(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1信号線路は、GPS用アンテナに接続されており、前記第2信号線路は、無線LAN用アンテナまたはBluetooth(登録商標)用アンテナに接続されている、
請求項1〜4のいずれかに記載の高周波伝送線路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1本のフラットケーブルで伝送される複数の高周波信号は、それぞれ強度が大きく異なる場合がある。例えば、GPS信号の高周波信号の強度は、無線LAN通信の高周波信号の強度よりも格段に小さい。したがって、このような小さい強度の高周波信号を伝送するにあたっては信号線路の挿入損失を十分に小さくすることが望まれる。
【0007】
GPS信号用の信号線路の挿入損失を小さくするために、信号線路の線幅を広くすると、2本の信号線路の間隔は狭まり、2本の信号線路間でクロストークが発生してしまう。一方、クロストークを抑えるために、2本の信号線路間の間隔を維持すると、フラットケーブル全体の幅は、GPS信号用の信号線路の線幅の広がった分に応じて、広くせざるを得ない。また、GPS信号用の信号線路の線幅を広げた場合、グランド導体と結合しやすくなり、当該信号線路及び当該グランド導体からなる伝送線路は、容量性が増加し、特性インピーダンスが低下してしまう。
【0008】
挿入損失を小さくするために信号線路の線幅を広くすることに代えて、信号線路の厚みを増やしても、容量性は、増加してしまう。すなわち、特性インピーダンスは、信号線路の厚みを増やすと、低下してしまう。低下した特性インピーダンスを上げるためには表面又は裏面のグランド導体をそれぞれ信号線路から遠ざける必要があり、フラットケーブル全体の厚みを厚くしなければならない。
【0009】
そこで、この発明は、信号強度が異なる複数の高周波信号をそれぞれに伝送する複数の高周波信号線路を備えながらも、各高周波信号を低損失で伝送する、狭幅且つ薄型の高周波伝送線路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る高周波伝送線路は、複数の基材を積層してなる積層素体と、前記積層素体の一方主面側に配置される第1グランド導体と、前記積層素体の他方主面側に配置される第2グランド導体と、前記積層素体の内部において前記第1グランド導体と前記第2グランド導体との間に挟まれるように、かつ、前記第1グランド導体と第1の距離離れて配置され、第1の線幅である第1信号線路と、前記積層素体の内部において前記第1グランド導体と前記第2グランド導体との間に挟まれるように、かつ、前記第1グランド導体と第2の距離離れて配置され、第2の線幅である第2信号線路と、を備える。
【0011】
そして、本発明に係る高周波伝送線路において、前記第1の線幅は、前記第2の線幅よりも広く、前記第1の距離は、前記第2の距離よりも長く、前記第2グランド導体に、前記第1信号線路に沿って複数の第1開口部が設けられ、前記第2信号線路に沿って複数の第2開口部が設けられることを特徴とする。
【0012】
本発明のフラットケーブルは、積層素体を備え、例えば上面側(一方主面側)に第1グランド導体を備え、下面側(他方主面側)に第2グランド導体を備える。
【0013】
そして、第1信号線路は、第2信号線路に比べて、より第2グランド導体の近くに配置される。すなわち、第1信号線路は、第2信号線路から離して配置されるため、線幅が広くなっても、第2信号線路とクロストークしにくくなる。
【0014】
第1信号線路は、線幅が第2信号線路の線幅より広いことから、第1信号線路と第2信号線路とがそれぞれ第1グランド導体から同じ距離離れて配置されると、第2信号線路よりも第1グランド導体に対する容量性結合が増加する。その結果、第1信号線路を含む伝送線路の特性インピーダンスは、第2信号線路を含む伝送線路の特性インピーダンスに比べて、小さくなってしまう。
【0015】
しかし、第1信号線路を第1グランド導体から遠ざければ、第1信号線路と第1グランド導体との容量性結合を小さくすることができ、特性インピーダンスを所望の値に近づけることができる。ただし、第1信号線路は、第2グランド導体に近づいてしまうため、第2グランド導体に対する容量性結合が増加してしまう。
【0016】
そこで、本発明の高周波伝送線路は、第2グランド導体に複数の第1開口部を設けることにより、第1信号線路と第2グランド導体との容量性結合を減少させる。
【0017】
以上のように、第1信号線路を含む伝送線路は、第1信号線路の線幅が広くなることによる容量性の増加を、第1グランド導体との距離と、複数の第1開口部とによる容量性の減少で相殺する。その結果、第1信号線路を含む伝送線路は、信号強度が小さい高周波信号を低損失で伝送できる。
【0018】
また、本発明の高周波伝送線路は、全体を幅広とする必要がなく、第1信号線路の挿入損失を小さくできる。
【0019】
さらに、第1信号線路及び第2信号線路をそれぞれ含む伝送線路は、それぞれ第1開口部及び第2開口部により容量性が減少するため、第2グランド導体に開口部が存在しない場合に比べて、それぞれ第1グランド導体と距離を短くすることが可能となる。その結果、本発明の高周波伝送線路は、全体の厚みを抑えることができる。
【0020】
また、本発明の高周波伝送線路は、下面側(第2グランド導体側)に複数の第1開口部及び複数の第2開口部を備えるため、下面側が上面側に比べて柔らかくなり、曲げやすい。
【0021】
前記幅方向の前記第1開口部の幅は、前記第2開口部の幅よりも広くしてもよい。
【0022】
第1信号線路の線幅は、第1開口部の幅が第2開口部の幅よりも広くした分に応じて、広くなっても、第1信号線路と第2グランド導体との容量性結合は変わらない。その結果、第1信号線路の挿入損失は、さらに小さくなる。
【0023】
前記第1グランド導体及び前記第2グランド導体は、層間接続導体を介して電気的に接続されており、前記層間接続導体は、前記積層素体を平面視して、前記第1信号線路と前記第2信号線路に挟まれる領域に設けられている態様も可能である。
【0024】
層間接続導体は、第1信号線路と第2信号線路間のクロストークの発生を抑える。
【0025】
前記基材は可撓性を有する樹脂シートであればよい。
【0026】
可撓性を有する樹脂シートは、例えばポリイミドや液晶ポリマ等からなる。その結果、高周波伝送線路は、さらに曲げやすくなり、配線引き回しを容易にする。
【0027】
前記第1信号線路及び前記第2信号線路は、それぞれ前記第1グランド導体よりも前記第2グランド導体側に寄って配置されてもよい。
【0028】
第1信号線路及び第2信号線路は、第1グランド導体から離された分に応じて、それぞれ線幅を広くしても、第1グランド導体に対する容量性結合が小さくなる。その結果、第1信号線路及び第2信号線路は、それぞれ挿入損失がさらに小さくなる。
【0029】
前記第1信号線路に流される高周波信号の信号強度は、前記第2信号線路に流される高周波信号の信号強度より小さくてもよい。
【0030】
また、前記第1信号線路は、GPS用アンテナに接続されており、前記第2信号線路は、無線LAN用アンテナまたはBluetooth(登録商標)用アンテナに接続されていてもよい。
【0031】
第1信号線路は、第2信号線路に比べて挿入損失が小さいため、例えば信号強度の小さいGPS通信の高周波信号を伝送できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、信号強度が異なる複数の高周波信号をそれぞれに伝送する、複数の高周波信号線路を内蔵する構成であっても、各高周波信号を低損失に伝送できる、高周波伝送線路を狭幅且つ薄型で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施形態1に係る高周波伝送線路であるフラットケーブル1について、
図1乃至
図4を用いて説明する。
【0035】
図1は、実施形態1に係るフラットケーブル1の外観斜視図である。
図1において、フラットケーブル1の厚み方向の一方の端面を上面(一方主面)とし、厚み方向と逆方向の端面を下面(他方主面)とする。
【0036】
フラットケーブル1は、
図1に示すように、紙面左右に長い。以下、フラットケーブル1の長い方向を長手方向と称する。フラットケーブル1は、引出伝送線路部20A、引出伝送線路部20B、主伝送線路部10、引出伝送線路部21A、及び引出伝送線路部21Bからなる。引出伝送線路部20A及び引出伝送線路部20Bは、主伝送線路部10の長手方向の一方の端部にそれぞれ配置されている。引出伝送線路部21A及び引出伝送線路部21Bは、主伝送線路部10の長手方向の他方の端部にそれぞれ配置されている。
【0037】
主伝送線路部10は、フラットケーブル1の長手方向に沿って長い形状である。主伝送線路部10は、厚み方向に順に、レジスト膜102、補助グランド導体120、誘電体素体100、基準グランド導体110、及びレジスト膜101が積層されてなる。すなわち、基準グランド導体110及び補助グランド導体120は、それぞれレジスト膜101及びレジスト膜102に覆われ保護されている。
【0038】
基準グランド導体110は、フラットケーブル1の伝送線路の特性インピーダンスの設計の基準となるグランド導体である。フラットケーブル1の伝送線路の特性インピーダンスを所望の値(例えば50Ω)に設定する場合には、基準グランド導体110単独で特性インピーダンスが所望の値よりもやや高めになるように基準グランド導体11の寸法及び配置は設計される。補助グランド導体120はフラットケーブル1の伝送線路の特性インピーダンスの最終的な調整を行うためのグランド導体である。具体的には、基準グランド導体110によって高めに設定された特性インピーダンスを所望の値(例えば50Ω)に調整するために、補助グランド導体120の寸法及び配置は設計される。誘電体素体100は、可撓性を有した絶縁性素材(例えばポリイミド又は液晶ポリマ等の熱可塑性樹脂)からなる樹脂シートが複数積層されてなる。基準グランド導体110及び補助グランド導体120は、導電性材料(例えば銅(Cu)からなる金属箔)からなる。なお、基準グランド導体110及び補助グランド導体120は、両方が誘電体素体100の上面および下面にそれぞれ配置される必要はなく、少なくともいずれかが誘電体素体100内に内蔵されていても構わない。
【0039】
引出伝送線路部20A、引出伝送線路部20B、引出伝送線路部21A、及び引出伝送線路部21Bは、主伝送線路部10と同様に、上面に基準グランド導体110を備え、下面に補助グランド導体120を備える。引出伝送線路部20A,20B,21A,及び21Bにおいても、誘電体素体100は、基準グランド導体110と補助グランド導体120とに挟まれている。
【0040】
コネクタ30A1は、引出伝送線路部20Aの上面に配置され、コネクタ30B1は、引出伝送線路部20Bの上面に配置されている。コネクタ30A2は、引出伝送線路部21Aの上面に配置され、コネクタ30B2は、引出伝送線路部21Bの上面に配置されている。コネクタ30A1、コネクタ30A2、コネクタ30B1、コネクタ30B2はそれぞれ同軸型のコネクタである。
【0041】
コネクタ30A1及びコネクタ30A2のそれぞれの導体部分は、それぞれ不図示の内部配線により信号線路130、基準グランド導体110及び補助グランド導体120(
図2を参照。)に電気的に接続される。コネクタ30B1及びコネクタ30B2のそれぞれの導体部分は、それぞれ不図示の内部配線により信号線路140、基準グランド導体110及び補助グランド導体120(
図2を参照。)に電気的に接続される。
【0042】
次に、
図2は、実施形態1に係るフラットケーブル1の主伝送線路部10の分解斜視図である。
図3(A)は、主伝送線路部10の下面図である。
図3(B)は、主伝送線路部10のA−A断面図である。
図3(C)は、主伝送線路部10のB−B断面図である。
図2において、誘電体素体100、及びレジスト膜101,102の図示は省略する。
図3(A)において、レジスト膜101,102の図示は省略する。
【0043】
補助グランド導体120は、
図2に示すように、長尺導体121、長尺導体122、長尺導体123、複数のブリッジ導体124、及び複数のブリッジ導体125からなる。
【0044】
長尺導体121、長尺導体122、及び長尺導体123は、それぞれ長手方向に長い平板形状である。長尺導体121、長尺導体122、及び長尺導体123は、幅方向に沿って順にそれぞれ配置される。複数のブリッジ導体124及び複数のブリッジ導体125は、それぞれ幅方向に長い平板形状である。
【0045】
複数のブリッジ導体124は、長尺導体122と長尺導体123とで梯子形状となるように、長手方向に所定間隔をおいてそれぞれ配置される。複数の開口部126は、それぞれ長尺導体122、長尺導体123及び2つのブリッジ導体124とで囲まれて形成されている。
【0046】
複数のブリッジ導体125は、長尺導体121と長尺導体122とで梯子形状となるように、長手方向に所定間隔をおいてそれぞれ配置される。複数の開口部127は、それぞれ長尺導体121、長尺導体122及び2つのブリッジ導体125とで囲まれて形成されている。
【0047】
誘電体素体100は、
図2、
図3(B)及び
図3(C)に示すように、内部に信号線路130、信号線路140、及び複数の層間接続導体150を備える。
【0048】
信号線路130及び信号線路140は、それぞれ長手方向に長い平膜形状である。信号線路130及び信号線路140は、それぞれ導電性材料(例えば銅(Cu)からなる金属箔)からなる。
【0049】
信号線路130の線幅Ws1は、
図3(A)に示すように、信号線路140の線幅Ws2より広い。この形状により、信号線路130は、信号線路140よりも直流抵抗が低い。信号線路130と信号線路140とは、
図3(A)に示すように、フラットケーブル1を平面視して、長尺導体122を挟むように離間してそれぞれ配置されている。信号線路130及び信号線路140は、
図3(B)及び
図3(C)に示すように、厚み方向に異なる位置にそれぞれ配置されている。具体的には、信号線路130は、基準グランド導体110から距離T1離れている。信号線路140は、基準グランド導体110から距離T2(ただし、距離T1>距離T2)離れている。信号線路130と信号線路140とを厚み方向に異なる位置にそれぞれ配置することにより、信号線路130と信号線路140との間隔をより広げることができる。
【0050】
このような配置により、フラットケーブル1は、全体の幅を広げなくても、信号線路130と信号線路140との間隔を離して、クロストークの発生を防止できる。
【0051】
また、信号線路130及び信号線路140は、それぞれ基準グランド導体110よりも補助グランド導体120側に寄っている。すなわち、距離T1及び距離T2は、基準グランド導体110と補助グランド導体120との距離の1/2よりそれぞれ長い。
【0052】
複数の開口部126は、
図3(A)に示すように、信号線路130に沿ってそれぞれ配置されている。複数の開口部127は、信号線路140に沿ってそれぞれ配置されている。
【0053】
開口部126の幅W1は、信号線路130の線幅Ws1より広い。開口部127の幅W2は、信号線路140の線幅Ws2より広い。
【0054】
開口部126は、開口部127よりも大きい。具体的には、幅W1は、幅W2より広い。長さL1は、長さL2より長い。長さL1は、信号線路130を流れる高周波信号の波長の1/2未満(例えば数mm〜数cm)であり、さらに好ましくは当該波長の1/4未満である。長さL2も、信号線路140を流れる高周波信号の波長の1/2未満であり、さらに好ましくは当該波長の1/4未満である。開口部の長さが信号線路130(信号線路140)を流れる高周波信号の波長の1/2以上であると、開口部から当該高周波信号の不要輻射が発生する虞があるが、上述の開口部126(開口部127)の寸法により、信号線路130(信号線路140)を流れる高周波信号の不要輻射は発生しにくい。ただし、長さL1を長さL2より長くする必要はなく、長さL1及び長さL2は、それぞれ高周波信号の波長の1/2未満であればよい。
【0055】
信号線路130と補助グランド導体120との容量性結合は、開口部126の大きさを変えることにより、変化する。その結果、信号線路130を含む伝送線路の特性インピーダンスは、開口部126の大きさを変えることにより、調節可能となる。具体的には、信号線路130を含む伝送線路の特性インピーダンスは、開口部126の大きさ(長さL1及び幅W1)が大きくなると、大きくなる。
【0056】
次に、信号線路130及び信号線路140のそれぞれの位置と、開口部126及び開口部127のそれぞれの大きさとの関係について説明する。
【0057】
上述のように、信号線路130は、線幅Ws1が信号線路140の線幅Ws2よりも広いため、厚み方向に信号線路140と同じ位置に配置されると、信号線路140よりも基準グランド導体110に対する容量性結合が増加する。その結果、信号線路130と信号線路140とが厚み方向に同じ位置にあれば、信号線路140を含む伝送線路の特性インピーダンスを例えば50Ωと設計した場合、信号線路130を含む伝送線路の特性インピーダンスは、50Ωよりも低くなってしまう。
【0058】
しかしながら、実施形態1に示すように、基準グランド導体110に対する信号線路130の距離を基準グランド導体110に対する信号線路140の距離よりも長くすれば、信号線路130を含む伝送線路の特性インピーダンスを高くして、所望の値(例えば50Ω)に近づけることができる。ただし、信号線路130は、補助グランド導体120に近づくため、信号線路130と補助グランド導体120との容量性結合が増加してしまう。
【0059】
そこで、上述のように開口部126を複数形成することにより、信号線路130と補助グランド導体120との容量性結合を減少させることができる。その結果、信号線路130は、線幅Ws1を広くすることによる容量性結合の増加を、基準グランド導体110からの距離T1と、複数の開口部126の形状とによる容量性結合の減少により、相殺する。これにより、信号線路130を含む伝送線路についても、所望の値の特性インピーダンスを実現できる。
【0060】
ただし、本発明は、開口部126の幅W1を、開口部127の幅W2より広くすることは必須ではなく、信号線路130を含む伝送線路の容量性結合の増加を、相殺するように、信号線路130を基準グランド導体110から遠ざけるだけであってもよい。
【0061】
以上のように、実施形態1のフラットケーブル1を用いれば、直流抵抗値の異なる信号線路130及び信号線路140をクロストークを防止しながら共に内蔵し、しかも、信号線路130を含む伝送線路の特性インピーダンスと、信号線路140を含む伝送線路の特性インピーダンスとをそれぞれ所望の値にすることができる。この際、信号線路130及び信号線路140から基準グランド導体110及び補助グランド導体120をそれぞれ遠ざけて特性インピーダンスを上げなくてもよく、すなわち、フラットケーブル1の厚みを厚くすることなく、特性インピーダンスを所望の値にすることができる。また、信号線路130と信号線路140との間に発生するクロストークを防止するために、信号線路130と信号線路140とをフラットケーブル1の幅方向にそれぞれ遠ざけて配置する必要がなく、すなわち、フラットケーブル1は、幅も狭いままでクロストークを防止できる。
【0062】
また、フラットケーブル1は、補助グランド導体120が複数の開口部126及び複数の開口部127を備え、かつ誘電体素体100が可撓性のある素材からなり、しかも厚みも厚くなりすぎないため、曲げやすく、配線引き回しを容易にする。
【0063】
次に、層間接続導体150は、例えばスズ(Sn)や銀(Ag)を含む導電性材料からなる。層間接続導体150は、厚み方向に誘電体素体100を貫通し、基準グランド導体110と補助グランド導体120とを電気的に接続する。層間接続導体150の下端(下面側)は、長尺導体122と、ブリッジ導体124又はブリッジ導体125との接続部分で補助グランド導体120に接続される。なお、層間接続導体150は、長尺導体121又は長尺導体123に接続される態様であっても構わない。
【0064】
層間接続導体150は、
図3(A)〜
図3(C)に示すように、信号線路130と信号線路140との間に配置されることにより、信号線路130と信号線路140との間でクロストークが発生することを防ぐことができ、また安定したグランド電位を得ることができる。
【0065】
次に、実施形態1に係るフラットケーブル1の使用例について説明する。
図4は、実施形態1に係るフラットケーブル1で配線した電子機器300の配線図の一部である。
図5(A)は、フラットケーブル1で内部を配線した電子機器300の平面断面図である。
図5(B)は、電子機器300のC−C断面図である。
【0066】
フラットケーブル1は、
図4に示すように、1本で、GPS通信アンテナ200で受信したGPS信号と、無線LAN通信アンテナ201で受信した無線LAN信号とを伝送する。
【0067】
GPS通信アンテナ200は、不図示のGPS衛星から送信されたGPS信号を受信する。GPS通信アンテナ200によって受信されたGPS信号は、フラットケーブル1のコネクタ30A1に向けて出力される。すると、当該GPS信号は、信号線路130と基準グランド導体110と補助グランド導体120とからなる伝送線路及びコネクタ30A2を介してGPS信号処理回路202に伝送される。
【0068】
無線LAN通信アンテナ201は、無線LAN信号を送受信する。無線LAN通信アンテナ201によって受信された無線LAN信号は、フラットケーブル1のコネクタ30B1に向けて出力される。すると、当該無線LAN信号は、信号線路140と基準グランド導体110と補助グランド導体120とからなる伝送線路及びコネクタ30B2を介して、無線LAN信号処理回路203に伝送される。
【0069】
電子機器300は、薄型の機器筐体304を備える。アンテナ回路基板301、メイン回路基板302、及びバッテリーパック303は、それぞれ機器筐体304内に納められている。
【0070】
アンテナ回路基板301とメイン回路基板302とは、間にバッテリーパック303を挟んで、それぞれ離れて配置されている。GPS通信アンテナ200及び無線LAN通信アンテナ201は、それぞれアンテナ回路基板301に搭載されている。GPS信号及び無線LAN信号は、フラットケーブル1を介してそれぞれメイン回路基板302に伝送され、メイン回路基板302に搭載された複数のIC401で処理される。
【0071】
バッテリーパック303と機器筐体304との隙間は、機器によっては極狭い。その場合、一般的な同軸ケーブルは、当該隙間を通れない。しかし、フラットケーブル1は、薄型であるため、当該隙間を通ることができる。
【0072】
GPS信号と無線LAN信号とは、それぞれ1GHz超の周波数からなる高周波信号である。GPS信号の強度は、無線LAN信号の強度に比べて極小さい。しかし、フラットケーブル1は、上述の構成を備えることにより、信号線路130の挿入損失が信号線路140の挿入損失より小さいため、信号強度が小さいGPS信号であってもGPS信号処理回路202に伝送することができる。
【0073】
ただし、フラットケーブル1は、GPS信号と無線LAN信号の組み合わせに限らず、強度の異なる2つの高周波信号(例えば700MHz以上の信号)を伝送できる。例えば、無線LAN信号は、GPS信号より強度の大きいBluetooth(登録商標)信号であってもよい。
【0074】
また、引出伝送線路部20B及び引出伝送線路部21Bは、
図5(B)に示すように、それぞれフラットケーブル1の長手方向に対して直交する方向に長い。フラットケーブル1は、このような形状により、チップ部品400又はIC401の位置を避けてコネクタ30A2、及び30B2を配置できる。
【0075】
次に、
図6は、実施形態2に係るフラットケーブル2の下面図である。
図6において、レジスト膜101,102の図示は省略する。フラットケーブル2は、補助グランド導体120の長尺導体122が長尺導体122Aと長尺導体122Bとに分かれている点において、フラットケーブル1と相違する。重複する構成の説明は省略する。
【0076】
すなわち、開口部126Aは、長尺導体122Bと長尺導体123と2本のブリッジ導体124とで囲まれる。開口部127Aは、長尺導体121と長尺導体122Aと2本のブリッジ導体125とで囲まれる。
【0077】
以上のように、信号線路130と信号線路140とに対向する補助グランド導体120を電気的に分けることにより、信号線路130と信号線路140とは、補助グランド導体120を介して結合しにくくなる。
【0078】
次に、
図7は、実施形態3に係るフラットケーブル3の下面図である。
図7において、レジスト膜101,102の図示は省略する。フラットケーブル3は、信号線路130B及び信号線路140Bのそれぞれの幅が周期的に広がったり狭まったりしている点においてフラットケーブル1と相違する。重複する構成の説明は省略する。
【0079】
信号線路130Bは、長手方向に交互に配置された太幅部131と細幅部132とを有する。信号線路130Bは、太幅部131から細幅部132に向かって徐々に幅が狭まっている。
【0080】
信号線路140Bは、長手方向に交互に配置された太幅部141と細幅部142とを有する。信号線路140Bは、太幅部141から細幅部142に向かって徐々に幅が狭まっている。
【0081】
信号線路130及び信号線路140は、それぞれ太幅部131及び太幅部141でブリッジ導体124及びブリッジ導体125と交差していない。すなわち、信号線路130及び信号線路140のそれぞれの線幅は、容量性結合が増加しにくい位置で広がっている。その結果、フラットケーブル3は、特性インピーダンスを所望の値に維持しつつ、信号線路130及び信号線路140のそれぞれの直流抵抗を低減することができる。
【0082】
また、信号線路130及び信号線路140は、それぞれの細幅部132及び細幅部142で徐々に幅が狭くなっているため、反射損失の増加を抑えることができる。
【0083】
信号線路130Bは、ブリッジ導体124と交差する部分で容量性結合が増加する。しかし、信号線路130Bは、
図7に示すように、線幅が狭い細幅部132でブリッジ導体124と交差するため、容量性結合の増加を抑えることできる。
【0084】
信号線路140Bは、ブリッジ導体125と交差する部分で容量性結合が増加する。しかし、信号線路140Bは、
図7に示すように、線幅が狭い細幅部142でブリッジ導体125と交差するため、容量性結合の増加を抑えることできる。
【0085】
フラットケーブル3は、反射損失の増加を押さえつつ、補助グランド導体120に対する容量性結合が増加することによる特性インピーダンスの低下を防止できる。
【0086】
ブリッジ導体124とブリッジ導体125とは、
図7に示すように、長手方向の位置がずれている。すなわち、開口部126の中央位置と開口部127の中央位置とは、長手方向にずれている。開口部126の中央位置と開口部127の中央位置とは、それぞれ電界強度及び磁界強度が最も大きくなる位置だが、それぞれずれているため、信号線路130Bと信号線路140Bとの間でクロストークが発生しにくい。
【0087】
なお、ブリッジ導体124の配置間隔X1は、ブリッジ導体125の配置間隔X2に等しいが、ブリッジ導体124とブリッジ導体125との位置がずれていれば、等しくなくてもよい。
【0088】
次に、
図8は、実施形態4に係るフラットケーブル4の下面図である。
図8において、レジスト膜101,102の図示は省略する。フラットケーブル4は、細幅部132C及び細幅部142Cが長尺導体122からそれぞれ離れて配置されている点、及びブリッジ導体124C及びブリッジ導体125Cのそれぞれの長手方向の長さが、長尺導体122に接続する部分で長くなっている点において、フラットケーブル3と相違する。重複する構成の説明は省略する。
【0089】
ブリッジ導体124Cの長手方向の長さは、
図8に示すように、細幅部132Cと重複する位置では変わらないが、長尺導体122に近づくにつれて徐々に長くなっている。細幅部132Cは、
図8に示すように、長尺導体122から離れて、長尺導体123側に寄って配置されている。細幅部132Cの配置により、ブリッジ導体124Cと長尺導体122との接続部分は、さらに細幅部132Cから離れる。その結果、ブリッジ導体124Cと長尺導体122との接続部分で層間接続導体150Cを配置するために導体の面積を増やしても、当該接続部分は、容量性結合の増加に最も影響しにくい位置に存在するため、細幅部132Cとブリッジ導体124Cとの容量性結合は増加しにくい。
【0090】
ブリッジ導体125Cについても、ブリッジ導体124Cと同様に、最も容量性結合が増加しにくい位置で導体の面積を増やしている。
【0091】
その結果、長尺導体122とブリッジ導体124C又はブリッジ導体125Cとの接続部分は、面積が広がり、より径の大きい層間接続導体150Cに接続可能となる。
【0092】
なお、信号線路130Cは、長手方向に交互に配置された太幅部131と細幅部132Cとを有する。信号線路130Cは、太幅部131から細幅部132Cに向かって徐々に線幅が狭まっている。そして、信号線路140Cは、長手方向に交互に配置された太幅部141と細幅部142Cとを有する。信号線路140Cは、太幅部141から細幅部142Cに向かって徐々に線幅が狭まっている。これにより、フラットケーブル4は、フラットケーブル3と同様の効果も得ることができる。
【0093】
次に、実施形態5に係るフラットケーブル5について説明する。
図9(A)は、フラットケーブル5の外観斜視図である。
図9(B)は、フラットケーブル5の下面図である。
図9(C)は、D−D断面図である。
図9(B)において、レジスト膜101,102の図示は省略する。
【0094】
フラットケーブル5は、主に、細幅部132D及び細幅部142Dがブリッジ導体128に対向する位置で交差している点において、フラットケーブル3と相違する。重複する構成の説明は省略する。
【0095】
図9(A)に示すように、コネクタ30A2は、引出伝送線路部21B上に搭載され、コネクタ30B2は、引出伝送線路部21A上に搭載されている。
【0096】
細幅部132D及び細幅部142Dは、ブリッジ導体128と対向する位置で交差する。長尺導体121D、長尺導体122D、長尺導体123D、ブリッジ導体124D、及びブリッジ導体125Dは、コネクタ30A2及びコネクタ30B2側で交差した信号線路130D及び信号線路140Dに沿うように、
図9(A)の紙面上で上下反転してそれぞれ配置されている。この形状により、電子機器300のGPS信号処理回路202と無線LAN信号処理回路203との配置が入れ替わっても、フラットケーブル5は、アンテナ回路基板301とメイン回路基板302とに接続することができる。
【0097】
細幅部132Dと細幅部142Dとは、交差する部分で近づくが、略直交して交差するため、それぞれクロストークしにくい。
【0098】
また、細幅部132Dは、ブリッジ導体128の中央に近づくにつれて徐々に線幅が狭くなっている。細幅部142Dも、ブリッジ導体128の中央に近づくにつれて徐々に線幅が狭くなっている。その結果、細幅部132D及び細幅部142Dは、この形状により、それぞれブリッジ導体128との容量性結合の増加を抑えることができる。
【0099】
また、層間接続導体150Dは、細幅部132Dと細幅部142Dとが交差する部分近くに配置されている。その結果、当該部分で電界強度が小さくなり、細幅部132Dと細幅部142Dとは、結合しにくくなる。
【0100】
次に、実施形態6に係るフラットケーブル6について説明する。
図10(A)は、フラットケーブル6の主伝送線路部10Eの下面図である。
図10(B)は、E−E断面図である。
図10(C)は、F−F断面図である。
図10(A)において、レジスト膜101,102の図示は省略する。
【0101】
フラットケーブル6は、誘電体素体100の内部において、信号線路130及び信号線路140の間に第2補助グランド導体120Eを備える点において、フラットケーブル1と相違する。重複する構成の説明は省略する。
【0102】
第2補助グランド導体120Eは、
図10(A)及び
図10(C)に示すように、長手方向に長い平膜形状である。第2補助グランド導体120Eは、導電性材料(例えば銅(Cu)からなる金属箔)からなる。
【0103】
第2補助グランド導体120Eは、
図10(A)の下面図に示すように、フラットケーブル6を平面視して信号線路130及び信号線路140の間に配置されている。換言すれば、第2補助グランド導体120Eは、フラットケーブル6を平面視して、信号線路130及び信号線路140に重なっていない。第2補助グランド導体120Eは、
図10(B)及び
図10(C)に示すように、厚み方向に、基準グランド導体110から距離T3離れて配置されている。距離T3は、距離T1より短く、かつ距離T2より長い。すなわち、第2補助グランド導体120Eは、厚み方向において、信号線路130及び信号線路140の間に配置されている。
【0104】
複数の層間接続導体150は、
図10(A)及び
図10(B)に示すように、それぞれ第2補助グランド導体120Eに接続されている。これにより、基準グランド導体110、補助グランド導体120、及び第2補助グランド導体120Eは、複数の層間接続導体150を介して電気的に接続されている。
【0105】
以上のように、フラットケーブル6は、第2補助グランド導体120Eがフラットケーブル6を平面視して信号線路130及び信号線路140の間に配置されることにより、信号線路130及び信号線路140間のクロストーク発生を防止できる。また、第2補助グランド導体120Eがフラットケーブル6の厚み方向においても信号線路130及び信号線路140の間に配置されることにより、信号線路130及び信号線路140間のクロストーク発生をさらに防止できる。
【0106】
また、フラットケーブル6は、平面視して信号線路130及び信号線路140に重ならないように第2補助グランド導体120Eが配置されているため、第2補助グランド導体120Eと、信号線路130及び信号線路140との容量性結合の増加を最小限に抑えることができ、特性インピーダンスを所望値にしやすくすることができる。
【0107】
次に、実施形態7に係るフラットケーブル7について説明する。
図11(A)及び
図11(B)は、それぞれフラットケーブル7の主伝送線路部10Fの断面図である。
図11(A)の断面図は、
図10(B)の断面図に対応し、
図11(C)の断面図は、
図10(C)の断面図に対応する。
【0108】
フラットケーブル7は、厚み方向において第2補助グランド導体120F1及び第2補助グランド導体120F2が第2補助グランド導体120Eを挟むように配置されている点において、フラットケーブル6と相違する。すなわち、フラットケーブル7は、積層体素体100の内部に、複数の第2補助グランド導体120E,120F1,120F2を備えるものである。重複する構成の説明は省略する。
【0109】
第2補助グランド導体120F1,120F2は、それぞれ長手方向に長い平膜形状である。第2補助グランド導体120F1,120F2は、それぞれ導電性材料(例えば銅(Cu)からなる金属箔)からなる。
【0110】
第2補助グランド導体120F1,120F2は、それぞれフラットケーブル7を平面視して信号線路130及び信号線路140の間に配置されている。第2補助グランド導体120F1は、
図11(A)及び
図11(B)に示すように、厚み方向において信号線路140と同じ位置に配置されている。第2補助グランド導体120F2は、
図11(A)及び
図11(B)に示すように、厚み方向において信号線路130と同じ位置に配置されている。ただし、第2補助グランド導体120F1(120F2)は、厚み方向において信号線路140(信号線路130)と同じ位置に配置されなくてもよく、第2補助グランド導体120F2(120F1)とで第2補助グランド導体120Eを挟むように配置されればよい。
【0111】
複数の層間接続導体150は、
図11(A)に示すように、それぞれ第2補助グランド導体120F2、第2補助グランド導体120E、及び第2補助グランド導体120F1を厚み方向に順に接続している。
【0112】
フラットケーブル7は、フラットケーブル6に対して、第2補助グランド導体120F1,120F2が第2補助グランド導体120Eの近傍に配置されるため、信号線路130及び信号線路140間のクロストーク発生をさらに防止できる。