特許第5958585号(P5958585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5958585ポリアミド系樹脂フィルムとゴムの積層体およびタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958585
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】ポリアミド系樹脂フィルムとゴムの積層体およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/08 20060101AFI20160719BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20160719BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B32B25/08
   B60C5/14 Z
   B60C5/14 A
   B32B27/34
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-70049(P2015-70049)
(22)【出願日】2015年3月30日
(62)【分割の表示】特願2011-141819(P2011-141819)の分割
【原出願日】2011年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-145129(P2015-145129A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】柴田 寛和
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5803329(JP,B2)
【文献】 特表2009−528178(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/047315(WO,A1)
【文献】 特開2008−214458(JP,A)
【文献】 特開2002−220480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B60C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系樹脂のフィルムとゴム組成物の層との積層体であって、ポリアミド系樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物、ポリアミド樹脂にエラストマー成分を分散させた熱可塑性エラストマー、およびポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物にエラストマー成分を分散させた熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれた少なくとも1種であり、ゴム組成物が、ゴム成分100質量部およびポリアミド樹脂の溶解度パラメーター(SP値)との差の絶対値が3以下である溶解度パラメーターを有する可塑剤1〜20質量部を含み、ゴム組成物のゴム成分がエポキシ化天然ゴムであることを特徴とする積層体。
【請求項2】
可塑剤がスルホンアミド系可塑剤であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
ポリアミド樹脂が、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
エラストマー成分が臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂がポリビニルアルコールおよびエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
タイヤ用であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系樹脂フィルムとゴムの積層体、およびその積層体を含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、空気入りタイヤのインナーライナー層として用いることのできるポリアミド系樹脂層とゴム層の積層体が開示され、ポリアミド系樹脂層とゴム層の接着性を改善するために、少なくともゴム層にN−アルコキシメチル尿素誘導体を含有させ、かつゴム層および/またはポリアミド系樹脂層にレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物を含有させている。
【0003】
特許文献2には、空気入りタイヤのインナーライナー層として用いることのできるポリアミド系樹脂層とゴム層の積層体が開示され、ポリアミド系樹脂層とゴム層の接着性を改善するために、少なくともゴム層にエポキシ化天然ゴムを配合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−239905号公報
【特許文献2】特表2009−528178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、空気入りタイヤのインナーライナー材として用いることができるポリアミド系樹脂のフィルムとゴム組成物の層との積層体において、ポリアミド系樹脂のフィルムとゴム組成物の層との界面の接着強度を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリアミド系樹脂のフィルムとゴム組成物の層との積層体であって、ポリアミド系樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物、ポリアミド樹脂にエラストマー成分を分散させた熱可塑性エラストマー、およびポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物にエラストマー成分を分散させた熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれた少なくとも1種であり、ゴム組成物が、ゴム成分100質量部およびポリアミド樹脂の溶解度パラメーター(SP値)との差の絶対値が3以下である溶解度パラメーターを有する可塑剤1〜20質量部を含むことを特徴とする積層体である。
【0007】
可塑剤は、好ましくは、スルホンアミド系可塑剤である。
ゴム組成物のゴム成分は、好ましくは、エポキシ化天然ゴムまたはハロゲン化ブチルゴムである。
ゴム組成物は、好ましくは、式(1)
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R、R、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、およびメチレンドナーを含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜80質量部であり、メチレンドナーの配合量/前記縮合物の配合量の比が1〜4である。
ポリアミド樹脂は、好ましくは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種である。
前記エラストマー成分は、好ましくは、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種である。
ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂は、好ましくは、ポリビニルアルコールおよびエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種である。
本発明は、また、タイヤ用であることを特徴とする前記の積層体である。
本発明は、また、前記の積層体を含むタイヤである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層体は、ポリアミド系樹脂のフィルムとゴム組成物の層との界面の接着強度に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の積層体は、ポリアミド系樹脂のフィルムとゴム組成物の層との積層体である。本発明において、ポリアミド系樹脂とは、ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物、ポリアミド樹脂にエラストマー成分を分散させた熱可塑性エラストマー、またはポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物にエラストマー成分を分散させた熱可塑性エラストマーをいう。
【0012】
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6(SP値:11.6)、ナイロン66(SP値:11.6)、ナイロン11(SP値:10.1)、ナイロン12(SP値:9.9)、ナイロン610(SP値:10.8)、ナイロン612(SP値:11.6)、ナイロン46(SP値:12.2)、ナイロン6/66(SP値:11.6)、ナイロン6/66/12(SP値:11.6)、ナイロン6/66/610(SP値:11.6)、ナイロンMXD6(SP値:11.6)、ナイロン6T(SP値:11.6)、ナイロン6/6T(SP値:11.6)、ナイロン9T(SP値:10.5)等が挙げられる。
なかでもナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0013】
ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。ポリエステル系樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミド酸/ポリブチレートテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル等が挙げられる。ポリニトリル系樹脂としては、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体等が挙げられる。ポリメタクリレート系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等が挙げられる。ポリビニル系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等が挙げられる。セルロース系樹脂としては、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース等が挙げられる。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。イミド系樹脂としては、芳香族ポリイミド(PI)等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン(PS)等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
なかでも、ポリビニルアルコールおよびエチレン−ビニルアルコール共重合体が、空気遮断性の点で、好ましい。
【0014】
ポリビニルアルコールは、ビニルアルコール単位(−CH−CH(OH)−)からなる重合体であるが、ビニルアルコール単位に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の構成単位を含有していてもよい。ポリビニルアルコールはポリ酢酸ビニルのケン化物であるが、そのケン化度は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。ケン化度が小さすぎると空気バリア性が低下する。ポリビニルアルコールは、市販されており、たとえば、日本合成化学工業株式会社から「ゴーセノール」(登録商標)の商品名で、株式会社クラレから「クラレポバール」の商品名で入手することができる。ケン化度が90%以上であるポリビニルアルコールとしては、日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノール」(登録商標)N300(ケン化度98%以上)、株式会社クラレ製「クラレポバール」PVA117(ケン化度98%以上)などがある。
【0015】
エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン単位(−CHCH−)とビニルアルコール単位(−CH−CH(OH)−)とからなる共重合体であるが、エチレン単位およびビニルアルコール単位に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の構成単位を含有していてもよい。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン単位の含有量すなわちエチレン含有量が好ましくは5〜55モル%、より好ましくは20〜50モル%のものを使用する。エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量が少なすぎるとポリアミド樹脂との相溶性に劣る。逆にエチレン含有量が多すぎると熱可塑性樹脂に含まれる水酸基の数が減るために接着力向上が期待できない。エチレン−ビニルアルコール共重合体はエチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物であるが、そのケン化度は、好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上である。エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度が小さすぎると空気バリア性が低下し、また熱安定性も低下する。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、市販されており、たとえば、日本合成化学工業株式会社からソアノール(登録商標)の商品名で、株式会社クラレからエバール(登録商標)の商品名で入手することができる。エチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体としては、日本合成化学工業株式会社製「ソアノール」(登録商標)H4815B(エチレン含有量48モル%)、A4412B(エチレン含有量42モル%)、DC3212B(エチレン含有量32モル%)、V2504RB(エチレン含有量25モル%)、株式会社クラレ製「エバール」(登録商標)L171B(エチレン含有量27モル%)、H171B(エチレン含有量38モル%)、E171B(エチレン含有量44モル%)などがある。
【0016】
ポリアミド系樹脂がポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物である場合は、その混合比率は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂が、好ましくは0〜400質量部、より好ましくは0〜100質量部である。
【0017】
エラストマー成分としては、ジエン系ゴムおよびその水添物、オレフィン系ゴム、含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、含イオウゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。ジエン系ゴムおよびその水添物としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)(高シスBRおよび低シスBR)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等が挙げられる。オレフィン系ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(変性EEA)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー等が挙げられる。含ハロゲンゴムとしては、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)や塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)等のハロゲン化ブチルゴム、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)などのハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合体、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)等が挙げられる。シリコーンゴムとしては、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム等が挙げられる。含イオウゴムとしては、ポリスルフィドゴム等が挙げられる。フッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコーン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム等が挙げられる。
なかでも、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体などのハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体が、空気遮断性の観点から、好ましい。
【0018】
ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合体は、イソオレフィンとパラアルキルスチレンの共重合体をハロゲン化することにより製造することができ、ハロゲン化イソオレフィンとパラアルキルスチレンの混合比、重合率、平均分子量、重合形態(ブロック共重合体、ランダム共重合体等)、粘度、ハロゲン原子等は、特に限定されず、熱可塑性エラストマー組成物に要求される物性等に応じて任意に選択することができる。ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合体を構成するイソオレフィンとしては、イソブチレン、イソペンテン、イソヘキセン等が例示できるが、好ましくはイソブチレンである。ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合体を構成するパラアルキルスチレンはパラメチルスチレン、パラエチルスチレン、パラプロピルスチレン、パラブチルスチレン等が例示できるが、好ましくはパラメチルスチレンである。ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合体を構成するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示できるが、好ましくは臭素である。特に好ましいハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合体は臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合体である。
臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合体は、式(4)で表される繰り返し単位
【0019】
【化2】
【0020】
を有するイソブチレンパラメチルスチレン共重合体を臭素化したものであり、典型的には式(5)で表される繰り返し単位
【0021】
【化3】
【0022】
を有するものである。臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合体は、エクソンモービル・ケミカル社(ExxonMobil Chemical Company)から、Exxpro(登録商標)の商品名で入手することができる。
【0023】
無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体としては、無水マレイン酸で変性されたエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などが挙げられる。無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体は、たとえば、酸無水物とペルオキシドをエチレン−α−オレフィン共重合体に反応させることにより製造することができる。また、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体は、市販されており、市販品を用いることができる。市販品としては、三井化学株式会社製無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体(タフマー(登録商標)MP−0620)、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(タフマー(登録商標)MP−7020)などがある。
【0024】
無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体は、たとえば、酸無水物とペルオキシドをエチレン−エチルアクリレート共重合体に反応させることにより製造することができる。また、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体は、市販されており、市販品を用いることができる。市販品としては、アルケマ社製無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(「リルサン」(登録商標)BESN O TL)などがある。
【0025】
エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体は、たとえば、グリシジルメタクリレートをエチレンアクリル酸メチル共重合体などに共重合させることにより製造することができる。また、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体は、市販されており、市販品を用いることができる。市販品としては、住友化学株式会社製エポキシ変性エチレンアクリル酸メチル共重合体(エスプレン(登録商標)EMA2752)などがある。
【0026】
ポリアミド系樹脂がポリアミド樹脂にエラストマー成分を分散させた熱可塑性エラストマーである場合は、エラストマー成分の混合比率は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、エラストマー成分が、好ましくは10〜900質量部、より好ましくは100〜250質量部である。
【0027】
ポリアミド系樹脂がポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物にエラストマー成分を分散させた熱可塑性エラストマーである場合は、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂の混合比率は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂が、好ましくは0〜400質量部、より好ましくは0〜100質量部であり、エラストマー成分の混合比率は、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物100質量部に対し、エラストマー成分が、好ましくは10〜900質量部、より好ましくは100〜250質量部である。
【0028】
ポリアミド系樹脂は、最も好ましくは、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物にエラストマー成分を分散させた熱可塑性エラストマーである。ナイロン6、ナイロン66およびナイロン6/66からなる群から選ばれた少なくとも1種のポリアミド樹脂と、ポリビニルアルコールおよびエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のエラストマー成分との組み合わせが特に好ましい。
【0029】
ポリアミド系樹脂には、加工性、分散性、耐熱性、酸化防止性などの改善のために、充填剤、補強剤、加工助剤、安定剤、酸化防止剤などの、樹脂組成物に一般的に配合される配合剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で、配合してもよい。可塑剤は、可塑剤の蒸散、空気遮断性および耐熱性の観点から、配合しない方がよいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、配合してもよい。
【0030】
ゴム組成物のゴム成分としては、ジエン系ゴムおよびその水添物、オレフィン系ゴム、含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、含イオウゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。ジエン系ゴムおよびその水添物としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)(高シスBRおよび低シスBR)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等が挙げられる。オレフィン系ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(変性EEA)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー等が挙げられる。含ハロゲンゴムとしては、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)や塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)等のハロゲン化ブチルゴム、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)等が挙げられる。シリコーンゴムとしては、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム等が挙げられる。含イオウゴムとしては、ポリスルフィドゴム等が挙げられる。フッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコーン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム等が挙げられる。なかでも、ナイロン樹脂との反応性の観点から、エポキシ化天然ゴム、ハロゲン化ブチルゴムが好ましい。2種以上のゴム成分を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
エポキシ化天然ゴムは、耐油性に富み、耐ガス透過性に優れ、ダンピング特性が大きい。エポキシ化天然ゴムは、天然ゴムラテックスに過酢酸を反応させることにより製造することができ、エポキシ化度0〜100モル%までの任意の濃度のものが得られる。市販品としては、エポキシ含量25モル%のもの(ENR−25)およびエポキシ含量50モル%のもの(ENR−50)がある。特に、ENR−50は、優れた耐ガス透過性を示すので、本発明において好ましく用いることができる。
【0032】
ハロゲン化ブチルゴムは、イソブチレンと少量のイソプレンをフリーデルクラフト触媒を用いて重合させて得られるブチルゴムを、炭化水素溶媒に溶解してハロゲンを導入してハロゲン化することにより製造することができる。ハロゲン化ブチルゴムは、優れた耐ガス透過性を示すので、本発明において好ましく用いることができる。
【0033】
ゴム組成物に配合される可塑剤は、ポリアミド樹脂の溶解度パラメーター(SP値)との差の絶対値が3以下である溶解度パラメーターを有するものである。すなわち、
|可塑剤のSP値−ポリアミド樹脂のSP値|≦3
溶解度パラメーターが上記の要件を満足する可塑剤であれば、特に限定されるものではないが、使用することができる可塑剤の例としては、N−ブチルベンゼンスルホンアミド(SP値:10.5)、トリクレジルホスフェート(SP値:9.6)、ビス(ブチルジグリコール)アジペート(SP値:9.5)、ジイソデシルフタレート(SP値:9.0)などの疎水性可塑剤が挙げられる。なかでも、スルホンアミド系であるN−ブチルベンゼンスルホンアミドが好ましい。
ポリアミド樹脂がナイロン6(SP値:11.6)、ナイロン66(SP値:11.6)、ナイロン6/66(SP値:11.6)の場合には、可塑剤はN−ブチルベンゼンスルホンアミド(SP値:10.5)であることが特に好ましい。
【0034】
本発明によれば、ゴム組成物の層に、ポリアミド樹脂と溶解度パラメーター(SP値)が近い可塑剤を配合したので、ポリアミド系樹脂フィルムとゴム組成物の層とを積層したときに、ポリアミド系樹脂フィルムとゴム組成物の層との界面において可塑剤がゴム組成物の層からポリアミド系樹脂フィルムに移行し、ポリアミド系樹脂フィルムの表面が柔軟化され、ポリアミド系樹脂フィルムの表面が柔軟化された状態で積層体を加硫すると、界面の接着強度に優れた積層体が得られる。
【0035】
ポリアミド系樹脂には、通常、成形性改善等の目的で可塑剤が配合されるが、空気入りタイヤの最内面に可塑剤を配合したポリアミド系樹脂フィルムが存在すると、最内面のポリアミド系樹脂フィルムから可塑剤が蒸散、あるいは表面に浮き出る事で生産ラインの汚れを引き起こすという問題もある。そこで、ポリアミド系樹脂フィルムに可塑剤を配合しないまたは可塑剤の配合量を減らすことが好ましい。しかし、可塑剤を配合しないまたは可塑剤の配合量を減らすと、ポリアミド系樹脂フィルムとゴム組成物の層との界面の接着強度が低下する。本発明は、ゴム組成物の層に、ポリアミド樹脂と溶解度パラメーター(SP値)が近い可塑剤を配合し、界面の接着強度を向上させたので、ポリアミド系樹脂フィルムに可塑剤を配合しないまたは可塑剤の配合量を減らすことができ、その結果、可塑剤の蒸散をなくすまたは抑えることができるという効果も奏する。
【0036】
ゴム組成物は、さらに、式(1)
【0037】
【化4】
【0038】
(式中、R、R、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、およびメチレンドナーを含むことが好ましい。この縮合物およびメチレンドナーを含むことにより、ポリアミド系樹脂のフィルムとゴム組成物の層との界面の接着強度をさらに向上させることができる。
【0039】
式(1)で表される化合物の1つの好ましい例は、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが炭素原子数が1〜8個のアルキル基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であるものである。式(1)で表される化合物の好ましい具体例の1つはクレゾールである。
式(1)で表される化合物のもう1つの好ましい例は、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが水酸基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であるものである。式(1)で表される化合物の好ましい具体例のもう1つはレゾルシンである。
【0040】
式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物としては、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体等が挙げられる。また、これらの縮合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、変性されていてもよい。たとえば、エポキシ化合物で変性された変性レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体も本発明に使用することができる。これらの縮合物は、市販されており、本発明に市販品を使用することができる。
【0041】
式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物は、好ましくは、式(2)または式(3)で表される化合物である。
【0042】
【化5】
【0043】
式中、nは整数であり、好ましくは1〜5の整数である。
【0044】
【化6】
【0045】
式中、mは整数であり、好ましくは1〜3の整数である。
【0046】
メチレンドナーとは、加熱等によりホルムアルデヒドを発生する塩基化合物をいい、たとえば、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタメチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、メチロールメラミン、エーテル化メチロールメラミン、変性エーテル化メチロールメラミン、エステル化メチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサキス(エトキシメチル)メラミン、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン、N,N′,N″−トリメチル−N,N′,N″−トリメチロールメラミン、N,N′,N″−トリメチロールメラミン、N−メチロールメラミン、N,N′−ビス(メトキシメチル)メラミン、N,N′,N″−トリブチル−N,N′,N″−トリメチロールメラミン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。なかでも、ホルムアルデヒドの放出温度の観点から、変性エーテル化メチロールメラミンが好ましい。
【0047】
式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物(以下、単に「縮合物」ともいう。)の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部であり、より好ましくは1〜10質量部である。縮合物の配合量が少なすぎると、良好な接着を得るのに必要な熱量、時間が増大するため加硫効率が悪化し、逆に多すぎると、得られるゴム組成物の加硫伸びが損なわれ、破断しやすくなる。
【0048】
メチレンドナーの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜80質量部であり、より好ましくは1〜40質量部である。メチレンドナーの配合量が少なすぎると、ゴム組成物系内における樹脂反応にドナーが消費されて界面反応での反応が進まなくなり接着が悪化する。逆に多すぎると、ゴム組成物系内での反応が促進されすぎたり、被着対象樹脂系内での架橋反応を誘発して接着が悪化する。
【0049】
メチレンドナーの配合量/縮合物の配合量の比は、好ましくは1〜4質量部であり、より好ましくは1〜3である。この比が小さすぎると、ゴム組成物系内における樹脂反応にドナーが消費されて界面反応での反応が進まなくなり接着が悪化する。逆に大きすぎると、ゴム組成物系内での反応が促進されすぎたり、被着対象樹脂系内での架橋反応を誘発して接着が悪化する。
【0050】
ゴム組成物は、通常、加硫剤を含む。加硫剤としては、無機系加硫剤と有機系加硫剤があり、無機系加硫剤としては、硫黄、一塩化硫黄、セレン、テルル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、一酸化鉛等が挙げられ、有機系加硫剤としては、含硫黄有機化合物、ジチオカルバミン酸塩、オキシム類、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ジニトロソ化合物、変性フェノール樹脂、ポリアミン、有機過酸化物等が挙げられる。なかでも、硫黄、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)−ベンゼンのような有機過酸化物、臭素化アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合体のような変性フェノール樹脂、酸化亜鉛、含硫黄有機化合物が好ましい。
【0051】
ゴム組成物には、さらに、補強剤、加硫促進助剤、加硫促進剤、スコーチ防止剤、老化防止剤、素練促進剤、有機改質剤、粘着付与剤など、一般にタイヤの製造において使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0052】
ポリアミド系樹脂のフィルムの厚みは、限定するものではないが、好ましくは0.03〜0.40mm、より好ましくは0.05〜0.30mmである。ポリアミド系樹脂フィルムの厚みが薄すぎると所望のガスバリア性能が得られず、逆に厚すぎるとフィルムをタイヤ内面に保持する事が困難となる。
【0053】
ゴム組成物の層の厚みは、限定するものではないが、好ましくは0.15〜2.00mm、より好ましくは0.4〜1.5mmである。ゴム層の厚みが薄すぎると接着に必要となる可塑材量が不足するため所望の接着力が得られず、逆に厚すぎるとタイヤの重量増を引き起こす。
【0054】
ポリアミド系樹脂のフィルムは、公知の方法により製造することができる。限定するものではないが、たとえば、ポリアミド系樹脂を、インフレーション成形装置、Tダイ押出機等の成形装置でフィルム状に成形して、ポリアミド系樹脂フィルムを作製する。
【0055】
本発明の積層体は、ポリアミド系樹脂のフィルムにゴム組成物の層を積層することによって製造することができる。限定するものではないが、たとえば、ゴム組成物を、Tダイ押出機等で、前記のポリアミド系樹脂フィルムの上に押出すと同時に積層して、積層体を製造することができる。
【0056】
本発明の積層体は、タイヤ用、特に空気入りタイヤ用に用いることができる。
本発明のタイヤは、前記の積層体を含む空気入りタイヤであり、特に前記の積層体をインナーライナー材として含む空気入りタイヤである。
【0057】
本発明のタイヤは、常法により製造することができる。たとえば、タイヤ成形用ドラム上に、インナーライナー材として本発明の積層体を、ポリアミド系樹脂フィルム側がタイヤ成形用ドラムの方を向くように置き、その上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常のタイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、成形後、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとし、次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0058】
(1)ゴム組成物の調製
次の原料を表1に示す配合比率で配合し、9種類のゴム組成物を調製した。
スチレンブタジエンゴム: 日本ゼオン株式会社製「Nipol 1502」
天然ゴム: SIR−20
カーボンブラック: 東海カーボン株式会社製「シーストV」
ステアリン酸: 工業用ステアリン酸
酸化亜鉛: 正同化学工業株式会社製「亜鉛華3号」
変性レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体: 田岡化学工業株式会社製「スミカノール620」
メチレンドナー: 変性エーテル化メチロールメラミン(田岡化学工業株式会社製「スミカノール507AP」)
硫黄: 5%油展処理硫黄
加硫促進剤: ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーDM」)
可塑剤(1): N−ブチルベンゼンスルホンアミド(大八化学工業株式会社製「BM−4」、SP値:10.5)
可塑剤(2): 芳香族系プロセスオイル(昭和シェル石油株式会社製「デソレックス3号」、SP値:8.5)
【0059】
(2)ポリアミド系樹脂フィルムの作製
臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(エクソンモービルケミカル社製「Exxpro」(登録商標)3035)100質量部、酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製「亜鉛華3号」)0.5質量部、ステアリン酸(工業用ステアリン酸)0.2質量部、ステアリン酸亜鉛(日油株式会社製「ステアリン酸亜鉛」)1質量部、ナイロン6/66(宇部興産株式会社製「UBEナイロン」5033B、SP値:11.6)100質量部、および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(アルケマ社製「リルサン」(登録商標)BESN O TL)10質量部を配合してポリアミド系樹脂組成物を調製し、そのポリアミド系樹脂組成物をインフレーション成形装置で成形し、0.2mmのポリアミド系樹脂フィルムを作製した。
【0060】
(3)積層体の作製
上記(2)で作製したポリアミド系樹脂フィルムの上に、上記(1)で調製したゴム組成物をそれぞれ0.7mmの厚さで押出積層し、9種類の積層体を作製した。
【0061】
(4)積層体の評価
作製した積層体について、接着性および貯蔵性を評価した。評価結果を表1に示す。なお、各評価項目の評価方法は次のとおりである。
【0062】
[接着性]
積層体の試料を、加硫後、幅25mmに切断し、その短冊状試験片の剥離強度をJIS−K6256に従い測定した。測定された剥離強度(N/25mm)を次の基準で指数化した。指数1以外はすべて良好の範囲である。
指数 剥離強度(N/25mm)
1 25未満
2 25以上 50未満
3 50以上 75未満
4 75以上100未満
5 100以上200未満
6 200以上
【0063】
[貯蔵性]
「貯蔵性」とは、JIS−T9233の規定に準拠し、ピクマタックテスタ((株)東洋精機製作所製)を用いて測定されたタック値により評価した。指数1以外はすべて良好の範囲である。
指数 タック(g)
1 200未満
2 200以上 400未満
3 400以上 600未満
4 600以上 800未満
5 800以上 1000未満
【0064】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の積層体は、空気入りタイヤのインナーライナー材として好適に利用することができる。