(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電性の導電体の一面にフラックス成分と防錆機能を有する成分とを含有する混合液を積層して第1の層を設け、上記導電体の他面に太陽電池と接続する接着剤を積層して第2の層を設け、配線材を形成し、
上記配線材を、上記第2の層を介して上記太陽電池の表面に接続するとともに、上記第1の層を介して上記太陽電池に形成された表面電極から集電した電気を取り出す端子ボックスに接続する太陽電池モジュールの製造方法。
上記配線材は、上記第2の層を介して上記太陽電池に形成された上記表面電極と接続されるとともに、上記第1の層を介して上記端子ボックスに接続される請求項12に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減が地球的な課題となる中、クリーンでかつ再生可能なエネルギーとして、太陽光発電に大きな期待が寄せられている。太陽電池の主流は、現在までのところ、単結晶シリコンや多結晶シリコンの結晶を製造し、これをスライス加工して板状の半導体として使用するバルクシリコン太陽電池である。しかし、バルクシリコン太陽電池は、シリコン結晶の成長に多くのエネルギーと時間を要し、また製造工程においても複雑な工程が必要となる。
【0003】
一方で、ガラスやステンレススチールなどの基板上に、光電変換層である半導体層を形成したいわゆる薄膜太陽電池は、薄型で軽量、製造コストの安さ、大面積化が容易であることなどから、今後の太陽電池の主流になると考えられている。薄膜太陽電池としては、アモルファスシリコンや微結晶シリコン膜、あるいはこれらのタンデム型等の薄膜シリコン太陽電池、Cu(銅)、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Se(セレン)に代表される元素を混ぜ合わせた化合物半導体を用いたCIGS系太陽電池等がある。
【0004】
これらの薄膜太陽電池は、大面積の安価な基板上に、プラズマCVD装置又はスパッタ装置のような形成装置を用いて半導体層又は金属電極膜を積層させ、その後、同一基板上に作製した光電変換層をレーザパターニング等により分離接続させることにより、太陽電池ストリングを形成する。
【0005】
図11に、従来の太陽電池ストリングを構成する薄膜太陽電池の一構成例を示す。この薄膜太陽電池100は、透光性絶縁基板101上に図示しない透明導電膜からなる透明電極膜、光電変換層、裏面電極膜が積層されてなる複数の太陽電池セル102からなる。各太陽電池セル102は、細長い短冊状で、透光性絶縁基板101のほぼ全幅にわたる長さを有している。また、薄膜太陽電池100は、隣接する太陽電池セル102,102同士において一方の透明電極膜と他方の裏面電極膜とが互いに接続されることで複数の太陽電池セル102が直列に接続されて構成されている。
【0006】
この薄膜太陽電池100における一端部の太陽電池セル102の透明電極膜の端部上に、太陽電池セル102とほぼ同一長さの線状のP型電極端子部103が形成され、他端部の太陽電池セル102の裏面電極膜の端部上に、太陽電池セル102とほぼ同一長さの線状のN型電極端子部104が形成されている。これらP型電極端子部103及びN型電極端子部104が電極取出し部になる。
【0007】
P型電極端子部103には、銅箔からなる正極集電用タブ線105が、バスバーと呼ばれるP型電極端子部103の全面に対して電気的かつ機械的に接合されている。同様に、N型電極端子部104には、銅箔からなる負極集電用タブ線106が、N型電極端子部104の全面に対して電気的かつ機械的に接合されている。これらの接合手段としては、一般に半田付けで行われている。
【0008】
また、
図12(A)に示すように、薄膜太陽電池100の裏面には、P型電極端子部103及びN型電極端子部104と接続され外部に電気を出力する端子ボックス110と、この端子ボックス110とP型電極端子部103及びN型電極端子部104とを接続する端子ボックス用タブ線111とが接続されている。
【0009】
端子ボックス110は、図示しないEVA等の封止樹脂及びバックシートを介して接着剤を介して薄膜太陽電池100の裏面中央に固定されている。端子ボックス用タブ線111は、上記正極集電用タブ線105や負極集電用タブ線106と同様に長尺状の銅箔やAl箔からなり、薄膜太陽電池100の裏面と絶縁テープ112を介して配設されている。
【0010】
この端子ボックス用タブ線111は、一端が封止樹脂及びバックシートを挿通してバックシート上に配設されている端子ボックス110とハンダ接続され、他端が絶縁テープ112を介してP型電極端子部103又はN型電極端子部104上に配設される。
【0011】
端子ボックス用タブ線111と正極集電用タブ線105との接続部は、
図12(B)に示すように、絶縁テープ112及び端子ボックス用タブ線111を挟んだ両側に接続された第1、第2の正極集電用タブ線105a、105b間に亘って第3の正極集電用タブ線105cが、絶縁テープ112及び端子ボックス用タブ線111を跨いで接続されている。また、第3の正極集電用タブ線105cは端子ボックス用タブ線111と接続されている。これら、第1、第2の正極集電用タブ線105a、105bと第3の正極集電用タブ線105cとの接続(2箇所)、及び第3の正極集電用タブ線105cと端子ボックス用タブ線111との接続(1箇所)は、超音波ハンダ接合によって行われている。負極集電用タブ線106と端子ボックス用タブ線111との接続も同様である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明が適用された配線材、この配線材を用いた太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0025】
[太陽電池モジュール]
本発明が適用された薄膜太陽電池1は、
図1(A)(B)に示すように、複数の太陽電池セル2がコンタクトラインによって接続された太陽電池ストリングを構成する。このストリング構造を有する薄膜太陽電池1は、例えば
図2に示すように、表面カバー5となるガラス基板上に形成され、裏面側に封止接着剤のシート3及びバックシート4が積層され、一括してラミネートされる。その後、適宜、周囲にアルミニウムなどの金属フレーム7が取り付けられた後、バックシート4上に薄膜太陽電池1から集電した電気を取り出す端子ボックス8が設けられることにより太陽電池モジュール6が形成される。
【0026】
封止接着剤としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA:Ethylene Vinyl Acetate Copolymer)等の透光性封止材が用いられる。また、バックシート4としては、ガラスや、アルミニウム箔を樹脂フィルムで挟持した積層体等が用いられる。なお、太陽電池モジュール6は、表面カバー5となるガラス基板上に薄膜太陽電池1を形成する他、表面カバー5と薄膜太陽電池1とを別々に設け、表面カバー5とバックシート4との間において薄膜太陽電池1の表裏面側に配置された封止接着材のシート3でラミネート封止してもよい。この場合、表面カバー5としては、例えば、ガラスや透光性プラスチック等の透光性の材料が用いられる。
【0027】
[太陽電池セル]
薄膜太陽電池1は、透光性絶縁基板10上に、図示は省略しているが、透明導電膜からなる透明電極膜、光電変換層、裏面電極膜がこの順に積層されて形成され、透光性絶縁基板10側から光を入射させるスーパーストレート型の太陽電池である。なお、薄膜太陽電池には、基材、裏面電極、光電変換層、透明電極の順で形成されたサブストレート型太陽電池もある。以下では、スーパーストレート型の薄膜太陽電池1を例に説明するが、後述するように、本技術は、サブストレート型の薄膜太陽電池に用いることもできる。
【0028】
透光性絶縁基板10としては、ガラスやポリイミドなどの耐熱性樹脂を用いることができる。また、上述したように、薄膜太陽電池1は、透光性絶縁基板10と表面カバー5とを兼用させることもできる。
【0029】
透明電極膜としては、例えばSnO
2、ZnO、ITOなどを用いることができる。光電変換層としては、アモルファスシリコン、微結晶シリコンあるいは多結晶シリコンなどのシリコン系光電変換膜や、CdTe,CuInSe
2、Cu(In,Ga)Se
2などの化合物系光電変換膜を用いることができる。
【0030】
裏面電極膜としては、例えば透明導電膜と金属膜の積層構造を有する。透明電極膜は、SnO
2、ZnO、ITOなどを用いることができる。金属膜は、銀、アルミニウム等を用いることができる。
【0031】
このように構成された薄膜太陽電池1は、
図1(A)に示すように、透光性絶縁基板10のほぼ全幅にわたる長さを有する矩形状の太陽電池セル2が複数形成されている。各太陽電池セル2は、電極分割ラインによって分離されるとともに、コンタクトラインによって隣接する太陽電池セル2,2同士において一方の透明電極膜と他方の裏面電極膜とが互いに接続されることで、複数の太陽電池セル2が直列に接続された太陽電池ストリングが構成されている。
【0032】
そして、薄膜太陽電池1は、太陽電池ストリングにおける一端部の太陽電池セル2の透明電極膜の端部上に、太陽電池セル2とほぼ同一長さの線状のP型電極端子部11が形成され、他端部の太陽電池セル2の裏面電極膜の端部上に、太陽電池セル2とほぼ同一長さの線状のN型電極端子部12が形成されている。薄膜太陽電池1は、これらP型電極端子部11及びN型電極端子部12が電極取り出し部となり、正極用タブ線15及び負極用タブ線16を介して端子ボックス8へ電気を供給する。
【0033】
[タブ線(配線材)]
正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、
図3に示すように、導電性の導電体20と、導電体20の一面20aに設けられフラックスと防錆機能を有する液体とを混合してなる第1の層21と、導電体20の他面20bに薄膜太陽電池1に形成されたP型電極端子部11及びN型電極端子部12と接続する接着剤22が設けられた第2の層23とを有する。
【0034】
この正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、第1の層21を介して薄膜太陽電池1に形成されたP型電極端子部11及びN型電極端子部12から集電した電気を取り出す端子ボックス8に接続される。
【0035】
導電体20は、例えば厚さ50〜300μmに圧延された銅箔やアルミ箔をスリットし、あるいは銅やアルミなどの細い金属ワイヤーを平板状に圧延することにより、P型電極端子部11やN型電極端子部12とほぼ同じ幅の1〜3mm幅の平角線である。導電体20の一面(S面)には、全面に亘ってフラックスと防錆インクとが混合された液体からなる第1の層21が形成され、他面(M面)20bには、全面に亘って接着剤22からなる第2の層23が形成される。
【0036】
[第1の層]
第1の層21は、フラックスと防錆機能を有する液体とを混合し、導電体20の一面20aに全面に亘って塗布することにより形成される。フラックスとしては、例えば無鉛ハンダ用フラックスを用いることができる。防錆機能を有する液体としては、例えば顔料系カーボンブラック入り墨インクやフッ素樹脂系インクを用いることができる。
【0037】
このような第1の層21は、フラックスと防錆インクとが混合された液体が導電体20の一面20aにワイヤーバー等により塗布された後、オーブンによって溶剤を揮発することにより所定の厚さに形成される。
【0038】
正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、第1の層21を介して薄膜太陽電池1から集電した電気を取り出す端子ボックス8の接続端子にハンダ接続される。このとき、正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、フラックスと防錆機能を有する液体が塗布されて第1の層21が形成されていることから、ハンダの濡れ性が向上して、速く確実にハンダ接続を行うことができる。また、正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、後述するように薄膜太陽電池1がEVA等の透光性封止材によって封止されることから、太陽電池モジュール6の温度上昇などにより酢酸ガス雰囲気下となり、タブ線の腐食が懸念されるが、第2の層23として防錆機能を有する液体も含有されていることから、腐食の防止も図ることができる。
【0039】
[配合比]
また、フラックスと、防錆インクとの各固形分の配合比は、(フラックス):(防錆インク)=1:3〜3:1であることが好ましく、特に(フラックス):(防錆インク)=1:1〜2:1であることがより好ましい。
【0040】
(フラックス):(防錆インク)=1:3〜3:1の範囲よりフラックス固形分が多く防錆インクの固形分が少ないと、耐腐食性が劣化するとともに、サブストレート型の薄膜太陽電池のように、受光面側に正極用タブ線15及び負極用タブ線16が接続されるタイプにおいては、CIS系やCIGS系の薄膜太陽電池1の黒い地色上に導電体20の銅色が現れ、外観を損なうおそれがある。また、フラックスと防錆インクの各固形分比を上記の範囲とすることで、受光面側に配されたタブ線15,16の防錆インクの黒色によって、紫外線を吸収し、太陽電池モジュールの耐候性を向上させることができる。
【0041】
また、この範囲よりフラックス固形分が少なく、防錆インクの固形分が多いと、ハンダの濡れ性が悪く、端子ボックス8の接続端子に速く確実にハンダ接続を行うことができず、また、これゆえに接続抵抗が上昇してしまう。
【0042】
[第1の層21の厚さ]
また、第1の層21の厚さは、1〜10μmであることが好ましく、1〜8μmの範囲がより好ましく、3〜5μmの範囲が特に好ましい。第1の層21の厚さが厚くなるにつれて接続抵抗が上昇し、逆に厚さが薄くなるにつれて耐腐食性や外観が劣化する傾向がある。
【0043】
[接着剤22]
次いで、第2の層23について説明する。第2の層23を構成する接着剤22は、正極用タブ線15及び負極用タブ線16をP型電極端子部11やN型電極端子部12に接続するものであり、導電性接着ペーストや導電性接着フィルムを用いることができる。そして、正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、導電体20の他面20bに、導電性接着ペーストが塗布され、あるいは導電性接着フィルムが貼着されることにより第2の層23が形成される。
【0044】
接着剤22は、
図4に示すように、熱硬化性のバインダー樹脂層25に導電性粒子26が高密度に含有されてなる。また、接着剤22は、押し込み性の観点から、バインダー樹脂の最低溶融粘度が、100〜100000Pa・sであることが好ましい。接着剤22は、最低溶融粘度が低すぎると低圧着から本硬化の過程で樹脂が流動してしまい接続不良やセル受光面へのはみ出しが生じやすく、受光率低下の原因ともなる。また、最低溶融粘度が高すぎてもフィルム貼着時に不良を発生しやすく、接続信頼性に悪影響が出る場合もある。なお、最低溶融粘度については、サンプルを所定量回転式粘度計に装填し、所定の昇温速度で上昇させながら測定することができる。
【0045】
接着剤22に用いられる導電性粒子26としては、特に制限されず、例えば、ニッケル、金、銀、銅などの金属粒子、樹脂粒子に金めっきなどを施したもの、樹脂粒子に金めっきを施した粒子の最外層に絶縁被覆を施したものなどを挙げることができる。
【0046】
なお、接着剤22は、常温付近での粘度が10〜10000kPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは、10〜5000kPa・sである。接着剤22の粘度が10〜10000kPa・sの範囲であることにより、接着剤22を導電体20の他面20bに設け、リール27に巻装した場合において、いわゆるはみ出しによるブロッキングを防止することができ、また、所定のタック力を維持することができる。
【0047】
接着剤22のバインダー樹脂層25の組成は、上述のような特徴を害さない限り、特に制限されないが、より好ましくは、膜形成樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、シランカップリング剤とを含有する。
【0048】
膜形成樹脂は、平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000〜80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の種々の樹脂を使用することができ、その中でも膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0049】
液状エポキシ樹脂としては、常温で流動性を有していれば、特に制限はなく、市販のエポキシ樹脂が全て使用可能である。このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などを用いることができる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アクリル樹脂など他の有機樹脂と適宜組み合わせて使用してもよい。
【0050】
潜在性硬化剤としては、加熱硬化型、UV硬化型などの各種硬化剤が使用できる。潜在性硬化剤は、通常では反応せず、何かしらのトリガーにより活性化し、反応を開始する。トリガーには、熱、光、加圧などがあり、用途により選択して用いることができる。なかでも、本実施の形態では、加熱硬化型の潜在性硬化剤が好適に用いられ、P型電極端子部11やN型電極端子部12に加熱押圧されることにより本硬化される。液状エポキシ樹脂を使用する場合は、イミダゾール類、アミン類、スルホニウム塩、オニウム塩などからなる潜在性硬化剤を使用することができる。
【0051】
シランカップリング剤としては、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などを用いることができる。これらの中でも、本実施の形態では、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。これにより、有機材料と無機材料の界面における接着性を向上させることができる。
【0052】
また、その他の添加組成物として、無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーを含有することにより、圧着時における樹脂層の流動性を調整し、粒子捕捉率を向上させることができる。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができ、無機フィラーの種類は特に限定されるものではない。
【0053】
接着剤22は、導電性粒子26と、膜形成樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、シランカップリング剤とを溶剤に溶解させる。溶剤としては、トルエン、酢酸エチルなど、又はこれらの混合溶剤を用いることができる。溶解させて得られた導電性ペーストを導電体20の他面20b上に塗布し、溶剤を揮発させることにより、第2の層23が形成される。第2の層23及び第1の層21が形成された導電体20は、
図3に示すように、リール27に巻回されて保管され、実使用時には、リール27より所定長さを引き出され、正極用タブ線15や負極用タブ線16として用いられる。
【0054】
その後、接着剤22は、正極用タブ線15や負極用タブ線16が、P型電極端子部11上やN電極端子部12上に仮貼りされると、加熱押圧ヘッドや真空ラミネーターによって所定の温度、圧力で熱加圧される。これにより、接着剤22は、バインダー樹脂がP型電極端子部11と正極用タブ線15との間、及びN型電極端子部12と負極用タブ線16との間より流出されるとともに導電性粒子26が各タブ線15,16と各電極端子部11,12との間で挟持され、この状態でバインダー樹脂が硬化する。これにより、接着剤22は、各タブ線15,16を各電極端子部11,12上に接着させると共に、各タブ線15,16と各電極端子部11,12とを導通接続させることができる。
【0055】
[導電性接着フィルム]
なお、接着剤22は、導電性ペーストを用いる以外にも、導電性接着フィルムを用い、導電体20の他面20bに貼着してもよい。導電性接着フィルム28は、
図5に示すように、ベースフィルム29上にバインダー樹脂層25が積層され、導電体20と同様にテープ状に成形されている。ベースフィルム29としては、特に制限はなく、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene-1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などを用いることができる。
【0056】
導電性接着フィルム28は、バインダー樹脂層25上に、上述した導電体20が、カバーフィルムとして貼付される。このように、予め導電体20の他面20b上に導電性接着フィルム28を積層一体化させておくことにより、実用使用時においては、ベースフィルム29を剥離し、導電性接着フィルム28のバインダー樹脂層25をP型電極端子部11やN型電極端子部12上に貼着することにより正極用タブ線15や負極用タブ線16と各電極端子部11,12との仮貼りが図られる。
【0057】
なお、P型電極端子部11と正極用タブ線15との接続、及びN型電極端子部12と負極用タブ線16との接続は、上述した導電性接着ペーストや導電性接着フィルム28の他に、絶縁性接着フィルムや絶縁性接着ペースト等の絶縁性接着剤を用いることができる。絶縁性接着フィルムや絶縁性接着ペーストは、バインダー樹脂層に導電性粒子が含まれていない他は、導電性接着フィルムや導電性接着ペーストと同様の構成を有する。
【0058】
[タブ線の製造工程]
次いで、正極用タブ線15及び負極用タブ線16の製造工程について説明する。先ず、導電体20となる例えば厚さ50〜300μmの銅箔やアルミ箔等の金属箔を得る。なお、金属箔の具体的な製造方法としては、金属を圧延させる方法や電解メッキにより金属を析出させる方法などが例示される。この金属箔の一面(シャイニー面)に、ワイヤーバー等によりフラックスと防錆インクとが混合された液体を塗布、乾燥することにより第1の層21を形成する。次いで、この金属箔の他面(マット面)に、ワイヤーバー等により導電性接着ペーストを塗布、乾燥し、あるいは導電性接着フィルム28を積層一体化することにより接着剤22からなる第2の層23を形成する。
【0059】
次いで、この圧延金属箔を、テープ状にスリットする。これによりテープ状の導電体20の一面20aに第1の層21が形成され、他面20bに第2の層23が形成されたタブ線15,16を得る。
【0060】
また、タブ線15,16は、銅やアルミなどの細い金属ワイヤーを平板状に圧延することにより、あるいは圧延金属箔をスリットすることにより、テープ状の導電体20を得た後に、第1、第2の層21,23を形成することにより得ることもできる。
【0061】
このテープ状のタブ線15,16は、例えば
図3に示すように、リール27に巻回されて保管され、使用時にリール27より引き出され、必要な長さに切断され各電極端子部11,12への接続に供される。このとき、タブ線15,16は、導電体20の一他面20aの全面に亘ってフラックスと防錆インクとからなる第1の層21が形成され、かつ導電体20の他面20bの全面に亘って接着剤22からなる第2の層23が形成されているため、リールより引き出されたいずれの部位においても、薄膜太陽電池1表面の各電極端子部11,12への接続に供することもでき、また端子ボックス8の接続端子への接続に供することもできる。
【0062】
[タブ線の接続態様1]
このような正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、
図6に示すように、P型電極端子部11及びN型電極端子部12に、接着剤22を介して接続され各電極端子部11,12より集電する集電タブ部30と、端子ボックス8まで延在され端子ボックス8の接続端子と接続される接続タブ部31とを有し、集電タブ部30と接続タブ部31とは、折り曲げ部32を介して連続している。
【0063】
集電タブ部30は、導電体20の他面20bに形成された第2の層23の接着剤22を介してP型電極端子部11やN型電極端子部12に対して電気的、機械的に接続される。また、接続タブ部31は、正極用タブ線15及び負極用タブ線16の一部が折り曲げ部32で折り曲げられた先の部分であり、薄膜太陽電池1の表面を延在されるとともに封止接着材やバックシート4を挿通して、バックシート4上に配置されている端子ボックス8の接続端子と接続される。接続タブ部31は、先端が導電体20の一面20aに形成された第1の層21を介して、端子ボックス8の接続端子とハンダ接続される。
【0064】
折り曲げ部32は、正極用タブ線15及び負極用タブ線16の集電タブ部30の端部に設けられ、この先が接続タブ部31となる。正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、集電タブ部30と接続タブ部31とが折り曲げ部32を介して連続され、接合部分を有しないため、接合箇所に電荷が集中することによる抵抗値の増大や、接合部分の接続信頼性の低下、接合部分に熱や応力が集中することによる透光性絶縁基板10の損傷等を防止することができる。
【0065】
なお、接続タブ部31は、導電体20の一面20aが絶縁フィルム35を介して薄膜太陽電池1の表面に延在されている。接続タブ部31は、絶縁フィルム35によって薄膜太陽電池1の電極膜と接した場合にもショートが防止されている。
【0066】
また、接続タブ部31は、第1の層21を構成する防錆インクとしてpH値を調整されたカーボンブラックが用いられた非導電墨インキ等を用いるなど、第1の層21に絶縁性を備えることにより、絶縁フィルム35を用いることなく、薄膜太陽電池1の電極膜とのショートを防止することができる。これにより、正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、リール27より引き出されたいずれの部位においても、薄膜太陽電池1表面の各電極端子部11,12への接続に供することもでき、また端子ボックス8の接続端子への接続に供することもできる。
【0067】
このような正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、スーパーストレート型の薄膜太陽電池1に用いられる場合、
図2に示すように、集電タブ部30がP型電極端子部11及びN型電極端子部12に接続された後、折り曲げ部32より先の接続タブ部31が、適宜絶縁フィルム35を介して薄膜太陽電池1の表面に配設され、さらにEVA等の封止樹脂シート3及びバックシート4を挿通して、バックシート4上に配置された端子ボックス8の接続端子にハンダ接続される。
【0068】
また、正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、サブストレート型の薄膜太陽電池1に用いられる場合、
図7に示すように、集電タブ部30がP型電極端子部11及びN型電極端子部12に接続された後、折り曲げ部32より先の接続タブ部31が、薄膜太陽電池1の裏面側に配設され、さらにEVA等の封止樹脂シート3及びバックシート4を挿通して、バックシート4上に配置された端子ボックス8の接続端子にハンダ接続される。
【0069】
正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、集電タブ部30が各電極端子部11,12上に配設されるとともに、接続タブ部31が薄膜太陽電池1の表面に配設され、先端部が封止樹脂シート3及びバックシート4に形成された挿通孔を挿通する。その後、正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、真空ラミネーターによって各電極端子部11,12との接続、及び表面カバー5とバックシート4との間での封止樹脂シート3による一括ラミネート封止が行われる。
【0070】
次いで、薄膜太陽電池1の周囲に金属フレーム7が設置された後、正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、バックシート4上に設けられた端子ボックス8の接続端子と、バックシート4を挿通した接続タブ部31の先端部とがハンダ接続される。これにより、太陽電池モジュール6が完成する。
【0071】
ここで、太陽電池モジュール6は、正極用タブ線15及び負極用タブ線16に、フラックスと防錆機能を有する液体が塗布されて第1の層21が形成されていることから、ハンダの濡れ性が向上して、速く確実にハンダ接続を行うことができる。また、太陽電池モジュール6は、薄膜太陽電池1がEVA等の透光性封止材によって封止されることから、太陽電池モジュール6の温度上昇などにより酢酸ガス雰囲気下となり、正極用タブ線15及び負極用タブ線16の腐食が懸念されるが、第1の層21として防錆機能を有する液体も含有されていることから、薄膜太陽電池1の表面に配設された各タブ線15,16の接続タブ部31の腐食も防止できる。
【0072】
[タブ線の接続態様2]
また、正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、
図8に示すように、複数のタブ線が接続されることにより構成されていてもよい。すなわち、正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、P型電極端子部11やN型電極端子部12に接続される集電タブ線36と、一端を集電タブ線36に接続され、他端を端子ボックス8の接続端子に接続される接続タブ線37とが接続されることにより構成されている。
【0073】
集電タブ線36は、導電体20の他面20bに形成された第2の層23の接着剤22を介してP型電極端子部11やN型電極端子部12に対して電気的、機械的に接続される。また、接続タブ線37は、絶縁フィルム35を介して薄膜太陽電池1の表面を延在されるとともに封止接着材やバックシート4を挿通して、バックシート4上に配置されている端子ボックス8の接続端子と接続される。接続タブ線37は、先端が導電体20の一面20aに形成された第1の層21を介して、端子ボックス8の接続端子とハンダ接続される。
【0074】
このような正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、スーパーストレート型の薄膜太陽電池1に用いられる場合、
図9に示すように、接続タブ線37の第2の層23が絶縁フィルム35を介して薄膜太陽電池1の表面に配設されるとともにその一端部がP型電極端子部11及びN型電極端子部12の各長手方向の中間部に配設される。次いで、集電タブ線36がP型電極端子部11及びN型電極端子部12に配設される。このとき、集電タブ線36は、接続タブ線37の一端部を跨るように配設される。集電タブ線36及び接続タブ線37は、真空ラミネーターによって各電極端子部11,12との接続、及び表面カバー5とバックシート4との間での封止樹脂シート3による一括ラミネート封止が行われる。その後、接続タブ線37の他端部は、EVA等の封止樹脂シート3及びバックシート4を挿通して、バックシート4上に配置された端子ボックス8の接続端子にハンダ接続される。
【0075】
なお、正極用タブ線15及び負極用タブ線16は、
図10に示すように、集電タブ線36の上に接続タブ線37を配設するようにしてもよい。すなわち、集電タブ線36の第2の層23がP型電極端子部11及びN型電極端子部12に配設される。次いで、接続タブ線37の第2の層23が絶縁フィルム35を介して薄膜太陽電池1の表面に配設されるとともにその一端部がP型電極端子部11及びN型電極端子部12上に配設された集電タブ線36の各長手方向の中間部に配設される。集電タブ線36及び接続タブ線37は、真空ラミネーターによって各電極端子部11,12との接続、及び表面カバー5とバックシート4との間での封止樹脂シート3による一括ラミネート封止が行われる。その後、接続タブ線37の他端部は、EVA等の封止樹脂シート3及びバックシート4を挿通して、バックシート4上に配置された端子ボックス8の接続端子にハンダ接続される。
【実施例】
【0076】
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、導電体20の一面20aに形成される第1の層21を構成するフラックスと防錆インクとの各固形分比率を変えた複数のタブ線を用意し、ハンダ付けの可否や接続抵抗、外観や耐腐食性について検討した。
【0077】
各実施例及び比較例に係るタブ線は、第1の層21の防錆インクの固形分を変えてフラックス固形分との比率を変えた。また、フラックス固形分と防錆インクの固形分とを合わせた第1の層21の固形分を、いずれも約24%に固定し、そのために適宜希釈溶媒を配合した。
【0078】
実施例1では、導電体20として厚さ35μmの銅箔(古河電工(株)製:GTS−MP)を用い、その一面20aにフラックスと防錆インクとが混合された液体をワイヤーバーを使用して塗布し80℃、5分にて乾燥させて第1の層21を形成した。また、導電体20の他面20bに導電性接着ペーストを塗布して第2の層23を形成した。
【0079】
第1の層21の厚さは3〜5μm(4μm厚±1μm)である。フラックスは、千住金属(株)製:ES−0307LSを3.00g配合した。そのうちフラックス固形分は0.60gである。防錆インクは、顔料系カーボンブラック入り墨インク(大日精化(株)製)を4.19g、架橋剤(大日精化(株)製:SSハードナー)を0.21g、希釈溶媒(大日精化(株)製:アルミックNo.18)を2.60g、配合した。防錆インクの固形分は1.80gである。
【0080】
フラックス固形分と防錆インクの固形分とを合わせた第1の層21の固形分は24%であり、フラックス固形分と防錆インクの固形分との配合比は、(フラックス):(防錆インク)=1:3である。
【0081】
実施例2では、フラックス成分や第1の層21の厚さは実施例1と同じ条件とした。また、防錆インクとして、顔料系カーボンブラック入り墨インク(大日精化(株)製)を2.79g、架橋剤(大日精化(株)製:SSハードナー)を0.14g、希釈溶媒(大日精化(株)製:アルミックNo.18)を1.57g、配合した。防錆インクの固形分は1.20gである。
【0082】
フラックス固形分と防錆インクの固形分とを合わせた第1の層21の固形分は24%であり、フラックス固形分と防錆インクの固形分との配合比は、(フラックス):(防錆インク)=1:2である。
【0083】
実施例3では、フラックス成分や第1の層21の厚さは実施例1と同じ条件とした。また、防錆インクとして、顔料系カーボンブラック入り墨インク(大日精化(株)製)を1.40g、架橋剤(大日精化(株)製:SSハードナー)を0.07g、希釈溶媒(大日精化(株)製:アルミックNo.18)を0.53g、配合した。防錆インクの固形分は0.60gである。
【0084】
フラックス固形分と防錆インクの固形分とを合わせた第2の層24の固形分は24%であり、フラックス固形分と防錆インクの固形分との配合比は、(フラックス):(防錆インク)=1:1である。
【0085】
実施例4では、フラックス成分や第1の層21の厚さは実施例1と同じ条件とした。また、防錆インクとして、顔料系カーボンブラック入り墨インク(大日精化(株)製)を0.70g、架橋剤(大日精化(株)製:SSハードナー)を0.03g、配合し、希釈溶媒は配合しなかった。防錆インクの固形分は0.30gである。
【0086】
フラックス固形分と防錆インクの固形分とを合わせた第1の層21の固形分は24%であり、フラックス固形分と防錆インクの固形分との配合比は、(フラックス):(防錆インク)=2:1である。
【0087】
実施例5では、フラックス成分や第1の層21の厚さは実施例1と同じ条件とした。また、防錆インクとして、顔料系カーボンブラック入り墨インク(大日精化(株)製)を0.47g、架橋剤(大日精化(株)製:SSハードナー)を0.02g、配合し、希釈溶媒は配合しなかった。防錆インクの固形分は0.20gである。
【0088】
フラックス固形分と防錆インクの固形分とを合わせた第1の層21の固形分は23%であり、フラックス固形分と防錆インクの固形分との配合比は、(フラックス):(防錆インク)=3:1である。
【0089】
実施例6では、第1の層21の厚さを1〜3μmとした他は、実施例3と同じ条件とした。
【0090】
実施例7では、第1の層21の厚さを5〜8μmとした他は、実施例3と同じ条件とした。
【0091】
実施例8では、第2の層23の接着剤22として、絶縁性接着フィルムを用いた他は、実施例3と同じ条件とした。
【0092】
比較例1では、フラックス成分は配合されるが、防錆インク成分を含有しない液体を塗布することにより第1の層21を形成した。フラックスは、千住金属(株)製:ES−0307LSを10g配合した。そのうちフラックス固形分は2.0gである。更に加熱により含有溶媒を揮発させ、フラックス固形分、すなわち第1の層21の固形分を24%に調整した。フラックス固形分と防錆インクの固形分との配合比は、(フラックス):(防錆インク)=1:0である。
【0093】
比較例2では、防錆インク成分は配合されるが、フラックス成分を含有しない液体を塗布することにより第1の層21を形成した。防錆インクは、顔料系カーボンブラック入り墨インク(大日精化(株)製)を3.0g、架橋剤(大日精化(株)製:SSハードナー)を0.15g、希釈溶媒(大日精化(株)製:アルミックNo.18)を2.01g、配合した。防錆インクの固形分は1.24gである。防錆インク、すなわち第1の層21の固形分は24%であり、フラックス固形分と防錆インクの固形分との配合比は、(フラックス):(防錆インク)=0:1である。
【0094】
比較例3では、導電体20の一面に第1の層21を形成しないタブ線を用意した。
【0095】
以上の実施例及び比較例に係るタブ線について、ハンダ付けの可否や接続抵抗、外観や耐腐食性について検討した。ハンダ付けの可否は、温度400℃のはんだごてを用いて、第1の層21を端子ボックスの接続端子に10秒未満でハンダ接続できた場合を○、10秒以上、15秒未満でハンダ接続できた場合を△、15秒未満ではハンダ接続ができない場合を×とした。
【0096】
接続抵抗は、2A通電時の一般的な銅箔のハンダ接続における接続抵抗値と同等の接続抵抗値である場合は○、一般的な銅箔のハンダ接続における接続抵抗値からの接続抵抗値の上昇が10mΩ未満である場合を△、一般的な銅箔のハンダ接続における接続抵抗値からの接続抵抗値の上昇が10mΩ以上である場合を×とした。
【0097】
外観検査は、第1の層21を形成した後、目視にてタブ線を観察したときに、下地の銅色が確認できない場合を○、下地の銅色がやや確認できる場合を△、下地の銅色がはっきり確認できる場合を×とした。
【0098】
耐腐食性は、実施例及び比較例に係るタブ線をEVAシートにて封止した後、プレッシャークッカー試験(PCT:85℃85%1000hr)後に第1の層21を目視にて観察したときに、第1の層21の変色が確認されない場合を○、著しい変色が確認されない場合を△、著しい変色が確認された場合を×とした。
【0099】
【表1】
【0100】
表1に示すように、実施例1〜8では、フラックスと防錆インクとを有する液体が塗布されて第1の層21が形成されていることから、ハンダの濡れ性が向上して、速く確実にハンダ接続を行うことができ、ハンダ付けの可否や接続抵抗値も良好な結果となった。また、実施例1〜8では、EVAによって封止され温度上昇などにより酢酸ガス雰囲気下となった場合にも、第1の層21として防錆インクが含有されていることから、耐腐食性について、良好な結果となった。さらに、実施例1〜8では、顔料系カーボンブラック入り墨インクを防錆インクとして用いることから、下地の銅箔の色が現れることもなく、特にサブストレート型の薄膜太陽電池に貼着された場合にも良好な外観を保つことができる。
【0101】
一方、比較例1では、フラックス成分は含有されているためハンダ付けの可否や接続抵抗値については良好な結果が得られたが、防錆インクが含有されていないため、外観検査においては下地の銅色がはっきりと現れてしまい、またPCT試験後には腐食によるタブ線の変色が見られた。
【0102】
反対に、比較例2では、防錆インクは含有されているため外観検査、耐腐食性については良好であったが、フラックス成分が含有されていないため、ハンダ付けにおいては400℃のはんだごてにて15秒未満では充分なハンダ接続はできず、それゆえ接続抵抗値も上昇してしまった。
【0103】
比較例3では、フラックス成分及び防錆インク成分を有する液体が塗布されていないため、ハンダ付けの可否や接続抵抗、外観や耐腐食性の各項目において良好な結果は得られなかった。
【0104】
また、実施例2及び実施例3の結果から、フラックス固形分と防錆インクの固形分との配合比は、(フラックス):(防錆インク)=1:2〜1:2が特に好ましいことが分かる。
【0105】
また、実施例6とその他の実施例とを対比すると、第1の層21の層厚は、1〜10μmであることが好ましく、1〜8μmの範囲がより好ましく、3〜5μmの範囲が特に好ましいことが分かる。