特許第5958350号(P5958350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5958350無人搬送車の搬送システムおよび無人搬送車の搬送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958350
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】無人搬送車の搬送システムおよび無人搬送車の搬送方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
   G05D1/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-1890(P2013-1890)
(22)【出願日】2013年1月9日
(65)【公開番号】特開2014-134926(P2014-134926A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】港 智史
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−143540(JP,A)
【文献】 特開2009−006889(JP,A)
【文献】 特開2001−078305(JP,A)
【文献】 特開2010−241265(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/021362(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
B60L 15/00
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた走行路を、無人搬送車を複数台または複数回走行させる無人搬送車の搬送システムにおいて、
前記無人搬送車を複数台または複数回、前記予め定められた走行路を走行させたときの少なくとも積載重量と無人搬送車の走行速度と走行加速度の情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得した情報に基づいて、走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配を推定する勾配推定手段と、
前記勾配推定手段により推定した各々の走行路の勾配の平均化処理を行う平均化処理手段と、
を備え
前記勾配推定手段は、前記情報取得手段により取得した情報に基づいて、前記無人搬送車を複数台前記予め定められた走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配を推定し、
前記勾配推定手段により推定した各々の走行路の勾配について統計処理を行って閾値から外れた場合、閾値から外れた無人搬送車が異常であると判定する異常判定手段を更に備えたことを特徴とする無人搬送車の搬送システム。
【請求項2】
前記予め定められた走行路における勾配を推定する評価対象区間は、予め定めた走行距離での勾配変動が予め定めた値以下の区間としたことを特徴とする請求項1に記載の無人搬送車の搬送システム。
【請求項3】
予め定められた走行路を、無人搬送車を複数台または複数回走行させる無人搬送車の搬送方法において、
前記無人搬送車を複数台または複数回、前記予め定められた走行路を走行させたときの少なくとも積載重量と無人搬送車の走行速度と走行加速度の情報を取得して、走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配を推定するとともに、当該推定した各々の走行路の勾配の平均化処理を行い、無人搬送車を複数台予め定められた走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配について統計処理を行って閾値から外れた場合、閾値から外れた無人搬送車が異常であると判定することを特徴とする無人搬送車の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車の搬送システムおよび無人搬送車の搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両が走行している道路の勾配は、車両の加減速に大きく影響することから、車両の加速性能や制動性能あるいはエネルギー回生などの制御を好適に行うためには、道路勾配を正確に検出もしくは推定し、これを各種の制御に反映させることが望ましい。特に、無人搬送車においては重量が大きいため微小な勾配でも登坂抵抗の影響が大きい。
【0003】
勾配推定の一例として、車速の変化として求められる実加速度と、エンジンの出力トルクなどから求められる予測加速度とを比較し、それらの偏差に基づいて道路勾配を推定している。また、制動操作を行ったときには上記の勾配推定方法が適応できなくなるために、推定禁止処理を行う等の方法もある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−241265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両として自動車を想定してリアルタイムでの勾配推定を行っており、ハイブリッド車両の制御においては事前に勾配を知っておくことが望ましい。一方、無人搬送車のようなある程度規定のパターンを走行する場合は、事前に勾配を測定しておくことも可能であるが、大型無人搬送車など巨大なシステムの場合、全コースを事前に測定することは困難である。また、港湾を想定した場合、埋立地である場合が多く、地盤沈下等で勾配が変わる可能性もある。
【0006】
本発明の目的は、走行路の勾配を高精度に推定することができる無人搬送車の搬送システムおよび無人搬送車の搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、予め定められた走行路を、無人搬送車を複数台または複数回走行させる無人搬送車の搬送システムにおいて、前記無人搬送車を複数台または複数回、前記予め定められた走行路を走行させたときの少なくとも積載重量と無人搬送車の走行速度と走行加速度の情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段により取得した情報に基づいて、走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配を推定する勾配推定手段と、前記勾配推定手段により推定した各々の走行路の勾配の平均化処理を行う平均化処理手段と、を備え、前記勾配推定手段は、前記情報取得手段により取得した情報に基づいて、前記無人搬送車を複数台前記予め定められた走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配を推定し、前記勾配推定手段により推定した各々の走行路の勾配について統計処理を行って閾値から外れた場合、閾値から外れた無人搬送車が異常であると判定する異常判定手段を更に備えたことを要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、情報取得手段により、無人搬送車を複数台または複数回、予め定められた走行路を走行させたときの少なくとも積載重量と無人搬送車の走行速度と走行加速度の情報が取得される。勾配推定手段により、情報取得手段により取得した情報に基づいて、走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配が推定される。平均化処理手段により、勾配推定手段により推定した各々の走行路の勾配の平均化処理が行われる。これにより、走行路の勾配を高精度に推定することができる。
【0010】
また、異常判定手段において、勾配推定手段により推定した各々の走行路の勾配について統計処理を行って閾値から外れた場合、閾値から外れた無人搬送車が異常であると判定される。よって、無人搬送車を複数台予め定められた走行路を走行させたときの無人搬送車の異常を判定することができる。
【0011】
請求項に記載の発明では、請求項1に記載の無人搬送車の搬送システムにおいて、前記予め定められた走行路における勾配を推定する評価対象区間は、予め定めた走行距離での勾配変動が予め定めた値以下の区間としたことを要旨とする。
【0012】
請求項に記載の発明によれば、予め定められた走行路における勾配を推定する評価対象区間は、予め定めた走行距離での勾配変動が予め定めた値以下の区間とすることにより、走行路の勾配をより高精度に推定することができる。
【0013】
請求項に記載の発明では、予め定められた走行路を、無人搬送車を複数台または複数回走行させる無人搬送車の搬送方法において、前記無人搬送車を複数台または複数回、前記予め定められた走行路を走行させたときの少なくとも積載重量と無人搬送車の走行速度と走行加速度の情報を取得して、走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配を推定するとともに、当該推定した各々の走行路の勾配の平均化処理を行い、無人搬送車を複数台予め定められた走行路を走行させたときの走行路の勾配について統計処理を行って閾値から外れた場合、閾値から外れた無人搬送車が異常であると判定することを要旨とする。
【0014】
請求項に記載の発明によれば、走行路の勾配を高精度に推定することができる
【0015】
また、無人搬送車を複数台予め定められた走行路を走行させたときの無人搬送車の異常を判定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、走行路の勾配を高精度に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は実施形態の無人搬送車の搬送システムが用いられるコンテナターミナルの概略平面図、(b)は走行路の標高の説明図。
図2】無人搬送車の搬送システムの構成図。
図3】無人搬送車の構成を示すブロック図。
図4】第1の実施形態の作用を説明するためのタイムチャート。
図5】第2の実施形態の作用を説明するためのタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
本実施形態では、無人搬送車の搬送システムは港湾のコンテナターミナルにおける無人搬送車の運行管理を行う場合に適用している。
【0019】
図1(a)は、港湾におけるコンテナターミナルの概略平面を示しており、コンテナターミナルにおいて、無人搬送車30が周回コース(図1中、白抜き矢印で示す反時計回りの周回コース)を走行する。無人搬送車30は、駆動に関しハイブリッドシステムを有している。コンテナ船S1からコンテナがガントリークレーン60で積み降ろされる。ガントリークレーン60で積み降ろされたコンテナが無人搬送車30に搭載される。
【0020】
コンテナターミナルには無人搬送車の走行路80,81,82,83,84が設定されている。走行路80,81,82,83を無人搬送車30がコンテナを積んで走行する。無人搬送車30は目的地となるラバータイヤクレーン70まで走行する。詳しくは、無人搬送車30は、走行路80→走行路81→走行路82→走行路83を通る。無人搬送車を走行させる際においては、直線はスピードを出すが、カーブは中程度の速度で通過する。また、走行路82の標高としては図1(b)に示すようになっており、走行路は傾斜している。
【0021】
図2に示すように、無人搬送車の搬送システム10の構成として、各種のコンピュータ20,31,50を備えている。運行系総括管理コンピュータ50は、ガントリークレーン60に指令を送り所望の動作(荷役作業)を行わせる。運行系総括管理コンピュータ50は、ラバータイヤクレーン70に指令を送り所望の動作(荷役作業)を行わせる。運行系総括管理コンピュータ50と運行管理コンピュータ20とは通信可能となっている。
【0022】
運行管理コンピュータ20は、無人搬送車30に搭載されたコンピュータ31と通信可能となっている。無人搬送車30のコンピュータ31は荷重センサによって無人搬送車30上の積載重量(コンテナ重量)を検知し、検知した積載重量を運行管理コンピュータ20に送るようになっている。この積載重量により無人搬送車30の最高加速と最高速度が決まる。また、運行管理コンピュータ20から無人搬送車30のコンピュータ31に走行指令が送られる。この走行指令を従って無人搬送車30のコンピュータ31は無人搬送車30を予め定められた走行路80〜84を速度、加速度等を制御しつつ複数回走行させる。
【0023】
次に、図3を用いて無人搬送車の構成について説明する。
無人搬送車30には原動機としてのエンジン32、走行モータ33、発電機35、発電インバータ36、蓄電装置37、走行インバータ38が搭載されている。そして、エンジン32と走行モータ33などによりシリーズハイブリッドシステムを構成している。つまり、エンジン32で発電機35を駆動して発電した電力が発電インバータ36を介して蓄電装置37に蓄えられる。なお、エンジン32は、ディーゼルエンジンを使用しているが、ガソリンエンジンであってもよい。発電機35による電力や蓄電装置37の電力は走行インバータ38を介して走行モータ33に供給されて、減速機(図示せず)を介して駆動輪が回転駆動される。詳しくは、走行に必要な電力が発電機35の電力だけでは不足するときには蓄電装置37の電力で補う。また、発電機35の電力が走行電力以上のときには蓄電装置37の充電に供される。また、無人搬送車30の減速時には、走行モータ33及び走行インバータ38から回生による電力が発生し、発生した電力は蓄電装置37に充電される。
【0024】
次に、無人搬送車の搬送システム10の作用、即ち、無人搬送車30に搭載されたコンピュータ31が実行する処理について説明する。
図4のタイムチャートを参照しつつ作用を説明する。図4において、上から、走行路の標高、無人搬送車の走行速度、走行電力、走行路の勾配について示している。
【0025】
作用説明にあたり、図1の地点Aから地点Bに走行する場合で説明する。港湾においては、路面での水はけ等を考慮して地面が傾斜しており、具体的には、海側に向かって勾配が設けられている。基本的には海側に水を流すべく海側の標高が低くなるように0.6%〜1.0%程度の勾配がつけられている。
【0026】
図4において標高で示すごとく地点Aをスタート点(Pa)とし、地点Bを終点(Pb)とする。地点Aから地点Bへの走行経路において、地点Aから上り坂となり、その上り坂はP2地点まで続く。P2地点からは下り坂となり、その下り坂はP3地点まで続く。P3地点から地点Bまでは上り坂となる。P3地点には排水溝が設けられており、P2地点から地点Bの間の水は排水溝から海に流される。ここで、地点AからP2地点までの上り勾配は一定(例えば+0.6%)である。また、P2地点からP3地点までの下り勾配は一定(例えば−0.3%)である。P3地点からは地点Bまでの上り勾配は一定(例えば+0.4%)である。
【0027】
図4において無人搬送車の走行速度については、地点Aから、P2地点の手前のP1地点までは一定の加速度により走行する。P1地点から、P3地点の後のP4地点までは定速で走行する。P4地点から、地点Bまでは一定のマイナスの加速度(減速度)により走行する。
【0028】
図4において1台の無人搬送車を用いたときの走行電力について、積載重量0トン(空車)のときのデータと、積載重量30トンのときのデータと、積載重量60トンのときのデータを示している。積載重量の違いにより走行電力に差が出ることが分かる。
【0029】
そして、無人搬送車30を複数回走行路を走行させたときの情報(少なくとも積載重量と無人搬送車の走行速度と走行加速度の情報)を取得する。そして、積載重量0トン(空車)で走行したとき情報と、積載重量30トンで走行したときの情報と、積載重量60トンで走行したときの情報に基づいて、走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配を推定するとともに各勾配の平均値を求める。つまり、少なくとも積載重量と無人搬送車の走行速度と走行加速度に基づいて、走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配を推定するとともに各々の走行路の勾配の平均化処理を行う。このように得た推定勾配(平均勾配値)は真の勾配値と近いものとなる。なお、図4では3つの線(3種類の積載重量)を用いているが線の数(積載重量の種類)が多いほど真値に近づく。
【0030】
走行路の勾配を求める方法について詳しく説明する。
駆動力は、空気抵抗と、転がり抵抗と、勾配抵抗と、加速抵抗により近似できる。
駆動力については、走行モータ電力をPow、モータ効率をηm、モータ回転数をωm、減速比をε、減速機効率をηgeer、タイヤ半径をrとしたとき、
{(Pow・ηm)/ωm}・ε・ηgeer÷r
となる。
【0031】
また、空気抵抗は、空気抵抗係数をCdとし、前面投影面積をA、無人搬送車の速度をvとしたとき、
(1/2)Cd・A・v^2
となる。つまり、空気抵抗は、車体表面の空気との摩擦により発生し、車速の2乗に比例して大きくなる。
【0032】
転がり抵抗は、無人搬送車の車両重量をWとし、タイヤ転がり抵抗係数をμとしたとき、
W・μ
となる。つまり、転がり抵抗は、車輪が転がる際の軸受け部の摩擦抵抗と、路面とタイヤ間のエネルギー損失により発生する。
【0033】
勾配抵抗は、無人搬送車の車両重量をWとし、路面勾配をθとしたとき、
W・sinθ
となる。つまり、勾配抵抗は登坂の際に発生する抵抗であり、無人搬送車の車両総重量と勾配(角度)に比例する。
【0034】
加速抵抗は、加速度をα、重力加速度をg、無人搬送車の車両重量をWとし、駆動機構の回転部分の慣性相当量をΔWとしたとき、
α/{g(W+ΔW)}
となる。つまり、加速抵抗は、加速を行う際に発生する抵抗であり、加速度(加速の速さ)、無人搬送車の車両重量に比例する。
【0035】
駆動力は、空気抵抗と転がり抵抗と勾配抵抗と加速抵抗の和となり、次のように表せる。
{(Pow・ηm)/ωm}・ε・ηgeer÷r
=(1/2)Cd・A・v^2+W・μ+W・sinθ+α/{g(W+ΔW)}
・・・(1)
式(1)において、θ値を未知数として他の値を既知の値として、路面勾配θを算出することができる。
【0036】
このようにして、無人搬送車は同じ場所を、積荷の重さ違いで何度も走行するため、その度ごとに路面勾配を推定し平均を取っていくことでより、正確な値を自動学習し、その結果を走行制御に用いる。
【0037】
具体的には、基本的な路面勾配の推定方法として、無人搬送車の車両重量が積み荷によって変化することを加えて推定する。勾配の推定方法について言及すると、図4中の地点Aから地点Bまでの間を走行している場合において、積載重量、速度、加速度、走行電力等から勾配を推定する。走行の度ごとに重量違い・走行パターン違いで推定を行い、更新を行っていく。よって、1台の無人搬送車を用いて積載重量が異なるときに各々勾配を推定(算出)してその平均化による正確な路面勾配を取得できる。
【0038】
また、坂道があるときに無人搬送車が走ると無人搬送車がエラーを起こす(坂道を登れない等)ので事前に勾配を測定しておき走行に反映させるべく車速パターンを調整する必要があった。本実施形態では最初何回か無人搬送車を走行させて学習することにより(自動学習によって)、事前の人による計測が不要となる。
【0039】
また、勾配マップを用いたハイブリッド車の走行制御の最適化による燃費改善が図られる(勾配推定を燃費改善に反映することができる)。また、勾配マップを用いたハイブリッド車の走行制御の最適化によるバッテリ保護・バッテリ寿命延長が図られる(勾配推定をバッテリ保護等に反映することができる)。
【0040】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)無人搬送車の搬送システムの構成として、情報取得手段、勾配推定手段、平均化処理手段としてのコンピュータ31を備えた。コンピュータ31は、無人搬送車を複数回、予め定められた走行路を走行させたときの少なくとも積載重量と無人搬送車の走行速度と走行加速度の情報を取得し、取得した情報に基づいて、走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配を推定し、推定した各々の走行路の勾配の平均化処理を行う。よって、コースを複数回走行する間に、路面勾配を自ら学習していくことができる。その結果、走行路の勾配を高精度に推定することができる。
【0041】
(2)無人搬送車の搬送方法として、無人搬送車を複数回、予め定められた走行路を走行させたときの少なくとも積載重量と無人搬送車の走行速度と走行加速度の情報を取得して、走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配を推定するとともに、当該推定した各々の走行路の勾配の平均化処理を行う。よって、コースを複数回走行する間に、路面勾配を自ら学習していくことができる。その結果、走行路の勾配を高精度に推定することができる。
【0042】
本実施形態の変形例を説明する。
無人搬送車を複数回、予め定められた走行路を走行させたときの勾配を推定したが、これに代わり、情報取得手段、勾配推定手段、平均化処理手段として運行管理コンピュータ20を用いて無人搬送車を複数台、予め定められた走行路を走行させたときの勾配を推定するようにしてもよい。詳しくは、無人搬送車を複数台予め定められた走行路を走行させたときの少なくとも積載重量と無人搬送車の走行速度と走行加速度の情報を取得して、取得した情報に基づいて、走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配を推定し、推定した各々の走行路の勾配の平均化処理を行う。この場合、複数の無人搬送車における推定結果をコンピュータ31に対し上位システムである運行管理コンピュータ20で平均化して勾配を推定するので、無人搬送車ごとの性能差を相殺した勾配推定が可能となる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0043】
第1の実施形態においては、推定した結果はその無人搬送車を用いたときの推定勾配にとどまり、無人搬送車の部品が経年劣化等で性能低下した場合に、例えば、走行モータ性能低下、減速機の効率低下、タイヤの転がり抵抗増加など、勾配の推定がずれてきている可能性がある。
【0044】
そこで、本実施形態においては、複数台のうち1台だけデータが外れているか否かといった部品の劣化をモニタリングしている。無人搬送車は同じ経路を同等の無人搬送車が走行しているので、各無人搬送車が採集している勾配データ(路面勾配マップデータ)を上位システムである運行管理コンピュータ20で収集し、比較を行い、他の無人搬送車に比べて差異が大きいもの、即ち、許容範囲から外れたものを異常値と判断し、無人搬送車の検査を促す。詳しくは、各無人搬送車における自車での推定勾配の平均値(図5における推定平均(1),(2),(3))を比較している。
【0045】
図5を用いて具体的に説明する。データの収集は運行管理コンピュータ20が行い、当該運行管理コンピュータ20が以下の処理を行う。
予め定められた走行路における勾配を推定する評価対象区間Z1,Z2,Z3は、予め定めた走行距離での勾配変動が予め定めた値以下の区間であり、具体的には、一定距離での勾配変動が10%以内の区間である。この評価対象区間Z1,Z2,Z3において、全無人搬送車における推定勾配をサンプリングする。また、評価対象外領域A1,A2が設定されており、評価対象外領域A1,A2では変動が大きいので評価対象外としている。具体的には、坂道の勾配が変わる箇所である。他にも、データ検出がしづらい所を評価対象外とする。即ち、安定している所のデータを採るようにする。
【0046】
そして、平均値μと標準偏差σに対してμ±3σに入らないサンプル(無人搬送車)が存在するか否か判定する。図5の場合には推定平均(3)が外れている。μ±3σから外れると、当該無人搬送車における走行モータの性能が低下したり減速機の効率が低下したりタイヤの転がり抵抗が増加している等の異常が発生していることがわかる。例えば、港湾での設計勾配(排水などで設定した勾配)に対し50%以上外れた状況、即ち、設計勾配が1%であるが1.5%以上となる状況においては、このような統計処理を行った結果、閾値から外れてしまうので無人搬送車が異常であると判定される。
【0047】
このようにして、無人搬送車の性能の低下の早期発見が可能となる。即ち、作業中の異常停止の頻度を下げて、作業効率が向上する。
上記実施形態によれば、上記(1),(2)に加えて以下のような効果を得ることができる。
【0048】
(3)勾配推定手段は、取得した情報に基づいて、無人搬送車を複数台予め定められた走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配を推定し、無人搬送車の搬送システムの構成として、異常判定手段としての運行管理コンピュータ20を更に備えた。運行管理コンピュータ20は推定した各々の走行路の勾配について統計処理を行って閾値から外れた場合、閾値から外れた無人搬送車が異常であると判定する。よって、無人搬送車を複数台予め定められた走行路を走行させたときの無人搬送車の異常を判定することができる。
【0049】
(4)無人搬送車の搬送システムの構成として、予め定められた走行路における勾配を推定する評価対象区間Z1,Z2,Z3は、予め定めた走行距離での勾配変動が予め定めた値以下の区間とした。よって、走行路の勾配をより高精度に推定することができる。
【0050】
(5)無人搬送車の搬送方法として、無人搬送車を複数台予め定められた走行路を走行させたときの各々の走行路の勾配について統計処理を行って閾値から外れた場合、閾値から外れた無人搬送車が異常であると判定する。よって、無人搬送車を複数台予め定められた走行路を走行させたときの無人搬送車の異常を検出することができる。
【0051】
本実施形態の変形例を説明する。
複数台のうちの1台だけデータが閾値から外れた場合に当該無人搬送車が異常であると判定するのではなく、1台の無人搬送車において日によってデータが閾値から外れると当該無人搬送車が異常になったと判定するようにしてもよい。即ち、1台の無人搬送車における検出結果について経時的に大きく勾配測定結果が変化したとき異常と判定する。
【0052】
このようにして単一の無人搬送車において、例えば新車時期とその後を比較して無人搬送車の異常を検出することによって、上位システムである運行管理コンピュータ20を使わずに、自車両のコンピュータ31だけで判定できる(自己完結できる)。
【0053】
・実施形態では、無人搬送車の異常の判定のための統計処理として標準偏差σを用いての処理を例示したが、統計学に基づく異常の判定の統計処理であれば特に限定はされない。
【符号の説明】
【0054】
20…運行管理コンピュータ、30…無人搬送車、31…コンピュータ、80…走行路、81…走行路、82…走行路、83…走行路、84…走行路。
図1
図2
図3
図4
図5