【実施例】
【0031】
原料粉末として、ガスアトマイズ法および水アトマイズ法にてFe−4.5Si合金粉末を作製した。これらを分級して粒度分布を調整し、軟磁性金属粉末を準備した。軟磁性金属粉末の粒度分布はレーザー回折式粒度分布測定装置(HELOSシステム、Sympatec社製)により測定し、d10%、d16%から(d16%−d10%)/d16%を計算した。表1に粒度分布における各累積径(d10%、d16%、d50%、d84%)および原料粉末の製法を示した。
【0032】
表1の軟磁性金属粉末が100質量%に対し、シリコーン樹脂が1.5質量%となるようにキシレンにて希釈して添加し、ニーダーで混練し、乾燥して得られた凝集物を355μm以下となるように整粒して、顆粒を得た。これを外径17.5mm、内径11.0mmのトロイダル形状の金型に充填し、成形圧1180MPaで加圧し成形体を得た。コア重量は5gとした。得られた成形体をベルト炉にて750℃で30min、窒素雰囲気中で熱処理して軟磁性金属圧粉コアとした(実施例1−1〜1−
7、比較例1−1〜1−6、
参考例1〜参考例3)。同様に成形圧1570MPaで加圧成形したもの(実施例1−
8)、成形圧780MPaで加圧成形したもの(
参考例4)も準備した。
【0033】
これらの軟磁性金属圧粉コアを冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行った。粒子の断面をランダムに50個観察し、各粒子のWadellの円形度を測定し、円形度が0.75以上である粒子の割合を算出した。結果を表1に示した。
【0034】
同様に、これらの軟磁性金属圧粉コアを冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行った。電子顕微鏡で断面を観察し、組成像を撮影した。画像のコントラストから視野面積に対する金属相の面積の割合を求め、結果を表1に示した。
【0035】
LCRメータ(アジレント・テクノロジー社製4284A)と直流バイアス電源(アジレント・テクノロジー社製42841A)を用いて、軟磁性圧粉コアのインダクタンスを測定し、インダクタンスから軟磁性圧粉コアの透磁率を算出した。直流重畳磁界が0A/mの場合と8000A/mの場合について測定し、それぞれの透磁率をμ0、μ(8kA/m)として表1に示した。
【0036】
BHアナライザ(岩通計測社製SY−8258)を用いて、軟磁性圧粉コアのコアロスを測定した。コアロスは周波数20kHz,測定磁束密度50mTの条件で測定した。結果を表1に示した。
【表1】
【0037】
表1より、実施例1−1〜実施例1−
8は、いずれもμ(8kA/m)が40以上の良好な直流重畳特性を示すとともに、コアロスが60kW/m3以下となっていることがわかる。したがって、軟磁性金属粉末のd50%が15〜65μmの範囲とし、(d16−d10%)/d16%を0.10〜0.20の範囲とし、円形度0.75以上の粒子の割合が80%以上とすることによって、良好な直流重畳特性と低いコアロスを両立させた、優れた軟磁性金属圧粉コアとすることができることが確認できる。
【0038】
比較例1−5はd50%が13.5μm、比較例1−6はd50%が69.5μmである。比較例1−5は粒径が小さすぎるためμ0が過小となり、結果としてμ(8kA/m)が40に満たない小さなものしか得られない。また、比較例1−6は粒径が大きすぎるために渦電流損失が大きくなり、コアロスが60kW/m3を超える大きなものしか得られない。一方、実施例1−1、
参考例1〜参考例3はd50%が15〜65μmの範囲にあるため、μ(8kA/m)が40以上で、コアロスが60kW/m
3以下となっており、d50%を適切な範囲にする必要があることがわかる。
【0039】
比較例1−1、比較例1−2、比較例1−7は(d16%−d10%)/d16%が0.20よりも大きい。比較例1−1と比較例1−7は微粉が多すぎるためμ0が大きくなりすぎてしまい、結果としてμ(8kA/m)が40に満たない小さなものしか得られない。また、比較例1−2は粒度分布を鋭くすることにより、直流重畳特性の改善を試みたものであるが、微粉量が多すぎるためにμ(8kA/m)が40に満たないばかりか、密度が低下してしまうため、コアロスが60kW/m3を超える大きなものしか得られない。それに対して、実施例1−1〜1−
7は(d16%−d10%)/d16%が0.10〜0.20の範囲にあることから、μ(8kA/m)が40以上で、コアロスが60kW/m3以下となっており、(d16%−d10%)/d16%を適切な範囲にする必要があることがわかる。また、実施例1−3、
参考例1、
参考例2は、(d16%−d10%)/d16%が0.10〜0.16の範囲にあることから、特にμ(8kA/m)が大きくなることがわかる
【0040】
比較例1−3、比較例1−4は円形度0.75以上の粒子の割合が80%に満たない。比較例1−4は円形度が低い粒子が多すぎるため、μ0が大きくなりすぎてしまい、結果としてμ(8kA/m)が40に満たない小さなものしか得られない。さらに比較例1−3は円形度が低い粒子が多く含まれ、さらに(d16%−d10%)/d16%が0.20よりも大きいことから、特にμ0が大きくなってしまい、結果としてμ(8kA/m)が40に満たない小さなものしか得られない。それに対し、実施例1−1〜1−
7、
参考例1、参考例2は円形度0.75以上の粒子の割合が80%以上であることから、良好な直流重畳特性が得られている。
【0041】
実施例1−3、実施例1−11、実施例1−12は同じ軟磁性金属粉末を用い、成形圧を変えて作製した軟磁性圧粉コアである。実施例1−3と実施例1−11のコアロスは50kW/m3と、実施例1−12に比べてさらに低いコアロスが得られていることがわかる。実施例1−3と実施例1−11は成形圧が高いため、密度が高くなっており、断面を研磨して観察すると、観察面の面積に対し、軟磁性金属粉末の占める面積の割合が90%以上となっている。一方、実施例1−12は密度が低く、軟磁性金属粉末の占める面積の割合が90%に満たない。なお、さらに高圧で成形する場合には金型が破損する懸念があるため、軟磁性金属粉末の占める面積の割合が95%を超えるものを得るのは困難である。よって、軟磁性金属圧粉コアの断面を研磨して観察した場合に、軟磁性金属圧粉コアの断面の面積に対する軟磁性金属粉末が占有する面積の割合が90%〜95%とするのがより好ましい。
【0042】
図2には実施例1−
7と比較例1−3の軟磁性金属粉末の粒度分布を示した。
図2の粒度分布から明らかなように、実施例1−
7は比較例1−3に対して粒度分布の全体の広がりは同程度であるが、微粉側の裾の広がりがより小さくなっていることがわかる。表1からわかるように実施例1−
7の方が比較例1−3よりも大きなμ(8kA/m)が得られており、粒度分布での微粉側の裾の広がりを小さくする、すなわち(d16%−d10%)/d16%を0.10〜0.20の範囲にすることが直流重畳特性の改善に有効であることがわかる。
【0043】
図3には実施例1−1の軟磁性金属圧粉コアの断面の形状を示した。
図4には比較例1−3の軟磁性金属圧粉コアの断面の形状を示した。
図3と
図4から明らかなように、実施例1−1は円形度が高いのに対し、比較例1−3は円形度が低い粒子となっている。表1からわかるように、実施例1−1の方が比較例1−3よりも大きなμ(8kA/m)が得られており、軟磁性金属粉末を構成する円形度を高くする、すなわち粒子断面の円形度が0.75〜1.0となる粒子が80%以上とすることが直流重畳特性の改善に有効であることがわかる。