特許第5958372号(P5958372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958372
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】雌端子金具
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
   H01R13/11 302A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-18768(P2013-18768)
(22)【出願日】2013年2月1日
(65)【公開番号】特開2014-149999(P2014-149999A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅和
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−346957(JP,A)
【文献】 特開2002−208450(JP,A)
【文献】 実開平01−158671(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/10 − 13/14
H01R 13/42 − 13/436
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄端子金具が進入可能な角筒部の内部に撓み可能に設けられかつ前記雄端子金具と接続可能な舌片を有する雌端子金具であって、
前記角筒部を構成し前記舌片の撓み方向に対向する部位に開口部が形成されてこの開口部を通して前記舌片の少なくとも一部を外部に露出させる外壁と、
前記開口部の開口縁部に形成され前記雌端子金具がコネクタハウジング内に挿入されたときに前記コネクタハウジング内に形成された抜け止め用のランスと係止するランス受け部と、
前記角筒部において前記舌片の撓み方向外方に配され、その外面側は前記ランスに当接可能とされて前記ランスと前記舌片との干渉を回避可能であるとともに、その内面側は前記舌片と当接可能とされて前記舌片の過度撓みを規制可能な規制部とを備え、
前記角筒部は、導電性の金属板にて形成される一方
前記規制部は、前記角筒部を構成する両側壁間に架け渡された状態で前記両側壁に連結されていることを特徴とする雌端子金具。
【請求項2】
前記角筒部は、底壁と、この底壁の両側縁から立ち上がる一対の側壁と、両側壁のうちの一方の側壁の立上がり端縁から他方の側壁に向けて延出する外壁とからなり、
前記規制部は、その一端部が前記一方の側壁に接続されて全体が片持ち状に形成され、他端部にはフック状の係止部が形成されており、前記他方の側壁には前記係止部を前記他方の側壁の板厚方向から嵌め入れ可能でありこの嵌め入れ状態で前記他方の側壁の板面方向に沿う方向で係止する係止受け部が開口して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の雌端子金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は雌端子金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、雌端子金具には雄端子金具のタブ部を受け入れる角筒部が形成され、その内部にはタブ部との接触をとるための撓み可能な舌片が形成されている。また、舌片が弾性限界を超えて撓み変形する事態は回避されねばならないため、角筒部内には舌片の過度撓みを規制する手段を設定するのが通常である。そのような一例として下記特許文献1を挙げることができる。
【0003】
このものは、角筒部の下面に開口を設けてこの開口にランスを進入させて係止できるようにしている。また、上記の開口縁には過度撓み規制片が舌片へ向けて起立して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−237014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の構成では開口内にランスを進入させるものであり、また進入深さについては、これを規制する配慮はない。したがって、必要以上に深くランスが入り込む状況があると、ランスと舌片とが干渉する虞があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、舌片の過度撓み規制とランスの進入規制の両機能を併せ持つ雌端子金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の雌端子金具は、雄端子金具が進入可能な角筒部の内部に撓み可能に設けられかつ前記雄端子金具と接続可能な舌片を有する雌端子金具であって、
角筒部を構成し舌片の撓み方向に対向する部位に開口部が形成されてこの開口部を通して舌片の少なくとも一部を外部に露出させる外壁と、
開口部の開口縁部に形成され雌端子金具がコネクタハウジング内に挿入されたときにコネクタハウジング内に形成された抜け止め用のランスと係止するランス受け部と、
角筒部において舌片の撓み方向外方に配され、その外面側はランスに当接可能とされてランスと舌片との干渉を回避可能であるとともに、その内面側は舌片と当接可能とされて舌片の過度撓みを規制可能な規制部とを備え、
角筒部は、導電性の金属板にて形成される一方
規制部は、角筒部を構成する両側壁間に架け渡された状態で両側壁に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、舌片の少なくとも一部が角筒部の外壁に設けられた開口部を通して露出する形式の雌端子金具において、角筒部に形成された規制部が舌片の過度撓みを規制する機能に加え、ランスと舌片との干渉を回避する機能を併せ持つことができる。また、規制部が両機能を併有することから、両機能を別個に担わせる構成よりも雌端子金具の構成を簡素化することができる効果も得られる。
また、規制部が角筒部を構成する両側壁間に架け渡し状態で連結されているため、規制部は角筒部に対する開き規制の機能も発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】雌端子金具の平面図
図2】同じく展開図
図3】同じく右側面図
図4】同じく左側面図
図5】同じく正面図
図6図5のA−A線断面図
図7】雌端子金具がコネクタハウジング内に挿入された状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
本発明の雌端子金具は、前記角筒部は、底壁と、この底壁の両側縁から立ち上がる一対の側壁と、両側壁のうちの一方の側壁の立上がり端縁から他方の側壁に向けて延出する外壁とからなり、
前記規制部は、その一端部が前記一方の側壁に接続されて全体が片持ち状に形成され、他端部にはフック状の係止部が形成されており、前記他方の側壁には前記係止部を前記他方の側壁の板厚方向から嵌め入れ可能でありこの嵌め入れ状態で前記他方の側壁の板面方向に沿う方向で係止する係止受け部が開口して形成されている構成としてもよい。
このような構成によれば、規制部は雌端子金具において一体に形成され、また角筒部を折り曲げて構成する過程で係止部と係止受け部とを係止させることができるため、規制部の係止作業を円滑に行うことができる。
【0011】
<実施例>
次に、本発明の雌端子金具を具体化した実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
まず、図7によって本実施例の雌端子金具Fが挿入されるコネクタハウジング1について説明する。コネクタハウジング1は雌端子金具Fを収容するキャビティ2が複数、形成されている。各キャビティ2は前後方向に貫通して形成されている。コネクタハウジング1の長さ方向の中央部にはリテーナ挿通孔3がキャビティ2の延び方向とは直交する方向に開口して形成され、各キャビティ2と連通している。また、各キャビティ2の底面の前部には雌端子金具Fを抜け止めするためのランス25が撓み可能に形成されている。各ランス25は前方へ向けて片持ち状に延出しており、その先端部には抜け止め突部26が突出している。抜け止め突部26における雌端子金具Fとの対向面は平坦面に形成され、またその前端面は逆テーパ状に形成されている。
【0013】
リテーナ挿通孔3にはリテーナ4が装着される。リテーナ4は雌端子金具Fに係止してランス25と共に雌端子金具Fを二重に抜け止めする。リテーナ4はコネクタハウジング1に対し仮係止位置と本係止位置との間を移動可能である。仮係止位置はキャビティ2に対し雌端子金具Fが抜き差し可能となる位置であり、本係止位置は雌端子金具Fに係止して抜け止めを行う位置である。図7はリテーナ4が本係止位置にある状態を示している。
【0014】
本実施例の雌端子金具Fは、導電性の金属板を折り曲げ加工して形成したものである。雌端子金具Fは、前部に雄端子金具Mとの接続を行うための角筒部5が配され、その後方には電線Wの芯線とのかしめ接続を行うためのワイヤバレル6が配され、さらにその後方には電線Wの被覆とのかしめ接続を行うためのインシュレーションバレル7が配された構成となっている。
【0015】
角筒部5は、底壁8と、底壁8の幅方向両側縁から起立する一対の側壁(第1、第2の側壁9,10)と、他方の側壁(第1側壁9)に接続されて雄端子金具Mと接触可能な舌片11と、一方の側壁(第2側壁10)の立ち上がり端縁から折曲げられ第1側壁9に向けて延出する外壁12とからなっている。
【0016】
底壁8は、図3,4に示すように、角筒部5の前端からワイヤバレル6の終端に至るまでの範囲はほぼ同一高さの平坦面に形成され、そこから傾斜面13を介してインシュレーションバレル7の部位が一段低くなるように形成されている。また、図5に示すように、底壁8の前端部寄りで幅方向に関して第1側壁9寄りの部位にはスタビライザ14が突出形成されている。このスタビライザ14は、雌端子金具Fがコネクタハウジング1のキャビティ2へ正規の姿勢で挿入されたときには、キャビティ2の前後方向に沿って形成された案内溝(図示しない)へ嵌まり込むことができるが、上下反転した姿勢で挿入されるときにはキャビティ2の入口部分に干渉して雌端子金具Fの挿入を不能にして逆挿入を回避する役割を果たす。
【0017】
さらに、図5及び図6に示すように、底壁8における長さ方向の中央部でかつ幅方向の中央部には固定接点部15が角筒部5の内方へ向けて台状に膨出している。
【0018】
図2に示すように、第1側壁9の立ち上がり端縁の前端部には、舌片11が接続されている。舌片11は前後方向に沿って延びる片持ち状に形成されていて、先端部(後端)はやや幅狭となるように形成されている。舌片11は、第1側壁9との接続部位を折り曲げ縁として第1側壁9から略直角に折り曲げて形成されて、これによって舌片11は底壁8の内面と対向する。舌片11の前端部で第1側壁9とは反対側の側縁には外方へ向けて支持片16が張出し形成されている。角筒部5が構成される過程で、この支持片16は第2側壁10の対応位置に開口する窓孔18に入り込んで係止する。
【0019】
第1側壁9から折り曲げられる舌片11は、図6に示すように、舌片11における基端部側(前部側)はほぼ水平面をなし、その上から重ねられる外壁12の内面にほぼ密着するが、外壁12の前部領域12Aの後端縁よりやや前方の部位から固定接点部15へ向けて徐々に傾斜し、固定接点部15の前後方向中央部を頂点とした以降は、逆勾配の傾斜となって外壁12側に接近するようにしてある。このことにより、舌片11は全体としては長手方向中央部に頂点を有する形態をなし、図6に示す上下方向へ撓み変形可能である。また、舌片11の頂点部には可動接点部19が形成されている。雄端子金具Mのタブ部17が角筒部5内に進入すると、舌片11は外壁12側へ向けて撓み変形し、可動接点部19と固定接点部15との間で弾性力をもってタブ部17を挟み付ける(図7参照)。
【0020】
第1側壁9の立ち上がり端縁の高さ位置は、図3に示すように、舌片11との接続部位と後端部とが共に高くなっており、相対的にこれらの間の部位は一段低く形成されている。そして、第1側壁9の立ち上がり端縁のうちこの一段低く形成された部位には前側連結受け部20、後側連結受け部21、及びこれら前後の両連結受け部20,21の間に配された係止受け部22が前後に並んで配されている(図2参照)。これら受け部20〜22はいずれも第1側壁9の立ち上がり端縁側へ開放して形成されている。また、前側連結受け部20と後側連結受け部21は、図2図3に示すように前方へ傾斜するような形態をもって開口している。しかし、角筒部5の前後方向中央部に配された係止受け部22は、前側連結受け部20に近い位置に配置であることから、前側連結受け部20から遠ざかるよう、後方へ傾斜するような形態をもって形成されている。また、図2に示すように、第1側壁9の立ち上がり端縁であって後端部には後側連結受け部21に連続するようにして受け片23が幅方向外方(第1側壁9の立ち上がり方向上方)へ向けて張り出し形成されている。
【0021】
図2に示すように、外壁12は前後に分離した状態で第2側壁10の立ち上がり端縁に接続されている。外壁12の前部領域12Aは第2側壁10の前端から角筒部5の前後方向の中央部に至るまでの長さ範囲に亘って設けられ、その全範囲に亘って第2側壁10と接続されている。前部領域12Aはこの接続部位を折り曲げ縁として第1側壁9へ向けて略直角に折り曲げられる。また、図2に示すように、前部領域12Aの幅方向の側縁であって、その後端部には前側連結部24が幅方向外方へ張り出し形成されている。この前側連結部24は前側連結受け部20に適合可能な形状に形成されている。そして、前側連結部24は外壁12の幅方向の延出端縁から略直角に折り曲げられて、角筒部5が構成される過程で前側連結受け部20に対し板厚方向から嵌まり込むことができるようにしてある。これらが嵌まり合った状態では、前側連結部24の先端に形成されたフック部24Aが板面に沿う方向(図3では上方)への引っ掛かりとなって前部領域12A(角筒部5)の開き止めとして機能するようになっている。
【0022】
さらに、図1図3図4に示すように、前部領域12Aの後端縁(開口部30の開口縁でもある)であって幅方向の中央部にはランス25と係止するための前側係止突部27が形成されている。この前側係止突部27は外方への叩き出しによって形成され、叩き出された部分の後縁はほぼ鉛直面をなすようにしてある。
【0023】
なお、角筒部5を構成する過程で、前部領域12Aが第2側壁10から折り曲げられると、その幅方向への延出端縁(前側連結部24の折り曲げ部位を含む)は第1側壁9の立ち上がり端縁にまで至る。これにより、前部領域12Aの延出端縁は第1側壁9の立ち上がり端縁によって支持されるから、前部領域12Aの上面に作用する押し下げ力に抗することができる。
【0024】
外壁12の後部領域12Bは、第2側壁10の立ち上がり端縁に対し部分的(後端部よりの部分)に接続されている。角筒部5を構成する際には、この接続部位を折り曲げ縁として第1側壁9へ向けて略直角に折り曲げられる。後部領域12Bは第2側壁10との接続部位から前方へ向けて片持ち状に延出している。また、後部領域12Bは前部領域12Aよりもやや幅狭に形成されるが、前部領域12Aよりもやや長めに形成されている。
【0025】
図2に示すように、後部領域12Bの幅方向への延出端縁であって後端部には保持片28が幅方向外方へ張り出し形成されている。角筒部5を構成する過程で、後部領域12Bが第1側壁9へ向けて折り曲げられると、保持片28の先端は図1図3に示すように、受け片23の立ち上がり端縁上に当接状態で支持される。また、後部領域12Bの後端縁であって幅方向の中央部には前側係止突部27(ランス受け部)と同様にして後側係止突部29が設けられており、かつこれら両係止突部27,29は前後方向に関して同軸上に配されている。後側係止突部29はコネクタハウジング1に装着されるリテーナ4と係止可能であり、ランス25とともに雌端子金具Fを二重に係止する役割を果たす。
【0026】
後側連結部32は外壁12における幅方向外側の端縁の後端部寄りの部位に連結され、保持28片との間には微小幅の切り込みが入れられている。そして、角筒部5を構成する過程で、後部領域12Bが第1側壁9に向けて折り曲げられ、さらに後側連結部32が直角に折り曲げられると、前側連結部24と同じ要領で後側連結受け部21に嵌まり込む。そして、後側連結部32の先端部に形成されたフック部32Aが後側連結受け部21に板面に沿う方向(図3では上方)での引っ掛かりとなって、後部領域12B(角筒部5)の開き止めとして機能するようになっている。
【0027】
後部領域12Bは、図6に示すように、前方へ向けて下り勾配となる片持ち状に形成された補助ばね部12Cとなっており、図示上下方向への撓み可能である。つまり、補助ばね部12Cは図1に示すように、第、1・第2の両側壁9,10間に位置しつつ角筒部5内に進入し、その先端は舌片11の可動接点部19の裏側でかつ舌片11の撓み領域内に位置している。そして、角筒部5内に雄端子金具Mのタブ部17が進入して舌片11が撓み変形すると、舌片11は補助ばね部12Cの先端に当接して補助ばね部12Cと共に撓み変形する。このことにより、雄端子金具Mのタブ部17は舌片11の弾性反力に加えて補助ばね部12Cの反力を付加して、タブ部17に対する接触圧力を増強することができる。
【0028】
なお、補助ばね部12Cの幅寸法は舌片11とほぼ同程度に設定されている。したがって、図1に示すように、補助ばね部12Cが形成されている範囲では舌片11は補助ばね部12Cによって覆い隠されている。
【0029】
前述したように、前部領域12Aと後部領域12B(補助ばね部12C)とは離間しているため、前後の領域12A,12Bが第1側壁9に向けて折り曲げられて角筒部5が構成された状態では、外壁12の長さ方向中央部には開口部30が形成されることになる(図1図6参照)。第2側壁10の立ち上がり端縁には、外壁12の前部領域12Aと後部領域12Bとの間、つまり角筒部5の開口部30を横切るようにして規制部31が配されている。規制部31の付け根部分には規制部31を挟んで前後に切り込みが入れられていて、規制部31が第2側壁10の立ち上がり端縁(一段低く形成されている部分の端縁)とほぼ面一の状態で第1側壁9へ向けて折り曲げられるようにしてある。規制部31の延出端縁にはフック状に形成された係止部31Aが形成されている。この係止部31Aは係止受け部22に適合可能な形状に形成されている。係止部31Aは、規制部31の延出端部から略直角に折り曲げられ、規制部31が第1・第2の両側壁9,10間に架け渡されるように折り曲げられる際に、係止受け部22に対し板厚方向から嵌まり込み、係止受け部22に対し板面に沿う方向(図3では上方)での引っ掛かりとなり、これによって規制部31の開き止めとして機能するようになっている。
【0030】
この状態で、規制部31の外面は水平面をなしてランス25の先端部の対向面と面当たり状態で当接可能である。舌片11は、角筒部5の開口部30においてその一部が露出されるところとなるが、ランス25が前側係止突部27に係止するときにはランス25は規制部31に当接することで、これ以上深くには開口部30内へ進入することができないため、ランス25が舌片11と干渉する事態は未然に回避される。
【0031】
より詳細には、規制部31が配される高さ位置は図6に示すように、補助ばね部12Cの先端の高さ位置よりも高い位置、つまり外方に位置するようになっている。また、規制部31は舌片11に対しては可動接点部19よりもやや前方に位置し、自然状態にあるときの舌片11に対して撓み方向に離間している。また、雄端子金具Mのタブ部17が角筒部5内に正規深さまで進入した状態であっても、規制部31は舌片11との間に僅かな隙間が保有されて舌片11のばね性が損なわれないようになっている。但し、舌片11が弾性限度の僅か手前まで撓み変形したときには規制部31と舌片11とは当接状態となり、舌片11がこれ以上の角度で撓み変形するのを規制する。
【0032】
次に、上記のように構成された本実施例の作用効果を具体的に説明する。雌端子金具Fをコネクタハウジング1のキャビティ2に挿入するに先立ち、リテーナ4を仮係止位置に保持しておく。その状態で、雌端子金具Fをキャビティ2に対して後方から挿入する。雌端子金具Fはスタビライザ14による挿入動作の案内作用を受けつつキャビティ2の底面に沿って前進する。そして、仮係止位置にあるリテーナ4を通過し角筒部5の先端がランス25に至ると、ランス25は、角筒部5の外壁12面の前端部と当接し、その後には前側係止突部27との摺接により押し下げ方向へ弾性変形する(図7参照)。前側係止突部27がランス25を通過するとランス25は弾性復帰し、その結果、抜け止め突部26が前側係止突部27に係止する。これと同時に、ランス25の抜け止め突部26が規制部31に当接する。このため、ランス25の抜け止め突部26がこれ以上深くには開口部30内に進入することができないから、ランス25が舌片11に干渉してしまう事態は確実に回避される。
【0033】
こうして雌端子金具Fに対するランス25の係止がなされれば、次にリテーナ4を本係止位置に移動させる。これにより、リテーナ4は各雌端子金具Fの後側係止突部29に係止可能な状態となるため、雌端子金具Fはランス25とリテーナ4とによって二重に抜け止めされる。
【0034】
以上のようにして雌端子金具Fの挿入作業が完了すれば、雌雄のコネクタハウジング同士の嵌合作業を行うことができる。この嵌合作業の際には、雄端子金具Mのタブ部17が雌端子金具Fの角筒部5内に進入する。この間、タブ部17は舌片11に摺接するため、舌片11は押し下げ方向に撓み変形する。すると、舌片11が補助ばね部12Cに当接するため、補助ばね部12Cも連動して撓み変形する。そして、雌雄のコネクタハウジングが正規の嵌合状態になると、タブ部17は舌片11の可動接点部19と固定接点部15との間で弾性的に挟まれる。これによって、タブ部17に対する接圧は舌片11の弾性反力に加えて補助ばね部12Cの弾性反力も付加されるため、良好な電気的導通状況が得られる。
【0035】
なお、雌雄の端子金具F,Mが正規に接続されたときには、前述したように、舌片11と規制部31とは非接触の状態となっていて、舌片11のばね性は損なわれていない。
【0036】
ところで、本実施例の雌端子金具Fによれば、次のような作用効果がある。例えば雌端子金具Fが単体の状態にあるときに、ドライバー等の先端で舌片11が触られることがあると、舌片11が大きく撓もうとする。そのような場合に、舌片11は規制部31に当接して押し下げ方向の力を受けるが、規制部31の先端に形成された係止部31Aが係止受け部22の開口縁に引っ掛かって係止が外れることはないため、舌片11は規制部31による撓み規制を受けて弾性限度を超えて過度に撓み変形する事態が確実に防止できる。
【0037】
以上のように、本実施例の雌端子金具Fは、規制部31がランス25が開口部30への進入規制と舌片11の過度撓み規制の両機能を併せ持つため、両機能を個別手段によって担わせる構成に比べて雌端子金具Fの構成を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…コネクタハウジング
5…角筒部
11…舌片
12…外壁
22…係止受け部
25…ランス
27…前側係止突部(ランス受け部)
30…開口部
31…規制部
31A…係止部
F…雌端子金具
M…雄端子金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7