【文献】
Journal of Process Control,2011年,Vol.21, No.8,p.1193-1207
【文献】
Industrial & Engineering Chemistry Research,2007年,Vol.46,p.3709-3719
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
反応蒸留塔内に連続的にジメチルカーボネートとエタノールとを供給し、エステル交換触媒の存在下、前記反応蒸留塔内でエステル交換反応と蒸留を同時に行う反応蒸留法によってジエチルカーボネートを製造する方法において、
(a)エステル交換反応が、エステル交換触媒とジメチルカーボネート及びエタノールとを接触させる向流型の反応形式であり;
(b)反応蒸留塔が棚段式反応蒸留塔又は充填式反応蒸留塔であって、塔頂部、インターナルを有する反応蒸留部及び濃縮部を有し、前記反応蒸留部はその側面に触媒導入口及び前記触媒導入口より下方に位置する原料導入口を備え;
(c)前記エステル交換触媒が前記触媒導入口から供給され;
(d)ジメチルカーボネート及びエタノールが前記原料導入口から供給され;
(e)ジメチルカーボネート1モルに対する、前記エステル交換触媒の使用量が、1〜250ミリモルであり;
(f)前記反応蒸留部の空間体積に対する、前記触媒導入口と前記原料導入口との間の空間体積の比が、0.1〜0.9であり、
(g)前記反応蒸留塔の還流比が、0.5〜10であり;
(h)前記塔頂部及び前記反応蒸留部の温度が、60〜100℃である
ことを特徴とする、ジエチルカーボネートの製造方法。
前記エステル交換触媒が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩化合物、アルカリ金属メトキシド、及びアルカリ金属エトキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から7のいずれか一項に記載のジエチルカーボネートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明の一実施態様は、反応蒸留塔内にて、ジメチルカーボネートとエタノールとのエステル交換反応により、ジエチルカーボネートを連続的に生成する方法に関する。
【0028】
<本発明の製造方法>
本発明の製造方法は、エステル交換触媒の存在下、ジメチルカーボネートとエタノールを、
図1に例示される反応蒸留塔内にて反応させる方法である。より具体的には、製造原料であるジメチルカーボネート及びエタノールとエステル交換触媒とを反応蒸留塔内に連続的に供給し、該塔内でエステル交換反応と蒸留による分離操作を同時に行い、製造原料であるエタノール(沸点78.3℃、大気圧)、反応で生成するメタノール(沸点64.7℃、大気圧)等を含む沸点が80℃以下の低沸点化合物を塔頂部より選択的かつ連続的に蒸留分離し、塔底部より目的物であるジエチルカーボネートを選択的に分離して取得することを含む。
【0029】
本発明の反応は、ジメチルカーボネートとエタノールとのエステル交換反応によって行われる化学平衡型の反応である。従って、本発明の製造方法では、反応で生成するメタノールを低沸点化合物として塔頂より連続的に回収することで、反応平衡をジエチルカーボネートの生成方向へ偏らせることができ、その結果、より効率的に目的とするジエチルカーボネートを連続的に製造することができる。なお、製造原料のジメチルカーボネートはメタノールと共沸混合物を作ることが知られているため、本発明の製造方法では、この共沸混合物が低沸点成分として留去されることがないように、例えば、反応蒸留塔の構造、反応蒸留塔における反応条件等が設計される。
【0030】
(本発明の製造装置)
本発明のジエチルカーボネートの製造方法は、例えば、
図1に示すような、内部にインターナルとして、例えば、棚段(トレイ)又は充填物を有する反応蒸留塔を有する連続的生産が可能な製造装置を使用して行なわれる。
【0031】
例えば、
図1に示すような、本発明の一実施態様による反応蒸留塔:10は、還流部:RR、反応蒸留部:RD及び濃縮部:RCを有し、反応蒸留部:RDはインターナルを有する。反応蒸留塔:10の塔頂部には塔頂留分回収口:12、塔底部には塔底留分回収口:18がそれぞれ設けられ、反応蒸留部:RDの側面に触媒導入口:14および触媒導入口:14より下方に位置する原料導入口:16が設けられている。第2の原料導入口(不図示)が触媒導入口の下方にさらに設けられていてもよい。
図1ではインターナルとしてN=1〜n段目の棚段が示されているが、充填物でインターナルを構成してもよく、或いは棚段と充填物の組み合わせでインターナルを構成してもよい。充填物によって構成されるインターナルの部分に関するNは理論段数を意味する。
図1のX、Y及びZは塔頂部、塔底上部及び塔底下部をそれぞれ示し、D1及びD2は反応蒸留部及び濃縮部の内径をそれぞれ示し、L1及びL2は反応蒸留部及び濃縮部の長さをそれぞれ示し、L3は棚段の間隔を示す。
【0032】
(蒸留塔内のインターナル)
本発明の反応蒸留塔は、インターナルとしてトレイ(棚段)及び/又は充填物を有する蒸留塔であることが好ましい。本発明でいうインターナルとは、蒸留塔において実際に気液の接触を行わせる部分のことを意味する。このようなトレイとしては、例えば泡鍾トレイ、多孔板トレイ、リップルトレイ、バラストトレイ、バルブトレイ、向流トレイ、ユニフラックストレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラックトレイ、デュアルフロートレイ、グリッドプレートトレイ、ターボグリッドプレートトレイ、キッテルトレイ、オールダーショウ型多孔板等が好ましく、充填物としては、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック等の不規則充填物やメラパック、ジェムパック、テクノパック、フレキシパック、スルザーパッキング、グッドロールパッキング、グリッチグリッド等の規則充填物が好ましい。また、本発明では、トレイ部と充填物の充填された部分とを合わせ持つ反応蒸留塔も用いることができる。なお、本発明で用いる用語「インターナルの段数:n」とは、トレイの場合は、トレイの数を意味し、充填物の場合は、理論段数を意味する。したがって、トレイ部と充填物の充填された部分とを合わせ持つ反応蒸留塔の場合、nはトレイの数と理論段数の合計である。
【0033】
本発明においては、
図1に示すように、反応蒸留塔の反応蒸留部のインターナルがトレイであって、具体的には、該トレイが多孔板部とダウンカマー部を有する多孔板トレイが機能と設備費との関係で優れているためより好ましい。
【0034】
前記多孔板トレイは、好ましくは該多孔板部の面積1m
2あたりの孔数が150〜1200個である多孔板トレイであり、より好ましくは該面積1m
2あたりの孔数が200〜1100個である多孔板トレイであり、特により好ましくは該面積1m
2あたりの孔数が250〜1000個である多孔板トレイである。また、該多孔板トレイの孔1個あたりの断面積は、好ましくは0.5〜5cm
2/孔であり、より好ましくは0.7〜4cm
2/孔であり、特に好ましくは0.9〜3cm
2/孔である。
【0035】
本発明で用いられる反応蒸留塔及び使用するトレイを構成する材料は、主に炭素鋼、ステンレススチールなどの金属材料であるが、目的物であるジエチルカーボネートの品質の安定性の面からは、ステンレススチールを使用することが好ましい。
【0036】
本発明の反応蒸留塔は、大量の反応混合物から所定の分離効率でジエチルカーボネートを、連続的かつ長期間安定的に分離する機能を有することが必要である。本発明のジエチルカーボネートの製造方法に使用する反応蒸留塔は、下記[1]、[2]に示す設計条件のいずれか、又はその組み合わせを満足する。
【0037】
[1]反応形式は、塔内で、液状又は固体状(スラリー状を含む)のエステル交換触媒と液状又はガス状の製造原料を接触させる向流型の反応形式である。
【0038】
[2]製造原料であるジメチルカーボネート及びエタノールの原料供給位置は、いずれも、エステル交換触媒を供給する触媒供給位置よりも下部(塔底側)である。エステル交換触媒の供給位置よりも下部(塔底側)であれば、ジメチルカーボネートとエタノールは、それぞれ、該蒸留塔の同じ段から導入しても、又は別の段から導入しても、いずれであってもよい。
【0039】
本発明の効果は、上記の設計条件の単独効果、又はそれぞれが適宜組み合わさってもたらされる複合効果によるものである。上記[1]、[2]を満たす反応条件で実施することによって、従来問題となっていた、製造原料のジメチルカーボネートがメタノールとの共沸混合物を作ることなく、良好な反応収率で反応させることができ、さらに低沸点化合物と目的物との分離効率が確保できるため、目的のスペックと製造量を達成することができる。
【0040】
<反応蒸留塔における必要反応空間(必要反応段数:ΔN、必要反応距離:ΔL)>
本発明の製造方法では、製造原料であるジメチルカーボネート及び/又はエタノールの供給位置(
図1の原料導入口:16)とエステル交換触媒を供給する位置(
図1の触媒導入口:14)との間の位置間隔が、必要反応空間となる。この必要反応空間は、反応蒸留塔のインターナルが、例えば、反応段(トレイ)で仕切られた棚段式反応蒸留塔では必要反応段数:ΔNとして、あるいはインターナルが充填物である充填式反応蒸留塔では必要反応距離:ΔLとして算出することができる。
【0041】
[1.反応モデルの仮定]
本発明の製造装置における必要反応空間は、
図1に示す反応蒸留塔の触媒導入口:14から原料導入口:16までの間を1つの反応器とみなした、
図2に示すような「連続槽型反応器」を反応モデルとして解析することで算出される。この場合、前記必要反応空間は、原料であるジメチルカーボネート(DMC)が所定のDMC転化率で反応する空間(
図2のV)として定義される。
【0042】
本発明において、棚段式反応蒸留塔については、まず全体を1槽の反応装置として仮定した場合の反応条件を決定し、これを用いて必要反応段数:ΔNの算出を行う式を特定した。
【0043】
[2.DMC転化率の算出]
(2−1:DMCの消費速度(−r
DMC)の算出)
本発明に係るエステル交換反応は、エステル交換触媒の存在下でジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)とが反応してエチルメチルカーボネート(EMC)へと転化する、下記反応式<I>で表される化学平衡型の第一段階のエステル交換反応を含み、このときメタノール(MeOH)が副生する。
【0044】
反応式<I>:
【化1】
(式中、k
1はEMC合成反応の反応速度定数を表し、k
−1はEMC合成反応の逆反応の反応速度定数を表す。)
【0045】
上記エステル交換反応において、DMC転化率:ConvはDMCの消費速度:−r
DMCと関係がある。DMCの消費速度:−r
DMCは下記式(A)で表される。
【0046】
式(A):
【数3】
(式中、−r
DMCはDMCの消費速度(mol・L
−1・h
−1)を表し、k
1はEMC合成反応の反応速度定数(L
2・mol
−2・h
−1)、k
−1はEMC合成反応の逆反応の反応速度定数(L
2・mol
−2・h
−1)を表す。[Cat]は反応蒸留塔内の触媒濃度(mol・L
−1)、[DMC]は反応蒸留塔内のDMCの濃度(mol・L
−1)、[EtOH]は反応蒸留塔内のEtOHの濃度(mol・L
−1)、[EMC]は反応蒸留塔内のEMCの濃度(mol・L
−1)、及び[MeOH]は反応蒸留塔内のMeOHの濃度(mol・L
−1)をそれぞれ表す。)
【0047】
本発明の製造方法では、DMCに対して大過剰のEtOHを使用することから、反応式<I>で生成したEMCは、下記反応式<II>で表される第二段階のエステル交換反応を経て速やかにジエチルカーボネート(DEC)に転化するとみなすことができる。
【0048】
反応式<II>:
【化2】
(式中、k
2はDEC合成反応の反応速度定数を表し、k
−2はDEC合成反応の逆反応の反応速度定数を表す。)
【0049】
すなわち、反応式<I>において逆反応の反応速度定数:k
−1をほぼ0とみなすことができる。k
−1≒0とすると、式(A)は式(B)で表される。
【0050】
式(B):
【数4】
(式中、−r
DMC、k
1、[Cat]、[DMC]及び[EtOH]は上記のとおりである。)
【0051】
本発明の製造方法では、EtOHの一部は、還流により塔頂部より留去されるため、反応蒸留塔内に残留する正味のEtOH濃度をその供給量から決定することができない。従って、EtOHの留去量を考慮した見かけの反応速度定数をk
01とし、下記式(C)のように速度定数:k
1と[EtOH]の積として定義することとした。そこで、このk
01を式(B)に代入すると式(D)となる。
【0052】
式(C):
【数5】
(式中、k
01は見かけの反応速度定数(L・mol
−1・h
−1)を表す。k
1及び[EtOH]は上記のとおりである。)
【0053】
式(D):
【数6】
(式中、−r
DMC、k
01、[Cat]及び[DMC]は上記のとおりである。)
【0054】
(2−2:反応空間内でのDMCの滞留時間(τ)の算出)
ここで、
図2のような連続槽型反応器において、反応が反応塔への流入量と反応塔からの流出量が同一である定常状態で行われるものとすると、反応空間内の反応溶液の滞留時間:τは、反応蒸留塔内に単位時間あたり供給される原料(DMC及びEtOH、並びに反応触媒)の量(原料供給量:v
0)と反応蒸留塔内に滞留する反応液量(塔内液量:V)の比として、下記式(E)のように表される(参照文献:基礎化学工学 50ページ 数式(2.61)、編者(社)化学工学会、発行所培風館、1999年1月22日)。さらに、当該反応空間内の滞留時間τは、DMCの減少量とDMCの消費速度:−r
DMCから、下記式(E)としても表される。
【0055】
式(E):
【数7】
(式中、τは、
図2より反応空間内の滞留時間(h)、v
0は、
図2より単位時間あたりの反応蒸留塔への原料供給量(L・h
−1)、Vは反応蒸留塔内の塔内液量(L)を表す。[DMC]
0は反応蒸留塔へ供給した原料中のDMC濃度(mol・L
−1)、[DMC]は、反応蒸留塔の塔底から流出する流出DMCの濃度(mol・L
−1)を表す。−r
DMCは上記のとおりである。)
【0056】
ここで、反応蒸留塔への原料供給量:v
0(L・h
−1)とは、単位時間当たりの原料(DMC及びEtOH、並びに反応触媒)の供給量の総量を示す。例えば、
図1に示すような棚段式反応蒸留塔を用いた実際の製造方法では、DMC及びEtOHと反応触媒とは、別々の箇所から供給(Feed)されるが、
図2の反応モデルは、
図1に示す反応蒸留塔の触媒導入口:14から原料導入口:16までの間を1つの反応器とみなしているため、触媒導入口と原料導入口が同一の反応段になる。従って、v
0は、原料(DMC及びEtOH、並びに反応触媒)の供給量の総量となる。
【0057】
また、Vとは反応蒸留塔内の塔内液量(L)を表す。
図2の反応モデルにおける塔内液量:Vは、
図1に示す反応蒸留塔の触媒導入口:14から原料導入口:16までの間に存在する液量に相当する。
【0058】
さらに、[DMC]
0は、反応蒸留塔へ供給する原料中のDMC濃度(mol・L
−1)を示し、反応時に設定される値である。[DMC]は、反応蒸留塔の塔底から流出する流出DMCの濃度(mol・L
−1)を示し、流出液から実験的に決定することができる。
【0059】
次に、式(E)に式(D)を代入すると、滞留時間:τは式(F)として示される。
【0060】
式(F):
【数8】
(式中、τ、[DMC]
0、[DMC]、k
01及び[Cat]は上記のとおりである。)
【0061】
(2−3:DMC転化率の算出)
原料のDMC転化率:Convは、反応蒸留塔へ供給したDMCの濃度[DMC]
0と反応蒸留塔の塔底から流出する流出DMCの濃度[DMC]から、下記式(G)で表される。なお、Convは、0〜1の実数であって、百分率(%)で表す数値ではない。
【0062】
式(G):
【数9】
(式中、Convは原料であるDMCの反応転化率を表す。[DMC]
0及び[DMC]は上記のとおりである。)
【0063】
式(F)を変形すると式(H)となり、式(H)を式(G)に代入すると式(I)となる。
【0064】
式(H):
【数10】
(式中、[DMC]
0、[DMC]、k
01、[Cat]及びτは上記のとおりである。)
【0065】
式(I):
【数11】
(式中、Conv、k
01、[Cat]及びτは上記のとおりである。)
【0066】
[3.反応速度定数(k
1)の算出]
反応速度定数:k
1は、一般的なアレニウスの式を用いて、下記式(J)のように表される。
【0067】
式(J):
【数12】
(式中、Aは頻度因子(L
2・mol
−2・s
−1)、Eは活性化エネルギー(J・mol
−1)、Rは気体定数(8.314 J・mol
−1・K
−1)、Tは温度(K:ケルビン温度)を表す。)
【0068】
頻度因子:A及び活性化エネルギー:Eは、反応中に反応溶液を適宜サンプリングし、DMCの消費量から算出される反応の進行度を測定して決定することができる。例えば、本発明では実施例6に示す方法により、得られた結果から、以下のようにA及びEが決定された。
【0069】
A=2.66×10
5
E=4.16×10
4
【0070】
なお、A及びEは、DMCとEtOHとを反応させてDECを製造する反応において、不変的な定数である。
【0071】
[4.見かけの反応速度定数(k
01)の算出]
次に、見かけの反応速度定数:k
01は、式(J)及び式(C)を用いてk
01で表される下記式(K)に変形できる。
【0072】
式(K):
【数13】
(式中、A、E、R、T及び[EtOH]は上記のとおりである。)
【0073】
ここで、見かけの反応速度定数:k
01は、実験を行って得られる数値(Conv、τ及び[Cat])を用いて算出することができる。より詳しくは、例えば、実施例の表1に示したデータのConv、τ及び[Cat]を用いると、式(I)からk
01を算出することができる。その際、k
01は、最小二乗法により、原料のDMC転化率:Convの実測値とDMCの転化率の計算値との誤差の二乗和が最小となるようにして算出することが好ましい(例えば、
図3参照)。また、k
01の計算を行う際、反応段(トレイ)一段あたりの反応液量(ホールドアップ量:V
h)は、反応装置の規模が大きい場合、反応段(トレイ)の設計値から得られるが、反応装置が小さい場合、又は反応段(トレイ)の設計情報が無い場合は実測する必要がある。ここで、実測にて反応段(トレイ)一段あたりの反応液量:V
hを決定する方法としては、例えば、反応終了後に反応段(トレイ)に溜まった反応溶液を回収して、その質量を量り、使用した反応段で割ることによって算出することが挙げられる。そこで、この方法を用いて、本発明においても、後述の実施例1で使用した装置について、V
hを算出した。また、反応蒸留塔内の反応空間の反応液量(ホールドアップ量:V
H)は、V
h×段数として算出した。
【0074】
その結果、比較例3を除いた、還流比:rが0.5〜10である場合、本発明の製造方法による見かけの反応速度定数:k
01は、6442L・mol
−1・h
−1(1.79L・mol
−1・s
−1)と決定された。
【0075】
さらに、エステル交換反応の反応温度を常圧下のEtOHの沸点である78℃とすると、実施例の結果から先に算出したk
01を用いて式(K)から[EtOH]を算出することができる。このようにして[EtOH]=10.38mol・L
−1が得られた。
【0076】
式(K)にA、E、R、及び得られた[EtOH]を代入すると、見かけの反応速度定数:k
01は、反応温度Tとの関係式として式(L)で表すことができる。
【0077】
式(L):
【数14】
(式中、k
01及びTは上記のとおりである。)
【0078】
ここで重要なことは、見かけの反応速度定数:k
01は、温度:Tに依存する式(L)で表すことができるため、例えば、操作圧力の影響による塔内温度変化が生じた場合もこの式を適用することができる。
【0079】
[5.必要反応段数:ΔNの算出]
必要反応段数:ΔN(段数)は、反応蒸留塔内の反応空間の反応液量(ホールドアップ量:V
H)と、反応段一段あたりの反応液量(ホールドアップ量:V
h)から、下記式(M)のように表される。
【0080】
式(M):
【数15】
(式中、ΔNは必要反応段数(段数)を表し、V
h、V
Hは上記のとおりである。)
【0081】
ここで、
図2の反応モデルにおけるVと反応蒸留塔内の反応空間の反応液量(ホールドアップ量:V
H)は、同じものを示すことから、V=V
Hとして、式(E)及び式(M)から、τを用いてΔNを下記式(N)のように表すことができる。
【0082】
式(N):
【数16】
(式中、ΔN、τ、V及びV
hは上記のとおりである。)
【0083】
式(I)より、τは下記式(O)のように表される。
【0084】
式(O):
【数17】
(式中、τ、Conv、k
01及び[Cat]は上記のとおりである。)
【0085】
式(N)と式(O)より、ΔNは下記式(P)のように表される。
【0086】
式(P):
【数18】
(式中、ΔN、Conv、v
0、V
h、k
01及び[Cat]は上記のとおりである。)
【0087】
次に、反応蒸留塔内の触媒濃度:[Cat]は、反応蒸留塔内への触媒供給量:c、反応蒸留塔の塔底からの抜き出し量:B、還流比:r、及び反応蒸留塔の塔頂からの抜き出し量:Dを用いて、下記式(Q)のように表される。
【0088】
式(Q):
【数19】
(式中、[Cat]は上記のとおりである。cは反応蒸留塔内への触媒供給量(mol・h
−1)、Bは反応蒸留塔の塔底からの抜き出し量(L・h
−1)、rは還流比(無次元)、Dは反応蒸留塔の塔頂からの抜き出し量(L・h
−1)を表す。)
【0089】
[6.必要反応空間(必要反応段数:ΔN、必要反応距離:ΔL)の算出]
<必要反応段数:ΔN>
式(P)及び式(Q)より、本発明の反応を行う製造装置の必要反応空間を必要反応段数:ΔNとして下記式(R)で表すことができる。さらに、式(K)のk
01を用いて式(R’)として表すことができる。
【0090】
式(R):
【数20】
(式中、ΔN、v
0、V
h、Conv、k
01、c、B、r、及びDは上記のとおりである。)
【0091】
式(R’):
【数21】
(式中、ΔN、v
0、V
h、Conv、A、E、R、T、[EtOH]、c、B、r、及びDは上記のとおりである。)
【0092】
ここで、式(L)の見かけの反応速度定数:k
01を式(R)に代入すると、棚段式反応蒸留装置を使用して本発明の製造方法を行う場合の必要反応段数:ΔNは、下記式(S)のように表される。
【0093】
式(S):
【数22】
(式中、ΔN、v
0、V
h、T、c、B、r、D、及びConvは上記のとおりである。)
【0094】
式(S)より、通常はエステル交換反応が常圧下、EtOHの還流条件下で行われるとしてEtOHの沸点(78℃=351K)を代入すると、下記式(S’)となる。
【0095】
式(S’):
【数23】
(式中、ΔN、v
0、V
h、c、B、r、D、及びConvは上記のとおりである。)
【0096】
実際に使用する反応蒸留塔の設計(仕様)よりB(反応蒸留塔の塔底からの抜き出し量)、D(反応蒸留塔の塔頂からの抜き出し量)及びV
h(反応段一段あたりのホールドアップ量)を特定し、かつ反応条件より、v
0(DMC、EtOH及びエステル交換触媒の供給量)、c(反応蒸留塔内への触媒供給量)、T(塔内温度)、r(還流比)を設定し、目標とするDMCの反応転化率:Convを式(S)に代入することで、棚段式反応蒸留装置を使用して本発明の製造方法を行う場合の必要反応段数:ΔNを算出することができる。
【0097】
上記より、本発明は、反応蒸留塔の設計値、反応条件及び目標とするDMCの反応転化率を設定することで、棚段式反応蒸留装置を使用してDECの製造を行う場合の必要反応段数:ΔNを算出する方法も含む。
【0098】
また、本発明は、反応蒸留塔の設計値、反応条件及び必要反応段数:ΔNを設定することで、棚段式反応蒸留装置を使用してDECの製造を行う場合のDMCの反応転化率を算出する方法も含む。
【0099】
具体例として、DMCの反応転化率が88.5%以上(Conv≧0.885)のとき、式(S)は、下記式(S
88.5%)のように表される。
【0100】
式(S
88.5%):
【数24】
(式中、ΔN、v
0、V
h、T、c、B、r、及びDは上記のとおりである。)
【0101】
さらに、塔内温度Tが、EtOHの沸点(78℃=351K)のとき、式(S)は、下記式(S
88.5%、78℃)のように表される。
【0102】
式(S
88.5%、78℃):
【数25】
(式中、ΔN、v
0、V
h、c、B、r、及びDは上記のとおりである。)
【0103】
従って、式(S
88.5%、78℃)より、反応装置の規模と使用する原料の供給量及び還流比が設定されれば、DMC反応転化率88.5%以上でDECを製造することが可能な必要反応段数:ΔNは、式(S
88.5%、78℃)より設定することができる。
【0104】
<必要反応距離:ΔL>
反応蒸留塔として充填式の反応蒸留塔を使用する場合、反応蒸留塔の触媒導入口と原料導入口の間の距離:ΔLは、反応蒸留塔の触媒導入口と原料導入口の間の領域における1mあたりのホールドアップ量:dを用いて下記式(T)で表される。
【0105】
式(T):
【数26】
(式中、ΔLは反応蒸留塔の触媒導入口と原料導入口の間の距離(m)、dは反応蒸留塔の触媒導入口と原料導入口の間の領域における1mあたりのホールドアップ量(L・m
−1)を表す。V
Hは上記のとおりである。)
【0106】
反応蒸留塔内に供給されたDMCの反応空間内での滞留時間:τは、式(E)として表される。ここで、
図2の反応モデルにおけるVと反応蒸留塔内の反応空間の反応液量(ホールドアップ量:V
H)は、同じものを示すことから、V=V
Hとして、式(E)、式(O)及び式(T)から、τを用いてΔLを式(U)のように表すことができる。
【0108】
(式中、ΔL、Conv、τ、v
0、d、k
01及び[Cat]は上記のとおりである。)
【0109】
式(U)に対して式(Q)を代入し、式(K)のk
01を用いると、必要反応距離:ΔLを下記式(V)で表すことができる。
【0110】
式(V):
【数28】
(式中、ΔL、v
0、d、A、E、R、T、c、B、r、D、Conv、及び[EtOH]は上記のとおりである。)
【0111】
ここで、式(L)の見かけの反応速度定数:k
01を式(V)に代入すると、必要反応距離:ΔLは、下記式(W)のように表される。
【0112】
式(W):
【数29】
(式中、ΔL、v
0、d、T、c、B、r、D、及びConvは上記のとおりである。)
【0113】
式(W)より、通常はエステル交換反応が常圧下、EtOHの還流条件下で行われるとしてEtOHの沸点(78℃=351K)を代入すると、下記式(W’)となる。
【0114】
式(W’):
【数30】
(式中、ΔL、v
0、d、c、B、r、D、及びConvは上記のとおりである。)
【0115】
実際に使用する反応蒸留塔の設計(仕様)より、B(反応蒸留塔の塔底からの抜き出し量)、D(反応蒸留塔の塔頂からの抜き出し量)及びd(反応蒸留塔の触媒導入口と原料導入口の間の領域における1mあたりのホールドアップ量)を特定し、かつ反応条件より、v
0(DMC、EtOH及びエステル交換触媒の供給量)、c(反応蒸留塔内への触媒供給量)、T(塔内温度)、r(還流比)を設定し、目標とするDMCの反応転化率:Convを式(W)に代入することで、充填式反応蒸留装置を使用して本発明の製造方法を行う場合の必要反応距離:ΔLを算出することができる。
【0116】
上記より、本発明は、反応蒸留塔の設計値、反応条件及び目標とするDMCの反応転化率を設定することで、充填式反応蒸留装置を使用してDECの製造を行う場合の必要反応距離:ΔLを算出する方法も含む。
【0117】
また、本発明は、反応蒸留塔の設計値、反応条件及び必要反応距離:ΔLを設定することで、例えば、充填式反応蒸留装置などの棚段式反応蒸留装置以外の反応蒸留装置を使用してDECの製造を行う場合のDMCの反応転化率を算出する方法も含む。
【0118】
具体例として、DMCの反応転化率が88.5%以上(Conv≧0.885)のとき、式(W)は、下記式(W
88.5%)のように表される。
【0119】
式(W
88.5%):
【数31】
(式中、ΔL、v
0、d、T、c、B、r、及びDは上記のとおりである。)
【0120】
さらに、塔内温度:Tが、EtOHの沸点(78℃=351K)のとき、式(W)は、下記式(W
88.5%、78℃)のように表される。
【0121】
式(W
88.5%、78℃):
【数32】
(式中、ΔL、v
0、d、c、B、r、及びDは上記のとおりである。)
【0122】
従って、式(W
88.5%、78℃)より、反応装置の規模と使用する原料の供給量及び還流比が設定されれば、DMC反応転化率88.5%以上でDECを製造することが可能な必要反応距離:ΔLは、式(W
88.5%、78℃)より設定することができる。
【0123】
本発明の反応蒸留塔は、大量の反応混合物から所定の分離効率でジエチルカーボネートを、連続的かつ長期間安定的に分離する機能を有することが必要である。本発明のジエチルカーボネートの製造方法に使用する反応蒸留塔は、さらに下記[3]〜[10]に示す設計条件のいずれか又は組み合わせを満足する。
【0124】
[3]棚段式反応蒸留塔を使用し、還流比:rが0.5〜10であり、必要反応段数:ΔNが下記式(S)を満足する。
【0125】
式(S):
【数33】
(式中、ΔN、v
0、V
h、T、c、B、r、D、及びConvは上記のとおりである。)
【0126】
[4]棚段式反応蒸留塔を使用し、還流比:rが0.5〜10であり、塔内温度:TがEtOHの常圧での沸点であり、必要反応段数:ΔNが下記式(S’)を満足する。
【0127】
式(S’):
【数34】
(式中、ΔN、v
0、V
h、c、B、r、D、及びConvは上記のとおりである。)
【0128】
[5]棚段式反応蒸留塔を使用する場合に、式(R’)より必要反応段数:ΔNを決定する。
【0129】
式(R’):
【数35】
(式中、ΔN、v
0、V
h、Conv、A、E、R、T、[EtOH]、c、B、r、及びDは上記のとおりである。)
【0130】
[6]棚段式反応蒸留塔の段数:nは、実段数換算で、通常1〜100段、好ましくは10〜75段、さらに好ましくは30〜75段、より好ましくは33〜50段、特に好ましくは33〜40段である。
【0131】
充填式反応蒸留塔の段数:nは、理論段数換算で、通常1〜100段、好ましくは32〜75段、さらに好ましくは33〜60段、より好ましくは33〜50段、特に好ましくは33〜40段である。
【0132】
本発明の製造方法では、段数:n(実段数換算又は理論段数換算)を100段以上にしても、同様に反応を行うことは可能であるが、段数の増加に伴い使用する反応蒸留塔の反応蒸留部の長さが大きくなり、その結果、塔の上下における圧力差が大きくなりすぎ、また塔下部での温度を高くする必要も生じ経済的ではない。従って、段数を多くする場合には、反応器を製造する際の高さ制限や設備費、ユーティリティー費等を考慮に入れて設計される。
【0133】
[7]原料導入口と触媒導入口の間隔:ΔNは、例えば、全棚段数を1〜100段とした場合、通常1〜50段、好ましくは5〜35段、さらに好ましくは10〜35段、より好ましくは10〜30段、特に好ましくは15〜30段である。
【0134】
上記条件であれば、ジメチルカーボネートがメタノールと共沸混合物を作ることなく、良好な反応収率で反応させることができ、さらに低沸点化合物と目的物との分離効率が確保できるため、目的のスペックと製造量を達成することができる。また、本発明の製造方法では、原料導入口と触媒導入口の間隔を実段数換算又は理論段数換算で50段以上にしても、同様の効果をもって反応を行うことは可能であるが、段数の増加に伴い使用する反応蒸留塔の塔長が大きくなり、その結果、塔の上下における圧力差が大きくなりすぎるため、長期安定運転が困難となるだけでなく、塔下部での温度を高くしなければならないため、経済的ではない。例えば、本発明の製造装置の全棚段数が100段を超えない場合、原料導入口は、塔頂部から数えて15段目(例えば14段目と15段目の間)より下部(塔底側)であることが特に好ましい。
【0135】
[8]充填式反応蒸留塔を使用し、還流比:rが0.5〜10であり、必要反応距離:ΔLが下記式(W)を満足する。
【0136】
式(W):
【数36】
(式中、ΔL、v
0、d、T、c、B、r、D、及びConvは上記のとおりである。)
【0137】
[9]充填式反応蒸留塔を使用し、還流比:rが0.5〜10であり、塔内温度:TがEtOHの常圧での沸点であり、必要反応距離:ΔLが下記式(W’)を満足する。
【0138】
式(W’):
【数37】
(式中、ΔL、v
0、d、c、B、r、D、及びConvは上記のとおりである。)
【0139】
[10]充填式反応蒸留塔を使用する場合に、式(V)より必要反応距離:ΔLを決定する。
【0140】
式(V):
【数38】
(式中、ΔL、v
0、d、A、E、R、T、c、B、r、D、Conv、及び[EtOH]は上記のとおりである。)
【0141】
[11]空塔容積(反応蒸留部の空間体積(m
3);
図1のRD)に対する原料供給位置と触媒供給位置との間の空間体積(m
3)(
図1のRH)の比が、通常、0.01〜1.00、好ましくは0.1〜0.9、さらに好ましくは0.2〜0.8、より好ましくは0.25〜0.75、特に好ましくは0.5〜0.75である。
【0142】
本発明の一実施態様は、反応蒸留塔内にて、ジメチルカーボネートとエタノールとのエステル交換反応により、ジエチルカーボネートを連続的に製造する方法に関する。
【0143】
<ジメチルカーボネート>
本発明で製造原料として使用されるジメチルカーボネートは、市販品を購入して使用することもできるが、例えば、特開平3−141243号公報を参考に固体触媒の存在下、一酸化炭素と亜硝酸エステルとを気相接触反応させることによっても得られたものや、特開2006−176412号公報を参考に固体触媒の存在下、二酸化炭素とアルコールとを反応させて得られたもの等、公知の方法で製造された様々なジメチルカーボネートを使用することができる。
【0144】
<エタノール>
本発明で製造原料として使用されるエタノールは、市販品をそのまま使用することもできるが、本発明のエステル交換反応に影響しないように、含有水分量が0.20質量%以下(2000ppm以下)のエタノールを使用することが好ましい。ここで、含有水分の除去は、例えば、モレキュラーシーブ、無水硫酸マグネシウム及び/又は酸化カルシウム等の乾燥剤で脱水操作等にて行なわれる。
【0145】
エタノールの使用量は、ジメチルカーボネート1モルに対して、好ましくは1.8〜10モル、さらに好ましくは2.0〜8.0モル、より好ましくは2.0〜6.0モル、特に好ましくは2.0〜5.0モルである。エタノールは、少なすぎると反応が効率的に進行しなくなり、一方、使用し過ぎると反応後に除去する煩雑さが増え、また経済性(コスト面)からも好ましくない。上記範囲の使用量であれば、本発明の反応を良好に行うことができ、かつ経済的にも好適である。
【0146】
<エステル交換触媒>
本発明で使用されるエステル交換触媒として、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩化合物、アルカリ金属メトキシド、及びアルカリ金属エトキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種のエステル交換触媒、さらに好ましくは水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、アルカリ金属メトキシド、及びアルカリ金属エトキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種のエステル交換触媒、より好ましくはアルカリ金属メトキシド、及びアルカリ金属エトキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種のエステル交換触媒、特に好ましくはリチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種のエステル交換触媒が使用される。これらのエステル交換触媒は、単独で使用しても、又は2種類以上を混合して使用してもよく、さらに市販品をそのまま使用しても、又は別途常法により精製して使用してもよい。
【0147】
これらのエステル交換触媒は、例えば、製造原料であるエタノール又は反応副生物であるメタノールなどに溶解する場合には均一系触媒として用いることができ、エタノール又はメタノールに部分的に溶解又は分散する場合には、スラリー系触媒として用いることができる。
【0148】
エステル交換触媒の使用量は、ジメチルカーボネート1モルに対して、通常0.5〜1000ミリモル、好ましくは1〜250ミリモル、さらに好ましくは2〜50ミリモル、より好ましくは2〜25ミリモル、特に好ましくは2〜15ミリモルである。エステル交換触媒は、少なすぎると反応が効率的に進行しなくなり、一方、使用し過ぎると反応後に除去する煩雑さが増え、また経済性(コスト面)からも好ましくない。上記範囲の使用量であれば、本発明の反応を良好に行うことができ、かつ経済的にも好適である。
【0149】
本発明で使用される反応蒸留塔を使用した反応蒸留は、大量の反応混合物から所定の分離効率でジエチルカーボネートを、連続的かつ長期間安定的に分離する機能を有することが必要である。本発明のジエチルカーボネートの製造方法において、反応蒸留塔内の反応条件は、下記[12]〜[16]に示す種々の条件のいずれか又は組み合わせを満足する。
【0150】
[12](ジメチルカーボネート及びエタノールの供給方法)
本発明において、反応蒸留塔にジメチルカーボネート及びエタノールを供給する方法は特に制限されず、ジメチルカーボネート及びエタノールを液状、ガス状又は気液混合状態で供給することができる。
【0151】
本発明において、ジメチルカーボネート及びエタノールは、エステル交換触媒の供給位置よりも下方の位置で反応蒸留塔に断続的又は連続的に供給することができる。ジメチルカーボネート及びエタノールを含む製造原料中に、メタノール及び/又はメチルエチルカーボネートが含まれていても構わない。
【0152】
[13](エステル交換触媒の供給方法)
本発明において、反応蒸留塔にエステル交換触媒を供給する方法は特に制限されず、例えば、エステル交換触媒を液状で供給してもよく、エタノール又はメタノールに溶解又は懸濁させた溶液又はスラリーとして供給してもよい。さらに、エステル交換触媒中に、例えば、メタノール及び/又はエタノール、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどが含まれていても構わない。
【0153】
本発明において、エステル交換触媒は、製造原料の供給位置よりも上方の位置で反応蒸留塔に断続的又は連続的に供給することができる。
【0154】
[14](塔内温度)
本発明の反応蒸留において、塔内温度は圧力によって変動するため、特に制限されないが、例えば、塔頂部:X及び反応蒸留部:RDの温度は、好ましくは60〜100℃(すなわちエタノール沸点(78℃)±20℃)、より好ましくは65〜95℃(エタノール沸点(78℃)±約15℃)、特に好ましくは70〜90℃(エタノール沸点(78℃)±約10℃)である。濃縮部:RCの温度は、好ましくは105〜150℃(ジエチルカーボネートの沸点(℃)±約20℃)、より好ましくは110〜145℃(ジエチルカーボネートの沸点(℃)±15℃)、特に好ましくは115〜140℃(ジエチルカーボネートの沸点(℃)±約10℃)である。前記温度条件は、反応蒸留塔のインターナルの形状や段数、供給される低沸点反応混合物の種類と組成と量、分離されるジエチルカーボネートの純度などによって異なるため、上記の温度範囲で適宜調整することができる。
【0155】
[15](塔内圧力)
本発明の反応蒸留において、塔内圧力は、塔頂圧力、塔内組成及び/又は塔内温度によって異なるが、塔頂部:X及び濃縮部:RCの圧力が、好ましくは常圧〜1000kPa(絶対圧)である。
【0156】
[16](還流比)
本発明の反応蒸留において、反応蒸留塔の還流比:rは、0.5〜10の範囲が好ましく、より好ましくは0.8〜5の範囲であり、さらに好ましくは1.5〜4.0である。
【0157】
本発明では、上記のように製造原料であるジメチルカーボネート及びエタノールを本発明に係る反応蒸留塔に供給することで、製造原料であるジメチルカーボネートを、反応で生成するメタノールとの共沸混合物として塔頂部より失うことはほとんどなく、ジメチルカーボネートの転化率が、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上となるような反応空間で、ジエチルカーボネートを高い反応収率で製造することができる。
【0158】
<本発明で製造されるジエチルカーボネート>
本発明の反応蒸留塔を使用して製造されたジエチルカーボネートは、
図1の濃縮部:RCに、エステル交換触媒等と共に反応濃縮液として取得される。得られた反応濃縮液に含まれるエステル交換触媒を、例えば、水洗浄や薄膜蒸留装置による蒸留等の簡便な操作を行って分離除去することで、高純度のジエチルカーボネートを得ることができる。このようにして得られたジエチルカーボネートは、例えば、色相(APHA値)が10以下の透明液体であり、通常、97質量%以上、好ましくは99質量%以上、より好ましくは99.9質量%以上の超高純度品として得ることができる。
【0159】
また、例えば、エーテル化合物やアルデヒド化合物等の反応副生物の含有量についても、ジエチルカーボネートの1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらにより好ましくは0.05質量%以下である。更に、金属不純物(Na,K,Ca,Fe,Al,Mg,Cu,Pb)含有率も通常0.5ppm以下、好ましくは0.1ppm以下、特に好ましくは1ppb以下である。
【0160】
このように、本発明の製造方法によれば、通常、97質量%以上、好ましくは99質量%以上、より好ましくは99.9質量%以上の超高純度品のジエチルカーボネートを最終的に容易に得ることができる。
【0161】
このようにして得られた本発明のジエチルカーボネートは、例えば、染料、顔料、医農薬品、及び電気・電子分野の有機材料(例えば、ポリカーボネートなど)の製造原料及びこれらの合成用溶媒としての使用のみならず、印刷用洗浄剤、土壌改質剤の添加物、電池用電解液の構成成分等として使用することができる。
【実施例】
【0162】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0163】
本実施例中、製造原料のジメチルカーボネートの消費量及び目的物であるジエチルカーボネートの生成量等についての定性及び定量分析(内標物質エチルベンゼン)は全てガスクロマトグラフィー(GC)を使用して行った(GC−2014:島津製作所社製、GCカラム:TC-WAX 30m×0.53mm、GC検出器:FID)。また、製造原料のジメチルカーボネートの反応転化率、並びに目的物であるジエチルカーボネートの反応選択率及び反応収率は、それぞれ、次の式(III)から(V)を用いてそれぞれ算出した。
【0164】
【数39】
【0165】
【数40】
【0166】
【数41】
【0167】
(実施例1:ジエチルカーボネートの製造:ΔN=30)
[製造装置]
実施例で使用した製造装置は、
図1に示される反応蒸留塔であって、以下示される寸法のものを用いた。
【0168】
塔径(
図1のD1)34mm、棚段間隔(
図1のL3)30mm、実段数(
図1のn)40段の反応蒸留塔を用いた。
【0169】
また、前記塔内のインターナルとして、オールダーショウ型多孔板(トレイ径32mm、孔径0.8mm、開孔比5.2%、旭製作所社製)を用いた。
【0170】
[反応方法]
ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)とからなる製造原料(質量比:EtOH(質量%)/DMC(質量%)=49.86/50.14)を、反応蒸留塔の塔頂から32段目と33段目のトレイの間の原料導入口(
図1のM)から、87.3g/hrの供給速度にて連続的に供給した。
【0171】
また同時に、エステル交換触媒としてナトリウムメトキシド(MeONa)溶液(質量比:MeONa(質量%)/MeOH(質量%)/EtOH(質量%)=1.32/3.40/95.28)を、反応蒸留塔の塔頂から2段目と3段目のトレイの間の触媒導入口(
図1のC)より、27.1g/hrの供給速度にて連続的に供給した。
【0172】
上記供給速度にて、反応蒸留塔の反応条件を、常圧下、塔頂温度69〜71℃、塔内温度71〜78℃(測定部位:塔頂から25段目)、塔底温度105〜120℃、還流比2.7として、連続的に反応蒸留を行った。
【0173】
上記反応を連続的に6時間行った後、反応蒸留塔の塔頂留出口(
図1のT)より58.0g/hrで連続的に留出している液を回収し内容物の分析を行ったところ、メタノール52.3質量%、エタノール42.6質量%、ジメチルカーボネート1.9質量%(原料供給量に対して、2.5質量%)、エチルメチルカーボネート2.7質量%、その他0.5質量%であった(ジメチルカーボネートの反応転化率:97%)。また、反応蒸留塔の塔底部(
図1のB)より56.4g/hrで連続的に抜出している液を回収し内容物の分析を行ったところ、エタノール4.0質量%、エチルメチルカーボネート1.8質量%、ジエチルカーボネート93.7質量%、その他0.5質量%であった(ジエチルカーボネートの反応収率:92%)。
【0174】
(実施例2:ジエチルカーボネートの製造:ΔN=20)
[製造装置]
実施例1と同じ反応蒸留塔を使用した。
【0175】
<反応方法>
ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)からなる製造原料(質量比:EtOH(質量%)/DMC(質量%)=49.47/50.53)を、反応蒸留塔の塔頂から32段目と33段目のトレイの間の反応蒸留塔の原料導入口(
図1のM)より、90.0g/hrにて連続的に供給した。
【0176】
また同時に、エステル交換触媒としてナトリウムメトキシド(MeONa)溶液(質量比:MeONa(質量%)/MeOH(質量%)/EtOH(質量%)=0.72/1.86/97.42)についても、反応蒸留塔の塔頂から12段目と13段目のトレイの間の触媒導入口(
図1のC)より、27.6g/hrにて連続的に供給した。
【0177】
上記供給速度にて、反応蒸留塔の反応条件を、常圧下、塔頂温度69〜72℃、塔内温度72〜78℃(25段目)、塔底温度105〜120℃、還流比:rが2.1で、連続的に反応蒸留を行った。
【0178】
上記反応を連続的に6時間行った後、反応蒸留塔の塔頂留出口(
図1のT)より63.5g/hrで連続的に留出している液を回収し内容物の分析を行ったところ、メタノール46.1質量%、エタノール45.2質量%、ジメチルカーボネート4.5質量%(原料供給量に対して、6.3質量%)、エチルメチルカーボネート4.0質量%、その他0.2質量%であった(ジメチルカーボネートの反応転化率:94%)。また、反応蒸留塔の塔底部(
図1のB)より54.1g/hrで連続的に抜出している液を回収し内容物の分析を行ったところ、エタノール2.3質量%、エチルメチルカーボネート3.5質量%、ジエチルカーボネート93.7質量%、その他0.5質量%であった(ジエチルカーボネートの反応収率:86%)。
【0179】
(実施例3:ジエチルカーボネートの製造:ΔL=0.55m)
[製造装置]
実施例3では、以下の寸法の充填式反応蒸留塔を用いた。
【0180】
塔径が30mm、濃縮部充填高さが550mm、回収部充填高さが330mm(この実施例では濃縮部充填高さと回収部充填高さの合計が
図1のL1に相当する。)の反応蒸留塔を用いた。
【0181】
インターナルとして規則充填物であるSluzer laboratory packing EX(Sluzer Chemtech社)を用いた。
【0182】
[反応方法]
ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)からなる製造原料(質量比:EtOH(質量%)/DMC(質量%)=49.95/50.05)を、反応蒸留塔の濃縮部と回収部の間に原料導入口を設け、ここより、82.6g/hrにて連続的に供給した。
【0183】
また同時に、エステル交換触媒としてナトリウムメトキシド(MeONa)溶液(質量比:MeONa(質量%)/MeOH(質量%)/EtOH(質量%)=0.68/1.76/97.56)についても、反応蒸留塔の塔頂に触媒導入口を設け、ここより、25.2g/hrにて連続的に供給した。
【0184】
上記供給速度にて、反応蒸留塔の反応条件を、常圧下、塔頂温度69〜75℃、塔内温度75〜78℃(製造原料導入部)、塔底温度100〜120℃、還流比:rが3.2で、連続的に反応蒸留を行った。
【0185】
上記反応を連続的に6時間行った後、反応蒸留塔の塔頂留出口より59.4g/hrで連続的に留出している液を回収し内容物の分析を行ったところ、メタノール43.6wt%、エタノール44.0wt%、ジメチルカーボネート5.8wt%(原料供給量に対して、8.3質量%)、エチルメチルカーボネート6.0wt%、その他0.6wt%であった(ジメチルカーボネートの反応転化率:92%)。また、反応蒸留塔の塔底部より48.1g/hrで連続的に抜出している液を回収し内容物の分析を行ったところ、エタノール6.2wt%、エチルメチルカーボネート2.0wt%、ジエチルカーボネート91.6wt%、その他0.2wt%であった(ジエチルカーボネートの反応収率:83%)。
【0186】
(実施例4:ジエチルカーボネートの製造:ΔN=10)
[製造装置]
実施例1と同じ反応蒸留塔を使用した。
【0187】
[反応方法]
ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)とからなる製造原料(質量比:EtOH(質量%)/DMC(質量%)=49.47/50.53)を、反応蒸留塔の塔頂から32段目と33段目のトレイの間の原料導入口(
図1のM)より、89.3g/hrにて連続的に供給した。
【0188】
また同時に、エステル交換触媒としてナトリウムメトキシド(MeONa)溶液(質量比:MeONa(質量%)/MeOH(質量%)/EtOH(質量%)=0.72/1.86/97.42)についても、反応蒸留塔の塔頂から22段目と23段目のトレイの間の触媒導入口(
図1のC)より、より、27.5g/hrにて連続的に供給した。
【0189】
上記供給速度にて、反応蒸留塔の反応条件を、常圧下、塔頂温度69〜72℃、塔内温度72〜78℃(24段目と25段目の空間)、塔底温度105〜120℃、還流比:rが2.4で、連続的に反応蒸留を行った。
【0190】
上記反応を連続的に6時間行った後、反応蒸留塔の塔頂留出口(
図1のT)より64.6g/hrで連続的に留出している液を回収し内容物の分析を行ったところ、メタノール42.0質量%、エタノール44.2質量%、ジメチルカーボネート8.2質量%、(原料供給量に対して、12質量%)エチルメチルカーボネート5.6質量%であった(ジメチルカーボネートの反応転化率:88%)。また、反応蒸留塔の塔底部(
図1のB)より52.2g/hrで連続的に抜出している液を回収し内容物の分析を行ったところ、エタノール7.8質量%、エチルメチルカーボネート2.9質量%、ジエチルカーボネート88.8質量%、その他0.5質量%であった(ジエチルカーボネートの反応収率:78%)。
【0191】
(実施例5:ジエチルカーボネートの製造)
[製造装置]
実施例1に記載したものと同一の反応蒸留塔を使用した。
【0192】
[反応方法]
ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)からなる製造原料(質量比:EtOH(質量%)/DMC(質量%)=49.86/50.14)を、反応蒸留塔の塔頂から32段目と33段目のトレイの間の原料導入口(
図1のM)より、88.7g/hrにて連続的に供給した。
【0193】
また同時に、エステル交換触媒としてナトリウムメトキシド(MeONa)溶液(質量比:MeONa(質量%)/MeOH(質量%)/EtOH(質量%)=0.22/0.57/99.21)についても、反応蒸留塔の塔頂から2段目と3段目のトレイの間の触媒導入口(
図1のC)より、25.1g/hrにて連続的に供給した。
【0194】
上記供給速度にて、反応蒸留塔の反応条件を、常圧下、塔頂温度69〜73℃、塔内温度73〜78℃(25段目)、塔底温度105〜120℃、還流比:rが2.8で、連続的に反応・蒸留を行った。
【0195】
上記反応を連続的に6時間行った後、反応蒸留塔の塔頂留出口(
図1のT)より68.7g/hrで連続的に留出している液を回収し内容物の分析を行ったところ、メタノール36.1質量%、エタノール48.1質量%、ジメチルカーボネート10.4質量%(原料供給量に対して、16質量%)、エチルメチルカーボネート5.2質量%、その他0.2wt%であった(ジメチルカーボネートの反応転化率:84%)。また、反応蒸留塔の塔底部(
図1のB)より45.1g/hrで連続的に抜出している液を回収し内容物の分析を行ったところ、エタノール1.4質量%、エチルメチルカーボネート5.1質量%、ジエチルカーボネート93.2質量%、その他0.3質量%であった(ジエチルカーボネートの反応収率:73%)。
【0196】
(比較例1:ジエチルカーボネートの製造)
[製造装置]
実施例1と同じ反応蒸留塔を使用した。
【0197】
[反応方法]
ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)からなる製造原料(質量比:EtOH(質量%)/DMC(質量%)=51.57/48.43)を、反応蒸留塔の塔頂から32段目と33段目のトレイの間の原料導入口(
図1のM)より、88.0g/hrにて連続的に供給した。
【0198】
また同時に、エステル交換触媒としてナトリウムメトキシド(MeONa)溶液(質量比:MeONa(質量%)/MeOH(質量%)/EtOH(質量%)=0.85/2.18/96.97)についても、反応蒸留塔の塔頂から2段目と3段目のトレイの間の触媒導入口(
図1のC)より、25.7g/hrにて連続的に供給した。
【0199】
反応蒸留塔は、常圧下、塔頂温度64〜65℃、塔内温度66〜75℃(25段目)、塔底温度80〜100℃、還流比:rが12で、連続的に反応蒸留を行った。
【0200】
上記反応を連続的に6時間行った後、反応蒸留塔の塔頂留出口(
図1のT)より33.6g/hrで連続的に留出している液を回収し内容物の分析を行ったところ、メタノール60.9質量%、エタノール6.2質量%、ジメチルカーボネート32.7質量%(原料供給量に対して、25.8質量%)、エチルメチルカーボネート0.1質量%、その他0.1質量%であった(ジメチルカーボネートの反応転化率:74%)。また、反応蒸留塔の塔底部(
図1のB)より80.1g/hrで連続的に抜出している液を回収し内容物の分析を行ったところ、エタノール47.1質量%、エチルメチルカーボネート4.7質量%、ジエチルカーボネート46.2質量%、その他2.0質量%であった(ジエチルカーボネートの反応収率:66%)。
【0201】
上記実施例1〜5および比較例1の実験結果一覧を表1に示す。
【0202】
【表1】
【0203】
(実施例6:反応速度定数(k
1)の算出)
(6−1:EtOH/DMC=5(mol)、測定温度:70℃、50℃、30℃)
容量100mLのガラス製の三口フラスコに、ジメチルカーボネート18g(DMC;0.2mol)、エタノール43g(EtOH;0.93mol)を窒素雰囲気下、攪拌しながら混合し、各測定温度(3点:70℃、50℃、30℃)まで昇温を行った。その後、エタノール3g(0.07mol)、ナトリウムメチラート0.12g(500ppm、28%メタノール溶液)を加え、反応速度実験を開始した(投入終了時を反応時間0秒とした)。反応開始後、適宜この反応溶液をサンプリングし、ガスクロマトグラフィー測定(内標法)から、各反応時間でのDMC消費量を算出し、各測定温度(3点)での速度定数を算出した。
【0204】
(6−2:EtOH/DMC=1(mol)測定温度:15℃、10℃、5℃)
次いで、EtOHとDMCの使用量比を、EtOH/DMC=1(mol)とし、ナトリウムメチラートの使用量を1000ppmとし、上記(6−1)と同様に実験を行い、各反応温度(3点:15℃、10℃、5℃)での反応速度定数を算出した。
【0205】
(6−3:頻度因子A、及び活性化エネルギーEの算出)
上記(6−1)及び(6−2)より得られた結果を一般的なアレニウスの式である式(J)を用いて算出すると、A及びEは以下のとおりになった。
【0206】
A=2.66×10
5
E=4.16×10
4【0207】
(実施例7:見かけの反応速度定数(k
01)の算出]
見かけの反応速度定数:k
01は、式(K)で表される。ここで、見かけの反応速度定数:k
01は、実施例の表1に示したデータ(比較例1を除く)のConv、τ及び[Cat]を用いると、式(I)から算出することができる。k
01の算出を行う際、反応段一段あたりの反応液量(ホールドアップ量:V
h)は実施例1で使用した反応蒸留装置を実測し、反応蒸留塔内の反応空間の反応液量(ホールドアップ量:V
H)は、V
h×段数とした。
【0208】
k
01は、最小二乗法により、原料のDMC転化率:Convの実測値とDMCの転化率の計算値との誤差の二乗和が最小となるように算出した。結果を
図3に示す。
【0209】
図3より、本発明の実施例による見かけの反応速度定数:k
01(
図3中の直線の傾き)は、6442L・mol
−1・h
−1(1.79L・mol
−1・s
−1)と算出された。
【0210】
(参考例1:必要反応段数の算出)
本発明の反応が、例えば、常圧下で行われたとし、その反応温度がEtOHの沸点(常圧下)である78℃とすると、実施例7の結果から算出したk
01を用いて式(K)から、[EtOH]=10.38mol・L
−1が算出された。
【0211】
従って、式(S’)又は(W’)より、反応蒸留塔の設計(使用)と使用する原料の供給量及び還流比、及びDMCの目標反応転化率を設定すれば、良好な収率でDECを製造することが可能な必要反応段数:ΔN及び必要反応距離:ΔLを算出することができる。