(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヘリカル状のコイルは、内径寸法の異なる複数種のループを含み、前記ヘリカル状のコイルの2つの開口面位置のループは、前記複数種のループのうち内径寸法の最も大きいループである、請求項5に記載の無線ICデバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、上記小型のRFIDタグを開発する過程で、特許文献1,2に示されるようなRFIDタグにおいては、次のような課題があることを見いだした。
【0005】
(a)特許文献1,2に示されるRFIDタグは、RFICチップがコイルアンテナの中心軸上またはそのコイル開口内に配置されたものである。そのため、RFICチップを実装するための電極(ランドパターン)がコイルアンテナの巻回軸と交差する。その結果、RFICチップ実装用電極およびRFICチップが、コイルアンテナによる磁界の形成を妨げてしまう傾向にある。なお、RFICチップをコイル開口の外側に配置すれば、磁界の形成を妨げにくくなるがが、占有面積が大きくなってしまう。
【0006】
(b)RFICチップがコイルアンテナの中心軸上またはそのコイル開口内に配置されたものであるため、RFICチップが備える各種回路が磁界の影響を受け、RFICチップの誤動作を引き起こす可能性がある。また、コイルアンテナが微弱な磁界を送受信している場合には、RFICチップが備えるデジタル回路部から発生するノイズにより、コイルアンテナの性能劣化(感度劣化)を引き起こす可能性がある。
【0007】
(c)特に、コイルアンテナをシート積層工法で製造する場合に、シートの積みずれ(積層位置精度)や積層体の平坦性を考慮する必要があり、シートの積層数の増加やコイルパターンの厚膜化には限界がある。そのため、得られるインダクタンス値には制限があるし、特に直流抵抗(DCR:direct current resistance)の小さなコイルアンテナを得ることは難しい。なお、シートの面方向にコイル巻回軸が向くようにコイルパターンを形成することは可能であるが、この場合には上記シートの積層数の限界により、コイル開口面積を大きくすることは困難であるし、直流抵抗の小さなコイルアンテナを得ることは難しい。
【0008】
そこで、本発明の目的は、優れた電気特性を有する、特に直流抵抗の低減が可能なコイルアンテナ
を備え、RFICチップとコイルアンテナとの相互干渉が少ない無線ICデバイス、無線ICデバイスを備える樹脂成型体、およびコイルアンテナの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の
無線ICデバイスは、
コイルアンテナと、
前記コイルアンテナに接続されるRFIC素子と、
第1主面および第2主面を有する
プリント配線板と、
前記プリント配線板の前記第1主面側に設けられる樹脂部材と、
を備え、
前記コイルアンテナは、
前記
プリント配線板に形成される
第1導体パターンと、
第1端と第2端を有し、前記
プリント配線板の前記第1主面に対して法線方向へ延びるように配置され、前記第1端が前記
第1導体パターンに導通
し、前記樹脂部材に埋設される第1金属ポストと、
第1端と第2端を有し、前記
プリント配線板の前記第1主面に対して法線方向へ延びるように配置され、前記第1端が前記
第1導体パターンに導通
し、前記樹脂部材に埋設される第2金属ポストと、
前記樹脂部材に設けられ、第1端が前記第1金属ポストの前記第2端に導通し、第2端が前記第2金属ポストの前記第2端に導通する
第2導体
パターンと、
を
備え、
前記プリント配線板の前記第1主面に沿う方向に巻回軸を有し、
前記RFIC素子は、前記プリント配線板の前記第1主面側に搭載され、前記第1金属ポストおよび前記第2金属ポストの間に配置され、前記樹脂部材に埋設されることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、特にコイルアンテナの主要部を金属ポストで構成しているので、コイル巻回軸方向の寸法制限やコイル開口面積の大きさの制限が実質的に無く、直流抵抗が小さい等、優れた電気特性を有するコイルアンテナ
を備える無線ICデバイスを構成できる。
【0011】
前記第1金属ポストおよび前記第2金属ポストの
少なくとも一部が樹脂部材
に埋設され、前記
第2導体
パターンは前記樹脂部材の表面に形成される
ため、コイルアンテナの堅牢性が高まる。また、
第1導体パターンと金属ポスト(第1金属ポスト、第2金属ポスト)との接続部の電気的接続信頼性が高まる。更に、前記
第2導体パターンは、樹脂部材の表面に導体パターンを形成するだけで容易に構成できる。
【0012】
(
2)上記(1
)において、
前記コイルの内側に磁性体(例えばフェライト材)を更に備えることが好ましい。この構成により、コイルアンテナを大型化することなく、インダクタンス値の大きなコイルアンテナ
を備える無線ICデバイスが得られる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)において、前記第1導体パターンは、前記プリント配線板の前記第1主面に形成される第1主面側導体パターンと、前記プリント配線板の前記第2主面に形成される第2主面側導体パターンと、を備え、前記RFIC素子は、前記プリント配線板の前記第1主面に搭載され、前記第1主面側導体パターンの一部に接続されることが好ましい。この構成により、RFIC素子がプリント配線板の外方へ露出することがなく、RFIC素子の保護機能が高くなるし、RFIC素子を外部に搭載することによる大型化が避けられる。また、プリント配線板に対するRFIC素子の接続部の信頼性が高まる。
【0014】
(
4)上記(
3)において、
前記第1主面側導体パターンの数、前記第1金属ポストの数、前記第2金属ポストの数、はそれぞれ複数であり、
前記第2主面側導体パターンは、複数の前記第1主面側導体パターンに対して直列に接続され、
前記第1主面側導体パターンおよび前記第2主面側導体パターンは、直交X,Y,Z座標でX軸方向に延び、
前記第1金属ポストは、前記直交X,Y,Z座標でY軸方向に配列され、前記直交X,Y,Z座標でZ軸方向に延び、
前記第2金属ポストは、前記直交X,Y,Z座標でY軸方向に配列され、前記直交X,Y,Z座標でZ軸方向に延び、
前記第1金属ポスト、前記
第2導体
パターン、前記第2金属ポスト、前記第1主面側導体パターン、および前記第2主面側導体パターンによってヘリカル状のコイルが構成されることが好ましい。
【0015】
上記構成により、小型の割にターン数の多いコイルを容易に構成できる。
【0016】
(
5)上記(
4)において、
前記第1主面側導体パターンの数、前記第1金属ポストの数、前記第2金属ポストの数、はそれぞれ3以上であり、前記第2主面側導体パターンの数は2以上であり、
複数の前記第1金属ポストおよび複数の前記第2金属ポストは、それぞれ前記Y軸方向に配列され、且つ前記Z軸方向に視て千鳥状に配置されることが好ましい。
【0017】
上記構成により、ターン数の割にはY軸方向の寸法を小さくできる。特に、
プリント配線板にてコイルアンテナの端部同士を接続(ブリッジ)できるので、別途、ジャンパーチップ等の接続部材を用いなくてもよく、接続部(ブリッジ部)によるコイルアンテナの磁界の形成を妨げにくい。
【0018】
(
6)上記(
5)において、
前記ヘリカル状のコイルは、内径寸法の異なる複数種のループを含み、前記ヘリカル状のコイルの2つの開口面位置のループは、前記複数種のループのうち内径寸法の最も大きいループであることが好ましい。この構成により、ヘリカル状のコイルに対して磁束が出入りする実質的なコイル開口の面積を大きくできる。
【0019】
(
7)上記(
3)〜(
6)のいずれかにおいて、
前記第2主面側導体パターンの膜厚は前記第1主面側導体パターンの膜厚より厚いことが好ましい。この構成により、コイルアンテナを容易に低抵抗化でき、Q値の高いコイルアンテナによる低損失なアンテナ特性が得られる。
【0020】
(
8)上記(
1)〜(
7)のいずれかにおいて、
前記RFIC素子に接続されるキャパシタを更に備えることが好ましい。この構成により、RFIC素子とコイルアンテナとの整合用または共振周波数設定用の回路を容易に構成でき、外部の回路を無くしたり、簡素化したりできる。
【0021】
(
9)上記(
1)〜(
8)のいずれかにおいて、
前記RFICは、前記コイルアンテナに接続される無線信号の入出力端子以外に、外部のデジタル回路が接続されるデジタル信号端子(例えばI2Cバス端子や制御端子)を備え、
前記デジタル信号端子に導通し、前記外部のデジタル回路が接続される端子が前記
プリント配線板に設けられることが好ましい。
【0022】
上記構成により、無線ICデバイスを電子機器の回路基板に実装することで、デジタル回路とともに動作する無線ICデバイスが得られる。
【0023】
(1
0)本発明の樹脂成型体は、無線ICデバイスを埋め込んでなり、
前記無線ICデバイスは、
コイルアンテナと、
コイルアンテナに接続されるRFIC素子と、
第1主面および第2主面を有するプリント配線板と、前記プリント配線板の前記第1主面側に設けられる樹脂部材と、を備え、
前記コイルアンテナは、
前記
プリント配線板に形成される
第1導体パターンと、
第1端と第2端を有し、前記
プリント配線板の前記第1主面に対して法線方向へ延びるように配置され、前記第1端が前記
第1導体パターンに導通
し、前記樹脂部材に埋設される第1金属ポストと、
第1端と第2端を有し、前記
プリント配線板の前記第1主面に対して法線方向へ延びるように配置され、前記第1端が前記
第1導体パターンに導通
し、前記樹脂部材に埋設される第2金属ポストと、
前記樹脂部材に設けられ、第1端が前記第1金属ポストの前記第2端に導通し、第2端が前記第2金属ポストの前記第2端に導通する
第2導体
パターンと、
を
備え、
前記プリント配線板の前記第1主面に沿う方向に巻回軸を有し、
前記RFIC素子は、前記プリント配線板の前記第1主面側に搭載され、前記第1金属ポストおよび前記第2金属ポストの間に配置され、前記樹脂部材に埋設されることを特徴とする。
【0024】
この構成では、小型の割に高感度の無線ICデバイス、または高感度の割に小型の無線ICデバイスを埋め込んだ樹脂成型体を実現できる。
【0025】
(1
1)本発明のコイルアンテナの製造方法は、
第1主面および第2主面を有する
プリント配線板の、前記第1主面および前記第2主面の少なくとも一方に
第1導体パターンを形成する工程と、
前記
プリント配線板の前記第1主面に第1金属ポストおよび第2金属ポストを立てて、前記第1金属ポストおよび前記第2金属ポストの第1端を、前記
第1導体パターンにそれぞれ導通させる工程と、
前記
プリント配線板の前記第1主面に、前記第1金属ポストおよび前記第2金属ポストの高さまで樹脂部材を被覆する工程と、
前記第1金属ポストの第2端に第1端が導通し、前記第2金属ポストの第2端に第2端が導通する、
第2導体
パターンを、前記樹脂部材の表面に形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0026】
上記製造方法によれば、コイル開口面積が大きく、直流抵抗が小さい等、優れた電気特性を有するコイルアンテナを容易に製造できる。
【発明の効果】
【0027】
本発
明によれば、抵抗値が小さい等、優れた電気特性を有する、特に直流抵抗の低減が可能なコイルアンテナ
を備える無線ICデバイスを実現することができる。また、コイル巻回軸方向の寸法制限やコイル開口面積の大きさの制限が実質的に無く、高い設計自由度をもったコイルアンテナ
を備える無線ICデバイスを得ることができる。
【0028】
本発
明によれば、小型の割に高感度の無線ICデバイス、または高感度の割に小型の無線ICデバイスおよび上記無線ICデバイスを備える樹脂成型体が得られる。
【0029】
本発明のコイルアンテナの製造方法によれば、コイル開口面積が大きく、直流抵抗が小さな等、優れた電気特性を有するコイルアンテナを容易に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付す。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点について説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0032】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る無線ICデバイス101の斜視図である。無線ICデバイス101は、第1主面PS1および第2主面PS2を有する平板状の第1基板1を備える。第1基板1は、平面形状が矩形状である平板状のプリント配線板であり、代表的には両面スルーホール基板である。第1基板1の第1主面PS1には第1主面側導体パターン10A,10Bが形成される。これらの第1主面側導体パターンは、例えばCu箔のエッチング等によりパターニングされたものである。
【0033】
本実施形態では、この第1主面側導体パターン10A,10Bが本発明の「
第1導体パターン」に相当する。
【0034】
また、無線ICデバイス101は第1金属ポスト30および第2金属ポスト40を備える。これらの金属ポストは柱状の金属塊である。より具体的には、第1金属ポスト30および第2金属ポスト40は、いずれも例えば円柱状のCu製ピンである。例えば、断面円形のCuワイヤーを所定長単位で切断することで得られる。なお、この断面形状は必ずしも円形である必要は無い。
【0035】
第1金属ポスト30は第1基板1の第1主面PS1に対して法線方向へ延びるように配置され、且つ、第1金属ポスト30の第1端30E1が第1主面側導体パターン10A(
第1導体パターン)の第1端10AE1に接続される(導通する)。第2金属ポスト40は、第1基板1の第1主面PS1に対して法線方向へ延びるように配置され、且つ、第2金属ポスト40の第1端40E1が第1主面側導体パターン10B(
第1導体パターン)の第1端10BE1に接続される(導通する)。
【0036】
また、無線ICデバイス101は接続導体50を備える。接続導体50の第1端50E1は第1金属ポスト30の第2端30E2に接続され(導通し)、接続導体50の第2端50E2は第2金属ポスト40の第2端40E2に接続される(導通する)。接続導体50は第1基板の主面や第1主面側導体パターンとほぼ平行となるように配置されている。
【0037】
第1主面側導体パターン10Aの第2端10AE2および第1主面側導体パターン10Bの第2端10BE2はそれぞれ給電端である。第1基板1の第1主面PS1には、上記給電端(2つの給電端)にRFICチップ(ベアチップ)がパッケージングされたRFIC素子61が接続される(実装される)。RFIC素子61は、ベアチップ形状のRFICチップであってもよい。この場合、RFICチップはAu電極端子を持ち、給電端のAuメッキと超音波接合により接続される。RFICチップと給電端(ランドパターン)とはワイヤーで接続されていてもよい。
【0038】
第1主面側導体パターン10A,10Bは、直交X,Y,Z座標でX軸方向に延びる。
【0039】
第1金属ポスト30はZ軸方向に延びる。同様に、第2金属ポスト40はZ軸方向に延びる。つまり、これらの金属ポストは同方向に延びる。
【0040】
接続導体50は、何らかの支持材に形成された導体パターンであるが、
図1ではその支持材の図示を省略する。この支持材については、後に示す各実施形態で明らかとなる。但し、フープ材や金属ポスト等、支持体に支持されていない金属部材であってもよい。
本実施形態では、この接続導体50が本発明の「第2導体パターン」に相当する。
【0041】
第1主面側導体パターン10A,10B、第1金属ポスト30、第2金属ポスト40および接続導体50によって1ターンのコイルアンテナが構成される。
【0042】
「RFIC素子」は、RFICチップそのものであってもよいし、整合回路等を設けた基板にRFICチップを搭載し、一体化したRFICパッケージであってもよい。また、「RFIDタグ」は、RFIC素子とRFIC素子に接続されたコイルアンテナとを有したものであって、電波(電磁波)または磁界を用いて、内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする情報媒体と定義する。つまり、本実施形態の無線ICデバイスはRFICタグとして構成される。
【0043】
RFIC素子61はHF帯RFIDシステム用の例えばHF帯の高周波無線ICチップを備える。上記コイルアンテナとRFIC素子61自身が持つ容量成分とでLC共振回路が構成される。その共振周波数はRFIDシステムの通信周波数と実質的に等しい。通信周波数帯域は例えば13.56MHz帯である。
【0044】
無線ICデバイス101は、例えば管理対象の物品に設けられる。その物品に取り付けられた無線ICデバイス101(つまりRFIDタグ)をリーダ/ライタ装置に近接させることで、無線ICデバイス101のコイルアンテナとRFIDのリーダ/ライタ装置のコイルアンテナとが磁界結合する。このことで、RFIDタグとリーダライタ装置との間でRFID通信がなされる。
【0045】
本実施形態によれば次のような効果を奏する。
【0046】
(a)特に、平板状の第1基板1に給電端を設け、且つ、コイルアンテナを構成するパターンの一部には金属ポストを利用するため、多層基板にコイルを形成する必要がなく、複雑な配線を引回す必要もない。そのため、小型でありながら、コイル開口サイズの設計上の自由度に優れたコイル構造を容易に実現できる。
【0047】
(b)RFIC素子61の実装面はコイルアンテナの巻回軸(Y軸)に平行方向であるため、RFIC素子61の実装用電極(ランドパターン)がコイルアンテナの磁界の形成を妨げにくい。また、コイルアンテナの磁界によるRFIC素子61への悪影響(誤動作や不安定動作等)が小さい。更にRFIC素子61のデジタル回路部から発生するノイズによるコイルアンテナへの悪影響(受信感度の低下・送信信号の受信回路への回り込み等)が小さい。
【0048】
(c)コイルの一部は金属ポストで構成されるが、この金属ポストは、ポスト自身が持つ直流抵抗成分を、導電性ペーストの焼成による焼結金属体や、導電性薄膜のエッチングによる薄膜金属体等の導体膜のDCRより十分に小さくできるので、Q値が高く、低損失のコイルアンテナが得られる。
【0049】
《第2の実施形態》
図2は第2の実施形態に係る無線ICデバイス102の斜視図である。第1の実施形態と異なり、本実施形態では、第1基板1に第2主面側導体パターン20が形成される。第1主面側導体パターンの数、第1金属ポストの数、第2金属ポストの数、はそれぞれ複数である。
【0050】
無線ICデバイス102は、第1主面PS1および第2主面PS2を有する第1基板1を備える。第1基板1の第1主面PS1には第1主面側導体パターン10A,10B,10C,10Dが形成される。
【0051】
本実施形態では、これら第1主面側導体パターン10A,10B,10C,10Dおよび第2主面側導体パターン20が、本発明の「
第1導体パターン」に相当する。
【0052】
無線ICデバイス102は第1金属ポスト30A,30Bおよび第2金属ポスト40A,40Bを備える。第1金属ポスト30A,30Bは第1基板1の第1主面PS1に対して法線方向へ延びるように配置され、且つ、第1金属ポスト30A,30Bの第1端が第1主面側導体パターン10A,10Cの第1端にそれぞれ接続される(導通する)。第2金属ポスト40A,40Bは、第1基板1の第1主面PS1に対して法線方向へ延びるように配置され、且つ、第2金属ポスト40A,40Bの第1端が第1主面側導体パターン10B,10Dの第1端にそれぞれ接続される(導通する)。
【0053】
無線ICデバイス102は接続導体50A,50Bを備える。接続導体50A,50Bの第1端は第1金属ポスト30A,30Bの第2端にそれぞれ接続され(導通し)、接続導体50A,50Bの第2端は第2金属ポスト40A,40Bの第2端にそれぞれ接続される(導通する)。
本実施形態では、これら接続導体50A,50Bが、本発明の「第2導体パターン」に相当する。
【0054】
第1主面側導体パターン10Aの第2端および第1主面側導体パターン10Dの第2端はそれぞれ給電端である。第1基板1の第1主面PS1には、上記給電端(2つの給電端)にRFIC素子61が接続される状態でRFIC素子61が搭載される。
【0055】
第2主面側導体パターン20は、給電端を含む第1主面側導体パターン10A,10D以外の第1主面側導体パターン10B,10Cに対して直列に接続される。第1主面側導体パターン10B,10Cと第2主面側導体パターン20とは層間接続導体(スルーホールめっき)を介してそれぞれ電気的に接続される(導通する)。
【0056】
第1主面側導体パターン10A,10B,10C,10Dおよび第2主面側導体パターン20は、直交X,Y,Z座標でX軸方向に延びる。ここで、「X軸方向に延びる」の意味は、第1主面側導体パターン(10A,10B,10C,10D)および第2主面側導体パターン(20)がすべて平行であることに限るものではなく、第1主面側導体パターン(10A,10B,10C,10D)および第2主面側導体パターン(20)が延びる方向が概略的にX軸方向を向くこと、すなわち実質的にX軸方向に延びること、をも含む。
【0057】
第1金属ポスト30A,30Bは、Y軸方向に配列され、Z軸方向に延びる。同様に、第2金属ポスト40A,40Bは、Y軸方向に配列され、Z軸方向に延びる。
【0058】
第1金属ポスト30A,30B、第2金属ポスト40A,40B、接続導体50A,50B、第1主面側導体パターン10A,10B,10C,10Dおよび第2主面側導体パターン20によって2ターンのヘリカル状のコイルアンテナが構成される。
【0059】
本実施形態によれば、特に、平板状の第1基板1の第1主面PS1に給電端を設け、第2主面PS2をブリッジやジャンパー用の第2主面側導体パターン20の形成に利用するため、複雑な配線を引回す必要がない。そのため、小型でありながら、コイル開口サイズの設計上の自由度に優れた複数ターンのコイル構造を容易に実現できる。
【0060】
《第3の実施形態》
図3は第3の実施形態に係るチップ状の無線ICデバイス103の斜視図である。第1、第2の実施形態と異なり、本実施形態では、第1基板1にRFIC素子61だけでなくチップキャパシタ62,63が実装される。また、本実施形態では、第1基板1に樹脂部材70が被覆され、その樹脂部材70に接続導体50A〜50Fが形成される。
【0061】
図4Aは第1基板1の底面図(第1主面PS1を視た図)であり、
図4Bは第1基板1の平面図(第2主面PS2を視た図)である。第1基板1の第1主面PS1には第1主面側導体パターン10A〜10Lが形成される。第1主面側導体パターン10A,10C,10E,10G,10I,10Kのそれぞれの一方端は第1金属ポスト30A〜30Fの接続部11A〜11Fである。また、第1主面側導体パターン10B,10D,10F,10H,10J,10Lのそれぞれの一方端は第2金属ポスト40A〜40Fの接続部12A〜12Fである。第1基板1の第2主面PS2には第2主面側導体パターン20A〜20Eが形成される。
【0062】
本実施形態では、これら第1主面側導体パターン10A〜10Lおよび第2主面側導体パターン20A〜20Eが、本発明の「
第1導体パターン」に相当する。
【0063】
第1金属ポスト30A〜30Fは第1基板1の第1主面PS1に対して法線方向へ延びるように配置され、且つ、第1金属ポスト30A〜30Fの第1端が接続部11A〜11Fにそれぞれ接続される(導通する)。第2金属ポスト40A〜40Fは、第1基板1の第1主面PS1に対して法線方向へ延びるように配置され、且つ、第2金属ポスト40A〜40Fの第1端が接続部12A〜12Fにそれぞれ接続される(導通する)。
【0064】
接続導体50A〜50Fは樹脂部材70の表面に形成される線状の導体パターンである。接続導体50A〜50Fの第1端は第1金属ポスト30A〜30Fの第2端にそれぞれ接続され(導通し)、接続導体50A〜50Fの第2端は第2金属ポスト40A〜40Fの第2端にそれぞれ接続される(導通する)。
本実施形態では、これら接続導体50A〜50Fが、本発明の「第2導体パターン」に相当する。
【0065】
第1金属ポスト30A〜30F、第2金属ポスト40A〜40F、接続導体50A〜50F、第1主面側導体パターン10A〜10Lおよび第2主面側導体パターン20A〜20Eによって6ターンのヘリカル状のコイルアンテナが構成される。
【0066】
図5は無線ICデバイス103の回路図である。RFIC素子61に上記コイルアンテナANTが接続され、コイルアンテナANTにチップキャパシタ62,63が並列接続される。コイルアンテナANTとチップキャパシタ62,63とでLC共振回路が構成される。チップキャパシタ62,63のキャパシタンスは上記LC共振回路の共振周波数が所定の周波数(例えば13.56MHz)となるように選定される。チップキャパシタ62,63の一方は粗調整用のキャパシタ、他方は微調整用のキャパシタである。なお、共振周波数設定用のキャパシタは1つでもよい。
【0067】
図3に示す各部の寸法は例えば次のとおりである。つまり、このコイルアンテナは、コイル開口の径方向の最大長さ比べてコイル軸方向の長さが短い、扁平型の積層型コイルアンテナである。
【0068】
A:3mm以上、12mm以下(例えば8mm)
B:1mm以上、8mm以下(例えば2.3mm)
C:2mm以上、15mm以下(例えば5.5mm)
図6は無線ICデバイス103の製造工程を順に示す断面図である。無線ICデバイス103は例えば次の工程で製造される。
【0069】
まず、
図6中の(1)に示すように、第1基板1を準備する。具体的には、第1基板1の第1主面PS1に第1主面側導体パターン10A〜10LやRFIC素子を実装するためのランド(給電端子やNC端子)、チップキャパシタを実装するためのランド、これらランド同士を接続するための引回しパターン等を形成し、第1基板1の第2主面PS2に第2主面側導体パターン20A〜20E等を形成する。更に、第1基板1の厚み方向には、第1主面側導体パターン10A〜10Lと第2主面側導体パターン20A〜20Eとを接続するスルーホールめっきを形成する(
図4A,
図4B参照)。
【0070】
第1基板1は、例えばガラスエポキシ基板や樹脂基板等のプリント配線板であり、
第1導体パターンやランドは銅箔をパターニングしたものである。第1基板1は、セラミック基板に厚膜パターンを形成したものであってもよい。
【0071】
例えば、第1主面側導体パターン10A〜10Lおよび第2主面側導体パターン20A〜20Eの断面寸法は、厚み18μm×幅100μmである。これらのパターニングを行った後に、Cu等のめっきを施してトータル膜厚を例えば40〜50μmに厚くすることが好ましい。
【0072】
次に、
図6中の(2)に示すように、第1基板1に、RFIC素子61、チップキャパシタ62,63、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fをそれぞれはんだ等の導電性接合材を介して実装する。すなわち、はんだを使う場合、第1基板1の第1主面PS1の各電極にはんだペーストを印刷し、各部品をマウンターで実装した後、これら部品をリフロープロセスではんだ付けする。この構成により、RFIC素子61、チップキャパシタ62,63、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fを第1基板1に電気的に導通させ、且つ構造的に接合する。
【0073】
RFIC素子61はRFIDタグ用のRFICチップをパッケージングしたものである。チップキャパシタ62,63は例えば積層型セラミックチップ部品である。金属ポスト30A〜30F,40A〜40FはそれぞれCu製のポストである。また、これら金属ポストは、例えば直径0.1mm〜0.3mmの円柱状である。金属ポストは、Cuを主成分としたものに限定されるわけではないが、導電率や加工性の点でCuを主成分としたものが好ましい。
【0074】
次に、
図6中の(3)に示すように、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fと同じ高さまで樹脂部材70を形成する。具体的には、エポキシ樹脂等を所定高さ(金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの高さ以上)に塗布し、その後、樹脂部材70の表面を平面的に研磨していくことで、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部を露出させる。
【0075】
樹脂部材70は、液状樹脂の塗布により設けてもよいし、半硬化シート状樹脂の積層によって設けてもよい。
【0076】
次に、
図6中の(4)に示すように、樹脂部材70の表面に接続導体50A〜50Fを形成する。具体的には、樹脂部材70の表面のうち、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部が露出する面にめっき法等によってCu膜等の導体膜を形成し、これをフォトレジストおよびエッチングによってパターニングする。また、導電性ペーストをスクリーン印刷することによって接続導体50A〜50Fを形成してもよい。
【0077】
なお、その後、Cu等のめっきによって、第2主面側導体パターン20A〜20Eおよび接続導体50A〜50Fにめっき膜を形成することが好ましい。Cuめっき膜の場合は、Cu等のめっき膜の表面にAuめっき膜を更に形成してもよい。これらのことで、第2主面側導体パターン20A〜20Eおよび接続導体50A〜50Fの膜厚が厚くなり、それらのDCRが小さくなって、導体損失が低減できる。このことにより、金属ポスト30A〜30F,40A〜40FのDCRと同等程度にまで、第2主面側導体パターン20A〜20Eおよび接続導体50A〜50FのDCRを小さくできる。すなわち、この段階の素体は、外表面に第2主面側導体パターンおよび接続導体が露出したものであるため、この素体をめっき液に浸漬することにより、第2主面側導体パターンおよび接続導体の厚みを選択的に厚くすることができる(第1主面側導体パターンの厚みに比べて、第2主面側導体パターンの厚みを増やすことができる)。
【0078】
その後、必要に応じて、第1基板1の外面(第2主面PS2)および樹脂部材70のうち接続導体50A〜50Fの形成面に酸化防止用の保護用樹脂膜(ソルダーレジスト膜等)を形成する。
【0079】
なお、上記の工程は、マザー基板状態のまま処理される。最後に、マザー基板を個々の無線ICデバイス単位(個片)に分離する。
【0080】
図7は、
図6に示す製造工程とは別の、無線ICデバイス103の製造工程を順に示す断面図である。無線ICデバイス103は例えば次の工程で製造されていてもよい。
【0081】
まず、
図7中の(1)に示すように、第1基板1を準備する。具体的には、第1基板1の第1主面PS1に第1主面側導体パターン10A,10L、接続部11A〜11F(
第1導体パターンの第1端)、接続部12A〜12F(
第1導体パターンの第2端)やRFIC素子を実装するためのランド(給電端子やNC端子)、チップキャパシタを実装するためのランド、これらランド同士を接続するための引き回しパターン等を形成し、第1基板1の第2主面PS2に第2主面側導体パターン20A〜20E等を形成する。なお、本製造工程では、第1基板1の第1主面PS1に、
図4Aに示す第1主面側導体パターン10B〜10Kを形成する必要がない。
【0082】
更に、第1基板1の厚み方向に、接続部11A〜11F(
第1導体パターンの第1端)と第2主面側導体パターン20A〜20Eとを接続するスルーホールめっき21A等を形成する。また、第1基板1の厚み方向に、接続部12A〜12F(
第1導体パターンの第2端)と第2主面側導体パターン20A〜20Eとを接続するスルーホールめっき22A等を形成する。なお、スルーホールめっき21A,22A等の開口の内径は、第1金属ポスト30A〜30Fや第2金属ポスト40A〜40Fの外径寸法と略同じにしておく。
【0083】
また、第1基板1の第1主面PS1に、RFIC素子61を実装するためのランドや金属ポスト90を実装するためのランド等に、はんだペースト等の導電性接合材81をスクリーン印刷等で形成する。なお、接続部11A〜11F(線状導体パターンの第1端)、接続部12A〜12F(
第1導体パターンの第2端)やスルーホールめっき21A,22A等に対する導電性接合材81の形成は、後に詳述するように、必須ではない。
【0084】
次に、
図7中の(2)に示すように、第1基板1に、第1基板1へRFIC素子61、チップキャパシタ62,63をそれぞれはんだ等の導電性接合材81を介して実装する。第1金属ポスト30A〜30Fおよび第2金属ポスト40A〜40Fをそれぞれ実装する。すなわち、第2主面側導体パターン20A〜20Eは、
図4Aに示す第1主面側導体パターン10C,10E,10G,10I,10Kを介さずに、第1金属ポスト30B〜30Fに直接接続される。また、第2主面側導体パターン20A〜20Eは、
図4Aに示す第1主面側導体パターン10B,10D,10F,10H,10Jを介さずに、第2金属ポスト40A〜40Eに直接接続される。
【0085】
なお、第1金属ポスト30A〜30Fの第1端は、スルーホールめっき21A等に挿通され、はんだ等の導電性接合材81を介して実装される。また、第2金属ポスト40A〜40Fの第1端は、スルーホールめっき22A等に挿通され、はんだ等の導電性接合材81を介して実装される。なお、金属ポスト(第1金属ポスト30A〜30F、第2金属ポスト40A〜40F)の第1端を、スルーホールめっき21A,22A等に挿通することによって、金属ポストが固定できる場合には、はんだ等の導電性接合材81を介して実装する必要はない。
【0086】
次に、
図7中の(3)に示すように、金属ポストと同じ高さまで樹脂部材70を形成する。具体的には、エポキシ樹脂等を所定高さ(金属ポストの高さ以上)に塗布し、その後、樹脂部材70の表面を平面的に研磨(または切断)していくことで、金属ポストの頭部を露出させる。なお、エポキシ樹脂等を所定高さ(金属ポストの高さ以下)に塗布し、その後、樹脂部材70を金属ポストごと平面的に研磨(または切断)することで、樹脂部材70の表面から金属ポストの頭部を露出させてもよい。
【0087】
次に、
図7中の(4)に示すように、樹脂部材70の表面に接続導体50A〜50Fを形成する。
【0088】
その後、必要に応じて、第1基板1の外面(第2主面PS2)および樹脂部材70のうち接続導体50A〜50Fの形成面に酸化防止用の保護用樹脂膜(ソルダーレジスト膜等)を形成する。
【0089】
図8Aは無線ICデバイス103の、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの中央高さでの横断面図である。
図8Bは参考例の無線ICデバイスの金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの中央高さでの横断面図である。本実施形態の無線ICデバイス103と参考例の無線ICデバイスとは、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの配置が異なる。
【0090】
本実施形態の無線ICデバイス103および参考例の無線ICデバイスのいずれも複数の第1金属ポスト30A〜30Fおよび複数の第2金属ポスト40A〜40Fは、それぞれY軸方向に配列され、且つZ軸方向に視て千鳥状に配置される。本実施形態の無線ICデバイス103では、ヘリカル状のコイルは、内径寸法の異なる2種のループを含む。
図8Aに表れるように、第1金属ポスト30Aと第2金属ポスト40Aを含むループ、第1金属ポスト30Cと第2金属ポスト40Cを含むループ、第1金属ポスト30Dと第2金属ポスト40Dを含むループ、第1金属ポスト30Fと第2金属ポスト40Fを含むループ、のそれぞれの開口幅はWwである。また、第1金属ポスト30Bと第2金属ポスト40Bを含むループ、第1金属ポスト30Eと第2金属ポスト40Eを含むループ、のそれぞれの開口幅はWnである。そして、Wn<Wwである。一方、参考例の無線ICデバイスでは、
図8Bに表れるように、いずれのループの開口幅はWで同じである。
【0091】
本実施形態の無線ICデバイス103では、ヘリカル状のコイルアンテナの2つの開口面位置のループ(第1金属ポスト30Aと第2金属ポスト40Aを含むループ、および、第1金属ポスト30Fと第2金属ポスト40Fを含むループ)の内径寸法は、2種のループのうち内径寸法の大きい方のループである。
【0092】
換言すると、複数の第1金属ポスト30A〜30Fのうち、Y軸方向での第1端位置の第1金属ポスト30Aと、複数の第2金属ポスト40A〜40Fのうち、Y軸方向での第1端位置の第2金属ポスト40Aと、を含むループを「第1ループ」と表し、複数の第1金属ポスト30A〜30Fのうち、Y軸方向での第2端位置の第1金属ポスト30Fと、複数の第2金属ポスト40A〜40Fのうち、Y軸方向での第2端位置の第2金属ポスト40Fと、を含むループを「第2ループ」と表すと、第1ループ、第2ループの内径寸法は、2種のループのうち内径寸法の大きいループである。
【0093】
図8A、
図8Bにおいて、破線はヘリカル状のコイルアンテナに対して磁束が出入りする磁束の概念図である。参考例では、ヘリカル状のコイルアンテナの2つの開口面位置のループの実質的な内径寸法は上記ループの開口幅はWより小さい。また、磁束は隣接する金属ポストの間隙から漏れやすい。本実施形態によれば、ヘリカル状のコイルアンテナの2つの開口面位置のループの内径寸法は、2種のループのうち内径寸法の大きいループであるので、コイルアンテナに対して磁束が出入りする実質的なコイル開口は参考例に対して大きい。また、磁束は隣接する金属ポストの間隙から漏れ難い。そのため、コイルアンテナは通信相手のアンテナに対して相対的に広い位置関係で磁界結合できる。つまり、3つ以上のターン数を持つヘリカル状のコイルアンテナを形成する場合、金属ポストを、コイル軸方向の両端側のループ面積が大きくなるように配置することが好ましい。
【0094】
なお、上記ヘリカル状のコイルは、内径寸法の異なる3種以上の複数種のループを含んでもよい。その場合でも、コイルアンテナの2つの開口面位置のループの内径寸法は、複数種のループのうち内径寸法の最も大きいループであればよい。
【0095】
本実施形態によれば次のような効果を奏する。
【0096】
(a)チップ状の無線ICデバイス103は、RFIC素子61がコイルアンテナの内側に配置されている。そのため、RFIC素子61の保護機能が高くなり、RFIC素子61をコイルアンテナの外部に搭載することによる大型化が避けられる。
【0097】
(b)このチップ状の無線ICデバイス103は、RFIC素子61、チップキャパシタ62,63等の表面実装チップ部品および金属ポスト30A〜30F、40A〜40Fは樹脂部材70で保護されるので、無線ICデバイス全体は堅牢である。特に、この無線ICデバイスを樹脂成型物品に埋設する際、射出成型時に流動する高温の樹脂(例えば300℃以上の高温樹脂)に対して上記表面実装チップ部品のはんだ接続部が保護される。つまり、RFIC素子61は、コイルアンテナを構成する金属ポスト30A〜30F、40A〜40F、第1主面側導体パターン10A〜10Lおよび第2主面側導体パターン20A〜20E等によって囲まれたエリアに配置され、且つ、樹脂部材70および第1基板1によって囲まれている。この構成により、RFIC素子61と給電端子(
第1導体パターン)との間の接続部やRFIC素子61に、大きな熱的負荷が加わり難くなる。そのため、無線ICデバイス103を樹脂成型物品(玩具や容器等)に埋め込んだ場合でも、RFIC素子61の動作信頼性を確保でき、RFIC素子61と給電端子との間の接続部の信頼性を高めることができる。すなわち、樹脂成型体に内蔵可能な、つまり、射出成型時の高温下にも耐えられる、高耐熱性の無線ICデバイスを実現できる。また、はんだ接合部は高温化で一旦溶融する場合でも、樹脂部材70と第1基板1は樹脂同士の接合により接着しており、実装部品や金属ポストが外れたり変形したりしないので、冷却後、はんだ接合部の接合状態は正常に戻る。また、そのため、コイルアンテナのインダクタンス値を維持できる。
【0098】
(c)コイルアンテナを構成する第2主面側導体パターン20A〜20Eの主要部が第1基板1の第2主面PS2側に形成されているため、コイルアンテナの実質的な開口径が大きい。よって、チップ状の無線ICデバイス103のサイズと略同等のサイズを持ったコイルアンテナを構成することができ、小型のチップ状部品であるにも関わらず、大きな通信距離を確保することができ、また、通信相手のアンテナに対して相対的に広い位置関係で通信できる。
【0099】
(d)また、無線ICデバイス103は、パターニングによって樹脂部材70の表面に接続導体50A〜50Eを形成するため、金属ポスト30A〜30F、40A〜40Fへの接続導体50A〜50Eの接続が容易となる。
【0100】
(e)複数の第1金属ポストおよび複数の第2金属ポストは、少なくともコイル軸方向の端部においてそれぞれ配列方向に千鳥状に配置されることにより、ターン数の割には(つまり金属ポストの本数が増えても)、小型化できる。
【0101】
《第4の実施形態》
図9は第4の実施形態に係る無線ICデバイス104の斜視図である。第1〜第3の実施形態と異なり、本実施形態では第2基板2を備える。この第2基板2に接続導体50A,50B,50Cが形成される。その他の基本的な構成は第3の実施形態で示したとおりである。
【0102】
本実施形態では、
図9に示す第1主面側導体パターン10A,10B,10C,10D,10E,10Fおよび第2主面側導体パターン20A,20Bが、本発明の「
第1導体パターン」に相当する。
また、本実施形態では、図9に示す接続導体50A,50B,50Cが、本発明の「第2導体パターン」に相当する。
【0103】
図10は無線ICデバイス104の製造工程を順に示す断面図である。無線ICデバイス104は例えば次の工程で製造される。
【0104】
まず、
図10中の(1)に示すように、第1基板1を製作し、第1基板1へRFIC素子61、金属ポスト30A〜30C,40A〜40Cをそれぞれ実装する。
【0105】
また、第2基板2に接続導体50A〜50Cを形成し、ソルダーレジスト膜3を形成し、接続導体50A,50B,50Cの両端に、はんだ等の導電性接合材80A,80B等を形成する。
【0106】
次に、
図10中の(2)に示すように、金属ポスト30A〜30C,40A〜40Cの先端に、第2基板2の接続導体50A,50B,50Cを接続する(導通させる)。これにより、金属ポスト30A〜30C,40A〜40Cに対して第2基板2を取り付ける。
【0107】
次に、
図10中の(3)に示すように、第1基板1と第2基板2との間に樹脂部材71を充填する。ここでは、第1基板1と第2基板2との間に、フェライト粉等の磁性体粉を含む樹脂材料を射出し、硬化させる。
【0108】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0109】
(a)接続導体50A〜50Cは基板に予めパターニングすればよいので、その形成が容易である。
【0110】
(b)第1金属ポスト30A〜30Cおよび第2金属ポスト40A〜40Cへの接続導体の接続が容易である。
【0111】
(c)接続導体50A〜50Cがリジッドな基板(第2基板2)に配置されるので、無線ICデバイスの堅牢性が高い。また、第1主面側導体パターンと金属ポスト(第1金属ポスト、第2金属ポスト)との接続部の電気的接続信頼性が高い。
【0112】
(d)樹脂部材が磁性を有するので、所定のインダクタンスのコイルアンテナを得るに要する全体のサイズを小さくできる。
【0113】
(e)第1主面側導体パターン10A〜10F、第2主面側導体パターン20A,20Bおよび接続導体50A,50B,50Cは磁性体に埋設されないので、第1基板1の表面および第2基板2の表面に磁界が広がり、これらの方向での通信距離が大きくなる。なお、金属ポスト30A〜30C,40A〜40Cの側部を樹脂部材71から露出させてもよい。そのことで、金属ポスト30A〜30C,40A〜40Cが露出する樹脂部材71の表面へも磁界が広がり、これらの方向での通信も可能となる。
【0114】
なお、本実施形態では、第2基板2の一方主面(
図9における第2基板2の上側の面)に接続導体50A〜50Cが形成される例について示したが、この構成に限定されるものではない。第2基板2の他方主面(
図9における第2基板2の下側の面)に接続導体50A〜50Cが形成されていてもよい。この場合、接続導体50A〜50Cの第1端は、層間接続導体(スルーホール導体)等を介して第1金属ポスト30A〜30Cの第2端にそれぞれ接続され(導通し)、接続導体50A〜50Cの第2端は、層間接続導体(スルーホール導体)等を介して第2金属ポスト40A〜40Cの第2端にそれぞれ接続される(導通する)。また、
図7に示す製造方法によって、接続導体50A〜50Cの第1端が、第1金属ポスト30A〜30Cの第2端にそれぞれ直接接続され、接続導体50A〜50Cの第2端が、第2金属ポスト40A〜40Cの第2端にそれぞれ直接接続されていてもよい。
【0115】
《第5の実施形態》
図11は第5の実施形態の係る無線ICデバイス105の斜視図である。第1〜第4の実施形態と異なり、本実施形態の第1金属ポストおよび第2金属ポストは無線ICデバイス105の外面に露出している。また、本実施形態の無線ICデバイス105は第2基板を備えていない。その他の基本的な構成は第4の実施形態で示した通りである。
【0116】
図11に示すように、第1金属ポスト30A〜30Cおよび第2金属ポスト40A〜40Cは、直交X,Y,Z座標でZ軸方向に延びる半円柱状の導体であり、後に詳述するように、円柱状の金属ポストを高さ方向に切断したものである。
【0117】
第1金属ポスト30A〜30Cは、半円柱の切断面である側面を無線ICデバイス105の一方側面(
図11における左側面)と平行に配置し、無線ICデバイス105の一方側面から露出した構成である。第1金属ポスト30A〜30Cの第1端は、第1主面側導体10A,10C,10Eに接続されており(導通しており)、第1金属ポスト30A〜30Cの第2端は、接続導体50A〜50Cに接続されている(導通している)。第2金属ポスト40A〜40Cは、半円柱の切断面である側面を無線ICデバイス105の他方側面(
図11における右側面)と平行に配置し、無線ICデバイス105の他方側面から露出した構成である。第2金属ポスト40A〜40Cの第1端は、第1主面側導体10B,10D,10Fに接続されており(導通しており)、第2金属ポスト40A〜40Cの第2端は、接続導体50A〜50Cに接続されている(導通している)。
図11および
図12に示すように、本実施形態では、第1金属ポスト30A〜30Cおよび第2金属ポスト40A〜40Cが、無線ICデバイス105の樹脂部材72の表面に露出する構成である。
【0118】
また、本実施形態では、第1主面側導体パターン10A〜10F、第2主面側導体パターン20A,20B、第1金属ポスト30A〜30B、第2金属ポスト40A〜40B、および接続導体50A〜50Cによってコイルアンテナが構成されている。コイルアンテナを構成する第2主面側導体パターン20A,20B、第1金属ポスト30A〜30C、第2金属ポスト40A〜40C、および接続導体50A〜50Cは、無線ICデバイス105の外面に露出している。したがって、本実施形態の無線ICデバイス105は、コイルアンテナを構成する導体の大部分が無線ICデバイス105の外面に露出する構成である。
【0119】
図12は無線ICデバイス105の製造工程を順に示す断面図である。無線ICデバイス105は例えば次の工程で製造される。
【0120】
まず、
図12中の(1)に示すように、第1基板1を製作し、ソルダーレジスト膜3を形成し、RFIC素子61を実装するためのランドや金属ポスト90を実装するためのランド等に、はんだペースト等の導電性接合材81を形成する。
【0121】
次に、
図12中の(2)に示すように、第1基板1に、第1基板1へRFIC素子61、金属ポスト90等をそれぞれ実装する。
【0122】
次に、
図12中の(3)に示すように、金属ポスト90と同じ高さまで樹脂部材72を形成し、樹脂部材72の表面に接続導体55を形成する。
【0123】
具体的には、フェライト粉やパーマロイ粉等の磁性体粉を含む樹脂材料を所定高さ(金属ポスト90の高さ以上)に塗付し、その後、樹脂部材72の表面を平面的に研磨していくことで、金属ポスト90の頭部を露出させる。また、樹脂部材72は、液状樹脂の塗付により設けても良いし、半硬化シート状の樹脂の積層によって設けてもよい。
【0124】
次に、
図12中の(4)に示すように、無線ICデバイスを個片に分離する。上記の工程は、マザー基板状態のまま処理される。そのため、最後にマザー基板を、
図12中の(3)に示した分離線CLに沿って分離する。分離線DLに沿って分離されることにより、金属ポスト90は、第1金属ポスト30A〜30C、第2金属ポスト40A〜40Cに分割される。
【0125】
本実施形態によれば、第1金属ポスト30A〜30Cおよび第2金属ポスト40A〜40Cが、無線ICデバイス105の樹脂部材72の表面に露出するため、効率よく磁界を放射することができる。また、無線ICデバイス105は、コイルアンテナの大部分が無線ICデバイス105の外面に露出するため、更に効率よく磁界を放射することができる。
【0126】
なお、必要に応じて、無線ICデバイス105に、バレル処理や、無電解ニッケル金めっき処理をしてもよい。これらの処理によって、金属ポスト90の分割面や接続導体50A、第2主面側導体パターン20A等の表面にめっき膜が形成されるため、膜厚が厚くなり、それらのDCRが小さくなって、導体損失が低減できる。また、無線ICデバイス105の耐環境性が向上する。
【0127】
《第6の実施形態》
図13は第6の実施形態に係る無線ICデバイス106の斜視図である。第1〜第5の実施形態と異なり、本実施形態の無線ICデバイス106は、直交X,Y,Z座標でX軸方向に延びる第1主面側導体パターンを有していない。また、本実施形態の無線ICデバイス106は第2基板を備えていない。その他の基本的な構成は第4の実施形態で示した通りである。
【0128】
第1基板1の第1主面には接続電極17A,17B,18A,18B,18C,19A,19B,19Cが形成される。接続電極17A,17BはRFIC素子を実装するためのランド(給電端子)である。また、接続電極18A,18B,18Cは第1金属ポスト30A〜30Cを実装するためのランドであり、接続電極19A,19B,19Cは第2金属ポスト40A〜40Cを実装するためのランドである。第1基板1の第2主面には第2主面側導体パターン20A,20B,20C,20Dが形成される。
【0129】
本実施形態では、これら第2主面側導体パターン20A,20B,20C,20Dが、本発明の「
第1導体パターン」に相当する。
また、本実施形態では、図13に示す接続導体50A,50B,50Cが、本発明の「第2導体パターン」に相当する。
【0130】
接続電極17Aは、第1基板1に形成された層間接続導体(スルーホール導体)を介して第2主面側導体パターン20Aの第2端に接続される(導通する)。接続電極17Bは、第1基板1に形成された層間接続導体(スルーホール導体)を介して第2主面側導体パターン20Dの第2端に接続される(導通する)。
【0131】
第2主面側導体パターン20Aの第1端は層間接続導体(スルーホール導体)を介して接続電極18Aに接続される(導通する)。第2主面側導体パターン20Bの第1端は層間接続導体(スルーホール導体)を介して接続電極18Bに接続され(導通し)、第2端は層間接続導体(スルーホール導体)を介して接続電極19Aに接続される(導通する)。第2主面側導体パターン20Cの第1端は層間接続導体(スルーホール導体)を介して接続電極18Cに接続され(導通し)、第2端は層間接続導体(スルーホール導体)を介して接続電極19Bに接続される(導通する)。第2主面側導体パターン20Dの第2端は層間接続導体(スルーホール導体)を介して接続電極19Cに接続される(導通する)。
【0132】
第2主面側導体パターン20A〜20C、接続電極17A,17B,18A〜18C,19A〜19C、第1金属ポスト30A〜30C、接続導体50A〜50C、第2金属ポスト40A〜40Cおよび層間接続導体によって3ターンのヘリカル状コイルアンテナが構成される。
【0133】
本実施形態によれば、ヘリカル状コイルアンテナの一部を構成する
第1導体パターンが全て、第1基板1の第2主面に形成される第2主面側導体パターン20A,20B,20C,20Dであるため、第1基板1の第1主面に形成されている場合と比べ、コイル開口を大きくできる。したがって、コイル開口を利用して通信でき、通信可能距離を拡張できる。
【0134】
なお、第1の実施形態に係る無線ICデバイス101のように、ヘリカル状コイルアンテナの一部を構成する
第1導体パターンが全て、第2主面側導体パターンであってもよい。
【0135】
《第7の実施形態》
図14は第7の実施形態に係る無線ICデバイス107の斜視図である。第2の実施形態等と異なり、本実施形態では、RFIC素子61は第1基板1の第2主面PS2側に実装される。
図14では、RFIC素子61を第1基板1から分離された状態を示す。
【0136】
第1基板1の第2主面PS2には給電用接続導体13A,13C(第2主面側導体パターン)が形成される。給電用接続導体13A,13Cはスルーホールめっきを介して第1主面側導体パターン10A,10Cと導通する。
【0137】
本実施形態では、
図14に示す第1主面側導体パターン10A,10B,10Cおよび給電用接続導体13A,13Cが、本発明の「
第1導体パターン」に相当する。
また、本実施形態では、図14に示す接続導体50A,50Bが、本発明の「第2導体パターン」に相当する。
【0138】
なお、RFIC素子61以外にチップキャパシタ等の部品も第1基板1の第2主面PS2に実装されてもよい。
【0139】
この場合、RFIC素子61を搭載する前に、RFIC素子61の接続部に測定器のプローブを接続してコイルアンテナの特性を測定できるため、歩留まりの向上を図ることができる。
【0140】
《第8の実施形態》
図15は、第8の実施形態に係る無線ICデバイス108と、この無線ICデバイス108の回路基板200への実装状態を示す斜視図である。
図16は無線ICデバイス108の回路基板200への実装状態を示す断面図である。
【0141】
本実施形態では、コイルアンテナに対する磁芯として作用するフェライト焼結体等の焼結体系の磁性体コア4を備える。また、樹脂層70A,70B,70Cで非磁性体の樹脂部材は構成される。その他の全体的な構成は第3の実施形態で示したとおりである。
【0142】
図17は無線ICデバイス108の製造工程を順に示す断面図である。無線ICデバイス108は例えば次の工程で製造される。
【0143】
図17中の(1)に示すように、第1基板1を製作し、第1基板1へRFIC素子61、金属ポスト30A,40A等をそれぞれ実装する。
【0144】
その後、第1基板1のRFIC素子61実装面(第1主面PS1)にエポキシ樹脂等の非磁性体の樹脂層70Aを被覆する。
【0145】
図17中の(2)に示すように、樹脂層70Aの硬化後、直方体形状の磁性体コア4を載置する。この磁性体コア4は、小型で高い透磁率(例えば比透磁率50〜300程度)を有するフェライト焼結体であることが好ましい。磁性体コア4の載置は、樹脂層70Aの硬化前であってもよい。
【0146】
次に、
図17中の(3)に示すように、磁性体コア4の厚みまでエポキシ樹脂等の樹脂層70Bを被覆する。
【0147】
引き続いて、
図17中の(4)に示すように、金属ポスト30A,40A等の高さまでエポキシ樹脂等の樹脂層70Cを形成する。具体的には、エポキシ樹脂等を所定高さ(金属ポスト30A,40Aの高さ以上)に塗布し、その後、樹脂層70Cの表面を平面的に研磨していくことで、金属ポスト30A,40Aの頭部を露出させる。
【0148】
次に、
図17中の(5)に示すように、樹脂層70Cの表面に接続導体50A等を形成する。この接続導体50A等の形成方法は第3の実施形態で示したとおりである。
【0149】
以降のCuめっき、Auめっき、接続導体50A側の保護用樹脂膜の形成、個片分離の各工程についても第3の実施形態で示したとおりである。第1基板1の裏面側の保護用樹脂膜(ソルダーレジスト膜)は、他の基板への接続部分を除いた部分を覆うように形成すればよい。
【0150】
図18は、本実施形態の無線ICデバイスの別の構成例を示す断面図である。
図16と対比すれば明らかなように、磁性体コア4と接続導体50Aとの間に樹脂層70Cは無く、樹脂層70A,70Bで樹脂部材は構成される。この構成によれば、サイズが大きく、透磁率が高い(例えば比透磁率50〜300程度)磁性体コアを埋設することができる。または、樹脂部材全体の厚みが小さくすることで低背化できる。
【0151】
本実施形態では、第1金属ポスト30A等、第2金属ポスト40A等、接続導体50A等、第1主面側導体パターン10A等および第2主面側導体パターン20A等でコイルアンテナが構成され、このコイルアンテナの内側(コイル巻回範囲内)に磁性体コアを備える。
【0152】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0153】
(a)コイルアンテナを大型化することなく、所定のインダクタンスを有するコイルアンテナが得られる。また、コイルアンテナを低背にしても所定のインダクタンスを得ることができる。
【0154】
(b)磁性体コアの集磁効果により、通信相手のアンテナとの磁界結合を高めることができる。
【0155】
(c)RFIC素子61のデジタル信号の入出力によるノイズがコイルアンテナに殆ど重畳されない。この理由は以下に述べるとおりである。
【0156】
RFIC素子61が搭載される第1基板1が回路基板200に実装される構造であるので、樹脂部材の上側に実装する場合に比べて、RFIC素子61は回路基板200に近い側に配置される。そのため、RFIC素子61のデジタル信号が伝搬する線路は回路基板200に構成されるデジタル回路と最短距離で接続される。つまりデジタル信号がアナログ回路のノイズ源としてコイルアンテナに近接する距離は最短となる。また、RFIC素子61とコイルアンテナとについても最短距離で接続される。すなわち、アナログ信号回路とデジタル信号回路(RFIDシステム用の回路)は上下に分離された構造である。そのため、上記デジタル信号の伝搬により生じる磁界(ノイズ)はコイルアンテナと不要結合することが少なく、非常に微弱なアナログ信号回路に上記ノイズが重畳されず、無線通信に悪影響がほとんど生じない。
【0157】
《第9の実施形態》
図19は第9の実施形態に係る無線ICデバイス109の斜視図である。この無線ICデバイス109の第1基板1の構成、金属ポスト30A,30B,40A,40Bの構成、接続導体50A,50Bの構成は第2の実施形態で示したとおりである。本実施形態の無線ICデバイス109では、第1基板1にRFIC素子61が実装された後、樹脂部材70が設けられ、更に樹脂部材70の一方の側面に磁性体シート5が貼付される。磁性体シート5は例えばフェライト粉等の磁性体粉がエポキシ樹脂等の樹脂中に分散された樹脂シートである。
【0158】
本実施形態では、第1金属ポスト30A,30B、第2金属ポスト40A,40B、接続導体50A,50B、第1主面側導体パターン10A〜10Dおよび第2主面側導体パターン20でコイルアンテナが構成され、このコイルアンテナの一方のコイル開口に磁性体シート5が存在する。
【0159】
本実施形態では、これら第1主面側導体パターン10A〜10Dおよび第2主面側導体パターン20が、本発明の「
第1導体パターン」に相当する。
また、本実施形態では、接続導体50A,50Bが、本発明の「第2導体パターン」に相当する。
【0160】
本実施形態によれば、コイルアンテナを大型化することなく、所定のインダクタンスを有するコイルアンテナが得られる。また、このRFIDデバイスを物品(特に物品の金属表面)に貼り付ける場合、磁性体シートを設けた側を物品への貼り付け面とすることで、コイルアンテナに対する物品の影響を抑制できる。また、磁性体コアの集磁効果により、通信相手のアンテナとの磁界結合を高めることができる。
【0161】
《第10の実施形態》
図20は第10の実施形態に係る無線ICデバイス110の斜視図である。
図21は無線ICデバイス110の平面図である。本実施形態の無線ICデバイス110はRFIDのリーダ/ライタ装置として用いられる。
【0162】
第1基板1の第1主面PS1に第1主面側導体パターン10A〜10Dが形成される。第1基板1の第2主面PS2にはデジタル信号端子14A,14B、NC端子(空き端子)16A,16B、配線導体15A,15Bがそれぞれ形成される。つまり、RFIC素子64は、2つのアンテナ接続パッドと2つのデジタル信号用パッドを備える。RFIC素子64の一方のデジタル信号用端子は、第1基板1に形成された層間接続導体(スルーホール導体)および配線導体15Aを介してデジタル信号端子14Aに接続されており、他方のデジタル信号用端子は、第1基板1に形成された層間接続導体(スルーホール導体)および配線導体15Bを介してデジタル信号端子14Bに接続される。その他の基本構成は第8の実施形態で示した無線ICデバイス108と同じである。
【0163】
本実施形態では、
図20に示す第1主面側導体パターン10A,10B,10C,10Dおよび第2主面側導体パターン20が、本発明の「
第1導体パターン」に相当する。
【0164】
図22は無線ICデバイス110の回路図である。RFIC素子64のアンテナ接続パッドにはコイルアンテナANTが接続され、デジタル信号用パッドにデジタル信号端子14A,14Bが接続される。デジタル信号端子14A,14Bにはホスト装置が接続される。これによりRFIDシステム用のリーダ/ライタ装置が構成される。このRFIC素子64とホスト装置とは、例えばI2Cバス規格等のシリアルバスで通信される。
【0165】
なお、デジタル信号端子14A,14BはRFIC64のデジタル信号用パッドの近傍に配置して、配線導体15A,15Bを実質的に無くしてもよい。
【0166】
なお、必要に応じて、無線ICデバイス110に、バレル処理や、無電解ニッケル金めっき処理をしてもよい。これらの処理によって、接続導体、第2主面側導体パターン20、デジタル信号端子14A,14B、NC端子(空き端子)16A,16B等の表面にめっき膜が形成されるため、膜厚が厚くなり、それらのDCRが小さくなって、導体損失が低減できる。また、無線ICデバイス110の耐環境性が向上する。
【0167】
《第11の実施形態》
図23は第11の実施形態に係るRFIDタグ付き物品301の斜視図である。
図24はRFIDタグ付き物品301の正面図である。このRFIDタグ付き物品301は樹脂成型によるミニチュアカー等の玩具である。このRFIDタグ付き物品301が本発明の「樹脂成型体」に相当する。
【0168】
RFIDタグ付き物品301は無線ICデバイス109Aを備える。この無線ICデバイス109Aは、第9の実施形態で示した無線ICデバイス109と基本構成は同じである。本実施形態の無線ICデバイス109Aのコイルアンテナは第1金属ポスト30A〜30Eを含み、コイルアンテナのターン数は“5”である。この無線ICデバイス108AはRFIDタグとして用いられる。
【0169】
無線ICデバイス109Aは樹脂成型体201内に埋設され、物品301の外部には露出しない。無線ICデバイス109Aは、樹脂成型体201の射出成型用金型内に固定された状態で樹脂が射出成型される。無線ICデバイス109Aは玩具の底部(
図23の視点で、RFIDタグ内蔵物品301の上面付近)に埋設される。また、無線ICデバイス109Aの磁性体シート5は、コイルアンテナより樹脂成型体201の内部(奥部)に位置する。樹脂成型体201の内部には、例えばバッテリーパック130や金属部材131等の導電体を備える。これらの導電体とコイルアンテナとの間に磁性体シート5が介在することで、コイルアンテナは上記導電体の影響を受け難く、また渦電流による損失も低く抑えられる。
【0170】
RFIC素子61および金属ポスト30A〜30E、40A〜40Eは樹脂部材70で保護されるので、無線ICデバイス109Aは堅牢である。そして、射出成型時に高熱にて流動する樹脂に対して上記表面実装チップ部品および金属ポストのはんだ接続部が保護される。すなわち、射出成型時の熱によって上記表面実装チップ部品および金属ポストのはんだ接続部のはんだは一旦溶融しても、RFIC素子61等の表面実装チップ部品および金属ポストと第1基板1との位置関係は樹脂部材70で固定されたままである。例えば射出成型金型の温度は100数十℃であるが、射出成型用ノズル先端部の温度は300数十℃にも達する。そのため、上記表面実装チップ部品および金属ポストのはんだ接続部のはんだは一旦溶融する可能性がある。しかし、たとえはんだが一旦溶融しても、上記表面実装チップ部品および金属ポストと第1基板1との位置関係は樹脂部材70で保持・固定されたままであるので、冷却後は上記表面実装チップ部品および金属ポストのはんだ接続部は、射出成型前の接続状態に戻る。因みに、ポリイミド系の樹脂膜で被覆されたCuワイヤーが巻回された、通常の巻線型コイル部品であると、射出成型時の熱で被覆が溶けてCuワイヤー間が短絡してしまう。そのため、従来の通常の巻線型コイル部品をコイルアンテナとして利用することは困難である。
【0171】
無線ICデバイス109Aのコイルアンテナの巻回軸は、ミニチュアカー等の玩具の底面に対する法線方向を向く。そのため、この玩具の底面をリーダ/ライタ装置の読み取り部に対向させることで、リーダ/ライタ装置は無線ICデバイス109Aと通信する。このことで、リーダ/ライタ装置またはリーダ/ライタ装置に接続されるホスト装置は所定の処理を行う。
【0172】
なお、本実施形態では、RFIDタグ付き物品301が樹脂成型による玩具である例を示したが、これに限定されるものではない。RFIDタグ付き物品は、樹脂成型により無線ICデバイスを埋設した食品等の容器であってもよい。
【0173】
《第12の実施形態》
図25は第12の実施形態に係るRFIDタグ内蔵物品302の斜視図であり、
図26はRFIDタグ内蔵物品302の断面図である。
図27は
図26の部分拡大図である。
【0174】
RFIDタグ内蔵物品302は例えばスマートフォン等の携帯電子機器であり、無線ICデバイス108および共振周波数を持つブースターアンテナ120を備える。
図25の視点でRFIDタグ内蔵物品302の上面側に下部筐体202があって、下面側に上部筐体203がある。下部筐体202と上部筐体203とで囲まれる空間の内部に、回路基板200、無線ICデバイス108および共振周波数を持つブースターアンテナ120を備える。
【0175】
無線ICデバイス108は第8の実施形態で示したとおりである。無線ICデバイス108は、
図26、
図27に表れるように、回路基板200に実装される。回路基板200には無線ICデバイス108以外の部品も実装される。
【0176】
共振周波数を持つブースターアンテナ120は下部筐体202の内面に貼付される。このブースターアンテナ120はバッテリーパック130と重ならない位置に配置される。ブースターアンテナ120は、絶縁体基材123および絶縁体基材123に形成されるコイルパターン121,122を含む。
【0177】
無線ICデバイス108は、そのコイルアンテナおよびブースターアンテナ120に対して磁束が鎖交するように配置される。すなわち、無線ICデバイス108のコイルアンテナはブースターアンテナ120のコイルと磁界結合するように、無線ICデバイス108とブースターアンテナ120は配置される。
図27中の破線はその磁界結合に寄与する磁束を概念的に表す。
【0178】
無線ICデバイス108のRFIC素子61は回路基板200側を向き(近接し)、コイルアンテナがブースターアンテナ120側を向く(近接する)。そのため、無線ICデバイス108のコイルアンテナとブースターアンテナ120との結合度は高い。また、RFIC素子61と他の回路素子とをつなぐ配線(特にデジタル信号ラインや電源ライン)はコイルアンテナの磁束と実質的に平行に配線されるのでコイルアンテナとの結合は小さい。
【0179】
図28はブースターアンテナ120の斜視図であり、
図29はブースターアンテナ120の回路図である。ブースターアンテナ120は、第1コイルパターン121と第2コイルパターン122はそれぞれ矩形渦巻状にパターン化された導体であり、平面視で同方向に電流が流れる状態で容量結合するようにパターン化される。第1コイルパターン121と第2コイルパターン122の間には浮遊容量が形成される。第1コイルパターン121および第2コイルパターン122のインダクタンスと浮遊容量のキャパシタンスとでLC共振回路が構成される。このLC共振回路の共振周波数は、このRFIDシステムの通信周波数と実質的に等しい。通信周波数は例えば13.56MHz帯である。
【0180】
本実施形態によれば、ブースターアンテナの大きなコイル開口を利用して通信できるので、通信可能最長距離を拡張できる。
【0181】
最後に、上述の各実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能であることは明らかである。例えば異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0182】
例えば、コイルアンテナ(更にはRFIDタグ)は、HF帯に限定されるものではなく、LF帯やUHF帯、SHF帯にも適用できる。また、RFIDタグが付される物品は玩具に限定されるものではなく、たとえば携帯電話等の携帯型情報端末であってもよいし、足場材のような建材、ガスボンベ等の産業材であってもよい。
【0183】
なお、上述の実施形態では、RFIC素子61が第1基板1の第1主面PS1および第2主面PS2のいずれかに搭載されている構成について示したが、この構成に限定されるものではない。RFIC素子61は、例えば第1基板1に内蔵されていてもよい。また、第1基板1の第1主面PS1または第2主面PS2のいずれかにキャビティが形成され、このキャビティ内にRFIC素子が収容される構成であってもよい。
コイルアンテナを有する無線ICデバイス(101)は、第1基板(1)と、第1金属ポスト(30)と、第2金属ポスト(40)と、接続導体(50)とを備える。第1基板(1)の第1主面(PS1)に線状導体パターン(第1線状導体パターン(10A,10B))が形成される。第1金属ポスト(30)と第2金属ポスト(40)は第1基板(1)の第1主面(PS1)に対して法線方向へ延びるように配置され、それぞれの第1端(30E1,40E1)が第1線状導体パターン(10A,10B)に接続される。接続導体(50)の第1端(50E1)は第1金属ポスト(30)の第2端(30E2)に接続され、接続導体(50)の第2端(50E2)は第2金属ポスト(40)の第2端(40E2)に接続される。第1線状導体パターン(10A)の第2端(10AE2)および第1線状導体パターン(10B)の第2端(10BE2)はそれぞれ給電端である。