(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、最終ギア支持軸に沿う方向を「軸方向」と称する。また、軸方向に沿って、モータ側を「入力側」と称し、車輪側を「出力側」と称する。
【0011】
<1.第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るホイールユニット1の正面図である。
図1では、車輪6Aおよびギアケース7Aを、切断して示している。
図1に示すように、ホイールユニット1Aは、モータ2A、ピニオンギア3A、減速機構4A、最終ギア5A、車輪6A、およびギアケース7Aを、備えている。ピニオンギア3Aは、モータ2Aの回転部に、固定されている。減速機構4Aは、ピニオンギア3Aの回転を減速させて、最終ギア5Aに伝達する。最終ギア5Aは、車輪6Aに直接または他の部材を介して、固定されている。車輪6Aは、環状の接地面621Aを有し、最終ギア支持軸51Aを中心として回転する。ピニオンギア3A、減速機構4A、および最終ギア5Aは、ギアケース7Aの内部に収容されている。
【0012】
また、最終ギア5Aと車輪6Aとの間には、回転支持部81Aが設けられている。回転支持部81Aは、ギアケース7Aに支持されつつ、最終ギア5Aおよび車輪6Aとともに、回転する。
【0013】
図1に示すように、このホイールユニット1Aでは、最終ギア5Aの全体が、接地面621Aに囲まれた略円筒状の領域の内側に、位置している。ただし、最終ギア5Aは、その一部分のみが、接地面621Aに囲まれた略円筒状の領域の内側に、配置されていてもよい。このようにすれば、最終ギア5Aを車輪6Aの外側に配置する場合と比べて、ホイールユニット1Aの軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0014】
一方、このような構造においては、ギアケース7Aに対する回転支持部81Aの支持構造を、軸方向に広くとることが難しい。そこで、このホイールユニット1Aでは、回転支持部81Aの外径を、最終ギア支持軸51Aの外径よりも大きくしている。このようにすれば、ギアケース7Aと回転支持部81Aとの接触部が、広く確保される。その結果、ギアケース7Aに対する回転支持部81Aの支持構造の耐久性が、向上する。
【0015】
<2.第2実施形態>
<2−1.ホイールユニットの全体構成>
図2は、第2実施形態に係るホイールユニット1の斜視図である。
図3は、入力側から見たホイールユニット1の側面図である。
図4は、ホイールユニット1の分解斜視図である。
【0016】
このホイールユニット1は、家庭用電化製品である自走式の清掃ロボットに搭載され、当該清掃ロボットの走行手段として使用される。
図2〜
図4に示すように、本実施形態のホイールユニット1は、モータ2、ピニオンギア3、減速機構4、最終ギア5、車輪6、およびギアケース7を、備えている。モータ2を駆動させると、モータ2の駆動力が、ピニオンギア3、減速機構4、および最終ギア5を介して、車輪6に伝達される。これにより、車輪6が回転する。
【0017】
本実施形態のモータ2には、ブラシレスDCモータが使用されている。モータ2は、ギアケース7に固定された静止部21と、静止部21に対して回転する回転部22と、を有する。
図3中に破線で示すように、静止部21は、ステータコアおよびコイルで構成される電機子211を有する。一方、回転部22は、円環状のマグネット221を有する。電機子211のコイルに駆動電流を与えると、ステータコアに磁束が発生する。そして、電機子211とマグネット221との間の磁気的作用により、回転部22が回転する。
【0018】
本実施形態のモータ2は、電機子211の外側にマグネット221が配置された、いわゆるアウターロータタイプのモータである。アウターロータタイプのモータでは、インナーロータタイプのモータより、径の大きいマグネットを使用することができる。このため、マグネットの軸方向の寸法が大きくなる事を極力回避しつつ、高い出力を得ることができる。したがって、アウターロータタイプのモータを使用すれば、モータ2の軸方向の寸法を、小さくすることができる。或いは、出力増大の為によりマグネットの体積を増やす場合でも、軸方向寸法の拡大は最小限に留めることができる。例えば、モータ2の軸方向の寸法を、モータ2の回転部22の直径より、小さくすることが可能となる。その結果、軸方向で見て小型の、ホイールユニット1を得る事が可能になる。
【0019】
続いて、ギアケース7の内部構造について、説明する。
図5は、車輪6およびギアケース7を切断して示した、ホイールユニット1の正面図である。
図6は、ギアケース7を切断して示した、ホイールユニット1の側面図である。
図4〜
図6に示すように、ギアケース7の内部には、ピニオンギア3、減速機構4、および最終ギア5が、配置されている。
【0020】
モータ2の回転部22は、軸方向に延びるモータ軸222とともに回転する。モータ軸222の出力側の端部は、ギアケース7の内部まで延びている。そして、モータ軸222の当該端部に、ピニオンギア3が固定されている。ピニオンギア3は、POM(ポリアセタール)等の樹脂または金属からなる。ピニオンギア3は、後述する第1大径ギア部412と噛み合う複数の歯を、有している。
【0021】
減速機構4は、第1複合ギア41、第2複合ギア42、および第3複合ギア43を有している。第1複合ギア41は、軸方向に延びる第1支持軸411に、回転可能に支持されている。第2複合ギア42は、軸方向に延びる第2支持軸421に、回転可能に支持されている。第3複合ギア43は、軸方向に延びる第3支持軸431に、回転可能に支持されている。第1支持軸411、第2支持軸421、および第3支持軸431は、いずれも、ギアケース7に対して非回転に固定されている。
【0022】
第1複合ギア41は、第1大径ギア部412と、第1大径ギア部412より出力側に位置して、第1大径ギア部412より径の小さい第1小径ギア部413と、を有している。第1大径ギア部412は、複数の歯をピニオンギア3の複数の歯に噛み合わせつつ、回転する。ただし、第1大径ギア部412の歯数は、ピニオンギア3の歯数より多い。このため、第1複合ギア41は、ピニオンギア3より低い回転数で回転する。
【0023】
第2複合ギア42は、第2大径ギア部422と、第2大径ギア部422より出力側に位置して、第2大径ギア部422より径の小さい第2小径ギア部423と、を有している。第2大径ギア部422は、複数の歯を第1小径ギア部413の複数の歯に噛み合わせつつ、回転する。ただし、第2大径ギア部422の歯数は、第1小径ギア部413の歯数より多い。このため、第2複合ギア42は、第1複合ギア41より低い回転数で回転する。
【0024】
第3複合ギア43は、第3大径ギア部432と、第3大径ギア部432より出力側に位置して、第3大径ギア部432より径の小さい第3小径ギア部433と、を有している。第3大径ギア部432は、複数の歯を第2小径ギア部423の複数の歯に噛み合わせつつ、回転する。ただし、第3大径ギア部432の歯数は、第2小径ギア部423の歯数より多い。このため、第3複合ギア43は、第2複合ギア42より低い回転数で回転する。
【0025】
最終ギア5は、軸方向に延びる最終ギア支持軸51に、回転可能に支持されている。最終ギア支持軸51は、ギアケース7に対して非回転に固定されている。最終ギア5は、複数の歯を第3小径ギア部433の複数の歯に噛み合わせつつ、回転する。ただし、最終ギア5の歯数は、第3小径ギア部433の歯数より多い。このため、最終ギア5は、第3複合ギア43より低い回転数で回転する。
【0026】
このように、モータ2の駆動力は、ピニオンギア3から、第1複合ギア41、第2複合ギア42、第3複合ギア43を介して、最終ギア5に伝達される。上述の通り、回転数は、複数のギアを経ることにより低減される。一方、トルクは、複数のギアを経ることにより高められる。すなわち、減速機構4は、回転数を低減させるとともに、トルクを高めつつ、ピニオンギア3から最終ギア5へ、動力を伝達する役割を果たす。
【0027】
第1複合ギア41、第2複合ギア42、第3複合ギア43、および最終ギア5は、例えば、POM(ポリアセタール)等の樹脂からなる。ただし、第1複合ギア41、第2複合ギア42、および第3複合ギア43は、金属からなるものであってもよい。
【0028】
最終ギア5の出力側に隣接した位置には、ギアケース7に支持されつつ回転する回転支持部81が、設けられている。回転支持部81は、最終ギア5と後述するホイール部61との間において、ギアケース7の側壁に設けられた円孔部70に、支持されている。回転支持部81は、最終ギア支持軸51と略同軸に配置された、円筒状の外周面を有している。回転支持部81は、外周面をギアケース7の円孔部70の縁に接触させつつ、回転する。すなわち、本実施形態では、回転支持部81の外周面と、ギアケース7の円孔部70とで、すべり軸受が構成されている。回転支持部81の外周面とギアケース7の円孔部70との間には、グリース等の潤滑剤が介在していてもよい。
【0029】
また、回転支持部81の出力側に隣接した位置には、軸方向に延びる多角柱状のキー部82が、設けられている。本実施形態では、最終ギア5、回転支持部81、およびキー部82が、POM(ポリアセタール)等の樹脂からなる単一の成型品となっている。このようにすれば、部品点数が削減され、ホイールユニット1の組み立てが容易となる。ただし、最終ギア、回転支持部、およびキー部を、それぞれ別個の部材として用意し、互いに固定してもよい。
【0030】
車輪6は、樹脂または金属からなるホイール部61と、ゴムまたはゴム以外の樹脂からなるタイヤ部62とを、有している。ホイール部61は、最終ギア支持軸51に対して、径方向に広がっている。タイヤ部62は、ホイール部61の外周部に、固定されている。タイヤ部62は、略一定の幅を有する環状の接地面621を有している。ホイール部61の中央には、入力側へ向けて開口したキー溝611が、設けられている。上述したキー部82は、キー溝611に嵌め込まれて、固定されている。したがって、最終ギア5が回転すると、回転支持部81、キー部82、ホイール部61、およびタイヤ部62が、最終ギア支持軸51を中心として、一体的に回転する。
【0031】
<2−2.複数のギアの配置について>
図5に示すように、車輪6のホイール部61は、入力側へ向けて開いた略カップ状に、形成されている。したがって、ホイール部61の入力側の面は、タイヤ部62の入力側の端部より出力側へ凹んだ凹面となっている。そして、当該ホイール部61の内部に、最終ギア5が部分的に収容されている。すなわち、本実施形態では、車輪6の接地面621に囲まれた略円筒状の領域の内側に、最終ギア5の一部分が位置している。したがって、最終ギア5の出力側の端部は、タイヤ部62の入力側の端部より、出力側に配置されている。このようにすれば、最終ギア5の全体を車輪6の外側に配置する場合より、ホイールユニット1の軸方向の寸法は小さくなる。
【0032】
また、本実施形態では、
図6のようにホイールユニット1を軸方向に見たときに、ピニオンギア3、3つの複合ギア41〜43、および最終ギア5が、全て車輪6の接地面621の内側に、配置されている。すなわち、車輪6の接地面621を軸方向に投影した円筒面の内側に、ピニオンギア3、3つの複合ギア41〜43、および最終ギア5が配置されている。これにより、軸方向に直交する方向について、ホイールユニット1が占める領域は、小さくなる。。
【0033】
また、
図6に示すように、本実施形態では、第1複合ギア41を支持する第1支持軸411、第2複合ギア42を支持する第2支持軸421、および第3複合ギア43を支持する第3支持軸431が、最終ギア支持軸51を中心として、略周方向に配列されている。3つの複合ギア41〜43は、最終ギア支持軸51を中心として、螺旋状に配列されている。このような配置にすれば、各ギアと他のギアの支持軸とが相互に接触することを避けつつ、複数のギアをコンパクトに配置できる。
【0034】
また、
図6に示すように、本実施形態では、最終ギア支持軸51に対して第1支持軸411と第2支持軸421とがなす角度θ1と、最終ギア支持軸51に対して第2支持軸421と第3支持軸431とがなす角度θ2とが、それぞれ90°以下となっている。このようにすれば、3つの複合ギア41〜43を、いずれも、最終ギア5に対して一方向に偏った位置に、配置できる。本実施形態では、3つの複合ギア41〜43が、いずれも、最終ギア5より高い位置に、配置されている。その結果、複数のギアの配置が、よりコンパクトとなっている。
【0035】
清掃ロボットに搭載されるホイールユニット1が小型化されれば、清掃ロボットの他の部位の設計上の自由度が、向上する。例えば、清掃ロボットに、より大型のバッテリー、ダストボックス、または吸引ブロワを使用して、清掃ロボットの性能を向上させることができる。また、バッテリー、ダストボックス、吸引ブロワ等のサイズを維持しつつ、清掃ロボットを小型化することも可能となる。清掃ロボットのサイズを小さくすれば、電力消費量が抑えられるとともに、より狭い隙間を清掃することも可能となる。
【0036】
ギアケース7は、略円弧状の上部71と、略水平方向に広がる平坦な底部72とを、有している。ギアケース7の上部71は、
図6のように軸方向に見たときに、車輪6の接地面621よりやや内側において、接地面621に沿って略円弧状に広がっている。一方、ギアケース7の底部72は、最終ギア5の下方に接近した高さ位置に、配置されている。このように、ギアケース7は、車輪6に対して上側に偏った位置に、配置されている。そして、ギアケース7の底部72と地面との間には、部材が配置されない空間が、確保されている。これにより、走行時におけるギアケース7と地面との接触が、起きにくくなる。
【0037】
なお、本実施形態のギアケース7は、底部72付近における入力側の面から、軸方向に突出する板状のリブ73を、有している。そして、リブ73の上方に、モータ2が配置されている。本実施形態のホイールユニット1を、清掃ロボットに取り付けるときには、清掃ロボットの枠体に、リブ73がねじ等で固定される。
【0038】
本実施形態のギアケース7は、
図3および
図6のように軸方向に見たときに、車輪6の接地面から特定の方向に、はみ出していない。このため、清掃ロボットの左右に、同一構造のホイールユニット1を、反転させて配置できる。清掃ロボットの左側と右側とで、ホイールユニット1の設計を変更する必要がないため、清掃ロボットの製造工数や製造コストを低減できる。
【0039】
また、本実施形態では、3つの複合ギア41〜43の小径ギア部413,423,433の径が、いずれも、モータ2の回転部22の径より小さい。また、本実施形態では、任意の複合ギア41〜43の大径ギア部412,422,432の直径と、最終ギア5の直径との和が、車輪6の接地面621の半径より大きい。モータ2の回転部22の径が大きければ、大径のマグネット221を使用して、高いトルクを発生させることができる。一方、大径ギア部412,422,432の径が大きく、小径ギア部413,423,433の径が小さければ、減速機構4の減速比が大きくなる。したがって、トルクをより高めることができる。
【0040】
また、複合ギア41〜43が樹脂からなる場合であっても、各複合ギア41,42,43の径を大きく設計すれば、高い耐久性を得ることができる。
【0041】
<2−3.回転支持部について>
上述の通り、このホイールユニット1では、車輪6の接地面621に囲まれた略円筒状の領域の内側に、最終ギア5の一部分が配置されている。このような構造は、ホイールユニット1の軸方向の寸法を小さくできる点で優れている一方、ギアケース7に対する回転支持部81の支持構造を、軸方向に広くとることが難しい、という問題がある。
【0042】
この点を考慮し、このホイールユニット1では、回転支持部81の外径が、最終ギア支持軸51の外径より、大きくしている。このようにすれば、回転支持部81とギアケース7の円孔部70との接触部を広く取ることが出来る。したがって、回転支持部81の外周面とギアケース7の円孔部70との摺動部における面圧が減少し、摺動部の摩耗がより小さくなる。その結果、ギアケース7に対する回転支持部81の支持構造において、高い耐久性を得ることができる。
【0043】
<3.第3実施形態>
続いて、第3実施形態に係るホイールユニット1Bについて、第2実施形態との相違点を中心に、説明する。
【0044】
図7は、第3実施形態に係るホイールユニット1Bの側面図である。
図8は、ギアケース7Bを切断して示した、ホイールユニット1Bの側面図である。第2実施形態と同じように、このホイールユニット1Bは、モータ2B、ピニオンギア3B、減速機構4B、最終ギア5B、車輪6B、およびギアケース7Bを、備えている。モータ2Bを駆動させると、モータ2Bの駆動力が、ピニオンギア3B、減速機構4B、および最終ギア5Bを介して、車輪6Bに伝達される。これにより、車輪6Bが回転する。
【0045】
図8に示すように、本実施形態では、減速機構4Bを構成する3つの複合ギア41B〜43Bのうち、第1複合ギア41Bが、最終ギア5Bを支持する最終ギア支持軸51Bに、支持されている。すなわち、第1複合ギア41Bと最終ギア5Bとが、共通の最終ギア支持軸51Bに、支持されている。最終ギア支持軸51Bは、ギアケース7Bに対して、非回転に固定されている。第1複合ギア41Bおよび最終ギア5Bは、最終ギア支持軸51Bに対して、それぞれ独立して回転する。
【0046】
このように、減速機構に含まれる少なくとも1つの複合ギアの支持軸と、最終ギアの支持軸とを共通化すれば、ギアケース7の内部において、複数のギアを、よりコンパクトに配置できる。
【0047】
図9および
図10は、清掃ロボット9Bに取り付けられたホイールユニット1Bの側面図である。この清掃ロボット9Bは、ホイールユニット1Bを下方へ向けて付勢する、一対のサスペンション機構91Bを備えている。一対のサスペンション機構91Bは、進行方向に配列されている。各サスペンション機構91Bは、上下に伸縮する弾性部材911Bを、備えている。
【0048】
ギアケース7Bは、進行方向前方と進行方向後方とに突出した、一対の受け部74Bを有している。一対の弾性部材911Bの下端部は、これらの受け部74Bの上面に、当接している。また、一対の受け部74Bには、それぞれ、上下方向に延びる貫通孔741Bが、形成されている。貫通孔741Bには、上下に延びるガイド軸912Bが、挿入される。
【0049】
清掃ロボット9Bの走行時には、一対の弾性部材911Bが、外力に応じて弾性的に伸縮する。そうすると、清掃ロボット9Bの枠体に対して、ホイールユニット1Bが相対的に上下に移動する。これにより、清掃ロボット9Bは、凹凸のある地面の上を、安定して走行できる。
【0050】
本実施形態では、ギアケース7Bの内部に配置された減速機構4Bおよび最終ギア5Bと、受け部74Bの貫通孔741Bとが重ならないように、複数のギアが配置されている。すなわち、上述のように、第1複合ギア41Bと最終ギア5Bとが、共通の最終ギア支持軸51Bに支持されている。また、第1複合ギア41Bと第2複合ギア42Bとが、略上下方向に配列されている。その結果、減速機構4Bおよび最終ギア5Bの全体の進行方向の寸法が、小さくなっている。これにより、減速機構4Bおよび最終ギア5Bと、受け部74Bの貫通孔741Bとが、互いに重なることなく、配置されている。
【0051】
本実施形態では、ホイールユニット1Bが有する一対の受け部74Bと、清掃ロボット9Bに設けられた弾性部材911Bおよびガイド軸912Bとで、サスペンション機構91Bが構成されている。ただし、ホイールユニットに弾性部材およびガイド軸を組み込み、ホイールユニット自体が、完成されたサスペンション機構を備えるようにしてよい。
【0052】
<4.第4実施形態>
図12は、第4実施形態に係るホイールユニット1Dの側面図である。
図13は、最終ギア支持軸51Dと第2ギア支持軸52Dの中心を含む平面でギアケース7Dを切断した場合の、ホイールユニット1Dの断面図である。このホイールユニット1Dは、モータ2D、ピニオンギア3D、減速機構4D、最終ギア5D、車輪6D、およびギアケース7Dを備え、最終ギア5Dと車輪6Dの間に回転支持部81Dを備えている。モータ2Dを駆動させると、モータ2Dの駆動力が、ピニオンギア3D、減速機構4D、および最終ギア5Dを介して、車輪6Dに伝達される。これにより、車輪6Dが回転する。
【0053】
図13に示すように、本実施形態では、減速機構4Dを構成する3つの複合ギア41D〜43Dのうち、第1複合ギア41Dが、最終ギア5Dを支持する最終ギア支持軸51Dに、支持されている。すなわち、第1複合ギア41Dと最終ギア5Dとが、共通の最終ギア支持軸51Dに、支持されている。最終ギア支持軸51Dは、ギアケース7Dに対して、最終ギア支持軸支持部54Dにより非回転に支持されている。第1複合ギア41Dおよび最終ギア5Dは、最終ギア支持軸51Dに対して、それぞれ異なる速度で
回転する。
【0054】
このように、減速機構に含まれる少なくとも1つの複合ギアの支持軸と、最終ギアの支持軸とを共通化すれば、ギアケース7Dの内部において、複数のギアを、よりコンパクトに配置できる。
【0055】
ギアケース7Dは、円環形状のスリーブ部材70D、円筒形状の内周面を備えたスリーブ保持部77D、該内周面を越えて径方向内側に向けて拡がる環状のストッパ板部78Dを備える。スリーブ部材70Dは最終ギア支持軸51Dと同軸に配置され、スリーブ部材70Dの外周面は、スリーブ保持部77Dの内周面および、ストッパ板部78Dの入力側の面に接している。この構成とすることで、スリーブ部材70Dをより安定に保持できる。
【0056】
最終ギア5Dの出力側に隣接した位置には、ギアケース7Dに支持されつつ回転する回転支持部81Dが、設けられている。回転支持部81Dは、最終ギア5Dと車輪6Dとの間において、スリーブ部材70Dの内周面は、回転支持部81Dの外周面と潤滑剤を介して接している。
【0057】
また、回転支持部81Dの外径は最終ギア支持軸51Dの外径よりも大きい。この構成により、回転支持部81Dとスリーブ部材70Dの接触部が広く確保される。その結果、回転支持部81Dの外周面とギアケース7の円孔部70Dとの摺動部における面圧が減少し、摺動部の摩耗がより小さくなる。その結果、磨耗が減少し、回転支持部81Dの支持構造において、良好な耐久性を得ることができる。
【0058】
最終ギア5D及び回転支持部81Dは、連続した材質からなる一つの部材の各部分であり、樹脂の射出成型法によって成形されたものである。このようにすれば、部品点数が削減され、ホイールユニット1Dの組み立てが容易となる。
【0059】
最終ギア5Dは、複数の歯が周方向に並ぶ外側歯部52Dと、外側歯部52Dの径方向内側に配置される円筒形状の内側筒部53Dとを備える。内側筒部53Dの入力側端部は、外側歯部52Dの入力側端部よりも、入力側寄りに位置する。内側筒部53Dの径方向内側には最終ギア支持軸51Dが収容され、最終ギア支持軸51Dの出力側端部と内側筒部53Dとの間には間隙が備えられている。
【0060】
また、最終ギア5Dの歯底円直径(
図13中のdr)は回転支持部81Dの外径よりも大きい。更にスリーブ部材70Dの外周面は歯底円直径よりも大きい。この構成とすることで、最終ギア5Dはギアケース7Dと接触しにくくなる。なお、この構成は後述するスリーブ当たり面56Dを配置する為の場所を確保する為にも有効である。
【0061】
スリーブ部材70Dは、入力側の端面に環状凸部701Dを備える。環状凸部701Dは、最終ギア5Dの出力側に備えられたスリーブ当たり面56Dと接触可能である。すなわち、最終ギア5D及び第1複合ギア41Dの各部寸法には一定の“遊び”を見込んでおり、これらギアを軸方向他方側、即ち図の上側に押し付けた状態では、環状凸部701はスリーブ当たり面56Dに接する。しかし、接触する部分の形状が凸であり、接触面積が小さい為、接触に伴う摩擦力は比較的小さくて済む。
なお、本願の請求項においては、“接触する”との表現が用いられているが、これは実際には上述のように“接触可能な状態にある”事を意味する。軸受には必ず一定量の遊びが伴い、歯車各部を遊びの範囲で動かすことにより、各部を隣接する部材と接触状態、非接触の状態とする事ができる。しかし、このような場合、歯車機構各部は接触し得る事を前提に設計し、製造される必要がある。よって、実際には接触可能な寸法関係にあるだけで接触しているとは限らなくとも、本願請求項においては、軸受の遊びの範囲内で接触しうる場合には、接触する/接触している、との形容を用いる。
【0062】
また、内側筒部53Dの入力側端部と、第1複合ギア41Dの軸方向出力側端部の間には最終ギア支持軸51Dを囲む環状の第1スラストワッシャー54Dが介在する。このような構成とすることで、それぞれ異なる速度で回転する最終ギア51Dと第1複合ギア41Dとが接触することに起因する摩耗を減らすことができる。
【0063】
ギアケース7Dには、最終ギア支持軸支持部79Dが設けられ、最終ギア支持軸51Dは最終ギア支持軸支持部79Dに支持されている。最終ギア支持軸51Dの上端は、スリーブ保持部77D、及びスリーブ部材70Dの軸方向の上端と下端の間に位置する。この構成を取ることにより、最終ギア支持軸51Dの上端は、間接的にスリーブ保持部77Dに支持される。このため、上端が自由端になっているにもかかわらず、最終ギア支持軸51Dはギアケース7Dによって安定して保持されている。
【0064】
また、最終ギア支持軸支持部79Dと第1複合ギア41Dの入力側端部との間には、最終ギア支持軸51Dを囲む環状の第2スラストワッシャー55Dが介在する。このような構成とすることで、ギアケース7Dと第1複合ギア41Dが接触することに起因する磨耗を減らすことができる。
【0065】
<5.変形例> 以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0066】
例えば、
図11のホイールユニット1Cのように、ギアケース7Cに、モータ2Cを収容するモータカバー75Cを、取り付けてもよい。この例では、モータ2Cが、ギアケース7Cとモータカバー75Cとの間に介在する隔壁となる取付板76Cに、固定されている。このようにすれば、ギアケース7Cに対して、モータ2Cを強固に固定できる。また、モータ2Cの回転部22Cが、清掃ロボット内の他部材や、外部のごみまたは人に接触することを、より確実に防止できる。
【0067】
減速機構が有する複合ギアの数は、上記の実施形態のように3つであってもよく、2つまたは4つ以上であってもよい。ただし、小型のモータを使用しつつ高いトルクを得るためには、3つ以上の複合ギアを使用することが、好ましい。また、複合ギアの大径ギア部と小径ギア部とを、別個の部材として用意し、互いに固定してもよい。
【0068】
各複合ギアの支持軸は、ギアケースに対して回転可能に支持されていてもよい。その場合には、支持軸とともに複合ギアが回転するように、支持軸と複合ギアとを固定すればよい。また、最終ギア支持軸は、ギアケースに対して回転可能に支持されていてもよい。その場合には、最終ギア支持軸とともに、最終ギア、回転支持部、および車輪が回転するように、最終ギア支持軸、最終ギア、回転支持部、および車輪を、互いに固定すればよい。
【0069】
ホイールユニットの軸方向寸法小さくすることが好ましい場合は、車輪の接地面に囲まれた略円筒状の領域の内側には、最終ギアの少なくとも一部分が配置されていればよい。当該領域の内側に、最終ギアの全体を配置すると、より好ましい。また、当該領域の内側に、最終ギアだけではなく、複合ギアも配置すれば、さらに好ましい。
【0070】
ギアケースに対する回転支持部の支持構造は、すべり軸受以外の軸受構造であってもよい。例えば、回転支持部とギアケースの円孔部との間に、ボールベアリングが設けられていてもよい。ただし、上記の実施形態のように、すべり軸受を採用すれば、ギアケースに対する回転支持部の支持構造を、少ない部品点数で実現できる点で、好ましい。
【0071】
ギアケースの底面は、
図6のような平坦面であってもよく、
図8のような曲面であってもよく、他の形状であってもよい。ただし、ギアケースを、車輪に対して上側に偏った位置に配置するためには、ギアケースの底面を、車輪の接地面より曲率半径の大きい曲面または平坦面とすることが、好ましい。
【0072】
また、最終ギアを構成する部材と、車輪との間に、他の部材が介在していてもよい。すなわち、最終ギアを構成する部材が、他の部材を介して、車輪に固定されていてもよい。
【0073】
スリーブ部材70Dの環状凸部701Dと、最終ギア5Dの出力側に備えられたスリーブ当たり面56Dとの間には軸方向遊び以下の間隙が設けられていてもよい。
【0074】
この場合、最終ギア5Dが最終ギア支持軸51Dに回転可能に支持されていることから、軸方向にも移動可能であり、最終ギア5Dの軸方向の移動に応じて、スリーブ当たり面56Dは、環状凸部701Dと接する状態にあってもよい。
【0075】
また、本発明のホイールユニットは、要求されるサイズやトルクを考慮すると、家庭用の清掃ロボットに特に適しているが、他の電化製品に使用されるものであってもよい。例えば、物品を搬送するためのロボットや、無線で操縦される玩具に、使用されるものであってもよい。また、屋内または屋外において、人を乗せて走行する電動の車椅子に、使用されるものであってもよい。また、本発明のホイールユニットは、家庭用の電化製品に使用されるものであってもよく、業務用の装置に使用されるものであってもよい。
【0076】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。