(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明基材の前記光学調整層側とは反対側、及び/又は、前記透明導電層の前記第3の光学調整層側とは反対側に保護フィルムを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の透明導電体。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。なお、図面において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、場合により重複する説明は省略する。
【0022】
図1は、透明導電体の一実施形態を示す模式断面図である。透明導電体100は、フィルム状の透明基材10と透明導電層16と、透明基材10と透明導電層16との間に組成が異なる複数の層からなる光学調整層11と、を備える。透明導電体100は、さらに、透明基材10を挟むように一対のハードコート層20を備える。光学調整層11は、透明基材10から透明導電層16に向かって、第1の光学調整層13、第2の光学調整層14、及び第3の光学調整層15が積層された構造を有する。
【0023】
透明基材10と第1の光学調整層13との間には第1のハードコート層22が設けられている。また、透明基材10の第1のハードコート層22とは反対側には第2のハードコート層24が設けられている。すなわち、透明導電体100は、第2のハードコート層24、透明基材10、第1のハードコート層22、第1の光学調整層13、第2の光学調整層14、第3の光学調整層15、及び透明導電層16がこの順に積層された積層構造を有している。
【0024】
(透明基材10)
透明基材10は、例えば可撓性を有する有機樹脂フィルム又は有機樹脂シートである。本明細書における「透明」とは、可視光が透過することを意味しており、光をある程度散乱してもよい。光の散乱度合いについては、透明導電体100の用途によって要求されるレベルが異なる。一般に半透明といわれるような光の散乱があるものも、本明細書における「透明」の概念に含まれる。光の散乱度合いは小さい方が好ましく、透明性は高い方が好ましい。透明導電体100全体の全光線透過率は、例えば86%以上であり、好ましくは89%以上である。
【0025】
透明基材10としては、可撓性を有する有機樹脂フィルムが好適である。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、並びにトリアセチルセルロースフィルム等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルムが好ましい。
【0026】
透明基材10は、剛性の観点からは厚い方が好ましい。一方、透明基材10は、透明導電体100を薄膜化する観点からは薄い方が好ましい。このような観点から、透明基材10の厚みは、例えば10〜130μmである。透明基材の屈折率は、光学特性に優れる透明導電体とする観点から、例えば1.50〜1.70である。なお、本明細書における屈折率は、λ=633nm、温度20℃の条件下で測定される値である。
【0027】
透明基材10は、加熱時の寸法安定性が高いことが好ましい。一般に、可撓性の有機樹脂フィルムはフィルムの作製過程において、加熱によって膨張や収縮による寸法変化を生じる。有機樹脂フィルムの作製過程において、1軸延伸又は2軸延伸を行うことで、低コストで厚みが薄い透明基材10を作製することができる。透明導電層16を結晶化する工程、又は引出し電極を形成する工程等において、透明導電体100を加熱すると、透明基材10が熱収縮して寸法変化が生じる。このような寸法変化は、ASTM D1204又はJIS−C−2151に準拠して測定することができる。
【0028】
透明導電層16を結晶化させる際の加熱処理は、通常、加熱温度140℃及び加熱時間90分間程度で行う。この加熱処理前後の寸法変化率は、加熱前の寸法をLo、加熱後の寸法をLとしたとき、以下の式で求められる。
寸法変化率(%)=100×(L−Lo)/Lo
【0029】
寸法変化率(%)がプラスの場合は、加熱処理によって膨張したことを表し、マイナスの場合は、加熱処理によって収縮したことを表す。2軸延伸された透明基材10の寸法変化率は、延伸時の進行方向(MD方向)と横方向(TD方向)の両方において測定することができる。透明基材10の寸法変化率は、例えばMD方向にて−1.0〜−0.3%、TD方向にて−0.1〜+0.1%である。
【0030】
透明基材10は、加熱によって生じる熱収縮量が大きいものであってもよく、熱収縮量が小さいものであってもよい。熱収縮量が小さい透明基材10としてはポリカーボネート基材及びシクロオレフィン基材等が挙げられる。
【0031】
透明基材10は、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、及びオゾン処理からなる群より選ばれる少なくとも一つの表面処理が施されたものであってもよい。
【0032】
透明導電体100を、タッチパネルを構成する一対の透明電極パネル板のうちの入力側(表面側)の透明電極パネル板として用いる場合、指及びペン等の外部入力に対して適度に変形できるように、透明基材10は可撓性を有する有機樹脂フィルムであることが好適である。一方、透明導電体100を、入力側(表面側)の透明電極パネル板と対向して配置される内部側の透明電極パネル板として用いる場合、可撓性は要求されないことから、透明基材10は、可撓性を有しないガラス板であってもよい。
【0033】
(ハードコート層20)
透明導電体100は、透明基材10を挟むように一対のハードコート層20(第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24)を備える。ハードコート層20は、透明導電体100の傷を防止するために設けられる。ハードコート層20は、樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物を含有する。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂組成物、及び電子線硬化性樹脂組成物から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、及びメラミン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0034】
樹脂組成物は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のエネルギー線反応性基を有する硬化性化合物を含む組成物である。なお、(メタ)アクリロイル基なる表記は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を含む意味である。硬化性化合物は、1つの分子内に2つ以上、好ましくは3つ以上のエネルギー線反応性基を含む多官能モノマー又はオリゴマーを含んでいることが好ましい。
【0035】
硬化性化合物は、好ましくはアクリル系モノマーを含有する。アクリル系モノマーとしては、具体的には、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及び3−(メタ)アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ただし、必ずしもこれらに限定されるものではない。例えば、ウレタン変性アクリレート、及びエポキシ変性アクリレート等も挙げられる。
【0036】
硬化性化合物として、ビニル基を有する化合物を用いてもよい。ビニル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ヒドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、及び、ジトリメチロールプロパンポリビニルエーテル等が挙げられる。ただし、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0037】
樹脂組成物は、硬化性化合物を紫外線によって硬化させる場合、光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、種々のものを用いることができる。例えば、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、及びチオキサントン系等の公知の化合物から適宜選択すればよい。より具体的には、ダロキュア1173、イルガキュア651、イルガキュア184、イルガキュア907(以上商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製)、及び、KAYACURE DETX−S(商品名、日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0038】
光重合開始剤は、硬化性化合物の重量に対して、0.01〜20重量%、又は0.5〜5重量%程度とすればよい。樹脂組成物は、アクリル系モノマーに光重合開始剤を加えた公知のものであってもよい。アクリル系モノマーに光重合開始剤を加えたものとしては、例えば、紫外線硬化型樹脂であるSD−318(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、及び、XNR5535(商品名、長瀬産業(株)製)等が挙げられる。
【0039】
樹脂組成物は、塗膜の強度を高めること、及び/又は、屈折率を調整すること等のために、有機微粒子及び/又は無機微粒子を含んでいてもよい。有機微粒子としては、例えば、有機珪素微粒子、架橋アクリル微粒子、及び架橋ポリスチレンン微粒子等が挙げられる。無機微粒子としては、例えば、酸化珪素微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、酸化チタン微粒子、及び酸化鉄微粒子等が挙げられる。これらのうち、酸化珪素微粒子が好ましい。
【0040】
微粒子の表面はシランカップリング剤で処理されることによって、該表面は(メタ)アクリロイル基、及び/又はビニル基等のエネルギー線反応性基で化学修飾されていることが好ましい。このような反応性を有する微粒子を用いると、エネルギー線照射の際に、微粒子同士が反応したり、微粒子と多官能モノマー又はオリゴマーとが反応したりして、膜の強度を強くすることができる。(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤で処理された酸化珪素微粒子が好ましく用いられる。
【0041】
微粒子の平均粒径は、ハードコート層20の厚みよりも小さく、十分な透明性を確保する観点から、100nm以下であってもよく、20nm以下であってもよい。一方、微粒子の平均粒径は、コロイド溶液の製造上の観点から、5nm以上であってもよく、10nm以上であってもよい。有機微粒子及び/又は無機微粒子を用いる場合、有機微粒子及び無機微粒子の合計量は、硬化性化合物100重量部に対して、例えば5〜500重量部であってもよく、20〜200重量部であってもよい。
【0042】
エネルギー線で硬化する樹脂組成物を用いると、紫外線等のエネルギー線を照射することによって、樹脂組成物を硬化させることができる。したがって、このような樹脂組成物を用いることが製造工程上の観点からも好ましい。
【0043】
第1のハードコート層22は、樹脂組成物の溶液又は樹脂組成物に微粒子を分散させた分散液を、透明基材10の一方面上に塗布して乾燥し、樹脂組成物を硬化させて作製することができる。この際の塗布は、公知の方法により行うことができる。塗布方法としては、例えば、エクストルージョンノズル法、ブレード法、ナイフ法、バーコート法、キスコート法、キスリバース法、グラビアロール法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、カーテン法、及びスクイズ法などが挙げられる。第2のハードコート層24も、第1のハードコート層22と同様にして、透明基材10の他方面上に作製することができる。
【0044】
第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24の厚みは、例えば0.5〜10μmである。厚みが10μmを超えると、厚みムラやシワなどが生じ易くなる傾向にある。一方、厚みが0.5μmを下回ると、透明基材10中に可塑剤又はオリゴマー等の低分子量成分が相当量含まれている場合に、これらの成分のブリードアウトを十分に抑制することが困難になる場合がある。なお、反りを抑制する観点から、第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24の厚みは、同程度にすることが好ましい。
【0045】
なお、透明導電体100を構成する各層の厚みは、以下の手順で測定することができる。集束イオンビーム装置(FIB,Focused Ion Beam)によって透明導電体100を切断して断面を得る。透過電子顕微鏡(TEM)を用いて当該断面を観察し、各層の厚みを測定する。測定は、任意に選択された10箇所以上の位置で測定を行い、その平均値を求めることが好ましい。断面を得る方法として、集束イオンビーム装置以外の装置としてミクロトームを用いてもよい。厚みを測定する方法としては、走査電子顕微鏡(SEM)を用いてもよい。また蛍光X線装置を用いても膜厚を測定することが可能である。
【0046】
第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24の屈折率は、例えば1.40〜1.60である。透明基材10と第1のハードコート層22の屈折率の差の絶対値が0.1以下であること好ましい。透明基材10と第2のハードコート層24の屈折率の差の絶対値も0.1以下であること好ましい。第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24と透明基材10との屈折率の差の絶対値を小さくすることで、第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24の厚みのムラによって発生する干渉ムラの強度を抑制することができる。
【0047】
第1のハードコート層22上には、組成が異なる複数の層で構成される光学調整層11が積層されている。光学調整層11には、第1のハードコート層22側から、第1の光学調整層13、第2の光学調整層14、及び第3の光学調整層15がこの順で設けられている。光学調整層11、すなわち、第1の光学調整層13、第2の光学調整層14及び第3の光学調整層15は、光学干渉により、透明導電層16表面の反射率を低減し、全光線透過率を高める層を構成する。また、第1の光学調整層13、第2の光学調整層14及び第3の光学調整層15は、センサシングパターンによって生じる透明導電層16の有無による光学差及び段差を抑制する。光学調整層11は、センシングパターンを認識させ難くする機能を有するとともに、視認性を向上させる機能をも有する。
【0048】
(第1の光学調整層13)
第1の光学調整層13は、例えば、第1のハードコート層22と同様に、樹脂組成物をエネルギー線で硬化させて得られる樹脂硬化物を含有する。樹脂組成物は、第1のハードコート層22で挙げたものと同様のものを用いることができる。樹脂組成物としては、第1のハードコート層22において説明した、エネルギー線硬化型の樹脂組成物と同様のものが用いられる。すなわち、樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基等から選ばれるエネルギー線反応性基を有する硬化性化合物を含むエネルギー線硬化型の樹脂組成物である。樹脂組成物は、高屈折率のポリマーを含むことが好ましい。
【0049】
樹脂組成物は、金属酸化物の微粒子を含んでいてもよい。金属酸化物の微粒子としては、酸化チタン(TiO
2、屈折率:2.35)、酸化ジルコニウム(ZrO
2、屈折率:2.05)、酸化セリウム(CeO
2、屈折率:2.30)、酸化ニオブ(Nb
2O
3、屈折率:2.15)、酸化アンチモン(Sb
2O
3、屈折率:2.10)、酸化タンタル(Ta
2O
5、屈折率:2.10)、及びこれらを2つ以上組み合わせたものが挙げられる。このような微粒子を硬化性化合物に分散させた樹脂組成物を、第1のハードコート層22上に塗布して硬化させることによって、樹脂硬化物と金属酸化物の微粒子とを含む第1の光学調整層13を作製することもできる。微粒子は、硬化性化合物100重量部に対して、例えば5〜500重量部であってもよく、20〜200重量部であってもよい。微粒子の含有量が少なくなるに伴って、第1の光学調整層13の屈折率が低くなる傾向になる。
【0050】
第1の光学調整層13の屈折率(n1)は、第1のハードコート層22の屈折率よりも高いことが好ましく、例えば1.55〜1.80であってもよく、1.57〜1.67であってもよい。第1の光学調整層13の屈折率が低すぎるとセンシングパターンでの透明導電層がある部分(導電部)での全光線透過率が低下する傾向にある。一方、第1の光学調整層13の屈折率が高すぎるとパターンを形成した場合に、透明導電層16を除去した部分(非導電部)での透過光のb
*値がマイナス側に小さくなる傾向にある。すなわち、センシングパターンによって透過光に色差が発生しやすくなる傾向にある。
【0051】
第1の光学調整層13の厚みは、10〜80nmであってもよく、15〜75nmであってもよい。第1の光学調整層13が薄くなり過ぎると、塗布による第1の光学調整層13の作製が困難になる傾向にある。また、反りを抑制する作用が小さくなる傾向にある。一方で、第1の光学調整層13が厚くなり過ぎると、透明導電層がある部分(導電部)での全光線透過率が低くなる傾向がある。
【0052】
第1の光学調整層13を作製するための樹脂組成物として、例えば、酸化チタン(TiO
2)がアクリル系のエネルギー線硬化型の樹脂組成物中に分散されたTYT80(商品名、屈折率:1.80、東洋インキ(株)製)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)がアクリル系のエネルギー線硬化型の樹脂組成物中に分散されたTYZ62(商品名、屈折率:1.62、東洋インキ(株)製)等が挙げられる。高屈折率のポリマーを含有する樹脂組成物を用いてもよい。高屈折率のポリマーとして、例えばUR−101(商品名、屈折率:1.70、日産化学工業製)が挙げられる。
【0053】
第1のハードコート層22上に、上述の樹脂組成物を塗布して乾燥し、その後、紫外線照射を行って硬化させ、第1の光学調整層13を作製する。この際の塗布方法は、公知の方法により行うことができる。塗布方法としては、例えば、エクストルージョンノズル法、ブレード法、ナイフ法、バーコート法、キスコート法、キスリバース法、グラビアロール法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、カーテン法、及びスクイズ法などが挙げられる。このような塗布方法は、製造コストの観点から、スパッタリング法などを用いた真空成膜法よりも好ましい。
【0054】
第1の光学調整層13を作製した後、透明基材10、第1のハードコート層22及び第1の光学調整層13を含む積層フィルムは、乾燥炉を用いた加熱によって収縮させてもよい。これによって、第2の光学調整層14、第3の光学調整層15及び透明導電層16を成膜する工程において、透明基材10の収縮を抑制して皺の発生を抑制することができる。乾燥炉での乾燥温度は、例えば110〜150℃である。110℃未満であると成膜時の熱によって透明基材10が収縮し皺が発生しやすくなる傾向にある。一方、150℃を超えると乾燥炉で透明基材10が収縮し過ぎて皺が入りやすくなる傾向にある。
【0055】
第1の光学調整層13は、透明導電体100の反り(カール)の発生を抑制する機能を有する。透明導電体100に設けられる第2の光学調整層14は、窒化珪素を含有していることから、透明導電体100を加熱すると、反りが発生する傾向にある。第1の光学調整層13は、発生する反りを低減する機能を有する。第1の光学調整層13の組成は、例えば、集束イオンビーム装置(FIB:Focused Ion Beam)を用いて透明導電体100を切断して得られた切断面を、透過電子顕微鏡(TEM)又は走査電子顕微鏡(SEM)に付属するエネルギー分散型X線分光器(EDS:energy dispersive X-ray spectrometry)等を用いて分析することによって、求めることができる。
【0056】
(第2の光学調整層14)
第2の光学調整層14は、窒化珪素、又は窒化珪素及び酸化珪素を含有する。第2の光学調整層14において、窒化珪素と酸化珪素の合計に対する窒化珪素のモル比率は、30mol%以上であってもよく、40mol%以上であってもよく、50mol%以上であってもよい。窒化珪素のモル比率を高くすることによって、センシングパターンの境界部の段差を十分に低減することができる。第2の光学調整層14の組成は、第1の光学調整層13の組成と同様にして求めることができる。
【0057】
第2の光学調整層14は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はCVD法などの真空成膜法によって作製することができる。これらのうち、成膜室を小型化できる点で、スパッタリング法が好ましい。成膜する層が複数ある場合、スパッタリング法は特に好ましい。
【0058】
スパッタリング法では、酸化物ターゲット、金属又は半金属ターゲットと反応性ガスとを用いた反応性スパッタリング法によって、第1の光学調整層13の上に第2の光学調整層14を作製することができる。反応性スパッタリング法は、アルゴンガスなどの不活性ガスに、酸素や窒素などの反応性ガスを添加することで、金属又は半金属の酸化物或いは窒化物などを成膜する方法である。金属又は半金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法は、酸化物ターゲット用いる場合よりも、成膜速度を速くすることができる。
【0059】
第2の光学調整層14の屈折率(n2)は、第1の光学調整層13の屈折率(n1)よりも高く設定されており、1.62〜2.30であってもよく、1.69〜2.10であってもよい。屈折率(n2)が低すぎると、透明導電層がある部分(導電部)での全光線透過率が低下するため、透明導電層がある部分(導電部)と無い部分(非導電部)における全光線透過率の差が大きくなる傾向にある。屈折率(n2)が高すぎると、非導電部での全光線透過率が低下し導電部と非導電部の全光線透過率の差が大きくなる傾向にある。
【0060】
第2の光学調整層14は、窒化珪素(Si
3N
4、屈折率:2.00)及び酸化珪素(SiO
2.屈折率:1.46)の他に、以下のような微量成分を含んでいてもよい。微量成分としては、例えば、酸化チタン(TiO
2、屈折率:2.35)、酸化ジルコニウム(ZrO、屈折率:2.05)、酸化セリウム(CeO
2、屈折率:2.30)、酸化ニオブ(Nb
2O
5、屈折率:2.30)、酸化アンチモン(Sb
2O
5 屈折率2.10)、及び、酸化タンタル(Ta
2O
3、屈折率:2.10)が挙げられる。第2の光学調整層の全体に対する窒化珪素と酸化珪素の合計比率は、例えば90mol%以上であり、95mol%以上である。窒化珪素と酸化珪素の比率は、反応性スパッタリング法の反応ガスの組成を変えることで調整することができる。
【0061】
第2の光学調整層14の厚みは、1〜25nmであってもよく、2〜23nmであってもよく、3〜10nmであってもよい。第2の光学調整層14の作製に所要する時間を短縮する観点から、第2の光学調整層14は薄い方が好ましい。ただし、第2の光学調整層14が薄くなり過ぎると、導電部と非導電部との境界部の段差が大きくなる傾向にある。一方、第2の光学調整層14が厚くなり過ぎると透明導電体100の反りが大きくなる傾向にある。
【0062】
(第3の光学調整層15)
第3の光学調整層15は酸化珪素を含有する。第3の光学調整層15の組成は、第1の光学調整層13の組成と同様にして求めることができる。第3の光学調整層15は、第2の光学調整層14と同様に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はCVD法などの真空成膜法によって作製することができる。これらのうち、成膜室を小型化できる点で、スパッタリング法が好ましい。透明導電体100は真空成膜法によって作製される複数の層を有することから、スパッタリング法が特に好ましい。
【0063】
スパッタリング法では、第2の光学調整層14と同様に、酸化物ターゲット、金属又は半金属ターゲットと反応性ガスとを用いた反応性スパッタリング法によって、第2の光学調整層14の上に第3の光学調整層15を作製することができる。金属又は半金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法は、酸化物ターゲット用いる場合よりも、成膜速度を速くすることができる。
【0064】
第3の光学調整層15の屈折率(n3)は、第1の光学調整層13の屈折率(n1)及び第2の光学調整層14の屈折率(n2)よりも低く設定されている。すなわち、下記式(1)が成立する。屈折率(n3)は、1.35〜1.55であってもよく、1.35〜1.52であってもよい。光学特性的な観点からは、屈折率(n3)は低い方が好ましい。しかしながら、屈折率(n3)が低くなり過ぎると、層密度が低くなる傾向にある。このような観点から、屈折率(n3)は1.35以上であることが好ましい。屈折率(n3)が高い場合は、全光線透過率を高くするために必要となる第3の光学調整層15の厚さが大きくなる傾向にある。このような観点から、屈折率(n3)は1.55以下が好ましく、1.52以下がより好ましい。
n2>n1>n3 (1)
【0065】
第3の光学調整層15は、酸化珪素(SiO
2、屈折率:1.46)の他に、以下のような微量成分を含んでいてもよい。微量成分としては、例えば、フッ化リチウム(LiF、屈折率:1.36)、フッ化マグネシウム(MgF、屈折率:1.38)、フッ化カルシウム(CaF
2、屈折率:1.4)、及びフッ化セリウム(CeF、屈折率:1.63)が挙げられる。第3の光学調整層15における酸化珪素の含有量は、例えば90mol%以上であり、95mol%以上である。酸化珪素の含有量は、反応性スパッタリング法の反応ガスを変えることで調整することができる。
【0066】
第3の光学調整層15の厚みは、1〜40nmであってもよく、7〜40nmであってもよく、12〜30nmであってもよい。第3の光学調整層15が薄くなり過ぎると透明導電体100の全光線透過率が低下する傾向にある。一方、第3の光学調整層15が厚くなり過ぎると、導電部と非導電部の透過光のb
*値の差の絶対値が大きくなり、センシングパターンが認識され易くなる傾向にある。
【0067】
(透明導電層16)
透明導電層16は、金属(又は半金属)の酸化物からなる薄膜である。酸化物としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、インジウム−錫複合酸化物、錫−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、及びインジウム−亜鉛複合酸化物などが挙げられる。これらのうち、インジウム−錫複合酸化物が好ましい。インジウム−錫複合酸化物における酸化錫の含有量は、例えば3〜12重量%である。透明導電層16の組成は、第1の光学調整層13の組成と同様にして求めることができる。
【0068】
透明導電層16は、第3の光学調整層15の上に設けられる。透明導電層16は、第3の光学調整層15の一方面の全体を覆っていてもよく、一部のみを覆っていてもよい。すなわち、透明導電層16は、パターニングされて、該一方面の一部を覆うように構成されていてもよい。透明導電層16は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はCVD法などの真空成膜法によって作製することができる。これらのうち、成膜室を小型化できる点で、スパッタリング法は好ましい。透明導電体100は真空成膜法によって作製される複数の層を有することから、スパッタリング法は特に好ましい。
【0069】
透明導電層16の厚みは、抵抗値と全光線透過率の観点から、例えば10〜50nmである。透明導電層16の屈折率は低いことが好ましい。なお、インジウム−錫複合酸化物の屈折率は2.05前後である。透明導電層16の厚みは、例えば10〜50nmである。透明導電層16が薄すぎると緻密にならず抵抗値が安定しない傾向にある。一方、透明導電層16が厚すぎると、全光線透過率が低くなる傾向にある。
【0070】
透明導電層16の表面抵抗値は、低い方が好ましく、例えば300Ω/□(300Ω/sq.)以下であってもよく、50〜300Ω/□であってもよい。
【0071】
上述の構成を備える透明導電体100は、透明導電層16と透明基材10及びこれを挟むハードコート層20との間に、組成の異なる複数の層を有する光学調整層11を備える。光学調整層11のうち、窒化珪素を含有する第2の光学調整層14は、大きな圧縮応力を有する。このため、透明導電層16のパターニング後、取出し電極を形成するために加熱されたときに、大きい圧縮応力を有する透明導電層16の有無に起因して生じるうねりを十分に抑制して、センシングパターンの境界部の段差を小さくすることができる。このような作用によって、センシングパターンを視認し難くすることができる。センシングパターンの境界部における段差は、例えば、300nm以下にすることが可能であり、200nm以下にすることも可能である。
【0072】
透明導電体100の厚みは、130μm以下であってもよく、115μm以下であってもよい。このような厚みであれば、薄化の要求レベルを十分に満足することができる。本実施形態の透明導電体100は、センシングパターンの境界部の段差を小さくできることから、このように厚みを小さくしても、センシングパターンを視認し難くすることが可能である。すなわち、透明導電体100は、薄化が要求される技術分野において特に有用である。
【0073】
また、光学調整層11は、第2の光学調整層14を挟むようにして、透明基材10側に第1の光学調整層13と、透明導電層16側に第3の光学調整層15とを備える。光学調整層11の屈折率の大小関係は上記式(1)を満たしている。すなわち、第1の光学調整層13及び第2の光学調整層14の屈折率n1,n2が、第3の光学調整層の屈折率n3よりも大きくなっている。このように、光学調整層11においては、第1の光学調整層13及び第2の光学調整層14が高屈折率の層をなし、第1の光学調整層13及び第2の光学調整層14よりも透明導電層16側にある第3の光学調整層が低屈折率の層をなすように構成されている。このような層構成を有することによって、透明導電体100の全光線透過率を向上させている。
【0074】
3層構造を有する光学調整層11のうち、透明基材10に最も近接して設けられる第1の光学調整層13は、塗布法によって作製することができる。このため、第1の光学調整層は厚い方が容易に作製することができる。一方、第2の光学調整層14は、真空成膜法によって作製することができる。第2の光学調整層14の作製に所要する時間を短くする観点から、第2の光学調整層14は薄い方が好ましい。ここで、一般的に光学厚みは[屈折率×厚み]によって示すことができる。したがって、第1の光学調整層13を厚くするには、第1の光学調整層13の屈折率(n1)を低くする必要がある。一方、第2の光学調整層14を薄くするには、第2の光学調整層14の屈折率(n2)を高くする必要がある。本実施形態では、第1の光学調整層13の屈折率(n1)と第2の光学調整層14の屈折率(n2)の関係は、n2>n1であることから、透明導電体100の全光線透過率を高くするための光学調整層11の層構造を容易に作製することができる。
【0075】
透明導電体100の全光線透過率は、例えば89%以上もの高い値とすることができる。また、透過光のJIS Z8729に定められるL
*a
*b
*表色系の色座標b
*値を−1.0〜2.0の範囲とすることができる。透明導電体100のカール量は、例えば、−20〜20mmとすることが可能であり、−15〜15mmとすることもできる。
【0076】
図2は、一対のセンサフィルムを備えるタッチパネル200の断面の一部を拡大して示す模式断面図である。
図3(A)及び
図3(B)は、上述の透明導電体100を用いたセンサフィルム100a及び100bの平面図である。タッチパネル200は、光学のり18を介して対向配置される一対のセンサフィルム100a,100bを備える。タッチパネル200は、接触体のタッチ位置を、画面となるパネル板70に平行な二次元座標(X−Y座標)平面における座標位置(横方向位置と縦方向位置)として算出することが可能なように構成されている。
【0077】
具体的には、タッチパネル200は、光学のり18を介して貼り合わせられた、縦方向位置検出用のセンサフィルム100a(以下、「Y用センサフィルム」と言う)と、横方向位置検出用のセンサフィルム100b(以下、「X用センサフィルム」と言う)とを備える。X用センサフィルム100bの下面側には、X用センサフィルム100bと、表示装置のパネル板70との間に、スペーサ92が設けられている。
【0078】
縦方向位置を検出するY用センサフィルム100aと、横方向位置を検出するX用センサフィルム100bは、上述の透明導電体100で構成される。具体的には、Y用センサフィルム100aは、X用センサフィルム100bとの対向面に、センサ電極16aを有する。このセンサ電極16aは、透明導電層16で構成される。
図3(A)に示すように、センサ電極16aは、縦方向(y方向)のタッチ位置を検出できるように、縦方向(y方向)に複数本延在している。複数本のセンサ電極16aは、縦方向(y方向)に沿って、互いに平行に並べて配置されている。センサ電極16aの一端は、銀ペーストで形成される導体線路50を介して、駆動用IC側の電極80と接続されている。
【0079】
横方向位置を検出するX用センサフィルム100bは、Y用センサフィルム100aとの対向面に、センサ電極16bを有する。このセンサ電極16bは、透明導電層16で構成される。
図3(B)に示すように、センサ電極16bは、横方向(x方向)のタッチ位置を検出できるように、横方向(x方向)に複数本延在している。複数本のセンサ電極16bは、横方向(x方向)に沿って、互いに平行に並べて配置されている。センサ電極16bの一端は、銀ペーストで形成される導体線路50を介して、駆動用IC側の電極80と接続されている。
【0080】
Y用センサフィルム100aとX用センサフィルム100bは、それぞれのセンサ電極16a,16bが互いに直交し且つ対向するように、光学のり18を介して重ね合わせられて、タッチパネル200を構成する。導体線路50及び電極80は、金属(例えばAg)等の導電性材料によって構成される。導体線路50及び電極80は、例えば、スクリーン印刷によってパターン形成される。透明基材10は、タッチパネル200の表面を覆う保護フィルムとしての機能をも有する。
【0081】
各センサフィルム100a,100bにおけるセンサ電極16a,16bの形状及び数は、
図2及び
図3に示す形態に限定されるものではない。例えば、センサ電極16a,16bの数を増やしてタッチ位置の検出精度を高めてもよい。
【0082】
X用センサフィルム100bのY用センサフィルム100a側とは反対側には、スペーサ92を介してパネル板70が設けられる。スペーサ92は、センサ電極16a,16bの形状に対応する位置と、センサ電極16a,16bの全体を取り囲む位置とに設けることができる。スペーサ92は、透光性を有する材料、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂で形成されていてもよい。スペーサ92の一端は、光学のり或いはアクリル系又はエポキシ系等の透光性を有する接着剤90によって、X用センサフィルム100bの下面に接着される。スペーサ92の他端は、接着剤90によって表示装置のパネル板70に接着される。このように、スペーサ92を介してX用センサフィルム100bとパネル板70とを対向配置することによって、X用センサフィルム100bと表示装置のパネル板70との間に隙間Sを形成することができる。
【0083】
電極80には、制御部(IC)が電気的に接続される。タッチパネル200のY用センサフィルム100aが接触体で押圧されると、X用センサフィルム100bとY用センサフィルム100aが撓んで、センサ電極16a,16bが表示装置のパネル板70に接近する。制御部は、この変形によって生じる各センサ電極16a,16bの容量変化をそれぞれ測定し、測定結果に基づいて接触体のタッチ位置を座標位置(X軸方向の位置とY軸方向の位置の交点)として算出することができる。なお、センサ電極の駆動方法、及び、座標位置の算出方法は、上述の他に、公知の各種の方法を採用することが可能である。
【0084】
タッチパネル200は、Y用センサフィルム100a及びX用センサフィルム100bとして、透明導電体100を用いていることから、十分に薄型化することができる。このように薄型化しても、Y用センサフィルム100a及びX用センサフィルム100bのセンシングパターンを十分に認識し難くすることができる。なお、Y用センサフィルム100a及びX用センサフィルム100bの双方に、透明導電体100を用いる必要はなく、どちらか一方は、別の透明導電体を用いてもよい。このようなタッチパネルであっても、表示を十分に鮮明にすることができる。
【0085】
図4は、本発明の透明導電体の別の実施形態を示す模式断面図である。透明導電体101は、第2のハードコート層24の上に、第2のハードコート層24側から、反り抑制層30と保護フィルム44とをこの順で備える点、及び、透明導電層16の光学調整層11側とは反対側に、保護フィルム42を備える点で、透明導電体100と異なっている。その他の構成は、透明導電体100と同様である。
【0086】
反り抑制層30は、第2のハードコート層24上に作製されており、第2の光学調整層14と同様に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はCVD法などの真空成膜法によって作製することができる。これらのうち、成膜室を小型化できる点で、スパッタリング法が好ましい。成膜する層が複数ある場合、スパッタリング法は特に好ましい。
【0087】
反り抑制層30の含有成分は特に限定されず、例えば、酸化珪素、窒化珪素、又は窒化珪素と酸化珪素の両方を含んでもよい。反り抑制層30を作製する際のターゲット材料は、第2の光学調整層14又は第3の光学調整層15と共通にしてもよい。これによって、ターゲット変更作業に伴う生産コストの増大を抑制することができる。反り抑制層30を設けることによって、透明導電体101の反りの発生を一層十分に抑制して、カール量を低減することができる。反り抑制層30の厚みは、例えば5〜40nmである。
【0088】
(保護フィルム40)
保護フィルム40は、透明導電体101の反りを抑制することに加え、透明導電体101の機械的な強度を向上させることができる。保護フィルム40は、透明導電層16の上、及び/又は、反り抑制層30の上に設けることができる。反り抑制層30を設けない場合は、保護フィルム44は、第2のハードコート層24の上に設けてもよい。投影型静電容量方式の場合、透明導電層16にはセンシングパターン処理を施すことから、この処理を施す際に保護フィルム42を剥がす必要がある。このため、透明導電体101の用途に応じて、保護フィルム40は第2のハードコート層24側のみに設けてもよい。
【0089】
保護フィルム40は、透明導電層16を結晶化処理する際に反りを抑制する作用を有する。このため、結晶化処理の温度に耐えられる程度の耐熱性を有することが好ましい。耐熱性を有する保護フィルムとして、例えば、サンエー化研社製のサンキュアリー(商品名)及びコスモテック社製のTP2316(商品名)等を用いることができる。
【0090】
上述の透明導電体100,101は、タッチパネル用に好適に用いることができる。ただし、その用途はタッチパネルに限定されるものではなく、例えば、透明導電層を所定形状に加工して、透明導電層を有する部分(導電部)と、透明導電層を有していない部分(非導電部)とを形成し、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスパネル(有機EL、無機EL)、エレクトロクロミック素子、及び電子ペーパーなどの各種表示装置において、透明電極用、帯電防止用、電磁波シールド用として用いることができる。また、アンテナとして用いることもできる。
【0091】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態ではハードコート層20を有しているが、ハードコート層20は無くてもよい。また、本発明の透明導電体には、その機能を損なわない範囲で、上述の層以外に任意の位置に任意の層を設けてもよい。また、タッチパネルは、上述したような一対のセンサフィルムを備えるグリッド型に限定されるものではなく、センサフィルムを一枚のみ備える単板スイッチ型であってもよい。
【実施例】
【0092】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
[実施例1]
図1に示すような、透明導電体100を作製した。透明導電体100は、第2のハードコート層24、透明基材10、第1のハードコート層22、第1の光学調整層13、第2の光学調整層14、第3の光学調整層15、及び透明導電層16がこの順で積層された積層構造を有している。透明導電体100を以下の要領で作製した。
【0094】
(透明基材10)
厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム製、品番:KEL−86w)を準備した。このPETフィルムを透明基材10として用いた。PETフィルムの全光線透過率は91%、ヘイズは1%、屈折率はλ=633nmにて1.52であった。
【0095】
(第1のハードコート層22、及び第2のハードコート層24作製用の塗料の調製)
以下の原材料を準備した。
・反応性基装飾コロイダルシリカ(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、不揮発分:40重量%):100重量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:48重量部
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:12重量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン):2.5重量部
【0096】
上述の原材料を、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMA))で希釈して混合し、各成分を溶剤中に分散させた。これによって、不揮発分(NV)が25.5重量%の塗料を調整した。このようにして得られた塗料を、第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24作製用の塗料として用いた。
【0097】
(第1の光学調整層13作製用の塗料)
酸化ジルコニウム(ZrO
2)を含有したTYZ62(商品名、東洋インキ(株)製、屈折率:1.62)を、溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMA)で希釈して、不揮発分(NV)が2.6重量%の塗料を調整した。得られた塗料を、第1の光学調整層作製用の塗料として用いた。
【0098】
(透明導電体100の作製)
<第1のハードコート層22の作製>
ロールから繰り出したPET基材の一方面上に、乾燥後の膜厚が1.0μmとなるように、第1のハードコート層22作製用の塗料を塗布して、塗布膜を作製した。80℃に設定した乾燥炉において塗布膜中の溶剤を除去した後、UV処理装置を用いて積算光量400mJ/cm
2の紫外線を照射して塗布膜を硬化させた。このようにして、PETフィルムの一方面に、第1のハードコート層22を作製した。第1のハードコート層22を作製した後、第1のハードコート層22が作製されたPETフィルムをロール状に巻き取った。第1のハードコート層22の屈折率は1.50であった。
【0099】
<第2のハードコート層24の作製>
一方面上に第1のハードコート層22が作製されたPETフィルムをロールから繰り出し、PETフィルムの他方面上に、乾燥後の膜厚が1.0μmとなるように第2のハードコート層24作製用の塗料を塗布して、塗布膜を作製した。80℃に設定した乾燥炉において塗布膜中の溶剤を除去した後、UV処理装置を用いて積算光量400mJ/cm
2の紫外線を照射して塗布膜を硬化させた。このようにして、PETフィルムの他方面に第2のハードコート層24を作製した。第2のハードコート層24を作製した後、第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24が作製されたPETフィルムをロール状に巻き取った。第2のハードコート層24の屈折率は1.50であった。
【0100】
<第1の光学調整層13の作製>
第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24が作製されたPETフィルムをロールから繰り出し、第1のハードコート層22の上に、第1の光学調整層13作製用の塗料をロールトゥロール方式で塗布して塗布膜を作製した。80℃に設定した乾燥炉において塗布膜中の溶剤を除去した後、UV処理装置を用いて積算光量400mJ/cm
2の紫外線を照射して塗布膜を硬化させた。このようにして、第1のハードコート層22の上に第1の光学調整層13を作製した。第1の光学調整層13の屈折率(n1)は1.62であった。
【0101】
<第2の光学調整層14の作製>
第1の光学調整層13の上に、スパッタリング法を用いて第2の光学調整層14を作製した。具体的には、ホウ素をドープした珪素ターゲットを用いて、アルゴンガス80体積%と窒素ガス20体積%とからなる混合雰囲気中で成膜して、窒化珪素からなる第2の光学調整層14を作製した。第2の光学調整層14の屈折率(n2)は1.90であった。
【0102】
<第3の光学調整層15の作製>
第2の光学調整層14の上に、スパッタリング法を用いて第3の光学調整層15を作製した。具体的には、ホウ素をドープした珪素ターゲットを用いて、アルゴンガス95体積%と酸素ガス15体積%とからなる混合雰囲気中で、酸化珪素からなる第3の光学調整層15を作製した。第3の光学調整層15の屈折率(n3)は1.46であった。
【0103】
<透明導電層16の作製>
第3の光学調整層15の上に、スパッタリング法を用いて透明導電層16を作製した。具体的には、酸化インジウムに酸化錫を5重量%添加したターゲットを用いて、アルゴンガス98体積%と酸素ガス2体積%とからなる混合雰囲気中で成膜して、酸化インジウムと酸化スズとの複合酸化物からなる透明導電層16を作製した。その後、積層体をオーブンにて140℃、90分の条件で加熱して、透明導電体100を作製した。透明導電層16の屈折率は2.05であった。
【0104】
(膜厚の測定)
集束イオンビーム装置(FIB,Focused Ion Beam)によって透明導電体100の断面を得た。透過電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察し、各層の厚みを測定した。測定結果を表1に示す。
【0105】
(屈折率の測定)
PETフィルム(透明基材10)、第1のハードコート層22、第2のハードコート層24の屈折率は、反射分光膜厚計(商品名:FE−3000、大塚電子株式会社製)を用いて測定を行った。一方、第1の光学調整層13、第2の光学調整層14、第3の光学調整層15、及び透明導電層16の屈折率は、屈折率測定用の膜を別途作製して測定した。具体的には、シリコンウエハー上に塗布して成膜し、エリプソメーター(商品名:DHA−OLX、溝尻光学工業所社製)を用いて、膜(層)のλ=633nmにおける20℃での屈折率を測定した。
【0106】
(カール量の測定)
透明導電体に生じる反りを定量的に評価するため、カール量を以下の手順で測定した。作製した透明導電体100をMD方向及びTD方向に沿って200mm×200mmのサイズに切り出した。そして、透明導電層16を上にして、オーブンを用いて140℃、90分間の加熱処理を行った。加熱処理後、
図5に示すように、凹み面が上側となるように透明導電体100を平坦面95に置き、平坦面95と透明導電体100の頂点部との距離a、b、c及びdを測定し、それらの最大値をカール量とした。この結果は表1に示すとおりである。カール量は、第2のハードコート層24側を下方にして測定した場合を+(プラス)表記とし、透明導電層16側を下方にして測定した場合を−(マイナス)表記とした。
【0107】
(全光線透過率及び色調の測定)
透明導電体100の全光線透過率は、ヘイズメーター(型番:NDH5000、日本電色工業社製)を用いて評価した。この結果は表1に示すとおりである。また、透明導電体100の透明導電層16の一部をマスクで覆い、透明導電層16の他部を、エッチング液を用いて除去した。透明導電層16がある部分(導電部)と無い部分(非導電部)について、分光色差計CM−5(商品名、コニカミノルタ社製)を用いて、透過光のL
*a
*b
*表色系の色座標b
*値を測定した。そして色座標b
*値の差を算出した。この結果は表1に示すとおりである。
【0108】
(境界部の段差の測定)
透明導電体100における透明導電層16の一部をマスクで覆い、透明導電層16の他部を、エッチング液を用いて除去した。これによってセンシングパターンを形成した。
図6に示すように、光学のり18を介して、厚さ0.6mmのガラス基板19を第3の光学調整層15及び透明導電層16の上に貼り付けた。このようにして、
図6に示す評価サンプルを作製した。センシングパターンの境界部16Aに発生した段差は、接触針式表面形状測定器(商品名:Dektak 3,Veeco社)を用いて評価を行った。この結果は表1に示すとおりである。
【0109】
[実施例2〜5、比較例1]
第3の光学調整層15の厚みを表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5及び比較例1の透明導電体を作製した。なお、比較例1では、第3の光学調整層15を作製しなかった。実施例1と同様にして、各層及び透明導電体の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
実施例1〜5の透明導電体は、いずれも、境界部の段差が十分に小さく、カール量の絶対値も十分に小さかった。さらに、全光線透過率は89%以上と高く、且つ透過光b
*値の差も−2.0〜2.0と小さかった。一方、比較例1の透明導電体の全光線透過率は89%未満であった。
【0112】
[実施例6〜10、比較例2〜3]
第1の光学調整層13及び第2の光学調整層14の厚みを表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6〜10及び比較例2〜3の透明導電体を作製した。なお、比較例2では、第1の光学調整層を作製せず、比較例3では、第2の光学調整層を作製しなかった。実施例1と同様にして、各層及び透明導電体の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
実施例6〜10の透明導電体は、いずれも、境界部の段差が十分に小さく、センシングパターンが見え難くなっていることが確認された。また、カール量の絶対値も十分に小さかった。さらに、全光線透過率は89%以上と高く、且つ透過光b
*値の差も−2.0〜2.0と小さかった。一方、比較例2の透明導電体は、境界部の段差が300nm以上であり、センシングパターンが認識され易い問題があった。また比較例3の透明導電体は、カール量が大きかった。
【0115】
[実施例11〜14]
第1の光学調整層13、第2の光学調整層14及び第3の光学調整層15の厚みを表3に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11及び12の透明導電体を作製した。また、透明導電層の厚みを表3に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例13及び14の透明導電体を作製した。そして、実施例1と同様にして、各層及び透明導電体の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0116】
【表3】
【0117】
実施例11〜14の透明導電体は、いずれも、境界部の段差が十分に小さく、カール量の絶対値も十分に小さかった。さらに、全光線透過率は89%以上と高く、且つ透過光b
*値の差も−2.0〜2.0と小さかった。
【0118】
[実施例15〜17、比較例4]
第2の光学調整層14の作製方法を以下の手順に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例15〜17及び比較例4の透明導電体を作製した。実施例15では、ホウ素をドープした珪素ターゲットを用いて、アルゴンガス80体積%、窒素ガス18体積%、及び酸素ガス2体積%からなる混合雰囲気中で成膜を行って、窒化珪素と酸化珪素とからなる第2の光学調整層14を作製した。この第2の光学調整層14の屈折率(n2)はλ=633nmにて1.79であった。組成は、窒化珪素をSi
3N
4とし、酸化珪素をSiO
2としたとき、モル比でSi
3N
4:SiO
2=80:20であった。
【0119】
実施例16では、ホウ素をドープした珪素ターゲットを用いて、アルゴンガス80体積%、窒素ガス15体積%、及び酸素ガス5体積%とからなる混合雰囲気中で成膜を行って、窒化珪素と酸化珪素とからなる第2の光学調整層14を作製した。この第2の光学調整層14の屈折率(n2)はλ=633nmにて1.70であった。組成は、窒化珪素をSi
3N
4とし、酸化珪素をSiO
2としたとき、モル比でSi
3N
4:SiO
2=60:40であった。
【0120】
実施例17では、ホウ素をドープした珪素ターゲットを用いて、アルゴンガス80体積%、窒素ガス12体積%、及び酸素ガス8体積%とからなる混合雰囲気中で成膜を行って、窒化珪素と酸化珪素とからなる第2の光学調整層14を作製した。この第2の光学調整層14の屈折率(n2)はλ=633nmにて1.64であった。組成は、窒化珪素をSi
3N
4とし、酸化珪素をSiO
2としたとき、モル比でSi
3N
4:SiO
2=40:60であった。
【0121】
比較例4では、ホウ素をドープした珪素ターゲットを用いて、アルゴンガス80体積%、窒素ガス10体積%、及び酸素ガス10体積%とからなる混合雰囲気中で成膜を行って、窒化珪素と酸化珪素とからなる第2の光学調整層14を作製した。この第2の光学調整層14の屈折率(n2)はλ=633nmにて1.55であった。組成は、窒化珪素をSi
3N
4とし、酸化珪素をSiO
2としたとき、モル比でSi
3N
4:SiO
2=20:80であった。実施例1と同様にして、実施例15〜17及び比較例4の各層及び透明導電体の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0122】
【表4】
【0123】
実施例15〜17の透明導電体は、いずれも、境界部の段差が十分に小さく、カール量の絶対値も十分に小さかった。さらに、全光線透過率は89%以上と高く、且つ透過光b
*値の差も−2.0〜2.0と小さかった。一方、式(1)を満足しない比較例4の透明導電体は、カール量の絶対値は小さいが、境界部の段差が300nmを超えており、センシングパターンが認識しやすかった。
【0124】
[実施例18〜21、比較例5〜6]
透明基材10の厚み、及び、第1のハードコート層22の厚みを表5に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例18〜21及び比較例5〜6の透明導電体を作製した。なお、比較例5〜6では、第2の光学調整層を作製しなかった。実施例1と同様にして、各実施例及び各比較例の各層及び透明導電体の評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0125】
【表5】
【0126】
実施例18〜21の透明導電体は、いずれも、境界部の段差が十分に小さく、カール量の絶対値も十分に小さかった。さらに、全光線透過率は89%以上と高く、且つ透過光b
*値の差も−2.0〜2.0と小さかった。一方、比較例5の透明導電体は、境界部の段差が300nmを超えており、センシングパターンが認識しやすかった。
【0127】
[実施例22〜24]
第1の光学調整層13、第2の光学調整層14及び第3の光学調整層15の厚みを表6に示すとおりに変更した。また、ホウ素がドープされた珪素ターゲットを用いて、アルゴンガス80体積%と窒素ガス20体積%とからなる混合雰囲気中で第2のハードコート層24の上に成膜を行い、透明基材10側とは反対側に窒化珪素からなる厚さ10nmの反り抑制層を作製した。これらの点以外は、実施例1と同様にして、実施例22の透明導電体を作製した。そして、実施例1と同様にして、各実施例の各層及び透明導電体の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0128】
実施例23では、ホウ素がドープされた珪素ターゲットを用いて、アルゴンガス80体積%、窒素ガス15体積%及び酸素ガス5体積%からなる混合雰囲気中で第2のハードコート層24の上に成膜を行い、透明基材10側とは反対側に窒化珪素と酸化珪素とからなる厚さ10nmの反り抑制層を作製した。この点以外は、実施例22と同様にして、実施例23の透明導電体を作製した。そして、実施例1と同様にして、各実施例の各層及び透明導電体の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0129】
実施例24では、ホウ素がドープされた珪素ターゲットを用いて、アルゴンガス85体積%及び酸素ガス15体積%からなる混合雰囲気中で第2のハードコート層24の上に成膜を行い、透明基材10側とは反対側に酸化珪素からなる厚さ10nmの反り抑制層を作製した。この点以外は、実施例22と同様にして、実施例24の透明導電体を作製した。そして、実施例1と同様にして、各実施例の各層及び透明導電体の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0130】
【表6】
【0131】
実施例22〜24の透明導電体は、いずれも、境界部の段差が十分に小さく、カール量は−5〜−3mmの範囲であった。同等の構成を有する実施例9よりも、実施例22〜24の方がカール量の絶対値が小さくなっていた。また、全光線透過率は89%以上と高く、且つ透過光b
*値の差も−2.0〜2.0と小さかった。このことから、第2のハードコート層24の上に反り抑制層を作製することによっても、カール量を低減できることが確認された。