特許第5958463号(P5958463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958463
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】発振装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   H04R17/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-507126(P2013-507126)
(86)(22)【出願日】2012年3月8日
(86)【国際出願番号】JP2012001605
(87)【国際公開番号】WO2012132262
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年2月9日
(31)【優先権主張番号】特願2011-81036(P2011-81036)
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大西 康晴
(72)【発明者】
【氏名】黒田 淳
(72)【発明者】
【氏名】岸波 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 重夫
(72)【発明者】
【氏名】村田 行雄
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 信弘
(72)【発明者】
【氏名】内川 達也
(72)【発明者】
【氏名】菰田 元喜
【審査官】 渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−111298(JP,U)
【文献】 特開平11−024668(JP,A)
【文献】 特開昭61−252798(JP,A)
【文献】 特開平06−022395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 9/122
G10K 9/13
H04R 1/00− 1/02
H04R 1/06
H04R 1/20− 1/34
H04R 1/40
H04R 1/44
H04R 3/00
H04R 7/00− 7/26
H04R 9/00
H04R 13/00
H04R 15/00
H04R 17/00−17/02
H04R 17/10
H04R 19/00
H04R 23/00
H04R 29/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と、
一面において前記圧電振動子を拘束する振動部材と、
前記振動部材の前記一面または前記一面とは反対の他面であって、かつ平面視で前記圧電振動子と前記振動部材の縁との間に位置するように設けられている弾性部材と、
前記振動部材の前記一面または前記他面であって、かつ平面視で前記圧電振動子と前記弾性部材との間に位置するように設けられている固定部材と、
前記弾性部材および前記固定部材を介して前記振動部材を支持する支持部材と、
を備え
前記固定部材は、弾性材料を介して前記振動部材と接合しており、
前記弾性部材は、前記固定部材及び前記弾性材料から離間している発振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置において、
前記弾性部材は、ポリエチレンテレフタレートまたはウレタンにより構成されている発振装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発振装置において、
前記弾性部材は、バネである発振装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の発振装置において、
前記弾性部材は、前記振動部材の前記一面および前記他面に設けられている発振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子を有する発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置に用いられる電気音響変換器として、圧電振動子を用いた圧電型電気音響変換器がある。圧電型電気音響変換器は、圧電振動子の伸縮運動を利用して振動振幅を発生させるものである。このため、磁石やボイスコイル等から構成される動電型電気音響変換器に比べて薄型化に有利となる。圧電型電気音響変換器に関する技術としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載の技術は、圧電素子が貼り付けられた台座を、台座よりも低剛性な振動膜を介して支持部材に接続するというものである。
【0003】
また、圧電振動子は、例えば超音波センサとしても用いられる。特許文献2に記載の技術は、圧電振動子を用いた超音波センサに関するものであり、圧電剤の伸縮振動に伴って屈曲振動する金属板の外周端を、保持材によって保持するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/083497号パンフレット
【特許文献2】特開2007−251271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧電振動子を用いた発振装置において、その音圧レベルの向上を図ることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、圧電振動子と、
一面において前記圧電振動子を拘束する振動部材と、
前記振動部材の前記一面または前記一面とは反対の他面であって、かつ平面視で前記圧電振動子と前記振動部材の縁との間に位置するように設けられている弾性部材と、
前記振動部材の前記一面または前記他面であって、かつ平面視で前記圧電振動子と前記弾性部材との間に位置するように設けられている固定部材と、
前記弾性部材および前記固定部材を介して前記振動部材を支持する支持部材と、
を備える発振装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧電振動子を用いた発振装置において、その音圧レベルの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0009】
図1】第1の実施形態に係る発振装置を示す断面図である。
図2図1に示す圧電振動子を示す断面図である。
図3図1に示す発振装置の振動姿態を示す断面図である。
図4】第2の実施形態に係る発振装置を示す断面図である。
図5】第3の実施形態に係る発振装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
図1は、第1の実施形態に係る発振装置100を示す断面図である。発振装置100は、圧電振動子10と、振動部材20と、弾性部材40と、固定部材42と、支持部材30と、を備えている。発振装置100は、例えば携帯電話機等の携帯端末装置に搭載される。
【0012】
振動部材20は、一面において圧電振動子10を拘束している。弾性部材40は、振動部材20の一面とは反対の他面であって、かつ平面視で圧電振動子10と振動部材20の縁との間に位置するように設けられている。固定部材42は、振動部材20の他面であって、かつ平面視で圧電振動子10と弾性部材40との間に位置するように設けられている。支持部材30は、弾性部材40および固定部材42を介して振動部材20を支持している。以下、発振装置100の構成について詳細に説明する。
【0013】
振動部材20は、例えば平板形状を有している。振動部材20は、金属材料によって構成され、例えばリン青銅、又はステンレス等の汎用材料によって構成される。振動部材20の厚みは、5〜500μmであることが好ましい。また、振動部材20の縦弾性係数は、1〜500GPaであることが好ましい。振動部材20の縦弾性係数が過度に低い、または高い場合、発振装置の振動特性や信頼性を損なうおそれがある。
【0014】
弾性部材40は、例えばポリエチレンテレフタレートやウレタン等のオレフィン系ポリマー材料等の樹脂材料によって構成されている。弾性部材40は、例えば圧電振動子10の周囲において互いに分離するように複数設けられているが、これに限られない。すなわち、弾性部材40は、圧電振動子10の全周を囲むように一体として設けられていてもよく、弾性部材40の周囲の一部に一つだけ設けられていてもよい。
また、本実施形態において、弾性部材40は振動部材20の他面と接合するように設けられているが、例えば振動部材20の一面と接合するように設けられていてもよい。
【0015】
固定部材42は、例えば真鍮やステンレス、銅等の金属材料によって構成されている。固定部材42は、弾性部材40よりも高い弾性率を有している。
固定部材42は、例えば弾性部材40と、圧電振動子10の中心点とを結ぶ直線上に位置している。これにより、後述する本実施形態の振動姿態において、振動部材20の振動振幅を効果的に増大することが可能となる。
固定部材42は、弾性部材40と同様に、例えば圧電振動子10の周囲において互いに分離するように複数設けられているが、これに限られない。また、本実施形態において、固定部材42は振動部材20の他面と接合するように設けられているが、例えば振動部材20の一面と接合するように設けられていてもよい。
【0016】
図1に示すように、固定部材42は、例えば接続部材46を介して振動部材20と接合している。接続部材46は、例えば金属材料によって構成される。また、接続部材46は、例えば天然ゴム、NBRゴム、シリコンゴム等の弾性材料によって構成されていてもよい。この場合、振動部材20に対する固定部材42からの拘束力が緩和されるため、後述する本実施形態の振動姿態において、振動振幅の増大を図ることができる。
振動部材20の一面と水平な面方向において、接続部材46の断面積は、固定部材42の断面積よりも小さい。この場合においても、振動部材20に対する固定部材42からの拘束力が緩和されるため、後述する本実施形態の振動姿態において、振動振幅の増大を図ることができる。
【0017】
図1に示すように、弾性部材40は、例えば接続部材44を介して振動部材20と接合している。接続部材44は、例えば金属材料によって構成されている。
【0018】
図1に示すように、支持部材30は、振動部材20の他面側に配置される。振動部材20の他面側に配置された支持部材30は、振動部材20の他面に設けられた弾性部材40および固定部材42と接合している。これにより、支持部材30は、振動部材20を支持することとなる。
また、弾性部材40と固定部材42が、例えば振動部材20のうちの互いに異なる面に設けられている場合には、支持部材30は振動部材20の一面側および他面側に配置される(図示せず)。
【0019】
図2は、図1に示す圧電振動子10を示す断面図である。図2に示すように、圧電振動子10は、圧電体70、上部電極72および下部電極74を有している。圧電体70は、上部電極72および下部電極74に挟まれている。また、圧電体70は、その厚さ方向(図2中上下方向)に分極している。圧電振動子10は、振動部材20の一面と水平な面方向において、例えば円形または楕円形を有する。
【0020】
圧電体70は、圧電効果を有する材料により構成され、例えば電気機械変換効率が高い材料としてジルコン酸チタン酸鉛(PZT)またはチタン酸バリウム(BaTiO3)等により構成される。また、圧電体70の厚みは、10μm〜1mmであることが好ましい。厚みが10μm未満である場合、圧電体70は脆性材料により構成されるため、取り扱い時において破損等が生じやすい。一方、厚みが1mmを超える場合、圧電体70の電界強度が低減する。このため、エネルギー変換効率の低下を招く。
【0021】
上部電極72および下部電極74は、電気伝導性を有する材料によって構成され、例えば銀または銀/パラジウム合金等によって構成される。銀は、低抵抗な汎用材料であり、製造コストや製造プロセスの観点から優位である。また、銀/パラジウム合金は、耐酸化性に優れた低抵抗材料であり、信頼性に優れる。上部電極72および下部電極74の厚みは、1〜50μmであることが好ましい。厚みが1μm未満の場合、均一に成形することが難しくなる。一方、50μmを超える場合、上部電極72または下部電極74が圧電体70に対して拘束面となり、エネルギー変換効率の低下を招く。
【0022】
発振装置100は、制御部90と、信号生成部92と、を備えている。信号生成部92は、圧電振動子10と接続し、圧電振動子10に入力する電気信号を生成する。制御部90は、信号生成部92に接続し、信号生成部92による信号の生成を制御する。外部から入力された情報に基づいて制御部90が信号生成部92の信号の生成を制御することにより、発振装置100の出力を制御することができる。
【0023】
発振装置100をパラメトリックスピーカとして使用する場合、制御部90は信号生成部92を介して、パラメトリックスピーカとしての変調信号を入力する。この場合、圧電振動子10は、20kHz以上、例えば100kHzの音波を信号の輸送波として用いる。
また、発振装置100を通常のスピーカとして使用する場合には、制御部90は信号生成部92を介して、音声信号をそのまま圧電振動子10へ入力してもよい。
また、発振装置100を音波センサとして使用する場合、制御部90に入力される信号は、音波を発振する旨の指令信号である。そして、発振装置100を音波センサとして使用する場合、信号生成部92は圧電振動子10に圧電振動子10の共振周波数の音波を発生させる。
【0024】
パラメトリックスピーカの動作原理は次のようである。パラメトリックスピーカの動作原理は、AM変調やDSB変調、SSB変調、FM変調をかけた超音波を空気中に放射し、超音波が空気中に伝播する際の非線形特性により、可聴音が出現する原理で音響再生を行うというものである。ここでいう非線形とは、流れの慣性作用と粘性作用の比で示されるレイノルズ数が大きくなると、層流から乱流に推移することをいう。すなわち、音波は流体内で微少にじょう乱しているため、音波は非線形で伝播している。特に超音波を空気中に放射した場合に、非線形性に伴う高調波が顕著に発生する。また音波は、空気中の分子集団が濃淡に混在する疎密状態である。空気分子が圧縮よりも復元するのに時間が生じた場合、圧縮後に復元できない空気が、連続的に伝播する空気分子と衝突し、衝撃波が生じて可聴音が発生する。パラメトリックスピーカは、使用者の周囲にのみ音場を形成することができ、プライバシー保護という観点から優れる。
【0025】
次に、本実施形態において、振動部材20の振幅が増大する原理を説明する。図3は、図1に示す発振装置100の振動姿態を示す断面図である。圧電振動子10の伸縮振動に伴い、振動部材20は図3中上下方向へ振動する。このとき、振動部材20は、固定部材42を支点50として振動する。
本実施形態において、弾性部材40は、固定部材42よりも振動部材20の縁に近い位置に設けられている。このため、振動部材20が振動する際には、振動部材20の端部に対して、図3のブロック矢印によって示す方向に弾性部材40からの応力がかかる。
【0026】
すなわち、図3(a)に示すように、振動部材20が図中下方に凸状の振動をする場合には、支点50より振動部材20の縁に近い部分は図中上方へ変位する。このとき、振動部材20の端部には、図中下方への応力、つまり振動部材20の振動を増大する方向への応力が弾性部材40から加わる。
また、図3(b)に示すように、振動部材20が図中上方に凸状の振動をする場合には、支点50より振動部材20の縁に近い部分は図中下方へ変位する。このとき、振動部材20の端部には図中上方への応力、つまり振動部材20の振動を増大する方向への応力が弾性部材40から加わる。
このようにして、振動部材20の振幅は増大する。
【0027】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態に係る発振装置100は、振動部材20の他面であって、かつ平面視で圧電振動子10と振動部材20の縁との間に位置するように設けられている弾性部材40と、圧電振動子10の他面であって、かつ平面視で圧電振動子10と弾性部材40との間に位置するように設けられている固定部材42を備えている。そして、弾性部材40および固定部材42を介して、振動部材20は支持部材30に支持されている。
このような構成を有するため、振動部材20が振動する際に、振動部材20は、固定部材42を支点として弾性部材40から上下方向の応力を受ける。これにより、振動部材20の振幅は増大する。従って、圧電振動子を用いた発振装置において、その音圧レベルの向上を図ることができる。
【0028】
図4は、第2の実施形態に係る発振装置102を示す断面図であって、第1の実施形態における図1に対応している。本実施形態に係る発振装置102は、弾性部材40および固定部材42が、振動部材20の一面および他面に設けられている点を除いて、第1の実施形態に係る発振装置100と同様の構成を有する。
【0029】
図4に示すように、弾性部材40は、振動部材20の一面および他面において、接続部材44を介して振動部材20と接合している。振動部材20の一面に設けられている弾性部材40と、他面に設けられている弾性部材40は、平面視で互いに重なるように位置している。
固定部材42は、振動部材20の一面および他面において、接続部材46を介して振動部材20と接合している。振動部材20の一面に設けられている固定部材42と、振動部材20の他面に設けられている固定部材42は、平面視で互いに重なるように位置している。
支持部材30は、振動部材20の一面側および他面側に配置されており、振動部材20の一面および他面に設けられた弾性部材40および固定部材42を介して、振動部材20を支持している。
【0030】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、弾性部材40は、振動部材20の一面および他面に設けられている。このため、振動部材20が振動する際に、弾性部材40から振動部材20へかかる応力は、第1の実施形態と比較して大きくなる。これにより、振動部材の振幅をさらに増大することが可能となる。
【0031】
図5は、第3の実施形態に係る発振装置104を示す断面図であって、第1の実施形態に係る図1に対応している。本実施形態に係る発振装置104は、弾性部材40が、バネにより構成されている点を除いて、第1の実施形態に係る発振装置100と同様の構成を有する。
【0032】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0034】
この出願は、2011年3月31日に出願された日本出願特願2011−081036号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
図3
図4
図5