(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
静止画像の撮影時に手振れ(振動)があったとしても、結像面上での像ブレを防いで鮮明な撮影ができるようにしたカメラモジュール駆動装置が、従来から種々提案されている。
【0003】
例えば、本発明者は他の一人と共同で、駆動手段(アクチュエータ)として、内枠の底部と外枠の底部とにボイスコイルモータを使用した「手振れ補正装置」を提案した(特許第4626780号公報(特許文献1)参照)。
【0004】
特許文献1に開示された手振れ補正装置は、レンズと撮像素子とを保持するカメラモジュールを、光軸に直交し、かつ互いに交差する第1の軸と第2の軸との回りに揺動させることにより、手振れを補正するようにしたものである。手振れ補正装置は、カメラモジュールを内部で固定する内枠と、この内枠をその外側から第1の軸の回りに揺動自在に支持する中枠と、この中枠をその外側から第2の軸の回りに揺動自在に支持する外枠と、内枠の底部と外枠の底部とに設けられたボイスコイルモータとを有する。ボイスコイルモータは、内枠および中枠を、それぞれ、第1の軸および第2の軸の回りで揺動させるように駆動する。
【0005】
また、特開2011−27947号公報(特許文献2)は、狭いスペース内に振れ補正用の可動モジュール駆動機構を設けることができる「光学ユニット」を開示している。特許文献2に開示された光学ユニットは、固定体と、光学素子を保持する可動モジュールと、この可動モジュールが固定体に対して変位可能に支持された弾性部材と、可動モジュールを固定体に対して揺動させる補正用の可動モジュール駆動機構と、を有する。可動モジュール駆動機構は、電磁石と被駆動部材とを有する。電磁石は、可動モジュールおよび固定体のうちの一方側において光の入出射側とは反対側の端部に設けられている。被駆動部材は、可動モジュールおよび固定体のうちの他方側において電磁石に対して光軸方向で対向する位置に設けられ、電磁石との間に吸引力および反発力のうちの少なくとも一方を発生させる。
【0006】
この特許文献2に開示された光学ユニットでは、コイルと永久磁石との間のフレミングの左手の法則に基づいて発生する駆動力と違って、電磁石を用いているため、電磁石と被駆動部材とについては光軸方向で対向させればよい。このため、可動モジュール駆動機構は、光動モジュールの周りで大きな空間を占有しないので、光学ユニットの小型化を図ることができる。
【0007】
また、特許文献2に開示された光学ユニットにおいて、ジャイロスコープは、可動モジュールの被写体側とは反対側の端部の略中央部分に固定されている。電磁石として、コイルの内側に鉄芯を備えていない空芯電磁石か、或いはコイルの内側に鉄芯を備える鉄心電磁石を使用している。また、被駆動部材として、永久磁石か、或いは磁性体を使用している。被駆動部材として永久磁石を使用する場合、永久磁石は、可動モジュールの被写体側とは反対側の端部に、ヨークの平板部を介して取り付けられている。
【0008】
さらに、特開2012−103376号公報(特許文献3)は、オートフォーカスモジュールの手ブレ防止傾斜補正構造を開示している。この特許文献3に開示されたオートフォーカスモジュールの手ブレ防止傾斜補正構造は、オートフォーカスモジュールと、フレームと、補正駆動部と、を包含する。オートフォーカスモジュールは、その内部に取り付けられたレンズセットを駆動して光線進入方向に上下移動させて、フォーカス動作を実行する。フレームは、オートフォーカスモジュールを被覆し、このフレームの上端に支持弾性部材が取り付けられている。支持弾性部材は、オートフォーカスモジュールの上端に接続されてオートフォーカスモジュールをフレーム内で宙づり状態に支持する。これにより、支持弾性部材は、オートフォーカスモジュールを支持弾性部材の中心を支点として、前後、左右に揺動、傾斜動作させる。補正駆動部は、オートフォーカスモジュールの下端に配設されて、オートフォーカスモジュールをフレーム内で駆動して左右方向或いは前後方向に傾斜動作を行わせ、手の震えが形成する画像オフセットを補正する。
【0009】
この特許文献3では、支持弾性部材は外周固定部、第1可動部、第2可動部を包含する。外周固定部はフレームの上端に固定される。第1可動部は外周固定部の内周縁の内に設けられ、二組の対称な第1支点で外周固定部に接続される。第2可動部は第1可動部の内周縁の内に設けられ、二組の対称な第2支点で、第1支点に対して90度角を成す位置において、第1可動部に接続される。第2可動部がオートフォーカスモジュールの上端に接続される。
【0010】
また、特許文献3において、補正駆動部は、補正磁石アセンブリ、補正コイルアセンブリ、移動量検出アセンブリを包含する。補正磁石アセンブリの代わりに、オートフォーカスモジュール中の磁石を使用してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に開示された手振れ補正装置では、カメラモジュールの外側に、内枠、中枠、外枠を有するので、装置が大型になってしまうという問題がある。
【0013】
特許文献2に開示された光学ユニットでは、電磁石を構成するコイルが、被駆動部材(永久磁石又は磁性体)と対向しており、その周囲をヨークなどの磁性部材で覆われることなく、露出している。また、被駆動部材である永久磁石も、ヨークの平板部に取り付けられているだけである。そのため、コイルを通電することにより生成される磁束(漏洩磁束)により、可動モジュールの磁気回路(レンズ駆動用マグネット、レンズ駆動用コイル)に悪影響を与える(磁気干渉を与える)恐れがある。
【0014】
また、特許文献2に開示された光学ユニットにおいて、被駆動部材は、可動モジュールの端部に直接取り付けられている(永久磁石はヨークの平板部を介して可動モジュールの端部に取り付けられている)。その為、寸法が一定の専用の可動モジュールにしか適用できない。寸法(サイズ)が異なる別の可動モジュールに適用させるために、それに対応して、電磁石や被駆動部の形状や寸法(サイズ)等を設計変更し直す必要がある。
【0015】
特許文献3に開示された手ブレ防止傾斜補正構造でも、補正駆動部を構成する補正磁石アセンブリや補正用コイルアセンブリは、その周囲をヨークなどの磁性部材で覆われることなく、露出している。したがって、上記特許文献2と同様に、補正用コイルアセンブリから発生した電磁場が、オートフォーカスモジュールのボイスコイルモータ(VCM)駆動構造に悪影響を与える(磁気干渉を与える)恐れがある。
【0016】
また、特許文献3に開示された手ブレ防止傾斜補正構造では、補正磁石アセンブリは、オートフォーカスモジュールの底部に、直接配設されると共に、支持弾性部材の外周固定部はフレームの上端に固定されている。その為、寸法が一定の専用のオートフォーカスモジュールにしか適用できない。寸法(サイズ)が異なる別のオートフォーカスモジュールに適用させるために、それに対応して、補正駆動部(補正磁石アセンブリ、補正コイルアセンブリ)の形状、寸法等や支持弾性部材の形状、寸法等を設計変更し直す必要がある。
【0017】
したがって、本発明の解決課題は、カメラモジュールの磁気回路(ボイスコイルモータ)への悪影響を少なくすることができる、カメラモジュール駆動装置を提供することにある。
【0018】
本発明の他の解決課題は、異なるサイズのカメラモジュールに対して大幅な設計変更をすることなく、容易に対応可能なカメラモジュール駆動装置を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、説明が進むにつれて明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、レンズ(L1,L2,L3)と撮像素子(28)とを保持するカメラモジュール(20)を、光軸(O)に関して傾斜させることにより、手振れを補正するようにしたカメラモジュール駆動装置(30)であって、カメラモジュール(20)の少なくとも互いに対向する両側面を保持しつつ案内するモジュールガイド(32)と、カメラモジュール(20)から光軸(O)方向に離間して配置された固定部材(34)と、固定部材(34)の中央部に設けられ、固定部材(34)に対してカメラモジュール(20)を傾斜可能に支持する支持弾性部材(36)と、カメラモジュール(20)の下端外周部で、モジュールガイド(32)の底部と固定部材(34)の外周部との間に設けられ、カメラモジュール(20)を光軸(O)に関して傾斜させるように駆動するボイスコイルモータ(40)と、を有し、ボイスコイルモータ(40)は、支持弾性部材(36)の外周で、光軸(O)に対して直交し、かつ互いに交差する位置で、固定部材(34)に設けられた少なくとも2個のチルトコイル(42)と、モジュールガイド(32)の底部側に配置された環状のヨーク(48)であって、少なくとも2個のチルトコイル(42)の周囲を覆うように突出する複数の突出片(482)を持つ、ヨーク(48)と、このヨーク(48)の下面側に、少なくとも2個のチルトコイル(42)の中央部へ突出して配置された少なくとも2個の磁石(46)と、から構成されることをカメラモジュール駆動装置(30)が得られる。
【0021】
上記本発明によるカメラモジュール駆動装置(30)において、少なくとも2個のチルトコイル(42)は、固定部材(34)に埋め込んで設けられてよい。この場合、固定部材(34)は、ヨーク(48)の複数の突出片(482)が遊嵌する複数の溝部(34a)を有する。
【0022】
また、上記本発明によるカメラモジュール駆動装置(30)において、支持弾性部材(36)は、例えば、固定部材(34)の中央部に固定される中央固定部(362)と、この中央固定部の外周縁近傍に設けられ、光軸(O)を中心に点対称な2箇所の第1の支点(364a)で中央固定部に接続された、第1の可動部(364)と、この第1の可動部の外周縁近傍に設けられ、第1の支点に対して90度の角度位置にありかつ光軸(O)を中心に点対称な2箇所の第2の支点(366a)で第1の可動部に接続された第2の可動部(366)と、を有する。
【0023】
さらに、上記本発明によるカメラモジュール駆動装置(30)において、カメラモジュール(20)の振れを検出する手振れセンサ(60)を更に備えてよい。手振れセンサ(60)は、モジュールガイド(32)の外壁に取付けられてよい。手振れセンサは、例えば、カメラモジュール(20)の角速度を検出するジャイロセンサ(60)から成ってよい。
【0024】
また、本発明によれば、上記カメラモジュール駆動装置(30)を搭載して成るカメラ付き携帯端末(100)が得られる。
【0025】
尚、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、これらに限定されないのは勿論である。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、ヨークがチルトコイルの周囲を覆うように突出する複数の突出片を持っているので、カメラモジュールの磁気回路(ボイスコイルモータ)への悪影響を少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0029】
図1乃至
図4を参照して、本発明の一実施の形態によるカメラモジュール駆動装置30を含むカメラユニット10について説明する。
図1はカメラユニット10の外観斜視図である。
図2は
図1に示したカメラユニット10の縦断面図である。
図3は
図1に示したカメラユニット10を斜め上方から視た分解斜視図である。
図4は
図1に示したカメラユニット10を斜め下方から視た分解斜視図である。
【0030】
ここでは、
図1乃至
図4に示されるように、直交座標系(X,Y,Z)を使用している。
図1乃至
図4に図示した状態では、直交座標系(X,Y,Z)において、X軸方向は前後方向(奥行方向)であり、Y軸方向は左右方向(幅方向)であり、Z軸方向は上下方向(高さ方向)である。そして、
図1乃至
図4に示す例においては、上下方向Zがレンズの光軸O方向である。尚、本実施の形態において、X軸方向(前後方向)は第1の方向とも呼ばれ、Y軸方向(左右方向)は第2の方向とも呼ばれる。また、X軸は第1の軸とも呼ばれ、Y軸は第2の軸とも呼ばれ、Z軸は第3の軸とも呼ばれる。
【0031】
但し、実際の使用状況においては、光軸O方向、すなわち、Z軸方向が前後方向となる。換言すれば、Z軸の上方向が前方向となり、Z軸の下方向が後方向となる。
【0032】
また、以下の説明では、各方向の振れのうち、X軸(第1の軸)周りの回転はピッチング(縦揺れ)に相当し、Y軸(第2の軸)周りの回転はヨーイング(横揺れ)に相当し、Z軸(第3の軸)周りの回転はローリングに相当する。
【0033】
カメラユニット10は、カメラモジュール20とカメラモジュール駆動装置30とから構成される。カメラモジュール駆動装置30は、手振れ補正装置とも呼ばれる。カメラモジュール20は、後述するレンズと撮像素子とを保持する。図示のカメラモジュール20は、オートフォーカスレンズ駆動ユニットを含む。
【0034】
オートフォーカスレンズ駆動ユニットは、レンズ可動部とレンズ駆動部とから構成される。レンズ駆動部は、レンズ可動部を光軸O方向に摺動可能に支持しながら、レンズ可動部を駆動する。レンズ駆動部は、ボイスコイルモータ(VCM)から構成される。
【0035】
カメラモジュール20は、モジュール筐体22を備える。モジュール筐体22の上面は、レンズの光軸Oを中心軸とした円筒部22aを有する。一方、モジュール筺体22の下部中央部には、基板(図示せず)に配置された撮像素子(後述する)が搭載される。この撮像素子は、レンズ(後述する)により結像された被写体像を撮像して電気信号に変換する。撮像素子は、例えば、CCD(charge coupled device)型イメージセンサ、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサ等により構成される。
【0036】
カメラモジュール駆動装置(手振れ補正装置)30は、カメラモジュール20を、光軸Oに直交し、かつ互いに交差する第1の軸(X軸)と第2の軸(Y軸)との回りに揺動傾斜させることにより、手振れを補正するためのものである。図示の例では、第1の軸(X軸)はピッチ方向に延在するピッチ軸であり、第2の軸(Y軸)はヨー方向に延在するヨー軸である。
【0037】
カメラモジュール駆動装置(手振れ補正装置)30は、一対のモジュールガイド32と、固定部材(ベース)34と、支持弾性部材36と、ストッパ38とを含む。一対のモジュールガイド32は、カメラモジュール20の互いに対向する両側面を保持しつつ案内する。一対のモジュールガイド32は、接着剤などによって、モジュール筐体22の外壁に固定される。固定部材(ベース)34は、カメラモジュール20から光軸O方向に(カメラモジュール20の被写体側とは反対側に)離間して配置されている。支持弾性部材36は、固定部材(ベース)34の中央部に設けられ、固定部材(ベース)34に対してカメラモジュール20を揺動傾斜可能に支持する。ストッパ38は、後述するように、支持弾性部材36を固定部材(ベース)34に取り付けるためのものである。
【0038】
尚、ベース(固定部材)34は、後述するカメラ付き携帯端末100(
図8)の筐体に固定されている。
【0039】
カメラモジュール駆動装置(手振れ補正装置)30は、カメラモジュール20の下端外周部で、一対のモジュールガイド32の底部と固定部材(ベース)34の外周部との間に設けられたボイスコイルモータ(VCM)40(後述する)を更に備えている。ボイスコイルモータ40は、カメラモジュール20(一対のモジュールガイド32)を光軸Oに関して、第1の軸(ピッチ軸)Xおよび第2の軸(ヨー軸)Yの回りで揺動傾斜させるように駆動する。
【0040】
次に、
図3および
図4を参照して、カメラモジュール駆動装置(手振れ補正装置)30に使用されるボイスコイルモータ(VCM)40について説明する。
【0041】
ボイスコイルモータ(VCM)40は、固定部材(ベース)34に設けられた4個のチルトコイル42と、一対のモジュールガイド32の底部に取付けられた矩形環状のトッププレート44と、このトッププレート44に設けられた4個の直方体形状の永久磁石46と、モジュールガイド32とトッププレート44との間に配置されたヨーク48と、を有する。
【0042】
詳述すると、
図3に示されるように、4個のチルトコイル42は、固定部材(ベース)34の中心軸Cの回りに回転対称に設けられた、第1乃至第4のチルトコイル42−1、42−2、42−3、および42−4から成る。換言すれば、第1乃至第4のチルトコイル42−1〜42−4は、支持弾性部材36の外周で、光軸Oに対して直交し、かつ互いに交差する位置で、固定部材(ベース)34に設けられている。第1乃至第4のチルトコイル42−1〜42−4は、固定部材(ベース)34に埋め込んで設けられている。その為、固定部材(ベース)34は、第1乃至第4のチルトコイル42−1〜42−4をそれぞれ収容する第1乃至第4の凹部34−1、34−2、34−3、および34−4を持つ。
【0043】
尚、図示の例では、第2および第4の凹部34−2および34−4には、それぞれ、貫通穴34−2aおよび貫通穴34−4aが穿設されている。そして、これら貫通穴34−2aおよび貫通穴34−4aに隣接して、固定部材(ベース)34から、それぞれ、フック部34−2bおよび34−4bが下方へ突出している。
【0044】
一方、
図4に示されるように、4個の永久磁石46は、トッププレート44に、それぞれ、第1乃至第4のチルトコイル42−1〜42−4の中央部へ突出して設けられた、第1乃至第4の永久磁石46−1、46−2、46−3、および46−4から成る。
【0045】
トッププレート44は、後述するヨーク48の厚みの分だけ凹んだリング形状の凹部を有する。このリング形状の凹部は、光軸Oより前側に設けられた第1の凹部44−1と、光軸Oより右側に設けられた第2の凹部44−2と、光軸Oよりも後側に設けられた第3の凹部44−3と、光軸Oよりも左側に設けられた第4の凹部44−4とから成る。第1乃至第4の凹部44−1〜44−4には、それぞれ、上記第1乃至第4の永久磁石46−1〜46−4が嵌入される矩形形状の第1乃至第4の嵌入穴44−1a、44−2a、44−3a、および44−4aが穿設されている。
【0046】
図3に示されるように、第1のチルトコイル42−1と第3のチルトコイル42−3は、光軸Oからピッチ方向Xに互いに離間して配置されている。第2のチルトコイル42−2と第4のチルトコイル42−4は、光軸Oからヨー方向Yに互いに離間して配置されている。
【0047】
第1のチルトコイル42−1と第3のチルトコイル42−3との組み合わせは、カメラモジュール20を第2の軸(ヨー軸)Yの回りに揺動傾斜するために使用されるので、ヨーイング用コイルとも呼ばれる。一方、第2のチルトコイル42−2と第4のチルトコイル42−4との組み合わせは、カメラモジュール20を第1の軸(ピッチ軸)Xの回りに揺動するために使用されるので、ピッチング用コイルとも呼ばれる。
【0048】
第1乃至第4のチルトコイル42−1〜42−4に電流が流れていない状態(非通電時)では、カメラモジュール20は、後述する支持弾性部材36の復元力(復帰力)によって、その光軸Oと固定部材(ベース)34の中心軸Cとが一致するように、支持される。
【0049】
また、ヨーク48は、第1乃至第4のチルトコイル42−1〜42−4の周囲を覆うように突出する8個の突出片482を持つ。これら8個の突出片482は、オートフォーカス対応カメラモジュール20に磁界の影響を与えないためのものである。トッププレート44は、これら8個の突出片482のうち、内側の4個の突出片482が貫通する4個の貫通穴44−1b、44−2b、44−3b、および44−4b(
図5参照)を有する。そして、固定部材(ベース)34は、ヨーク48の8個の突出片482がそれぞれ遊嵌する8個の溝部34aを有する。
【0050】
一対のモジュールガイド32の底部には、下方へ突出する4個の突起部322が設けられている。ヨーク48は、その四隅に、これら4個の突起部322が挿通する4つの挿通穴48aを持つ。また、トッププレート44も、その四隅に、これら4個の突起部322が嵌入される4つの嵌入穴44aを持つ。したがって、一対のモジュールガイド32の4個の突起部322は、ヨーク48の4つの挿通穴48aを挿通した後、トッププレート44の4つの嵌入穴44aに嵌入され、それらの先端を熱溶着することによって、一対のモジュールガイド32とヨーク48とトッププレート44とが取付けられる。
【0051】
次に、
図3及び
図4に加えて
図5及び
図6をも参照して、支持弾性部材36の構造とその接続(取付け)構造について説明する。
図5は、カメラユニット10から、カメラモジュール20、一対のモジュールガイド32、ヨーク48、4個の永久磁石46、および4個のチルトコイル42を削除(省略)して示した平面図である。
図6は、
図5の線VI-VIに関する断面図である。
【0052】
最初に、支持弾性部材36の構造について説明する。
【0053】
図3に示されるように、支持弾性部材36は、中央固定部362と、第1の可動部364と、第2の可動部366とを有する。中央固定部362は、固定部材(ベース)34の中央部に後述するように固定される。第1の可動部364は、中央固定部362の外周縁近傍に設けられ、二組の対称な第1の支点364aで中央固定部362に接続されている。第2の可動部366は、第1の可動部364の外周縁近傍に設けられ、二組の第2の支点366aで第1の可動部364に接続されている。二組の第2の支点366aは、第1の支点364aに対して90度の角度位置にある。また、第2の可動部366は、トッププレート44に後述のように取付けられる。したがって、支持弾性部材36は、いわゆる、ジンバルの構造をしている。
【0054】
次に、支持弾性部材36の接続(取付け)構造について説明する。
【0055】
図3に示されるように、固定部材(ベース)34は、その中央部で、上方へ突出する2個の突起部342を持つ。支持弾性部材36の中央固定部362は、これら2個の突起部342が挿通する2つの貫通穴362aを持つ。一方、ストッパ38は、固定部材(ベース)34の2個の突起部342が嵌入される、逆円錐台形状の2つの嵌入穴38aを持つ。従って、固定部材(ベース)34の2個の突起部342を、支持弾性部材36の中央固定部362の2つの貫通穴362aを挿通させ、ストッパ38の2つの嵌入穴38aを嵌入した後、熱溶着することによって、支持弾性部材36の中央固定部362は固定部材(ベース)34の中央部に堅固に固定される。
【0056】
一方、
図4に示されるように、トッププレート44は、その内周縁の四隅で、下方へ突出する4個の突起部442を持つ。支持弾性部材36の第2の可動部366は、これら4個の突起部442が嵌入される4つの嵌入穴366bを持つ。従って、トッププレート44の4個の突起部442を、支持弾性部材36の第2の可動部366の4つの嵌入穴366bを嵌入した後に、それらの先端を熱溶着することによって、支持弾性部材36の第2の可動部366はトッププレート44に取付けられる。
【0057】
したがって、カメラモジュール20と一対のモジュールガイド32とヨーク48とトッププレート44と4個の永久磁石46との組み合わせは、可動部(20,32,48,44,46)として働く。一方、固定部材(ベース)34と4個のチルトコイル42とストッパ38との組み合わせは、固定部(34,42,38)として働く。そして、支持弾性部材(ジンバル)36は、固定部(34,42,38)に対して可動部(20,32,48,44,46)を、その中心点36Cを支点として揺動傾斜自在に支持する支持部材として働く。
【0058】
図示のカメラモジュール駆動装置(手振れ補正装置)30は、一対のモジュールガイド32の一方(図示の例では、右側のモジュールガイド)の外壁に取付けられた手振れセンサ60を更に備えている。手振れセンサ60は、カメラモジュール20の振れを検出するためのものである。図示の手振れセンサ60は、カメラモジュール20の角速度を検出ためのジャイロセンサから成る。
【0059】
カメラモジュール20の裏面には、第1のフレキシブルプリント基板(FPC)71が取付けられている。この第1のフレキシブルプリント基板(FPC)71は、カメラモジュール20のオートフォーカスレンズ駆動ユニットのレンズ駆動部を構成する駆動コイルへ給電したり、撮像素子で撮像された電気信号を外部へ伝送するためのものである。
【0060】
また、手振れセンサ(ジャイロセンサ)60は、第2のフレキシブルプリント基板(FPC)72の一端部を介してモジュールガイド32の外壁に取付けられている。この第2のフレキシブルプリント基板(FPC)72は、手振れセンサ(ジャイロセンサ)60で検出された角度信号を後述する振れ補正制御部112(
図10)へ供給したり、この振れ補正制御部112からの駆動電流を第1乃至第4のピッチコイル42−1〜42−4へ供給するためのものである。
【0061】
図7は、ボイスコイルモータ(VCM)40を構成する磁気回路の主要部における、磁気回路の磁束密度分布の様子を示した部分断面図である。磁気回路は、チルトコイル42と永久磁石46とヨーク48とから構成される。前述したように、ヨーク48は、チルトコイル42の外周部(詳細には、外側壁)を覆うように突出する突出片482を持つ。
【0062】
図7は、チルトコイル42に通電していないときの状態を示している。図示の例では、永久磁石46は、上側がN極で、下側がS極に着磁されている。
図7から明らかように、永久磁石46のN極で生成された磁束は、ヨーク48中を通過し、突出片482からチルトコイル42を介して、永久磁石46のS極へ至っていることが分かる。そして、磁束は、効率良くチルトコイル42を通過しており、漏洩磁束が殆ど無いことが分かる。
【0063】
したがって、チルトコイル42へ通電しても、磁気回路から外部へ漏洩する磁束も殆どないことになる。その結果、カメラモジュール20への磁気干渉を無くすことができる。
【0064】
次に、
図3及び
図4を参照して、ボイスコイルモータ(VCM)40の動作について説明する。
【0065】
第1乃至第4のチルトコイル42−1〜42−4に通電していないとき、光軸Oと固定部材(ベース)34の中心軸Cとは一致している。すなわち、カメラモジュール20は、支持弾性部材36の復元力(復帰力)によって、中立位置(初期位置)に置かれている。
【0066】
この状態において、第2および第4のチルトコイル(ピッチング用コイル)42−2、42−4に電流を流したとする。第2および第4の永久磁石46−2、46−4の磁界(磁束)とピッチング用コイル(42−2、42−4)を流れる電流との相互作用により、フレミングの左手の法則によって、ピッチング用コイル(42−2、42−4)に電磁力(推力)が発生する。しかしながら、ピッチング用コイル(42−2、42−4)は、固定部材(ベース)34に固定されているので、その反作用として、可動側である第2および第4の永久磁石46−2、46−4およびヨーク48には、ピッチング用コイル(42−2、42−4)へ近づくまたはそれから離れる方向の電磁力が作用する。その結果、カメラモジュール20を含む可動部(20,32,48,44,46)は、支持弾性部材(ジンバル)36の中心点36Cを支点として、第1の軸(ピッチ軸)Xの回りに揺動する。
【0067】
そして、上記ピッチング用コイル(42−2、42−4)の電磁力(推力)と支持弾性部材36の復元力(復帰力)とが釣り合ったところで、固定部(34,42,38)に対する可動部(20,32,48,44,46)の第1の軸(ピッチ軸)Xの回りの揺動が停まる。
【0068】
次に、中立位置(初期位置)の状態において、第1および第3のチルトコイル(ヨーイング用コイル)42−1、42−3に電流を流したとする。第1および第3の永久磁石46−1、46−3の磁界(磁束)とヨーイング用コイル(42−1、42−3)を流れる電流との相互作用により、フレミングの左手の法則によって、ヨーイング用コイル(42−1、42−3)に電磁力(推力)が発生する。しかしながら、ヨーイング用コイル(42−1、42−3)は、固定部材(ベース)34に固定されているので、その反作用として、可動側である第1および第3の永久磁石46−1、46−3およびヨーク48には、ヨーイング用コイル(42−1、42−3)へ近づく方向またはそれから離れる方向の電磁力が作用する。その結果、カメラモジュール20を含む可動部(20,32,48,44,46)は、支持弾性部材(ジンバル)36の中心点36Cを支点として、第2の軸(ヨー軸)Yの回りに揺動する。
【0069】
そして、上記ヨーイング用コイル(42−1、42−3)の電磁力(推力)と支持弾性部材36の復元力(復帰力)とが釣り合ったところで、固定部(34,42,38)に対する可動部(20,32,48,44,46)の第2の軸(ヨー軸)Yの回りの揺動が停まる。
【0070】
図8は、カメラユニット10を搭載したカメラ付き携帯端末100の外観を示す斜視図である。図示のカメラ付き携帯端末100は、カメラ付き携帯電話機であって、折りたたまれた状態を示している。カメラ付き携帯端末100の所定の位置にカメラユニット(カメラモジュール駆動装置)10が取り付けられている。このような構成により、使用者は、カメラ付き携帯端末100を用いて撮影することができる。
【0071】
尚、本例では、カメラ付き携帯端末100としてカメラ付き携帯電話機の場合を例に挙げて示しているが、カメラ付き携帯端末は、スマートフォン、ノート型パソコン、タブレット形パソコン、携帯型ゲーム機、Webカメラ、車載用カメラであってもよい。
【0072】
図9は、
図1乃至
図4に示したカメラユニット10を搭載したカメラ付き携帯端末100の構成を示すブロック図である。
【0073】
カメラモジュール20は、複数のレンズL1、L2、L3と、撮像素子28とを保持している。これらレンズL1〜L3によって、レンズバレル(レンズアセンブリ)が構成される。
【0074】
カメラ付き携帯端末100は、全体制御部110を有する。全体制御部110は、振れ補正制御部112を内蔵している。全体制御部100は、タイミングジェネレータ(TG)122に接続されている。撮像素子28で撮像された信号は、第1のフレキシブルプリント基板(FPC)71を介してアナログ処理部(AFE)124に供給される。タイミングジェネレータ(TG)122は、タイミング信号を撮像素子28とアナログ処理部(AFE)124に供給する。アナログ処理部(AFE)124で処理された信号は、画像処理部126で画像処理された後、画像メモリ128に記録(保存)される。画像処理部126と画像メモリ128は、全体制御部110で制御される。
【0075】
全体制御部110には、表示部130と画像記録部132とが接続されている。また、全体制御部110は、フォーカス制御部134にフォーカス指令信号を送出する。このフォーカス指令信号に応答して、フォーカス制御部134は、カメラモジュール20内のレンズL2を光軸に沿って移動させる。全体制御部110は、シャッタ駆動部136へシャッタ制御信号を送出する。このシャッタ制御信号に応答して、シャッタ駆動部136はカメラユニット10のシャッタ(図示せず)を駆動する。
【0076】
図10は、手振れ補正装置(カメラモジュール駆動装置)30を制御する手振れ補正アクチュエータ200の構成を示すブロック図である。
【0077】
手振れセンサ(ジャイロセンサ)60で検出された角速度信号は、振れ補正制御部112に供給される。振れ補正制御部112には、シャッターボタン206からシャッタ操作指令信号が供給される。
【0078】
振れ補正制御部112は、角速度検出信号からカメラ付き携帯端末100の筐体の振れを検出する振れ検出回路212と、シャッタ操作指令信号を受けるシーケンスコントロール回路214とを有する。振れ検出回路212は、フィルタ回路と増幅回路とを含む。振れ検出回路212は、振れ検出信号を振れ量検出回路216に供給する。振れ量検出回路216は、振れ検出信号からカメラ付き携帯端末100の筐体の振れ量を検出し、振れ量検出信号を係数変換回路218へ送出する。係数変換回路218は、振れ量検出信号を係数変換し、係数変換した信号を制御回路220へ送出する。
【0079】
制御回路220は、係数変換回路218から供給される係数変換した信号に応答して、振れ検出回路212で検出された振れを相殺するような(ジャイロセンサ60の出力が最小となるような)フィードバック制御信号を出力する。シーケンスコントロール回路214は、シャッタ操作指令信号に応答して、振れ量検出回路216、係数変換回路218、および制御回路220のタイミングを制御する。フィードバック制御信号は、駆動回路222に供給される。
【0080】
前述したように、カメラモジュール駆動装置(手振れ補正装置)30は、ボイスコイルモータ40として、カメラモジュール20を第1の軸(ピッチ軸)Xの回りに揺動するためのピッチング用コイル(42−2、42−4)と、カメラモジュール20を第2の軸(ヨー軸)Yの回りに揺動するためのヨーイング用コイル(42−1、42−3)とを備えている。ピッチング用コイル(42−2、42−4)は、第1方向アクチュエータ42Pとも呼ばれ、ヨーイング用コイル(42−1、42−3)は、第2方向アクチュエータ42Yとも呼ばれる。とにかく、カメラモジュール駆動装置(手振れ補正装置)30は、第1方向アクチュエータ42Pと第2方向アクチュエータ42Yとを含む。
【0081】
上記フィードバック制御信号に応答して、駆動回路222は、第1方向アクチュエータ42Pおよび第2方向アクチュエータ42Yを駆動する。
【0082】
このような構成により、カメラ付き携帯端末100の筐体の振れを打ち消すように、カメラモジュール20を揺動させることができる。その結果、手振れを補正することができる。
【0083】
上述したように、本発明によるカメラユニット10(カメラモジュール駆動装置30)は、カメラモジュール20を保持する一対のモジュールガイド32を備えている。したがって、一対のモジュールガイド32の形状やサイズ(寸法)等を変更するのみで、他のサイズのカメラモジュールにも対応可能である。
【0084】
上述したような、本発明の実施の形態によるカメラモジュール駆動装置30では、次に述べるような効果を奏する。
【0085】
第1に、ヨーク48が、第1乃至第4のチルトコイル42−1〜42−4の周囲を覆うように突出する複数の突出片482を持っているので、第1乃至第4のチルトコイル42−1〜42−4に流した電流によって発生する磁界に起因する、カメラモジュール20のレンズ駆動部(ボイスコイルモータ)への悪影響を避けることができる。
【0086】
第2に、一対のモジュールガイド32を備えているので、一対のモジュールガイド32のみの形状や寸法等を変更することで、他のサイズのカメラモジュール20にも対応可能であることである。
【0087】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0088】
例えば、上述した実施の形態では、カメラモジュール20の振れを検出する手振れセンサとしてジャイロセンサ60を使用しているが、他のセンサを使用してもよいのは勿論である。他のセンサとしては、例えば、フォトリフレクタ、ホール素子、コイルによるインダクタンス検出、ひずみセンサ(ジンバル部)等が考えられる。なお、カメラユニットの外側に導電性シールドケースを付けることで、EMC対策を行っても良い。
【0089】
また、上述した実施の形態では、カメラモジュール20を保持しつつ案内するために一対のモジュールガイド32を使用しているが、それに限定しないのは勿論である。すなわち、カメラモジュールの少なくとも互いに対向する両側面を保持しつつ案内するモジュールガイドであれば、どのような構成(構造)であっても構わない。
【0090】
さらに、上述した実施の形態では、ボイスコイルモータ40として、可動側に設けた4個の永久磁石46と、固定側に設けた4個のチルトコイル42とを用いているが、それに限定しないのは勿論である。すなわち、チルトコイルは、支持弾性部材の外周で、光軸に対して直交し、かつ互いに交差する位置で、固定部材に設けられた少なくとも2個あればよく、永久磁石は、トッププレートに、少なくとも2個のチルトコイルの中央部へ突出して設けられた少なくとも2個あればよい。また、永久磁石の代わりに電磁石を用いてもよい。