(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に搭載されるスライドシートまたは車体のフロアに固定され、スライドシートのスライド動作に追従するワイヤハーネスを保護材で外装した状態でターンさせて収容する余長収容ケースを備え、
前記余長収容ケースの前記ワイヤハーネスをスライドシート内またはフロア内に引き出す出口部の端縁に、前記ワイヤハーネスの保護材の端部に固定した取付部材を凹凸嵌合で取り付けており、
前記取付部材は、長さ方向の一端側で連結した上片と下片とで前記余長収容ケースの出口部の端縁を挟持する構造とし、前記上片には前記下片より長く突出させる突出部を設けて該突出部の上面に断面矩形状の前記保護材の端部を載置してテープ巻き固定すると共に、前記下片の上面には前記出口部の端縁に設けた被係止穴に嵌合する係止凸部を設けていることを特徴とする余長収容ケースへのワイヤハーネスの保護材の固定構造。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートには電動リクライニング装置やシートヒータなど種々の電装品が装備されており、これらの電装品に給電するために、車体フロアからシートに給電用のワイヤハーネスが配索されている。スライドシートの場合には、ワイヤハーネスをシートのスライド動作に追従させる必要があり、そのためワイヤハーネスに余長部を持たせて配索している。自動車のスライドシートのスライド寸法は通常最大240mm〜300mm程度である。また、近時、座席前方または座席後方に大きな空間をあけることができるように、スライド寸法を最大400mm〜1200mm程度としたロングスライドシートも提供されている。
【0003】
この種の車体フロアとスライドシートとの間に配索するハーネス配索装置として、特開2010−193599号公報(特許文献1)には
図13〜
図15に示す装置が提案されている。該装置では、スライドシート100用のシートレール101の側方に隣接してワイヤハーネス110を挿通するハーネスレール102がフロアに敷設されると共に、該ハーネスレール102の側方に隣接してワイヤハーネスの余長収容ケース103が設置されている。スライドシート100に配線されるワイヤハーネス110は、スライドシート100と連動してハーネスレール102を摺動するスライダ104内に通され、コルゲートチューブからなる保護材111で外装された状態でハーネスレール102に挿通される。さらに、前記保護材111で外装されたワイヤハーネス110はハーネスレール102と連続する余長収容ケース103の入口部103aから余長収容ケース103内に引き込まれて余長部が該余長収容ケース103内に収容されると共に、出口部103bからワイヤハーネス110がフロア内に引き出されてフロアハーネス(図示せず)と接続される。
図14(A)のようにスライダ104がハーネスレール102の前端側(A側)に位置しているときには、ワイヤハーネス110の余長部がU字状に折り返された状態で余長収容ケース103内に収容され、
図14(B)のようにスライダ104がスライドシート100に連動して後端側(B側)に移動するにつれて余長収容ケース103内に収容されていたワイヤハーネス110の余長部が入口部103aからハーネスレール102に引き出されてU字状の屈曲部Cが余長収容ケース103のB側からA側へと移動する。
【0004】
余長収容ケース103内に収容されるワイヤハーネス110に外装する保護材の端部111aは、ワイヤハーネス110が余長収容ケース103からフロア内に引き出される出口部103b付近に固定される。従来では、例えば
図16に示すように、余長収容ケース103の出口部103bの端縁にテープ巻き舌片103cを突設し、該テープ巻き舌片103cに前記保護材111の端部111aをテープ(T)巻き固定する等の方法が採られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、余長収容ケースによっては出口部付近のスペースが狭く、出口部の端縁にテープ巻き舌片を突設して保護材の端部をテープ巻き固定することができなかったり、たとえ可能であってもテープ巻きしにくく作業性が悪化したりするおそれがある。
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、スライドシートのスライド動作に追従するワイヤハーネスを保護材で外装した状態でターンさせて収容する余長収容ケースの出口部の端縁に、該ワイヤハーネスの保護材の端部を容易にかつ省スペースで固定できることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、
第1の発明として、車両に搭載されるスライドシートまたは車体のフロアに固定され、スライドシートのスライド動作に追従するワイヤハーネスを保護材で外装した状態でターンさせて収容する余長収容ケースを備え、
前記余長収容ケースの前記ワイヤハーネスをスライドシート内またはフロア内に引き出す出口部の端縁に、前記ワイヤハーネスの保護材の端部に固定した取付部材を凹凸嵌合で取り付けて
おり、
前記取付部材は、長さ方向の一端側で連結した上片と下片とで前記余長収容ケースの出口部の端縁を挟持する構造とし、前記上片には前記下片より長く突出させる突出部を設けて該突出部の上面に断面矩形状の前記保護材の端部を載置してテープ巻き固定すると共に、前記下片の上面には前記出口部の端縁に設けた被係止穴に嵌合する係止凸部を設けていることを特徴とする余長収容ケースへのワイヤハーネスの保護材の固定構造を提供している。
また、第2の発明として、車両に搭載されるスライドシートまたは車体のフロアに固定され、スライドシートのスライド動作に追従するワイヤハーネスを保護材で外装した状態でターンさせて収容する余長収容ケースを備え、
前記余長収容ケースの前記ワイヤハーネスをスライドシート内またはフロア内に引き出す出口部の端縁に、前記ワイヤハーネスの保護材の端部に固定した取付部材を凹凸嵌合で取り付けており、
断面矩形状の前記保護材の一側面を該保護材の端部の開口端より長さ方向に延在させて突出片とする一方、前記取付部材には、前記保護材の端部を長さ方向の一端側から内嵌する断面矩形状の筒状部を設けていると共に、前記保護材の突出片を重ねてテープ巻き固定するテープ巻き舌片を前記筒状部の長さ方向の他端側の端面より突設し、かつ、前記筒状部の対向する側壁の外面に凹部を設けて、前記出口部の端縁を挟む両側壁の内面に設けた凸部を前記凹部に嵌合させる構造としていることを特徴とする余長収容ケースへのワイヤハーネスの保護材の固定構造を提供している。
【0009】
前記のように、
第1、第2の本発明では、余長収容ケースの出口部の端縁に、ワイヤハーネスの保護材の端部を固定した取付部材を凹凸嵌合で取り付ける構成としている。よって、取付部材にワイヤハーネスの保護材の端部を予め固定しておけば、該取付部材を余長収容ケースの出口部の端縁に凹凸嵌合させるだけで、前記出口部の端縁と保護材の端部との固定が完了するため、余長収容ケースの出口部付近での固定作業が容易になりかつ省スペースで固定できる。本発明は、特に、余長収容ケースの出口部が閉鎖された周壁で囲まれた穴状とされ、該出口部付近でテープ巻き等の固定作業を行うスペースが確保しにくい場合に有効である。
【0010】
第1の発明では、前記取付部材は、長さ方向の一端側で連結した上片と下片とで前記余長収容ケースの出口部の端縁を挟持する構造とし、前記上片には前記下片より長く突出させる突出部を設けて該突出部の上面に断面矩形状の前記保護材の端部を載置してテープ巻き固定すると共に、前記下片の上面には前記出口部の端縁に設けた被係止穴に嵌合する係止凸部を設けている。
【0011】
前記取付部材によれば、上片の突出部に保護材の端部を容易にテープ巻き固定できると共に、該取付部材の上片と下片とで余長収容ケースの出口部の端縁を挟持させ、下片の係止凸部を該端縁の下面に沿わせながらスライドさせるだけで、該端縁に設けた被係止穴に係止凸部を容易に嵌合させることができる。なお、出口部の端縁のうち、下片の係止凸部をスライドさせる被係止穴より手前側の端縁を他の部分より薄肉として下面側にガイド溝を形成し、係止凸部を被係止穴に嵌合しやすくしていることが好ましい。
【0012】
また、前記上片の上面に、テープ巻き固定する前記保護材の端部の先端面と当接させる位置決めリブを突設していることが好ましい。前記位置決めリブにより取付部材に固定する保護材の端部の位置合わせを容易に行うことができる。
【0013】
第2の発明では、前記取付部材を
前記した構造として
いる。すなわち、断面矩形状の前記保護材の一側面を該保護材の端部の開口端より長さ方向に延在させて突出片とする一方、前記取付部材には、前記保護材の端部を長さ方向の一端側から内嵌する断面矩形状の筒状部を設けていると共に、前記保護材の突出片を重ねてテープ巻き固定するテープ巻き舌片を前記筒状部の長さ方向の他端側の端面より突設し、かつ、前記筒状部の対向する側壁の外面に凹部を設けて、前記出口部の端縁を挟む両側壁の内面に設けた凸部を前記凹部に嵌合させる構造として
いる。
【0014】
前記のように、保護材の端部を取付部材の筒状部の一端側から内嵌すると共に、該保護材の端部の突出片を前記筒状部の他端側より突設したテープ巻き舌片に重ねてテープ巻きすることで、保護材の端部を取付部材に強固に固定することができる。
また、余長収容ケースの出口部の端縁に対して前記取付部材をケース厚さ方向に挿し込み、筒状部の対向する側壁外面に設けた凹部と、前記出口部の端縁を挟む両側壁の内面に設けた凸部とを嵌合させるだけで、前記出口部の端縁への取付部材の取り付けが行えるため、狭小スペースである出口部側での固定作業が不要となり、作業性を高めることができる。
【0015】
特に、前記筒状部の3つの側壁に、前記保護材の端部の側面のうち前記突出片を形成する側面以外の3つ側面を長さ方向の他端側まで貫通させることなく前記側壁内面と側壁外面との間に嵌め込む嵌合溝を設けていることが好ましい。前記のように、保護材の端部の3つの側面を前記筒状部の嵌合溝に嵌め込んで該3つの側面の先端を前記嵌合溝の溝底面に突き当てるようにしているため、取付部材に固定する保護材の端部の位置合わせを容易に行うことができる。
【0016】
前記保護材としてキャタピラ型の保護材が好適に用いられる。該保護材は帯状の平板に長さ方向に延在すると共に幅方向に間隔をあけて設けた4本の折り曲げラインを折り曲げて四角筒状とすると共に、長さ方向に間隔をあけて幅方向に切り込みを入れて一側面を連続させると共に他側面を分離し、一方側には屈曲するが他方側には屈曲しない状態で連結していることが好ましい。
【0017】
前記四角筒状の前記キャタピラ型の保護材は、前記のように帯状の平板に長さ方向に延在する4本の折り曲げラインを幅方向の中間部に間隔をあけて設け、かつ、該幅方向の両側縁の一方側に係止突片を突設すると共に他方側に前記係止突片を挿入係止する係止穴を設け、前記折り曲げラインに沿って折り曲げて四角筒形状とすると共に係止突片を係止穴に挿入係止して四角筒状を保持し、さらに前記4本の折り曲げラインを結ぶ幅方向の切り込みラインを長さ方向に間隔をあけて設けて四角筒の3辺を分離して折り曲げ自在に連結された形状としている。
【0018】
前記四角筒状のキャタピラ型の保護材は、押出成形した平板を打抜加工して形成し、これを折り曲げ組み立てて形成でき、従来のワイヤハーネス外装材のコルゲートチューブより安価に形成でき、かつ、運搬時は平板形状のままであるためかさばらない。しかも、閉鎖された筒状でないため、ワイヤハーネスに容易に外装することができる。
【発明の効果】
【0019】
前述したように、本発明では、余長収容ケースの出口部の端縁にワイヤハーネスの保護材の端部を固定した取付部材を凹凸嵌合で取り付ける構成としている。よって、取付部材にワイヤハーネスの保護材の端部を予め固定しておけば、該取付部材を余長収容ケースの出口部の端縁に凹凸嵌合させるだけで、前記出口部の端縁と保護材の端部との固定が完了するため、余長収容ケースの出口部付近での固定作業が容易になりかつ省スペースで固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態におけるスライドシートのワイヤハーネス配索装置を示す概略全体斜視図である。
【
図3】(A)は余長収容ケース内のワイヤハーネスのターン状態を示す側面図、(B)は余長収容ケースとスライダとの組み付け状態を示す図面である。
【
図4】ハーネスレールを示し、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【
図5】スライドシートの移動とワイヤハーネスの移動の関係を示す図面である。
【
図6】ワイヤハーネスに外装する保護材を示し、(A)は斜視図、(B)は拡大展開図、(C)は要部断面図である。
【
図7】(A)は取付部材を示す斜視図、(B)は取付部材に保護材の端部を固定した状態を示す斜視図、(C)は(B)の側面図である。
【
図8】(A)は余長収容ケースの出口部を示す要部拡大正面図、(B)は(A)のD−D線断面図、(C)は余長収容ケースの出口部の端縁に、保護材を固定した取付部材を取り付けている途中の状態を示す断面図である。
【
図9】(A)は余長収容ケースの出口部の端縁に、保護材を固定した取付部材を取り付けた状態を示す要部拡大正面図、(B)は(A)のE−E線断面図である。
【
図10】(A)は第2実施形態で用いる取付部材の斜視図、(B)は取付部材をF方向から見た図、(C)は取付部材をG方向から見た図である。
【
図11】(A)は保護材の端部を示す斜視図、(B)は取付部材に保護材の端部を固定した状態を示す斜視図、(C)は(B)のH−H線断面図、(D)は(B)の保護材の端部から引き出したワイヤハーネスと取付部材のテープ巻き舌片とをテープ巻きした状態を示す斜視図である。
【
図12】(A)は余長収容ケースの出口部を示す要部拡大正面図、(B)は余長収容ケースの出口部の端縁に、保護材を固定した取付部材を取り付けた状態を示す要部拡大正面図である。
【
図13】従来例を示し、(A)は全体斜視図、(B)は(A)のI−I線断面図である。
【
図14】(A)、(B)は従来例の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至
図9に本発明の第1実施形態を示す。
図1および
図2に示すワイヤハーネス配索装置では、自動車に搭載する助手席側のスライドシート1を400〜600mm程度スライドできるロングスライドシートとし、該スライドシート1に装着した電装品(図示せず)に給電するために、フロアパネル2からスライドシート1へワイヤハーネス5を配線している。
【0022】
スライドシート1のシートフレームの側板4の外面に余長収容ケース10を垂直方向に固定している。該スライドシート1に左右一対で設けるシート脚部3をフロアパネル2上に支持台50を介して搭載した左右一対のシートレール6にスライド自在に取り付けている。各シートレール6は
図2に示す構造で、スライドシート1の座部下方に突出したシート脚部3の軸部3aをシートレール6内に挿入し、軸部3aから腕部3bを左右に延在させ、腕部3bの外面に軸支した車輪3cをシートレール6内の側部空間6aに回動自在に嵌合している。シートレール6の中央の上面開口6cを挟む左右の側部空間6aの上壁6fには、その上面に車室床材となるモール15A、15Bを敷設している。
【0023】
一方のシートレール6の側方のフロアには、該シートレール6の長さ方向の中間位置にハーネスレール7を設置し、前記余長収容ケース10との間にスライダ9を架け渡している。該ハーネスレール7内に、フロアパネル2に配索するフロアハーネスW/Hから分岐したワイヤハーネス5を挿入し、該ハーネスレール7の上面に設けたスライダ摺動部7aに前記スライダ9の下部9cを摺動自在に嵌合し、該スライダ9に前記ワイヤハーネス5を貫通している。該スライダ9の上部9aは前記余長収容ケース10のスライダ摺動部10aに摺動自在に嵌合し、該スライダの上部9aから引き出すワイヤハーネス5を保護材30で外装した状態で余長収容ケース10の余長収容部10b内に挿入し、ターンさせた後に出口部10eよりワイヤハーネス5を引き出してスライドシート1の内部へ配線している。出口部10eは閉鎖された周壁10iで囲まれた略円形の穴状としている。
【0024】
前記余長収容ケース10はシートフレームの側板4にボルト等で固定している。余長収容ケース10にスライダ9を組み付け、ワイヤハーネス5を通した状態で、余長収容ケース10およびスライダ9を覆うシートサイドカバー8をシートフレームの側板4に取り付けている。
【0025】
該余長収容ケース10は、図面では区別して示していないが、比較的浅底の本体と該本体にワイヤハーネスを収容した後に被せる蓋とからなる。
図3に示すように、余長収容ケース10は前後方向に直線状に延在する前記スライダ摺動部10aと、その上部に仕切壁10cを介して横向き長円形状の前記余長収容部10bを設け、スライダ摺動部10aと余長収容部10bとを円弧部10dで連通させている。長円形状とした余長収容部10b内にワイヤハーネス5をUターンさせ、後部中央に設けた前記出口部10eからスライドシート1内に引き出すようにしている。
【0026】
前後方向に直線状に延在させるスライダ摺動部10aは上部の余長収容部10bより前方へ突出させている。スライダ摺動部10aの下面に
図3(B)に示すように、前後方向に延在するスライダ引出開口10fを設け、該スライダ摺動部10aから突出するスライダ9が、スライドシート1の前後移動に応じてハーネスレール7のスライダ摺動部7a内を摺動できるようにしている。
【0027】
前記ハーネスレール7は、上部を幅狭とすると共に下部の幅を広げたボックス形状で、上部に前後方向に延在する前記スライダ摺動部7aを設けている。該スライダ摺動部7aは上面開口の略凹状で、スライダ9の下面9dを摺動自在に保持し、凹部中央に設けた開口7bからスライダ9内に貫通するワイヤハーネス5をボックス下部7cの空間に垂れ下がるように引き出している。ボックス下部7cの側壁の前後方向の中央にワイヤハーネス挿通用の開口7dを設け、該開口7dに近接した側壁下部にクランプ穴7eを設けている。開口7dから引き出すワイヤハーネス5にクランプ付きバンド51を巻き付け、該クランプ付きバンド51のクランプ51aをクランプ穴7eに挿入係止して、ワイヤハーネス5を固定している。該クランプ付きバンド51で結束したワイヤハーネス5の先端にコネクタを取り付け、フロアハーネスW/Hの端末に取り付けたコネクタと嵌合接続している。
【0028】
ハーネスレール7の上部のスライダ摺動部7a内をスライドシート1と連動してスライダ9が移動し、該スライダ9の移動に応じて
図3(A)および
図5に示すように、スライダ9から引き出されるワイヤハーネス5が開口7dの近接位置の固定点P(クランプ51a係止位置)を支点として振り子状に前後に揺動する構成としている。
【0029】
前記スライダ9は、余長収容ケース10のスライダ摺動部10aに摺動自在に嵌合する上部9aと連続する中間部9bがスライダ摺動部10aの下面の前後方向に延在する引出開口10fから下向きに突出し、中間部9bの下側をスライドシート1から離れる方向に屈曲させた後に、該スライダの下部9cを下向きに屈曲させ、ハーネスレール7のスライダ摺動部7aに摺動自在に嵌合させている。スライダ9の上部9a、中間部9bおよび下部9cはワイヤハーネスを貫通できる角筒状として連通させている。
【0030】
前記余長収容ケース10内に摺動自在に収容するワイヤハーネス5に、
図6(A)に示す四角筒状のキャタピラ型の保護材30を外装している。該保護材30は
図6(B)に示す帯状の連続した長尺材からなる平板40を折り曲げて組み立てている。平板40には、長さ方向Xに延在する4本の折曲ライン41、42、43、44を幅方向Yの中間部に間隔をあけて設け、平板40を幅方向に5個の辺S1〜S5に区画し、折曲ライン41〜44を直角に折り曲げ、幅方向の両側辺S1とS5を重ねることで
図6(A)に示すように、四角筒状に組み立てている。
【0031】
また、平板40の幅方向の両側の一方側の辺S1の側縁に係止突片45を長さ方向Xに間隔をあけて突設している。平板40の他方側の辺S5に係止突片45を挿入係止する細長い係止穴46を設けている。平板40を折曲ライン41〜44に沿って折り曲げ、辺S1とS5を重ねた状態で係止突片45を係止穴46に挿入係止することで、四角筒形状を保持できるようにしている。
【0032】
平板40には前記4本の折曲ライン41〜44を結ぶ幅方向Yの切込ライン48を長さ方向Xに間隔をあけて設け、辺S2、S3、S4を分離している。切込ライン48の中央部で辺S3の中央位置に直線を湾曲させた円弧状の切込49を設け、長さ方向に隣接する一方側を円弧状に突出させ、他方を円弧状に窪ませ、凹凸嵌合部を設けている。
平板40に設ける折曲ライン41〜44は、
図6(C)に示すように、板厚の1/3程度の薄肉の断面円弧状のラインとしている。前記切込ライン48、係止穴46、係止突片45はすべて平板を打抜いて形成している。
【0033】
前記保護材30は予め折曲ライン41〜44を折り曲げる一方、係止突片45は係止穴46に挿入せず、開いた状態でワイヤハーネス5の電線群を折り曲げた保護材30の両側辺S1とS5の間の開口から挿入する。この電線群の挿入後に辺S1とS5を重ね、係止突片45を係止穴46に挿入係止し、電線群を四角筒の中に挿入した状態で外装する。
【0034】
前記保護材30は四角筒の3辺S2、S3、S4が切込ライン48で長さ方向で分離され、重ねて係止した辺S1とS5が長さ方向で屈曲自在に連結された構成となり、かつ、分離された辺S3は、隣接する辺S3同士が円弧状切込で凹凸嵌合する状態となる。即ち、短尺な四角筒が屈曲自在に長さ方向に順次連結し、かつ、隣接する四角筒同士を凹凸嵌合させているため幅方向にずれない、キャタピラ状の保護材となる。
【0035】
前記キャタピラ型の保護材30を用いると、余長収容ケース10のスライダ摺動部10aにガタつき無く内嵌できると共に、余長収容部10bの本体の底面と蓋の下面に保護材30の上下面がスライド自在に摺動し、安定した姿勢で余長収容部10b内を移動させることができる。なお、余長収容ケース10内に収容するワイヤハーネス5に外装する前記キャタピラ型の保護材30の一方の端部30bをスライダ摺動部10aに摺動自在に嵌合するスライダの上部9aに固定している一方、該保護材30の他方の端部30aを、ワイヤハーネス5をスライドシート1側に引き出す出口部10eの端縁10gに固定している。
【0036】
前記余長収容ケース10に収容するワイヤハーネス5に外装する保護材30の端部30aを余長収容ケース10とは別材の取付部材11に固定し、該取付部材11を余長収容ケース10の出口部10eの端縁10gに凹凸嵌合で取り付けている。
【0037】
取付部材11は、
図7(A)に示す構造を有している。樹脂成形品からなる取付部材11は、長さ方向の一端側で、上下方向に立設する連結片13を介して連結する上片12と下片14からなり、該上片12と下片14とで前記出口部10eの端縁10gを挟持させる構造としている。上片12には下片14より長く突出させる突出部12aを設け、該突出部12aの上面に保護材の端部30aを載置して該突出部12aと共にテープ(T1)巻き固定できるようにしている。また、上片12の上面には、突出部12aにテープ巻き固定する保護材の端部30aの先端面31と当接させる位置決めリブ12bを設けている。一方、下片14の上面には、余長収容ケース10の出口部10eの端縁10gに設けた被係止穴10h[
図8(A)参照]に嵌合する係止凸部14aを設けている。
【0038】
したがって、ワイヤハーネス5に外装した保護材の端部30aを
図7(B)、(C)に示すように、取付部材11の上辺の突出部12aの上面に載置し、保護材の端部30aの先端面31を位置決めリブ12bに当接させた状態で保護材の端部30aと突出部12aとをテープ(T2)巻き固定することにより、保護材の端部30aを取付部材11に固定できる。ここで、保護材の端部30aの先端面31を前記位置決めリブ12bに当接させることで、取付部材11に固定する保護材の端部30aの位置合わせを確実に行うことができる。
【0039】
保護材の端部30aを取付部材11に固定した後、該取付部材11を
図8(A)に示す余長収容ケース10の出口部10eの端縁10gに取り付ける。具体的には、
図8(C)に示すように、取付部材11の上片12と下片14とで出口部10eの端縁10gを挟持させて矢印方向に押し込み、被係止穴10hより手前側の端縁10g−1の下面に沿ってスライドさせた下片14の係止凸部14aが被係止穴10hに嵌合することで取付部材11の取付が完了する[
図9(A)、(B)]。なお、出口部10eの端縁のうち、下片14の係止凸部14aをスライドさせる被係止穴10hより手前側の端縁10g−1を他の部分10g−2より薄肉として下面側にガイド溝を形成し、係止凸部14aを被係止穴10hに嵌合しやすくしている。
【0040】
前記構成としたワイヤハーネス配索装置で配索されるワイヤハーネス5のスライドシート1の前後移動に追従する動きについて、
図5を参照して説明する。
図5中、ステップ#7のスライドシート前端位置より少し後退したステップ#1のスライドシートの位置が定常位置とすると、該位置では、余長収容部10b内でワイヤハーネスが前端側の短辺の内面に沿ってUターンし最大長さで余長が吸収され、スライダ摺動部10a内でスライダ9は後端側に位置する一方、ハーネスレール7内ではスライダ9は前後方向の中間に位置する。
#1の定常位置から少し後退する#2位置へ後退移動すると、まず、ハーネスレール7内でスライダ9が後退してワイヤハーネス5の余長を調整する。
#2より後退して#3位置へ移動すると、ハーネスレール7内でスライダ9はハーネスレール7の後端位置に達した後、余長収容部10bからワイヤハーネスを引き出してスライダ摺動部10aでスライダ9が前進してワイヤハーネス5の余長を調整する。
#3より後退して#4のスライドシート後端位置へ移動すると、スライダ摺動部10a内でスライダ9は前端位置まで移動してワイヤハーネス5の余長を調整する。
#4のスライドシート後端位置から#5の位置に前進すると、ハーネスレール7内でスライダ9が前進してワイヤハーネスの余長を調整する。
#5より#6の位置に前進すると、ハーネスレール7内で前端位置にスライダ9が達した後にスライダ摺動部10a内でスライダ9が後退し、余長収容部10bにワイヤハーネスが巻き込まれていき、ワイヤハーネスの余長を調整する。
#6より#7のスライドシート前端位置まで前進すると、余長収容部10bへ更にワイヤハーネスが巻き込まれていき、スライダ摺動部10a内でスライダ9が後退し、ワイヤハーネスの余長を調整する。
【0041】
このように、スライドシート1の前後移動に応じて、まず、ハーネスレール7側でスライダ9が前後移動してワイヤハーネスの余長を調整する。その際、ハーネスレール7では前後方向の中央の固定点Pでワイヤハーネス5は固定されているため、スライダ9の前後移動に応じてワイヤハーネス5が固定点Pを支点として左右方向に振られる。
ハーネスレール7側でスライダ9が後端または前端に達すると、余長収容ケース10側でスライダ9がスライダ摺動部10a内で前後移動し余長収容部10b内でターンしているワイヤハーネスを出入させてワイヤハーネスの余長を調整する。
【0042】
前記第1実施形態において、余長収容ケース10の出口部10eの端縁10gに、ワイヤハーネス5の保護材30の端部30aを固定した取付部材11を凹凸嵌合で取り付ける構成としている。よって、取付部材11にワイヤハーネス5の保護材30の端部30aを予め固定しておけば、該取付部材11を余長収容ケース10の出口部10eの端縁10gに凹凸嵌合させるだけで、前記出口部10eの端縁10gと保護材の端部30aとの固定が完了するため、余長収容ケース10の出口部10e付近での固定作業が容易になりかつ省スペースで固定できる。特に、本実施形態の余長吸収ケース10のように、出口部10eが閉鎖された周壁10iで囲まれた穴状で、該出口部10e付近でテープ巻き等の固定作業を行うスペースが確保しにくい場合に有効である。
【0043】
また、第1実施形態で用いる取付部材11によれば、上片12の突出部12aに保護材の端部30aを容易にテープ(T1)巻き固定できると共に、該取付部材11の上片12と下片14とで余長収容ケース10の出口部10eの端縁10g−1を挟持させ、下片14の係止凸部14aを該端縁10g−1の下面に沿わせながらスライドさせるだけで、端縁10gに設けた被係止穴10hに係止凸部14aを容易に嵌合させることができる。
【0044】
図10〜
図12に第2実施形態のワイヤハーネス保護材の固定構造を示す。
第2実施形態においても、余長収容ケース10に収容するワイヤハーネス5に外装する保護材30の端部30aを別部材からなる取付部材21に固定し、該取付部材21を余長収容ケース10の出口部10eの端縁10gに凹凸嵌合で取り付けているが、第2実施形態では、保護材の端部30aおよび取付部材21の構造を第1実施形態と相違させている。その他の点は第1実施形態と同様としている。
【0045】
第2実施形態の保護材30の端部30aは、
図11(A)に示すように、一側面30a−4を開口端31より長さ方向に延在させて突出片32としている。一方、樹脂成形品からなる取付部材21には、
図10に示すように、保護材の端部30aを長さ方向の一端側(F側)から内嵌する断面矩形状の筒状部22を設けていると共に、該筒状部22の他端側の端面より、前記保護材30の突出片32を重ねてテープ巻き固定するテープ巻き舌片26を突設している。筒状部22の断面矩形状の中空部22Aを囲む3つの側壁22a−1、22a−2、22a−3には、保護材の端部30aの突出片32を形成している一側面30a−4以外の3つの側面30a−1、30a−2、30a−3を長さ方向の他端側まで貫通させることなく該側壁22a−1、22a−2、22a−3の内面と外面との間に嵌め込む嵌合溝23を設けている。一方、筒状部22の1つの側壁22a−4は前記突出片32を長さ方向に貫通できるように嵌合溝を設けず、該側壁22a−4の内面とテープ巻き舌片26の内面とを連続させている。また、筒状部22の対向する側壁22a−4、22a−2の外面には、厚み方向に連続する凹部24、25を設け、余長収容ケース10の出口部10eの端縁10gの両側壁、即ち、出口部10eを形成する周壁10iおよび前記仕切壁10cの内面に厚み方向に連続して設けた凸部10j、10k[
図12(A)参照]に前記凹部24、25を嵌合させる構成としている。
【0046】
したがって、
図11(B)、(C)に示すように、ワイヤハーネス5に外装した保護材の端部30aのうち、3つの側面30a−1、30a−2、30a−3を取付部材21の筒状部22の嵌合溝23に嵌め込むと共に、突出片32を筒状部22に貫通させてテープ巻き舌片26の内面に重ね合わせテープ(T2)巻き固定することにより、保護材の端部30aを取付部材21に固定することができる。ここで、保護材の端部30aの3つの側面30a−1、30a−2、30a−3を筒状部22の嵌合溝23に嵌め込んで該側面30a−1、30a−2、30a−3の先端を溝底面に突き当てるようにしているため、取付部材21に固定する保護材の端部30aの位置合わせを容易に行うことができる。
さらに、
図11(D)に示すように、保護材の端部30aから引き出したワイヤハーネス5を取付部材21のテープ巻き舌片26にテープ(T3)巻き固定しておくことも好ましい。
【0047】
前記のように保護材の端部30aを取付部材21に固定した後、該取付部材21を
図12(A)に示す余長収容ケース10の出口部10eの端縁10gに取り付ける。具体的には、前記取付部材21を余長収容ケース10の出口部10eの端縁10gに対してケース厚み方向に挿し込み、取付部材21の凹部24、25と、出口部10eの端縁10g両側の凸部10j、10kとを嵌合させることで、取付部材21の取付が完了する[
図12(B)]。
【0048】
第2実施形態の取付部材21によれば、前記保護材の端部30aを取付部材21の筒状部22の一端側から内嵌すると共に、該保護材の端部30aの突出片32を前記筒状部22の他端側より突設したテープ巻き舌片26に重ねてテープ(T2)巻きすることで、保護材の端部30aを取付部材21に強固に固定することができる。
また、取付部材21を前記出口部10eの端縁10gに対して余長収容ケース10の厚さ方向に挿し込んで、筒状部22の対向する側壁外面22a−4、22a−2に設けた凹部24、25に前記出口部10eの端縁10gを挟む両側壁10c、10iの内面に設けた凸部10j、10kを嵌合させるだけで出口部10eの端縁10gへの取付部材21の取り付けが容易に行えるため、狭小スペースの出口部10e側での固定作業が不要となり、作業性を高めることができる。
【0049】
なお、前記第1、第2実施形態では、スライドシート1に固定する余長収容ケース10の出口部10eの端縁10gに、取付部材11、21を介して保護材の端部30aを固定しているが、車体のフロアに固定する余長収容ケースにおいても、ワイヤハーネスをフロア内に引き出す出口部の端縁に、同様の取付部材11、21を介して保護材の端部を固定することができる。