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特許5958456プラント制御システム、制御装置、管理装置、及びプラント情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958456
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】プラント制御システム、制御装置、管理装置、及びプラント情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   G05B23/02 R
   G05B23/02 T
【請求項の数】22
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-255420(P2013-255420)
(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公開番号】特開2015-114778(P2015-114778A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2015年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】槙島 和宏
(72)【発明者】
【氏名】江守 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 正浩
【審査官】 影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−146631(JP,A)
【文献】 特開2008−262375(JP,A)
【文献】 特開昭60−043702(JP,A)
【文献】 特開2002−250271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00−23/02
G05B 19/04−19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの管理制御を行うプラント制御システムにおいて、
前記プラントに設置されて前記プラントの制御に必要な測定及び操作の少なくとも一方を行うフィールド機器と、
前記フィールド機器との間でプロセスデータの授受を行って前記プラントの制御を行うとともに、前記フィールド機器から前記フィールド機器の状態を示すフィールド情報を取得する制御装置と、
前記フィールド機器から前記フィールド情報を収集して前記プラントの状態を管理する管理装置とを備えており、
前記制御装置は、前記フィールド情報と前記プロセスデータとを用いて、前記プラントの制御により生成される生成物の品質についての健全性を示す第1健全性情報を生成する
ことを特徴とするプラント制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、生成した前記第1健全性情報を表示装置に表示することを特徴とする請求項1記載のプラント制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記フィールド機器から得られる前記プロセスデータの変化が生じた場合に、前記第1健全性情報の変化を予測することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のプラント制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、現在の前記第1健全性情報で示されている健全性を品質適合範囲内に維持するために必要な前記フィールド機器に対する操作値の補正量を求めることを特徴とする請求項3記載のプラント制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、外部からの指示に応じて、前記フィールド機器に対する前記操作値を前記補正量の分だけ補正して前記フィールド機器を操作することを特徴とする請求項4記載のプラント制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記フィールド機器から出力される前記フィールド情報を最適化するための設定を、前記フィールド機器に対して行うことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載のプラント制御システム。
【請求項7】
前記管理装置は、前記フィールド情報と前記制御装置から得られる制御情報とを用いて、前記フィールド機器を含む前記プラントに設置される設備の健全性を示す第2健全性情報を生成することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載のプラント制御システム。
【請求項8】
前記管理装置は、生成した前記第2健全性情報を表示装置に表示することを特徴とする請求項7記載のプラント制御システム。
【請求項9】
プラントの管理制御を行うプラント制御システムにおいて、
前記プラントに設置されて前記プラントの制御に必要な測定及び操作の少なくとも一方を行うフィールド機器と、
前記フィールド機器との間でプロセスデータの授受を行って前記プラントの制御を行うとともに、前記フィールド機器から前記フィールド機器の状態を示すフィールド情報を取得する制御装置と、
前記フィールド機器から前記フィールド情報を収集して前記プラントの状態を管理する管理装置とを備えており、
前記管理装置は、前記フィールド情報と前記制御装置から得られる制御情報とを用いて、前記フィールド機器を含む前記プラントに設置される設備の健全性を示す第2健全性情報を生成して表示装置に表示する
ことを特徴とするプラント制御システム。
【請求項10】
前記管理装置は、前記フィールド情報から異常を検知した場合に、複数の異なる運転負荷における前記第2健全性情報の変化を予測して前記表示装置に表示することを特徴とする請求項8又は請求項9記載のプラント制御システム。
【請求項11】
前記管理装置は、前記フィールド機器から出力される前記フィールド情報を最適化するための設定を、前記フィールド機器に対して行うことを特徴とする請求項7から請求項10の何れか一項に記載のプラント制御システム。
【請求項12】
前記フィールド情報は、前記フィールド機器の経年劣化状況を示す情報、前記フィールド機器が受けたストレスを示す情報、及び前記フィールド機器で行われる自己診断の診断結果を示す情報のうちの少なくとも1つの情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項11の何れか一項に記載のプラント制御システム。
【請求項13】
プラントに設置されて前記プラントの制御に必要な測定及び操作の少なくとも一方を行うフィールド機器との間でプロセスデータの授受を行って前記プラントの制御を行う制御装置において、
前記フィールド機器から前記フィールド機器の状態を示すフィールド情報を取得し、前記フィールド情報と前記プロセスデータとを用いて前記プラントの制御により生成される生成物の品質についての健全性を示す第1健全性情報を生成することを特徴とする制御装置。
【請求項14】
生成した前記第1健全性情報を表示装置に表示することを特徴とする請求項13記載の制御装置。
【請求項15】
前記フィールド機器から得られる前記プロセスデータの変化が生じた場合に、前記第1健全性情報の変化を予測することを特徴とする請求項13又は請求項14記載の制御装置。
【請求項16】
現在の前記第1健全性情報で示されている健全性を維持するために必要な前記フィールド機器に対する操作値の補正量を求めることを特徴とする請求項15記載の制御装置。
【請求項17】
外部からの指示に応じて、前記フィールド機器に対する前記操作値を前記補正量の分だけ補正して前記フィールド機器を操作することを特徴とする請求項16記載の制御装置。
【請求項18】
前記フィールド機器から出力される前記フィールド情報を最適化するための設定を、前記フィールド機器に対して行うことを特徴とする請求項13から請求項17の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項19】
プラントに設置されて前記プラントの制御に必要な測定及び操作の少なくとも一方を行うフィールド機器から情報を収集して前記プラントの状態を管理する管理装置において、
前記フィールド機器から前記フィールド機器の状態を示すフィールド情報を取得し、前記フィールド情報と前記フィールド機器の制御を行う制御装置から得られる制御情報とを用いて前記フィールド機器を含む前記プラントに設置される設備の健全性を示す第2健全性情報を生成して表示装置に表示することを特徴とする管理装置。
【請求項20】
前記フィールド情報から異常を検知した場合に、複数の異なる運転負荷における前記第2健全性情報の変化を予測して前記表示装置に表示することを特徴とする請求項19記載の管理装置。
【請求項21】
前記フィールド機器から出力される前記フィールド情報を最適化するための設定を、前記フィールド機器に対して行うことを特徴とする請求項19又は請求項20記載の管理装置。
【請求項22】
プラントに設置されて前記プラントの制御に必要な測定及び操作の少なくとも一方を行うフィールド機器から得られる情報の処理を行うプラント情報処理方法であって、
前記フィールド機器から前記フィールド機器の状態を示すフィールド情報を取得する第1ステップと、
前記第1ステップで取得した前記フィールド情報を用いて前記プラントの健全性を示す健全性情報を生成して表示する第2ステップと
を有し、
前記第2ステップは、前記プラントの制御により生成される生成物の品質についての健全性を示す第1健全性情報、及び前記フィールド機器を含む前記プラントに設置される設備の健全性を示す第2健全性情報の少なくとも一方を生成して表示するステップである
ことを特徴とするプラント情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント制御システム、制御装置、管理装置、及びプラント情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラントや工場等(以下、これらを総称する場合には、単に「プラント」という)においては、フィールド機器と呼ばれる現場機器(測定器、操作器、表示器、報知器、その他の機器)と、これらの制御を行う制御装置とが通信手段を介して接続された分散制御システム(DCS:Distributed Control System)が構築されており、高度な自動操業が実現されている。このような分散制御システムでは、プロセス制御に必要となるプロセスデータが制御装置とフィールド機器との間で相互にやりとりされている。
【0003】
また、近年においては、プラントの効率を最大限に高めるために、上記の分散制御システムとともに、プラント資産管理(PAM:Plant Asset Management)システムが構築されることが多くなっている。このプラント資産管理システムは、プラントを構成する機器や装置等の設備の設備保全や予知保全を行い、設備を長期に亘って適切な状態で維持管理するシステムである。このようなプラント資産管理システムでは、設備管理に必要な情報がフィールド機器からプラント資産管理システムの中核をなす管理装置で収集されている。尚、プラント資産管理システムと分散制御システムとの間においては、プラント資産管理システムで収集されたフィールド機器のアラーム情報が分散制御システムに送られている。
【0004】
以下の非特許文献1には、上述した分散制御システム及びプラント資産管理システムが構築された従来のプラント制御システムの一例が開示されている。具体的に、以下の非特許文献1に開示されたプラント制御システムでは、分散制御システムがFCS(Field Control Station)及びHIS(Human Interface Station)によって構築されており、プラント資産管理システムがPRM(登録商標)(Plant Resource Manager)のサーバやクライアントにより構築されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】森宏,他3名,「統合機器管理パッケージ”PRM”」,横河技報,Vol.45,No.3,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した分散制御システムやプラント資産管理システムで用いられる従来のフィールド機器は、例えば流量や温度等の測定結果を伝送し、或いは制御装置の制御の下でバルブの開度調整等の操作を行うといった基本的な機能のみを備えるものが殆どであった。しかしながら、近年のフィールド機器は、ディジタル化及びインテリジェント化が図られており、上記の基本的な機能に加えて付加的な機能(例えば、自機の状態を診断する自己診断機能)を備えるものが多くなっている。
【0007】
フィールド機器がディジタル化及びインテリジェント化されると、フィールド機器からは上記の基本的な機能によって得られる情報とともに、多様な情報が大量に得られることになる。例えば、上記の自己診断機能を備えるフィールド機器からは、フィールド機器の現在の状態を示す情報が得られることになる。このような情報が得られると、例えばフィールド機器の異常等を早期に察知することができるため、プラントを安全且つ効率に運転する上では好ましいと考えられる。
【0008】
しかしながら、フィールド機器から得られる情報の情報量が膨大になると、これらの情報を処理する装置(分散制御システムの制御装置やプラント資産管理システムの管理装置)の負荷が増大するとともに、必要な情報と不必要な情報との区別が困難になってきたという問題がある。このように、フィールド機器のディジタル化及びインテリジェント化によって多様な情報を得ることが可能になったにも拘わらず、従来はフィールド機器から得られる情報の有効活用ができていないという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、フィールド機器から得られる多種多様の情報からプラントの健全性を向上させ得る有用な情報を得ることが可能なプラント制御システム、制御装置、管理装置、及びプラント情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のプラント制御システムは、プラントの管理制御を行うプラント制御システム(1)において、前記プラントに設置されて前記プラントの制御に必要な測定及び操作の少なくとも一方を行うフィールド機器(10)と、前記フィールド機器との間でプロセスデータ(PD)の授受を行って前記プラントの制御を行うとともに、前記フィールド機器から前記フィールド機器の状態を示すフィールド情報(FI)を取得する制御装置(20)と、前記フィールド機器から前記フィールド情報を収集して前記プラントの状態を管理する管理装置(30)とを備えており、前記制御装置及び前記管理装置の少なくも一方は、前記フィールド情報を用いて前記プラントの健全性を示す健全性情報を生成することを特徴としている。
この発明によると、フィールド機器の状態を示すフィールド情報が制御装置及び管理装置で取得され、フィールド情報を用いてプラントの健全性を示す健全性情報を生成する処理が、制御装置及び管理装置の少なくも一方で行われる。
また、本発明のプラント制御システムは、前記制御装置が、前記フィールド情報と前記プロセスデータとを用いて、前記プラントの制御により生成される生成物の品質についての健全性を示す第1健全性情報を生成して表示装置(24)に表示することを特徴としている。
また、本発明のプラント制御システムは、前記制御装置が、前記フィールド機器から得られる前記プロセスデータの変化が生じた場合に、前記第1健全性情報の変化を予測することを特徴としている。
また、本発明のプラント制御システムは、前記制御装置が、現在の前記第1健全性情報で示されている健全性を品質適合範囲内に維持するために必要な前記フィールド機器に対する操作値の補正量を求めることを特徴としている。
また、本発明のプラント制御システムは、前記制御装置が、外部からの指示に応じて、前記フィールド機器に対する前記操作値を前記補正量の分だけ補正して前記フィールド機器を操作することを特徴としている。
また、本発明のプラント制御システムは、前記制御装置が、前記フィールド機器から出力される前記フィールド情報を最適化するための設定を、前記フィールド機器に対して行うことを特徴としている。
また、本発明のプラント制御システムは、前記管理装置が、前記フィールド情報と前記制御装置から得られる制御情報(CI)とを用いて、前記フィールド機器を含む前記プラントに設置される設備の健全性を示す第2健全性情報を生成して表示装置(34)に表示することを特徴としている。
また、本発明のプラント制御システムは、前記管理装置が、前記フィールド情報から異常を検知した場合に、複数の異なる運転負荷における前記第2健全性情報の変化を予測して前記表示装置に表示することを特徴としている。
また、本発明のプラント制御システムは、前記管理装置が、前記フィールド機器から出力される前記フィールド情報を最適化するための設定を、前記フィールド機器に対して行うことを特徴としている。
また、本発明のプラント制御システムは、前記フィールド情報が、前記フィールド機器の経年劣化状況を示す情報、前記フィールド機器が受けたストレスを示す情報、及び前記フィールド機器で行われる自己診断の診断結果を示す情報のうちの少なくとも1つの情報を含むことを特徴としている。
本発明の制御装置は、プラントに設置されて前記プラントの制御に必要な測定及び操作の少なくとも一方を行うフィールド機器(10)との間でプロセスデータ(PD)の授受を行って前記プラントの制御を行う制御装置(20)において、前記フィールド機器から前記フィールド機器の状態を示すフィールド情報(FI)を取得し、前記フィールド情報を用いて前記プラントの健全性を示す健全性情報を生成することを特徴としている。
また、本発明の制御装置は、前記フィールド情報と前記プロセスデータとを用いて、前記プラントの制御により生成される生成物の品質についての健全性を示す第1健全性情報を生成して表示装置に表示することを特徴としている。
また、本発明の制御装置は、前記フィールド機器から得られる前記プロセスデータの変化が生じた場合に、前記第1健全性情報の変化を予測することを特徴としている。
また、本発明の制御装置は、現在の前記第1健全性情報で示されている健全性を維持するために必要な前記フィールド機器に対する操作値の補正量を求めることを特徴としている。
また、本発明の制御装置は、外部からの指示に応じて、前記フィールド機器に対する前記操作値を前記補正量の分だけ補正して前記フィールド機器を操作することを特徴としている。
また、本発明の制御装置は、前記フィールド機器から出力される前記フィールド情報を最適化するための設定を、前記フィールド機器に対して行うことを特徴としている。
本発明の管理装置は、プラントに設置されて前記プラントの制御に必要な測定及び操作の少なくとも一方を行うフィールド機器(10)から情報を収集して前記プラントの状態を管理する管理装置(30)において、前記フィールド機器から前記フィールド機器の状態を示すフィールド情報(FI)を取得し、前記フィールド情報を用いて前記プラントの健全性を示す健全性情報を生成することを特徴としている。
また、本発明の管理装置は、前記フィールド情報と前記フィールド機器の制御を行う制御装置から得られる制御情報(CI)とを用いて、前記フィールド機器を含む前記プラントに設置される設備の健全性を示す第2健全性情報を生成して表示装置(34)に表示することを特徴としている。
また、本発明の管理装置は、前記フィールド情報から異常を検知した場合に、複数の異なる運転負荷における前記第2健全性情報の変化を予測して前記表示装置に表示することを特徴としている。
また、本発明の管理装置は、前記フィールド機器から出力される前記フィールド情報を最適化するための設定を、前記フィールド機器に対して行うことを特徴としている。
本発明のプラント情報処理方法は、プラントに設置されて前記プラントの制御に必要な測定及び操作の少なくとも一方を行うフィールド機器(10)から得られる情報の処理を行うプラント情報処理方法であって、前記フィールド機器から前記フィールド機器の状態を示すフィールド情報(FI)を取得する第1ステップ(S11、S21)と、前記第1ステップで取得した前記フィールド情報を用いて前記プラントの健全性を示す健全性情報を生成して表示する第2ステップ(S13、S14、S23、S24)とを有することを特徴としている。
また、本発明のプラント情報処理方法は、前記第2ステップが、前記プラントの制御により生成される生成物の品質についての健全性を示す第1健全性情報、及び前記フィールド機器を含む前記プラントに設置される設備の健全性を示す第2健全性情報の少なくとも一方を生成して表示するステップであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フィールド機器の状態を示すフィールド情報を制御装置及び管理装置で取得し、フィールド情報を用いてプラントの健全性を示す健全性情報を生成する処理を制御装置及び管理装置の少なくも一方で行うようにしているため、フィールド機器から得られる多種多様の情報からプラントの健全性を向上させ得る有用な情報(健全性情報)を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態によるプラント制御システムの要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態による制御装置の要部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態による管理装置の要部構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態における品質健全性KPIを求める処理の概要を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態における品質健全性KPIの表示例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態における設備健全性KPIを求める処理の概要を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態における設備健全性KPIの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態によるプラント制御システム、制御装置、管理装置、及びプラント情報処理方法について詳細に説明する。
【0014】
〈プラント制御システム〉
図1は、本発明の一実施形態によるプラント制御システムの要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態のプラント制御システム1は、フィールド機器10、制御装置20、管理装置30、及び上位装置40を備えており、プラント(図示省略)で実現される工業プロセスの制御を行うとともに、プラントを構成する機器(フィールド機器10を含む)や装置等の設備の管理を行う。ここで、上記のプラントとしては、化学等の工業プラントの他、ガス田や油田等の井戸元やその周辺を管理制御するプラント、水力・火力・原子力等の発電を管理制御するプラント、太陽光や風力等の環境発電を管理制御するプラント、上下水やダム等を管理制御するプラント等がある。
【0015】
フィールド機器10は、プラントの現場に設置されて制御装置20の制御の下で工業プロセスの制御に必要な測定や操作を行う機器である。具体的に、フィールド機器10は、例えば流量計や温度センサやガスセンサや振動センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、プラント内の状況や対象物を撮影するカメラやビデオ等の撮像機器、プラント内の異音等を収集したり警報音等を発したりするマイクやスピーカ等の音響機器、各機器の位置情報を出力する位置検出機器、その他の機器である。尚、フィールド機器10は、プラントに複数設けられるが、図1では図示を簡略するために、プラントに設けられる複数のフィールド機器をまとめてフィールド機器10として表している。
【0016】
フィールド機器10(プラントに設置される各フィールド機器)は、通信処理部11、データ処理部12、及び機器間処理部13を備える。通信処理部11は、フィールド機器10の上位に位置づけられる制御装置20及び管理装置30との間で通信を行うとともに、フィールド機器間の通信を行う。尚、通信処理部11は、制御装置20及び管理装置30並びに他のフィールド機器との間で、ネットワークや通信バス(図示省略)を介した有線通信、或いはISA100.11aやWirelessHART(登録商標)等の産業用無線通信規格に準拠した無線通信を行う。
【0017】
ここで、図1に示す通り、通信処理部11は、制御装置20との間でプロセス制御に必要となるプロセスデータPDの送受信を行う。例えば、工業プロセスにおける状態量(例えば、流体の流量)の測定データを制御装置20に向けて送信し、制御装置20から送信されてくる制御データ(例えば、流体の流量を制御するためのデータ)を受信する。また、通信処理部11は、制御装置20及び管理装置30に向けてフィールド機器10の状態を示すフィールド情報FIを送信し、制御装置20及び管理装置30から送信されてくる最適化設定情報SIを受信する。
【0018】
制御装置20に向けて送信されるフィールド情報FIは、フィールド機器10の経年劣化状況を示す情報(以下、経年劣化情報という)、フィールド機器10が受けたストレスを示す情報(以下、ストレス情報という)、及びフィールド機器10で行われる自己診断の診断結果を示す情報(以下、診断情報という)である。診断情報には、フィールド機器10の中の複数のフィールド機器間で情報を交換し、連携して診断を実行した診断結果も含まれる。また、管理装置30に向けて送信されるフィールド情報FIは、上記の経年劣化情報、ストレス情報、及び診断情報、並びにアラーム情報及び五感情報を含む情報である。これらフィールド情報FIは、プラントの現場(フィールド)で得られる所謂ビッグデータということができる。尚、図1では図示を省略しているが、フィールド機器10は、自機内で得られる情報のみを用いて自機内の回路・機能・状態量のセンシング部の異常状態を診断する自己診断機能を備えている。
【0019】
また、上記の最適化設定情報SIは、フィールド機器10から制御装置20或いは管理装置30へ送信されるフィールド情報FIを最適化するための情報である。例えば、フィールド機器10で検出されるアラームの感度、重要度、通知先を最適化して、不要なアラーム等が制御装置20や管理装置30へ送信されないようにするための情報である。つまり、最適化設定情報SIは、不要なアラームの発生を防止して制御装置20や管理装置30の負荷を軽減するために用いられる。
【0020】
データ処理部12は、自機で得られる各種情報(例えば、自己診断機能により得られる診断結果を示す情報)や他のフィールド機器で得られる各種情報を収集し、収集した情報を選別して加工する処理を行う。また、データ処理部12は、選別・加工した情報を通信処理部11から制御装置20又は管理装置30へ送信させる処理も行う。このように、データ処理部12が、自機又は他機の各種情報の収集・選別・加工を行って制御装置20又は管理装置30に送信するのは、制御装置20又は管理装置30の通信負荷や処理負荷を軽減するためであるとともに、情報を収集する現場(フィールド)で選別・加工した方が最適な処理を行えることもあるからである。
【0021】
機器間処理部13は、他のフィールド機器から得られる情報を用いた診断処理、アラームの選別処理等の処理を行う。具体的に、機器間処理部13は、上記の診断処理として、相互診断を行う。ここで、相互診断とは、複数のフィールド機器が相互に情報を供給し合い、自機及び他のフィールド機器における異常状態の診断を、共有する情報を用いて行う診断である。その相互診断は、上述した自己診断よりも高度な診断が可能である。フィールド機器自体の異常の他に、流体が流れる配管の腐食や流体の流れの脈動やキャビテーションの発生等のプロセスやプラントの異常状態診断も可能である。尚、機器間処理部13を設けて、相互診断やアラームの選別処理等を行うのは、制御装置20又は管理装置30の通信負荷や処理負荷を軽減するためであるとともに、情報を収集する現場(フィールド)で選別・加工した方が最適な処理を行えることもあるからである。
【0022】
ここで、上記のデータ処理部12で行われるフィールド機器10から得られる各種情報の収集・選別・加工、及び上記の機器間処理部13で行われる相互診断及びアラームの選別は、本来であれば制御装置20や管理装置30で行われるべき処理である。つまり、本実施形態では、本来であれば制御装置20や管理装置30で行われるべき処理の一部をフィールド機器10で行うようにして処理を分散化している。これにより、本実施形態では、制御装置20及び管理装置30の負荷を軽減することができるとともに、最適な処理を行えることがある。
【0023】
制御装置20は、分散制御システム(DCS)の中核をなす装置であり、フィールド機器10との間でプロセスデータPDの授受を行って工業プロセスの制御を行う。この制御装置20は、例えばプラントの運転を行う運転員によって操作される。図1に示す通り、制御装置20は、通信処理部21、データ処理部22、操作処理部23、及び情報表示部24(表示装置)を備える。
【0024】
通信処理部21は、フィールド機器10との間、及び管理装置30との間で通信を行う。尚、通信処理部21は、フィールド機器10の通信処理部11と同様に、ネットワークや通信バス(図示省略)を介した有線通信、或いはISA100.11aやWirelessHART(登録商標)等の産業用無線通信規格に準拠した無線通信を行う。尚、図1においては図示を省略しているが、制御装置20には、上位装置40と通信を行う通信部も設けられている。
【0025】
ここで、図1に示す通り、通信処理部21は、フィールド機器10との間でプロセス制御に必要となるプロセスデータPDの送受信を行う。例えば、フィールド機器10から送信されてくる測定データ(例えば、流体の流量)を受信し、制御データ(例えば、流体の流量を制御するためのデータ)をフィールド機器10に向けて送信する。また、通信処理部21は、フィールド機器10から送信されてくるフィールド情報FIを受信し、フィールド機器10に向けて適化設定情報SIを送信する。
【0026】
また、通信処理部21は、管理装置30に対してプラントの制御に係る制御情報CIを送信するとともに、管理装置30から送信されてくるアラーム情報AIを受信する。ここで、制御装置20から管理装置30に制御情報CIを送信するのは、フィールド機器10の過去の制御状況(例えば、経年劣化状況やフィールド機器10が受けたストレス等)を加味することによって、管理装置30が従来よりも詳細且つ精密にプラントの状況を把握することができるようにするためである。尚、上記の制御情報CIは、上位装置40にも送信される。
【0027】
データ処理部22は、フィールド機器10からのプロセスデータPD(例えば、流体の流量)を用いてプロセス制御に必要になる制御データ(例えば、バルブの開度を制御するためのデータ)を求めるとともに、管理装置30に送信すべき制御情報CIを求める。また、データ処理部22は、フィールド機器10から送信されるフィールド情報FIを最適化するための最適化情報SIを求める。
【0028】
また、データ処理部22は、フィールド機器10からのフィールド情報FIを用いて、プラントの健全性を示す健全性情報を生成する。具体的に、データ処理部22は、フィールド機器10から収集したフィールド情報FI(経年劣化情報、ストレス情報、診断情報)とプロセスデータPDとを用いて、プラントで生成される生成物についての健全性を示す指標である品質健全性KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標;第1健全性情報)を求める。ここで、生成物には、プラントから産出される最終生成物や製品の他に、途中過程で産出される生成物も含まれる。尚、この品質健全性KPIを算出する構成の詳細については後述する。
【0029】
また、データ処理部22は、上述した処理以外に、管理装置30から送信されてくるアラーム情報AIの分析処理、情報表示部24に表示する指示情報(メッセージ)の作成処理、及び機器状態の総合分析処理等の処理を行う。ここで、機器状態の総合分析とは、フィールド機器10の現在の状態の分析、フィールド機器10の過去の状態を示す履歴情報との比較分析等を行うことである。
【0030】
操作処理部23は、フィールド機器10に対する操作処理を行う。例えば、制御装置20を操作するプラントの運転員の指示に基づいて、フィールド機器10に対するパラメータ(測定パラメータ、操作パラメータ)の設定を行う。また、データ処理部22で最適化情報SIが求められた場合には、通信処理部21を介してフィールド機器10に対して最適化情報SIの設定を行う。つまり、フィールド機器10から出力されるフィールド情報FIを最適化するための設定を、フィールド機器10に対して行う。尚、最適化情報SIが設定されたフィールド機器10は、例えばアラームの感度、重要度、通知先等が最適化されることとなる。
【0031】
情報表示部24は、例えば液晶表示装置等の表示装置を備えており、データ処理部22の制御の下で各種情報を表示する。例えば、情報表示部24は、フィールド機器10との間で送受信されたプロセスデータ(フィールド機器10から送信されてきた測定データ、フィールド機器10へ送信された制御データ)、フィールド機器10の内部状態を示す情報、フィールド機器10から発せられたアラーム、各種メッセージ、その他の情報を表示する。上述した品質健全性KPIがデータ処理部22で求められた場合には、品質健全性KPIの表示を行う。
【0032】
管理装置30は、プラント資産管理(PAM)システムの中核をなす装置であり、フィールド機器10からフィールド情報FIを収集してプラントの状態を管理する。この管理装置30は、例えばプラントのメンテナンス(保守作業)を行う作業員によって操作される。図1に示す通り、管理装置30は、通信処理部31、データ処理部32、操作処理部33、及び情報表示部34(表示装置)を備える。
【0033】
通信処理部31は、フィールド機器10との間、及び制御装置20との間で通信を行う。尚、通信処理部31は、制御装置20の通信処理部21と同様に、ネットワークや通信バス(図示省略)を介した有線通信、或いはISA100.11aやWirelessHART(登録商標)等の産業用無線通信規格に準拠した無線通信を行う。尚、図1においては図示を省略しているが、管理装置30には、上位装置40と通信を行う通信部も設けられている。
【0034】
ここで、図1に示す通り、通信処理部31は、フィールド機器10から送信されてくるフィールド情報FIを収集するとともに、フィールド機器10に向けて適化設定情報SIを送信する。また、通信処理部31は、制御装置20に対してアラーム情報AIを送信するとともに、制御装置20から送信されてくる制御情報CIを受信する。尚、不図示の通信部によって、プラントのメンテナンス情報MIが上位装置40に送信される。
【0035】
データ処理部32は、通信処理部31で収集されたフィールド情報FIを用いて、プラントの状態を管理するために必要となるメンテナンス情報MIを求める。具体的に、データ処理部32は、プラントを構成するフィールド機器10等の設備の設備保全や予知保全を行い、設備を長期に亘って適切な状態で維持管理するために必要となる情報(例えば、機器の最適なメンテナンス時期や交換時期等を示す情報)をメンテナンス情報MIとして求める。また、データ処理部32は、フィールド機器10から送信されるフィールド情報FIを最適化するための最適化情報SIを求める。
【0036】
また、データ処理部32は、フィールド機器10からのフィールド情報FIを用いて、プラントの健全性を示す健全性情報を生成する。具体的に、データ処理部32は、フィールド機器10からのフィールド情報FI(経年劣化情報、ストレス情報、診断情報、アラーム情報、五感情報)と制御装置20からの制御情報CIとを用いて、フィールド機器10を含むプラントに設置される設備の健全性を示す指標である設備健全性KPI(第2健全性情報)を求める。尚、この設備健全性KPIを算出する構成の詳細については後述する。
【0037】
また、データ処理部32は、上述した処理以外に、フィールド機器10からから送信されてくるアラーム情報の集約・選別・加工等の処理、情報表示部34に表示する指示情報(メッセージ)の作成処理、及び機器の状態情報の作成処理等の処理を行う。ここで、機器の状態情報は、フィールド機器10の状態データの分析・加工、フィールド機器10の過去の状態を示す履歴情報との比較分析、保守・診断の総合分析等を行うことによって作成される。
【0038】
操作処理部33は、制御装置20の操作処理部33と同様に、フィールド機器10に対する操作処理を行う。例えば、管理装置30を操作する作業員の指示に基づいて、フィールド機器10に対するパラメータ(測定パラメータ、操作パラメータ)の設定を行う。また、データ処理部32で最適化情報SIが求められた場合には、通信処理部31を介してフィールド機器10に対して最適化情報SIの設定を行う。つまり、フィールド機器10から出力されるフィールド情報FIを最適化するための設定を、フィールド機器10に対して行う。
【0039】
情報表示部34は、制御装置20の情報表示部24と同様に、例えば液晶表示装置等の表示装置を備えており、データ処理部32の制御の下で各種情報を表示する。例えば、データ処理部32で求められたメンテナンス情報MI、フィールド機器10から発せられたアラーム、各種メッセージ、その他の情報を表示する。上述した設備健全性KPIがデータ処理部32で求められた場合には、設備健全性KPIの表示を行う。
【0040】
上位装置40は、プラントの制御状態及び管理状態を総合的に監視するために用いられる装置である。この上位装置40は、例えばプラントの管理を行う管理者によって操作される。上位装置40は、制御装置20から送信されてくる制御情報CI及び管理装置30から送信されてくるメンテナンス情報MIを受信し、これら制御情報CI及びメンテナンス情報MIを用いてプラントの管理を行う上で有用な情報を求めて表示装置(図示省略)に表示する。
【0041】
〈制御装置〉
図2は、本発明の一実施形態による制御装置の要部構成を示すブロック図である。この図2では、制御装置20が備える構成のうち、品質健全性KPIを求めるために必要となる構成を図示している。尚、図2においては、図1に示したブロックに相当するブロックには同一の符号を付してある。また、図2においては、理解を容易にするために、フィールド機器10の一例として、流体の流量を測定するセンサ機器10aと流体の流量を調整するバルブ機器10bとを図示している。
【0042】
図2に示す通り、制御装置20のデータ処理部22は、プロセス制御処理部41、品質測定部42、ドリフト検知部43、品質健全性予測部44、操作量補正部45、及び切替部46を備える。プロセス制御処理部41は、フィールド機器10から得られるプロセスデータPDを用いて、工業プロセスの制御を行うために必要な処理を行う。具体的に、プロセス制御処理部41は、例えばセンサ機器10aからのプロセスデータPD(流量の測定結果を示す測定データ)を用いて、バルブ機器10bがバルブを操作(調整)するための操作量MVを求める処理を行う。
【0043】
品質測定部42は、プロセス制御処理部41から得られる情報(プロセス制御に係る情報)を用いて、品質健全性KPIの予測を行うために必要な基本データの測定処理を行う。この品質測定部42で求められた上記の基本データは、品質健全性予測部44及び情報表示部24に出力される。尚、これらプロセス制御処理部41及び品質測定部42は、制御装置20の本来の機能である工業プロセスの制御を実現するための構成である。
【0044】
ドリフト検知部43は、センサ機器10aからのプロセスデータPD及びフィールド情報FIを入力としており、これらプロセスデータPD及びフィールド情報FIを用いてプロセスデータPDのドリフトを検知する。ここで、プロセスデータPDのドリフトとは、プラントで生じた異常(例えば、センサ機器10aやバルブ機器10bの故障)に起因して生ずるプロセスデータPDの変化である。このドリフトは、プロセスデータPDのみでは検知するのが困難な場合もあり、プロセスデータPDに変化が生じた時点のフィールド情報FIを加味することで検知される。例えば、プロセスで生じた異常に起因して発生するドリフトには、フィールド機器の状態が関与している場合があり、フィールド情報FIを加味することでより総合的な判断・予測等が可能になる。
【0045】
品質健全性予測部44は、ドリフト検知部43でプロセスデータPDのドリフトが検知された場合に、品質測定部42で求められた基本データを用いて、プラントで生成される生成物についての品質健全性KPIの予測を行う。具体的に、品質健全性予測部44は、上記のドリフトが生じた時点におけるプラントの運転状態が継続された場合の品質健全性KPIの変化を予測し、品質が予め規定された品質適合範囲を外れて「不適」となるまでの予測時間を求める。
【0046】
また、品質健全性予測部44は、品質健全性KPIを上記の品質適合範囲に収めるために必要な操作値の補正量(例えば、バルブ機器10bに対する操作量MVの補正量)を求めるとともに、補正された操作値に基づいて運転がされた場合の品質健全性KPIの変化を予測する。尚、品質健全性予測部44の予測結果等を示す情報は、情報表示部24に出力されて表示される。
【0047】
ここで、品質健全性予測部44は、プラントの過去の運転状態と品質健全性KPIとの関係を示すデータベース(図示省略)と、このデータベースと現在の制御情報(プロセス制御処理部41で求められる操作量MV)とを用いてプラントの状態を予測するダイナミックシミュレータ(図示省略)とを備える。品質健全性予測部44は、これらデータベース及びダイナミックシミュレータを用いて、上述した品質健全性KPIの予測を行い、或いは上述した操作値の補正量を求める。
【0048】
操作量補正部45は、品質健全性予測部44で求められた補正量に基づいて、プロセス制御処理部41で求められた操作量MVを補正する。切替部46は、入力部25からの指示(外部からの指示)に基づいて、プロセス制御処理部41からの操作量MVをプロセスデータPD(制御データ)として出力するのか、操作量補正部45で補正された操作量をプロセスデータPD(制御データ)として出力するのかを切り替える。尚、入力部25は、キーボードやマウス等を備えており、例えば制御装置20を操作する運転員の指示を入力するものである。
【0049】
〈管理装置〉
図3は、本発明の一実施形態による管理装置の要部構成を示すブロック図である。この図3では、管理装置30が備える構成のうち、設備健全性KPIを求めるために必要となる構成を図示している。尚、図3においては、図2と同様に、図1に示したブロックに相当するブロックには同一の符号を付してあり、フィールド機器10の一例として流体の流量を測定するセンサ機器10aを図示している。
【0050】
図3に示す通り、管理装置30のデータ処理部32は、異常状態測定部51、稼働状態測定部52、異常状態検知部53、健全性測定部54、運転負荷測定部55、及び健全性予測部56を備える。異常状態測定部51は、プラントに設けられた設備(機器や装置)の状態(診断結果)を示すパラメータを収集し、各設備の異常状態を測定する。例えば、モータの温度や振動の変化等を測定する。稼働状態測定部52は、プラントに設けられた設備の稼働状況を示すパラメータを収集し、各設備の稼働状態を測定する。例えば、モータの回転数や回転時間等を測定する。尚、これら異常状態測定部51及び稼働状態測定部52は、管理装置30の本来の機能であるプラントの状態管理を実現するための構成である。
【0051】
異常状態検知部53は、異常状態測定部51で測定された各設備の異常状態と稼働状態測定部52で測定された各設備の稼働状態とに基づいて、プラントに設けられた設備の異常の有無を検知する。健全性測定部54は、異常状態測定部51の測定結果から得られる各設備の状態変化と稼働状態測定部52の測定結果から得られる各設備の使用状況から設備健全性KPIを創出する。運転負荷測定部55は、設備の使用状態から設備の運転負荷を測定する。具体的に、運転負荷測定部55は、稼働状態測定部52の測定結果と制御装置20からの制御情報CIとを用いて設備の運転負荷を測定する。
【0052】
健全性予測部56は、異常状態検知部53でプラントに設けられた設備の異常が検知された場合に、健全性測定部54で創出された設備健全性KPIと運転負荷測定部55で測定された運転負荷とを用いて、プラントに設けられた設備についての設備健全性KPIを予測する。具体的に、健全性予測部56は、複数の異なる運転負荷における設備健全性KPIの変化を予測し、プラントの運転を継続することが可能と予測される運転継続可能時間を求める。
【0053】
〈プラント制御システムの動作〉
次に、上記構成におけるプラント制御システムの動作について説明する。まず、制御装置20の動作について説明する。制御装置20では、フィールド機器10との間でプロセスデータPDの授受を行ってプラント制御に係る動作が行われる。具体的に、制御装置20では、一定の時間間隔(例えば、1秒間隔)でフィールド機器10から送信されるプロセスデータPD(例えば、図2に示すセンサ機器10aからの測定データ)を通信処理部21で受信し、受信したプロセスデータPDを用いてフィールド機器10(例えば、図2に示すバルブ機器10b)の操作量を求める処理がデータ処理部22で行われる。
【0054】
ここで、制御装置20の通信処理部21で受信されたプロセスデータPDは、図2に示すデータ処理部22のプロセス制御処理部41に入力される。そして、プロセス制御処理部41において、フィールド機器10(例えば、バルブ機器10b)の操作量MVを求める処理が行われる。また、図2中の品質測定部42では、プロセス制御処理部41から得られる情報を用いて、品質健全性KPIの予測を行うために必要な基本データの測定処理が行われる。尚、プロセス制御処理部41で測定された基本データは、品質健全性予測部44及び情報表示部24に出力される。
【0055】
プロセス制御処理部41で求められた操作量MVは、切替部46を介してプロセスデータPD(制御データ)としてフィールド機器10(例えば、バルブ機器10b)に送信される。制御装置20からのプロセスデータPDがフィールド機器10で受信されると、そのプロセスデータPDに応じた操作(例えば、バルブ機器10bでのバルブの開度の調整)が行われる。このような動作が、上述した一定の時間間隔(例えば、1秒間隔)で繰り返される。尚、制御装置20のデータ処理部22でプロセス制御に係る制御情報CIが求められると、この制御情報CIは、通信処理部21から管理装置30に送信される。
【0056】
また、以上のプラント制御に係る動作と並行して、制御装置20では、プラントの健全性を示す健全性情報(品質健全性KPI)を求める処理が行われる。図4は、本発明の一実施形態における品質健全性KPIを求める処理の概要を示すフローチャートである。尚、図4に示すフローチャートの処理は、一定周期(例えば、上述したプラント制御の周期以上の周期)又は不定期に行われる。
【0057】
図4に示すフローチャートの処理が開始されると、フィールド機器10からのフィールド情報FIを取得する処理が行われる(ステップS11:第1ステップ)。例えば、センサ機器10aの経年劣化状況を示す経年劣化情報、センサ機器10aのストレスを示すストレス情報、及びセンサ機器10aで行われる自己診断の診断結果を示す診断情報を取得する処理が行われる。
【0058】
フィールド機器10(例えば、センサ機器10a)からのフィールド機器FIが取得されると、制御装置20のデータ処理部22に設けられたドリフト検知部43では、センサ機器10aからのプロセスデータPDと取得されたフィールド情報FIとを用いてプロセスデータPDのドリフトを検知する処理が行われる。そして、ドリフト検知部43の検知結果が品質健全性予測部44に出力され、品質健全性予測部44においてドリフトの有無が判断される(ステップS12)。
【0059】
プロセスデータPDのドリフトが無いと判断された場合(ステップS12の判断結果が「NO」の場合)には、図4に示す一連の処理が終了する。これに対し、プロセスデータPDのドリフトが有ると判断された場合(ステップS12の判断結果が「YES」の場合)には、品質測定部42で求められた基本データを用いて品質健全性KPIを予測する処理が品質健全性予測部44で行われる(ステップS13:第2ステップ)。
【0060】
具体的に、品質健全性予測部44では、不図示のデータベース及びダイナミックシミュレータを用いて、上記のドリフトが生じた時点におけるプラントの運転状態が継続された場合の品質健全性KPIの変化(以下、品質トレンドという)を予測する処理が行われる。そして、品質が予め規定された品質適合範囲を外れて「不適」となるまでの予測時間を求める処理も行われる。
【0061】
また、品質健全性予測部44では、品質健全性KPIを上記の品質適合範囲に収めるために必要な操作値の補正量(例えば、バルブ機器10bに対する操作量MVの補正量)を求めるとともに、補正された操作値に基づいて運転がされた場合の品質健全性KPIの変化(以下、補正品質トレンドという)を予測する処理が行われる。以上の処理が終了すると、品質健全性予測部44で得られた品質健全性KPIの予測結果(品質トレンド及び補正品質トレンド)を情報表示部24に表示する処理が行われる(ステップS14:第2ステップ)。
【0062】
図5は、本発明の一実施形態における品質健全性KPIの表示例を示す図である。図5に示す通り、情報表示部24には、上述の品質トレンド及び補正品質トレンドが二次元のグラフで表示される。このグラフは、横軸に時間をとり、縦軸に品質健全性KPIをとったグラフである。図5において、符号L11が付された曲線は、上述の品質トレンドを示しており、符号L12が付された曲線は、上述の補正品質トレンドを示している。尚、図5に示す例において、プロセスデータPDのドリフトは時刻t10において生じている。
【0063】
また、図5において、時刻t10から時刻t11までの時間T11は、ドリフトが生じた時点におけるプラントの運転状態が継続された場合に、品質が予め規定された品質適合範囲を外れて「不適」となるまでの予測時間である。つまり、図5に示す品質トレンドを示す曲線L11が、図中の「品質適合範囲」を外れるまでに要する時間である。
【0064】
制御装置20を操作する運転員が、図5中の品質トレンドを示す曲線L11を参照することにより、品質が将来的に品質適合範囲から外れること、及び品質が「不適」となるまでの予測時間T11を知ることができる。また、制御装置20を操作する運転員が図5中の補正品質トレンドを示す曲線L12を参照することにより、プラントの運転状態を変更すれば、品質を品質適合範囲内に収めることが可能であることを知ることができる。
【0065】
以上の内容を参照した運転員が、図2に示す入力部25に対して運転状態の変更指示を行うと、切替部46は、プロセス制御処理部41からの操作量MVに代えて、操作量補正部45で補正された操作量がプロセスデータPD(制御データ)として出力されるように切り替えを行う。かかる切り替えが行われると、操作量補正部45によって補正された操作量MVがプロセスデータPD(制御データ)としてバルブ機器10bに送信され、補正された操作量MVに基づいた操作がバルブ機器10bで行われる。このように、制御装置20は、運転員からの指示(外部からの指示)に応じて、フィールド機器10(バルブ機器10b)に対する操作量を品質健全性予測部44で求められた補正量の分だけ補正して、フィールド機器10(バルブ機器10b)を操作している。
【0066】
また、以上の動作と並行して、制御装置20のデータ処理部22では、フィールド機器10から得られるフィールド情報FIを最適化するためのデータを求める処理が行われる。かかる処理によって求められたデータは、操作処理部23から通信処理部21を介して最適化設定情報SIとしてフィールド機器10に送信され、これによりフィールド機器10の設定を変更する動作が行われる。尚、この動作は、一定の時間間隔で行われても良いし、制御装置20がフィールド情報FIを最適化する必要があるときのみ行われても良い。
【0067】
次に、管理装置30の動作について説明する。管理装置30では、フィールド情報FIを収集して設備健全性KPIを求める処理が行われる。図6は、本発明の一実施形態における設備健全性KPIを求める処理の概要を示すフローチャートである。尚、図6に示すフローチャートの処理は、一定周期(例えば、上述したプラント制御の周期以上の周期)又は不定期に行われる。
【0068】
管理装置30の通信処理部31では、予め規定されたタイミングでフィールド機器10からのフィールド情報FIを収集する処理が行われる(ステップS21:第1ステップ)。尚、制御情報CIが制御装置20から送信されてきた場合には、その制御情報CIを受信する処理も行われる。通信処理部31によって収集されたフィールド情報FIは、図3に示すデータ処理部32の異常状態測定部51及び稼働状態測定部52に入力され、制御装置20からの制御情報CIは、図3に示すデータ処理部32の運転負荷測定部55に入力される。
【0069】
フィールド情報FIが入力された異常状態測定部51及び稼働状態測定部52では、フィールド機器10(例えば、センサ機器10a)の異常状態及び稼働状態をそれぞれ測定する処理が行われる。これら異常状態測定部51及び稼働状態測定部52の測定結果は健全性測定部54に出力され、健全性測定部54において設備健全性KPIを創出する処理が行われる。また、運転負荷測定部55では、稼働状態測定部52の測定結果と制御装置20からの制御情報CIとを用いて設備の運転負荷を測定する処理が行われる。
【0070】
また、異常状態測定部51及び稼働状態測定部52の測定結果は異常状態検知部53に出力され、プラントの異常状態を検知する処理が行われる。そして、異常状態検知部53の検知結果が健全性予測部56に出力され、健全性予測部56においてプラントの異常の有無が判断される(ステップS22)。プラントの異常が無いと判断された場合(ステップS22の判断結果が「NO」の場合)には、図6に示す一連の処理が終了する。
【0071】
これに対し、プラントの異常が有ると判断された場合(ステップS22の判断結果が「YES」の場合)には、健全性測定部54で創出された設備健全性KPIと運転負荷測定部55で測定された運転負荷とを用いて、プラントに設けられた設備についての設備健全性KPIを予測する処理が健全性予測部56で行われる(ステップS23:第2ステップ)。
【0072】
具体的に、健全性予測部56では、複数の異なる運転負荷における設備健全性KPIの変化(以下、設備トレンドという)を予測し、プラントの運転を継続することが可能と予測される運転継続可能時間を求める処理が行われる。以上の処理が終了すると、健全性予測部56で得られた設備健全性KPIの予測結果(設備トレンド)を情報表示部34に表示する処理が行われる(ステップS24:第2ステップ)。
【0073】
図7は、本発明の一実施形態における設備健全性KPIの表示例を示す図である。図7に示す通り、情報表示部34には、上述の設備トレンドが二次元のグラフで表示される。このグラフは、横軸に時間をとり、縦軸に設備健全性KPIをとったグラフである。図7において、符号L21が付された曲線は、運転負荷が100%である場合の設備トレンドをしている。また、符号L22が付された曲線は運転負荷が70%である場合の設備トレンドを示しており、符号L23が付された曲線は運転負荷が40%である場合の設備トレンドを示している。尚、図7に示す例において、プラントの異常は時刻t20において生じている。
【0074】
また、図7において、時刻t20から時刻t21までの時間T21は、運転負荷が100%である場合における運転継続可能時間であり、時刻t20から時刻t22までの時間T22は、運転負荷が70%である場合における運転継続可能時間である。プラントの作業員が管理装置30に表示された図7に示すグラフを参照することにより、運転状態が100%,70%,及び40%である場合の設備トレンド、及び運転継続可能時間(異常が検知されてから運転可能限界に至るまでの時間)を知ることができる。
【0075】
また、以上の動作と並行して、管理装置30のデータ処理部32では、フィールド機器10から得られるフィールド情報FIを最適化するためのデータを求める処理が行われる。かかる処理によって求められたデータは、操作処理部33から通信処理部31を介して最適化設定情報SIとしてフィールド機器10に送信され、これによりフィールド機器10の設定を変更する動作が行われる。尚、この動作は、一定の時間間隔で行われても良いし、管理装置30がフィールド情報FIを最適化する必要があるときのみ行われても良い。
【0076】
以上の通り、本実施形態では、フィールド機器10で得られるフィールド情報FIを制御装置20及び管理装置30の双方で取得するとともに、制御装置20で得られる制御情報CIを管理装置30が取得し、制御装置20及び管理装置30がフィールド情報FIを用いてプラントの健全性を示す健全性情報(品質健全性KPI,設備健全性KPI)求めるようにしている。このように、本実施形態では、フィールド機器10から得られる多種多様のプラント情報FIからプラントの健全性を向上させ得る有用な健全性情報(品質健全性KPI,設備健全性KPI)を得ることができる。これにより、プラントの安全性、効率性、品質の位置、ライフサイクルコストの低減等を図ることができる。
【0077】
また、本実施形態では、制御装置20及び管理装置30が、最適化設定情報SIを用いて、フィールド機器10から制御装置20或いは管理装置30へ送信されるフィールド情報FIを最適化するようにしている。これにより、フィールド機器10から制御装置20及び管理装置30に送信されるフィールド情報FIのうち、フィールド機器10から制御装置20及び管理装置30にとって不要なフィールド情報FIを予め少なくすることができる。その結果として、フィールド情報FIを選別する処理を軽減することができ、制御装置20及び管理装置30の負荷を軽減することができる。
【0078】
以上、本発明の一実施形態によるプラント制御システム、制御装置、管理装置、及びプラント情報処理方法について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、制御装置20及び管理装置30の双方が健全性情報(品質健全性KPI、設備健全性KPI)を求める例について説明したが、制御装置20と管理装置30との何れか一方のみが健全性情報を求めるようにしても良い。また、上述した実施形態では、制御装置20が品質健全性KPIを求め、管理装置30が設備健全性KPIを求める例について説明したが、これら以外の健全性情報を求めるようにしても良い。
【0079】
また、上記実施形態では、制御装置20と管理装置30とは別体の装置として説明したが、一体化された装置であっても良い。また、制御装置20と管理装置30との少なくとも一方は、クラウドコンピュータで実現しても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 プラント制御システム
10 フィールド機器
20 制御装置
24 情報表示部
30 管理装置
34 情報表示部
CI 制御情報
FI フィールド情報
PD プロセスデータ
SI 最適化情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7