特許第5958644号(P5958644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5958644プレス成形部材の製造方法及びプレス成形装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958644
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】プレス成形部材の製造方法及びプレス成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/26 20060101AFI20160719BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20160719BHJP
   B21D 24/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B21D22/26 D
   B21D22/20 E
   B21D24/00 G
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-506860(P2015-506860)
(86)(22)【出願日】2014年3月20日
(86)【国際出願番号】JP2014057846
(87)【国際公開番号】WO2014148618
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2015年6月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-59047(P2013-59047)
(32)【優先日】2013年3月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】西村 隆一
(72)【発明者】
【氏名】中澤 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】大塚 研一郎
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−051005(JP,A)
【文献】 特開2010−082660(JP,A)
【文献】 特開平05−023761(JP,A)
【文献】 特開2007−029966(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0193795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/26
B21D 22/20
B21D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
390MPa以上の高張力鋼板のブランクから、パンチ及びダイを備えるプレス成形装置を用いて、溝底部、該溝底部の幅方向の端部に連続する稜線部、及び該稜線部に連続する縦壁部を少なくとも有する断面形状を有し、長手方向の端部に、前記稜線部に沿う部分を含む外向きフランジが形成されたプレス成形品を得るプレス成形工程を有し、
前記プレス成形工程は、
前記ブランクの前記溝底部に成形される部分のうち少なくとも長手方向端部にある領域が、前記パンチにおける前記溝底部を形成するパンチ頂部から離れた状態となるようにして、前記稜線部に成形される部分の成形と前記外向きフランジの成形を開始する第1の工程と、
前記稜線部に成形される部分の成形が開始された時以降に、前記領域を前記パンチ頂部に接近させる第2の工程とを経て、
プレス成形の完了時には、前記溝底部の成形と、前記稜線部の成形と、前記縦壁部の成形と、前記外向きフランジの成形とが完了することを特徴とするプレス成形部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程では、前記パンチ頂部から出入り自在に設けられた第1のパッドを前記パンチ頂部から突出した状態とすることにより、前記領域が前記パンチ頂部から離れた状態となるようにし、
前記第2の工程では、前記第1のパッドを下降させることにより、前記領域を前記パンチ頂部に接近させることを特徴とする請求項1に記載のプレス成形部材の製造方法。
【請求項3】
前記第1のパッドと、前記ブランクを挟んで前記第1のパッドとは反対側に備えられた第2のパッドとにより、前記ブランクを挟んで拘束することを特徴とする請求項2に記載のプレス成形部材の製造方法。
【請求項4】
前記プレス成形品に対する後プレス成形工程を備え、
前記後プレス成形工程では、前記プレス成形品の前記外向きフランジをさらに立ち上げることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプレス成形部材の製造方法。
【請求項5】
390MPa以上の高張力鋼板のブランクから、パンチ及びダイを備えるプレス成形装置を用いて、溝底部、該溝底部の幅方向の端部に連続する稜線部、及び該稜線部に連続する縦壁部を少なくとも有する断面形状を有し、長手方向の端部に、前記稜線部に沿う部分を含む外向きフランジが形成されたプレス成形品を得るプレス成形工程を有し、
前記プレス成形工程は、
プレス成形の途中で、いったん、前記ブランクの前記稜線部に成形される部分の曲率半径rが、プレス成形の完了時点での前記稜線部の曲率半径rよりも大きくなる状態とし、
その後のプレス成形の過程で、前記曲率半径rを前記曲率半径rに近づけて、
プレス成形の完了時には、前記溝底部の成形と、前記稜線部の成形と、前記縦壁部の成形と、前記外向きフランジの成形とが完了することを特徴とするプレス成形部材の製造方法。
【請求項6】
前記曲率半径rが前記曲率半径rよりも大きくなる状態では、曲率が形成される領域が、プレス成形の完了時点での前記稜線部の領域よりも広く、前記溝底部側に延長されて広くされる状態となることを特徴とする請求項5に記載のプレス成形部材の製造方法。
【請求項7】
390MPa以上の高張力鋼板のブランクから、溝底部、該溝底部の幅方向の端部に連続する稜線部、及び該稜線部に連続する縦壁部を少なくとも有する断面形状を有し、長手方向の端部に、前記稜線部に沿う部分を含む外向きフランジが形成されたプレス成形部材を製造するプレス成形装置であって、
パンチと、
ダイと、
前記パンチにおける前記溝底部を形成するパンチ頂部から出入り自在で、前記ブランクの一方の面に当接する第1のパッドを備え、
前記第1のパッドを前記パンチ頂部から突出した状態とすることにより、前記ブランクの前記溝底部に成形される部分のうち少なくとも長手方向端部にある領域が、前記パンチにおける前記溝底部を形成するパンチ頂部から離れた状態となるようにして、前記稜線部に成形される部分の成形と前記外向きフランジの成形を開始し、
前記稜線部に成形される部分の成形が開始された時以降に、前記第1のパッドを下降させて、前記領域を前記パンチ頂部に接近させ、
プレス成形の完了時には、前記溝底部の成形と、前記稜線部の成形と、前記縦壁部の成形と、前記外向きフランジの成形とが完了することを特徴とするプレス成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、390MPa以上の高張力鋼板のブランクから、溝底部、該溝底部の幅方向の端部に連続する稜線部、及び該稜線部に連続する縦壁部を少なくとも有する断面形状を有し、長手方向の端部に、前記稜線部に沿う部分を含む外向きフランジが形成されたプレス成形部材を製造するプレス成形部材の製造方法及びプレス成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体のフロア(以下、単に「フロア」という)は、車両走行時には車体の捻じり剛性や曲げ剛性を第一義的に担うだけではなく、衝突時には衝撃荷重の伝達を担い、さらに、自動車車体の重量にも大きく影響するため、高剛性かつ軽量という二律背反の特性を兼ね備えることが要求される。フロアは、互いに溶接されて接合される平板状のパネル(例えばダッシュパネル、フロントフロアパネル、リアフロアパネル等)と、溶接によりこれら平板状のパネルの車幅方向へ向けて固定配置されてフロアの剛性や強度を高める略ハット形断面を有する長尺のクロスメンバ類(例えばフロアクロスメンバ、シートクロスメンバ等)と、車体前後方向へ向けて固定配置されてフロアの剛性や強度を高める略ハット形断面を有する長尺のメンバ類(サイドシル、サイドメンバ等)とを有する。このうち、クロスメンバ類は、通常、その長手方向の両端部に形成される外向きフランジを接合代として、例えばフロントフロアパネルのトンネル部及びサイドシルといった他の部材に接合される。
【0003】
図8A図8Cは、クロスメンバ類の代表例であるフロアクロスメンバ1を示す説明図であり、図8Aはフロアクロスメンバ1の斜視図、図8B図8AにおけるVIII矢視図、図8C図8Bにおける丸破線囲み部を拡大して示す説明図である。
【0004】
例えばフロントフロアパネル2は、一般的に、フロントフロアパネル2の上面(室内側の面)に接合されて、フロントフロアパネル2の幅方向の略中心に膨出して形成されるトンネル部(図示を省略する)と、フロントフロアパネル2の幅方向の両側部にスポット溶接されるサイドシル3と備える。フロアクロスメンバ1を、長手方向の両端部に形成される外向きフランジ4を接合代として、トンネル部及びサイドシル3にスポット溶接等によって接合することにより、フロアの剛性及び衝撃荷重負荷時の荷重伝達特性が向上する。
【0005】
図9A図9Bは、フロアクロスメンバ1の従来のプレス成形方法の概略を、特にメンバ1の長手方向の端部の領域を拡大して示す説明図であり、図9Aはプレス成形が絞り成形である場合を示し、図9Bはプレス成形が展開ブランク6を用いた曲げ成形である場合を示す。
【0006】
フロアクロスメンバ1は、これまで、図9Aに示すように絞り成形によるプレス成形により成形素材5に余肉部5aを成形し、切断線5bに沿って余肉部5aを切断した後にフランジ5cを立ち上げるか、あるいは図9Bに示すように展開ブランク形状を有する展開ブランク6に、曲げ成形によるプレス成形を行うことにより、成形されてきた。なお、材料の歩留まり向上の観点からは、余肉部5aの切断を伴う絞り成形によるプレス成形よりも曲げ成形によるプレス成形のほうが好ましい。
【0007】
フロアクロスメンバ1は、自動車車体の剛性向上や側面衝突(側突)時の衝突荷重を伝達する役目を担う重要な構造部材である。このため、近年では、軽量化及び衝突安全性の向上の観点から、より薄くかつより強度の高い高張力鋼板、例えば引張強度が390MPa以上の高張力鋼板(高強度鋼板又はハイテン)がフロアクロスメンバ1の素材として用いられるようになってきた。しかし、高張力鋼板の成形性は良好でないため、フロアクロスメンバ1の設計の自由度が低いことが問題になっている。
【0008】
これを、図8A図8Cを参照しながら具体的に説明する。
フロアクロスメンバ1の長手方向の端部の外向きフランジ4としては、図8Cの破線で示すように、稜線部1aに沿う部分4aを含む連続的で、かつある程度のフランジ幅とすることが、フロアクロスメンバ1とフロントフロアパネル2のトンネル部やサイドシル3との接合強度を高めて、フロアの剛性及び衝撃荷重負荷時の荷重伝達特性を高めるためには望ましい。
【0009】
しかし、稜線部1aに沿う部分4aを含む連続的な外向きフランジ4を冷間でのプレス成形により形成し、かつある程度のフランジ幅を得ようとすると、基本的に稜線部1aに沿う部分4aの外周端部での伸びフランジ割れや、フロアクロスメンバ1の稜線部1aの長手方向端部1bや稜線部1aに沿う部分4aの中央部から根元付近でのしわを生じ、所望の形状が得られ難い。これらの成形不具合は、フロアクロスメンバ1に用いられる鋼材の強度が高いほど、稜線部1aに沿う部分4aの成形における伸びフランジ率が高い形状であるほど(すなわち例えば図8Bにおける断面壁角度θや端部の立ち上がり角度α(図1Bを参照)が急峻であるほど)、発生し易い。
【0010】
フロアクロスメンバ1は、自動車車体の軽量化のために高強度化される傾向にあるため、稜線部1aに沿う部分4aを含む連続的な外向きフランジ4の冷間での成形は、従来のプレス成形法では難しくなる傾向にある。このため、フロアクロスメンバ1の他部材との接合部近傍の剛性や荷重伝達の特性の低下を甘受しても、このようなプレス成形技術上の制約により、高張力鋼板からなるフロアクロスメンバ1の外向きフランジ4の稜線部1aに沿う部分4aに、図8A及び図8Bに示すように、稜線部1aの長手方向端部1bにまで入り込む程度まで切欠き4bを設けて成形不良の発生を回避せざるを得ないのが現状である。
【0011】
特許文献1〜4には、ハット形断面形状のプレス成形部材を製造するために、金型のパッドに工夫を施して、成形後の形状凍結性の向上を図る発明が開示されている。また、特許文献5には、パネル部品をプレス成形するために、金型の可動ポンチに工夫を施す発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4438468号公報
【特許文献2】特開2009−255116号公報
【特許文献3】特開2012−051005号公報
【特許文献4】特開2010−82660号公報
【特許文献5】特開2007−326112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1〜5のいずれも、390MPa以上の高張力鋼板のブランクから、溝底部、該溝底部の幅方向の端部に連続する稜線部、及び該稜線部に連続する縦壁部を少なくとも有する断面形状を有し、長手方向の端部に、前記稜線部に沿う部分を含む外向きフランジが形成されたプレス成形部材を対象とするものではない。
本発明者らの検討結果によれば、従来の発明に基づいても、外向きフランジの稜線部に沿う部分に、稜線部に達するほどの切り欠きを設けたり、材料の歩留まり低下を生じたりすることなく、溝底部、稜線部、及び縦壁部を少なくとも有する断面形状を有し、長手方向の端部に、前記稜線部に沿う部分を含む外向きフランジが形成された、390MPa以上、望ましくは590MPa以上、さらに望ましくは980MPa以上の高張力鋼板製のプレス成形部材を、プレス成形により製造することは難しかった。
【0014】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、外向きフランジの稜線部に沿う部分に、稜線部に達するほどの切り欠きを設けたり、材料の歩留まり低下を生じたりすることなく、例えばフロアクロスメンバのような、溝底部、稜線部、及び縦壁部を少なくとも有する断面形状を有し、長手方向の端部に、前記稜線部に沿う部分を含む外向きフランジが形成された、390MPa以上、望ましくは590MPa以上、さらに望ましくは980MPa以上の高張力鋼板製のプレス成形部材を、プレス成形により製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下の通りである。
(1)390MPa以上の高張力鋼板のブランクから、パンチ及びダイを備えるプレス成形装置を用いて、溝底部、該溝底部の幅方向の端部に連続する稜線部、及び該稜線部に連続する縦壁部を少なくとも有する断面形状を有し、長手方向の端部に、前記稜線部に沿う部分を含む外向きフランジが形成されたプレス成形品を得るプレス成形工程を有し、
前記プレス成形工程は、
前記ブランクの前記溝底部に成形される部分のうち少なくとも長手方向端部にある領域が、前記パンチにおける前記溝底部を形成するパンチ頂部から離れた状態となるようにして、前記稜線部に成形される部分の成形と前記外向きフランジの成形を開始する第1の工程と、
前記稜線部に成形される部分の成形が開始された時以降に、前記領域を前記パンチ頂部に接近させる第2の工程とを経て、
プレス成形の完了時には、前記溝底部の成形と、前記稜線部の成形と、前記縦壁部の成形と、前記外向きフランジの成形とが完了することを特徴とするプレス成形部材の製造方法。
【0016】
(2)前記第1の工程では、前記パンチ頂部から出入り自在に設けられた第1のパッドを前記パンチ頂部から突出した状態とすることにより、前記領域が前記パンチ頂部から離れた状態となるようにし、
前記第2の工程では、前記第1のパッドを下降させることにより、前記領域を前記パンチ頂部に接近させることを特徴とする(1)に記載のプレス成形部材の製造方法。
(3)前記第1のパッドと、前記ブランクを挟んで前記第1のパッドとは反対側に備えられた第2のパッドとにより、前記ブランクを挟んで拘束することを特徴とする(2)に記載のプレス成形部材の製造方法。
(4)前記プレス成形品に対する後プレス成形工程を備え、
前記後プレス成形工程では、前記プレス成形品の前記外向きフランジをさらに立ち上げることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のプレス成形部材の製造方法。
【0017】
(5)390MPa以上の高張力鋼板のブランクから、パンチ及びダイを備えるプレス成形装置を用いて、溝底部、該溝底部の幅方向の端部に連続する稜線部、及び該稜線部に連続する縦壁部を少なくとも有する断面形状を有し、長手方向の端部に、前記稜線部に沿う部分を含む外向きフランジが形成されたプレス成形品を得るプレス成形工程を有し、
前記プレス成形工程は、
プレス成形の途中で、いったん、前記ブランクの前記稜線部に成形される部分の曲率半径rが、プレス成形の完了時点での前記稜線部の曲率半径rよりも大きくなる状態とし、
その後のプレス成形の過程で、前記曲率半径rを前記曲率半径rに近づけて、
プレス成形の完了時には、前記溝底部の成形と、前記稜線部の成形と、前記縦壁部の成形と、前記外向きフランジの成形とが完了することを特徴とするプレス成形部材の製造方法。
(6)前記曲率半径rが前記曲率半径rよりも大きくなる状態では、曲率が形成される領域が、プレス成形の完了時点での前記稜線部の領域よりも広く、前記溝底部側に延長されて広くされる状態となることを特徴とする(5)に記載のプレス成形部材の製造方法。
【0018】
(7)390MPa以上の高張力鋼板のブランクから、溝底部、該溝底部の幅方向の端部に連続する稜線部、及び該稜線部に連続する縦壁部を少なくとも有する断面形状を有し、長手方向の端部に、前記稜線部に沿う部分を含む外向きフランジが形成されたプレス成形部材を製造するプレス成形装置であって、
パンチと、
ダイと、
前記パンチにおける前記溝底部を形成するパンチ頂部から出入り自在で、前記ブランクの一方の面に当接する第1のパッドを備え、
前記第1のパッドを前記パンチ頂部から突出した状態とすることにより、前記ブランクの前記溝底部に成形される部分のうち少なくとも長手方向端部にある領域が、前記パンチにおける前記溝底部を形成するパンチ頂部から離れた状態となるようにして、前記稜線部に成形される部分の成形と前記外向きフランジの成形を開始し、
前記稜線部に成形される部分の成形が開始された時以降に、前記第1のパッドを下降させて、前記領域を前記パンチ頂部に接近させ、
プレス成形の完了時には、前記溝底部の成形と、前記稜線部の成形と、前記縦壁部の成形と、前記外向きフランジの成形とが完了することを特徴とするプレス成形装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、外向きフランジの稜線部に沿う部分に、稜線部に達するほどの切り欠きを設けたり、材料の歩留まり低下を生じたりすることなく、溝底部、稜線部、及び縦壁部を少なくとも有する断面形状を有し、長手方向の端部に、前記稜線部に沿う部分を含む外向きフランジが形成された、390MPa以上、望ましくは590MPa以上、さらに望ましくは980MPa以上の高張力鋼板製のプレス成形部材を、プレス成形により製造することが可能になる。
【0020】
このプレス成形部材によれば、稜線部の長手方向の端部を切り欠くことなく、他の部材と接合することができるので、このプレス成形部材と他の部材との接合部近傍の剛性や荷重伝達の特性を高めることができる。これにより、このプレス成形部材を例えばフロアクロスメンバとして用いると、ボディシェルの曲げ剛性や捩じり剛性を高めることができ、自動車の操縦安定性や乗り心地、騒音を改善・向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aは、プレス成形部材の斜視図である。
図1B図1Bは、図1AにおけるI矢視図である。
図1C図1Cは、プレス成形部材の長手方向の中間位置での断面図である。
図2図2は、プレス成形工程で用いるプレス成形装置のプレス金型の例を示す図である。
図3A図3Aは、プレス成形工程の状態を模式的に示す説明図であり、プレス成形の開始前の状態を示す図である。
図3B図3Bは、プレス成形工程の状態を模式的に示す説明図であり、プレス成形の途中の状態を示す図である。
図3C図3Cは、プレス成形工程の状態を模式的に示す説明図であり、プレス成形の途中の状態を示す図である。
図3D図3Dは、プレス成形工程の状態を模式的に示す説明図であり、プレス成形の完了時の状態を示す図である。
図4A図4Aは、プレス成形工程によるプレス成形の開始前の状態を示す図である。
図4B図4Bは、プレス成形工程によるプレス成形の途中の状態を示す図である。
図4C図4Cは、プレス成形工程によるプレス成形の完了時の状態を示す図である。
図5A図5Aは、プレス成形工程で得るプレス成形品の一部を示す斜視図である。
図5B図5Bは、後プレス成形工程で得るプレス成形品の一部を示す斜視図である。
図6A図6Aは、インナーパッド先行量Ipに対する、外向きフランジの稜線部に沿う部分の端部における板厚歪の数値解析結果を示す特性図である。
図6B図6Bは、インナーパッド先行量Ipに対する、外向きフランジの稜線部に沿う部分の根元部(稜線部の立ち上がり部)の近傍における板厚歪の数値解析結果を示す特性図である。
図7図7は、インナーパッド先行量Ipに対する、外向きフランジの外周端部における板厚歪の測定結果を示す特性図である。
図8A図8Aは、従来のフロアクロスメンバの斜視図である。
図8B図8Bは、図8AにおけるVIII矢視図である。
図8C図8Cは、図8Bにおける丸破線囲み部を拡大して示す説明図である。
図9A図9Aは、フロアクロスメンバの従来のプレス成形方法の概略を示す説明図であり、プレス成形が絞り成形である場合を示す図である。
図9B図9Bは、フロアクロスメンバの従来のプレス成形方法の概略を示す説明図であり、プレス成形が展開ブランクを用いた曲げ成形である場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態に係るプレス成形部材の製造方法は、製品形状に基づく形状の鋼板の展開ブランク(以下、単に「ブランク」という)からプレス成形品を得るプレス成形工程を有する。そして、該プレス工程のみでは所定の形状が得られない場合は、さらに該プレス成形品を成形して、製品としてのプレス成形部材とする後プレス成形工程を有する。なお、展開ブランクを用いるとしたが、それに限らず、例えばプレス成形工程の後に、外向きフランジの一部を切り落とすトリムを行う場合にも本発明は適用可能である。
【0023】
そこで、まず、製品としてのプレス成形部材の形状について説明し、続いて、プレス成形工程、後プレス成形工程の順に説明する。
(1)プレス成形部材
図1A図1Cは、本発明が対象とするプレス成形部材100の一例を示す説明図であり、図1Aはプレス成形部材100の斜視図、図1B図1AにおけるI矢視図、図1Cはプレス成形部材100の長手方向の中間位置での断面図(外向きフランジ106の図示は省略)である。
【0024】
プレス成形部材100は、390MPa以上の高張力鋼板のブランクをプレス成形したものであり、長尺でかつ略ハット形断面形状を有する。すなわち、プレス成形部材100は、長尺の溝底部101と、この溝底部101の幅方向の両端部に連続する2つの稜線部102、102と、これら2つの稜線部102、102にそれぞれ連続する2つの縦壁部103、103と、これら2つの縦壁部103、103にそれぞれ連続する2つの曲線部104、104と、これら2つの曲線部104、104にそれぞれ連続する2つのフランジ105、105とを有する。
【0025】
プレス成形部材100の長手方向の端部には、稜線部102に沿う部分106aを含む外向きフランジ106が形成されている。この例では、プレス成形部材100の長手方向の両端部に、溝底部101から2つの縦壁部103、103の下部にかけて連続する外向きフランジ106が形成されており、外向きフランジ106がフランジ105にもつながっている。
図1Bに示すように、プレス成形部材100の端部の立ち上がり角度はαである。外向きフランジ106のうち溝底部101に沿う部分の立ち上がり角度は、被接合面に合わせた角度で立ち上がり、例えばプレス成形部材100の端部の立ち上がり角度と同じである被接合面の平坦面に繋げる場合はαである。また、外向きフランジ106のうち縦壁部103に沿う部分は、被接合面に合わせた角度で立ち上がり、例えば被接合面の平坦面に直角に繋げる場合は、縦壁部103に対して略垂直に立ち上がる。
【0026】
このようなプレス成形部材100は、特に自動車構造部材(例えばフロアクロスメンバ等のクロスメンバ類や、サイドシルやサイドメンバ等のメンバ類)として好適である。また、このような用途においては、鋼材としては例えば980MPa級のデュアルフェーズ鋼板といった高張力鋼板の使用が好適であり、本発明を適用することにより、成形に困難さが伴う高張力鋼板を使用してもプレス成形部材100を製造することができる。
【0027】
本実施形態では、プレス成形部材がこのような長尺でかつ略ハット形断面形状を有するのものを代表例として説明する。しかしながら、本発明が対象とするプレス成形部材はこれに限定されず、例えば断面が略コの字形の形状のもの、略ハット形の一部である形状(一例としては、断面の略ハット形の片側半分である形状)のものや、溝底部の長手方向の長さが幅と同程度の比較的短尺のものにも同様に適用できる。
【0028】
(2)プレス成形工程
図2に、プレス成形工程で用いるプレス成形装置200のプレス金型の例を示す。
プレス成形装置200は、パンチ201と、ダイ202とを備える。パンチ201及びダイ202の両端には壁面が設けられており、壁面に外向きフランジ106を形成するための外向きフランジ成形面201a、202aが設けられている。
また、プレス成形装置200は、パンチ頂部201bから出入り自在で、ブランク300(図2では図示しない)の一方の面に当接する第1のパッド(インナーパッド)203を備える。パンチ201には、第1のパッド203を完全に収容可能な大きさを有するパッド収容穴201cが設けられている。パッド収容穴201cの底には、例えばガスシリンダや巻きばねの加圧部材が配置されており、又はプレス機に備えたクッション機構に繋がっており、これらによって第1のパッド203をブランク300の方向へ付勢可能になっている。
また、プレス成形装置200は、ブランク300(図2では図示しない)の他方の表面に当接し、ダイ202の移動方向へ移動可能な第2のパッド204及び加圧部材(図示しない)を備える。第2のパッド204の長手方向の両端部は立ち上がっており、ダイ202の外向きフランジ成形面202aと相まって外向きフランジ成形面を構成する。
【0029】
図3A図3Dは、プレス成形工程の状態を模式的に示す説明図である。
図3Aに、プレス成形の開始前の状態を示す。また、図4Aは、図3Aと同様にプレス成形の開始前の状態を示し、各部の形状等をより具体的に示したものである。
第1のパッド203は、パンチ頂部201bの幅方向中央で、ブランク300の溝底部101に成形される部分の一部の領域300aに対向する位置に設けられる。
【0030】
第1のパッド203は、加圧部材によりブランク300の方向へ付勢され、パンチ頂部201bから突出した位置でブランク300の領域300aを支持する。このようにして、第1のパッド203は、ブランク300の溝底部101に成形される部分の一部を、インナーパッド先行量(すなわち第1のパッド203がパンチ頂部201bから突出した長さ)Ipだけ、パンチ頂部201bのパンチ面から離している。
【0031】
一方、第2のパッド204は加圧部材によりブランク300の方向へ付勢され、ブランク300の溝底部101に成形される部分を第1のパッド203と挟んで拘束する。
このときのブランク300は、図3Aに示すように、幅方向断面から見るとほぼ平坦だが、図4Aに示すように、長手方向の端部の一部が立ち上がるように変形している。パンチ201には外向きフランジ106を形成するための外向きフランジ成形面201aがパンチ頂部201bよりも高い位置まで設けられているためである。なお、インナーパッド先行量Ipによっては変形していないこともあり得る。
【0032】
ブランク300における、第1のパッド203によって支持される領域300aとは、図3A図4Aの例では、溝底部101に成形される部分の幅方向中央部で、長手方向の全長にわたる領域である。すなわち、第1のパッド203の幅方向の端部が、パッド201のパッド頂部201の稜線のR止まりよりも内側に設定されることが、割れの要因である伸びフランジ端面への伸び変形が分散され、しわ要因であるフランジ根元近傍の縮み変形が低減されるため、望ましい。また、長手方向の全長にわたる領域に第1のパッド203が存在していなくてもよく、溝底部101に成形される部分のうち少なくとも長手方向端部にある領域がパンチ頂部201bから離れるようにするものであればよい。
【0033】
図3B図3Cに、プレス成形の途中の状態を示す。また、図4Bは、図3B図3Cと同様にプレス成形の途中の状態を示し、各部の形状等をより具体的に示したものである。なお、図4Bでは、見易さを考慮してダイ202を省略する。
なお、前述したようにブランク300が既に図4Aに示すように変形していることがあるので、ここでいうプレス成形の開始とは、図3Bに示すようにブランク300の稜線部102に成形される部分の成形の開始をいう。プレス成形の開始時には、稜線部102に成形される部分とあわせて、外向きフランジ106に成形される部分、特に外向きフランジ106の部分106aに成形される部分の成形も実質的に開始される。
【0034】
図3Cに示すように、ダイ202における溝底部101を形成する面或いは線が、第2のパッド204の溝底部101に当接している面とほぼ同じ高さになると、第1のパッド203が下降を始めて、インナーパッド先行量Ipが小さくなり始める。ダイ202に連動して第2のパッド204が下降し、第2のパッド204に押されて第1のパッド203が下降を始めるようにするのが、装置構造上容易に実現可能である。なお、インナーパッド先行量Ipは、プレス成形の開始と同時から徐々に小さくなり始めてもよい。
【0035】
図3Dに、プレス成形の完了時、すなわち成形下死点における状態を示す。また、図4Cは、図3Dと同様にプレス成形の完了時の状態を示し、各部の形状等をより具体的に示したものである。なお、図4Cでは、見易さを考慮してダイ202を省略する。
プレス成形の完了時には、第1のパッド203はパッド収容穴201cに収容されて、インナーパッド先行量Ipはゼロになる。すなわち、第1のパッド203がパンチ頂部201bと面一となる。
【0036】
ここで、プレス成形工程でのプレス成形の完了時には、溝底部101の成形と、稜線部102の成形と、縦壁部103の成形と、曲線部104の成形と、フランジ105の成形と、外向きフランジ106の成形とが完了する。ただし、外向きフランジ106は、図5Aに示すように、プレス成形品の長手方向の斜め外側方向に延出する状態となっている。すなわち、外向きフランジ106のうち溝底部101から2つの稜線部102、102にかけて形成される部分の立ち上がり角度は、図1Bで説明した外向きフランジ106の立ち上がり角度αよりも小さくなっている。例えば製品としてのプレス成形部材100の外向きフランジ106の立ち上がり角度αが80度であるのに対して、プレス成形工程で得るプレス成形品では、外向きフランジ106の立ち上がり角度が60度となっている。また、外向きフランジ106のうち縦壁部103に沿う部分は、縦壁部103に対して垂直ではなく、所定の角度で寝た状態で立ち上っている。
【0037】
以上の工程について換言すると、第1のパッド203でブランク300の領域300aを押し上げた状態とすることにより、プレス成形の途中で、いったん、ブランク300の稜線部102に成形される部分の曲率半径rが、プレス成形の完了時点での稜線部102の曲率半径rよりも大きくなる状態とする(図3B及び図3Cを参照のこと)。このとき、より詳細には、曲率が形成される領域が、プレス成形の完了時点での稜線部102の領域よりも広く、溝底部101側に延長されて広くされる状態となる。
そして、その後のプレス成形の過程で、ブランク300の領域300aをパンチ頂部201bに接近させることにより、曲率半径rが小さくなって曲率半径rに近づくようにする。なお、稜線部102に成形される部分の中には第1のパッド203の肩に接触している等により局所的には曲率半径rより小さくなっている箇所は存在し得るが、曲率半径rとはそのようなミクロな形状に関する値ではなく、稜線部102に成形される部分の全体的な形状に関する値である。
そして、プレス成形の完了時である成形下死点では、第1のパッド203がパッド収容穴201cに完全に収容されることにより、曲率半径rが曲率半径rに一致することになる。
【0038】
以上のように、稜線部102と、それにあわせて外向きフランジ106の部分106aとを成形する際に、急激に最終形状に成形してしまうのではなく、第1のパッド203を用いることによりプレス成形の開始時から途中までは比較的緩慢に成形することにより、外向きフランジ106の部分106aの外周端部での伸びフランジ割れの発生や、稜線部102における外向きフランジ106の近傍部又は外向きフランジ106における根元付近(図1の部位102aを参照のこと)でのしわの発生を低減又は防止する。
【0039】
また、プレス成形の開始時から完了時まで、第1のパッド203及び第2のパッド204によりブランク300の領域300aを挟んで拘束することが、ブランク300の位置ずれによる成形性の低下の防止や、成形品の寸法精度の低下の抑制のために望ましい。
【0040】
プレス成形工程で得るプレス成形品は、このままで製品としてのプレス成形部材となっている場合もあれば、後述するようにこれを中間成形品として後プレス成形工程に進む場合もある。
【0041】
(3)後プレス成形工程
図5Aに示すように、前述したプレス成形工程で得るプレス成形品では、外向きフランジ106は、プレス成形品の長手方向の斜め外側方向に延出する状態となっている。
後プレス成形工程では、図5Bに示すように、プレス成形工程で得るプレス成形品の外向きフランジ106をさらに立ち上げる(図5Bの矢印を参照のこと)。すなわち、外向きフランジ106のうち溝底部101に沿う部分を立ち上げて、その立ち上がり角度をαにする。また、外向きフランジ106のうち縦壁部103に沿う部分を立ち上げて、縦壁部103に対して例えば略垂直にする。
外向きフランジ106を立ち上げる手法としては、カム機構を用いた工法でもよいし、例えばカム機構を用いない曲げ工法によってもよい。
【0042】
すなわち、後プレス成形工程とは、プレス成形工程で得るプレス成形品を中間成形品として、その外向きフランジ106を立ち上げることで、製品としてのプレス成形部材100を得る工程であるともいえる。もちろん、プレス成形部材における外向きフランジの寸法や立ち上がりの程度が緩い場合等、プレス成形工程で得るプレス成形品を、このままで製品としてのプレス成形部材とすることができる場合があり、この場合は後プレス成形工程を省略してもよい。
【0043】
図6A図6Bに、板厚1.4mmの980MPa級デュアルフェーズ鋼板を、前述したプレス成形工程でプレス成形するときの状態をモデル化して数値解析した結果を示す。
対象とするプレス成形品は、高さ(フランジ105の下面から溝底部101の上面まで)が100mm、稜線部102の曲率が12mm、断面壁角度θが80度、立ち上がり角度αが80度、溝底部101の平坦部幅が60mm、外向きフランジ106のフランジ幅(部分106aの近傍以外)が15mm、外向きフランジ106の立ち上がり部の曲率が3mmとした。また、プレス金型は概ねプレス成形部材に対応した形状であるが、本事例ではプレス成形工程及び後プレス成形工程による成形とした。プレス成形工程において、溝底部101、稜線部102及び縦壁部103に対応する部分の金型の外向きフランジ106の立ち上がり角度は60度とし、プレス成形工程のインナーパッド幅は44mmとした。
図6Aは、インナーパッド先行量Ipに対する、外向きフランジ106の部分106aの外周端部における板厚歪の数値解析結果を示す。また、図6Bは、インナーパッド先行量Ipに対する、外向きフランジ106の部分106aの根元部(稜線部102の立ち上がり部)の近傍102aにおける板厚歪の数値解析結果を示す。t´/tは、成形前の板厚に対する成形後の板厚の比である。
なお、インナーパッド先行量Ipが0mmとは、第1のパッド203が存在しないプレス金型と等価となる。
【0044】
インナーパッド先行量Ipが0mmの場合、図6Aに示すように、外向きフランジ106の部分106aの外周端部における板厚歪が−0.18程度にまで達していることから、板厚が薄くなって伸びフランジ割れの発生が懸念される。また、図6Bに示すように、外向きフランジ106の部分106aの根元部(稜線部102の立ち上がり部)における板厚歪が0.19程度にまで達していることから、しわの発生が懸念される。
【0045】
それに対して、本発明を適用したプレス成形では、インナーパッド先行量Ipを与えることによって、外向きフランジ106の部分106aの外周端部における板厚減少、及び外向きフランジ106の部分106aの根元部(稜線部102の立ち上がり部)の近傍102aにおける増肉を抑えられることが分かる。これにより、伸びフランジ割れの抑制や、しわの発生の抑制を有効に実現することが可能になる。
【0046】
図7に、590MPa級デュアルフェーズ鋼板(板厚1.39mm)及び980MPa級デュアルフェーズ鋼板(板厚1.4mm)を、前述したプレス成形工程で実際にプレス成形して得た実験結果を示す。なお、対象とするプレス成形品は、図6A図6Bの場合と同じである。
図7は、インナーパッド先行量Ipに対する、外向きフランジ106の外周端部における板厚歪の測定結果を示す。詳細には、外向きフランジ106の外周端部において最も肉薄となった部分での板厚歪である。
図7に示すように、より成形に困難さが伴う980MPa級デュアルフェーズ鋼板の場合でも、インナーパッド先行量Ipを6mm〜18mmの範囲で設定することにより、伸びフランジ割れの抑制を有効に実現することが可能になる。
【0047】
以上述べたように、外向きフランジ106の部分106aに、稜線部102に達するほどの切り欠きを設けたり、材料の歩留まり低下を生じたりすることなく、部分106aを含む連続的な外向きフランジ106の成形性を向上させることができる。
【0048】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態では、プレス成形工程及び後プレス成形工程ともに、ブランクホルダーを用いない曲げ成形によるプレス成形である場合を例にとって行ったが、本発明はこのプレス成形に限定されるものではなく、ブランクホルダーを用いる絞り成形によるプレス成形にも適用可能である。
【0049】
また、上記実施形態では、パンチ201が下側、ダイ202が上側にあるとして説明したが、例えばこの上下関係が逆でもよい。
【0050】
さらに、本発明においては、プレス成形工程又は後プレス成形工程は、冷間成形に限らず熱間成形(いわゆるホットスタンプ)であってもよい。ただし、熱間成形ではもともと良好な伸びフランジ成形が可能であるため、本発明は特に冷間成形に適用するのがより効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、自動車構造部材に限らず、390MPa以上の高張力鋼板のブランクから、溝底部、該溝底部の幅方向の端部に連続する稜線部、及び該稜線部に連続する縦壁部を少なくとも有する断面形状を有し、長手方向の端部に、前記稜線部に沿う部分を含む外向きフランジが形成されたプレス成形部材を製造するのに利用することができる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B