特許第5958469号(P5958469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958469
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】超音波探触子
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20160719BHJP
   H04R 1/28 20060101ALI20160719BHJP
   H04R 1/32 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   A61B8/12
   H04R1/28 330
   H04R1/32 330
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-527880(P2013-527880)
(86)(22)【出願日】2012年8月3日
(86)【国際出願番号】JP2012004940
(87)【国際公開番号】WO2013021598
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年2月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-172769(P2011-172769)
(32)【優先日】2011年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【弁理士】
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】日下 圭吾
【審査官】 宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−281044(JP,A)
【文献】 特開昭62−194840(JP,A)
【文献】 特開平02−286143(JP,A)
【文献】 特開平02−343630(JP,A)
【文献】 特開昭57−136443(JP,A)
【文献】 特開昭59−085652(JP,A)
【文献】 特開昭59−111747(JP,A)
【文献】 特開昭62−094139(JP,A)
【文献】 特開昭62−179439(JP,A)
【文献】 特開昭62−201145(JP,A)
【文献】 特開2005−334107(JP,A)
【文献】 特開2006−212287(JP,A)
【文献】 特開2008−018247(JP,A)
【文献】 実開昭58−080210(JP,U)
【文献】 実開昭59−163956(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/12
H04R 1/28
H04R 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する超音波素子ユニットと、
枠に音響媒体液と前記超音波素子ユニットが格納され保持部材で封止された先端格納部と、
前記保持部材の表面に配設されたカバー部材と、
前記保持部材と前記カバー部材により形成される空間に前記音響媒体液を貯留する音響媒体液溜まり部を備え、
前記保持部材は、前記音響媒体液溜まり部と前記先端格納部の内部と連通する少なくとも1つの連通路を有し、
前記カバー部材は、前記音響媒体液溜まり部と前記先端格納部の外部と連通する少なくとも1つの換気路を有し、
前記音響媒体液溜まり部の断面積は、前記換気路が連通する部分における断面積のほうが、前記連通路が連通する部分における断面積よりも大きく構成され
前記換気路は、前記音響液体溜まり部と外気とを連通させる、
超音波探触子。
【請求項2】
前記音響液体溜まり部には気体領域が存在し、前記換気路は前記気体領域に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記音響媒体液溜まり部の断面積は、前記換気路が連通する部分から前記連通路が連通する部分に向かって連続的に小さくなるように構成されている請求項1又は2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記音響媒体液溜まり部は、前記音響媒体液溜まり部の周方向に沿って径方向の隙間が変化するように形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記隙間は、前記換気路が連通する部分のほうが、前記連通路が連通する部分よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記換気路は、前記連通路に対して前記音響媒体液溜まり部の中心点を対称点として離間した位置に配置された請求項1からのいずれか1項に記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記カバー部材は透光性を有する材質により構成された請求項1からのいずれか1項に記載の超音波探触子。
【請求項8】
前記音響液体溜まり部には液体領域が存在し、前記連通路は前記液体領域に接続されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の超音波探触子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断に用いる超音波探触子の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
超音波断層像を得る超音波探触子は、体内の腫瘍などの診断に用いられ、超音波の送受波を行なう超音波素子などを内蔵した先端格納部と、先端格納部を体内の所定の位置まで挿入するための挿入部と、全体を把握して操作するグリップ部から構成されている。
【0003】
このような超音波探触子は、超音波を送受信する超音波素子を、生体に近い音響インピーダンスを有する音響媒体液を封入した先端格納部内で回転または揺動させるものが知られている。このような超音波探触子においては、超音波素子と、これを回転または揺動させるための機構部とが先端格納部内に配置されている。
【0004】
先端格納部の超音波素子の送受波面に対向する部分には、超音波が透過し易い材質で作られたウインドウが設けられており、超音波素子の送受波面とウインドウの間の隙間には、音響媒体液が充填されている。
【0005】
この音響媒体液は、超音波素子の送受波面とウインドウとの間を音響的に整合させて効果的に超音波の送受波を行なうためのものであり、原理的には超音波素子の送受波面とウインドウの間の隙間だけに充填すればよい。しかし、現実的にはこの隙間だけに充填することは難しく、一般的には、超音波素子が内蔵される空間を密閉し、その密閉空間内に充填する方法がとられている。
【0006】
一方、音響媒体液は、一般に、温度によって膨張収縮するもので、音響媒体液を密閉空間に充填した場合、音響媒体液の膨張によって、密閉空間を形成するケースの内圧が上り音響媒体液漏れやき裂等の不具合を発生することになる。また、音響媒体液を密封空間に注入する工程でも気泡が混入してしまうことがある。
このような気泡が超音波素子とウインドウの間に入り込むと、送受波される超音波が気泡により、減衰したり、反射を起したりして鮮明な超音波断層像が得られなくなるという問題がある。
【0007】
このような不具合を防止するために、音響媒体液を充填した密閉空間と接続されて音響媒体液の膨張収縮を吸収するダイアフラムが、密閉空間の外に設けられている(例えば、特許文献1)。
【0008】
また、ダイアフラムと共に、気泡と音響媒体液のそれぞれの表面張力及び比重の違いにより、気泡を音響媒体液充填空間外に移動させるための気泡溜まり部を追加して設けている方法もとられている(例えば、特許文献2)。
【0009】
以上のように、ウインドウを設けた密閉空間を有し、その密閉空間の中に超音波を送受波する超音波素子とそれを回転または揺動させる機構部などを内蔵し、その密閉空間の内部に音響媒体の音響媒体液を充填するとともに、密閉空間の外に密閉空間と接続されたダイアフラムおよび気泡溜まり部を設けた構造の超音波探触子が用いられている。
【0010】
図7は、従来の超音波探触子の全体構造を示す断面図である。この超音波探触子は、体腔内に挿入される先端格納部7を含む挿入部23と、体腔外において操作者によって把持されるグリップ部24とを備えている。
【0011】
先端格納部7は、ウインドウ9とフレーム10cが接合されて構成されており、その内部には超音波素子ユニット2が格納されている。
【0012】
超音波素子ユニット2は、超音波素子3と、これを保持し、回転させる回転機構部を含む。回転機構部は、磁気により回転が誘導される自己回転型モータであり、超音波素子3を搭載したモータロータ4と、このモータロータ4の回転中心8を中心として回転自在に支持するブラケット5と、モータロータ4に回転力を付与するための磁石(図示せず)とを備えている。このような回転機構部によれば、モータロータ4の回転に連動させて、超音波素子3を回転させ、円軌道による超音波の機械走査を実現することができる。また、図示を省略するが、超音波素子ユニット2からは、超音波素子3および回転機構部を駆動させるための電気信号を送受信するための複数の信号線が引き出されており、この信号線は、挿入部23内を通してグリップ部24に導かれケーブル11に繋がれる。
【0013】
なお、回転機構部のブラケット5は、フレーム10c上に固定されている。フレーム10cは、ウインドウ9の内壁に密接するように設けられており、先端格納部7を液密に封止している。
【0014】
先端格納部7には、音響媒体液6が充填されている。また、フレーム10cには貫通孔が設けられており、この貫通孔には、挿入部23を通ってグリップ部24にまで伸びた金属パイプ25が連結され、この金属パイプ25内にも音響媒体液6が充填されている。
【0015】
内部に音響媒体液6が充填された金属パイプ25には、金属パイプ25の内部空間と連結されて音響媒体液6が充填されたダイアフラム26が取り付けられている。このダイアフラム26は、ゴムなどの弾力性のある材質で作られたもので、金属パイプ25の内部と先端格納部7の内部に充填された音響媒体液6の膨張収縮を吸収して、音響媒体液6の膨張による液漏れや部材の破損を防止するものである。また、金属パイプ25には音響媒体液6を注入するための液体注入孔27が設けられて液栓28によって閉じられている。
【0016】
グリップ部24からはケーブル11が引き出されており、超音波探触子は、このケーブル11を介して超音波診断装置に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−298463号公報
【特許文献2】特開2005−334107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、従来の超音波探触子では、音響媒体液を先端格納部に注入するときに、先端格納部とつながる金属パイプの液体注入孔に音響媒体液を注入し液栓をしていた。このため、空気が、液栓をする際に液体注入孔から先端格納部に入ってしまうことがあった。また、ダイアフラムは、ゴムなどの材質で作られるため、温度変化などでゴムが劣化し亀裂が入り、空気がダイアフラムを通して先端格納部に入ってしまうことがあった。
【0019】
このように、先端格納部に入った空気は音響媒体液内で気泡となり、気泡が先端格納部の超音波素子とウインドウの間に入り込むと、送受波される超音波が気泡により減衰または反射をおこすので、高品質な超音波断層像を得ることができないという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本開示技術の一態様は、従来の課題を解決するもので、超音波素子を内蔵する先端格納部内に空気が入ることを防止し、高品質な超音波断層像を得ることができる技術を提供する。
【0021】
本開示技術の一態様は、超音波を送受信する超音波素子ユニットと、枠に音響媒体液と前記超音波素子ユニットが格納され保持部材で封止された先端格納部と、前記保持部材の表面に配設されたカバー部材と、前記保持部材と前記カバー部材により形成される空間に前記音響媒体液を貯留する音響媒体液溜まり部を備え、前記保持部材は、前記音響媒体液溜まり部と前記先端格納部の内部と連通する少なくとも1つの連通路を有し、前記カバー部材は、前記音響媒体液溜まり部と前記先端格納部の外部と連通する少なくとも1つの換気路を有し、前記音響媒体液溜まり部の断面積は、前記換気路が連通する部分における断面積のほうが、前記連通路が連通する部分における断面積よりも大きく構成され、前記換気路は、前記音響液体溜まり部と外気とを連通させることを特徴としている。
【0022】
本開示技術の一態様によれば、超音波素子ユニットを格納する先端格納部に音響媒体液が充填され、先端格納部と連通路を通じて隣接配置された音響媒体液溜まり部には、連通路からの音響媒体液を溜める空間を形成する。
【0023】
これにより、本開示技術に係る超音波探触子に対して先端格納部に音響媒体液を注入する工程において、気泡が先端格納部に残留することなく音響媒体液を充填することが可能となる。注入方法としては、音響媒体液溜まり部の空間から規定した量の音響媒体液をシリンジ等により換気路から先端格納部に定量注入する。次に、減圧条件下に置くことにより音響媒体液の注入時に混入した先端格納部内の気泡を膨張させ、音響媒体液溜まり部と外気とを連通させる換気路から先端格納部外へ排気させる。
【0024】
この結果、音響媒体液溜まり部内に適正量の音響媒体液を保持して、先端格納部内の気泡の残留を防止することができる。
【0025】
また、音響媒体液溜まり部内にて、超音波探触子の使用時の温度変化に対する音響媒体液の膨張収縮を吸収することができる。
【0026】
さらにまた、超音波探触子は、音響媒体液溜まり部は、周方向に沿って空間断面積が最も小さくなる最小隙間部から空間断面積が最も大きくなる最大隙間部に向かって空間断面積が変化しており、最小隙間部の近傍には連通路が形成され、最大隙間部の近傍には換気路が形成される。
【0027】
ここでは、上述した音響媒体液溜まり部は、その一部が連通路に対して連通している。そして、音響媒体液溜まり部は、音響媒体液が存在する連通路の近傍において隙間の大きさ(断面積)が最小となる最小隙間部を、換気路の近傍において隙間の大きさが最大となる最大隙間部を、それぞれ有している。さらに、最小隙間部には連通路が、最大隙間部には換気路がそれぞれ近傍に形成されている。
【0028】
これにより、音響媒体液溜まり部においては、換気路から連通路に向かって離間するにつれて隙間の大きさが小さくなっていくため、音響媒体液の表面張力によって換気路とは反対側に向かう吸引力を発生させることができる。この結果、音響媒体液溜まり部において、音響媒体が換気路から外部へ漏れ出してしまうことを防止しつつ、音響媒体液を貯留することができる。
【0029】
また、上記構成によれば、音響媒体液溜まり部を、連通路近傍の最小隙間部から換気路側に近づくほど、音響媒体液溜り部内の高さ距離が大きくなるように周方向に対して傾斜する形状に形成した。そのため、超音波探触子が外部から衝撃を受けたり、姿勢が急激に変化したりした際でも、音響媒体液溜まり部における空気と音響媒体液との界面が、換気路近傍にとどまって、周方向に移動することが防止される。この結果、気泡の移動に伴う音響媒体液の外部へ洩れ出しを防止できる。また、換気路近傍箇所ほど、音響媒体液溜まり部の貯留空間断面積が大きいとともに、界面が半径方向に延びる形状となるので、界面の面積やこれに伴う表面張力の変動が少ない。
【0030】
上記説明は、超音波を機械的に走査する超音波素子ユニットを用いた探触子を例示したが、本開示技術はこれに限定されるものではなく、アレイ素子を用いた電子走査の超音波素子ユニットを用いた超音波探触子であってもよい。音響媒体液溜まり部内の空間形状は、カバー部材に設けてもよく、或いはそれに代えてフレームに設けてもよい。
【0031】
このように、音響媒体液溜まり部にシール機能をもつ空間形状を採用することにより、従来構成のパイプ部材、ダイアフラム、専用の液体注入孔、液栓を必要としない。従って、超音波探触子内部の機構部を簡素化でき、小スペースでの部品配置が可能で、部品点数も少なくなり、総じて超音波探触子の軽量化、小型化および低価格化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
このように、本開示技術の一態様は、超音波素子を内蔵する先端格納部内に空気が混入することを防止できるので、高品質の超音波断層像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本開示技術の実施の形態1における超音波探触子の全体構造を示す断面図
図2】本開示技術の実施の形態1における超音波探触子の先端格納部内の構造を示す断面図
図3】本開示技術の実施の形態1における超音波探触子を使用した超音波診断装置の外観斜視図
図4A】本開示技術の実施の形態1における超音波探触子の先端格納部内の隙間空間を示している斜視図
図4B】本開示技術の実施の形態1における超音波探触子の先端格納部内の隙間空間を示す断面図
図5】本開示技術の実施の形態2における超音波探触子の先端格納部内の構造を示す断面図
図6】本開示技術の実施の形態2における超音波探触子の先端格納部内の隙間空間を概念的に示している斜視図
図7】従来の超音波探触子の全体構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本開示技術の実施をするための最良の形態を具体的に示した実施の形態について、図面とともに記載する。
【0035】
(実施の形態1)
図1は、本開示技術に係る超音波探触子1の構造の一例を示す断面図である。また、図2は、図1の先端格納部7を拡大した断面図を示し、図3は超音波探触子1を使用した超音波診断装置の外観斜視図を示したものである。なお、図7に示す従来の超音波探触子と同一の要素には、同一の符号を付している。
【0036】
図1において、この超音波探触子1は、超音波診断に用いられる探触子であり、その一部を被検者の体腔内に挿入し、この体腔内において超音波走査を行う、体腔内挿入型探触子である。この超音波探触子は、体腔内に挿入される先端格納部7を含む挿入部23と、体腔外において操作者によって把持されるグリップ部24とを備えている。以下、超音波探触子1のグリップ部24から挿入部23への方向を挿入軸方向と称する。
【0037】
先端格納部7は、枠(以下、ウインドウという)9と保持部材(以下、フレームという)10aが接合されて構成され、その内部に超音波素子ユニット2が格納されている空間部と、カバー部材17aとフレーム10aが接合され構成された音響媒体液溜まり部15aなる空間部から形成されている。
【0038】
超音波素子ユニット2は、図2に示すように、超音波素子3と、これを保持し、回転させる回転機構部を含む。回転機構部は、磁気により回転が誘導される自己回転型モータであり、超音波素子3を搭載したモータロータ4と、このモータロータ4の回転中心8を中心として回転自在に支持するためのフレーム10aに固定されたブラケット5と、モータロータ4に回転力を付与するための磁石(図示せず)とを備えている。このような回転機構部によれば、モータロータ4の回転に連動させて、超音波素子3を回転させ、円軌道による超音波の機械走査を実現することができる。
【0039】
また、超音波素子ユニット2からは、超音波素子3および回転機構部を駆動させるための電気信号を送受信するための複数の信号線12が引き出されており、この信号線12は、フレーム10aに設けた配線孔を通り、挿入部23内を通してグリップ部24に導かれケーブル11に繋がれる。
【0040】
グリップ部24からはケーブル11が引き出されており、超音波探触子1は、このケーブル11を介して図3の超音波診断装置13に接続される。
【0041】
次に、図3において、超音波診断装置13からの電気信号(送信信号)が、超音波診断装置13と接続されるコネクタ29に取り付けられたケーブル11を通じて超音波探触子1の超音波素子3に送信される。この送信信号は、図2の超音波素子3において超音波に変換され、音響媒体液6を伝播し、ウインドウ9から被検物に送波される。この超音波は被検物で反射され、その反射波の一部が超音波素子3で受波され、電気信号(受信信号)に変換されて、図3の超音波診断装置13に送信される。受信信号は、超音波診断装置13において、画像データに変換されディスプレイ14に表示される。
【0042】
なお、先端格納部7を液密に封止しているため、信号線12はウインドウ9の内壁に密接するように設けられフレーム10aの配線孔において接着剤等にて封止されている。また、先端格納部7には音響媒体液6が充填されている。
【0043】
次に、本開示技術の実施の形態1における超音波探触子1の先端格納部7を図2図4A図4Bを用いて詳細に説明する。
【0044】
図4Aは、図2のフレーム10aとカバー部材17aとで囲まれた空間(音響媒体液溜まり部15a)の形状を示す斜視図である。図4Bは、図4Aの音響媒体液溜まり部15aをAB間で切断したときの空間の断面図である。
【0045】
まず、音響媒体液溜まり部15aの空間形状を、最小隙間空間部19から換気路18aに繋がる最大隙間空間部20に近づくほど、音響媒体液溜まり部15a内におけるカバー部材17aとフレーム10aとの離間距離が大きくなるように周方向に対して傾斜する形状に形成した。このため、換気路18aが連通する部分の空間の断面積が、連通路16aの連通する部分の空間の断面積よりも大きく構成されている。
【0046】
この音響媒体液溜まり部15aの空間形状は、図4Aの斜視図に示すように、図2のフレーム10aに設けられた連通路16aに繋がる最小隙間空間部19と、カバー部材17aに設けられた換気路18aに繋がる最大隙間空間部20が設けられている。また、音響媒体液溜まり部15aの最小隙間空間部19と最大隙間空間部20に挟まれた空間には、斜面空間部21が設けられている。この斜面空間部21は、最小隙間空間部19から最大隙間空間部20方向に向かうに従って、カバー部材17aとフレーム10aとの隙間距離が大きくなるように挿入軸方向と垂直になる周方向に対して傾斜する形状になっている。さらに、図2の連通路16a、換気路18aは、それぞれ、図4Aの連通路位置30a、換気路位置31aで音響媒体液溜まり部15aと繋がっている。
【0047】
なお、連通路16a側の音響媒体液溜まり部15aに設けられた最小隙間空間部19の挿入軸方向の厚さは、最大隙間空間部20の挿入軸方向の厚さより狭く、毛管現象が生じるように最も狭くなっている。一方、換気路18a側の音響媒体液溜まり部15aに設けられた最大隙間空間部20は、最小隙間空間部19から最大隙間空間部20へと挿入軸方向と垂直方向の周方向に向かって徐々に大きくなり、最大隙間空間部20では毛管現象が生じないような大きさの隙間になされている。
【0048】
次に、先端格納部7に音響媒体液6を充填させる手順を説明する。この音響媒体液6の充填量は、音響媒体液6が使用環境で最大膨張した状態でも、音響媒体液6が最大隙間空間部20には入らないように設定されている。つまり、空気と音響媒体液6の境界である図4Aの気液境界面22aが斜面空間部21内に位置するようにしている。これは、音響媒体液溜まり部15a内において音響媒体液6と空気とが、それぞれの表面張力及び比重の違いによって互いに分かれるようにするためである。よって、音響媒体液6は毛管現象により連通路16a近傍の狭い隙間に集り、空気は、音響媒体液溜まり部15a内の広い空間に集まる。
【0049】
これにより、超音波探触子1の使用環境の温度上昇などがあった場合でも、音響媒体液6の気液境界面22aが最大隙間空間部20内に入り込むことがなく、図2の換気路18aから音響媒体液6が洩れ出ることを防止できる。
【0050】
以上のように本開示技術によれば、超音波探触子1が外部から衝撃を受けたり、姿勢が急激に変化したりした際でも、音響媒体液溜まり部15aにおける空気と音響媒体液6との気液境界面22aが、毛管現象のため斜面空間部21内にとどまって、空気が最小隙間空間部19に入り込むことを防止できる。この結果、空気が連通路16aを通じてウインドウ9とフレーム10aによって囲まれ音響媒体液6が充填された空間に入り込まず、超音波素子3を内蔵する先端格納部7に空気による気泡の発生を防止できる。
【0051】
なお、本実施例では、連通路16aと換気路18aをそれぞれ1つずつ設けているが、それぞれを複数設けてもよいことは言うまでもない。
【0052】
また、本実施例では、換気路18aは、連通路16aと、音響媒体液溜まり部15aの中心に対してほぼ点対称に離間した位置に設けられている。
【0053】
また、音響媒体液溜まり部15aのテーパー形状による表面張力シール機能と併せることで、音響媒体液6が音響媒体液溜まり部15a内に貯留されるようになる。
【0054】
さらにまた、カバー部材17aが透光性を有する材料で構成されることにより、先端格納部7に音響媒体液6を充填する時、カバー部材17aを透して音響媒体液6を目視することができる。つまり、この場合、図2の先端格納部7を挿入軸方向である紙面の上方から下方方向に見た平面視において、音響媒体液6は、音響媒体液溜まり部15a内に挿入軸方向とほぼ垂直な平面に略C字状で貯留される。このとき、音響媒体液溜まり部15aのC字状の開口端が音響媒体液溜まり部15a内の気液境界面22aである。
【0055】
これにより、音響媒体液6を使用環境で最大膨張させ先端格納部7内に音響媒体液6を充填する時、上述のC字状の開いた部分を透明性の材料で構成したカバー部材17aを透してみれば気液境界面22aが最大隙間空間部20に入り込まないようにできる。よって、音響媒体液6が先端格納部7に充填できるとともに、適正な量の音響媒体液6を音響媒体液溜まり部15aに貯留させることができる。
【0056】
以上のように、本実施の形態1では、音響媒体液6が音響媒体液溜まり部15aに貯留するようにしたので、空気が先端格納部7内に入ることを防止できる。これにより、高品質な超音波断層像を得ることができる超音波探触子を提供できる。
【0057】
(実施の形態2)
第2の実施の形態について、図5及び図6を参照して説明する。
図5は、本開示技術の超音波探触子の先端格納部7内の構造を示す断面図であり、図6は、本実施の形態2の音響媒体液溜まり部15b内の空間形状および換気路18b、連通路16bの位置関係を概念的に示している斜視図である。
【0058】
図5の音響媒体液溜まり部15bの空間形状は、図6の斜視図に示すように、周方向に沿って径方向の隙間が漸次変化するように形成されている。すなわち、音響媒体液溜まり部15bの平面形状を二重円に例えたときに、内周の円の中心が連通路位置30b側に偏っている状態である。このため、換気路位置31bから連通路位置30bに近づくにつれ、二重円の内周と外周の間隔が挿入軸方向と垂直な方向で毛管現象が生じる程度に狭くなっている。なお、実施の形態1と同様に、音響媒体液溜まり部15b内の音響媒体液6には換気路18b側から連通路16b側に生じる表面張力によるシール作用のため、音響媒体液6が音響媒体液溜まり部15内に貯留されるようになる。
【0059】
また、音響媒体液6の充填量は、音響媒体液6を充填した状態において、超音波探触子の設置環境の温度上昇などがあった場合でも、音響媒体液6の気液境界面22bが換気路18bに達し、換気路18bから音響媒体液6が洩れ出ることがないように、音響媒体液6の体積膨張率および先端格納部7の構成部材の熱膨張率を考慮した気液境界面22bに位置するように設定されている。
【0060】
本実施の形態2では、音響媒体液溜まり部15b内において、気液境界面22bを境として、音響媒体液6を安定的に保持することができる。また、気泡は確実に気液分離されてこの音響媒体液溜まり部15b内の換気路18bと繋がる隙間の大きいほう方へ移動する。この結果、音響媒体液溜まり部15bが換気路18bを介して外気と連通している構成であっても、音響媒体液溜まり部15b内の音響媒体液6は常に隙間の小さいほうに貯留され、換気路18bから外部へ漏れ出すことを防止することができる。また、超音波探触子の姿勢に関わらず、音響媒体液溜まり部15b内の空気部分は移動しない。
【0061】
音響媒体液溜まり部15b内において音響媒体液6と空気とは、それぞれの表面張力及び比重の違いによって互いに分かれ、音響媒体液6は毛管現象によりフレーム10bに設けられた連通路16b近傍の狭い隙間に集まる。また空気は、音響媒体液溜まり部15b内の広い空間に集まる。
【0062】
そして、特に本開示技術によれば、実施の形態1と同様に、超音波探触子が外部から衝撃を受けたり、姿勢が急激に変化したりした際でも、隙間の小さい連通路16b側の表面張力の作用によって隙間が大きい換気路18b側へ、音響媒体液6が周方向に移動することを防止できる。よって、音響媒体液6が貯留された音響媒体液溜まり部15bを、換気路18bを介して外気と連通させた場合に外部から超音波探触子に衝撃を受けても、換気路18bからの音響媒体液6の漏れ出しを効果的に防止することができる。
【0063】
また、本実施例では、連通路16bと換気路18bをそれぞれ1つずつ設けているが、それぞれを複数設けてもよいことは言うまでもない。さらにまた、本実施例では、換気路18bは、連通路16bと、音響媒体液溜まり部15bの中心に対してほぼ点対称に離間した位置に設けられており、この位置が換気路18bからの音響媒体液6の漏出を防止する点で最も好ましい。よって、音響媒体液溜まり部15bの形状によるシール機能と併せることで、音響媒体液溜まり部15b内に貯留された音響媒体液6が、換気路18bから漏れ出してしまうことをより効果的に防止することができる。
【0064】
なお、カバー部材17bは透光性を有する材料で構成することにより、先端格納部7に音響媒体液6を充填する時、カバー部材17bを透して音響媒体液6を目視することができる。
【0065】
つまり、この場合、音響媒体液6は、平面視において、音響媒体液溜まり部15b内に略C字状に貯留される。
【0066】
これにより、先端格納部7内に音響媒体液6を充填していく過程において、音響媒体液溜まり部15b内の液面変動を観察することで、適正な量の音響媒体液6を貯留させることができる。
【0067】
以上のように、本実施の形態2では、音響媒体液6が音響媒体液溜まり部15bに貯留するようにしたので、空気が先端格納部7内に入ることを防止できる。これにより、高品質な超音波断層像を得ることができる超音波探触子を提供できる。
【0068】
本開示技術の一態様では、前記換気路は、前記音響液体溜まり部と外気とを連通させてもよい。また、本開示技術の一態様では、前記音響液体溜まり部には気体領域が存在し、前記換気路は前記気体領域に接続されていてもよい。
【0069】
また、本開示技術の一態様では、前記音響媒体液溜まり部の断面積は、前記換気路が連通する部分から前記連通路が連通する部分に向かって連続的に小さくなるように構成されていてもよい。
【0070】
また、本開示技術の一態様では、前記音響媒体液溜まり部は、前記音響媒体液溜まり部の周方向に沿って径方向の隙間が変化するように形成されていてもよい。
【0071】
また、本開示技術の一態様では、前記隙間は、前記換気路が連通する部分のほうが、前記連通路が連通する部分よりも大きいようにしてもよい。
【0072】
また、本開示技術の一態様では、前記換気路が、前記連通路に対して前記音響媒体液溜まり部の中心点を対称点として離間した位置に配置されたとしてもよい。これにより、音響媒体液の温度変化による体積膨張による換気路からの漏出防止のための音響媒体液溜まり部の容積確保が容易になる。
【0073】
また、本開示技術の一態様では、前記カバー部材が透光性を有する材質により構成されたとしてもよい。これにより、音響媒体液溜まり部内の音響媒体液の気液境界面の位置を外部から観察しながら、音響媒体液溜まり部内の空間の所定の位置に音響媒体液の気液境界面が位置するように、注入量の調整を行うことができ、音響媒体液溜まり部内における音響媒体液の充填量を精度よく管理することができる。
【0074】
また、音響媒体液溜まり部への音響媒体液の注入後に、減圧条件下に置いて、音響媒体液溜まり部内の気液境界面の位置の変化が無いことを観察することにより、完全に音響媒体液が充填できていることを確認することも可能となる。なお、音響媒体液溜まり部の透光性の部材は、音響媒体液溜まり部の全部あるいは一部に用いてもよい。
【0075】
また、本開示技術の一態様では、前記音響液体溜まり部には液体領域が存在し、前記連通路は前記液体領域に接続されているとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示技術は、音響媒体液内の気泡の残留を許容しない超音波探触子に利用可能である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7