(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958424
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】2次電池の充電開始制御方法及び充電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/10 20060101AFI20160719BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20160719BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
H02J7/10 J
H02J7/04 C
H01M10/44 Q
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-122308(P2013-122308)
(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公開番号】特開2014-241656(P2014-241656A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2015年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】波多野 順一
【審査官】
坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−16109(JP,A)
【文献】
特開2008−96328(JP,A)
【文献】
特開2011−209237(JP,A)
【文献】
特開2008−145349(JP,A)
【文献】
特開2010−288345(JP,A)
【文献】
特開2013−85335(JP,A)
【文献】
特開2012−50197(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/51151(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42−10/48
H02J 7/00− 7/12
7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された日時に2次電池の充電が終了するよう、該2次電池の充電を開始させる2次電池の充電装置であって、
前記設定された日時より、前記2次電池の充電に要する要充電時間と充電終了後の分極解消の待ち時間との合計分の時間の前の日時を、充電開始日時として設定し、前記充電開始日時の到来時に、前記2次電池の充電を開始させ、前記要充電時間の経過後に、前記2次電池の充電を終了させる充電開始・終了日時制御部
を備えたことを特徴とする2次電池の充電装置。
【請求項2】
前記2次電池の充電の終了後、前記2次電池の分極が解消した後に、前記2次電池の満充電容量を算出する満充電容量算出部を備えたことを特徴とする請求項1記載の2次電池の充電装置。
【請求項3】
前記満充電容量算出部は、前記2次電池の充電の終了後、前記2次電池の分極解消の待ち時間が経過した後に、前記2次電池の満充電容量を算出することを特徴とする請求項2記載の2次電池の充電装置。
【請求項4】
前記充電開始・終了日時制御部は、前記分極解消の待ち時間の初期値として、分極が解消されるのに要する時間より長めの時間を設定しておき、該分極解消待ち時間の間に、前記2次電池の開放回路電圧の時間当たりの変化率を測定し、該変化率が所定値よりも小さくなるまでの時間を学習させ、該学習させた時間を分極解消待ち時間として更新することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の2次電池の充電装置。
【請求項5】
前記設定された日時に2次電池の充電が終了するよう、該2次電池の充電を開始させる充電動作の履歴を記憶する充電履歴記憶部と、
前記充電履歴記憶部に記憶された充電動作の履歴を基に、満充電容量の算出の要否を判定する満充電容量算出の要否判定部と、
をさらに備え、
前記充電開始・終了日時制御部は、前記満充電容量算出の要否判定部による要否の判定が要と判定されたとき、前記設定された日時より、前記2次電池の充電に要する要充電時間と充電終了後の分極解消の待ち時間との合計分の時間の前の日時を、充電開始日時として設定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の2次電池の充電装置。
【請求項6】
前記充電履歴記憶部は、前記設定された日時に2次電池の充電が終了するよう、該2次電池の充電を開始させる充電動作の回数を記憶し、前記満充電容量算出の要否判定部は、前記充電動作が所定の回数行われる毎に、前記満充電容量の算出の要否の判定を要と判定することを特徴とする請求項5に記載の2次電池の充電装置。
【請求項7】
前記充電開始・終了日時制御部は、充電中表示部に対して、充電中に「充電中」を示す表示を表示器で表示させる共に、充電終了後の分極解消待ちの間にも「充電中」又は「分極解消待ち」を示す表示を表示器で表示させることを特徴とする請求項1記載の2次電池の充電装置。
【請求項8】
設定された日時に2次電池の充電が終了するよう、該2次電池の充電を開始させる2次電池の充電開始制御方法であって、
前記設定された日時より、前記2次電池の充電に要する要充電時間と充電終了後の分極解消の待ち時間との合計分の時間の前の日時を、充電開始日時として設定する充電開始日時設定ステップと、
前記充電開始日時の到来時に、前記2次電池の充電を開始させる充電開始ステップと、
前記要充電時間の経過後に、前記2次電池の充電を終了させる充電終了ステップと、
を含むことを特徴とする2次電池の充電開始制御方法。
【請求項9】
前記2次電池の充電の終了後、前記2次電池の分極が解消した後に、前記2次電池の満充電容量を算出する満充電容量算出ステップを含むことを特徴とする請求項8記載の2次電池の充電開始制御方法。
【請求項10】
前記満充電容量算出ステップは、前記2次電池の充電の終了後、前記2次電池の分極解消の待ち時間が経過した後に、前記2次電池の満充電容量を算出することを特徴とする請求項9記載の2次電池の充電開始制御方法。
【請求項11】
前記設定された日時に2次電池の充電が終了するよう、該2次電池の充電を開始させる充電動作の回数を記憶し、該充電動作が所定の回数行われる毎に、前記設定された日時より、前記2次電池の充電に要する要充電時間と充電終了後の分極解消の待ち時間との合計分の時間の前の日時を、充電開始日時として設定する充電開始日時設定ステップを実行させることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の2次電池の充電開始制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次電池の充電開始制御方法及び充電装置に関し、特に、タイマーによる充電開始日時を制御する2次電池の充電開始制御方法及び充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト等の作業用車両又は電気自動車若しくはハイブリッド自動車等の車両等に用いられるリチウムイオン電池等の2次電池は、所定期間、作業や走行等に使用された後、休止期間中に充電装置に接続され、次の使用に備えるために充電が行われる。2次電池を充電する充電装置にはタイマーを備えたものが有り、ユーザーは、2次電池の次の使用開始時に、該2次電池がユーザーが設定する目標充電率まで充電された状態で使用することができるよう、次の使用開始時に充電が終了しているよう、タイマーに充電終了の希望日時と充電率(SOC:State Of Charge;満充電容量に対する残充電容量の比率)を設定して充電する。
【0003】
タイマーに充電終了の希望日時と充電率が設定された充電装置は、該充電終了の希望日時から、2次電池が目標充電率まで充電されるのに要する要充電時間分を早めた日時に充電開始の日時を設定し、該充電開始の日時が到来した時点で充電を開始する。そして、要充電時間が経過した時点で充電を終了する。
【0004】
2次電池の要充電時間は、該2次電池の開放回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)と充電率(SOC)との相関を示すSOC−OCV特性を基に、該2次電池の現在の開放回路電圧(OCV)から、該2次電池の現在の現在の充電率(SOC)を求め、該充電率(SOC)と目標充電率(SOC)と満充電容量とから、充電に要する電流積算量を算出し、該電流積算量を充電するのに要する時間を求めることにより算定される。
【0005】
ユーザーが設定した充電終了希望日時に充電が終了するよう、充電を開始する充電装置は、下記の特許文献1等に記載されている。特許文献1に記載の充電装置は、2次電池の充電開始時に、該2次電池の使用(放電)停止後の、開放回路電圧(OCV)の時間当たりの変化率ΔV/Δtが、所定値よりも小さくなり、放電による分極が解消したと判定された後を、充電開始推奨時期として決定して充電を開始するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−16109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
充電装置のタイマーに充電終了希望日時を設定して2次電池を充電するタイマー充電は、ユーザーが設定した充電終了希望日時に充電を完了する。車両等を使用するユーザーによってタイマー充電が行われる2次電池は、タイマーに設定された充電終了希望日時になると、その後、直ちに、即ち充電終了の直後から、車両の走行等に使用されることが多い。
【0008】
図4は2次電池の充電開始から充電終了後の電圧の変化の様態を示している。
図4の(a)は、タイマー充電の充電終了後、すぐに2次電池が使用されたときの電圧の様態の一例を示している。
図4の(a)に示すように、日時t2が充電終了希望日時として設定されると、充電装置は、充電終了希望日時t2から、該2次電池が充電されるのに要する時間T1分早めた日時t1を算定し、該日時t1を充電開始日時として設定する。そして、充電開始日時t1が到来した時点で充電を開始させる。なお、現在の日時が、前述の算定した日時t1を既に過ぎている場合は、現在の日時を充電開始日時t1として設定し、直ちに充電を開始させる。
【0009】
タイマーによる充電が開始された2次電池は、充電が終了する日時t2まで電圧が上昇し、充電終了日時t2以降、充電による分極が解消するにつれて、電圧が降下する。しかし、充電終了後、分極が十分に解消されるまで待つことなく、日時t3でユーザーの車両の走行等に該2次電池の使用が開始される場合が多い。
【0010】
車両の走行等に該2次電池が使用されると、該2次電池から車両等の負荷側に放電電流が流れ、また、車両等の負荷側から該2次電池に回生電流が流れ、
図4(a)に示すように、該2次電池の電圧は降下、上昇を繰り返す。
【0011】
車両の走行等に使用される2次電池は、充電量を正確に把握することが求められる。充電量を正確に把握するには、2次電池の満充電容量をより正確に算出することが求められる。また、2次電池は、充電を行うことにより繰り返し使用されるが、充放電の繰り返しと共に性能が劣化し、満充電容量が次第に減少する。そのため、劣化の程度を把握するためにも、定期的に満充電容量を算出することが必要である。
【0012】
満充電容量の算出には、2次電池の正確な開放回路電圧(OCV)を計測する必要がある。
図4の(b)は、充電終了後の2次電池の開放回路電圧(OCV)の様態を示す。
図4の(b)に示すように、日時t1で充電が開始された2次電池は、充電が終了する日時t2まで電圧が上昇し、充電終了日時t2以降、充電による分極が解消するにつれて開放回路電圧(OCV)は降下する。
【0013】
満充電容量の算出に用いる開放回路電圧(OCV)は、分極が十分に解消した後の開放回路電圧(OCV)でなければならず、充電終了日時t2から分極解消待ち時間T2が経過した日時t4にならなければ、正確な開放回路電圧(OCV)を計測することができない。
【0014】
しかし、常にタイマー充電を実施するユーザーの車両等に使用される2次電池は、充電終了日時t2の後、分極解消待ち時間T2が経過する前に、車両等の走行に使用開始される可能性が高いため、正確な開放回路電圧(OCV)を計測することができず、満充電容量の算出を長期間実施することができないという問題が生じる。
【0015】
上記課題に鑑み、本発明は、タイマー充電が日常的に行われる2次電池に対して、分極解消後の開放回路電圧(OCV)を計測して満充電容量を算出することができるよう、2次電池の充電開始日時を制御する充電開始制御方法及び充電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る2次電池の充電装置は、設定された日時に2次電池の充電が終了するよう、該2次電池の充電を開始させる2次電池の充電開始制御装置であって、前記設定された日時より、前記2次電池の充電に要する要充電時間と充電終了後の分極解消の待ち時間との合計分の時間の前の日時を、充電開始日時として設定し、前記充電開始日時の到来時に、前記2次電池の充電を開始させ、前記要充電時間の経過後に、前記2次電池の充電を終了させる充電開始・終了日時制御部をそなえたものである。
【0017】
また、本発明に係る2次電池の充電開始制御方法は、設定された日時に2次電池の充電が終了するよう、該2次電池の充電を開始させる2次電池の充電開始制御方法であって、前記設定された日時より、前記2次電池の充電に要する要充電時間と充電終了後の分極解消の待ち時間との合計分の時間の前の日時を、充電開始日時として設定する充電開始日時設定ステップと、前記充電開始日時の到来時に、前記2次電池の充電を開始させる充電開始ステップと、前記要充電時間の経過後に、前記2次電池の充電を終了させる充電終了ステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、タイマー充電が日常的に行われる2次電池に対して、少なくとも所定の頻度で、分極解消後の開放回路電圧(OCV)を計測して満充電容量を算出することができる。満充電容量の算出の頻度を増加させることができるので、2次電池の充電率(SOC)の推定精度を向上させることができ、2次電池の充放電の管理を精度良く行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による2次電池の充電開始日時を制御する処理のフローの一例を示す図である。
【
図2】本発明による2次電池の充電装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明による2次電池の充電終了後の電圧の変化の様態を示す図である。
【
図4】2次電池の充電開始から充電終了後の電圧の変化の様態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明による2次電池の充電開始日時を制御する処理のフローの一例を示す。
図1に示すように、本発明による2次電池の充電装置は、タイマーに充電終了希望日時が設定されたか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1で、目標充電率が設定されたか否かを判定しても良い。目標充電率が設定された場合、現在の充電率と、目標充電率と、満充電容量とから充電に要する要充電時間が算出される。なお、目標充電率はユーザーに設定された値でなく、予め決められた値(例えば、満充電)でも良い。
【0021】
タイマーに充電終了希望日時が設定された場合(ステップS1でYes)、該充電装置内の記憶部に記憶された過去の充電履歴情報を取得する(ステップS2)。過去の充電履歴情報として、一例として、過去に実施されたタイマー充電による充電回数nを取得するものとする。
【0022】
充電装置は、該充電回数nと予め定められた所定回数Nとを比較し、該充電回数nが該所定回数N未満か否かを判定する(ステップS3)。該充電回数nが該所定回数N未満の場合(ステップS3でYes)、過去の充電回数nに1を加算し(ステップS4)、充電終了希望日時から充電に要する要充電時間分早めた日時を充電開始日時に設定する(ステップS5)。なお、充電終了希望日時から充電に要する要充電時間分早めた日時を、現在の日時が既に経過しているときは、現在の日時を充電開始日時に設定する。
【0023】
そして、充電装置は、自装置に内蔵した現在日時を表す時計を基に、現在日時が充電開始日時になったとき、充電を開始する(ステップS6)。その後、充電装置は、要充電時間が経過した時に充電を終了する(ステップS7)。このように、過去の充電回数nが所定回数N未満のときは、通常のタイマー充電を行う。
【0024】
一方、前述のステップS3の判定において、充電回数nが所定回数Nに達した場合(ステップS3でNo)、充電装置は、充電終了希望日時から要充電時間と分極解消待ち時間との合計分を早めた日時を充電開始日時に設定する(ステップS8)。なお、充電終了希望日時から要充電時間分と分極解消待ち時間との合計分を早めた日時を、現在の日時が既に経過しているときは、現在の日時を充電開始日時に設定する。
【0025】
そして、充電装置は、自装置に内蔵した現在日時を表す時計を基に、現在日時が充電開始日時になったとき、充電を開始する(ステップS9)。その後、充電装置は、要充電時間が経過した時に充電を終了する(ステップS10)。このように、過去の充電回数nが所定回数Nに達したときは、通常のタイマー充電の開始日時から分極解消待ち時間分を早めた日時を充電開始日時に設定する。そのため、タイマー充電がN回行われる毎に1回の割合で、分極解消待ち時間分を早めた日時が充電開始日時に設定される。
【0026】
分極解消待ち時間分を早めた日時が充電開始日時に設定されると、2次電池の充電終了後、ユーザーが該2次電池を車両等の走行に使用する前に、該2次電池の分極が十分解消する。そこで、以下のように、分極解消後の開放回路電圧(OCV)を計測し、該開放回路電圧(OCV)を用いて満充電容量の算出を行う。
【0027】
分極解消後の開放回路電圧(OCV)は、2次電池の充電終了後の開放回路電圧(OCV)の時間当たりの変化率ΔV/Δtが、所定値よりも小さくなったことを判定することにより分極が十分解消したと判定し、該分極解消後の開放回路電圧(OCV)を計測することにより取得することができる。なお、分極解消待ち時間を十分長く設定し、該分極解消待ち時間の経過により、分極が解消したとみなし、上述の変化率ΔV/Δt等を算出することなく、分極解消後の開放回路電圧(OCV)を計測して取得しても良い。
【0028】
満充電容量は、SOC−OCV特性を参照して、充電開始前の開放回路電圧(OCV)から得られる充電開始前の充電率SOC1と、充電終了後の開放回路電圧(OCV)から得られる充電終了後の充電率SOC2とを求め、充電により流れた電流積算量ΣIを求め、以下の式1により算出される。
満充電容量={ΣI÷(SOC2−SOC1)}×100 ・・・(式1)
充電装置は、充電前及び充電後の分極解消後の開放回路電圧(OCV)が取得され、満充電容量を算出する条件が満たされたと判定したとき、上記の式1により、2次電池の満充電容量を算出する(ステップS11)。該満充電容量の算出が完遂すると、充電装置は、前述の過去の充電回数nを0に設定する(ステップS12)。
【0029】
なお、上述のステップS11における満充電容量の算出は、充電される2次電池側に備えられた電池監視電子制御ユニットで行ってもよい。該2次電池側に備えられた電池監視電子制御ユニットが、充電終了後も給電され、アクティブな状態となっている場合には、上述の手法と同様の手法により、充電前及び充電後の分極解消後の開放回路電圧(OCV)を計測し、充電前の充電率SOC1、充電後の充電率SOC2、及び充電の電流積算量ΣIから、前述の式1により満充電容量が算出される。
【0030】
また、2次電池側に備えられた電池監視電子制御ユニットが、充電終了後に給電が断たれ、停止状態となる場合には、充電開始時の分極解消後の開放回路電圧(OCV)と充電の電流積算量ΣIとを電池監視電子制御ユニットで記憶しておき、分極解消待ち時間後に車両等の使用開始時に該電池監視電子制御ユニットが起動されたとき、該起動時に充電終了時の分極解消後の開放回路電圧(OCV)を計測し、前述の式1により満充電容量を算出することができる。なお、満充電容量を2次電池側に備えられた電池監視電子制御ユニットで算出する場合、充電装置における前述のステップS11の処理は省いても良い。
【0031】
前述の分極解消待ち時間は、初期値として、分極が解消されるのに要する時間より長めの時間を設定しておき、該分極解消待ち時間分、充電開始日時を早める制御を行ったとき、該分極解消待ち時間の間に、開放回路電圧(OCV)の時間当たりの変化率ΔV/Δtを測定し、該変化率ΔV/Δtが所定値よりも小さくなるまでの時間を学習させ、該学習させた時間を分極解消待ち時間として更新するようにしてもよい。
【0032】
図2は、本発明による2次電池の充電装置の機能ブロック構成の一例を示す。本発明による充電装置100は、制御部10、充電部20及び充電中表示部30を備え、制御部10は、充電終了希望日時設定部11、充電履歴記憶部12、満充電容量算出の要否判定部13、充電開始・終了日時制御部14、及び満充電容量算出部15を備える。
【0033】
充電終了希望日時設定部11は、タイマー充電を行うユーザーにより設定された充電終了の希望日時を格納する。充電終了希望日時設定部11は、さらに目標充電率が設定されるようにしても良い。目標充電率が設定された場合、充電終了希望日時設定部11は、現在の充電率と、目標充電率と、満充電容量とから充電に要する要充電時間を算出する。なお、目標充電率はユーザーに設定された値でなく、予め決められた値(例えば、満充電)としても良い。
【0034】
さらに、充電終了希望日時設定部11には、前述の分極解消待ち時間の間に、2次電池の開放回路電圧(OCV)の時間当たりの変化率ΔV/Δtを測定し、該変化率ΔV/Δtが所定値よりも小さくなるまでの時間を学習させ、該学習させた時間を分極解消待ち時間として更新する構成を備えるようにしてもよい。
【0035】
充電履歴記憶部12は、過去の充電履歴情報(例えば、過去に実施されたタイマー充電による充電回数n等)を記憶する。満充電容量算出の要否判定部13は、過去の充電履歴情報を参照し、長期間、満充電容量が算出されていないと判定された場合に、満充電容量の算出が必要であると判定する。
【0036】
過去の充電履歴情報として、過去に実施されたタイマー充電による充電回数nが記憶されている場合、満充電容量算出の要否判定部13は、該充電回数nを予め定められた所定回数Nと比較し、該充電回数nが該所定回数N未満か否かを判定する。
【0037】
該充電回数nが該所定回数N未満の場合、充電履歴記憶部12に記憶された過去の充電回数nに1を加算する。充電回数nが所定回数Nに達した場合、満充電容量算出の要否判定部13は、充電開始・終了日時制御部14に対して、満充電容量算出を要する旨を通知する。
【0038】
なお、満充電容量算出の要否判定部13は、満充電容量算出の要否の判定を、過去のタイマー充電の回数に拠らず、過去に満充電容量算出を行った日時と、現在の日時とを比較し、過去に満充電容量算出を行った日時から現在の日時までの期間が、所定の期間以上のとき、満充電容量算出を要すると判定する構成としても良い。
【0039】
充電開始・終了日時制御部14は、満充電容量算出を要する旨が通知されると、充電終了希望日時設定部11に格納された充電終了希望日時から、充電に要する要充電時間と分極解消待ち時間との合計時間分を早めた日時を充電開始日時に設定する。該要充電時間と分極解消待ち時間との合計分を早めた日時を、現在の日時が既に経過しているときは、現在の日時を充電開始日時に設定する。
【0040】
そして、充電開始・終了日時制御部14は、制御部10に内蔵された現在日時を表す時計を基に、現在日時が充電開始日時になったとき、充電部20に対して2次電池200の充電を開始させる。その後、充電開始・終了日時制御部14は、要充電時間が経過した時に充電部20に対して充電を終了させる。
【0041】
満充電容量算出を要する旨は、満充電容量算出部15にも通知され、満充電容量算出部15は、充電開始前の開放回路電圧(OCV)及び充電の電流積算量ΣIを計測する。また、満充電容量算出部15は、分極解消待ち時間後に、分極が解消し、満充電容量を算出する条件が満たされたことと確認し、分極解消後の開放回路電圧(OCV)を計測し、満充電容量の算出を行う。満充電容量算出部15は、満充電容量の算定を完遂すると、充電履歴記憶部12に対して、過去の充電回数nを0に設定させる。
【0042】
満充電容量算出部15は、分極が解消したことを、2次電池の開放回路電圧(OCV)の時間当たりの変化率ΔV/Δtが、所定値よりも小さくなったことを判定して確認する構成とすることができる。或いは、充電開始・終了日時制御部14で設定された充電開始日時が、充電に要する要充電時間と分極解消待ち時間との合計分を早めた日時であるときは、分極が解消されるとみなし、満充電容量を算出する条件が満たされたと判定し、該要充電時間と分極解消待ち時間との合計分を早めた日時を、現在の日時が経過し、現在の日時が充電開始日時に設定されたときは、分極が解消されないとみなし、満充電容量を算出する条件が満たされないと判定する構成としても良い。
【0043】
また、分極解消を判定する機能を有する満充電容量算出部15は、分極解消に要した時間を充電開始・終了日時制御部14に通知し、充電開始・終了日時制御部14は、該通知された時間を、分極解消待ち時間として更新する構成としても良い。
【0044】
また、充電開始・終了日時制御部14は、充電中表示部30に対して、充電中に「充電中」を示す表示を表示器で表示させる共に、充電終了後の分極解消待ちの間にも「充電中」又は「分極解消待ち」を示す表示を表示器で表示させる。
【0045】
図3は、本発明による2次電池の充電終了後の電圧の変化の様態を示している。
図3の(a)は、満充電量算出を行わないときの様態を示している。日時t2が充電終了希望日時として設定されると、充電装置は、充電終了希望日時t2から、2次電池が充電されるのに要する要充電時間T1分早めた日時t1を、充電開始日時として設定し、充電開始日時t1が到来した時点で充電を開始する。
【0046】
充電開始日時t1が到来し、充電が開始された2次電池は、要充電時間T1が経過した充電終了日時t2まで電圧が上昇し、充電終了日時t2で充電を終了する。充電終了日時t2は、ユーザーが充電終了を希望した日時であり、該充電終了日時t2までに2次電池は充電され、その後、ユーザーによって直ちに使用可能となる。
【0047】
図3の(b)は、満充電量算出を要するときの様態を示している。満充電量算出を要するときは、分極解消待ち時間分、充電開始日時を早めるよう制御される。
図3の(b)に示すように、充電終了希望日時として設定された日時t2に対して、該日時t2から分極解消待ち時間T2と要充電時間T1との合計分早めた日時t10を充電開始日時として設定し、該日時t10の到来時に充電を開始させる。
【0048】
そして、充電開始日時t10から要充電時間T1が経過した日時t11に充電を終了させる。その結果、充電終了日時t11から充電終了希望日時t2までの間に分極解消待ち時間T2が確保され、分極解消後の開放回路電圧(OCV)を計測することができ、正確な満充電容量を算出することが可能となる。
【0049】
分極解消待ち時間T2の経過後、直ちに開放回路電圧(OCV)が計測され、満充電容量が算出される。従って、充電終了希望日時t2より後の日時t3以降に2次電池が使用され、2次電池の電圧が大きく変動しても、既に満充電容量の算出を完了しているため、満充電容量の算出に何ら支障がない。
【0050】
なお、充電開始日時t1から充電終了希望日時t2までの間に、要充電時間T1及び分極解消待ち時間T2を確保することができないときは、分極が解消せず、満充電容量の算出を行う条件が整わないと判定して、次のタイマー充電の機会に、満充電容量の算出の条件が整ったときに満充電容量の算出を行うこととする。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成又は実施形態を取ることができる。
【符号の説明】
【0052】
100 充電装置
10 制御部
11 終了希望日時設定部
12 充電履歴記憶部
13 満充電容量算出の要否判定部
14 充電開始・終了日時制御部
15 満充電容量算出部
20 充電部
30 充電中表示部
200 2次電池