタン化合物は、チタン原子を含む化合物であり、酸化チタン、水酸化チタンなどの無機チタン化合物、シュウ酸チタン、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物がある。
【0092】
無機チタン化合物としては、酸化チタン、水酸化チタン、チタン酸カリウム、塩化チタンなどが挙げられ、有機チタン化合物としては、シュウ酸チタン、
テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート類が挙げられる。
【0093】
本発明においては、熱可塑性樹脂組成物の表面外観向上効果の観点から、無機チタン化合物を用いることが好ましく、酸化チタン、水酸化チタンがより好ましく、酸化チタンがさらに好ましい。
【0094】
酸化チタンとしては、酸化チタン結晶形についても特に限定されず、例えば、アナタース型、ルチル型、ブルカイト型が使用できる。一般的に工業化されていることからアナタース型、ルチル型を使用するのが好ましいが、ルチル型が最も好ましく用いられる。
【0095】
本発明に使用する酸化チタンの製造法は、特に限定されず、例えば、硫酸法、塩素法などがあり、硫酸法で製造された酸化チタンが好ましく用いられる。
【0096】
酸化チタンの平均粒子径は特に限定されるものではないが、好ましくは0.10〜0.40μmの範囲である。酸化チタンの平均粒子径がこの好ましい範囲の場合、得られる炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の表面外観が十分で、成形品の物性が低下したり、隠蔽効果が低下することもない。ここで平均粒子径は、顕微鏡により50〜100倍の倍率で観察し、粒子の長径の数平均により算出される。
【0097】
酸化チタンには、分散性などを向上させることを目的として、一般に、1種以上の表面処理がなされる。表面処理としては、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛などの水和酸化物、酸化物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコンオイルなどが一般的であり、好ましく用いられる。表面処理を行わない場合は、樹脂組成物を高温溶融する際、樹脂の分子量低下などを引き起こす可能性がある。一方、表面処理剤が多すぎると結晶水により、本来の機能に影響を及ぼすことがあるため、使用する樹脂種、加工温度等を考慮し、適宜、表面処理の方法を選択するのが好ましい。
【0098】
本発明において、(C)チタン化合物の配合量は、(A)熱可塑性樹脂と(B)炭素繊維の合計量を100重量部として、(C)チタン化合物が0.01〜5重量部である。(C)チタン化合物の配合量が0.05重量部以上であることが好ましく、0.1重量部以上がより好ましい。また、2重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。チタン化合物の配合量がこの好ましい範囲であると、優れた外観を発現し、流動性および成形品の特性、特に衝撃強度に優れる樹脂組成物を得ることができる。
【0099】
また本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物における(C)チタン化合物の配合量は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の機械特性と外観のバランスに優れる点で、(B)炭素繊維量の0.1〜1.5重量%であることが好ましい。
【0100】
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物には、さらに(D)粒状充填材を配合しても良い。
【0101】
本発明における(D)粒状充填材は、板状、粉末状、球状などの非繊維状の充填材である。具体的には、タルク、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイトなどの珪酸塩、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスフレーク、ガラス粉、ガラスバルーン、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材、およびモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母に代表される層状珪酸塩が挙げられる。層状珪酸塩は層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩であってもよく、有機オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられ、上記の非繊維状充填材は2種以上を併用して使用することもできる。またこれら非繊維状充填材はシラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤で処理されていることが好ましく、エポキシシラン、アミノシラン系のカップリング剤で処理されている場合が優れた機械的特性を発現できるため特に好ましい。
【0102】
これら(D)粒状充填材の中で好ましくは、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ガラスフレーク、カーボンブラック、黒鉛、モンモリロナイト等の板状充填材が好ましく用いられる。中でもマイカ、タルク、ガラスフレークがより好ましく使用できる。
【0103】
(D)粒状充填材の粒子径は、平均粒子径が0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上がさらに好ましい。また、平均粒子径の上限は30μm以下であることが好ましく、25μm以下がより好ましく、23μm以下がさらに好ましい。粒状充填材の平均粒子径がこの好ましい範囲であると、充分な表面外観改良効果が得られ、表面外観が悪化することもない。
【0104】
ここで、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定して得られる算術平均径であり、体積平均粒子径(MV)である。
【0105】
本発明における(D)粒状充填材の配合量は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、(D)粒状充填材が0.1重量部以上であることが好ましく、0.5重量部以上がより好ましい。また、20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下がより好ましい。(D)粒状充填材の配合量がこの好ましい範囲であると、充分な表面外観改良効果を得ることができる。
【0106】
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、滑剤、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、流動改質剤、耐衝撃性改良剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤などの添加剤、球状充填材以外の充填材、他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を添加することができる。
【0107】
本発明において、安定剤としては、熱可塑性樹脂の安定剤に用いられるものをいずれも使用することができる。具体的には、酸化防止剤、光安定剤などを挙げることができる。これらの安定剤を配合することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物および成形品を得ることができる。
【0108】
本発明において、離型剤としては、熱可塑性樹脂の離型剤に用いられるものをいずれも使用することができる。具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、変成性シリコーンなどを挙げることができる。これらの離型剤を配合することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
【0109】
本発明において、難燃剤としては、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも1種の難燃剤を用いることができ、難燃性および機械特性に優れるという点で、上記難燃剤から選択されるいずれか2種以上の難燃剤を用いることが好ましい。
【0110】
本発明において、臭素系難燃剤の具体例としては、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノール−S、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、ブロム化ポリスチレン、ブロム化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロムビスフェノール−A誘導体、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマーまたはポリマー、ブロム化フェノールノボラックエポキシなどのブロム化エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマーまたはポリマー、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、N,N’−エチレン−ビス−テトラブロモテレフタルイミドなどが挙げられる。
【0111】
本発明において、塩素系難燃剤の具体例としては、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、パークロロシクロペンタデカン、テトラクロロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0112】
本発明において、リン系難燃剤の具体例としては、通常一般に用いられるリン系難燃剤を用いることができ、代表的にはリン酸エステル、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物や、赤リンが挙げられ、流動性、機械特性および難燃性に優れるという点で、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩、赤リンのいずれか1種以上が好ましく、縮合リン酸エステルがより好ましく、芳香族縮合リン酸エステルがさらに好ましい。芳香族縮合リン酸エステルとしては、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェートなどを挙げることができる。
【0113】
本発明において、窒素化合物系難燃剤としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素、チオ尿素などを挙げることができ、難燃性および機械特性に優れるという点で、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、メラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートがより好ましく、中でもシアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物を挙げることができる。なお、上記窒素化合物系難燃剤の分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤や公知の表面処理剤などを併用してもよい。
【0114】
本発明で用いられるシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルを挙げることができる。前記シリコーン樹脂は、RSiO
3/2、R
2SiO、R
3SiO
1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などを挙げることができる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、または、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基、または上記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。前記シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン、およびポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1つのメチル基が、水素元素、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、またはトリフロロメチル基の選ばれる少なくとも1つの基により変性された変性ポリシロキサン、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0115】
本発明において、その他の無機系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ジルコニウム系化合物、グアニジン系化合物、フッ素系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛などを挙げることができる。本発明においては、難燃性および機械特性に優れるという点で、水酸化マグネシウム、フッ素系化合物、膨潤性黒鉛が好ましく、フッ素系化合物がより好ましい。フッ素系化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド/エチレン共重合体などが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体も好ましい。
【0116】
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、本発明で規定する用件を満たす限り特に限定されるものではないが、溶融混練する方法が好ましく、(A)熱可塑性樹脂、(B)炭素繊維、(C)チタン化合物との配合物製造時に、溶融混練装置の温度設定としては使用する熱可塑性樹脂が溶融する温度に設定することが好ましい。(A)熱可塑性樹脂、(B)炭素繊維、(C)チタン化合物を供給する溶融混練装置原料供給位置は、特に制限はないが(A)熱可塑性樹脂、(C)チタン化合物は主原料供給口が好ましく、(B)炭素繊維に関しては、特に制限はないが主原料供給口と吐出口の中間、具体的にはスクリューエレメントデザインで主原料供給口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンと吐出口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンの中間位置であれば重量平均繊維長のコントロールが容易となり好ましい。
【0117】
前記を製造する溶融混練装置としては特に制限はなく、(A)熱可塑性樹脂、(B)炭素繊維、(C)チタン化合物とを適度な剪断場の下で加熱溶融混合することが可能な樹脂加工用に使用される公知の押出機、連続式ニーダー等の溶融混練装置を使用することができる。例えば、スクリューが1本の単軸押出機及びニーダー、スクリューが2本の二軸押出機及びニーダー、スクリューが3本以上の多軸押出機及びニーダー、さらに、押出機及びニーダーが1台の押出機、押出機及びニーダーが2台繋がったタンデム押出機、溶融混練せず原料供給のみ可能なサイドフィーダーが設置された押出機及びニーダー等特に制限はない。スクリューエレメントデザインにおいては、フルフライトスクリュー等を有する溶融または非溶融搬送ゾーン、シールリング等を有するシールゾーン、ユニメルト、ニーディング等を有するミキシングゾーン等の組み合わせにも特に制限はなく、例えばシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する連続溶融混練装置が好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸スクリュー部を有する連続溶融混練装置がさらに好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸押出機が最も好ましい。
【0118】
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物を上記の方法で成形してなるペレットは、ペレット中の炭素繊維の重量平均繊維長が0.01〜2mmであることが好ましい。0.05mm以上がより好ましく、0.1mm以上がさらに好ましい。また、1mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましい。ペレット中の炭素繊維の重量平均繊維長がこの好ましい範囲であると、十分な衝撃強度、曲げ弾性率を発現し、優れた表面外観を得ることができる。
【0119】
ここで、ペレット中の炭素繊維の重量平均繊維長は得られたペレットを500℃で1時間焼成し、得られた灰分を水分散させた後、濾過を行い、その残渣を光学顕微鏡にて観察し、1,000本の長さを測定した結果を重量平均繊維長に計算して得られたものである。具体的には、炭素繊維強化樹脂組成物のペレットを10g程度ルツボに入れ、電気コンロにて可燃性ガスが発生しなくなるまで蒸し焼きにした後、500℃に設定した電気炉内でさらに1時間焼成することにより炭素繊維の残渣のみを得る。その残渣を光学顕微鏡にて50〜100倍に拡大した画像を観察し、無作為に選んだ1,000本の長さを測定し、その測定値(mm)(小数点2桁が有効数字)を用いて次の式1または式2に基づき計算する。
【0120】
重量平均繊維長(L
w)=Σ(W
i×L
i)/ΣW
i=Σ(π×r
i2×L
i×ρ×n
i×L
i)/Σ(π×r
i2×L
i×ρ×n
i)・・・(式1)
ここでL
i、n
i、W
i、r
i、ρ、πはそれぞれ次の通りであり、炭素繊維の断面形状を繊維径r
iの真円と近似している。
(L
i:炭素繊維の繊維長、n
i:繊維長L
iの炭素繊維の本数、W
i:繊維長L
iの炭素繊維の重量、r
i:繊維長L
iの炭素繊維の繊維径、ρ:炭素繊維の密度、π:円周率)
繊維径r
i、および密度ρが一定である場合、上式1は次の通りに近似され、次の式2により重量平均繊維長を求めることができる。
【0121】
重量平均繊維長(L
w)=Σ(L
i2×n
i)/Σ(L
i×n
i)・・・(式2)
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、通常上記の如く製造されたペレットを成形して各種製品を製造することができる。炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、真空成形法、ブロー成形法などが挙げられ、射出成形が好ましい。
【0122】
かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0123】
また本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で成形品を得ることもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
【0124】
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物はその成形品中の(B)炭素繊維の重量平均繊維長は、特に限定されるものでないが0.01〜0.5mmの範囲であることが好ましい。0.125mm以上がより好ましく、0.15mm以上がさらに好ましい。また、0.45mm以下がより好ましく、0.40mm以下がさらに好ましい。炭素繊維の重量平均繊維長がこの好ましい範囲の場合は、十分な衝撃強度、曲げ弾性率改良効果が得られ表面外観が悪化する恐れもない。重量平均繊維長は得られた成形品を500℃で1時間焼成し、得られた灰分を水分散させた後、濾過を行い、その残渣を光学顕微鏡にて観察し、1,000本の長さを測定した結果を重量平均繊維長に計算して得られたものである。
【0125】
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いて成形してなる成形品は、成形品表面のうねり曲線の算術平均高さ(W
a)値が3.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下である。また、うねり曲線の算術平均高さ(W
a)値の下限値は最大0μmであり特に限定されない。うねり曲線の算術平均高さ(W
a)値がこの好ましい範囲であると、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の表面に目視によってうねり状凹凸が目立つことはなく、外観・意匠性が良好に保たれる。うねり曲線の算術平均高さ(W
a)値とは、JIS B 0601で定義されるものであり、射出成形により作製した80mm×80mm×3mmの角板成形品を用い、表面粗さ測定装置((株)東京精密製)を用いて、評価長さ20mm、試験速度0.6mm/secで、成形品表面を測定して得られるうねり曲線の算術平均高さ(W
a)である。
【0126】
本発明において、上記各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、スポーツ用品部品、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。具体的な用途としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンのハウジング、シャーシおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジング、シャーシおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジング、シャーシおよび内部部品、コピー機のハウジング、シャーシおよび内部部品、ファクシミリのハウジング、シャーシおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品およびハウジング、シャーシ部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジング、シャーシおよび内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、コンクリート型枠などの土木関連部材、釣竿部品、リールのハウジング、スプールおよびボディー部品、ルアー部品、クーラーボックス部品、ゴルフクラブ部品、テニス、バドミントン、スカッシュ等のラケット部品、スキー板部品、スキーストック部品、自転車のフレーム、ペダル、フロントフォーク、ハンドルバー、ブレーキブラケット、クランク、シートピラー、車輪、専用シューズ等の部品、ボート用オール、スポーツ用ヘルメット、フェンス構成部材、ゴルフティー、剣道用防具(面)および竹刀などのスポーツ用品部品、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、結束バンド、クリップ、ファン、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、育苗用ポット、植生杭、農ビの止め具などの農業部材、骨折補強材などの医療用品、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ICトレイ、文房具、排水溝フィルター、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。特に自動車用内装部品、自動車用外装部品、スポーツ用品部材および各種電気・電子部品のハウジング、シャーシおよび内部部品として有用である。
【0127】
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、リサイクルすることが可能である。例えば、炭素繊維強化熱可塑性樹脂射出成形品を粉砕し、好ましくは粉末状とした後、必要に応じて添加剤を配合して使用することができるが、繊維の折損がおきている場合、得られる樹脂組成物は、本発明の成形品と同様の機械強度を発現することは困難である。
【実施例】
【0128】
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0129】
使用原料としては下記のものを使用した。
(A)熱可塑性樹脂
(A−1)ナイロン9T樹脂“ジェネスタ”(登録商標)N1001D((株)クラレ製)(融点262℃)。示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製ロボットDSC、EXSTAR6000システム)を用い、昇温・降温速度を20℃/minにて測定した過冷却温度差(Tm−Tc)は38℃であった。
(A−2)ナイロン6樹脂“アミラン”(登録商標)CM1001(東レ(株)製)。上記(A−1)と同様に測定した過冷却温度差(Tm−Tc)は53℃であった。
(A−3)ナイロンMXD6樹脂“レニー”(登録商標)#6002(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)。上記(A−1)と同様に測定した過冷却温度差(Tm−Tc)は77℃であった。
(A−4)芳香族ポリカーボネート樹脂“タフロン”(登録商標)A1900(出光興産(株)製、粘度平均分子量19,000)
(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂
(a−1)ナイロン9T樹脂“ジェネスタ”(登録商標)N1001D((株)クラレ製)(融点262℃)。示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製ロボットDSC、EXSTAR6000システム)を用い、昇温・降温速度を20℃/minにて測定した過冷却温度差(Tm−Tc)は38℃であった。
(a’)芳香族基を含有しない結晶性ポリアミド樹脂
(a’−1)ナイロン6樹脂“アミラン”(登録商標)CM1001(東レ(株)製)。上記(A−1)と同様に測定した過冷却温度差(Tm−Tc)は53℃であった。
(b)非晶性ポリアミド樹脂
(b−1)ナイロン6T/6I共重合体(エムスジャパン(株)製:“グリボリー”(登録商標)(R)G21、ガラス転移温度125℃、融解ピークなし)
(b−2)トリメチルヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸共重合体(ダイセル・エボニック(株)製、“トロガミド”(登録商標)T5000、ガラス転移温度153℃)
(b−3)ナイロン12/MACMI共重合体(エムスジャパン(株)製、“グリルアミド”(登録商標)TR55、ガラス転移温度162℃、融解ピークなし)
(b’)非晶性ポリアミド樹脂以外の非晶性樹脂
(b’−1)アクリロニトリルスチレン樹脂:スチレン70wt%、アクリロニトリル30wt%からなる単量体混合物を懸濁重合してスチレン系樹脂を調製した。得られたスチレン系樹脂を70℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml(メチルエチルケトン、30℃)に調製し、ウベローデ粘度計を用いた極限粘度は0.53dl/gであった。
(B)炭素繊維
(B−1)炭素繊維“トレカ”(登録商標)カットファイバーTV14−006(東レ(株)製、原糸T700SC−12K:引張強度4.90GPa、引張弾性率230GPa)を使用した。
(B−2)炭素繊維“トレカ”(登録商標)原糸T800SC−24K(東レ(株)製、引張強度5.88GPa、引張弾性率294GPa)を、樹脂成分付着量が3.0重量%になるようにウレタン樹脂エマルジョン:スーパーフレックス300(第一工業製薬(株)製)を付着させ、200℃の乾燥炉で乾燥し水分を除去したのち、ロータリーカッターで繊維長6.0mmにカットしたカットファーバーを使用した。
(B−3)炭素繊維“トレカ”(登録商標)カットファイバーTS15−006(東レ(株)製、原糸S300C−48K:引張強度3.43GPa、引張弾性率230GPa)を使用した。
(C)チタン化合物
(C−1)塩素法酸化チタン(ルチル型)CR−63、(石原産業(株)製、平均粒子径0.21μm)
(D)粒状充填材
(D−1)マイカ:A−11((株)ヤマグチマイカ製、平均粒子径3μm)
(実施例1〜
8、参考例1、比較例1〜7)
表1に記載の組成について、表中に示す諸条件に設定した(株)日本製鋼所製2軸押出機TEX30αを用い、(A)熱可塑性樹脂、(C)チタン化合物を主フィーダーに供給後、(B)炭素繊維をサイドフィーダーを用いて溶融樹脂中に供給し、ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
【0130】
前記で得られた炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物ペレットを80℃で一昼夜真空乾燥し、表中の条件で住友重機械工業(株)製射出成形機SG75H−DUZを使用し、射出速度100mm/sec、射出圧を下限圧(最低充填圧力)+5MPaでそれぞれの試験片を成形し、次の条件で物性を測定した。
[繊維長]
ペレットおよび引張試験片からサンプル10gを切り出し、500℃に設定した電気炉中で1時間焼成した後、イオン交換水に分散、濾過を行い、その残渣を光学顕微鏡にて20〜100倍の倍率で観察しながら、1,000本の長さを測定し、ペレット、成形品の重量平均繊維長(mm)をそれぞれ求めた。
[耐衝撃性]
ISO179に従い23℃でシャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)を評価した。
[引張強度]
ISO527に従い23℃で引張強度を評価した。
[曲げ弾性率]
ISO178に従い23℃で曲げ弾性率を評価した。
[表面粗さ]
射出成形で得られた80mm×80mm×3mmの角板を使用し、(株)東京精密製表面粗さ測定装置を用いて、評価長さ8mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で成形品表面の算術平均粗さ(Ra)値を評価した。
[表面うねり]
射出成形で得られた80mm×80mm×3mmの角板を使用し、(株)東京精密製表面粗さ測定装置を用いて、評価長さ20mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で成形品表面のうねり曲線の算術平均高さ(W
a)値を評価した。
[吸水特性]
射出成形により作製したダンベル試験片を用い、60℃、相対湿度95%にて500時間吸水処理を行い、処理後の試験片を用いて曲げ試験を行い、曲げ弾性率および曲げ強度を測定した。
【0131】
【表1】
【0132】
(
参考例2〜10、比較例8)
表1に記載の組成について、実施例1と同様の方法を用いて、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物ペレットを作製し、射出成形、物性評価を行った。
【0133】
【表2】
【0134】
実施例1〜
8に示すように、本発明の(A)熱可塑性樹脂、(B)炭素繊維および(C)チタン化合物からなる樹脂組成物を成形してなる成形品は優れた機械特性を有し、外観特性の指標である表面粗さ、表面うねりが抑制でき、金属並の機械的特性と外観・意匠性を有している。一方、(C)チタン化合物を含まない比較例1〜8は、機械的特性と外観・意匠性のいずれかが不十分である。
【0135】
(a)芳香族基を含有する結晶性ポリアミド樹脂および(b)非晶性ポリアミド樹脂を用いた、
参考例
3〜
6に示す樹脂組成物を成形してなる成形品は、表面外観と機械特性のバランスが最も優れるとともに、吸水特性にも優れている。