特許第5958528号(P5958528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5958528移動体位置測定システム、中央処理部及びそれらに用いる質問制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958528
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】移動体位置測定システム、中央処理部及びそれらに用いる質問制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/91 20060101AFI20160719BHJP
   G01S 13/76 20060101ALI20160719BHJP
   G01S 5/06 20060101ALI20160719BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G01S13/91 200
   G01S13/76
   G01S5/06
   G08G5/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-500066(P2014-500066)
(86)(22)【出願日】2013年1月18日
(86)【国際出願番号】JP2013000227
(87)【国際公開番号】WO2013121694
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2014年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-30051(P2012-30051)
(32)【優先日】2012年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】北島 正明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】近藤 天平
【審査官】 神谷 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−005255(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0063653(US,A1)
【文献】 特開2011−209211(JP,A)
【文献】 特開昭61−256272(JP,A)
【文献】 特開2010−211517(JP,A)
【文献】 特開2009−300146(JP,A)
【文献】 特開2010−230448(JP,A)
【文献】 橋田芳男(HASHIDA Yoshio)(外2名),航空管制用二次監視レーダ SSRモードS (Secondary Surveillance Radar for Air Traffic Control - S,東芝レビュー,日本,株式会社東芝,2004年 2月,Vol.59, No.2,pp.58-61,参考URL<http://www.toshiba.co.jp/tech/review/2004/02/index_j.htm>
【文献】 吉田孝,改訂 レーダ技術,日本,社団法人 電子情報通信学会,1996年10月 1日,初版,pp.227-233,ISBN 4-88552-139-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14
G01S 13/74
G01S 13/91
G01S 19/00−19/55
G08G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に質問信号を送信する少なくとも1以上の送受信局を含み、
前記送受信局は、前記質問信号の送信覆域を、全ての移動体に対して共通の質問を行う方式のSSR(Secondary Surveillance Radar)モードA/Cの質問及び応答の覆域範囲に制限するとともに、個別に質問及び応答を可能とする方式のSSRモードS個別質問を行い、
前記移動体の位置を測位する中央処理部は、管制上において前記移動体の測位データに基づいて優先順位を決定し、前記優先順位の高い移動体から優先的に前記SSRモードS個別質問を行うよう前記送受信局を制御する手段を有することを特徴とする移動体位置測定システム。
【請求項2】
前記送受信局は、監視対象となっている移動体に対して、ACAS(Airborne Collision Avoidance System)で実施されているウイスパーシャウト送信方式を利用したSSRモードA/C質問と応答とを処理する手段を含むことを特徴とする請求項1記載の移動体位置測定システム。
【請求項3】
前記中央処理部は、前記質問信号の送信に適した送受信局を選択する手段と、その選択した送受信局に質問制御信号を送出する手段とを含み、
前記中央処理部は、前記送受信局が前記質問制御信号に基づいて監視領域内の移動体に前記質問信号を送信することで、全ての送受信局が同時に前記質問信号を送信するのを抑止することを特徴とする請求項1または請求項2記載の移動体位置測定システム。
【請求項4】
前記送受信局は、前記中央処理部からの前記質問制御信号で指定される送受信局の順番で、指定された送信時刻に前記SSRモードA/Cの質問信号を送信することを特徴とする請求項3記載の移動体位置測定システム。
【請求項5】
前記送受信局は、前記中央処理部からの前記質問制御信号に基づく制御により、前記移動体に対して最適な位置関係にある送受信局から前記SSRモードA/Cの質問信号を送信することを特徴とする請求項3または請求項4記載の移動体位置測定システム。
【請求項6】
少なくともMLAT(Multilateration:マルチラテレーション)システム及び広域で用いられるWAM[Wide Area MLAT(Multilateration)]システムのいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか記載の移動体位置測定システム。
【請求項7】
移動体位置測定システムに、移動体に質問信号を送信する少なくとも1以上の送受信局を配置し、
前記送受信局において、前記質問信号の送信覆域を、全ての移動体に対して共通の質問を行う方式のSSR(Secondary Surveillance Radar)モードA/Cの質問及び応答の覆域範囲に制限するとともに、個別に質問及び応答を可能とする方式のSSRモードS個別質問を行わせ、
管制上において前記移動体の測位データに基づいて優先順位を決定し、前記優先順位の高い移動体から優先的に前記SSRモードS個別質問を行うよう前記送受信局を制御する手段を有することを特徴とする中央処理部。
【請求項8】
移動体位置測定システムに、移動体に質問信号を送信する少なくとも1以上の送受信局を配置し、
前記送受信局において、前記質問信号の送信覆域を、全ての移動体に対して共通の質問を行う方式のSSR(Secondary Surveillance Radar)モードA/Cの質問及び応答の覆域範囲に制限するとともに、個別に質問及び応答を可能とする方式のSSRモードS個別質問を行わせ、
前記移動体の位置を測位する中央処理部が、管制上において前記移動体の測位データに基づいて優先順位を決定し、前記優先順位の高い移動体から優先的に前記SSRモードS個別質問を行うよう前記送受信局を制御する処理を実行することを特徴とする質問制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体位置測定システム、中央処理部及びそれらに用いる質問制御方法に関し、特に航空機測定システム(マルチラテレーションシステム)及び当該システムに用いられる送信局の送信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチラテレーションシステムは、航空機が送信するSSR(SSR:Secondary Surveillance Radar:二次監視レーダ)モードA/C応答、SSRモードS応答、捕捉または拡張スキッタ信号を地上の4局以上の受信局で受信し、それらのデータを通信回線を通じて中央処理部に集め、中央処理部にて各受信局の受信時刻から航空機の幾何学的位置を計測するシステムである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、SSRモードAは航空機の識別情報を取得するモードであり、SSRモードCは気圧高度情報を取得するモードであり、SSRモードSは航空機の固有アドレス情報を取得して個別に質問するためのモードある。また、SSRモードA/Cは全ての航空機に対して共通の質問を行う方式であり、SSRモードSは全てあるいは特定の航空機に対して個別に質問、応答を可能としている方式である。
【0004】
マルチラテレーションシステムには、送信局を具備する場合もある。この送信局では、SSR装置が行うSSRモードA/C質問及びSSRモードS個別質問と同じ質問を送信することができる。これにより、SSRモードA/C応答のみの航空機の探知を可能とすると同時に、送信時刻をシステム自身が認識することができるため、送信から受信までの往復の時間を検出することができ、能動的マルチラテレーションとして位置測位の精度向上に利用することができる。
【0005】
完全受動型マルチラテレーションシステムでは、空中線として無指向性もしくは広指向性の空中線を使用するため、多数のSSRモードA/C応答を受信してしまい、SSRモードA/C応答が重畳(ガーブル・フルーツ状態)となり、応答信号の解読ができないという問題等が多数発生する。
【0006】
また同時に、SSRモードA/C応答を検出するためには、別々に、航空機に対して複数回質問されるモードA質問及びモードC質問に対応する複数回の応答信号を一つにまとめるための相関処理を行うために、既設SSRの送信タイミングと同期をとる必要がある。
【0007】
しかしながら、既設SSRと遠隔地に置かれた送受信局とを連接することは、連接するための高額な経費が必要となり、現実的には困難であり、簡易に連接することができない。
【0008】
マルチラテレーションシステムが、目標(航空機)に対してモードS個別質問(送信)を行うためには、初期探知により航空機モードSアドレス(固有アドレス情報)の取得が必要であり、初期探知した目標から順番にモードS個別質問を実施する。
【0009】
尚、既設SSR等への電波干渉等の影響を抑えるために、ICAO(International Civil Aviation Organization:国際民間航空機関)が発行している国際民間航空条約・第10附属書(ICAO ANNEX 10 Vol4amendment85 6.6.3)において、トランスポンダ占有率を2%以下に抑える規定がある。
【0010】
これは、マルチラテレーションシステムの監視空域に多数の航空機が存在した場合において、トランスポンダ占有率を2%以下に抑えるために、監視空域に存在する全ての航空機に対して、必要な情報を得るためのSSRモードS個別質問を実施できない、もしくは必要な情報を取得するのに充分な質問をできない可能性がある。このため、航空管制運用において、マルチラテレーションシステムの信頼性と安全性の低下を招く可能性がある。
【0011】
上記のマルチラテレーションを用いた技術としては、空港面探知レーダによる空港面監視を、マルチラテレーションの情報を統合することで補完する技術(例えば、特許文献2参照)、受信局で受信される信号のみでモードA応答か、モードC応答かを判別する技術(例えば、特許文献3参照)、GPS(Global Positioning System)衛星から到来する信号に基づいて複数の受信局同士の高精度の時刻同期を行う技術(例えば、特許文献4参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−300146号公報
【特許文献2】特開2007−333427号公報
【特許文献3】特開2011−112465号公報
【特許文献4】特開2010−230448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した本発明に関連する航空機位置測定システムでは、無指向性もしくは広指向性の空中線を使用するマルチラテレーションシステムの場合、監視空域に存在する航空機に対するSSRモードA/C質問に対して多くのSSRモードA/C応答信号を受信するため、重畳(ガーブル・フルーツ状態)が発生し、SSRモードA/C応答信号を送受信局または受信局で解読できないという問題がある。
【0014】
また、本発明に関連する航空機位置測定システムでは、マルチラテレーションシステムの場合、監視対象となる航空機としてはSSRモードS機、SSRモードA/C機の両方であり、ICAO(International Civil Aviation Organization:国際民間航空機関)が発行している国際民間航空条約・第10附属書(ICAO ANNEX 10 Vol4amendment85 6.6.3)において、トランスポンダ占有率を2%以下に抑える規定がある。
【0015】
上記のように、マルチラテレーションシステムにおいて送信局を具備する場合、受信した順番から単純に一定時間内(例えば、1秒間隔)に送信を行う送信手順が用いられる。この送信手順では、SSRモードS質問及びSSRモードA/C質問において、前述のICAOのトランスポンダ占有率2%以下という規定を満足させることができない場合が発生する可能性がある。
【0016】
また、トランスポンダ占有率2%以下を満足させるために単純に送信を制限してしまうと、航空管制上において、マルチラテレーションシステムの信頼性及び安全性を低下させる可能性がある。尚、上記の特許文献1〜4に記載の技術では、マルチラテレーションシステムにおいて送信局を具備する場合に関する技術ではないため、これらの課題を解決することはできない。
【0017】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、効率的にSSRモードS応答及びSSRモードA/C応答を確実に探知することができ、マルチラテレーションシステムの信頼性及び安全性を向上させることができる移動体位置測定システム、中央処理部及びそれらに用いる質問制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明による移動体位置測定システムは、監視領域に存在する移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央処理部とから構成され、前記中央処理部にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムであって、
前記移動体に質問信号を送信する少なくとも1以上の送受信局を含み、
前記送受信局は、前記質問信号の送信覆域を、全ての移動体に対して共通の質問を行う方式のSSR(Secondary Surveillance Radar)モードA/Cの質問及び応答の覆域範囲に制限するとともに、個別に質問及び応答を可能とする方式のSSRモードS個別質問を行い、
前記中央処理部は、管制上において重要度の高い移動体から優先的に前記SSRモードS個別質問を行うよう前記送受信局を制御する手段を備えている。
【0019】
本発明による中央処理部は、監視領域に存在する移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央処理部とから構成され、前記中央処理部にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムに用いる中央処理部であって、
前記移動体位置測定システムに、前記移動体に質問信号を送信する少なくとも1以上の送受信局を配置し、
前記送受信局において、前記質問信号の送信覆域を、全ての移動体に対して共通の質問を行う方式のSSR(Secondary Surveillance Radar)モードA/Cの質問及び応答の覆域範囲に制限するとともに、個別に質問及び応答を可能とする方式のSSRモードS個別質問を行わせ、
管制上において重要度の高い移動体から優先的に前記SSRモードS個別質問を行うよう前記送受信局を制御する手段を備えている。
【0020】
本発明による質問制御方法は、監視領域に存在する移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央処理部とから構成され、前記中央処理部にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムに用いる質問制御方法であって、
前記移動体位置測定システムに、前記移動体に質問信号を送信する少なくとも1以上の送受信局を配置し、
前記送受信局において、前記質問信号の送信覆域を、全ての移動体に対して共通の質問を行う方式のSSR(Secondary Surveillance Radar)モードA/Cの質問及び応答の覆域範囲に制限するとともに、個別に質問及び応答を可能とする方式のSSRモードS個別質問を行わせ、
前記中央処理部が、管制上において重要度の高い移動体から優先的に前記SSRモードS個別質問を行うよう前記送受信局を制御する処理を実行している。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記のような構成及び動作とすることで、効率的にSSRモードS応答及びSSRモードA/C応答を確実に探知することができるため、マルチラテレーションシステムの信頼性及び安全性を向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による航空機位置測定システムの構成例を示すブロック図である。
図2図1の送受信局の構成例を示すブロック図である。
図3図1の中央処理部の構成例を示すブロック図である。
図4A】本発明の実施の形態におけるウイスパーシャウト送信順番の一例を示す図である。
図4B】本発明の実施の形態における送信覆域(WS覆域)のリング状の幅の一例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における送信パターンを示す図である。
図6】本発明の実施の形態における送受信局の配置例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態における2台の送受信局を配置した場合を示す図である。
図8】本発明の実施の形態における質問を実行する送受信局の選択方式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、本発明による移動体位置測定システムの概要について説明する。本発明による移動体位置測定システムは、航空機位置測定システム[MLAT(Multilateration):マルチラテレーションシステム]に関するものである。航空機位置測定システムでは、航空機や空港内の車両等の移動体の位置を測定することができるが、以下の説明では、移動体を航空機として説明する。
【0024】
本発明は、航空機位置測定システム(マルチラテレーションシステム)、当該システムに用いられる送受信局の質問制御方式及び質問制御プログラムに係り、特にSSR(Secondary Surveillance Radar:二次監視レーダ)装置から質問された航空機からの応答信号、またはマルチラテレーションシステムから質問された航空機からの応答信号、もしくはSSR捕捉または拡張スキッタ信号を4局以上の受信局または送受信局で受信処理を行い、この受信信号を中央処理部で当該航空機の位置測定を行うマルチラテレーションシステムに関する。
【0025】
本発明は、上記のマルチラテレーションシステムにおいて、監視空域に存在する航空機に対するSSRモードA/C機を確実に検出するためのSSRモードA/C機検出方式、送信制御方式及びプログラムを提供するものである。尚、SSRモードA/C、SSRモードSについては、上述した本発明に関連する航空機位置測定システムについての説明と同様である。
【0026】
本発明は、上記の既設SSR装置と遠隔地に置かれた送受信局とを連接することができないという問題を解決するために、ウイスパーシャウト送信方式を利用したSSRモードA/C質問方式を用いることで、簡易にSSRモードA/C機を探知可能とすることができる。
【0027】
つまり、本発明は、上記の問題を解決するために、監視対象となっている航空機に対して、ウイスパーシャウト送信方式を利用したSSRモードA/C質問と応答とを処理する機能を具備すると同時に、航空管制上において重要度の高い航空機から優先的にSSRモードS個別質問を行う質問制御方式とを提供することにより、航空機の探知を確実に行うことが可能となるため、マルチラテレーションシステムの信頼性と安全性との向上を図ることができる。
【0028】
図1は本発明による航空機位置測定システムの構成例を示すブロック図である。図1において、本発明による航空機位置測定システムは、送受信局1−1〜1−5と、中央処理部2とから構成され、送受信局1−1〜1−5と中央処理部2とは、通信回線4−1〜4−5にて接続されている。
【0029】
本発明は、送受信局1−1〜1−5において、質問覆域を本発明の送信制御方式により、SSRモードA/C質問、応答の覆域範囲に制限し、SSRモードA/C応答の重畳(ガーブル・フルーツ状態)の発生を低減して、確実にSSRモードA/C応答を検出解読する方式を提供する。また、本発明は、図5に示す一例のような送信パターンでSSRモードS個別質問をも合わせて行う。
【0030】
中央処理部2は、送信制御信号を通信回線4−1〜4−5経由で送受信局1−1〜1−5に送り、監視覆域内で全ての送受信局1−1〜1−5が同時に質問するのではなく、質問に適した送受信局を選択する手段を提供する。
【0031】
また、SSRモードA/C質問は、既存の航空機衝突防止システム(ACAS:Airborne Collision Avoidance System)で実施されているウイスパーシャウト(whisper−shout)送信方式によるSSRモードA/C機に対する質問手段を提供する。
【0032】
送受信局1−1〜1−5は、中央処理部2による送信制御で指定される送受信局の順番で、指定された送信時刻にSSRモードA/C質問7−1〜7−5を行うことにより、確実にSSRモードA/C機を探知する手段を提供する。
【0033】
また、SSRモードA/C機についても、上述したICAOのトランスポンダ占有率2%以下の規定を満足させるように送信制御を行う手段を提供する。
【0034】
これにより、本発明は、マルチラテレーションシステム主導で効率的にSSRモードS応答及びSSRモードA/C応答を確実に探知することができるため、マルチラテレーションシステムの信頼性及び安全性を向上させることができる。
【0035】
次に、本発明の実施の形態について、図1を参照して説明する。本発明の実施の形態によるマルチラテレーションシステムは、図1に示すように、複数の送受信局1−1〜1−5と、中央処理部2と、通信回線4−1〜4−5とからなる。尚、送受信局1−1〜1−5は、全てを送受信局にする必要はなく、送信局と受信局との組み合わせ、送受信局と送信局と受信局との組み合わせ等も考えられる。
【0036】
送受信局1−1〜1−5は、GPS(Global Positioning System)衛星6からの時刻同期を用いた同期を行う。また、送受信局1−1〜1−5は、航空機5からのSSRモードA/C応答、モードS応答、捕捉または拡張スキッタ信号7−1〜7−5を無指向性もしくは広指向性の空中線にて受信し、信号解読した後に受信信号の到着した時刻のタイムスタンプを付与して、通信回線4−1〜4−5を用いて中央処理部2に応答データとして送信する。
【0037】
送受信局1−1〜1−5のうちの選択制御されたいずれかの1局は、通信回線4−1〜4−5を経由した中央処理部2からの送信制御信号による送信制御指示でウイスパーシャウト送信方式にてSSRモードA/C質問3−1〜3−5を行い、送受信局1−1〜1−5各々は、このSSRモードA/C質問3−1〜3−5に対するSSRモードA/C応答信号7−1〜7−5の受信処理を行う。
【0038】
図2図1の送受信局1−1〜1−5の構成例を示すブロック図であり、図3図1の中央処理部2の構成例を示すブロック図である。図2においては、送受信局1−1〜1−5を送受信局1として表記しており、送受信局1−1〜1−5各々は送受信局1と同様の構成となっている。
【0039】
図2において、送受信局1は、GPS空中線8と、GPS受信機9と、空中線10と、受信部11と、送信部20と、信号処理部21とを具備している。送信部20は、サーキュレータ12と、合成器13と、可変減衰器14−1〜14−2と、RFパルス切替スイッチ15と、送信制御器16と、変調パルス発生器17と、電力増幅器18と、発振器19とを備えている。
【0040】
図3において、中央処理部2は、送受信情報収集部22と、目標位置測位部23と、目標情報解析部24と、目標情報生成部25と、送信制御情報生成部26と、目標追尾部27と、目標優先順位判定部28とを具備している。
【0041】
送受信局1−1〜1−5は、GPS衛星6からの時刻同期信号を受信するGPS空中線8とGPS受信機9とを有し、離れて設置された各送受信局1−1〜1−5間の時刻同期を行う。
【0042】
また、無指向性もしくは広指向性の空中線10は、航空機5からのSSRモードA/C応答、SSRモードS応答、捕捉または拡張スキッタ信号7−1〜7−5の受信及びSSRモードA/C質問3−1〜3−5を行う。
【0043】
受信部11は、SSRモードA/C応答、SSRモードS応答、捕捉または拡張スキッタ信号7−1〜7−5の受信処理を行い、受信ビデオ信号に変換し、信号処理部21に送る。次に、信号処理部21にて信号解読した後、解読データとともに、受信信号が到着した時刻のタイムスタンプを付与し、通信回線4−1〜4−5を用い、中央処理部2に応答データとして送出する。
【0044】
中央処理部2は、上記の応答データを通信部22で受信処理し、その受信した応答データを基に目標位置測位部23にて目標測位を行った後、測位データを基に目標情報解析部24にて応答データ内の情報解析を行う。目標情報生成部25は、目標情報解析部24からの解析データを入力し、外部出力用に目標位置測定情報を編集して外部(例えば、航空管制システム等)に出力する。
【0045】
目標優先順位測定部28は、目標情報解析部24からの解析データを入力し、予め設定されたパラメータに基づいてSSRモードA/C質問を行うべき送受信局を決定するために目標優先順位を決定する。
【0046】
目標追尾部27は、目標位置測位部23からの測位データ及び目標優先順位判定部28からの順位データに基づいて追尾処理を行う。質問制御情報生成部26は、目標位置測位部23からの測位データ、目標追尾部27からの測位予想値、目標優先順位判定部28からの順位データを基にSSRモードA/C質問の送受信局の順番を決定するとともに、送信タイミングのスケジューリングを行い、送信時刻の決定を行う。また、質問制御情報生成部26は、上記の処理と並行して、SSRモードS個別質問の送信タイミングのスケジューリングを行う。尚、質問制御情報生成部26における上記の決定やスケジューリングは、目標追尾部27にて行うことも可能である。
【0047】
質問制御情報生成部26は、上記の決定やスケジューリングの結果から質問制御情報の生成、編集を行い、通信部22、通信回線4−1〜4−5を経由して送受信局1−1〜1−5に、送信タイミングをスケジューリングした質問制御情報を送出する。
【0048】
送受信局1−1〜1−5の信号処理部21及び送信部20は、中央処理部2からの質問制御情報に基づき、送信タイミングのスケジューリング通りにウイスパーシャウト送信方式にてSSRモードA/C質問を行う。また、送受信局1−1〜1−5の信号処理部21及び送信部20は、上記の処理と併せて、SSRモードS個別質問も行う。次に、送受信局1−1〜1−5は、この質問に対する応答信号の受信処理を行い、上記の処理を繰り返し行う。
【0049】
送信部20は、発振器19にて送信のための高周波励振信号を発生させ、電力増幅器18にてRF送信信号のパルス変調と電力増幅を行い、RFパルス切替スイッチ15にRF送信信号を送り出す。また、送信制御器16は、信号処理部21からの送信制御情報データに基づき、送信時刻にウイスパーシャウト送信によるSSRモードA/C質問に必要な各種信号を生成し、また、SSRモードS個別質問に必要な各種信号を生成した後、可変減衰器14−1〜14−2、RFパルス切替スイッチ15、及び変調パルス発生器17の制御を行う。
【0050】
送受信局1−1〜1−5は、GPS衛星6からの時刻同期信号を用いて同期を行う。GPS衛星6を用いた時刻同期に関しては、特許文献3(特開2010−230448号公報)に記載の技術があり、この技術を用いることで精度良く同期を取ることが可能である。
【0051】
また、送受信局1−1〜1−5は、航空機5からのSSRモードA/C応答、SSRモードS応答、捕捉または拡張スキッタ信号7−1〜7−5を無指向性もしくは広指向性の空中線10を経由して、その受信信号に対する受信処理、信号解読処理を行った後、受信信号の到着時刻のタイムスタンプを付与し、応答データとして通信回線4−1〜4−5を用いて中央処理部2に送出する。
【0052】
中央処理部2は、通信部22にて上述した応答データの受信処理を行い、目標位置測位部23にて上記の応答データに付与された到着時刻のタイムスタンプから各受信局の到着時刻差(TDOA:Time Difference Of Arrival)を算出し、航空機5の位置測位計算を行う。
【0053】
2つの空中線間のTDOAは、数学的には3次元の双曲面に対応し、航空機の位置はその面上にあることとなる。4台以上の空中線で航空機の信号を検出することができれば、双曲線の交点を計算することで、航空機の位置を3次元で求めることができる。
【0054】
目標位置測位部23にて位置測位した航空機5の測位データは、目標情報解析部24と質問制御情報生成部26と目標追尾部27とに送られる。
【0055】
目標情報解析部24は、測位データ内の情報解析を行い、各種目標情報(モードSアドレス、モードAコード、高度、航空機動態情報等)の解析を行う。
【0056】
目標情報生成部25は、目標情報解析部24からの解析データを入力し、外部出力用に目標位置測定情報を編集して外部(例えば、航空管制システム等)に出力するためのメッセージ生成機能と外部のシステムと連接するための通信プロトコル機能とを有する。
【0057】
目標優先順位測定部28は、目標情報解析部24からの解析データと目標追尾部27からの測位予想値とを入力し、予め設定された各種パラメータに基づいてSSRモードA/C質問を行うべき送受信局を決定するために目標優先順位と質問(送信)を行う送受信局とを決定する。
【0058】
目標追尾部27は、目標位置測位部23からの測位データと目標優先順位判定部28からの優先順位が決定された順位データとに基づいて追尾処理を行う。質問制御情報生成部26は、目標優先順位判定部28からの優先順位が決定された順位データを基にSSRモードA/C質問の送受信局の順番を決定するとともに、送信タイミングのスケジューリングを行い、送信時刻の決定を行う。また、質問制御情報生成部26は、上記の処理と並行して、SSRモードS個別質問の送信タイミングのスケジューリングを行う。
【0059】
また、国際民間航空条約・第10附属書(ICAO ANNEX 10 Vol4amendment85 6.6.3)に記載されているトランスポンダ占有率を2%以下に抑えるようにするために、質問制御情報生成部26は、送信タイミング(送信時刻)のスケジューリング計画を実施し、それぞれの航空機に対するSSRモードA/C質問、SSRモードS個別質問の送信時刻の決定を行い、それらを基に生成した質問制御情報を送出する。
【0060】
図5に送信パターンの一例を示すが、SSRモードA/C質問は、最大探知覆域距離で決定される一定周期の繰り返し周波数で質問を行い、一定周期のSSRモードA/C質問間隔の間にSSRモードS個別質問の送信タイミングのスケジューリングを行う。
【0061】
質問制御情報生成部26は、生成した質問制御情報を通信部22と通信回線4−1〜4−5とを経由して送受信局1−1〜1−5に、送信タイミングがスケジューリングされた質問制御情報を順次送出する。
【0062】
送受信局1−1〜1−5は、送受信情報収集部22と通信回線4−1〜4−5とを経由して、送信制御情報生成部26からの質問制御情報を受信すると、その質問制御情報に基づき、送信タイミングのスケジューリング通りにウイスパーシャウト送信方式にてSSRモードA/C質問とSSRモードS個別質問とを行う。次に、送受信局1−1〜1−5は、この質問に対する応答信号の受信処理を受信部11と信号処理部21とで行い、上記の処理を繰り返し行う。
【0063】
ウイスパーシャウト送信方式は、図4Aに示す送信波形の4つのパルス(S,P1,P3,P4)を送信するが、SパルスとP1,P3,P4パルス(P1,P3,P4は、送信電力が同じ電力レベルで送信する:以下、Pパルスとする)との送信電力レベル比(WS覆域)を制御することで、図4Bの送信覆域(WS覆域)のリング状の幅(航空機を探知できる範囲)を決定している。
【0064】
また、送信波形の送信1は、最短近距離覆域の送信波形を示しているが、近距離を探知するため、Sパルスは送信しない。送信波形の送信2、・・・・、送信N−1、送信Nは、SパルスとPパルスとに送信電力の差をつけて送信することで、ウイスパーシャウト送信方式を行う。
【0065】
送信波形の送信Nは、最大探知覆域の場合を示しているが、送信覆域のリング幅の面積が一番広いため、覆域内に航空機が複数存在する確率が高いため、中央処理部2からの質問制御情報データの制御により、SパルスとPパルスとの送信電力レベル比(WS覆域)を小さく設定する等、質問信号の送信を制御することで、SSRモードA/C応答の重畳状態を回避し、目標検出率の向上を図る制御も行われる。
【0066】
図4A及び図4Bはウイスパーシャウト送信順番の一例を示しているが、SSRモードA/C質問の基本動作は、近距離覆域の送信1から送信2、・・・・、送信N−1の順番に内側から最大覆域の送信Nの順番を切り返した質問を行う。また、SSRモードA/C質問は、送受信局1−1〜1−5の5局が同時に質問する必要がないため、中央処理部2からの送信制御情報データに基づく制御により、航空機に対して最適な位置関係にある送受信局からSSRモードA/C質問を行う。
【0067】
例えば、図6は、マルチラテレーションシステムの送受信局の配置の一例を示しているが、この配置例において、図7及び図8に示すような送受信局と航空機との間の距離が一番近い送受信局から質問を実行する送受信局の選択方式や、複数の航空機がWS覆域内に在空する場合等、SSRモードA/C応答の重畳(ガブール・フルーツ)状態を回避するために、航空機の位置がWS覆域円と鉛直方向の送受信局を選択する方式等が考えられる。
【0068】
送受信局が2局以上存在する場合において、図7に示すように、送信局の送信覆域が重複している覆域内に存在する航空機に対して質問を行う場合、送受信局A及びBの2局から質問をすると、国際民間航空条約・第10附属書(ANNEX 10)において、トランスポンダ占有率を2%以下に抑える規定を満足できないことが想定される。また、同一航空機に対して送信覆域が重なる2局から質問することは、マルチラテレーションシステムとしては不要である。
【0069】
このため、図8に示す「質問を実行する送受信局の選択方式」に記載したように、送受信局A及びBと覆域内の航空機との位置関係から質問する送受信局を選択する方式がある。
【0070】
この方式では、図8において、質問を実行する航空機T1〜T3について、航空機T1〜T3各々から送受信局Aまでの距離(y1〜y3)と、航空機T1〜T3各々から送受信局Bまでの距離(x1〜x3)とを比較し、x>yの場合に送受信局Aを選択し、x≦yの場合に送受信局Bを選択する方式である。
【0071】
図8において、航空機T1の場合はx1>y1なので送受信局Aを選択し、航空機T2の場合はx2<y2なので送受信局Bを選択し、航空機T3の場合はx3<y3なので送受信局Bを選択することとなる。
【0072】
送信部20は、発振器19にて送信のための励振信号を発生させ、電力増幅器18にて、変調パルス発生器17からの制御により、RF送信信号のパルス変調と電力増幅とを行い、RFパルス切替スイッチ15にRF送信パルス信号を送出する。
【0073】
RFパルス切替スイッチ15は、信号処理部21からの送信制御に基づいて送信制御器16の制御を行い、送信制御器16のパルス切り替えゲート信号によりSパルスとP1,P3,P4パルスとを分離して可変減衰器14−1にSパルスを送出し、可変減衰器14−2にP1,P3,P4パルスを送出する。可変減衰器14−1〜14−2は、ウイスパーシャウト送信方式のためにSパルスとPパルスとの送信電力レベルの制御を行う。
【0074】
次に、可変減衰器14−1〜14−2の減衰量を決定する制御は、送信制御器16から制御されて決定される。その後に、分離されたSパルスとPパルスとを合成器13にて図4Aに示す送信波形となるように合成し、RF送受信信号を切り替えるサーキュレータ12経由で空中線10に送信RFパルス信号が送られる。
【0075】
また、送信制御器16は、信号処理部21からの送信制御情報データにより、送信時刻にウイスパーシャウト送信に必要な各種信号を生成し、可変減衰器14−1〜14−2、RFパルス切替スイッチ15、及び変調パルス発生器17の制御を行う。
【0076】
SSRモードS個別質問の場合は、RFパルス切替スイッチ15が、可変減衰器14−1のみにRF送信信号を供給するように送信制御器16から制御される。また、可変減衰器14−1は、減衰量が0dBとなるように送信制御器16から制御される。その後に、SSRモードS個別質問のRF送信信号は、合成器13とサーキュレータ12とを経由して空中線10に送られる。
【0077】
マルチラテレーションシステムには、次のような問題点がある。
(1)無指向性もしくは広指向性の空中線を使うため、SSRモードA/C機を確実に探知する手法がない。
(2)既設SSR等への電波干渉等の影響を抑えるために、ICAOが発行している国際民間航空条約・第10附属書(ICAO ANNEX 10 Vol4amendment85 6.6.3)において、トランスポンダ占有率を2%以下に抑える規定がある。これは、マルチラテレーションシステムの監視空域に多数の航空機が存在した場合において、トランスポンダ占有率を2%以下に抑える必要があり、監視空域に存在する全ての航空機に対してSSRモードS個別質問を一定時間内に実施できない可能性がある。このため、航空管制運用において目標検出率が低下する可能性があり、マルチラテレーションシステムの信頼性と安全性との低下を招く可能性がある。
【0078】
本発明の手段を用いたマルチラテレーションシステムにおける効果は、次の6つが考えられる。
【0079】
(1)完全受動型マルチラテレーションシステムの場合、既設SSRの質問タイミングと同期をとる手段がないため、SSRモードA/C応答を確実に検出する方法がないが、上記の送信機能によりSSRモードA/C機能のみの航空機の検出が可能となる。
【0080】
(2)既設SSR応答を受信した場合(スキッタ機能を具備しない航空機の場合)は、受信データレートが既設SSRのデータレートと同じ1回(受信)/4秒(空港監視レーダの場合)または1回(受信)/10秒(航空路監視レーダの場合)となるため、当該送信機能により1回(受信)/1秒の受信信号を得ることが可能となり、データレートを向上させることができる。
【0081】
(3)電波伝搬の状況により検出率の悪い目標の検出率を向上させることができる。
【0082】
(4)航空機内部に登録されている航空機動態情報(選択高度、気圧補正高度、マック数、指示対気高度、真対地速度、ロール角、真トラック角等)を必要な時に、リアルタイムに取得することが可能となる。
【0083】
(5)既設SSRの覆域の下にある進入経路の低高度の航空機を探知することが可能となる。
【0084】
(6)送信することで、測距機能が可能となるため、完全受動型マルチラテレーションシステムの測位に比べて測位精度を向上させることが可能となる。
【0085】
特に、本発明は、前述の送信機能の目的を達成するために、監視対象となっている航空機に対して、ウイスパーシャウト送信方式を用いたSSRモードA/C質問方式を実施することにより、SSRモードA/C機能のみの航空機の探知が可能となる。また、航空管制上において重要度の高い航空機から優先的にSSRモードS個別質問を行う質問制御方式を提供することにより、マルチラテレーションシステムの信頼性と安全性とを向上させることができる。
【0086】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0087】
上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下の記載に限定されない。
【0088】
[付記1]
監視領域に存在する移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央処理部とから構成され、前記中央処理部にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムに用いる中央処理部であって、
前記移動体位置測定システムに、前記移動体に質問信号を送信する少なくとも1以上の送受信局を配置し、
前記送受信局において、前記質問信号の送信覆域を、全ての移動体に対して共通の質問を行う方式のSSR(Secondary Surveillance Radar)モードA/Cの質問及び応答の覆域範囲に制限するとともに、個別に質問及び応答を可能とする方式のSSRモードS個別質問を行わせ、
管制上において重要度の高い移動体から優先的に前記SSRモードS個別質問を行うよう前記送受信局を制御する手段を有し、
前記送受信局に、監視対象となっている移動体に対して、ACAS(Airborne Collision Avoidance System)で実施されているウイスパーシャウト送信方式を利用したSSRモードA/C質問と応答とを処理させることを特徴とする中央処理部。
【0089】
[付記2]
前記質問信号の送信に適した送受信局を選択する手段と、その選択した送受信局に質問制御信号を送出する手段とを含み、
前記送受信局が前記質問制御信号に基づいて前記監視領域内の移動体に前記質問信号を送信することで、全ての送受信局が同時に前記質問信号を送信するのを抑止することを特徴とする付記1に記載の中央処理部。
【0090】
[付記3]
前記送受信局に、前記質問制御信号で指定される送受信局の順番で、指定された送信時刻に前記SSRモードA/Cの質問信号を送信させることを特徴とする付記2に記載の中央処理部。
【0091】
[付記4]
前記送受信局において、前記質問制御信号に基づく制御により、前記移動体に対して最適な位置関係にある送信装置から前記SSRモードA/Cの質問信号を送信させることを特徴とする付記2または付記3に記載の中央処理部。
【0092】
[付記5]
前記移動体位置測定システムが、少なくともMLAT(Multilateration:マルチラテレーション)システム及び広域で用いられるWAM[Wide Area MLAT(Multilateration)]システムのいずれかであることを特徴とする付記1から付記4のいずれかに記載の中央処理部。
【0093】
[付記6]
監視領域に存在する移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央処理部とから構成され、前記中央処理部にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムに用いる送信制御方法であって、
前記移動体位置測定システムに、前記移動体に質問信号を送信する少なくとも1以上の送受信局を配置し、
前記送受信局において、前記質問信号の送信覆域を、全ての移動体に対して共通の質問を行う方式のSSR(Secondary Surveillance Radar)モードA/Cの質問及び応答の覆域範囲に制限するとともに、個別に質問及び応答を可能とする方式のSSRモードS個別質問を行わせ、
前記中央処理部が、管制上において重要度の高い移動体から優先的に前記SSRモードS個別質問を行うよう前記送受信局を制御する処理を実行し、
前記送受信局が、監視対象となっている移動体に対して、ACAS(Airborne Collision Avoidance System)で実施されているウイスパーシャウト送信方式を利用したSSRモードA/C質問と応答とを処理することを特徴とする質問制御方法。
【0094】
[付記7]
前記中央処理部が、前記質問信号の送信に適した送受信局を選択する処理と、その選択した送受信局に質問送信制御信号を送出する処理とを実行し、
前記中央処理部は、前記送受信局が前記質問制御信号に基づいて前記監視空域内の移動体に前記質問信号を送信することで、全ての送受信局が同時に前記質問信号を送信するのを抑止することを特徴とする付記6に記載の質問制御方法。
【0095】
[付記8]
前記送受信局において、前記中央処理部からの前記質問制御信号で指定される送受信局の順番で、指定された送信時刻に前記SSRモードA/Cの質問信号を送信させることを特徴とする付記7に記載の質問制御方法。
【0096】
[付記9]
前記送受信局において、前記中央処理部からの前記質問制御信号に基づく制御により、前記移動体に対して最適な位置関係にある送受信局から前記SSRモードA/Cの質問信号を送信させることを特徴とする付記7または付記8に記載の質問制御方法。
【0097】
[付記10]
前記移動体位置測定システムが、少なくともMLAT(Multilateration:マルチラテレーション)システム及び広域で用いられるWAM[Wide Area MLAT(Multilateration)]システムのいずれかであることを特徴とする付記6から付記9のいずれかに記載の質問制御方法。
【0098】
この出願は、2012年2月15日に出願された日本出願特願2012−030051を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、MLAT(Multilateration:マルチラテレーション)システムやWAM[Wide Area MLAT(Multilateration)]システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0100】
1−1〜1−5 送受信局
2 中央処理部
3−1〜3−5 SSRモードA/C質問
4−1〜4−5 通信回線
5 航空機
6 GPS衛星
7−1〜7−5 SSRモードA/C応答、SSRモードS応答、捕捉または拡張スキッタ信号
8 GPS空中線
9 GPS受信機
10 空中線
11 受信部
12 サーキュレータ
13 合成器
14−1〜14−2 可変減衰器
15 RFパルス切替スイッチ
16 送信制御器
17 変調パルス発生器
18 電力増幅器
19 発振器
22 通信部
23 目標位置測位部
24 目標情報解析部
25 目標情報生成部
26 送信制御情報生成部
27 目標追尾部
28 目標優先順位判定部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8