(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958691
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/00 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
G01L19/00 101
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-82910(P2012-82910)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-213683(P2013-213683A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】篠原 康英
(72)【発明者】
【氏名】石岡 暁
【審査官】
濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−126093(JP,U)
【文献】
実開昭54−122843(JP,U)
【文献】
特開平09−045759(JP,A)
【文献】
特開平05−248542(JP,A)
【文献】
特開平10−019704(JP,A)
【文献】
米国特許第05535629(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 19/00−19/16
F16J 15/08−15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材に形成された孔部に、前記孔部の底面に配置されたシール部材の前記底面と対向する面と圧接するように取り付けられる圧力センサであって、
前記孔部の内周面に形成された雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部を備え、
前記シール部材に対向して配置される対向面の径方向において、環状の凹部が2個以上形成されており、
2個以上の前記凹部は、当該凹部の径方向幅が前記シール部材の前記底面と対向する面の径方向幅よりも小さく設定されているとともに、前記シール部材の前記底面と対向する面の径方向幅内に配置されている
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
2個以上の前記凹部の半数以上は、前記対向面の径方向外側寄りに形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
被取付部材に形成された孔部に、前記孔部の底面に配置されたシール部材の前記底面と対向する面と圧接するように取り付けられる圧力センサであって、
前記孔部の内周面に形成された雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部を備え、
前記シール部材に対向して配置される対向面に、環状の凹部が1個形成されており、
1個の前記凹部は、前記対向面の径方向外側寄りに形成されており、
1個の前記凹部は、当該凹部の径方向幅が前記シール部材の前記底面と対向する面の径方向幅よりも小さく設定されているとともに、前記シール部材の前記底面と対向する面の径方向幅内に配置されている
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項4】
前記対向面には、前記凹部として環状のV溝が形成されており、
前記V溝の外周側の傾斜面と軸方向との間の角度は、前記V溝の内周側の傾斜面と軸方向との間の角度よりも小さい
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記孔部は、
第一の孔部と、
前記第一の孔部に連通するとともに前記被取付部材の表面に開口を有し、前記第一の孔部よりも大径の第二の孔部と、
から構成されており、
前記シール部材は、前記第二の孔部の底面に配置されており、
前記第一の孔部に収容されて圧力を受ける感受部と、
前記第二の孔部に収容されるとともに、前記雄ネジ部及び前記対向面を有する取付部と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速液体クロマトグラフィー分析装置等の各種分析装置において、分析対象となる試料液が配管を流れる際の圧力を検知して制御部に信号を送るために圧力センサが用いられている。
【0003】
例えば、試料液中の複数成分を分離分析する手段として汎用される高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析装置では、測定結果の信頼性を確保するために、試料液を送液する送液ポンプが予め決められた流速で送液を行うことが非常に重要な事項である。そのため、HPLC分析装置による測定中は、流路である配管に設けられた圧力センサを用いて送液圧力をモニタすることによって、送液が正しく行われているかどうかが判断される。
【0004】
例えば、引用文献1には、送液圧力を検出する圧力センサと流路切替バルブを流路内に設け、圧力センサが検出した送液圧力に従って、流路切替バルブを適宜に切り替えて圧力変動を抑える制御技術が記載されている。HPLC分析装置におけるポンプの最大使用圧力は40MPa程度であるが、最近の超高速液体クロマトグラフ(Ultra High Performance Liquid Chromatography:UHPLC)分析装置では、より高速・高分離能での分析を可能とするために、100MPa以上での高圧送液が行われている。そのため、100MPa以上の高圧に適した圧力センサが望まれている。
【0005】
引用文献1に記載された圧力センサは、被取付部材に締結されるセンサ本体を備え、センサ本体は、被取付部材のねじ穴に螺合する取付ねじ部と、この取付ねじ部の先端側に形成される円筒状の先端軸部と、この先端軸部の先端側に形成される環状のシール座面と、このシール座面から突出する円筒状のシール軸部と、を有し、Oリングが、このシール軸部にバックアップリングを介して嵌められており、検出圧力によってOリングがバックアップリングとシール軸部の外周面とシール穴の内周面に押し付けられて密着し、センサ本体と被取付部材の間を密封する。
【0006】
また、引用文献2に記載された圧力センサは、半導体の圧力センサ素子と、この圧力センサ素子を収容し保持したセンサケースと、被測定圧を導入する圧力導入筒と、を備え、センサケースがハウジング内に取り付けられている。このセンサケースとハウジングの一方には、接合部分の全周にわたって設けられた凸条が形成されており、センサケースとハウジングの他方には、接合部分の全周にわたって設けられて凸条が嵌合する凹部が形成されている。センサケースとハウジングとの間には、凸条が凹部に嵌合して位置決めされた状態で、充填剤が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−57418号公報
【特許文献2】特開平10−318869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のようにネジ締付によってOリングをシール穴の内周面に押し付ける圧力封止構造では、高圧になるに伴ってより大きな締付トルクが必要となるので、取付ネジ近くに感圧面が位置するフラッシュダイアフラム型圧力センサにおいては、ネジ締付力による変形が感圧部に伝達してしまい、圧力センサの取付前後でゼロ点の出力が大きく変化する問題が発生していた。ここでいうゼロ点とは、圧力センサに大気圧が掛かっている状態のことである。
【0009】
また、特許文献2のようにセンサケースを樹脂に埋め込んで封止する構造では、装置の組立現場での作業が難しく、さらに、分解不可能となるためメンテナンス性が悪くなるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、取付及び分解が容易であり、さらには高圧対応が可能な圧力センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するために、本発明の圧力センサは、被取付部材に形成された孔部に、前記孔部の底面に配置されたシール部材の前記底面と対向する面と圧接するように取り付けられる圧力センサであって、前記孔部の内周面に形成された雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部を備え、前記シール部材に対向して配置される対向面の径方向において、
環状の凹部が2個以上形成されて
おり、2個以上の前記凹部は、当該凹部の径方向幅が前記シール部材の前記底面と対向する面の径方向幅よりも小さく設定されているとともに、前記シール部材の前記底面と対向する面の径方向幅内に配置されていることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によると、ネジによって被取付部材に締結されるので、取付及び分解が容易である。また、対向面に
形成された2個以上の環状の凹部にシール部材が入り込むので、高圧に対応可能なシール性能を確保することができるとともに、圧力印加前後におけるゼロ点(圧力センサに大気圧が掛かっている状態)の変動、すなわち、ゼロ点変動を抑えることができる。
【0013】
2個以上の前記凹部の半数以上は、前記対向面の径方向外側寄りに形成されていること
が望ましい。
【0014】
かかる構成によると、半数以上の
環状の凹部が径方向外側寄りに形成されているので、雄ネジ部による軸方向の力と
凹部に作用する反力とによるモーメントを小さくすることができ、圧力印加前後のゼロ点変動を抑えることができる。
【0015】
また、本発明の圧力センサは、被取付部材に形成された孔部に、前記孔部の底面に配置されたシール部材の前記底面と対向する面と圧接するように取り付けられる圧力センサであって、前記孔部の内周面に形成された雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部を備え、前記シール部材に対向して配置される対向面に、
環状の凹部が1個形成されており、
1個の前記凹部は、前記対向面の径方向外側寄りに形成されて
おり、1個の前記凹部は、当該凹部の径方向幅が前記シール部材の前記底面と対向する面の径方向幅よりも小さく設定されているとともに、前記シール部材の前記底面と対向する面の径方向幅内に配置されていることを特徴とする。
【0016】
かかる構成によると、
環状の凹部が径方向外側寄りに形成されているので、雄ネジ部による軸方向の力と
凹部に作用する反力とによるモーメントを小さくすることができ、圧力印加前後のゼロ点変動を抑えることができる。
【0017】
前記対向面には、前記凹部として環状のV溝が形成されており、前記V溝の外周側の傾斜面と軸方向との間の角度は、前記V溝の内周側の傾斜面と軸方向との間の角度よりも小さい構成であってもよい。
【0018】
かかる構成によると、高圧印加時にシール部材が外周方向へ滑ろうとした場合に凹部の外周側の面によってシール部材が止められ、滑りを抑え、圧力印加前後のゼロ点変動を抑えることができる。
【0019】
前記孔部は、第一の孔部と、前記第一の孔部に連通するとともに前記被取付部材の表面に開口を有し、前記第一の孔部よりも大径の第二の孔部と、から構成されており、前記シール部材は、前記第二の孔部の底面に配置されており、前記第一の孔部に収容されて圧力を受ける感受部と、前記第二の孔部に収容されるとともに、前記雄ネジ部及び前記対向面を有する取付部と、を備える構成であってもよい。
【0020】
かかる構成によると、感受部と雄ネジ部とが離間しているので、ネジ締結力による変形の感受部への伝達を低減し、ネジ締結前後におけるゼロ点変動を抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、圧力センサの取付及び分解が容易であり、さらには高圧対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の
第一の参考形態に係る圧力センサを説明するための図であって、(a)は圧力センサの部分断面図、(b)は圧力センサを被取付部材に取り付けた状態を示す断面図、(c)は(b)のX1部拡大図である。
【
図2】本発明の
第一の実施形態に係る圧力センサを説明するための図であって、(a)〜(c)は圧力センサの凹部内にシール部材が入り込む状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の
第二の参考形態に係る圧力センサを説明するための図であって、(a)は圧力センサを被取付部材に取り付けた状態を示す断面図、(b)は(a)のX2部拡大図である。
【
図4】第一の比較例に係る圧力センサを説明するための図であって、(a)は圧力センサを被取付部材に取り付けた状態を示す断面図、(b)は(a)のX3部拡大図である。
【
図5】第二の比較例に係る圧力センサを説明するための図であって、(a)は圧力センサを被取付部材に取り付けた状態を示す断面図、(b)は(a)のX4部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の
実施形態及び参考形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0024】
<第一の参考実施形態>
図1に示すように、本発明の
第一の参考形態に係る圧力センサ1Aは、被取付部材30に形成された孔部31に取り付けられて、被取付部材30内の流体の圧力を検出するセンサである。
【0025】
<被取付部材>
被取付部材における孔部31は、圧力センサ1Aが取り付けられる部位であって、小径の第一の孔部31aと、大径の第二の孔部31bと、から構成される。第一の孔部31aの底面には、圧力検出対象である流体が流通可能な、さらに小径の第三の孔部32が連通している。第二の孔部31bは、第一の孔部31aに連通するとともに被取付部材30の表面に開口を有している。第三の孔部32、第一の孔部31a及び第二の孔部31bは、同軸に形成されている。また、第二の孔部31bの内周面には、雌ネジ部31b1が形成されている。
【0026】
<シール部材>
第二の孔部31bの底面には、環状のシール部材(環状のガスケット、Oリング等)40が配置されている。シール部材40は、弾性材料(ゴム、樹脂等)又は軟質金属(銅、アルミ等)から形成されている。シール部材40の内径は、第一の孔部31aの内径よりも大きく、シール部材40の外径は、第二の孔部31bの内径よりも小さい。
【0027】
<圧力センサ>
圧力センサ1Aは、頭部10と、収容部20と、を備える。頭部10は、圧力センサ1Aが孔部31に取り付けされた際に孔部31から露出する部分であり、スパナかけが可能な形状(例えば、六角形状)を呈する。収容部20は、圧力センサ1Aが孔部31に取り付けられた際に孔部31に収容される部分であり、有底円筒形状を呈する。収容部20は、感受部21と、取付部22Aと、を備える。かかる収容部20は、シール部材40よりも硬い金属から一体に形成されている。
【0028】
感受部21は、有底円筒の底面に相当しており、その先端部が第一の孔部31aに収容され、第三の孔部32を介して第一の孔部31aに流通した流体の圧力を感受する部位である。感受部21の外径は、第一の孔部31aの内径よりも小さい。感受部21の内側面には、歪みゲージ23が取り付けられており、歪みゲージ23に電気的に接続された信号線24は、頭部10を介して外部に延設されている。すなわち、圧力センサ1Aにおいて、感受部21によって感受された流体の圧力は、歪みゲージ23によって電気信号に変換され、かかる電気信号が信号線24を介して外部装置へ出力される。
【0029】
取付部22Aは、有底円筒の筒面に相当しており、感受部21と同軸であるとともに感受部21よりも大径に形成されている。取付部22Aの外周面には雄ネジ部22aが形成されているとともに、取付部22Aの環状底面(対向面)には2個の凸部22b,22bが形成されている。取付部22Aの外径は、第二の孔部31bの内径とほぼ同一である。
【0030】
2個の凸部22b,22bは、対向面の径方向に離間して配列されており、それぞれ全周にわたって同一形状に形成された環状を呈するとともに、断面視V字形状を呈する。感受部21の外周縁、取付部22Aの外周縁(すなわち、雄ネジ部22a)、及び、2個の凸部22b,22bは、同心円である。大径である外側の凸部22bは、径方向外側寄り、すなわち、対向面の径方向中間地点よりも外周面側に形成されており、小径である内側の凸部22bは、径方向内側寄り、すなわち、対向面の径方向中間地点よりも内周面側に形成されている。凸部22bの先端角度は、60°である。なお、凸部22bの内周側の面と軸方向との間の傾斜角度α1と凸部22bの外周側の面と軸方向との間の傾斜角度α2とは、それぞれ30°である。凸部22bの先端角度を60°前後に設定した理由は、シール部材40への食い込みやすさと強度のバランスがとれるためである。かかる凸部22bの先端角度は、適宜変更可能である。
【0031】
圧力センサ1Aを被取付部材30に取り付ける際には、作業者は、シール部材40を第二の孔部31bの底面に配置した後に、圧力センサ1Aを部分的に孔部31に挿入した状態でスパナによって頭部10を保持し、圧力センサ1Aを回転させる。雄ネジ部22aが雌ネジ部31b1に螺合することによって、圧力センサ1Aは、回転しながら孔部31内に進入していき、感受部21が第一の孔部31aに収容され、取付部22Aの対向面がシール部材40の上面に圧接し、2個の凸部22b,22bがシール部材40に食い込む。また、シール部材40の下面が第二の孔部31bの底面に圧接し、圧力センサ1Aと孔部31との間が、シール部材40によって密封される。
【0032】
本発明の
第一の参考形態に係る圧力センサ1Aは、ネジによって被取付部材30に締結されるので、取付及び分解が容易である。また、圧力センサ1Aは、対向面に形成された2個の凸部22b,22bがシール部材40に食い込むので、高圧に対応可能なシール性能を確保することができるとともに、圧力印加前後におけるゼロ点(圧力センサに大気圧が掛かっている状態)の変動、すなわち、ゼロ点変動を抑えることができる。また、圧力センサ1Aは、感受部21と雄ネジ部31bとが離間しているので、ネジ締結力による変形の感受部21への伝達を低減し、ネジ締結前後におけるゼロ点変動を抑えることができる。
【0033】
<第一の実施形態>
続いて、本発明の
第一の実施形態に係る圧力センサについて、
第一の参考形態に係る圧力センサ1Aとの相違点を中心に説明する。
【0034】
図2に示すように、本発明の
第一の実施形態に係る圧力センサ1Bは、取付部22Aに代えて取付部22Bを備える。取付部22Bは、2個の凸部22b,22bに代えて、2個の凹部22c,22cを備える。
【0035】
2個の凹部22c,22cは、対向面の径方向に連続して配列されており、それぞれ全周にわたって同一形状に形成された環状を呈するとともに、断面視V字形状を呈するV溝である。感受部21の外周縁、取付部22Aの外周縁(すなわち、雄ネジ部22a)、及び、2個の凹部22c,22cは、同心円である。2個の凹部22c,22cのうち、少なくとも大径である外側の凹部22cは、径方向外側寄り、すなわち、対向面の径方向中間地点よりも外周面側に形成されていることが望ましく、本実施形態では、2個の凹部22c,22cが対向面の径方向中間地点よりも外周面側に形成されている。凹部22cの溝角度は、60°である。なお、凹部22cの内周側の面と軸方向との間の傾斜角度β1は60°であり、凹部22cの外周側の面と軸方向との間の傾斜角度β2は、0°である。かかる凹部22cの溝角度は、適宜変更可能である。
【0036】
圧力センサ1Bを被取付部材30に取り付ける際には、作業者は、シール部材40を第二の孔部31bの底面に配置した後に、圧力センサ1Bを部分的に孔部31に挿入した状態でスパナによって頭部10を保持し、圧力センサ1Bを回転させる。雄ネジ部22aが雌ネジ部31b1に螺合することによって、圧力センサ1Bは、回転しながら孔部31内に進入していき、感受部21が第一の孔部31aに収容され、取付部22Bの対向面がシール部材40の上面に圧接し、2個の凹部22c,22cにシール部材40が入り込む(
図2(a)→(b)→(c))。
【0037】
本発明の
第一の実施形態に係る圧力センサ1Bは、対向面に形成された2個の凹部22c,22cにシール部材40が入り込むので、高圧に対応可能なシール性能を確保することができるとともに、圧力印加前後のゼロ点変動を抑えることができる。また、圧力センサ1Bは、β1>β2であるので、高圧印加時にシール部材40が外周方向へ滑ろうとした場合に凹部22c,22cの外周側の面によってシール部材40が止められ、滑りを抑え、圧力印加前後のゼロ点変動を抑えることができる。
【0038】
<第二の参考形態>
続いて、本発明の
第二の参考形態に係る圧力センサについて、
第一の参考形態に係る圧力センサ1Aとの相違点を中心に説明する。
【0039】
図3に示すように、本発明の
第二の参考形態に係る圧力センサ1Cは、取付部22Aに代えて取付部22Cを備える。取付部22Cは、2個の凸部22b,22bに代えて、1個の凸部22bを備える。
【0040】
凸部22bは、径方向外側寄り、すなわち、対向面の径方向中間地点よりも外周面側に形成されている。かかる凸部22bは、取付部22Cの外周面にできるだけ近い位置に形成されていることが望ましい。
【0041】
本発明の
第二の参考形態に係る圧力センサ1Cは、凸部22bが径方向外側寄りに形成されているので、雄ネジ部22aによる軸方向の力と凸部22bに作用する反力とによるモーメントを小さくすることができ、圧力印加前後のゼロ点変動を抑えることができる。
【0042】
なお、このような考え方は、
第一の参考形態及び
第一の実施形態にも適用されている。すなわち、環状の凸部22bが2個形成されている場合には、2個の凸部22b,22bのうち少なくとも1個が対向面の径方向中間地点よりも外周面側に形成されていることが望ましく、環状の凹部22cが2個形成されている場合には、2個の凹部22c,22cのうち少なくとも1個が対向面の径方向中間地点よりも外周面側に形成されていることが望ましい。これによって、雄ネジ部22aによる軸方向の力と各凸部22b又は各凹部22cに作用する反力の合力とによるモーメントを小さくすることができる。かかる観点によると、凸部22b又は凹部22cが2個以上形成されている場合には、複数の凸部22b又は凹部22cの半数以上が対向面の径方向中間地点よりも外周面側に形成されていることが望ましい。
【0043】
<実施例>
続いて、本発明の実施例について説明する。実施例1
(参考例)として、本発明の
第一の参考形態に係る圧力センサ1Aを作製した。また、実施例2として、本発明の
第一の実施形態に係る圧力センサ1Bを作製した。また、比較例1として、
図4に示す圧力センサ1Dを作製した。圧力センサ1Dは、取付部22Aに代えて径方向中間地点に1個の凸部22bが形成された取付部22Dを備える。比較例1における凸部22bの断面形状は、実施例1における凸部22bと同様である。また、比較例2として、
図5に示す圧力センサ1Eを作製した。圧力センサ1Eは、取付部22Aに代えて径方向中間地点に1個の凹部22cが形成された取付部22Eを備える。比較例2における凹部22cの断面形状は、V溝であり、凹部22cの溝角度は、90°である。なお、凹部22cの内周側の面と軸方向との間の傾斜角度β1は45°であり、凹部22cの外周側の面と軸方向との間の傾斜角度β2は、45°である。
【0044】
各実施例及び比較例において、2個ずつのサンプルを作製した。シール性能に関しては、各サンプルで1回ずつ測定を行った結果を表1に示す。同じ種類のサンプルでは、いずれも同じ結果を示した。
【0045】
ゼロシフト量に関しては、各サンプルで2回ずつ測定を繰り返し、変化量の最小値と最大値を調べた結果を表1に示す。
【0047】
表1の上段2行には、所定の締付トルクで圧力センサを試験治具に取り付けて圧力を印加したときに、圧力封止部(シール部材及び対向面)の気密性が維持された最大圧力を示す。同じく下段2行には、圧力センサを取り付ける前と、所定の締付トルクで締め付けた後のゼロ点における出力値の差をフルスケール出力に対する割合で示している。この割合をゼロシフト量と呼ぶ。また、ゼロシフト量変化の確認試験では、条件を同じにするために、すべてのサンプルにおいて締付トルクを30N・mに統一した。
【0048】
実施例1,2では、シール性能及びゼロシフト量について、満足のいく結果が得られた。比較例1では、シール性能は問題なかったが、ゼロシフト量のばらつきの範囲が大きすぎた。ゼロシフト量のばらつきは、1%以下程度が望ましい。比較例2では、実施例1,2よりも低いシール性能を示し、ゼロシフト量も一番大きかった。また、実施例1の凸部を有する封止構造の方が実施例2の凹部(V溝)を有する封止構造よりも低い締付トルクで同じシール性能を示した。締付トルクが小さくて済む方が感受部への影響が少なくなるので、実施例1の構造の方がより望ましいといえる。
【0049】
以上、本発明の
実施形態及び参考形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、
第一の参考形態において、雄ネジ部22aと同心円である3個以上の凸部22bが形成されていてもよく、
第一の実施形態において、雄ネジ部22aと同心円である3個以上の凹部22cが形成されていてもよい。また、雄ネジ部22aと同心円である1個以上の凸部22bと1個以上の凹部22cとがともに形成されている構成であってもよい。また、
第二の参考形態において、
第二の実施形態として、1個の凸部22bに代えて雄ネジ部22aと同心円である1個の凹部22cが形成されている構成であってもよい。また、圧力センサにおける圧力の検出手法は、歪みゲージ23によるものに限定されない。
【符号の説明】
【0050】
1A,1B,1C 圧力センサ
21 感受部
22A,22B,22C 取付部
22a 雄ネジ部
22b 凸部
22c 凹部
30 被取付部材
31 孔部
31a 第一の孔部
31b 第二の孔部
31b1 雌ネジ部
40 シール部材