特許第5958505号(P5958505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958505
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】樹脂封止装置およびその封止方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20160719BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20160719BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20160719BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20160719BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   H01L21/56 T
   B29C45/02
   B29C45/14
   B29C33/12
   B29C33/14
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-158393(P2014-158393)
(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公開番号】特開2016-35975(P2016-35975A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2014年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】第一精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】益田 耕作
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−086499(JP,A)
【文献】 特開2001−179782(JP,A)
【文献】 特開2010−238868(JP,A)
【文献】 特開2007−320102(JP,A)
【文献】 特開2011−011426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B29C 33/12
B29C 33/14
B29C 45/02
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型と第2金型が型締めすることで形成されるキャビティ内に配置される電子部品を、前記第2金型に形成された可動ブロックに圧力媒体を介して圧力を掛けて、前記第1金型との間で圧力付与手段により挟み込み、前記第2金型に配設されたポットに供給された封止用樹脂をプランジャによりキャビティ内に注入して封止する樹脂封止装置において、
前記圧力付与手段は、前記第1金型と前記可動ブロックで前記電子部品を挟み込み、前記封止用樹脂が前記キャビティに注入される時に、前記圧力媒体の流れを遮断する機構を備え
前記可動ブロックに突き出して、前記可動ブロックが前記第1金型から離れる方向へ変位することを防止する規制部材が設けられた樹脂封止装置。
【請求項2】
前記圧力付与手段は、前記圧力媒体としての作動油を圧送する油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの前記作動油により前記可動ブロックに圧力を掛ける油圧ピストンと、前記作動油の回路を遮断する油圧切替弁とを備えた請求項1記載の樹脂封止装置。
【請求項3】
前記規制部材には、突き出し量に応じて、前記可動ブロックの押し上げ位置が変わる傾斜面が形成されている請求項記載の樹脂封止装置。
【請求項4】
第1金型と第2金型が型締めすることで形成されるキャビティ内に配置される電子部品を、前記第2金型に形成された可動ブロックに圧力媒体を介して圧力を掛けて、前記第1金型との間で圧力付与手段により挟み込み、前記第2金型に配設されたポットに供給された封止用樹脂をプランジャによりキャビティ内に注入して封止する樹脂封止装置の樹脂封止方法において、
前記第1金型と前記可動ブロックにより前記電子部品を挟み込むステップと、
前記可動ブロックが前記第1金型から離れる方向へ変位することを防止する規制部材を前記可動ブロックに突き出すステップと、
前記封止用樹脂が前記キャビティに注入される時に、前記圧力手段が前記圧力媒体の流れを遮断するステップとを含む樹脂封止装置の樹脂封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂により電子部品を封止する樹脂封止装置および樹脂封止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や抵抗素子、コンデンサなどの電子部品は、保護を目的として封止用樹脂により封止される。
例えば、DIP((Dual Inline Package)やQFP(Quad Flat Package)、PLCC(Plastic leaded chip carrier)などのリードフレームに半導体素子を搭載した半導体装置、BGA(Ball grid array)やLGA(Land grid array)などのサブストレート等の樹脂製基板に半導体素子を搭載した半導体装置は、半導体素子全体を封止用樹脂により封止される。
【0003】
樹脂製基板に搭載された半導体素子を封止用樹脂にて封止するときには、樹脂製基板を上型と下型とで挟み込んだ状態で、半導体素子が位置するキャビティに封止用樹脂を注入する。
半導体素子は、封止用樹脂により電子部品全体を封止して覆われるが、発熱が大きい半導体素子は、半導体素子の一部、または半導体素子に設けられたヒートシンクを、封止用樹脂から露出するように封止されることがある。
このような電子部品を封止する従来の樹脂封止装置として、特許文献1に記載にされたものが知られている。
【0004】
特許文献1に記載の半導体装置の製造方法は、図15Aに示すように、対向する一対の金属板1102、1103の間に半導体素子1101を介在させ、それぞれの金属板1102、1103と半導体素子1101とを接続した部材1110を、金型1200内に設置し、樹脂1105を注入することにより部材1110をモールドするようにしている。
モールド工程では、図15Bに示すように、一方の金属板1102の外面1102aと金型1200とを密着させるとともに、他方の金属板1103の外面1103aと金型1200との間に、注入される樹脂1105が流動可能な大きさの隙間1106を設けた状態で、樹脂1105の注入を行って樹脂1105を隙間1106に充填し、しかる後、他方の金属板1103の外面1103aを被覆する樹脂1105を除去し、当該外面1103aを露出させようにしている。
【0005】
特許文献1に記載の半導体装置の製造方法では、他方の金属板1103の外面1103aと金型1200との間に、注入される樹脂1105が流動可能な大きさの隙間1106がある。そのため、金型1200の上型と下型との型締めを行うときに、部材1110を挟み付けるような圧縮力が加わることがない。従って、金属板1102、1103の間に位置する半導体素子1101が破壊されることなく、部材1110を封止することができる。
【0006】
しかし、この特許文献1に記載の半導体装置の製造方法では、図15Cに示すように、他方の金属板1103の外面1103aと金型1200との間に隙間1106を設けているため、他方の金属板1103の外面1103aが樹脂1105により被覆される。そのため、封止用樹脂で半導体素子を封止するモールド工程の後に、外面1103aを被覆する樹脂1105を除去する除去工程が必要である。従って、特許文献1に記載の半導体装置の製造方法では、余分な工程が必要であるため、半導体装置を製造する工程が多くなる。
そこで、上下の金型で、直接、樹脂製基板を挟み込むことで、封止する樹脂封止装置が特許文献2として知られている。
【0007】
図16に示す特許文献2に記載の樹脂封止用金型装置1000は、上型キャビティブロック1001と、下型キャビティバー1002とで基板を挟持し、下型モールドセット1003に設けたプランジャ1004を突き出して封止用固形樹脂を高温状態にある金型内で流動体化し、基板の表面に実装した電子部品を樹脂封止するものである。
【0008】
ここで、この樹脂封止用金型装置1000の構成について詳細に説明する。樹脂封止用金型装置1000は、上型チェス1020を組み込んだ上型モールドセット1010と、下型チェス1050を組み込んだ下型モールドセット1003とで構成されている。
【0009】
上型モールドセット1010は、上型ベースプレート1011の下面両側縁部にサイドブロック1012,1012を配置したものである。
上型チェス1020は、ホルダーベースプレート1021の上面中央にピンプレート1022およびエジェクタプレート1023が順次積み重ねられていると共に、その両側にチェス用スペースブロック1024,1024がそれぞれ配置されている。そして、ホルダーベースプレート1021の下面中央に配置したカルブロック1026の両側に上型キャビティ1001,1001がそれぞれ配置されている。
【0010】
下型モールドセット1003は、下型ベースプレート1031の上面両側縁部にそれぞれ配置したスペースブロック1032,1032を介して下型チェス用ベースプレート1033を組み付けたものである。そして、下型モールドセット1003は、スペースブロック1032,1032間の中央にプランジャ用等圧シリンダーブロック1034が配置されている。このプランジャ用等圧シリンダーブロック1034の両側にはピストン用シリンダーブロック1006,1006がそれぞれ配置されている。
【0011】
下型ホルダーベースプレート1051の下面両側縁部には、スペースブロック1052,1052が配置され、その上面中央にセンターブロック1054が配置されている。センターブロック1054の両側に、かつ、ピストン1005のロッド1045にスライド嵌合できる位置に、着脱ブロック1055が配置されている。
【0012】
樹脂封止用金型装置1000では、下型キャビティバー1002を複数本の並設したピストン1005で支持する一方、ピストン1005を下型モールドセット1003に設けた油圧シリンダーブロック1006内にスライド可能に挿入している。
【0013】
次に、このように構成された樹脂封止用金型装置1000の封止工程について説明する。樹脂製基板(図示せず、)が下型キャビティバー1002に配置される。下型モールドセット1003が、図示しない駆動機構を介して押し上げられることで、上型モールドセット1010に型締めされる。このクランプ状態において、下型キャビティバー1002とガイドブロック1062との間隙は、下型キャビティバー1002がスライド可能な隙間(0.001〜0.015mm)を保持している。従って、基板の厚さ寸法のバラツキを吸収する下型キャビティバー1002の上下動を確保できる。
【0014】
次いで、油の供給によりピストン1005を押し上げて、下型キャビティバー1002を上昇させることにより、樹脂製基板を下型キャビティバー1002と上型キャビティブロック1001とで一次クランプする。更に、プランジャ用等圧シリンダーブロック1034のプランジャ1004を上昇させ、流動樹脂をキャビティに注入して、樹脂製基板を封止、成形する。
【0015】
このように、樹脂封止用金型装置1000は、ピストン1005が上下にスライドすることにより、下型キャビティバー1002の挟み込みの圧力を調整するので、上型キャビティブロック1001と下型キャビティバー1002とにより、樹脂製基板の厚みがばらついても、樹脂製基板を傷つけることなく、隙間なく挟み込むことができる。
また、樹脂封止用金型装置1000は、プランジャ1004を突き出して流動樹脂をキャビティに注入し、キャビティに樹脂が充填する直前に、樹脂の充填圧力に負けて下型キャビティバー1002が下降しないように油圧シリンダーブロック1006内の圧力を上昇させる。これにより、キャビティから樹脂が漏れてバリになることを防ぐ。なお、この時の圧力は樹脂製基板にダメージを与えない程度の力で設定される。
特許文献2に記載の樹脂封止用金型装置1000は、前述のような構造で、図17のように厚みがばらつき易い金属板付の樹脂製基板の部材を樹脂封止することにも使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007−73583号公報
【特許文献2】特開2001−179782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、特許文献2に記載の樹脂封止用金型装置1000は、封止用樹脂がキャビティ(上型キャビティブロック1001,下型キャビティバー1002)に充填される直前に油圧シリンダーブロック1006内の圧力を上昇させるが、図17のように樹脂製基板上にチップをボンディングし、そのチップの上に露出タイプの金属板(放熱板)を備えるような半導体装置を成形する場合は、チップ等を破損させない程度の圧力しかかけることができないので、封止用樹脂がキャビティに充填した時の注入圧力が下型キャビティバー1002に掛かった瞬間、ピストン1005が押し戻されるおそれがある。
これは、ピストン1005が下型キャビティバー1002を押す圧力よりも、封止用樹脂の注入圧力が高くなるためである。
【0018】
ここで、その詳細を、図17に示す概略図に基づいて詳細に説明する。
図17では、電子部品Dとして、樹脂製基板Bに半導体素子Sが搭載され、この半導体素子Sの上面に、放熱板Hが設けられている。
樹脂製基板Bは、その両端部が、上型1101と、下型1102の可動ブロック(下型キャビティバー)1103とにより挟み込まれる。放熱板Hは、半導体素子Sによる発熱を放熱させるため、封止用樹脂Rから露出するようにして封止されるため、放熱板Hは、上型1101が接触した状態で、半導体素子Sおよび樹脂製基板Bと共に、可動ブロック1103により挟み込まれて、電子部品Dが型締めされている。なお、上型1101と下型1102とは、図示しない型締装置により型締めされる。
【0019】
例えば、可動ブロック1103を支持するピストン1104は、壊れやすい電子部品Dの保護が考慮されて、約4.9×106Pa(50kgf/cm2)以下に抑えた状態で、可動ブロック1103を押し上げ、電子部品Dをソフトクランプしている。これに対し、キャビティC内に注入される封止用樹脂Rの注入圧力は、約9.8×106Pa(100kgf/cm2)程度である。
【0020】
そのため、封止用樹脂RがキャビティC内に注入されると、図17に示す矢印のように、封止用樹脂Rの注入圧力が、樹脂製基板Bや半導体素子S、放熱板Hのそれぞれに掛かり、可動ブロック1103が押し下げられ、電子部品Dのクランプが解除されるおそれがある。そうなると、放熱板Hと上型1101との間に隙間ができやすくなるため、放熱板Hの上面に封止用樹脂が回ったり、放熱板Hが半導体素子Sから剥がれたり、半導体素子Sが樹脂製基板Bから剥がれたりするおそれがある。また、この剥がれによって、半導体素子Sが破損することも心配される。
封止用樹脂の注入圧力に負けないように、ピストン1104による圧力を上げ過ぎると、電子部品Dを壊すおそれがある。
【0021】
そこで本発明は、強いクランプができない状況で、封止用樹脂の注入圧力が強くても、電子部品を壊さず封止できる樹脂封止装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の樹脂封止装置は、第1金型と第2金型とで形成されるキャビティ内に配置される電子部品を、前記第2金型に形成された可動ブロックに圧力媒体を介して圧力を掛けて、前記第1金型との間で圧力付与手段により挟み込み、前記第2金型に配設されたポットに供給された封止用樹脂をプランジャによりキャビティ内に注入して封止する樹脂封止装置において、前記圧力付与手段は、前記第1金型と前記可動ブロックで前記電子部品を挟み込み、前記封止用樹脂が前記キャビティに注入される時に、前記圧力媒体の流れを遮断する機構を備え、前記可動ブロックに突き出して、前記可動ブロックが前記第1金型から離れる方向へ変位することを防止する規制部材が設けられたことを特徴とする。
また、本発明の樹脂封止装置の樹脂封止方法は、第1金型と第2金型が型締めすることで形成されるキャビティ内に配置される電子部品を、前記第2金型に形成された可動ブロックに圧力媒体を介して圧力を掛けて、前記第1金型との間で圧力付与手段により挟み込み、前記第2金型に配設されたポットに供給された封止用樹脂をプランジャによりキャビティ内に注入して封止する樹脂封止装置の樹脂封止方法において、前記第1金型と前記可動ブロックにより前記電子部品を挟み込むステップと、前記可動ブロックが前記第1金型から離れる方向へ変位することを防止する規制部材を前記可動ブロックに突き出すステップと、前記封止用樹脂が前記キャビティに注入される時に、前記圧力手段が前記圧力媒体の流れを遮断するステップとを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、第1金型と可動ブロックとにより電子部品が弱い圧力で挟み込まれた状態で、封止用樹脂による高い注入圧力が電子部品や可動ブロックに掛かっても、圧力媒体の流れが遮断され、流動しない状態であるため、注入圧力の変化にも、圧力付与手段は変動せずに、即応して、可動ブロックは支持された状態を維持することができる。また、可動ブロックに突き出して、可動ブロックの下方への変位を防止する規制部材が設けられており、規制部材が可動ブロックを下支えするため、圧力媒体による制御だけでなく、可動ブロックの移動を機械的に防止することができる。
【0024】
前記圧力付与手段は、前記圧力媒体としての作動油を圧送する油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの前記作動油により前記可動ブロックに圧力を掛ける油圧ピストンと、前記作動油の回路を遮断する油圧切替弁とを備えていることが望ましい。このように圧力付与手段が構成されていると、可動ブロックを支持する油圧ピストンは、油圧切替弁により、作動油が流動しない状態となるため、油圧ピストンが押し戻されてしまうような状態を抑えることができる。
【0026】
前記規制部材には、突き出し量に応じて、前記可動ブロックの押し上げ位置が変わる傾斜面が形成されていると、規制部材の突き出し量を調整することで、可動ブロックの高さ位置のばらつきにも、規制部材を対応させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、可動ブロックが支持された状態を維持することができるため、封止用樹脂の注入圧力が強くても、電子部品を壊さず、封止できることで、歩留りを維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態1に係る樹脂封止装置の断面図である。
図2図1に示す樹脂封止装置の動作を説明するための図であり、上型に下型を型締めした状態の断面図である。
図3図2に続く樹脂封止装置の動作を説明するための図であり、可動ブロックにより電子部品をクランプした状態の断面図である。
図4図3に続く樹脂封止装置の動作を説明するための図であり、油圧切替弁を切り替えた状態の断面図である。
図5図4に続く樹脂封止装置の動作を説明するための図であり、プランジャにより封止用樹脂がカルから樹脂通路に押し出された状態の断面図である。
図6図5に続く樹脂封止装置の動作を説明するための図であり、プランジャにより封止用樹脂がキャビティに注入された状態の断面図である。
図7図6に示す樹脂封止装置において、封止用樹脂の注入圧力による影響を説明するための概略図である。
図8図6に続く樹脂封止装置の動作を説明するための図であり、下型を下降させて型開きして、樹脂封止された電子部品を取り出した状態の断面図である。
図9】本発明の実施の形態2に係る樹脂封止装置の断面図である。
図10図9に示す樹脂封止装置の動作を説明するための図であり、上型に下型を型締めし、可動ブロックにより電子部品をクランプした後に、油圧切替弁を切り替えた状態の断面図である。
図11図10に続く樹脂封止装置の動作を説明するための図であり、テーパブロックにより可動ブロックを支持させた状態の断面図である。
図12図11に続く樹脂封止装置の動作を説明するための図であり、プランジャにより封止用樹脂がキャビティに注入された状態の断面図である。
図13図12に続く樹脂封止装置の動作を説明するための図であり、可動ブロックからテーパブロックを離脱させた状態の断面図である。
図14図14に続く樹脂封止装置の動作を説明するための図であり、下型を下降させて型開きして、樹脂封止された電子部品を取り出した状態の断面図である。
図15A】特許文献1に記載の半導体装置の製造方法を説明するための図であり、モールド工程を行う前の状態の図である。
図15B図15Aに続く半導体装置の製造方法を説明するための図であり、モールド工程にて、樹脂が注入されている状態の図である。
図15C図15Bに続く半導体装置の製造方法を説明するための図であり、モールド工程にて、樹脂を注入した状態の図である。
図16】特許文献2に記載の樹脂封止用金型装置を示す断面図である。
図17】従来の樹脂封止装置において、封止用樹脂の注入圧力による影響を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る樹脂封止装置を、図面に基づいて説明する。なお、図1から図8においては、油圧装置が、図面上、左側の一方にしか図示されていないが、右側の他方にも設けられており、便宜上、省略されている。
図1に示す樹脂封止装置10は、放熱板付きの半導体素子SがリードフレームLに実装されたものを電子部品Dとして、放熱板H1,H2の放熱面を露出した状態で、封止用樹脂により半導体素子Sを封止して成形品とするものである。
樹脂封止装置10は、上型20、下型30と、油圧装置40とを備えている。
【0030】
上型20(第1金型)の下面には凹部21が形成されている。この凹部21は、下型30の上面の凹部31と共に、キャビティCを構成する。また、上型20の下面にはキャビティCへの封止用樹脂の流路となる樹脂通路22およびカル部23が形成されている。
【0031】
下型30(第2金型)は、凹部31の底部の一部として可動ブロック32を備えている。可動ブロック32は、凹部31の底部に通孔33の中に配置されて上下して、キャビティC内に配置された電子部品Dを上型20の凹部21の上面と共に挟み込み、クランプする。
下型30には、封止用樹脂を投入するポット34が設けられていると共に、溶融状態の封止用樹脂を押し上げキャビティCへ注入するプランジャ35が、ポット34内に設けられている。下型30は、図示しない昇降手段により上下に昇降する。
【0032】
油圧装置40(圧力付与手段)は、油圧ポンプ41と、油圧シリンダー42と、油圧ピストン43と、油圧回路44と、油圧切替弁45とを備えている。
油圧ポンプ41は、圧力媒体としての作動油を圧送する。油圧シリンダー42内に嵌装されている油圧ピストン43は、油圧ポンプ41により圧送された作動油に応じて可動ブロック32に圧力を掛ける。油圧回路44は、油圧ポンプ41と油圧ピストン43との間で作動油が周回する循環管路である。油圧切替弁45は、油圧ポンプ41と油圧シリンダー42、油圧ピストン43との間に介在して、作動油の流動を遮断したり、開放としたりする。
【0033】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る樹脂封止装置10の動作および使用状態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、まず、下型30の凹部31に電子部品Dを配置する。次に、図示しない昇降手段により下型30を上昇させて、図2のように下型30を上型20に重ねて型締めする。なお、昇降手段を上型20側に装備して、上型20を下降させて、上型20を下型30に重ねて型締めしても構わない。
上型20と下型30が型締めすることで、リードフレームLがクランプされる。この時の型締力は、封止用樹脂の注入圧力に負けて上型20と下型30が開かないよう強い力で型締めする。
【0034】
次に、図3に示すように、油圧ポンプ41を作動させて、作動油を、開放状態の油圧切替弁45を介して油圧シリンダー42へ圧送する。油圧シリンダー42に嵌装された油圧ピストン43は、圧送された作動油に応じて可動ブロック32を上昇させる。可動ブロック32の上昇により、可動ブロック32が、放熱板H2に当接する。その状態で、可動ブロック32が、更に上昇すると、リードフレームLが少し撓み、放熱板H1が上型20に押し付けられた状態となる。このようにして、上型20と可動ブロック32とにより、電子部品Dは、半導体素子Sを破損させず、更に、放熱板H1と凹部21の表面との間、放熱板H2と凹部31の表面との間に、注入される封止用樹脂が回りこまない程度の力で挟持され、クランプされる。
【0035】
次に、図4に示すように、プランジャ35が上昇して封止用樹脂をカル部23まで注入した位置で、油圧切替弁45が開放から遮断へと切り替えられる。この切り替えにより、油圧回路44が遮断されて、油圧ピストン43の下端と油圧シリンダー42下端の間の作動油と、油圧切替弁45から油圧シリンダー42までの油圧回路44が密封状態になる。油圧切替弁45を切り替えた後は、油圧ポンプ41を停止させる。
【0036】
図5に示すように、油圧回路44が密封された状態になると、プランジャ35が更に上昇して、カル部23の封止用樹脂が樹脂通路22を経由して、図6に示すように、キャビティCに注入される。
【0037】
プランジャ35による封止用樹脂Rの押し出しで、高い注入圧力がキャビティC内および電子部品Dに掛かる。特に、図7に示すように半導体素子Sと、半導体素子Sの上下に配置された放熱板H1,H2と、リードフレームLとのそれぞれの間にも封止用樹脂Rが注入されるため、注入圧力により放熱板H1,H2に対して上下方向の圧力が掛かり半導体素子Sを破損させてしまうような力が発生する。
【0038】
例えば、封止用樹脂Rが注入され、その高い注入圧力により可動ブロック32が押し下げられることをセンサ等(図示せず)により感知させ、油圧ポンプ41(例えば、図6参照)を作動させて油圧ピストン43による可動ブロック32への圧力を増加させることが考えられる。
しかし、可動ブロック32の変位を検知し、油圧ポンプ41の圧力設定を変更して、油圧ピストン43による可動ブロック32への圧力を注入圧力の変化に即応させることは、タイムラグが発生し、困難である。従って、可動ブロック32が押し戻され放熱板H1,H2の露出部分に樹脂が回りこみ樹脂バリとなるおそれがある。また、このタイムラグの間に、高い注入圧力が電子部品Dに掛かり、放熱板H1,H2の剥がれや半導体素子Sの破損を招くおそれがある。
【0039】
本実施の形態1に係る樹脂封止装置10は、放熱板H1,H2の部分を上型20の凹部21の上面と共に、クランプしている可動ブロック32に高い注入圧力が掛かっても、可動ブロック32を支持する油圧ピストン43への作動油が、油圧切替弁45により密封された状態である。そのため、圧力の変化にも変動しないので、油圧ピストン43は押し戻されない。従って、上型20の凹部21の上面と可動ブロック32とにより、電子部品Dを壊さない程度の力でクランプしている状態であっても、油圧ピストン43は、可動ブロック32を支持した状態を維持することができる。
【0040】
図8に示すように、キャビティCへの封止用樹脂の注入が終わると、下型30を上型20から離間させ、型開きする。また、次の樹脂封止に備えて、油圧切替弁45を開放状態に戻す。そして、樹脂封止された電子部品Dを取り出して封止工程は終了となる。
【0041】
以上のように本実施の形態1に係る樹脂封止装置10によれば、上型20の凹部21の上面と可動ブロック32とにより、電子部品Dを壊さない程度の力でクランプしている状態で、キャビティ内に、封止用樹脂による高い注入圧力が掛かっても、油圧切替弁45が作動油を流動させないため、油圧ピストン43の下降を防止することができる。従って、油圧ピストン43は、可動ブロック32を支持した状態を維持することができるので、樹脂封止装置10は、電子部品Dを破損させることなく、電子部品Dを封止することができる。
【0042】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る樹脂封止装置を図面に基づいて説明する。なお、図9から図14においては、図1から図8と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図9に示す樹脂封止装置10xは、可動ブロック32の変位を防止する規制部材として機能するロック装置50を備えている。なお、ロック装置50は、油圧装置40と同様に、図面上の左側の一方にしか図示されていないが、右側の他方にも設けられており、便宜上省略されている。
【0043】
ロック装置50は、可動ブロック32の下面端に突き出るテーパブロック51と、テーパブロック51を突き出したり、戻したりするテーパブロック駆動装置52とを備えている。テーパブロック51は、突き出し量に応じて可動ブロック32の押し上げ位置が変わっても、可動ブロック32の下端面に当接できるように、先端部に傾斜面51sが形成されている。
【0044】
このロック装置50は、図10に示すように、プランジャ35を上昇させ、封止用樹脂をカル部23まで注入した位置で、油圧切替弁45が開放から遮断へ切り替えられたときに、図11に示すように作動する。具体的には、テーパブロック駆動装置52がテーパブロック51を、テーパブロック51の傾斜面51sが可動ブロック32の下端面に当接するまで突き出す。
【0045】
図12に示すように、プランジャ35が上昇して、カル部23の封止用樹脂が樹脂通路22を経由してキャビティCに注入され、封止用樹脂による注入圧力が、可動ブロック32に掛かっても、テーパブロック51が可動ブロック32の下端面を下支えしているため、油圧ピストン43に対する油圧での制御だけでなく、可動ブロック32の下降を機械的に防止することができる。
【0046】
例えば、放熱板Hや半導体素子Sの厚みには、ばらつきがあるため、可動ブロック32の高さ位置にばらつきが生じる。しかし、テーパブロック51には、傾斜面51sが形成されているため、突き出し量に応じて可動ブロック32の押し上げ位置が変わる。従って、テーパブロック駆動装置52がテーパブロック51の突き出し量を調整することで、可動ブロック32の高さ位置のばらつきにも、テーパブロック51を対応させることができる。このときの突き出し量は、例えば圧力センサ等で検知される。
【0047】
図13に示すように、キャビティCへの封止用樹脂の注入が終わると、プランジャ35が下降すると共に、テーパブロック51がテーパブロック駆動装置52により引き込まれる。
そして、図14に示すように、下型30を上型20から離間させ、型開きする。そして、樹脂封止された電子部品Dを取り出して封止工程は終了となる。
【0048】
なお、本実施の形態1,2では、放熱板Hが半導体素子Sに設けられた電子部品Dを例に説明したが、例えば、半導体素子の上面に採光のための窓部が形成された光半導体素子であっても、窓部を封止用樹脂から露出させる必要があるため、この樹脂封止装置10,10xが有効である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、封止用樹脂により半導体素子を封止する樹脂封止装置に好適であり、特に、封止用樹脂から電子部品の一部を露出させる封止を行う樹脂封止装置には最適である。
【符号の説明】
【0050】
10,10x 樹脂封止装置
20 上型
21 凹部
22 樹脂通路
23 カル部
30 下型
31 凹部
32 可動ブロック
33 通孔
34 ポット
35 プランジャ
40 油圧装置
41 油圧ポンプ
42 油圧シリンダー
43 油圧ピストン
44 油圧回路
45 油圧切替弁
50 ロック装置
51 テーパブロック
51s 傾斜面
52 テーパブロック駆動装置
C キャビティ
D 電子部品
L リードフレーム
S 半導体素子
H 放熱板
R 封止用樹脂
図15A
図15B
図15C
図16
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図17