(54)【発明の名称】冷熱発電システム、冷熱発電システムを備えるエネルギシステム、及び冷熱発電システムの利用方法、エネルギシステムの利用方法、及び冷熱発電システムのプレオーバーブースト圧力の設定方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1次発電装置は、前記気化器において凝縮された作動流体を蒸発させたガスによって駆動される1次タービンをさらに有し、前記1次タービンが駆動されることにより発電するものであり、
前記第2仕事は、前記モリエル線図上において前記ガスの状態が前記プレオーバーブースト点における状態から前記中間点における状態となるまでに前記1次タービンによってなされる仕事として定義されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷熱発電システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を冷熱発電システムとして具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。まず、
図1を用いて、冷熱発電システムの全体構成について説明する。冷熱発電システムは、貯蔵タンク10に貯蔵されている液化天然ガス(LNG)の冷熱を利用して発電するものである。本実施形態では、冷熱発電システムを、貯蔵タンク10に貯蔵されている液化天然ガスを気化し、天然ガス(NG)として外部に送出する気化装置に適用した例を示す。
【0022】
図示されるように、貯蔵タンク10に貯蔵されている液化天然ガスは、プライマリーポンプ11によって昇圧され、セカンダリポンプ12に供給される。供給された液化天然ガスは、セカンダリポンプ12によってさらに昇圧される。セカンダリポンプ12によって昇圧された液化天然ガスは、第1気化器13と、ターシャリーポンプ14とに供給される。第1気化器13は、セカンダリポンプ12から供給された液化天然ガスと熱媒体とを熱交換させることにより、液化天然ガスを加熱して気化させる。本実施形態では、第1気化器13として、オープンラック式の気化器(ORV)を用いている。また、第1気化器13における熱媒体として、常温の水(海水)を用いている。
【0023】
ターシャリーポンプ14は、セカンダリポンプ12から供給された液化天然ガスを、プレオーバーブースト圧力までさらに昇圧する昇圧ポンプである。ターシャリーポンプ14によって昇圧された液化天然ガスは、メイン気化器15に供給される。メイン気化器15は、供給された液化天然ガスとランキンサイクルの作動流体(中間媒体)とを熱交換させることにより、液化天然ガスを気化させて天然ガスにする。本実施形態では、メイン気化器15として、シェルアンドチューブ式の気化器(STV)を用いている。なお本実施形態では、上記作動流体(中間媒体)として石油ガス(PG)を用いている。
【0024】
上記メイン気化器15は、ランキンサイクル方式の1次発電装置を構成する。1次発電装置は、メイン気化器15に加え、循環ポンプ16、中間媒体蒸発器17、及び1次タービン発電機18を備えている。1次発電装置において、メイン気化器15は、ターシャリーポンプ14によって昇圧された液化天然ガスで、ランキンサイクルを循環する作動流体を冷却することにより、作動流体を凝縮させる凝縮器として機能する。
【0025】
メイン気化器15において凝縮された作動流体(中間媒体)は、循環ポンプ16によって中間媒体蒸発器17に供給される。中間媒体蒸発器17は、低温の作動流体と熱媒体とを熱交換させることにより、作動流体を気化させる。本実施形態では、中間媒体蒸発器17としてSTVを用いており、中間媒体蒸発器17における熱媒体として常温の水(海水)又は常温の水よりも温度の高い温水を用いている。温水は、例えば、近隣の工場の排熱エネルギによって生成されたものである。中間媒体蒸発器17において気化された作動流体は、1次タービン発電機18の1次膨張タービンに流入し、1次膨張タービンを駆動させる。1次膨張タービンの駆動により、1次タービン発電機18の発電機が発電する。このように、貯蔵タンク10に貯蔵された液化天然ガスの冷熱エクセルギが温度エクセルギとして用いられることにより、1次発電装置が発電する。
【0026】
メイン気化器15から流出した天然ガスは、第1加熱器19に供給される。第1加熱器19は、供給された天然ガスと熱媒体とを熱交換させることにより、天然ガスを加熱して昇温させる。第1加熱器19における熱媒体としては、例えば、常温の水(海水)又は温水を用いることができる。第1加熱器19において加熱された天然ガスは、2次タービン発電機20の2次膨張タービンに流入し、2次膨張タービンを駆動させる。2次膨張タービンの駆動により、2次タービン発電機20の発電機が発電する。このように、液化天然ガスの冷熱エクセルギが圧力エクセルギとして用いられることにより、直接膨張方式の2次発電装置が発電する。なお
図1には、2次膨張タービンが1つのみの構成を図示したが、この構成に限らない。2次膨張タービンと、2次膨張タービンから流出したガスを再加熱する加熱器とが交互に接続された多段膨張式の構成であってもよい。
【0027】
2次タービン発電機20の2次膨張タービンから流出した天然ガスは、第2加熱器21に供給される。第2加熱器21は、天然ガスと熱媒体とを熱交換させることにより、天然ガスを加熱して昇温させる。第2加熱器21における熱媒体としては、例えば常温の水(海水)を用いることができる。第2加熱器21において加熱された天然ガスと、上記第1気化器13において気化された天然ガスとは合流して、例えば都市ガスとしてガス導管に送出される。これにより、天然ガスが外部の供給先に供給される。なお、第2加熱器21において加熱された天然ガスと、上記第1気化器13において気化された天然ガスとは、合流することなく、独立したガス導管のそれぞれに送出されてもよい。
【0028】
続いて、ターシャリーポンプ14によって昇圧される液化天然ガスの上記プレオーバーブースト圧力の設定手法について説明する。この設定手法は、実施形態により、下式(1)、式(3)又は式(4)に基づくものである。
【0029】
Δhtotal=Δh2+Δh3−Δh1 … (1)
上式(1)において、Δh1を第1エンタルピ差と称し、Δh2を第2エンタルピ差と称し、Δh3を第3エンタルピ差と称し、Δhtotalを合計エンタルピ差と称すこととする。各エンタルピ差Δh1,Δh2,Δh3を定義するために、
図2に示すモリエル線図における冷熱利用プロセス(冷熱発電プロセス)の各動作点についてまず説明する。
【0030】
図2において、貯蔵タンク10に貯蔵されている液化天然ガスの状態を第1点C1にて示し、ターシャリーポンプ14によって昇圧された液化天然ガスの状態を第2点C2にて示す。また、2次タービン発電機20の2次膨張タービンの入口における天然ガスの状態を第3点C3にて示し、2次膨張タービンの出口における天然ガスの状態を第4点C4にて示し、第2加熱器21の出口における天然ガスの状態を第5点C5にて示す。また、
図2において、第1点C1の圧力,温度を第1圧力P1,第1温度T1とし、第2点C2の圧力を第2圧力P2とする。本実施形態において、第1点C1から第2点C2までの動作点の推移は、等エントロピ変化(断熱圧縮)に従う。また、第3点C3の圧力,温度を第3圧力P3,第3温度T3とする。本実施形態において、第2点C2から第3点C3までの動作点の推移は、等圧変化に従う。このため、第3圧力P3と第2圧力P2とは等しい。
【0031】
第4点C4の圧力,温度を第4圧力P4,第4温度T4とする。また、第5点C5の圧力,温度を第5圧力P5,第5温度T5とする。ここで本実施形態では、第5温度T5と第3温度T3とが等しいとする。また、第3点C3から第4点C4までの動作点の推移のうち2次膨張タービンにおける動作点の推移は、等エントロピ変化(断熱膨張)に従う。
【0032】
第1エンタルピ差Δh1は、第2点C2における比エンタルピから第1点C1における比エンタルピを減算した値として定義される。第2エンタルピ差Δh2は、第3点C3における比エンタルピから第2点C2における比エンタルピを減算した値として定義される。
【0033】
第3エンタルピ差Δh3は、モリエル線図上において動作点が気液平衡曲線Bよりも液相側に入らないように、動作点が第3点C3から第4点C4となるまでに2次膨張タービンによってなされる天然ガスの単位質量あたりの仕事として定義される。ここで、モリエル線図上において動作点が気液平衡曲線Bよりも液相側に入らないようにするとの条件は、ガスの再凝縮を防止し、2次膨張タービンの潰食や壊食による破損を回避するためのものである。この条件を満たすために、本実施形態では、第3点C3の第3圧力P3,第3温度T3の設定値に応じて、2次膨張タービンによる断熱膨張と、膨張後のガスの再加熱とを交互に繰り返す多段膨張を実施することとする。
図2には、4段膨張を実施する場合を例示した。本実施形態において、多段膨張における再加熱では、熱媒体として例えば上記温水を用い、天然ガスが第3温度T3まで等圧変化に従って昇温されることとする。
【0034】
上式(1)を用いる理由は、液化ガスを加熱する気化プロセス(メイン気化器15における気化工程)における熱エネルギの吸収プロセスを効果(メリット)としてプラス側に評価するためである。本システムとは逆に、水蒸気における超臨界圧発電においては、水の加熱気化プロセスは燃料による熱エネルギの損失と捉えるため、上式(1)に代えて、「Δh3−Δh2−Δh1」が用いられる。したがって、水蒸気における超臨界発電におけるΔh2の符号は、上式(1)におけるΔh2の符号と逆になる。なぜなら、対象物と環境温度との温度上の位置関係、つまり、極低温液化ガスは燃料を加えなくても、環境温度の熱エネルギで気化するのに対して、水蒸気は燃料による加熱によって気化させ、環境温度から所定の温度に上昇させるものであるためである。
【0035】
次に、液化ガスの冷熱エネルギは、
冷熱エネルギ=温度エネルギ+圧力エネルギ … (2)
と変換される。
【0036】
そして、変換後の温度エネルギと圧力エネルギの有効エネルギ(エクセルギ)回収率を比較すると、温度エクセルギ回収率が熱力学第2法則(カルノー効率)の制約を受けるため、圧力エクセルギ回収率よりも低い。そこで、冷熱エクセルギの回収率を上げるためには、冷熱エネルギを温度エネルギよりも圧力エネルギに変換させることが有効である。つまり、冷熱をより優位に圧力エネルギに変換させる方法が有効である。
【0037】
その実施方法として、液化ガスを高圧に加圧した状態で気化させる方法が適当である。液化ガスのモリエル線図から、より高圧で気化させるほど、液化ガスの蒸発潜熱が小さくなって、気化プロセスにおけるエンタルピ差は小さくなるものの、気化されたガスの圧力エクセルギは逆に増大する。
【0038】
そして、液化ガスの臨界圧力以上の圧力まで昇圧し、さらに、臨界圧力以上であっても蒸発または凝縮が生じるクリコンデンバールを超えると、蒸発潜熱は見えなくなる。また、気化プロセスにおけるエンタルピ差Δh2は、
図4(b)及び
図6(b)のとおり、昇圧するほど減少していく。したがって、超臨界圧下で液化ガスを気化させると、より多くの冷熱エネルギを圧力エネルギに変換することが可能となる。その結果、エクセルギ回収率が高い圧力エネルギを利用して、高効率に冷熱エネルギを仕事(電力)に変換することができる。
【0039】
上式(1)で表される合計エンタルピ差Δhtotalは、ある第2圧力P2において最大値をとる。この最大値に対応する第2圧力P2をプレオーバーブースト圧力に設定することにより、冷熱エクセルギの仕事への変換効率を最大とすることができる。そこで、合計エンタルピ差Δhtotalが最大となるブレオーバーブースト圧力を特定する方法について説明する。以下の説明において、圧力は絶対圧とする。プレオーバーブースト圧力の特定手法の説明に先立ち、計算で用いた天然ガスの組成及び物性値と、冷熱発電プロセスの各動作点とについて説明する。
【0040】
<天然ガスの組成及び物性値>
・モル%(Mole percent)
メタン(CH4)=92%、エタン(C2H6)=4%、プロパン(C3H8)=3%、ブタン(C4H10)=1%
・重量%(Mass percent)
メタン=82.61%、エタン=6.7321%、プロパン=7.4043%、ブタン=3.2531%
・Molor mass
17.866(kg/kmol)
本実施形態では、上記組成の天然ガスの物性値を、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)製の冷媒熱物性データベースソフトウェアであるREFPROP(Version9.1)を用いて計算した。その計算結果を以下に示す。
・臨界点A1(Critical point)
215.85(K)、6.8362(MPa)、206.87(kg/m^3)
・クリコンデンバール(Cricondenbar)
231.4(K)、7.6316(MPa)、141.58(kg/m^3)
・クリコンデンサーム(Cricondentherm)
247.35(K)、4.8965(MPa)、54.708(kg/m^3)
図3に、第1点C1から第2点C2の昇圧プロセス(等エントロピ変化)における天然ガスの各パラメータを、REFPROPを用いて計算した例を示す。
【0041】
なお、
図2には、天然ガスの臨界点をA1にて示し、天然ガスの圧力がクリコンデンバールとなる動作点をA2にて示す。また、上記組成の天然ガスを−162℃から20℃とするまでに利用可能な天然ガスの冷熱量の計算結果は906kJ/kgであった。
【0042】
以下、第3温度T3を20℃,50℃のそれぞれに設定する場合におけるプレオーバーブースト圧力の計算例について説明する。なお、計算では、第1点C1における第1圧力P1を0.101MPaに設定し、第1温度T1を−162℃に設定した。
【0043】
まず、第3温度T3を20℃に設定する場合について説明する。この場合、第1加熱器19及び第2加熱器21における熱媒体として、例えば常温の水を用いる。
【0044】
第1エンタルピ差Δh1は、第2圧力P2と比例関係にある。このため、第1エンタルピ差Δh1は、
図4(a)に示すように、第2圧力P2が高くなるほど大きくなる。ここでは、液化天然ガスを液状態で昇圧することから、第1点C1から第2点C2までの動作点の推移線は、等エンタルピ線(
図2に1点鎖線にて示す)と略平行となる。このため、液化天然ガスを小さいエンタルピ差で高圧にすることができる。
【0045】
第2エンタルピ差Δh2は、
図4(b)に示すように、第2圧力P2が高くなるほど小さくなる。これは、第2圧力P2が高いほど、第2点C2における比エンタルピが大きくなるためである。なお、モリエル線図において、ガス圧力が臨界圧力以上になると、第3点C3の比エンタルピは42MPa付近で増加に転じるものの、一方で、ガス圧力の上昇に伴い第2点C2の比エンタルピも上昇し続けるため、
図4(b)に示すように、第2エンタルピ差Δh2は減少し続ける。
【0046】
第3エンタルピ差Δh3は、
図4(c)に示すように、第2圧力P2が高いほど大きくなる。これは、第2圧力P2が高いほど、2次膨張タービンに流入するガスの密度が増加するためである。特に、第2圧力P2が臨界圧力付近までの第2圧力P2の上昇分に対する第3エンタルピ差Δh3の増加分の勾配は、第2圧力P2が臨界圧力よりも高くなる場合の上記勾配よりも大きい。また、第3エンタルピ差Δh3は、第4圧力P4が低いほど大きくなる。これは、2次膨張タービンの出口圧力が低いほど、2次膨張タービンによってなされる仕事が増加するためである。
図4(c)には、0.2〜1.0MPaまでの範囲において、第4圧力P4を0.1MPa毎に設定した場合の第3エンタルピ差Δh3の計算結果を示した。なお、第3エンタルピ差Δh3は、第2圧力P2を上げるにつれて、第2エンタルピ差Δh2と第1エンタルピ差Δh1との加算値と略同一の値となる(Δh3≒Δh1+Δh2)。
【0047】
上述した方法で算出した第1,第2,第3エンタルピ差Δh1,Δh2,Δh3を上式(1)に代入して算出した合計エンタルピ差Δhtotalと、第2圧力P2との関係を
図5に示す。
図5に示すように、合計エンタルピ差Δhtotalによって最高変換効率を示す第2圧力P2が特定される。第3温度T3が20℃の場合の計算例では、合計エンタルピ差Δhtotalが最大となる第2圧力P2が、ほぼ臨界圧に近い6.8MPaとして特定された。換言すれば、第2圧力P2を上昇させていく場合に合計エンタルピ差Δhtotalが最初に極大となる第2圧力P2が6.8MPaとして特定された。また、最高変換効率を示す第2圧力P2は、第4点C4のガス圧力(第5点C5のガス送出圧力と同値)を変更しても、同一の値を示す。なお、
図5には、0.2〜1.0MPaまでの範囲において、第4圧力P4を0.1MPa毎に設定した場合の合計エンタルピ差Δhtotalの計算結果を示した。
【0048】
なお、Δ第3エンタルピ差h3の値は、本計算上、第5点C5を基準点とする第3点C3のエクセルギ量(Flow Exergy)として算出している。エクセルギは保存量ではないため、一般的に、状態変化のエネルギ量としては同一に扱えないが、上式(1)においては、特定プロセス点のエネルギ合計量をみているため、問題はない。
【0049】
続いて、第3温度T3を50℃に設定する場合について説明する。この場合、第1加熱器19の熱媒体として、例えば排熱エネルギによって生成された温水を用い、第2加熱器21における熱媒体として、例えば常温の水(海水)を用いる。
【0050】
第1エンタルピ差Δh1は、
図6(a)に示すように、第2圧力P2が高くなるほど大きくなる。なお、第1エンタルピ差Δh1は、第1点C1及び第2点C2のそれぞれの比エンタルピで定まるため、
図6(a)の計算結果は、先の
図4(a)の計算結果と同じである。
【0051】
第2エンタルピ差Δh2は、
図6(b)に示すように、第2圧力P2が高くなるほど小さくなり、第3エンタルピ差Δh3は、
図6(c)に示すように、第2圧力P2が高いほど大きくなる。
【0052】
上述した方法で算出した第1,第2,第3エンタルピ差Δh1,Δh2,Δh3を上式(1)に代入して算出した合計エンタルピ差Δhtotalと、第2圧力P2との関係を
図7に示す。
図7に示すように、合計エンタルピ差Δhtotalによって最高変換効率を示す第2圧力P2が特定される。第3温度T3が50℃の場合の計算例では、合計エンタルピ差が最大となる第2圧力P2が、臨界圧力(かつ、クリコンデンバール)以上の9.4MPaとして特定された。また、最高変換効率を示す第2圧力P2は、第4点C4のガス圧力(第5点C5のガス送出圧力と同値)を変更しても、同一の値を示す。
【0053】
したがって、上式(1)により、最高変換効率を示すプレオーバーブースト圧力が特定され、気化熱源の温度及びガス送出圧力を変更しても、同様に、最高変換効率を示すプレオーバーブースト圧力が特定される。
【0054】
以上の結果は、液化ガスの組成と、気化熱源の温度との2条件を特定すれば、液化ガスの冷熱エクセルギを最高効率で仕事(電力)に変換するプレオーバーブースト圧力を特定できることを示している。また、上記2条件に加えて、システム出口の最終圧力(気化ガス送出圧力)の条件を特定すれば、合計エンタルピ差Δhtotalの大きさが決まり、システム全体の発電装置の出力(発電電力)を特定することができる。
【0055】
続いて、上式(1)の実用システムに適用する場合の次式について説明する。
【0056】
Δhtotal=α×Δh2+Δh3−Δh1 … (3)
上式(3)は、気化プロセスにおける温度エクセルギの利用について、熱力学第2法則の効率(カルノー効率)の制約を課した式である。気化プロセスの全エンタルピ差を利用して、温度エクセルギを仕事に変換できるシステムを想定している。以下、上式(3)に基づくプレオーバーブースト圧力の特定手法について説明する。
【0057】
図8に、第3温度T3が20℃の場合において、先の
図4の各エンタルピ差Δh1,Δh2,Δh3と効率係数αとに基づいて計算した上式(3)の合計エンタルピ差Δhtotalを示す。ここでは、効率係数αを、カルノーサイクルの理論熱効率である0.621とした。理論熱効率は、第2点C2における第2温度T2(=−162℃)と、第3点C3における第3温度T3(=20℃)とを用いて以下のように計算できる。
α=1−T2/T3
=1−(−162+273.15)/(20+273.15)=0.621
なお、第1点C1から第2点C2までにおける等エントロピ変化において、液化天然ガスの温度が微小ではあるが上昇する。このため、第2圧力P2の大小に応じて第2温度T2が変化し、効率係数αが変化する。ただし本実施形態では、計算の簡単化のため、効率係数αの算出において、第1点C1から第2点C2までにおける液化天然ガスの温度変化が無いものとした。
【0058】
第3温度T3を20℃に設定する場合、第4圧力P4の大小にかかわらず、合計エンタルピ差が最大となる第2圧力P2が、クリコンデンバール以上の圧力である9.7MPaとして計算された。このため、第3温度T3を20℃に設定する場合、プレオーバーブースト圧力を9.7MPaに設定することにより、冷熱エクセルギの電力変換効率を最大にできるとの試算結果を得た。
【0059】
図9に、第3温度T3が50℃の場合において、
図4の各エンタルピ差Δh1,Δh2,Δh3と効率係数αとに基づいて計算した上式(3)の合計エンタルピ差Δhtotalを示す。ここでは、効率係数αは、カルノーサイクルの理論熱効率である0.656とした。この値は、第2点C2における第2温度T2(=−162℃)と、第3点C3における第3温度T3(=50℃)とから計算できる。
【0060】
第3温度T3を50℃に設定する場合、第4圧力P4の大小にかかわらず、合計エンタルピ差Δhtotalが最大となる第2圧力P2が、クリコンデンバール以上の圧力である14.1MPaとして計算された。このため、第3温度T3を50℃に設定する場合、プレオーバーブースト圧力を14.1MPaに設定することにより、冷熱エクセルギの電力変換効率を最大にできるとの試算結果を得た。
【0061】
プレオーバーブースト圧力を天然ガスの臨界圧力以上に設定するため、本発明者は、本実施形態にかかる冷熱発電システムを、LNG超臨界圧冷熱発電システム(LNG supercritical pressure cold energy power generation system:LSG)と称すこととした。
【0062】
ちなみに、第3温度T3を高くすることにより、第2,第3エンタルピ差Δh2,Δh3が大きくなり、また、冷熱源と加熱源との温度差を大きくすることができ、カルノーサイクルの理論熱効率を高くすることができる。その結果、LSGにおける冷熱エクセルギの電力変換効率を高くすることができる。また、第3温度T3を高くすることにより、第3点C3から第4点C4までにおける膨張と再加熱との段数を減らすことができ、LSGの設備費用を低減できる。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、合計エンタルピ差Δhtotalの概念を用いてプレオーバーブースト圧力を設定することにより、冷熱エクセルギの電力変換効率を高めることができる。つまり、天然ガスの気化工程入口(第2点C2)における液化天然ガスのエンタルピと、気化工程出口(第3点C3)における天然ガスのエンタルピとの差Δh2が大きいほど、液化天然ガスの冷熱エクセルギのうち、ランキンサイクル方式の1次発電装置で用いられる温度エクセルギに変換される割合が高くなる。ここで、ランキンサイクルは、伝熱の不可逆過程を含む。このため、1次発電装置における冷熱エクセルギの回収率(例えば、20〜30%)は、直接膨張方式の2次発電装置における冷熱エクセルギの回収率(例えば、70〜80%)よりも低い。したがって、上式(2)より、液化天然ガスの冷熱エクセルギのうち、1次発電装置で用いられる温度エクセルギに変換される割合を高くすれば、冷熱エクセルギの電力変換効率を低下させることになり、逆に、温度エクセルギに変換される割合を低くすれば、冷熱エクセルギの電力変換効率を高くすることができる。
【0064】
ここで、プレオーバーブースト圧力を高圧(例えば臨界圧力以上)とすることにより、メイン気化器15の気化工程入口における液化天然ガスのエンタルピと、気化工程出口における天然ガスのエンタルピとの差Δh2が小さくなり、気化工程におけるガスの蒸発潜熱(
図2モリエル線図で気液境界線間のエンタルピ)が小さくなり、クリコンデンバール圧力以上では蒸発潜熱は見えなくなる。これにより、温度エクセルギに変換される冷熱エクセルギが減少するものの、圧力エクセルギに変換される冷熱エクセルギが増加する。したがって、ランキンサイクル方式の1次発電装置の発電量は減少するものの、ランキンサイクル方式よりも冷熱エクセルギの回収率(電力変換率)の高い直接膨張方式の2次発電装置の発電量を増加させることができる。その結果、冷熱発電システム全体で見た場合において、液化天然ガスの冷熱エクセルギの電力変換効率を高めることができる。
【0065】
特に、プレオーバーブースト圧力をクリコンデンバール以上の圧力に設定することにメリットがあるとの試算結果がでる場合、メイン気化器15において、天然ガスの圧力をクリコンデンバール以上に維持したまま天然ガスを気化させることとなる。これにより、冷熱エクセルギの電力変換効率をいっそう高めることができる。つまり、非共沸混合物である液化天然ガスは、その圧力が臨界圧力以上であっても、クリコンデンバール未満であれば、凝縮が発生する。そこで、プレオーバーブースト圧力をクリコンデンバール以上の圧力に設定することにより、液化天然ガスは、気化工程において気液混合相を介さず気化される。これにより、気化工程において液化天然ガスの蒸発潜熱は見られなくなり、ランキンサイクルを循環する作動流体の凝縮に用いられる液化天然ガスの蒸発潜熱を減少させることができる。したがって、気液混合相を介して液化天然ガスを気化させる構成と比較して、温度エクセルギに変換される冷熱エクセルギをより減少させることができる。その結果、圧力エクセルギに変換される冷熱エクセルギをより増加させることができ、システム全体の冷熱エクセルギの電力変換効率をいっそう高めることができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、プレオーバーブースト圧力(P2)を高くするほど、第4点C4における第4圧力P4の設定可能範囲が広がる。このため、2次タービン出口圧力の調整により、外部へのガス送出圧力を自在に設定することができる。
【0067】
なお、本実施形態は、液化天然ガスの冷熱エネルギを低い温度から逆カスケード利用するものである。これは、天然ガスの液化プロセスの逆のプロセスを用いたものである。ここで、
図10に、本実施形態にかかる冷熱発電プロセス(LSG)とあわせて、天然ガスの液化プロセス(LNG)を示した。液化プロセスは、一般に、気液混合領域を避けるため、臨界圧力付近まで天然ガスを昇圧した後、冷却するので、多段圧縮(Adiabatic Compression)、予冷却(Precooling)、液化(Liquefaction)、過冷却(Subcooling)及びジュールトムソン膨張(Joule-Thomson Throttling)からなる。また、液化天然ガスのメタン成分割合が増加して軽質化してもLSGには問題がない。重炭化水素分が減れば、天然ガスが再液化しにくくなるため、LSGによってより有効に発電できる。
【0068】
以上説明した実施形態は、例えば以下のような利用形態において実施することもできる。
【0069】
・上記実施形態では、合計エンタルピ差の計算に用いる効率係数αを、カルノーサイクルの理論熱効率としたがこれに限らず、計算対象となるLSGの仕様等に応じて、効率係数αを、0よりも大きくてかつ上記理論熱効率未満の値に設定してもよい。
【0070】
・上記実施形態では、液化天然ガスの冷熱エネルギを、1次発電装置の1次膨張タービンを駆動させる機械的エネルギに変換した。ただし、冷熱エネルギを機械的エネルギに変換することに限らず、例えば、冷熱エネルギを熱のまま利用し、冷蔵倉庫を冷却したり、液化炭酸を製造したりするためのエネルギに変換してもよい。この場合、第2エンタルピ差Δh2を、効率係数αを用いることなく、第3点C3における比エンタルピから第2点C2における比エンタルピを減算した値として定義してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、第2エンタルピ差を、第3点C3における比エンタルピから第2点C2における比エンタルピを減算した値として定義したがこれに限らず、例えば以下に説明するように定義してもよい。
図11に示すように、モリエル線図において、メイン気化器15の出口における天然ガスの状態をA点CAにて示す。そして、第2エンタルピ差Δh2rankを、A点CAにおける比エンタルピから第2点C2における比エンタルピを減算した値として定義してもよい。この場合の合計エンタルピ差Δhtotalを次式で表す。
【0072】
Δhtotal=α×Δh2rank+Δh3−Δh1 … (4)
この場合、効率係数αは、第2点C2における第2温度T2とA点CAにおけるガス温度とのそれぞれによって定まるカルノーサイクルの理論熱効率以下の値であってかつ0よりも大きい値として定義される。1次発電装置のランキンサイクルの作動流体を例えばLPG(プロパン)とする場合、A点CAにおける温度を例えば−44℃に設定する。そして、カルノーサイクルの理論熱効率は、第2点C2における第2温度T2(=−162℃)と、A点CAにおける温度TA(=−44℃)とを用いて以下のように計算できる。
α=1−T2/TA
=1−(−162+273.15)/(−44+273.15)=0.515
図12に、第3温度T3が20℃の場合における先の
図4の第1,第3エンタルピ差Δh1,Δh3、及び第2エンタルピ差Δh2rankを上式(4)に代入して算出した合計エンタルピ差Δhtotalと、第2圧力P2との関係を示す。また、
図13に、第3温度T3が50℃の場合における先の
図6の第1,第3エンタルピ差Δh1,Δh3、及び第2エンタルピ差Δh2rankを上式(4)に代入して算出した合計エンタルピ差Δhtotalと、第2圧力P2との関係を示す。なお、
図12及び
図13のそれぞれにおける効率係数αを0.515とした。
【0073】
図12に示すように、第3温度T3を20℃に設定する場合、第4圧力P4の大小にかかわらず、第2圧力P2を0から上昇させていく場合に上式(4)の合計エンタルピ差Δhtotalが最初に極大となる第2圧力P2が、6.0MPaとして計算された。このため、プレオーバーブースト圧力を6.0MPaに設定できる。また、
図13に示すように、第3温度T3を50℃に設定する場合、第4圧力P4の大小にかかわらず、第2圧力P2を0から上昇させていく場合に上式(4)の合計エンタルピ差Δhtotalが最初に極大となる第2圧力P2が、6.5MPaとして計算された。このため、プレオーバーブースト圧力を6.5MPaに設定できる。ちなみに、
図12及び
図13には、プレオーバーブースト圧力が臨界圧力未満の圧力として特定される例を示したがこれに限らない。ガス組成等によっては、第2圧力P2を0から上昇させていく場合に上式(4)の合計エンタルピ差Δhtotalが最初に極大となる第2圧力P2が、臨界圧力以上の圧力として特定される場合もあり得る。このため、上式(4)を用いてプレオーバーブースト圧力を特定する場合、プレオーバーブースト圧力が、臨界圧力以上の圧力として特定されることもある。
【0074】
なお、
図12及び
図13に示すように、第2圧力P2を0から上昇させていくと、合計エンタルピ差Δhtotalが極大となる。さらに第2圧力P2を上昇させていくと、合計エンタルピ差Δhtotalが一旦低下するものの、その後微少ながらも合計エンタルピ差Δhtotalが増加し続ける。このため、第2圧力P2を0から上昇させていく場合に合計エンタルピ差Δhtotalが最初に極大となる第2圧力P2をプレオーバーブースト圧力に設定する手法によれば、例えば、冷熱利用システムを構成する設備に要求される耐圧を過度に上昇させることなく、冷熱エクセルギの電力変換効率を高めることができる。
【0075】
・上式(1),(3),(4)を用いたプレオーバーブースト圧力の特定は、冷熱利用プロセスにおいて、冷熱エネルギを最高効率で電力に変換する最適条件であるプロセス(第3点C3から第4点C4までのプロセス)の膨張タービン入口圧力を特定していることを示している。
【0076】
・上記実施形態では、1次タービン発電機18の1次発電機と、2次タービン発電機20の2次発電機とを各別のものとしたがこれに限らない。1次,2次タービン発電機18,20の発電機を共通の発電機としてもよい。
【0077】
・上記実施形態では、1次発電装置を、ランキンサイクルを用いる方式としたがこれに限らず、ランキンサイクル以外の他の蒸気動力サイクルを用いる方式としてもよい。
【0078】
・上記実施形態では、合計エンタルピ差Δhtotalが最大となる第2圧力P2をプレオーバーブースト圧力に設定したがこれに限らない。例えば、合計エンタルピ差Δhtotalが0よりも大きくてかつその最大値未満の値となる第2圧力P2をプレオーバーブースト圧力に設定してもよい。
【0079】
・貯蔵タンクに貯蔵される低温の液化ガスとしては、液化天然ガスに限らず、例えば、液化石油ガスや、液化フロン、液化水素であってもよい。
【0080】
・LSGの発電量の試算結果の一例を
図14に示す。詳しくは、
図14に、上式(4)を用い、第2圧力P2(プレオーバーブースト圧力)を10.1MPaとし、第3温度T3を20℃,50℃とした場合のガス送出圧力(P4=P5)に対する発電量の試算結果の一例を示す。なお、
図14の試算では、ランキンサイクルの作動流体(中間媒体)としてLPGを用い、効率係数αを0.136とした。
【0081】
・既存の冷熱発電システムは、電力会社など外部からの商用電源の喪失時には運転を停止することを前提にしている。このため、既存の冷熱発電システムは、商用電源の停電時などには、発電システムであるにもかかわらず、発電することができない。
【0082】
そこで、商用電源の喪失時(停電時)において、冷熱発電システム(LSG)に、別の非常用発電機の電力を用いて、制御用電源、海水及び液化天然ガス(具体的には、セカンダリポンプ12からの液化天然ガス)を供給することにより、優先的にLSGを起動させる。LSGで発電された電力を、構内電力と系統連携させて構内の他の製造プラントへと給電し、他の製造プラントを順に稼働させることができる。すなわち、LSGは、外部商用電源の喪失時や停電などの非常時には、「非常用電源装置」として機能し、平常時には、構内電力のベースロード電源として機能する。
【0083】
・液化天然ガスは、外国の産地の天然ガス液化工程において大量の電気を使用して製造され、その後タンカーで輸送される。ここでLSGは、天然ガス及び産地の液化電力の両方を利用するものであるから、LNG輸送タンカーは「液化天然ガス」+「液化電力」を輸送している。すなわち、LSGは、天然ガス産地で使用された冷却電力(低価格電力)を、天然ガス消費地の電力(高価格電力)として、効率的に回収利用するシステムである。このため、LNG輸送タンカーは「液化天然ガスキャリア」と「電力キャリア」の価値があり、液化天然ガスを購入することは、液化天然ガスと産地電力とをセットで購入することと同じである。したがって、LNG輸送タンカーと、LSGとを備えるエネルギシステムを構成することにより、LNG輸送タンカーを「液化天然ガスキャリア」及び「電力キャリア」(LNGの上流(産地)と下流(消費地)における電力バリューチェーン)とするビジネスモデルを提供することができる。
【0084】
・液化天然ガスの輸入国では、液化天然ガスを貯蔵タンクに貯蔵する。液化天然ガスの冷熱を効率的に取り出すLSGの利用により、貯蔵タンクには「液化天然ガス貯蔵所」及び「電力貯蔵所」の価値が生まれる。すなわち、液化天然ガスの冷熱エネルギを効率的に回収すると、液化天然ガスの貯蔵タンクは、電力貯蔵所として、昼夜間消費ピーク電力の平準化及び昼夜間電力使用原単位の改善に貢献する。このため、貯蔵タンクとLSGとを備えるエネルギシステムを構成することにより、液化天然ガスを貯蔵している貯蔵タンクを、「液化天然ガス貯槽所」及び「電力貯蔵所」とするビジネスモデルを提供することができる。
【0085】
・液化天然ガスを輸入する事業者は、液化天然ガスの気化基地において、LSGによって液化天然ガスの冷熱エネルギを利用して効率的に発電し自己託送(電気事業法の制度改正により発電地以外での電力消費が可能になった)することにより、事業者の全地域における設備で使用する全電力量を自給できる。このため、「ゼロエミッション事業」のビジネスモデルを提供することができる。また、LSGと、液化天然ガスの液化設備とを備えるエネルギシステムを構成することにより、液化天然ガスが貯蔵タンク内で自然入熱などにより気化したボイルオフガス(BOG)を夜間電力で液化し、昼間にLSGで発電し電力を取り出せば、昼夜間電力使用量の平準化を図ることができる。このため、「昼夜間ピーク電力の平準化」のビジネスモデルを提供することができる。