特許第5958482号(P5958482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958482
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】接続部品および接続部品の形成方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 41/00 20060101AFI20160719BHJP
   H05K 7/18 20060101ALI20160719BHJP
   F16B 37/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   F16B41/00 A
   H05K7/18 L
   F16B37/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-26689(P2014-26689)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-152095(P2015-152095A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 拓
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−317522(JP,A)
【文献】 特開平05−118316(JP,A)
【文献】 実開昭51−079264(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
H05K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラック装置の貫通孔に支持部材を固定するための接続部品であり、
ねじに螺合するねじ穴および当該ねじ穴にねじを導入する開口部が形成され、後述する鍔部と間隙を介して周壁面から外向きに突出形成された係止部を有し、かつ、前記ねじ穴の中心軸に沿う方向の回転軸を中心にして回転可能な状態で取り付け対象の前記ラック装置の貫通孔に挿通できる中空部材と、
前記中空部材から突出形成され、かつ、前記貫通孔を通り抜けできる鍔部と、
前記鍔部から前記ねじ穴の中心軸に沿って前記ねじ穴の前記開口部に向かう方向に前記鍔部と間隔を介して配設され、内部に前記中空部材が挿通し、前記係止部が前記ねじ穴の中心軸に沿う方向にスライド移動可能な態様を備えるスライド孔が形成され、かつ前記スライド孔における前記中空部材が挿通する開口部の一部を塞ぐ態様を備えるストッパ部を有し、前記貫通孔における前記鍔部が挿入する入口側の開口端縁に係止することによって、前記貫通孔に挿通された前記中空部材が当該貫通孔から抜けることを阻止し、前記ストッパ部が前記中空部材の前記係止部を係止することにより、前記係止部が前記スライド孔から抜けることを防止する抜け止め部と
を備え、
前記鍔部は、前記貫通孔を通り抜けた後に前記ねじ穴の前記中心軸に沿う前記回転軸を中心にして回転することによって前記貫通孔における前記鍔部が通り抜けた出口側の開口端縁に係止する態様を有している接続部品。
【請求項2】
前記鍔部と前記抜け止め部との間の位置に配設され、前記取り付け対象の貫通孔に嵌ることによって、前記取り付け対象の貫通孔に対して前記回転軸を中心にして回転することを抑制する回転止め部をさらに備えている請求項1に記載の接続部品。
【請求項3】
前記回転止め部と前記鍔部は、当該回転止め部が前記貫通孔に嵌合している状態において前記鍔部が前記貫通孔の開口端縁に係止する姿勢となる関係を有している請求項2に記載の接続部品。
【請求項4】
前記抜け止め部は、前記中空部材に対して前記ねじ穴の中心軸に沿う方向にスライド移動可能に構成されており、
当該抜け止め部と前記鍔部との間隔が可変調整可能である請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の接続部品。
【請求項5】
前記中空部材における前記ねじ穴の前記開口部を含む端部は、前記抜け止め部よりもねじの挿入側に突き出さない構成を備えている請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の接続部品。
【請求項6】
ラック装置の貫通孔に支持部材を固定するための接続部品の形成方法であり、
ねじに螺合するねじ穴および当該ねじ穴にねじを導入する開口部が形成され、後述する鍔部と間隙を介して周壁面から外向きに突出形成された係止部を有し、かつ、前記ねじ穴の中心軸に沿う方向の回転軸を中心にして回転可能な状態で取り付け対象の前記ラック装置の貫通孔に挿通できる中空部材には、前記取り付け対象の貫通孔を通り抜けできる鍔部を突出形成し、
前記鍔部は、前記ラック装置の貫通孔を通り抜けた後に前記ねじ穴の前記回転軸を中心にして回転することによって前記貫通孔における前記鍔部が通り抜けた出口側の開口端縁に係止する態様にし、
また、前記貫通孔における前記鍔部が挿入する入口側の開口端縁に係止することによって、前記貫通孔に挿通された前記中空部材が当該貫通孔から抜けることを阻止する抜け止め部を、前記鍔部から前記ねじ穴の中心軸に沿って前記開口部に向かう方向に前記鍔部と間隔を介して配設し、前記抜け止め部の内部に前記中空部材が挿通し、前記係止部が前記ねじ穴の中心軸に沿う方向にスライド移動可能な態様を備えるスライド孔が形成され、かつ前記スライド孔における前記中空部材が挿通する開口部の一部を塞ぐ態様を備えるストッパ部を形成し、前記ストッパ部が前記中空部材の前記係止部を係止することにより、前記係止部が前記スライド孔から抜けることを防止する接続部品の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置を収納用品に搭載する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サーバや通信機器のような電子機器は、技術の向上により小型化が進んでいる。これにより、図13に表されるように、複数の電子機器100がラック101に集約されて収納されることがある。このような電子機器を収納するラック101として主流となっているラックは、19インチラック(19型ラック)と呼ばれるものである。この主流の19インチラックには規格があり、その主な規格としては、IEC(International Electro technical Commission:国際電気標準会議)規格や、EIA(Electronic Industries Association:米国電子工業会)規格がある。このラック101の支柱(マウントアングル)102には、図14の拡大図に表されるように、支柱102の延長方向(長手方向)に複数の穴103が間隔を介して配列形成されている。この穴103と、ねじ104と、ナット105を利用して、支持部材(マウントキット)106が支柱102に固定される。支持部材106は、電子機器100をラック101に支持する部材である。
【0003】
ところで、ラック101に利用されるナットとして、様々なナットが提案されている。例えば、図11は、特許文献1にて提案されているナットの断面を模式的に表す断面図である。このナット110は、ラック101における支柱102の穴103に挿通する筒部111を有している。この筒部111の内壁面111aには、ねじ104に螺合するねじ(図示せず)が切ってある。また、この筒部111の周壁面には、フランジ部112が突出形成されている。さらに、筒部111には、弾性片113が突出形成されている。フランジ部112および弾性片113は、穴103の開口端縁を挟持するように構成されており、ナット110が穴103から抜け落ちることを防止する。
【0004】
図12は、特許文献2にて提案されているナットの断面を模式的に表す断面図である。このナット115も、上記ナット110と同様に、筒部116を有し、当該筒部116の内壁面116aにはねじ104に螺合するねじ(図示せず)が切ってある。また、筒部116の周壁面には、フランジ部117が突出形成されている。さらに、このナット115においては、筒部116の周壁面には突起部118が形成されている。この突起部118は、フランジ部117と共にナット115が穴103から抜け落ちることを防止する。また、筒部116の周壁面には嵌合部119が形成されている。この嵌合部119は、穴103に嵌合する大きさおよび形状を有し、嵌合部119が穴103に嵌ることにより、ナット110が穴103の中で回転してしまう事態を回避する。
【0005】
なお、特許文献3には、取り外しが容易で再利用が可能な締結部品の一例が表されている。特許文献4には、陳列棚を容易に移動あるいは運搬でき、さらに、陳列棚の保管場所を縮小可能なフレームの連結構造が表されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−340001号公報
【特許文献2】特開2011−12772号公報
【特許文献3】特開2003−322130号公報
【特許文献4】実開平6−34566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ラック(特に19インチラック)101には、複数のサーバや通信機器等の電子機器100が混在した状態で例えば10〜20台も搭載されることがある。また、ラック101における支柱(マウントアングル)102には、前述の如く、複数の穴103が長手方向に間隔を介して配列形成されている。それら穴103の中から、支持部材(マウントキット)106の取り付けに利用する穴103を適宜に選択することにより、ラック101の利用者は、電子機器100の搭載数や大きさを考慮して、支持部材106の取り付け位置を柔軟にアレンジできる。
【0008】
しかしながら、ラック101に搭載する電子機器100を増設する場合や、電子機器100の搭載位置を変更する場合に、支持部材106をラック101から取り外さなければならない場合がある。この場合に、ナットが特許文献1や特許文献2に表されているような態様である場合には、当該ナットを穴103から取り外す必要がある。この取り外し作業において、例えば、特許文献1におけるナット110では、作業者は、弾性片113が穴103を通り抜けることができるように、弾性片113を専用の治具を用いて押し変形させる必要が生じる。この作業は支柱102の裏側(ラック101の内側)にて行われる。支柱102の裏側は作業スペースが狭いために、作業効率は悪くなる。また、特許文献2におけるナット115においても、作業者は、ナット115を穴103から取り外すために支柱102の裏側での作業が必要である。
【0009】
本発明は上記課題を解決するために考え出された。すなわち、本発明の主な目的は、装置の取り外しを容易にでき、取り外し作業の効率をより高めることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の接続部品は、
ねじに螺合するねじ穴および当該ねじ穴にねじを導入する開口部が形成され、かつ、前記ねじ穴の中心軸に沿う方向の回転軸を中心にして回転可能な状態で取り付け対象の貫通孔に挿通できる中空部材と、
前記中空部材から突出形成され、かつ、前記貫通孔を通り抜けできる鍔部と、
前記鍔部から前記ねじ穴の中心軸に沿って前記ねじ穴の前記開口部に向かう方向に前記鍔部と間隔を介して配設され、前記貫通孔における前記鍔部が挿入する入口側の開口端縁に係止することによって、前記貫通孔に挿通された前記中空部材が当該貫通孔から抜けることを阻止する抜け止め部と
を備え、
前記鍔部は、前記貫通孔を通り抜けた後に前記ねじ穴の前記中心軸に沿う前記回転軸を中心にして回転することによって前記貫通孔における前記鍔部が通り抜けた出口側の開口端縁に係止する態様を有している。
【0011】
また、本発明の接続部品の形成方法は、
ねじに螺合するねじ穴および当該ねじ穴にねじを導入する開口部が形成され、かつ、前記ねじ穴の中心軸に沿う方向の回転軸を中心にして回転可能な状態で取り付け対象の貫通孔に挿通できる中空部材には、前記取り付け対象の貫通孔を通り抜けできる鍔部を突出形成し、
前記鍔部は、前記取り付け対象の貫通孔を通り抜けた後に前記ねじ穴の前記回転軸を中心にして回転することによって前記貫通孔における前記鍔部が通り抜けた出口側の開口端縁に係止する態様にし、
また、前記貫通孔における前記鍔部が挿入する入口側の開口端縁に係止することによって、前記貫通孔に挿通された前記中空部材が当該貫通孔から抜けることを阻止する抜け止め部を、前記鍔部から前記ねじ穴の中心軸に沿って前記開口部に向かう方向に前記鍔部と間隔を介して配設する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置の取り外しを容易にでき、取り外し作業の効率をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る第1実施形態の接続部品を模式的に表す斜視図である。
図2】本発明に係る第2実施形態の接続部品を模式的に表す斜視図である。
図3図2に表すA−A部分の接続部品の断面を模式的に表す図である。
図4図2における接続部品を分解状態で表す図である。
図5図2における接続部品の利用形態を説明する図である。
図6図2における接続部品を貫通孔に取り付けた状態を模式的に表す図である。
図7図5に表すB−B部分の断面を模式的に表す図である。
図8図2における接続部品を貫通孔に取り付けた状態を模式的な断面により表す図である。
図9図2における接続部品を利用して支持部材をねじ止めした状態を模式的な断面により表す図である。
図10】その他の実施形態を説明する図である。
図11】特許文献1に表されているナットを説明する断面図である。
図12】特許文献2に表されているナットを説明する断面図である。
図13】電子機器を収納するラックの一形態例を説明する図である。
図14】ラックへの支持部材の取り付けを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る第1実施形態の接続部品を模式的に表す斜視図である。この接続部品1は、ねじと共に使用される所謂ナットであり、例えば、ラック等に形成された貫通孔11に取り付けられる。この接続部品1は、中空部材3と、鍔部4と、抜け止め部5とを有している。中空部材3には、ねじに螺合するねじ穴7と、当該ねじ穴7にねじを導入する開口部8とが形成されている。この中空部材3は、取り付け対象の貫通孔11に挿通でき、かつ、貫通孔11に挿通している状態でねじ穴7の中心軸10に沿う方向の回転軸(中心軸10を含む)を中心にして回転可能な大きさおよび形状を備えている。
【0016】
鍔部4は、中空部材3から突出形成されている。この鍔部4は、取り付け対象の貫通孔11を通り抜けることができる。かつ、鍔部4は、貫通孔11を通り抜けた後にねじ穴7の中心軸10に沿う方向の回転軸を中心にして回転することにより、貫通孔11における鍔部4が通り抜けた出口側の開口端縁に係止する態様および大きさを備えている。
【0017】
抜け止め部5は鍔部4からねじ穴7の中心軸10に沿ってねじ穴7の開口部8に向かう方向に鍔部4と間隔を介して配設されている。この抜け止め部5は、貫通孔11における鍔部4が挿入する入口側の開口端縁に係止することによって、貫通孔11に挿通されている中空部材3が貫通孔11から抜けることを阻止する態様および大きさを備えている。
【0018】
この第1実施形態の接続部品1は上記のような構成を備えている。この接続部品1は次のような作業により貫通孔11に取り付けられる。例えば、作業者は、接続部品1を、貫通孔11が形成されている部材(例えばラック)の表側に配置し、さらに、鍔部4が貫通孔11に向き合う向きにし、かつ、鍔部4が貫通孔11を通ることができる姿勢にする。そして、作業者は、接続部品1の鍔部4を貫通孔11に表側から挿通する。さらに、作業者は、鍔部4が貫通孔11を通り抜け裏側に出て中空部材3が貫通孔11に挿通されている状態とし、この状態でもって、接続部品1を、ねじ穴7の中心軸10に沿う回転軸を中心にして回す。これにより、作業者は、鍔部4が貫通孔11における出口側の開口端縁に係止する状態とする。このようにして接続部品1は取り付け対象の貫通孔11に取り付けられる。
【0019】
この第1実施形態の接続部品1は、上記のような鍔部4を備えているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、接続部品1は、貫通孔11が形成されている部材(例えばラック)の表側から鍔部4を貫通孔11に通し、そして、回すという簡単で、しかも、前記部材(ラック)の表側のみの作業によって貫通孔11に取り付けられる。
【0020】
さらに、接続部品1が貫通孔11に取り付けられた状態において、中空部材3におけるねじ穴7の開口部8が前記部材(ラック)の表側を向いているので、当該接続部品1のねじ穴7にねじを螺合する作業も前記部材(ラック)の表側の作業となる。これにより、接続部品1を貫通孔11に取り付ける作業からねじを螺合する作業までの一連の作業を前記部材(ラック)の表側のみの作業とすることができるために、接続部品1は、例えばラックへの電子機器の収納作業の効率化を促進できる。
【0021】
(第2実施形態)
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。
【0022】
図2は、第2実施形態の接続部品を模式的に表す斜視図である。図3は、図2に示されるA−A部分の接続部品の断面を模式的に表す図である。図4は、第2実施形態の接続部品の分解図である。図5は、第2実施形態の接続部品の利用形態の一例を模式的に表すモデル図である。図6は、第2実施形態の接続部品を取り付け対象の貫通孔に取り付けた状態を模式的に表す図である。図7は、図5に示されるB−B部分の断面を模式的に表す断面図である。
【0023】
第2実施形態の接続部品20は、ラック(例えばIEC規格やEIA規格に準拠した19インチラック)における図5に表されるような支柱(マウントアングル)102に支持部材(マウントキット)106を取り付ける部品であるナットである。この接続部品20は、図6に表されるように、支柱102に配列形成されている穴(貫通孔)103に嵌め込んで使用される。なお、図5図7においては、支柱102および支持部材106は、一部分が抜き出されて表されている。
【0024】
この第2実施形態では、接続部品20は、図4に表されるような軸受部材21と、嵌合部材22とが組み合わされている部品である。軸受部材21は、中空部材であるスリーブ25と、鍔部であるフランジ26と、係止部27とを備えている。嵌合部材22は、抜け止め部29と、回転止め部30と、ストッパ部31とを備えている。
【0025】
軸受部材21のスリーブ25は、支柱102の取り付け対象の穴103に挿通する部位であり、この第2実施形態では、円筒形状を備えている。このスリーブ25における一端側から他端側に貫通する貫通孔33は、ねじ104が挿入するねじ穴であり、当該貫通孔33の内壁面には、図3に表されているように、ねじ104に螺合するねじ32が切ってある。また、スリーブ25の周壁面は、軸受部材21(スリーブ25)に対して相対的に嵌合部材22がスリーブ25の中心軸に沿う方向α(図3参照)にスライド移動できるように滑らかな面となっている。
【0026】
フランジ26は、スリーブ25の周壁面(この第2実施形態では、スリーブ25の一端側の周壁面)から外向きに突出形成されている。このフランジ26は、次の2つの条件を満たす形状および大きさを備えている。その条件の一つは、ラック102の穴103を通り抜けることができることである。もう一つの条件は、スリーブ25が穴103に挿通されている状態で、スリーブ25の中心軸O(図4参照)を中心にして軸受部材21が回転した場合に、フランジ26の少なくとも一部が穴103の開口端縁に当接することである。
【0027】
係止部27は、フランジ26と間隙を介して、スリーブ25の周壁面(この第2実施形態では、スリーブ25における端部側の周壁面)から外向きに突出形成されている。この第2実施形態では、係止部27とフランジ26との間隔は、支柱102の厚み(穴103の中心軸方向の長さ)に遊び(余裕)分を加えた長さである。この係止部27は、軸受部材21と嵌合部材22を組み合わせた場合に、軸受部材21と嵌合部材22の組み合わせが解消されてしまうことを防止する機能を持つ部位である。
【0028】
嵌合部材22の抜け止め部29は、支柱102の穴103を通り抜けられない大きさおよび形状を備えている。つまり、抜け止め部29は、穴103の開口端縁に係止する態様を備えている。なお、抜け止め部29の外形は、図2等の例では、四角形状を備えているが、抜け止め部29の外形は、四角形状に限定されることなく、穴103を通り抜けられない大きさを備えていれば、円形状や、三角形状や、五角以上の多角形状であってもよい。
【0029】
回転止め部30は、抜け止め部29が穴103の開口端縁に係止している状態において、穴103に嵌る大きさおよび形状を備えている。この回転止め部30は、穴103に嵌ることにより、嵌合部材22が穴103の中心軸を中心にして回転することを阻止する。
【0030】
抜け止め部29および回転止め部30の内部にはスライド孔34が形成されている。このスライド孔34は、軸受部材21の係止部27が嵌合し、かつ、当該係止部27が貫通孔33の中心軸Oに沿う方向にスライド移動可能な態様を備えている。
【0031】
ストッパ部31は、スライド孔34における、スリーブ25が挿通する開口部の一部を塞ぐ態様を備えている。このストッパ部31は、スライド孔34に嵌合している係止部27を係止することにより、係止部27がスライド孔34から抜けること(換言すれば、軸受部材21と嵌合部材22の組み合わせが解消すること)を防止する。
【0032】
この第2実施形態では、軸受部材21と嵌合部材22は、係止部27がスライド孔34に嵌合している状態で組み合わされている。このように組み合わされている状態では、係止部27がスライド孔34に隙間無く嵌合していることから、嵌合部材22は、軸受部材21に対して、スリーブ25(貫通孔(ねじ穴)33)の中心軸Oを中心にして回転する方向に動くことはできない。これに対し、嵌合部材22は、軸受部材21に対して、スリーブ25(貫通孔33)の中心軸Oに沿う方向にはスライド移動することができる。
【0033】
さらに、軸受部材21と嵌合部材22が組み合わされている状態において、フランジ26と回転止め部30には次のような関係がある。つまり、軸受部材21と嵌合部材22が組み合わされている状態において、フランジ26が支柱102の穴103に挿通する姿勢と、回転止め部30が穴103に嵌る姿勢とは、貫通孔(ねじ穴)33の中心軸Oを中心にして回転する方向にずれている。
【0034】
さらに、軸受部材21と嵌合部材22が組み合わされ、かつ、フランジ26と抜け止め部29が支柱102の板厚と同程度の間隔を介して位置している状態において、スリーブ25の端部がスライド孔34内に位置する構成となっている。換言すれば、上記の状態において、スリーブ25の端部がスライド孔34からねじが挿入する側に突き出さないように、接続部品20が設計されている。
【0035】
この第2実施形態の接続部品20は上記のような構成を備えている。この接続部品20を構成する材料と製造手法は様々に考えられる。例えば、軸受部材21と嵌合部材22を組み合わされた状態で製造する手法としては、3D(Dimensional)プリンタを利用することが考えられる。3Dプリンタには、インクジェット法(MJM(Multi Jet Modeling)法)、熱溶解積層法(FDM(fused Deposition Modeling)法)、粉末焼結法(SLS(Selective Laser Sintering)法)などというように、複数の種類が有る。ここで採用される3Dプリンタの種類、および、軸受部材21と嵌合部材22を構成する材料は、製造コストや強度等を考慮して適宜採用される。なお、軸受部材21と嵌合部材22を構成する材料は、ゴム等の弾性の高い材料でなければよく、金属でも樹脂でもよい。
【0036】
また、接続部品20の製造手法としては、軸受部材21と嵌合部材22を別々に製造した後に組み合わすという製造手法であってもよい。この場合には、別々に製造された軸受部材21と嵌合部材22は、例えば、軸受部材21の係止部27を嵌合部材22におけるストッパ部31の開口部36(図4参照)に圧入し係止部27をスライド孔34に嵌合することにより、組み合わされる。このように係止部27を開口部36に圧入する場合には、係止部27と開口部36の形状および大きさは、係止部27とストッパ部31による抜け止め機能を保ちつつ、係止部27を開口部36に圧入できるように設計される。つまり、係止部27と開口部36の形状等は、図4等の例に限定されない。
【0037】
また、次のような接続部品20の製造手法も考えられる。例えば、図10(a)には、軸受部材21と組み合わされる前の状態における嵌合部材22の模式的な断面が表されている。この図10(a)に表されるように、この状態では、嵌合部材22にストッパ部31は形成されておらず、ストッパ部31が形成される領域には、係止部27が無理なく挿通できる開口部37が形成されている。この状態において、図10(b)に表されるように、軸受部材21の係止部27が嵌合部材22の開口部37からスライド孔34に挿入する。そして、図10(c)に表されているように、開口部37の開口端縁が当該開口部37の一部を塞ぐ方向に折り曲げられることにより、ストッパ部31が形成される。あるいは、開口部37の開口端縁を折り曲げるのではなく、開口部37の開口端縁をかしめることにより、開口部37の一部を塞いでストッパ部31が形成されてもよい。このようにして、軸受部材21と嵌合部材22が組み合わされてもよい。
【0038】
次に、この第2実施形態の接続部品20を利用して支持部材106をラック101の支柱102に取り付ける作業例を図7図9を参照しつつ説明する。
【0039】
例えば、まず、作業者は、ラック101の支柱102に形成されている複数の穴103の中から、支持部材106をねじ止する取り付け対象の穴103を決定する。そして、作業者は、図5および図7に表されるように、ラック101の表側において、接続部品20のフランジ26をその取り付け対象の穴103に向け、フランジ26を穴103に挿通できるように接続部品20の姿勢を整える。その後、作業者は、その姿勢でもってフランジ26を表側から穴103に通し、図8に表されるように、当該フランジ26を支柱102の裏側に出す。
【0040】
そして、作業者は、フランジ26が支柱102の裏側に出ている状態で、接続部品20を貫通孔33の中心軸Oを中心にして回す。これにより、作業者は、接続部品20の姿勢を、嵌合部材22の回転止め部30が穴103に嵌る姿勢とする。この状態においては、フランジ26の一部が穴103の裏側(フランジ26が抜け出る出口側)の開口端縁に係止可能な状態となる。そして、作業者は、接続部品20をさらに穴103に押し込み、回転止め部30を穴103に嵌合する。
【0041】
然る後に、作業者は、接続部品20の貫通孔(ねじ穴)33と、支持部材106におけるねじ挿通対象の貫通孔107との位置を合わせ、それら貫通孔33,107に表側からねじ104を差し込む。そして、作業者は、ねじ104を接続部品20の貫通孔33のねじ32に螺合する。この際、ねじ104の回転力によって、軸受部材21は嵌合部材21に対して、フランジ26が嵌合部材22に近付く方向にスライド移動する。これにより、図9に表されるように、軸受部材21のフランジ26と嵌合部材22の抜け止め部29とは支柱102を表側と裏側から挟持する態様となり、接続部品20が支柱102に固定される。それと共に、支持部材106がねじ104と接続部品20によって支柱102(ラック101)に固定される。
【0042】
このようにして、作業者は、接続部品20とねじ104を利用して、支持部材106をラック101(支柱102)にねじ止め(固定)することができる。
【0043】
この第2実施形態では、接続部品20を構成する軸受部材21は、前述したようなフランジ26を備えている。つまり、フランジ26は、取り付け対象の穴103に挿通でき、かつ、軸受部材21のスリーブ25が穴103に挿通されている状態で貫通孔33の中心軸Oを中心にして回転することにより、一部が穴103の開口端縁に係止可能な態様を備えている。これにより、接続部品20は、支柱102の穴103に表側から差し込み可能で、しかも、貫通孔33の中心軸Oを中心にして回転し姿勢を変えるだけでフランジ26によって抜け止め可能な状態となる。すなわち、接続部品20は、支柱102の裏側に手を回すというような面倒な作業を行うことなく、表側の作業により支柱102に取り付けることができる。
【0044】
さらに、この第2実施形態では、接続部品20は、回転止め部30を備えている。この回転止め部30は、フランジ26の一部が穴103の開口端縁に係止可能な姿勢である場合に、穴103に嵌ることにより接続部品20の回転を抑制する。これにより、ねじ32に螺合しているねじ104を回して締め付けている際に、回転止め部30は、そのねじ締めの回転力によって接続部品20が回転する事態(換言すれば、ねじを締め付けることができない事態)を防止できる。
【0045】
さらに、この第2実施形態では、軸受部材21と嵌合部材22は相対的に貫通孔33の中心軸Oに沿う方向αにスライド移動可能となっている。これにより、支柱102の裏側に配置されるフランジ26と、表側に配置される抜け止め部29との間隔は、可変可能である。さらに、回転止め部30が穴103に嵌合している状態で、軸受部材21の貫通孔33にねじ104を螺合し当該ねじ104を締め付け方向に回転することにより、軸受部材21が嵌合部材22に対してスライド移動する。このスライド移動によって、フランジ26と抜け止め部29との間隔は狭くなり、フランジ26と抜け止め部29が支柱102を挟持することによって、接続部品20は支柱102にがたつきなく取り付けられる。
【0046】
さらに、この第2実施形態における接続部品20とねじ104を利用して支持部材106をラック101の支柱102に取り付ける作業手順とは逆の手順でもって、作業者は、簡単に支持部材106および接続部品20をラック101から外すことができる。
【0047】
すなわち、この第2実施形態の接続部品20は、支持部材106をラック101に取り付ける作業および取り外し作業を簡単かつ迅速に行うことを可能にする。
【0048】
(その他の実施形態)
なお、この発明は第1と第2の実施形態に限定されず、様々な実施形態を採り得る。例えば、第2実施形態では、フランジ26の突出形成位置は、スリーブ25の端部である。これに対し、フランジ26の突出形成位置は、スリーブ25の端部以外の部位であってもよい。
【0049】
また、第2実施形態では、スリーブ25に形成されるねじ穴は貫通孔33である。これに対し、スリーブ25に形成されるねじ穴は、ねじ104の先端側が向く端部側が閉塞していてもよい。つまり、接続部品20は袋ナットの態様を備えていてもよい。
【0050】
さらに、第1や第2の実施形態では、接続部品1,20はラックに形成されている貫通孔11,103に取り付けられる例を示している。これに対し、この発明における接続部品は、ラック以外の部材に形成された貫通孔に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1,20 接続部品
3 中空部材
4 鍔部
5 抜け止め部
7 ねじ穴
8 開口部
25 スリーブ
26 フランジ
29 抜け止め部
30 回転止め部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図14